ステータス画面

それは終わることなく絶え間なく続く日常

   

<オープニング>

●『変化』がもたらすもの
 ラッドシティの戦いは終わった。
 結果として棘は打ち払われ、そしてこの都市国家からは紫煙が消えた。
 それは日常風景すら一変する、大きな『変化』。
 ……そして『変化』というものは往々にして、良くも悪くも人々に大きなストレスを与えるものなのだった。

 間借りしている紙専門店の3階の自室から階段を下りてきて、シザリオンはすぐに異変に気がついた。
「じーさん!」
 大家であり店主であるモーリス老が、真っ青な顔つきでカウンターに突っ伏し、ぶるぶると四肢を強張らせている。シザリオンは急いでモーリス老の背をさすり、傍の水差しの水を飲ませた。
「……」
「無理せんでいい。俺が店番しとくから、ちょっと横になっとき」
 手振りで『大丈夫』と伝えようとする老人を抱え、シザリオンは寝台まで老人を運んだ。老人はそれでも必死で口を動かそうとしていた。
「……除」
「なに?」
「掃除」
 そういえば、今日は週に一回の商店街の合同清掃の日だ。
「それもやっといたるから! ちゃんと閉店中て札出しとくから」
「……」
 ようやく安堵の表情を見せ、モーリス老は小さな声で「ありがとう」と言った。
 無口な老人にしては、一度の会話でこんなに多くの言葉を話すのは珍しい。少なくともシザリオンがこの老人と知り合ってからは初めてだった。

●『旅人の酒場』にて
「長老衆のハンクス長老から、ラッドシティの戦いの勝利を祝うパレードを行って欲しいという連絡があった」
 卓上に両手をついて身を乗り出し、シザリオンは強い調子で説明を始めた。
「『ラッドシティを救ったのがエンドブレイカーである事を示し、正統なラッドシティの支配者の帰還を市民に広めたい』ってことらしい。
 ……でも正直なところ、支配者扱いは勘弁して欲しいよなあ。ぶっちゃけ、それってどうなんかな〜?」
 シザリオンは首をひねる。
「でもまあ、エンドブレイカーって信頼できるよ、ってわかってもらえたら、ラッドシティの市民も安心できるんは確か。人心安定即ち治安改善ってことで、協力するべきだとは思う」
 パレードは場所を変えて、幾つも行われる事になる。どのようなパレードを行うか、いろいろ知恵の絞りがいがありそうだ、とシザリオンは続けた。
「パレードのまず第一の目的は、『エンドブレイカーがおったらラッドシティは安泰』て思って貰う事。
 威風堂々強さを示してもいいし、公正な正しさを表現してもいいと思う。優しさや親しみやすさを強調しても勿論いい。
 と・に・か・く、今のラッドシティ市民が安心して未来に希望が持てるような、そんなパレードになれば大成功だ」
 パレードの後は、『エンドブレイカーとして』市民の慰撫活動を行って欲しいという。
「今回行ってもらうんは俺の住んでる商店街でさ。わりと治安も良かったし、結構繁盛してたところなんだけど。ほら、急に物事が変わっただろ? 景色も変わったし。やっぱり浮き足だってる。皆不安なんだよ」
 建物や人的被害は無かったが、人通りは減り、どことなく元気がない。
「慰問とか、料理やお菓子を振る舞ったりとか、演劇や音楽披露してもいいし、物語を語ったり……その他いろいろ。
 なんかそういう企画ものが必要なんだよ。上手くやったら、パレードとそういうの、同時に行う事も可能やろうし」

 商店街は、流麗な鉄骨が支えるガラス屋根が頭上を覆い、多種多様の魅力的な専門店が立ち並ぶ。1階部分は店舗で、2階が住居部分。2階部分は回廊になっていて、そこから下をのぞくこともできる。
 商店街を抜けた先には広場があり、中央には、仕掛け時計がある小ぶりの塔が建っていて、時が来れば鐘が鳴るし、任意で鳴らすことも出来る。
 店の主人らは皆、企画ものには慣れていて、ノリもよい。いきなりのむちゃぶりにも当意即妙に応じてくれるだろう。
「危険のあるもんはあかん。未成年の飲酒喫煙その他マナー違反はご法度。それ以外で、なんか工夫を凝らした楽し〜い感じの……パレード。
 ひとつ、よろしく頼むよ」
 そう言ってシザリオンは軽く頭を下げた。


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参加者
NPC:塩の星霊術士・シザリオン(cn0045)

<リプレイ>

●行進支度
 時計のように歯車が廻り、突起が並んだ重りにぶつかって、その拍子におもちゃの星霊がひょこひょこと幾つも顔を出した。動力は車輪で、押す力でおもちゃの星霊のほかにも風船がポンポン飛び出す仕掛けだ。
 そんな素敵な機能を備えた山車を完成させて、職人は注文者の青年に確認を求めた。
「こんなもんかい?」
「ああ、申し分ない」
 赤髪の・アレス(c07737)は心からの賛辞と謝意を述べた。
 広くない工房の一室で、子供たちが「わーい」と歓声をあげて走りまわる。星霊のデザインや色塗りは、職人の小さな娘息子たちによるものだった。
「ぱれーど、たのしみ!」
「たのしみー!」
 唱和する子供たちに笑みを向け、アレスは窓の外を見た。
 斜め向かい、十字路に面した店の2階の渡り廊下で、シザリオンがガラス天井に身を乗り出すゆずスピ・カナタ(c01429)の身体を懸命に支えていた。
 透ける絵の具を浸した筆で、カナタはガラス屋根に踊る星霊たちの絵を描いていく。ガラス屋根の下、見上げている人たちの興味津々の顔がカナタには嬉しい。
「まだまだ、見せてあげましょう、天蓋・天窓絵師の本気を……!」
「だーっ、身を乗り出すなー!」
 そんな風に騒がしくしているシザリオンに、うろちょろと手伝いが必要なところを探していたひよこ捜査官・ナハト(c00101)は、地上階から声を掛けてきた。
「おれもなんか手伝う事ある?」
「そうだなあ、パレードといえば紙吹雪とか……」
「なら買ってくる!」
「あ、代金!」
「大丈夫、おれがちゃんと払うぞ! 金は天下の回りものって言うしな!」
 駆けていくナハトは子供のように無邪気だった。
 商店街の帽子屋で手品の小道具を調達してきたアンティークガーディアン・チヒロ(c30457)は、目を細めて呟いた。
「パレードと聞くとチンドン屋しか思い浮かばないけど……」
 彼本人は太鼓や笛を鳴らしつつ、時々手品を披露するつもりだった。
 と、チヒロの周囲で同じく天井画を見上げていた小さな姉妹が、呟きを聞きつけたか、あどけなく尋ねてきた。
「チンドン屋って?」
「あ、っと、道化師みたいなものだよ、たぶん」
 そう言って彼は帽子をくるりと回転させる。
(「ああ、そういえば昔、迷子になって泣いていた時、色々と芸を見せて慰めてくれたチンドン屋がいた」)
 その後、確か祖母が高い買い物をしていたような……。
 そんな過去を想いつつ、悪戯っ子の顔つきでチヒロは帽子に手品の種を仕込んでいく。
 楽しい事が始まる予感に、商店街を行く人々の硬く引き結ばれた口元が綻んでいった。

●音合わせ
 天蓋から虹色の光が降り注ぐ十字路がパレードの起点だった。
「楽器が出来る人や歌いたい人にも気軽に参加してもらいたいわね」
 ギターの弦を弾いて、常夜の歌姫・ヤト(c04397)が声を掛ける。首から小ぶりの太鼓を紐で提げ、スティックと横笛を手にした耳かき捜査官・フート(c04482)は気合を入れた。
「まさかここで俺の楽才が役に立つとはな」
 スティックをくるくると回し、フートは意気込む。周囲のエンドブレイカーだけに聞こえる声でそっと告げる。 
「支配者とかそんなんじゃなくて、とにかく楽しんでもらおう! それに限る」
「そうですね。エンドブレイカーを知ってもらって信用を得ようとか、もし実の効果で怒りが消えていても楽しさや面白さで心を動かそうとか、そんな賢しい意図がないではないですが」
 同じく声を低めて、黄金獅子花・ガイウス(c00923)が応じた。
「まあ、難しいことは二の次三の次ですよ。今日はただ、楽しんでもらいましょう」
「よっし、どんな曲がいい? 勇壮な曲、それとも静かな旋律?」
 フートは張り切る。相談して、楽隊がまずは音合わせを、と一小節奏でたそのとき。
 たたん、と体重の無いもののように軽い足音が頭上から響いてくる。3階から続く螺旋階段をウェンディが駆け下りていた。
 表情を輝かせ、最後の数段は飛び降りて、楽隊の輪のなかに息せき切って飛び込んでくる。
「皆さん……!」
 パレードのことを耳にしていたものか、説明を乞う事もなく、彼女は花咲くように笑った。
「私にも何か、お手伝いさせて下さいませんか?」
「もちろん」
 その声は、楽隊の背後、完成した山車を曳くアレスのもの。彼はにこやかに告げた。
「あなたにも、あなたの妖精にも」
「はい! 『シー』、お願いします」
 名を呼ばれた妖精がふわりと舞った。
 山車の後ろには、驢馬に曳かれた荷車が続く。デリラの檻・クリスチーナ(c13010)が手配したそれには、とりどりの明るい色の花が入った花篭が山と載せてある。
 ガイウスの喚んだバルカンが足元で跳ねる。ヤトはクリスチーナに頼み、花篭から春の花を分けてもらう。そしてそれをパレードの参加者に配って身に着けてもらった。
 一行は一気に華やかになった。準備が出来たのを見て、シザリオンが下りてくる。
「さあ、パレードの始まりだ!」
 一行は十字路を出発した。

●歌と花と菓子と
「――さてお立会い。これなるは遥か昔の竪琴、奏でるは遠い国の物語――。
 ……よろしければ、聴いてください」
 朗々とした声を響かせ、ガイウスが言葉を謳に乗せた。
 それは広い世界の、大きな斧や大きな樹、大きな水瓶の国の物語。あらゆる場所に悲しみは絶えず、しかしそれと戦う人間の存在も絶えることなく、季節は巡り花は咲く……。
 ウェンディは目を閉じ、何かを思い出す風だった。と、隣のフートの気配に気が付いて目を開く。フートは片手で横笛、片手でスティックを操る同時弾きでガイウスの歌の伴奏を務めていた。
(「こんなの見たことないだろ?」)
 そう言いたげなフートに、ウェンディはくすりと笑みを漏らした。
 道行く人は驚きと感嘆を込めた視線で一行を迎えた。ノリの良い歓声と拍手を送るのは、商店街の人だろうか。クリスチーナは通りすがりの見物人に微笑みかけ、一本一本花を手渡していく。その微笑は終焉を見る彼女の目が、ラッドシティの住人に幸福が訪れるのを確かめたかのようだった。
 荷車の傍に見慣れた人影を見つけて、クリスチーナは見物人の若い女性に声を掛けながら、ちょいちょいと手招きをした。
「格好いいお兄さんから、御嬢さん方に花を――」
 最後まで言い切る前に、クリスチーナも見物人も吹き出していた。やってきたシザリオンの、片頬に大きなノソリンペイントが鎮座ましましていた。
 絵筆を携えたカナタが割って入る。
「ノソリンはですね、『自分のペースで』歩み続けることの象徴、だと思うのです。……どんな時でも。だから、ほっぺに元気の出るおまじない、ワンポイント如何ですか!
 ちなみにこちらは星霊シザリンです!」
「しざりんでーす」
 やけになったように唱和するシザリオンの周囲でしばらく笑い声が響いていた。
「ねえ、シザリオンさん。星霊さんを呼び出してくれない?」
 可愛らしく包んだマカロンや花の形のクッキーを見物人に配っていた春風と舞うアネモネの花・ルーウェン(c05377)が、パレードの後方からシザリオンに向けて声を掛けた。途端に現れる星霊たちの姿に、小さな子供が歓声を上げてたわむれ始める。
 満足げに微笑して、ルーウェンはシザリオンの隣に並んだ。
「ね、後で私の黒兎と白猫のヌイグルミと星霊さんで、寸劇しない?」
「ええよー。脚本は?」
「――大事なのはノリと勢いよ!」
「ええー!?」
「大筋として、春を探しにいく話とか、諦めなければ夢は必ず叶うよ……とか。とにかく希望に溢れた話がいいわね」
 心配げなシザリオンに対し、ルーウェンは朗らかな笑い声をあげた。
 人出はどんどん増えて来ていた。
 白の癒し手・サラフィーベ(c04845)は、見物人に向けて穏やかな笑顔を向けた。いつも柔和でおっとりしている彼女だが、今回はあえて意識して、相手を安堵させられるような笑顔を努めていた。
(「エンドブレイカーとは一体何者なのかと、見極めに来られた方々もおられることでしょう……」)
 見物人の顔に、何かありはしないか。害はなく友好的な存在だと認めてもらいたい。そう願って、サラフィーベの笑みは一層深くなる。小さな子の前でしゃがみこみ、目線を合わせるようにしてお菓子を手渡していく。
「最近、何か具合の悪いところはありませんか? 星霊スピカで癒して差し上げられるものでしたら、言ってくださいね」
 パレードに加わりつつ、サラフィーベは慰撫活動も丹念に行っていった。
 わっ!と一際大きく歓声が上がった。
 頭上の渡り廊下を交互に飛び越え、壁や看板伝いに走り、バク天バク宙を決めていく小柄な人影。いつもの郵便鞄に花や紙吹雪やお菓子をいっぱい詰め込んで、首狩り天使・アンジェリカ(c00224)はスカイランナーの本領を発揮していた。
 鞄の中身を上から振り撒いて、皆の歓声にアンジェリカのテンションは上がる一方だ。
「よーし、アンコールやっちゃうよ〜!」
 空中で回転を繰り返し……流石のアンジェリカも、目が回ってきた。その目が商店街の終着点を捉える。
 広場。輝く時計塔が一行を出迎えていた。

●鐘
「あっ! おれの出番!」
 ナハトは駆け出す。広場中央の三層の時計塔内部に入り、階段を駆け上がる。階段の行き止まりは頭上に鐘がいくつも下がっている吹き抜けで、広場に集まった人だかりがよく見下ろせた。
「鳴らしてええってさ」
「じゃあ、鳴らすぞ!」
 オルガンのような器官をいじると、ぐらり、と鐘が揺れた。そして響き渡るのは、意外なほどに澄んだ音。
 わああぁ……と、どよめくような歓声が起こった。
「皆、元気になったかー!? 楽しいことたくさんして、明日の元気につなげようぜ!」
 ナハトはシザリオンと手分けして夢中で花と紙吹雪を撒く。
 パレードはぐるり広場を一周し始めていた。
「空元気でも良い、ここから、より賑やかになれれば良い。でござるな!」
 チャージングアロー・アーケイシア(c09554)はそう言って、普段は滅多に使わない竪琴を爪弾いた。ステップを踏んで音を立てながら踊る、故郷の集落の踊りを披露する。
 踊りつつ、すでに身動きの取れる場所が少なくなっている広場に集う観衆の顔に、探るように視線を向ける。平和の中にも、警戒を怠ることはアーケイシアには出来なかった。
 時計塔に上ったアンジェリカが、歌い踊るアーケイシアの頭上に小さな花を降らせる。夢幻のような光景に、しばし観衆は見惚れた。
 ……アーケイシアの踊りが終わる呼吸を見計らって、老猫・ヒェンヒェン(c13270)は見つけた空きスペースに向けて軽く槍を振った。
「じゃ、演武でもやるかね。あたしにゃこれくらいしか出来ねェからなァ」
「ボクが相手するよ!」
 大きな鎌を抱えたまま、時計塔からくるりと飛び降りるアンジェリカ。長物同士を一度互いに軽くぶつけあい、次の瞬間、2人は頭上でそれぞれの得物を大きく振り回す!
 生まれた旋風に、観衆はどよめいた。
 旋風が収まったかと思えば、2人の姿は時計塔の階上に届きそうなほどの高みに跳んでいる。それが着地したと思う間もなく、ヒェンヒェンは幾つもの残像を描く突きを放った。
 ――ここでヒェンヒェンらが披露したかったのは、示威行為ではない、エンドブレイカーの『強さ』。華やかな演目混じりに実力を見せ、安心してもらいたかった。
 アーケイシアの竪琴の奏でる独特の旋律に、ヤト、ガイウス、フートらは曲調を合わせた。ナハトの鳴らす鐘は、知らずその調べとリズムを合わせている。
 周囲をグランスティードに騎乗したアレスが巡る。興奮した子供たちが棒を槍に見立てて振り回し始め、チヒロはそのちゃんばらごっこに要領よくつきあってあげていた。
 ルーウェンとシザリオンの即興人形劇は、ボケと突っ込みが織り成す冒険活劇となり、子供だけでなく大人にも大うけだ。カナタのフェイスペイントは子供と、意外にもお年寄りに人気で、待ちの列が出来始めている。
 演奏を小休止したヤトは、クリスチーナの花籠から一輪、花を選び取った。歌舞音曲の満ちる広場の中、嬉しげに視線を行き来させるウェンディに、そっとそれを差し出す。
「一緒に踊りましょう?」
「はい、喜んで!」
 春のデイジー、可憐な一輪をそっと受け取り、ウェンディは笑顔で頷いた。自らの髪に挿したデイジーに、妖精が楽しげに纏わり付く。
 片足を引き、かすかに膝を折って一礼して、ウェンディは踊る。
 ――ダンスの時間だ。
 広場の観客たちも、奏でられる曲に合わせて思い思いに踊り始めた。それを目にしてヤトも笑顔で踊りだす。
「きっともう大丈夫ね。皆この花のように満開の笑顔だもの」

●日常
 遠く鐘の音と、賑やかな音楽が風に乗ってかすかに届く。
 パレードが行過ぎた後の商店街、紙専門店の1階で、夜の鳥・エルドジェイン(c21672)は長椅子で休む店主に声を掛けていた。
「パレードの後片付けはご心配なく。……先日の戦乱の際に、建物の壊れた箇所などありませんか?」
 店主は静かに首を振る。表情から感謝の思いが見て取れた。
「これはパレードで配っているものです。どうぞお受け取り下さい」
 花や可愛らしく包まれた菓子を手に、店主は不思議そうだった。
「……あんた方」
「はい?」
「……エンドブレイカー」
「そうです」
 エルドジェインと無口な店主とのやりとりに、からん、という来訪者を告げるベルの音が割り込む。
「ああ、爺さんの相手をしてくれてありがとうねえ」
「いえ」
 布地屋の店主である女性の背後にはサラフィーベの姿もある。商店街の困りごとを聞いて回るうち、女店主にここに導かれたのだ。
「それにしても、エンドブレイカーってのは普通にあたしらの近くにいたんだねえ」
 その感慨に、2人はそっと微笑した。女店主は言う。
「爺さんは疲れが出たんだろうさ。革命もそうだったけど、その後も色々あったからね」
 ……店の片隅に、違和感があった。『紫煙の樹』。忌避するように手をつけられていない。エルドジェインは安堵する。
(「あれを必要とすることの無いよう、少しでも元気付けられるように」)
(「いずれ立ち去るとはいえ、今このときは皆ラッドシティの一員ですから」)
 立ち上がった老店主を支え、エルドジェインは優しく告げる。
「広場を見物に行かれますか? シザリオンさんが人形劇をなさっていますよ」
「……ありがとう」
 扉を出て、広場へ向かう。広場へ急ぐ子供たちや家族連れに何回も追い越される。
「……大丈夫。変わらん」
「え?」
 老店主はエルドジェインと視線を合わせない。
「……真面目に、毎日。やるだけだ」
「……そうですね」
 広場の入り口に着く。同じようにおずおずと家から出た人々が、次第に表情を明るくしていく。
 様々な変化を経てなお、終わることなく日々を続けていく。それこそが着実に『平和』へと向かう道なのだと、そう信じる事が出来そうだった。



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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:15人
作成日:2012/04/10
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  • ハートフル19 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
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