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泉に沸き立つ欲望

<オープニング>

 アクスヘイムにある森の奥。
 日も高く上がった午後、非常に暑苦しい光景を見る事ができる。
「はぁぁ、寒いのも嫌だけど暖かくなると汗かくからなぁ」
「結局、冬でも春でも文句つけるんじゃねーか」
 決して見目麗しくない男達が、水浴びに勤しんでいるからだ。
「まぁ、こうして水浴びできる水温になって良かったですよねー」
 一番若い男が、年かさ2人を宥めるようにとりなす。
 男達は3人とも、ガタイの良い体格をしていた。
 泉の脇に置いてある衣服の横に斧や鉈が見える事から、どうやら木こりなのだろう。
 仕事の合間に汗でも流していたものか、彼らは他愛ない話をしながら顔を洗っている。
 だが、そんな彼らの日常に異変が起きた。
「……ねぇ、お兄さん。イイ体してるじゃない?」
「えっ、うわっ!?」
 突然耳朶をくすぐる声に男の1人が驚く。
 いつの間にか、背後から女に抱きすくめられていたのだ。
「……な、誰だ?」
「この状況で野暮な事を訊くのねぇ。誰でも良いじゃない」
 女はそう言いながら、さらに背中に密着してくる。弾力のある膨らみが女の体温を直に伝えてきて、男は背後の女が何も身につけてない事を知った。
 しかも一糸纏わぬ姿であるのは自分も同じである。男は体温が上がるのを自覚する。
「な、何を……」
 制止の声が上滑りする。全くの口だけ。
「フフ。わかってるクセに……」
 期待に頭がのぼせあがった男は、自分の胸板をまさぐる手が、人間のものでない事にも思い至らない。
 擽るように体を這い回るのは、泉の水分をたっぷりと含んだ白い翼。
 そう。女はホワイトハーピーであった。
 ハーピーは翼で巧みに男の本能を刺激しながら、言った。
「でも、ここじゃ溺れちゃいそう……場所を変えましょうよ。溺れるなら水じゃなくてアナタがいいの」
 そこまで言われて、男はようやく視線を前方に向けたが。
 他の2人も同じように女にまとわりつかれていたので、考えるのを止めた。
 当然、男達にはホワイトハーピーの頭を覆う白い仮面が認識できるはずもなかった。
「泉で水浴びなさっていた木こりさん達が、ホワイトハーピーの集団にさらわれてしまうエンディングが見えましたの……」
 包帯の魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)は、語り始めた。
「ホワイトハーピー達は皆マスカレイドで、最近アクスヘイムにやってきた海賊団なのですが、木こり達を誘惑したのは彼らを仲間に引き入れる魂胆だったようですわ」
 ただ戦力として男手が欲しかったのか、はたまた目的に関係なく男に飢えていたのか。
「さて木こりさん達がどんな目に遭う事やら……マスカレイドの悪事を見過ごすわけには参りませんから、ハーピーの討伐と木こりさん達の奪還。宜しくお願い致しますわね」
 遭遇するホワイトハーピーは4匹。
 ハーピー達の手から無事に木こり達を救出できれば任務は成功となる。
 ちなみにハーピー達は、半数まで味方の数が減ると怯えて逃げる可能性もあるという。
 皆、両腕の翼から真空波を飛ばして攻撃するのが得意だ。
 射程が長い上、被害が1人にとどまらないので注意が必要である。
 またアスペンウィンドで仲間を回復する事もある。
「ちなみに、誘惑されてしまっている木こりさんもこちらを攻撃してくる可能性がありますの」
 木こり達は、皆一様に斧を振り下ろして攻撃してくる。
 周囲を巻き込む可能性はなく射程も短い。大した脅威にはならないだろう。
「さて、木こり達がさらわれた泉は森を奥に進むと見つかると思いますが……ハーピー達のアジトの場所がわかりませんの。まずはアジトを突き止める必要がありますわね」
 そこまで言うと、レフルティーヴァは意地悪く笑った。
「……なんでしたら、どなたかハーピーにさらわれてみますか? 私も後学のためにハーピーの誘惑する術(すべ)をこの目で拝見したいものですわ」
 どうやら、今回もレフルティーヴァはついてくるつもりらしい。


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参加者
幻燈光・アリア(c00724)
煌舞緋蝶・レイラ(c01598)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
緋霧・レイル(c03187)
アイスレイピアの城塞騎士・オルティアーナ(c04910)
不変蒼刃の軍士・フリューゲル(c08174)
花巡蝶・フィリア(c13761)
宵の蒼星・スコル(c26736)
軽業親父・チョウジ(c28499)

NPC:包帯の魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)

<リプレイ>

●囮が2人
 既に日も高いお昼過ぎ。森の奥にある泉では、2人の男がくつろいでいた。
「女をその気にさせるのも、男の振る舞いひとつだからな」
 軽業親父・チョウジ(c28499)はそう余裕ぶって、あたりを気にする事なく水浴びを楽しんでいる。
(「だが、罪無き若者を悪事に手を染めさせるつもりはない。間に合ううちに止めてやろう」)
 一方、阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)は、泉のほとりで持参したお弁当を広げて食べていた。
(「恋人のいる身で誘惑されるわけにはいきません」)
 内心ではきつく自分を戒めているが、普段着が狩人のものであり、森での日常のひとコマにしか見えない。
 そうやって、チョウジとルーンがホワイトハーピーのお出ましを待っているのを、他の仲間達は少し離れた草むらから眺めている。
「男を誘惑するマスカレイドが多発か。一体何を企んでいるのやら……その陰謀を阻止するためにも、俺達のやるべき事やっていかないとな」
 中でも、不変蒼刃の軍士・フリューゲル(c08174)は迷彩服と迷彩バンダナで完璧に擬態している。
「誘惑とはいえ、気の持ちようだろう」
 まぁ、相手はマスカレイドとわかっていないわけだからな。
「しかし海賊として勧誘か……最近海賊の話題が多い。面倒なことになる前に止めないとな」
 そう呟いた宵の蒼星・スコル(c26736)は、水浴びの様子を目を輝かせて見ている包帯の魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)へ念を押す。
「レフルティーヴァは俺達と一緒に追跡だからな。いいな」
 煌舞緋蝶・レイラ(c01598)は、やれやれと苦笑いして零した。
「誘惑されてついていってしまったっていうんは……哀しいかな、男の性、ってやつなんかな?」
 ついていったもんはしゃーなし、ちゃっちゃと行って目覚まして貰お。
「もちろんハーピーへのお仕置きも忘れずに、なん」
「ああ。海賊の一味なら何の遠慮も要らないな。切って捨ててやる」
(「誘惑して連れ去るなんぞ見逃すわけにはいかないからな」)
 緋霧・レイル(c03187)は頷いて、あっさりとした口調ながら決意を語った。
 アイスレイピアの城塞騎士・オルティアーナ(c04910)も、皆の意気込みに同意するかのように低く呟く。
「弱き者を守るために私はここまでやってきた」
 幻燈光・アリア(c00724)は、視力を常人離れするまでに研ぎ澄ませて、泉を監視していたが。
「くっ……」
 と、思わず呻き声を漏らした。
「あ、来ましたね」
 それを聞いた花巡蝶・フィリア(c13761)が、合点のいった表情になって、泉を注視する。
 ホワイトハーピー2体が、泉の中で全裸でいるチョウジへと真っ直ぐに向かっていくところだ。
「美味しい弁当には興味ナシ、ですか……」
 全く見向きもされずにスルーされてしまったルーンは、溜め息をついて服を脱ぎ始めた。
(「できれば、武器や防具を外したくなかったんですけど……仕方ないですね」)

●尾行はたくさん
「ウフフ、お兄さん。良い体してるのねぇぇ」
 後ろから抱きついたハーピーがチョウジの胸板をまさぐりながら、甘く囁く。
「何者だ……?」
 驚きつつも、警戒した様子を見せるチョウジ。
「何者か、なんて……そんなに大事なコト?」
 それよりぃ、イイコトしない?
 両の翼でチョウジの肉体を優しく刺激しながら、ハーピーは誘う。
「ワシで良いのか?」
 ごくり、と喉を鳴らすチョウジ。
 緊張してるように固くなりつつも、嬉しそうに鼻の下を伸ばしている。
「もちろんよ……逞しいヒト、好みなの」
 チョウジはせいぜい演技しながら、ハーピーに引っ張られるようにして泉を後にする。
 置いていた服や武器は急ぐふうを装って抱えるだけで、身には着けない。
「いやぁん、お兄さんカッコいい〜」
「そ、そうですか?」
 ルーンはルーンで、抱きついてくるハーピーに言い寄られて魂の抜けた顔をしている。
「んもぅ、水が冷たくて寒気がしちゃう……ね、アタシお兄さんに暖めてほしいなぁ」
 ぎゅうぎゅうと巨乳を押しつけられて、ルーンは自称鋼の精神力で耐え抜く。
 それでも、あくまで表面上は誘惑に乗ったふりをして、だらしない表情で答える。
「わ、私で良ければ、喜んで!」
「あぁん、嬉しい〜じゃ、早く行きましょ……」
 そして、ルーンもハーピーに急かされながら。
「どこへ帰るか知りませんが、道中、貴方を守れるように」
 うまく言いくるめて、武装と服を回収したのだった。
「追跡開始、ですね」
 アリアは、チョウジが残した光る足跡を頼りに4人の後を追う。
「ルーンさんは、あれですね」
 フィリアも、ルーンの姿を確認しながら尾行する。
 ルーンは、念のために自らの後頭部に透明な印をつけていたのだ。
 ゆえに、濃厚に絡み合いながら歩く男女2組はそれぞれに目立っており、後を追う8人が見失って困る事はなかった。
 また、8人とて、ハーピー達に気取られるような尾行の仕方はしない。
 フリューゲルはたとえ走っても気づかれないレベルにまで気配を殺して動いているし、レイラも隠れるための工夫をしていた。
 ハーピー達は男に夢中になっていても、さすがに道を間違う事はないらしい。
 獣道を進んでいくと、大きめの洞穴が見えてきた。
(「着きましたよ。泉から北西へ道なりに進んだところにある洞窟がアジトのようです」)
 ハーピーに翻弄される演技をしながらも、ルーンは後ろをついて来ているはずの仲間達の意識へ合図を送った。
 入口には、日光を遮るためのカーテンがかかっている。
 さすがは昼も夜もなく男を連れ込むホワイトハーピー達の住まいであった。

●男が3人
 ハーピーに誘(いざな)われて足を踏み入れた洞穴の中は、濃密な臭いが充満していた。
 変わらずハーピーを可愛がるふりをしつつ、周囲に視線を走らせるチョウジとルーン。
 思ったより洞穴の中は簡素で、4つの寝床と何処かから略奪してきたらしい宝飾品の山があるだけだった。
 その寝床の2つを、今もう2体のハーピーと男達が占領している。
(「ふむ、あれが木こり達か」)
「何を見てるの? 羨ましいなら、お兄さんも早く……」
「ああ、わかったわかった」
 心の中で頷きながらも、チョウジは言われるままに空いている寝床へ身を横たえる。
 ルーンもそれに倣って寝床へ腰を降ろした、その時。
「さて、楽しい戦闘の始まりだ」
 意気揚々と言って火のついた矢を放つレイラに続いて、追跡班がぞろぞろと洞穴の中へ侵入してきた。
「あぁん、熱いッ!」
 矢は囮達の相手をするハーピーに刺さり、火傷を負わせた。
「扉はないようだな」
 オルティアーナは口の中で言ってから、入口から一番近い寝床にいるハーピーへ狙いを定める。
 どん!
 そして、木こりと何をしていようが関係ないといった風情で、盾を前に構えての体当たりをぶちかました。
「きゃあああ!!」
 ハーピー達は一様に悲鳴をあげて、木こり達の後ろに隠れた。
 オルティアーナは、入口に下がっているカーテンを見やると。
「代用にはなるか」
 サラサラと紋章を描いて封印を施した。
 ハーピー達の逃走を防ぐためである。

●女は4人
「泥棒かしら。助けて……」
 チョウジ達の相手をしていたハーピー達も背中に胸を押しつけるようにして懇願したが。
「我を思い通りにしようとは無謀な事を」
 ルーンは冷たく言い放つと、ギリギリと弓を引き絞って先制した。
 ドスッ!
 部位破壊と呼ばれる容赦のない一撃が、ハーピーの黒く艶めいた髪に覆われた頭部を襲う。
「あうっ!」
 ハーピーは呻くと、ルーンから逃げるように離れて木こりを盾にした。
「すまんが悪事に手を染める心算はないのでな」
 チョウジもニヤリと笑って軽く飛び上がり、ハーピーに急降下突きを見舞う。
「いやっ!」
 肩から血を流しながら、こちらも木こりの背中に隠れるハーピー。
「止めろ!」
「何なんだあんた達!」
「彼女らはオレ達が守る!」
 ハーピー達を庇いながら口々に捲し立てる木こり3人を見て、アリアは溜め息をついた。
「やはり男の人は大きい方が良いのでしょうか……」
 そんな呟きなど気にも止めない木こりは、力任せに斧を振り下ろす。
 だが、普段からマスカレイドの相手をしているエンドブレイカーたるもの、ただの木こりの攻撃を避けるなどわけもない。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ!」
 あっさりと避けたフィリアは、呪詛光線を放つ。
 どうやら木こりの1人が精神的なダメージを受けたらしく、がくりと膝をついて苦しんだ。
「ユミル、行こう」
 ハーピー達の裸や痴態をいくら目撃しても無表情なスコル。
 星霊ノソリンの耳を掴んで騎乗し、シールドを発動させてから、尻尾でハーピーをペチンとはたく。木こりが光線にやられて後ろ盾をなくした1体である。
「ああっ!」
 ばぃん、と豊満な胸が揺れるのを見て、思わずアリアが叫んだ。
「富の偏在! 富の偏在ですよこれ!」
「……」
 はぁ? という顔をしながらも、オルティアーナは冬の嵐を巻き起こす。
 火傷のハーピー2体が今度は寒さにすくみ上がる。
 そんな彼女らをギッと睨みつけ、なおもアリアは吼えた。
「ま、負けませんからね!」
「何を競ってるんだか……あ痛」
 思わずツッコんだレイラは、ハーピーが震えつつも起こした突風をまともに受けて負傷する。
 だが、自ら放った火のついた矢のおかげで、レイラ以外に被害が及ぶ事はなかった。
「どっこいしょ」
 チョウジは気の抜ける掛け声ながら素早く木こりの眼前へと現れ、延髄斬りを食らわせた。
「うっ」
 倒れ込んだ木こりの意識はない。
「悪いが今回は諦めてくれ。もっとも次の機会などくれてやるつもりもないが」
 レイルはアックスソードでオーラの刃を撃ち出し、凍えている2体へと命中させる。
 既にダメージが蓄積していた2体は、激しく痙攣した後に息絶えた。
「うわああっ!」
 唯一意識のある若い木こりが、滅茶苦茶に斧を振り回す。
 レイルはただただ攻撃を避けるだけで、決して反撃には出ないでいる。
 戦闘時には頭のゴーグルをかけるフリューゲルは、見事な太刀裁きで斬空閃を放った。
 右手で掴んだ野太刀を逆手に持ち換え、捻りながら腰を落とした構えから鋭く振るう達人技である。
「うぁっ!」
 空間ごと斬り捨てられたハーピーは、体当たりの衝撃もあって、おびただしい量の血を噴いてから事切れた。
「ふぇぇん……!」
 残り1体となったハーピーが、半泣きになって入口へと走り出す。
 バン! バンッ!
「……あれっ、あれぇっ?」
 だが、どれだけ体ごとぶつかろうとカーテンがびくともしない。オルティアーナの封印のせいだ。
「おっと、逃げようとするのを見過ごすわけにはいかないな。もっと私と遊ぼうじゃないか」
「逃がしませんよっ!」
 さらには、レイラとフィリアに回り込まれて逃げ道はなくなった。
「あぁぁ……ッ」
 哀れ怯えるハーピーは、フィリアが撃った見えない衝撃とレイラのライフエナジーを籠めた矢によって引導を渡されたのだった。
「お疲れさん」
 仲間達に労いの言葉をかけるフリューゲル。
「大丈夫か?」
 スコルは友人であるレイラを気遣った。
「大丈夫かな? 女の人の色香って怖いね、色んな意味で」
 希望奏でる演奏家・フォルティ(c10453)は、誘惑が解け始めたのかぼんやりしている木こり達の手当てに勤しんだ。
「……何だか悪い夢を見てたんですかね。オレら」
 大人しく治療を受けながら、若い木こりが年かさ2人へと同意を求める。
 気絶していた木こりも、無事に目を覚ましたようだ。
「悪い夢……ねぇ?」
「そうなんだろうけど……ある意味、良い夢だった気がする」
 そんなふうに答える年かさ2人へ、アリアがムッとしてつかつかと歩み寄り。
「いいですかー。大きさだけが全てじゃないんですよー?」
 と、大真面目な顔で説教する。
 それを聞いて、いそいそと服を着ていたチョウジとルーンは、思わず吹き出したのだった。



マスター:質種剰 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2012/04/21
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