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紫煙の樹:堕落した商店街

<オープニング>

●紫煙の木についての顛末
 酒場にやってきたのは、紫煙の樹と対峙した者達。
 彼らからもたらされたものは、驚くべきものであった。
 そう、あの紫煙の樹と対話をしたというのだ。
「樹と対話して、俺達は考えたんだ」
 そう語り始めたのは、花揺らす微風・ノア(c18196)。対話のきっかけを作った者だ。ノアの言葉を続けるのは、黒騎士・メリーヌ(c00153)。
「紫煙の樹は……いや、紫の果実は、ラッドシティを平和にする存在ではありません。その兆候も現われています。働かずに樹の実だけ食べている者達が現われているのです」
「実によって、『瞬間的』に平和になることは、決して良いこととは思いませんわ」
 勇猛可憐なお嬢様・アーティリア(c01494)も、賛同する。
「それにね、今、街に生えている枝葉を切り落とせば、その『源』に行き着くかもしれない。そうすれば、また対話ができるかもしれないの」
 そう、平和的な解決を模索する月光ユーフォリア・ベンテン(c01195)が一つの可能性も提示した。
「そのためにも……街の枝葉を切るのを手伝ってくれないか。俺達だけじゃ手に余るからね」
 最後にノアがそう、呼びかけたのであった。

●紫煙の樹を叩き切れ
「ノアさんたちの話は聞いてくれたかな?」
 逆さまな月の妖精騎士・ドロシー(cn0101)がエンドブレイカーたちに声をかけた。
「話のとおり、みんなにも紫煙の樹を切り倒すのに協力して欲しいの」
 とある商店街に生えているという木の情報を、ドロシーはエンドブレイカーたちに説明する。
 商店街の代表であるトロンドは、豪商連合に名を連ねられるほどの実力はないものの、こずるい商売でそこそこの金を溜め込む程度の利益は上げている男だった。
 吝嗇家で皮肉屋と人格的には難があるが、実務面では役に立つ男らしい。
 最近は、彼を含めてどの商人も店を開けてはいない。
「紫煙の実を食べていればあくせく働くことはないと思ってしまったのよ」
 代表者であるトロンドが率先して食べ始めたというのだから、歯止めが効かないのも無理はない。
「樹の周りに商人や家族たちが集まってるの。その人たちは戦えるわけじゃないんだけど……」
 商店街を守るために雇われていた傭兵たちも、引き続き居ついて実を食べているらしい。
 樹を切ろうとすれば、その傭兵たちとも戦闘になることが予想される。
 傭兵たちにトロンドへの忠誠心などはないが、遊んで暮らせるならそのほうがいいと考えている類の者たちだ。
「うまく説得できればいいんだけど……商人さんも傭兵さんも、誰も実を食べることに疑問を持っていないみたいだし、まず無理でしょうね」
 エンドブレイカーたちが戦うべき敵は、紫煙の樹と傭兵たちということになる。
 樹は最初1本だけだが、戦っているうちにすぐに周囲からも集まってくる。
 統率の取れた動きをしているわけではないく一度に現れるのは1、2体だが、最終的には商店街に生えている10本の樹をすべて倒さなければならないだろう。
「紫煙の樹に仮面はついていないけど、能力はマスカレイド並みに高いの」
 仮に相手が樹だけでも、3体と同時に戦うことになればかなり厳しいことになる。4、5体まで増えればまず勝てない。
 樹は紫の果実を大量に放出して攻撃してくるという。
 多数の者が巻き込まれることもあるし、果汁が侵食してきて徐々に体力を削られたりもするらしい。また、果汁は彼ら自身が受けた異常な状態を治す効果も発揮する。
「それと、傭兵は6人ね」
 武器の扱いを覚えたのは最近で、実力はエンドブレイカーたちよりだいぶ劣る。とはいえ、紫煙の樹と同時に戦うことを考えれば油断はできない。
 6人の傭兵たちはいずれも盾を武器としており、魔獣戦士が3人と魔法剣士が3人いる。
「樹はみんなが武器を抜くまでは動き出さないはずよ」
 ただ、人々を追い払うためにであっても、武器を抜けば動き出す。
 至難の業ではあるが、上手な説得をして武器を使わずに商人や傭兵たちを退けることができれば、最初は一方的に攻撃できるだろう。
 あるいは最初から武器を構えて人々を追い払ってもいい。
「商人や傭兵たちには恨まれちゃいそうだし、正直言ってやりにくいと思う。でも、あの樹をこのままにしてラッドシティから出てくことはできないよね」
 直接的ではないが、緩慢に破滅へと向かうこともまた、打ち砕くべき悲劇かもしれない。
 色々な意味で辛い戦いになるだろうが、手伝って欲しいとドロシーは頭を下げた。


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参加者
ラララ・ラグアス(c00405)
狩猟者・トール(c00659)
活殺乱脚・テッキ(c01486)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
朱い小鳥・セシリア(c03521)
高機動兵装単騎迎撃型殲滅侍女・ユノ(c05481)
白銀の月影・ルシエル(c08810)
ドラグニカピロー・レクス(c12720)
灼熱虎・ディアストラル(c14199)
赤鬼ノ腕・キョウ(c25782)

<リプレイ>

●届かぬ言葉
 商人とその家族たちにエンドブレイカーたちは語りかけていた。
 まだ紫煙の樹は動き出していない。
 ゆったりと歌いながら手招きする朱い小鳥・セシリア(c03521)が、商人たちの警戒を解く。
「なんだ、あんたたちは?」
「その樹を切り倒しに参りました」
 商人たちの問いに、銀髪をポニーテールにまとめたメイドが進み出る。
「現在我々の仲間が領主となって街の再建に取り組んでおります。平穏な日々を、笑いあえる日々がきっとやってまいります。そのためにはあの樹を焼き払わねばならないのです」
 高機動兵装単騎迎撃型殲滅侍女・ユノ(c05481)は無表情に告げる。
「どうか、貴方がたの街を守らせて頂きたい」
「言ってる意味がわからんな。何者なんだ、あんたたちは」
「キョウ・ヒナリ。俺たちはエンドブレイカーだ」
 ぶっきらぼうに赤鬼ノ腕・キョウ(c25782)が答える。
「エンドブレイカー様……?」
「今まで誰かから与えられるんじゃなく、自分の力で何かを掴み取ることで喜びや満足感を得ていたはずだ。その実を食べても同じ感情は絶対に得られない。今のアンタ達、死んでるぜ」
「トロンド、あんたは負け人間や。商人は常に時代の一歩先を読まな生きていけへん。あんたは、この幸せが恒久に続くと思っとるんか?」
 胡散臭い口調の活殺乱脚・テッキ(c01486)が、サングラスの奥から商人を見据えていた。
「どういう意味だ? ずっとこのラッドシティが平和になるように、貴方がたがこの樹を生やしてくれたのではないか」
 なにを言っているか理解できない。商人の顔に書いてあった。
「ただで手に入るうまい果実か。成程、そんなんがあったら確かに働く気は失せるかもな? けど生活に要るのは衣食住……金はやっぱ必要だろ」
 狩猟者・トール(c00659)も語りかける。
「自覚ねえかもしれねーが、そうやって、樹にしがみついてサボってる間に、今まで努力して手に入れたものを少しずつ捨てていってるんだぜ」
 赤い瞳の少年は、商人たちにたたみかける。
 けれど、衣服や住居の劣化に対する不満は、木の実が抑えてしまうのだ。
「……それ覚悟の上だってんなら、もう言う事は何もねえな」
 続ける言葉が思いつかず、トールは一歩下がる。
「ね、好きな食べ物ってある?」
 ラララ・ラグアス(c00405)に問われて、商人がうなづく。
「大事な人の心の籠もった手料理だとか、自分の大好物とか、食べていたら幸せだなと感じない? 頑張って働いた後の一杯とかね。その実はそれを感じさせてくれるのかな」
「タダで手に入るんだから、そこまで望みやしないさ」
 ラグアスがうなづく。
「その実を食べることで、平穏には暮らせているのかもしれないけど、幸せだと思いっきり感じる瞬間は得られない気がするよ」
「仕方のないことだ。あなた方エンドブレイカー様が必死で戦って、与えてくれた平和なのだから」
「人は自分の力で糧を得てこそ真の喜びを感じるものだ」
 白銀の月影・ルシエル(c08810)もそう言った。
「確かに以前の暮らしは楽とは言えなかったかもしれない。しかし、始めて商品が売れたり、誰かの役に立って礼を言われた時はどうだった? それをもう一度思い出せ」
 言葉は、商人たちに届いていない。
 それでも言葉を尽くす仲間たちの姿に、トールの心が少し痛む。
 彼が紫煙の樹を切りに来たのは、けしてラッドシティのためではない。
 もっとも信頼すべき友達のため――樹を切ることで、彼が気に入っていた紫煙銃を再び使える手がかりが得られるのではないかと期待してのものだ。
(あいつが残念そうな顔をするなんて、珍しいもんな)
 言葉の届かない様を見ていると罪悪感がつのった。
 トロンドがエンドブレイカーたちを見て首をかしげる。
「ラッドシティのために戦って、この樹を与えてくれたのはエンドブレイカー様だというのに……」
 エンドブレイカーたちは思想を同じくする組織ではない。エンドブレイカーたちにとって、ごく当たり前のことだ。
 けれどラッドシティの住民たちにとっては違う。
 紫煙の樹は『偉大なるエンドブレイカー』から与えられたものなのだ。ただ依存することを非難しても、彼らは混乱するばかりだった。
 ドラグニカピロー・レクス(c12720)はため息をついた。
「つか、商人は働けるし、金もあんのに怠けてるだけだろ? んで、傭兵は忠誠心ねぇし、遊んで暮らせりゃ良いってさ……」
 もう癖になっているため息。けれど、いつも以上に気のめいるため息だ。
 説得は仲間に任せて少年は戦いに備えて精神を統一していた。
「どうやら無理そうだな」
 同じく説得には加わらず、灼熱虎・ディアストラル(c14199)は樹を見張っていた。
「人間楽な生活のほうがいいですからね」
 阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)がうなづく。
「だとしたら、人をダメにする物は叩き潰しておかないとね」
 説得には失敗したのを感じ取り、ハンマーをいつでも取り出せるよう準備する。
 レクスはため息ではない息を、長く吐き出し始めた。
「こうなったら止むを得ない。力尽くでここを退いてもらうまでだ」
 ルシエルが銀のナイフを抜いた。
「はいはい、どかないと一緒にこのハンマーで潰しちゃうよ?」
 ディアストラルがハンマーを振り回して脅しつけると、商人たちが怯えて逃げ出した。
 けれども代わりに傭兵たちが盾を手に進み出てくる。
 そして、そんな彼らの背後で、紫煙の樹が動き始めていた。

●傭兵たちを撃退せよ
 ユノはしずしずと前に進み出た。
 穏やかな足取りとは裏腹に、その全身からは威圧感が漂う。
「退かぬというのであれば、ご容赦を」
 気合が風と化して、傭兵たちを威圧する。
 振り上げた大太刀は、大地を飲み込むほど巨大な獅子の牙を削りだした一刀。荒々しくなぎ払ったメイドの一撃は、傭兵たちを吹き飛ばす。
 仲間たちが傭兵の壁に開いた隙間を抜けた。
 短い呼気とともに『竜』をまとったレクスが動き出した樹を蹴り上げる。
 ディアルトラルのハンマーも、強い衝撃を伴う一撃を叩き込んでいた。
 ルシエルも、光の輪を樹へと放った。
「今回は紫煙の樹が相手と言うことで……。相手にとって不足はないでありますね。いえ、私は謙虚なメイドですので不足があっても一向に構いませぬが」
 優雅に歩を進めるユノの口調には、無表情さとは裏腹に自信が満ちていた。
 ラグアスは商人の屋敷の壁を蹴った。
 盾を飛び越えて、傭兵の頭上から襲撃を仕掛ける。
 連続で振り下ろしたその爪が、まとめて2人を切り裂く。
 その盾の一撃が彼を吹き飛ばそうと振り上げられたが、トールの仕掛けた罠が作動するほうが一歩早かった。
 盾をラグアスは爪で受け止める。
「確かにその実食べてたら今まで感じた苦労とか悲しみとか怒りとか……感じることなく暮らしていけるんだろうね……」
 自分よりも背の高い男を彼は見上げる。
「仕事で上手く頑張れた時ってとても嬉しく感じない? 『出来る』『頑張れた』って感じるのは自分が生きてるって喜びを感じられる瞬間でもあると思うんだ」
 充実感を忘れ去ってしまうのは勿体ないとラグアスは思う。
 苦しむことや大変なことを避けたい気持ちは理解できる。けれど……。
「俺には、君たちが生き生きしてるようには見えない」
 キョウの杭とルーンの矢が彼を貫き、そのまま傭兵は動きを止めた。
 テッキは2人の魔法剣士へと棍を構える。
 用心棒と名づけられた青い棒は、元はただの農具の一部だった。
 丹念に塗り上げたその棒の一撃は盾をかいくぐって敵の足をなぎ払う。
「ここで足踏みしてたら、あんたは一生あのおっさんの下におるんやで? それでええんか?」
 後方からはセシリアの歌が響いていた。 
「飢えて苦しむよりはいいさ」
 1人の膝が崩れ落ちる。もう1人の魔法剣士が倒れるまで、時間はかからなかった。
 ルーンは魔獣戦士に弓を向けた。
「何も働かず、食って寝るだけの生活、人はそれを堕落という」
 投げつけられた盾を、矢で打ち落とす。
 次々に倒れる傭兵たちの向こうで、仲間たちが紫煙の樹の実をぶつけられている。
 ラグアスの爪に切り裂かれ、トールの毒針を受けて1人が倒れる。
 キョウの杭が盾を穿つ。
「コレではまるでこの紫煙の木に飼われている家畜と変わらん」
 ルーンは弦を離した。
 世界樹から作られた弓に番えた矢は刀。ライフエナジーのこもった攻撃は、傭兵のハートを射抜く。
「安心しろ、峰打ちだ、死にはせん」
 どう考えても峰ではなかった。
 傭兵たちが倒れる。
 紫煙の樹はまだ動いている。
 次なる紫煙の樹が姿を現したのは、そのときだった。

●紫煙の樹の脅威
 キョウは腕を覆う鬼の腕を紫煙の樹に向けた。
 傭兵たちを倒す間に、敵はだいぶ傷ついている。
 右腕が変形する。
 中指を立てたような形の巨大な拳。
「人の望む『理想』は叶えてはいけないものなんだ。仮に叶ってしまえば、人は目標を失い前進を止めてしまう。そうなれば死んでいるのと同じだ」
 拳を握り直し、キョウはその中指を樹に突き立てる。
「お前が悪いとは言わない。けど、人にとってお前はあってはならないモノだ」
 言い捨てて、キョウは次の1体へと向き直った。
 2体めの樹に、エンドブレイカーたちはいっせいに攻撃をしかける。
 ルシエルはナイフを敵に向ける。
 冴えた銀色のナイフには波を描くような精緻な装飾が峰側に施されていた。
 星が瞬くような不規則な輝きを放つと、それが輪となって彼女の意のままに動く。
 レクスの蹴りが、いななくような音と共に2体目を叩き折る頃、3体目が姿を現す。
 そして、4体目が現れるのは3体目をまだ十分に弱らせてはいない時点のことだった。
 樹の枝を足場にして、ラグアスが毒の爪で敵を切り裂く。
 棍を軸に跳躍したテッキのつま先から、仕込んでいた刃が飛ぶ。
 切り裂いた裂け目に突き刺さり、2体目が止まる。
 息を吐く間もなく4体目へと仲間たちが攻撃をしかけ、ルシエルの光輪もそれに加わった。
 平和とはその時々によって移り変わるものと、ルシエルは考えていた。
 一瞬の願いだけで平和と言い張れば歪は必ず生まれる。
「まやかしの幸は却って人を不幸にしてしまう。時間はかかっても人の手で掴み取るべきだ」
 視界の端に、さらに2体の紫煙の樹が現れるのが見えた。
 ちょうどその時、光の輪は連続して樹を切り裂き、4体目の敵を輪切りにしていた。
 5体目を倒すよりも早く7体目が現れる。
 爆発する木の実が仲間たちを傷つけていく。弓を引くルーンにいくつもの木の実が着弾し、銀髪の青年を地に伏せさせる。
 セシリアは丈夫な作りのギターを奏でていた。
 楽器としてより鈍器として非常に優れた武器だが、今回は殴打武器としての出番はなさそうだ。
 木の実は爆発し、毒を撒き散らし、エンドブレイカーたちを傷つけていく。
 穏やかで明るい彼女が歌い上げるのは仲間たちを導く戦歌だ。
「この街の平和の為に生み出された紫煙の樹。でも本当にこの街の為に必要なのかしら。わたしはそう思えない」
 倒れたルーンの姿に彼女は心を痛める。
「こんな平和は本当の平和じゃない。本当の平和を取り戻す為にも、紫煙の樹は切り倒す!」
 凱歌が仲間たちを導き、やがて5体目をルシエルの光輪が叩き斬る。
 8体目が現れた。
 テッキへと飛んだ木の実が爆発して、近くにいたユノにも襲いかかった。
 メイドはとっさに獅子の牙で自らを守るが、テッキのサングラスが吹き飛び、小男を打ち倒してしまっていた。
 トールは横目で倒れた仲間を見やる。
「しかし動く木とか爆弾する実とか、何の悪い冗談だよ。ちょっとした悪夢みてえだ」
 いくつも仕掛けた罠に樹は無造作に踏み込んでくる。マキビシを踏んで動きが鈍っても。
 ルシエルの光輪が敵をかすめて脅しつける。
 紫煙の樹は間違いなく強敵だった。けれども、強く、頼りになる男になりたいと願うトールにとって、敵が強いことは諦める理由にならない。
(まずは、落胆してる友達のためになにかできるようにならねえとな)
 罠にかかった敵を仲間が集中攻撃する。
 回転しながらラグアスが連続でジャンプする。着地の瞬間にタイミングを合わせ、トールは毒針を吹く。
 連続で飛ばした針が木の根を貫き、6体目を撃破する。
 ディアストラルは常に樹と接敵して戦っていた。
 無骨なハンマーを振り回しながらも、彼はスタイリッシュであった。
「さぁ、ドカンと一発いこうかな!」
 闘気を放出しながら振り回した得物が7体目を昏倒させる。
 そこでさらに2体。まとめて出現した。
 木の実の1発はハンマーで弾き返したものの、もう1発が彼に直撃する。
 直前に仲間を折られた恨みがこもっていたのか、その一撃はディアストラルがぎりぎりでどうにか耐えられる威力だった。
 ラグアスの爪が8体目を引き裂く。
 敵が倒れた隙を狙って、ディアストラルをセシリアの歌が鼓舞してくれた。
 レクスはフェイントをかけながら戦場を滑りぬける。
 2人の仲間が倒れても、少年はひるんではいない。自信に満ちた表情でさらに敵を狙う。
 ユノが獅子の牙に神火を宿した。
 メイドの歩法は2体の敵を炎で凪ぎ、1体を焼き尽くす。
「このあふれ出るメイドちからには造作もございませぬコト」
 燃え盛る木の側で、彼女は礼儀正しく一礼して見せた。
 レクスは跳ね起きる。
 樹を蹴り上げたか瞬間、少年の姿は空中にあった。
「生活に困ってる人を考えると全ての木を切ることが正しいとは思えないけどな……」
 少なくとも、ここにある樹は折るべきだ。
 回し蹴りから、反動をつけて連続蹴り。竜が吼える声が、レクスのエアシューズから響き渡る。
 樹が真っ二つに折れていた。

●恨んでいい
 敵がまだ近づいてくるかもしれない。
 エンドブレイカーたちもすぐには臨戦態勢を解かない。
 それ以上敵が近づいてくる気配はなかった。
「……樹自体に罪は無いんだけどな。ごめんな」
 狩猟者であるトールは破壊した樹を見下ろして呟いた。
「それでは、紫の実よりも美味しい物をご馳走いたしましょう。遠慮はいりません」
 ディアストラルやルシエルに手当てされている傭兵たちを、ユノは宴会に誘う。
 だが、提案に応じる心の余裕は彼らになかった。
 レクスが彼らの前に立つ。
「恨んでくれても良いよ。でもさ、アンタら働けんじゃん。なら、働こうぜ。こんなん喰って生きてて楽しいのかよ。昔見た夢とかあんだろ? それ目指そうぜ」
 少年の言葉に目をそらす傭兵たち。
「今、ラッドシティは混乱してんだ、上を目指すチャンスだろ。今こそ、アンタらの力が必要な時だと俺は思うぜ」
 まっすぐな憤りは、まだ挫折を知らない少年であるが故にか。
 なにも答えられない大人たちに、彼は背を向ける。
「騒がせたな」
 遠巻きに見ている商人にそう告げて、エンドブレイカーたちは戦場を後にした。



マスター:青葉桂都 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2012/04/21
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