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蟄虫啓戸−すごもりむしとをひらく−

<オープニング>

 冬の寒さも和らぎ、日によっては暖かく感じるこの頃。
 新しい植物が芽吹き始め、寒さを土の中でやり過ごした虫たちが這い出して来る頃である。
 無論、小さな虫だけでなく大きな虫も……今、マーシャルの前で土を押し退け現れた地潜り虫も、そんな虫たちの1つなのかもしれない。
 だが、マーシャルはそんな春の訪れを、のんきに堪能している場合ではなかった。
 地潜り虫は人程もある大きさで、10匹近くが一斉に地面から現れたのだ。
「う……わ……」
 地潜り虫達は出てきたばかりで寝ぼけているのか、マーシャルに気付いていない様だった。伸びをする様な動きをして顎を鳴らしたりしている。
 マーシャルは走って逃げ出したい衝動を押え、地潜り虫達を刺激しない様、ゆっくりゆっくり後退する。
 パキン!
 その足が乾いた枝を踏み割り大きな音を立てる。しまったという顔をして虫達の方を見たマーシャルは、地潜り虫達が一斉にこっちを見ている事に気付いた。
「ひいいぃぃぃぃぃ!」
 情けない悲鳴を上げて逃げ出すマーシャル。虫達も奇声を上げマーシャルを追い始めた。

「暖かくなるのはいいんだけど、マスカレイドの虫が湧いて出て来るのは勘弁よね。誰か虫退治に行かない? 地潜り虫の群れに襲われる人のエンディングが見えちゃったんだよねー」
「虫か……」
 呟くエンドブレイカーを見遣ってルトゥンは話を続ける。
「場所が村の直ぐ近くなんだよ。10匹程の地潜り虫が土の中から出て来て、マーシャルさんって人が襲われるの。全部がマスカレイドじゃないんだけど、仮面を付けたのが混ざってたから、後で村も襲われると思うんだよねー」
 ルトゥンは手帳に何か書きこみつつ話を続ける。 

「地潜り虫は知ってるよね? 硬い外皮を持つ人間サイズの巨大芋虫で、群れで行動するんだよ。堅い触手を生やした口で噛みついてくるわ。今回は10匹出て来るんだけど、数匹だけがマスカレイドみたいね。ごめん、同じ形で一緒に動いてたから、何匹か正確には分らなかったのよ。
 マスカレイド以外の奴は倒さなくてもいいけど、場所がかなり村に近いので、出来れば討伐してしまった方がいいかなーと私は思うんだけど、その辺りは任せるよ。
 あ、倒した虫の死骸も埋めるなりなんなり処理してね。腐肉を狙う別の獣とかが来ても厄介だしさ。じゃ、宜しくだよ♪」
 ルトゥンは立てた人差し指を左右に振るのだった。


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参加者
ふわふわ眠り姫・ロゼリア(c00690)
猛き紅華の戦姫・フィオーレ(c01287)
金鎖の騎士・ラシュレイ(c01584)
刀押収刑事・ルーン(c01799)
紫風天翔・レイラ(c03886)
轟雷血刃・ルナ(c15265)
天鎖煌乱・ニルフィエ(c21448)
緋蒼の幼王・レン(c26804)
地陰星・クライム(c27204)
空之器・ショウキ(c28460)

<リプレイ>

●遭遇
 地潜り虫達を前に金髪の男が慄いている。見つけた、マーシャルだ!
「おっまたせー!助けに来たのだよー!」
 【EX】Gallatinを肩に担いだ緋蒼の幼王・レン(c26804)の声に、マーシャルが振り返る。
「早く、こっちだよ!」
「地潜り虫です! 危ないから私達に任せて下がって!」
 絆のリボンで金髪を留めた轟雷血刃・ルナ(c15265)が、殺神刀『無月』の黒い切っ先でクイーンランサーの紋章を描き、Platinumの裾を揺らした天鎖煌乱・ニルフィエ(c21448)が妖精達を突っ込ませると、マーシャルの一番近くに居た地潜り虫が悲鳴を上げ、地潜り虫達がうぞうぞと動き始めた。
「ひっ……」
 小さく悲鳴を上げたマーシャルが、エンドブレイカー達の中へ逃げ込んで来る。
「ここは私達に任せて、逃げて下さい!」
「お前は逃げろ。ここはオレ達が引き受けてやるよ」
 金鎖の騎士・ラシュレイ(c01584)が、虫が10匹居る事を確認し、庇いながらマーシャルに声を掛け、地陰星・クライム(c27204)が大剣を一閃し、切っ先を虫達に突き付ける。
「恩にきります」
「そうじゃ、御主名は何と言う?」
 頭を下げて逃げようとするマーシャルに、空之器・ショウキ(c28460)が問い掛ける。
「マーシャルです」
「ではマーシャル、無事村へと帰るのじゃぞ!」
 答えてくれた事に笑顔を浮かべてマーシャルを見送ると、ショウキは虫達に向き直る。
「にゅにゅ、おっきなむしさんいやー。むい、はやくもこもこにしてたおすのー、がんばろ〜♪」
「気心知れた、知り合いも多いですし不安はありませんが、あまり近付いて欲しくない容姿ですね」
 でっかいヒュプノス……じゃなかった、ふわふわ眠り姫・ロゼリア(c00690)が拳を握り締める横で、刀押収刑事・ルーン(c01799)が虫から目を逸らしつつ罠を撒く。
「……春で冬眠から目覚める虫がいるのは構わないけど……さすがにマスカレイドなのは、ね……気持ち悪いし片付けてしまいましょうか」
「ほんと、私もあまり得意ではないですが、普通の虫が出てくるのならまだしも、巨大でしかも仮面付きとは……」
 猛き紅華の戦姫・フィオーレ(c01287)が『紅華』『紅陽』の双太刀を手に駆け、少し顔を引きつらせた紫風天翔・レイラ(c03886)が、脚を振り抜きフィオーレを援護する様に衝撃波を飛ばす。
 後衛からアルカナ魔法教会の面々の援護を受けた前衛達が、蠢動する虫達とぶつかった!

●蟲闘
「左の仮面憑きから狙いましょう、合わせて!」
 叫んだニルフィエが妖精達を飛ばし、
「OK。ボクの蒼炎はものっすごい熱いから気をつけなよ〜!」
「ギギギギ……」
 MOTULが翻り、降り抜いたレンの得物から火柱が上がり地潜り虫を焼く。堅い触手を擦り合わせて鳴く地潜り虫に、更に風槍が突き刺さる。
「よし、ここからだよ」
 女王騎士の貫く闘志の風槍の紋章を描いたルナが、剣のオーラを纏って僅かに口角を上げる。その眼前、ダメージを受けた仮面付き1匹と、仮面無し2匹が一団となってレンに襲い掛かってきた。
「うおぉー、超気持ち悪い、超気持ち悪いのだ!」
 口元の触手を動かしながら迫る3匹に、レンは大事な事なので2回言いながら火柱を起こす。……が組み付かれて咬まれた。
「ぎゃー」
「ルナさんお願いします」
 叫んで圧し潰されそうになるレンを見て、ニルフィエが妖精をルナに飛ばす。
「レン嬢、ボクが助けてあげるからね」
 活力の針を刺されたルナは、妖精達と共に紅い閃光となって踏み込む。
 その右手に握られた太刀が雷光を纏って翻ると、レンに圧し掛かっていた仮面の無い地潜り虫が真っ二つに裂け、体を左右に分けながら絶命する。
「ひぃ〜」
 その下から、地潜り虫の血と体液を浴びる形になったレンが、マヒした体を引き摺り慌てて這い出した。

 一方右端側。
「目覚めに間に合ったのは僥倖でしたね。罪を重ねる前に倒す事が出来ます」
「一矢で貫けぬとも、我に穿ち貫けぬ物無し」
 ラシュレイのライトランスを連続で突き入れ、2匹の虫の突進を押し留めると、仮面のある方の虫にルーンの放った矢が突き刺さる。更に御魂代之白刀-白姫-の鯉口を切り、駆けたショウキの一閃。
「ギギッ……」
 裂かれた部分から体液を滴らせ、触手を蠢かす仮面の地潜り虫。
「ショウキ、左だ!」
 ルーンの声にショウキは、確認するより早く左を防御する姿勢をとって跳び退く。その体に衝撃があり、ショウキは大きく吹っ飛ばされた。別の地潜り虫が体当りしてきたのだが、事前に跳んだ事でダメージは殆ど無い。
「これは助けられたのう」
 ショウキは与一の弓に次の矢を番えるルーンに目礼を返すと、柄に手を掛け大地を蹴る。
 その駆ける先では仮面のない地潜り虫を1匹屠ったラシュレイが、次の攻撃に備えランスを立て突撃体制を取っていた。
「君達に罪はないのかもしれないが、騎士として民を守る義務がある。赦せ」
 自らが屠った地潜り虫にそう声を掛けたラシュレイは、戻ってきたショウキに合わせ、仮面の地潜り虫に向って駆け出した。

「むしさんいや、こないでなのです〜」
 桃の香りを漂わせたロゼリアの元から、ヒュプノスが跳ねて行く。
「ギッ」
 ヒュプノスの前の地潜り虫が、催眠ガスでも喰らったかの様に動きを止める。
「吹っ飛ばしてやるぜ」
 そこに振るわれた大剣がクリーンヒットし、地潜り虫が吹っ飛ぶと、クライムは大剣を地面に突き立て息を吐く。
「はー、はー、害虫め、少しは休憩させろ。もう無理、死ぬ」
 クライムは、走り詰めのまま戦闘に突入したので息が上がっていた。そのクライムに触手を蠢かせ仮面の地潜り虫が迫るが、クライムの視界は緑の髪に遮られた。
「その血を舞い散らせ」
 長い髪を揺らしたフィオーレの太刀が、縦横無尽に地潜り虫を斬り、飛び散る血が薔薇の花弁となって舞い散った。
「クライムさん、辛いなら回復してもらっては?」
「んー、いいとこ見せないまま世話になるってのは、ちょっと恰好悪いじゃん」
 振り返らずに言うフィオーレに、肩で息をしながらも大剣を構え直したクライムが返すと、
「おしゃべりしてる間に来ますよ、仮面付きです」
 後ろからレイラが、白犬の尾を揺らして降り抜いた脚から衝撃波を飛ばして声を上げる。
「分かってる」
「仕事はちゃんとやるぜ」
 レイラの衝撃波を喰らった地潜り虫をフィオーレとクライムが左右から斬り裂くと、倒れた地潜り虫は触手を動かすのを止め、その生命を終える。
「まだまだ来るのです〜」
 ヒュプノスを飛ばしたロゼリアが言う様に、仮面を付けた2匹が外皮を硬質棘化して迫ってくる。
「う……早く、終わらせましょうか」
 グロテスクさを増した地潜り虫に、再び顔をひきつらせたレイラが、近寄るなとばかりに脚を振るい、二重の衝撃波を飛ばした。

●蟲滅
 地潜り虫は既に半数の5匹が大地に屍を晒していた。
 その内、仮面の付いた個体は1体で、レイラによって屠られており、残る3体もエンドブレイカー達の優先攻撃対象となっている為、その体を血と体液で濡らしていた。
「ギギギギッ」
「ギギッ」
 会話でもしているのだろうか? 今は仮面付きが倒れたタイミングで、お互いが距離をとっている状況で、
「癒しの旋律よ、生命の息吹を。我が友に」
「むい〜、ろぜのうたでげんぎにな〜れ♪」
 ルーンの起こした風にロゼリアの歌声が乗り、皆を回復させていた。
「本能のままに動く虫だからこそ、厄介ですね」
「逃げられても厄介じゃの、一気に潰すとするかのう」
 小首を傾げるニルフィエに、白重籐弓に番えた矢を虫達に向けたショウキが言うと、目配せし合った皆が頷く。
「じゃあ、タイミングを合わせていくよ、1、2のさん!」
 レンの掛け声に合わせ、ルナとラシュレイが駆け出す。3人の頭上をショウキとルーンの放った矢が飛び、少し遅れて駆け出したフィオーレの掌から迅雷が迸る。
「はー、こいつの出番か」
 逆側からクライムのクラビウスが、地面を削りながら大きな口を開け地潜り虫に襲い掛かる。
「ギギー!」
 5匹の触手が蠢き、噛み付き又は体当りしようと地潜り虫達も動く。突っ込んで来るのは仮面無しの2匹。範囲攻撃陣をとったニルフィエの妖精達が針で突く中、右の虫の頭に白い何かが乗る。
「ナイス着地です〜」
 それはロゼリアのヒュプノス。たちまち地潜り虫の動きが鈍り、もう片方の1匹だけがエンドブレイカー達の前に突出する形となる。
「愚か」
 呟いたフィオーレが一撃を加えてそのまま斬り抜け、顔をフィオーレの方に向けた虫の体に風穴が空いた。
「ギッ……」
「余所見するとは余裕ですね」
 ラシュレイの回転するドリルと化したランスが血肉を撒き散らす。そのまま前のめりに倒れる地潜り虫を残しラシュレイは駆ける。
「参ります……シュート!」
 ヒュプノスが頭に乗った方は、ショウキが一撃を叩き込むより早く、レイラの放った衝撃波に顔を削られ、こちらは仰向けに立入れて動かなくなった。これで残るはマスカレイドの3匹。

「いっけえぇぇえ!」
 レンの斬撃で火柱が起こり2匹を焔に包むと、ショウキの白刀がその身を裂き、焔の赤の中に血の赤を添える。
「ギギギ……」
 悶える地潜り虫の口にラシュレイのランスが叩き込まれ、
「……桜花、繚乱っ」
 フィオーレの双太刀が、地潜り虫の顔を、背を、腹を、触手を、斬り裂いて薔薇の花弁を舞い散らすと、仮面が砕けて地に落ちる。
「逃がさないのです」
 もう1匹を捉えるのはニルフィエの鎖鞭ミザリア・リストレイン。蛇と化したその鞭が、地潜り虫の体をギリギリと締め上げる。
「ギギッ……ギッ」
 トスッ! その地潜り虫の胸の辺りに刺さる1本の矢。
「今のはなかなかの一射だったな」
 弓の構えを解いたルーンが言う前で、地潜り虫は崩れ落ちた。
 最後の1匹になった地潜り虫は、仲間達が倒れた事で、対峙していたクライムに背を向け逃げようとするが、体を反転させた勢いで、クライムの着ているゴシックパンク風の術士服『偽演の姉』に泥が跳ね飛んだ。
「は? 何してくれてんの? マジで死ねよ」
 泥のついた自分の服を見たクライムがキレ、背を向けて逃げる地潜り虫を睨みつけた。次の瞬間、地潜り虫の足元の地面から巨人の拳が飛び出し、地潜り虫を跳ね上げる。
「美味しいとこ、頂きだよ」
 ニルフィエの妖精達からチャージを受けたルナが、片翼の血羽を風に靡かせて跳ぶ。
 小さな雷を放ち輝いた刀身が、地潜り虫の右斜め上から左下へ振り抜かれる。
 着地するルナに少し遅れ、両断された地潜り虫がその断面を焦がしながら、地面に叩き付けられたのだった。

●焉土
「さて、後は骸の処理だね」
「出てきた穴に放り込めばいんんじゃ?」
 血糊を払って太刀を鞘に戻したルナが言うと、同じ様に双太刀の血を払ったフィオーレが問う。
「どっちにしろシャベルとか要るんじゃねぇの? もしかしてあれ素手で触る気?」
 クライムが指差す先には、なんだかよく良く分らない色の体液を滴らせる肉片があり、レイラとロザリアが、プルプルと首を小刻みに左右に振り、一行はひとまず村へと向かう。
「すまぬ、此処にマーシャルなる青年は居ないかの?」
 村の入り口でショウキが尋ねると、丁度向こうからマーシャルと武装した青年達がやってきた。
「ああ、無事だったんですね、よかった」
「無事に帰れた様じゃな……良かった」
 マーシャルは一行を見て安堵の表情を浮かべ、ショウキも笑う。聞けば自警団の皆と駆け付けようとしてくれていた様だ。村長もやって来たので、
「今後を考えて退治したのはいいんですが、死骸が……」
 ニルフィエとショウキは地潜り虫達を退治した事と、骸を埋めるのに人と道具を借りたい旨を伝える。
「村の危機を救って頂いたのじゃ、それぐらい喜んで」
 マーシャルから事情を聞いていた村長は、喜んで申し出に応じてくれ、マーシャルと自警団の若者10人と道具を持って現場に戻る。
「これは凄い……」
 凄まじい戦場の跡に自警団が絶句し、2人程が口を押えて木陰に消える。
「おにーさん、お願いできますか? むい歌を唄って応援するです」
 ロゼリアは笑顔でさくっと労働を免れると、石の上に座って竪琴を奏で始めた。その音楽に合わせ、出てきた穴を拡張する面子と、骸を集める面子に分かれて作業を始める。
「うおおおおお! この地面! まったいらな面しやがってなのだ! この! この!」
「レンさん、もっと早く!」
 何にキレてるのか分らないが、レンが凄い勢いで地面を掘り進め、早く掘らないと上から肉片を放り込むといわれたレイラもレンを急かしながら凄い勢いで穴を掘っていた。
「綺麗な桜の下には死体が埋まっているとは言いますがこの蟲の死骸も養分になるのかな……」
「その時は綺麗な花を咲かせて欲しいですね」
 やがて全ての躯を穴に放り込み、土を被せながらルーンが呟と、目を細めたラシュレイが応じた。
「さて、お疲れ様でした。休憩と行きませんか?」
 全てが終わり、くるっとターンしながらニルフィエが言うと、マーシャルや自警団の者達が、宴席を設けると提案してくれた。
 エンドブレイカー達は、春の訪れと共に現れた珍客を退治し、その宴でおおいに盛り上がったのだった。



マスター:刑部 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2012/03/16
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  • カッコいい2 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
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