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遺跡島攻略戦:切り拓き、解き放つはこの双手

<オープニング>


「遺跡島の偵察に赴かれた皆さんが無事に帰還されて、ほんとうにホッとしました」
 温和な笑みを浮かべ、十二律の魔曲使い・ヤコフ(cn0040)が話の口火を切る。だが、その笑みはほんの一時で――真剣な面持ちへと変わっていた。
「ですが、遺跡には謎の「船」があり、海賊達はこの船をどうにかしようとしているようです。そのために、敵は捕らえた人魚の方々を生け贄に捧げようとしているらしい、となれば……みすみす放っておくことなど、けしてできはしませんね?」
 決然とした口調でそう言っていたヤコフは、酒場に集う仲間達を見回しながら、より熱を込めた声で話を続ける。
「偵察に赴かれた皆さんが無事に帰還されたことで、こちらには攻略に必要な情報が集まっております。のみならず、人魚海岸の海賊船の戦いで、『海賊船』も充分に確保されております。
 となれば――今こそが遺跡島に乗り込んで海賊を倒し、捕らえられた人魚の方々やエンドブレイカーを助け出す好機、ではありませんか?
 遺跡島を目指すべく、現在、海賊船の整備と出航準備が行われています。
 そこで我こそは、という方がおりましたなら、遺跡島の攻略を目ざし、ぜひとも作戦への参加をよろしくお願いします!」
 いつにも増して丁寧に、深々とヤコフが一礼する。
 しばし顔を見合わせていたエンドブレイカー達だが、一人、また一人と、話を聞こうと耳を傾けてくる。そんな彼らにヤコフは会釈してから、再び口を開いた。
「まず、遺跡島に大人数が短時間で上陸するためには、遺跡島の入り江に向かう必要があります。とはいえ、先の人魚海岸での戦いの結果、入り江には海賊船がほとんど残っておりませんので、ここで海戦になることはないと思われます。
 ですが、入り江の倉庫群には、巨獣の荒野から連れてこられたとおぼしき巨獣マスカレイドの姿が数体確認されています。ここで巨獣マスカレイドを放置すれば、移動のための海賊船を破壊されてしまう可能性がありますので、本隊とはまた別に、巨獣マスカレイドの制圧が必要になります。
 それから、これはまだ確認されておりませんが、入り江の中に水棲の巨獣マスカレイドが存在している可能性もありますので、その点にもどうぞ注意なさってください」
 ヤコフはそこで一息つくと、水を飲む間も惜しいとばかりに言葉を次いだ――が。
「入り江から遺跡に向かう道には、防衛用の砦があります。そして、この砦を護る主将は……海賊からの情報によりますと、『バルバの女王様』と呼ばれる、女海賊とのことです。彼女は妙齢の女海賊で、腕も立つらしいのですが――何でも筋骨隆々のバルバしか愛せないうえ、その……愛しかたまでもかなり特殊、なのだとか……。
 ……ということで、この砦は、主将の女海賊と趣味が同じくする女海賊と……これまた趣味を同じくする男海賊、そして筋骨隆々の精鋭バルバが守護しているようです。
 ――ほんとうに、いろいろな意味で砦の攻略は難しい、とは思いますが……この戦力を後背に残存させたまま遺跡に向かうのは非常に危険ですので、なんとか砦を攻略してください。
 砦の攻略に充分な戦力が向かえば、後続部隊はそのまま遺跡を目指すことができます。遺跡の海賊が迎撃準備を整えたり、あるいは逃げ出したりしないよう、砦の攻略はそれを主目的とする舞台に任せ、後続部隊は能う限り最速で遺跡に向かっていただきたいのです」
 耳まで真っ赤になりながら、どうにかそこまで話すと、大きく息をついていた。
 それでようやく気を取り直し、ヤコフは再び口を開く。
「遺跡の内部の様子については、まずは調査隊の報告を確認してください。遺跡から海賊を駆逐するだけでなく、遺跡の確保、謎の船の確保、人魚達の救出と、やるべきことは多岐に及んでおります。
 遺跡それ自体は地下遺跡であるため、海賊の逃亡はけして容易くはないはずですが、遺跡に船があったことから、遺跡が海に繋がっている可能性も否定できません。
 ですから、皆さんには――ここで何をすべきかをよく話し合ったうえで、最善の行動を取っていただきたいのです。そこでもし必要と思うならば、遺跡ではなく、他の場所に向かわれても構いません。
 遺跡島の攻略は、ひとえに皆さん一人一人の行動にかかっております」
 どうか、ご武運を……!
 静かな声音の中に真摯な祈りを込めてそう呟くと、ヤコフは改めてエンドブレイカー達に向かい、深々と一礼していた。


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参加者
剣の群竜士・マコト(c00561)
一般的であることに定評のある・キヨカズール(c01091)
茨十字ノ黒キ鬼・シャルシィリオ(c01478)
銀黒の剣・スパイク(c02584)
幸憑き・クニークルス(c08070)
魁刃・ナガミ(c08545)
社会の理不尽と闘う男・ジョセフ(c11046)
花巡蝶・フィリア(c13761)
凶星氷蝶・リン(c17201)
顕栄の燈・ジークリット(c29208)

<リプレイ>


 入り江を背に、エンドブレイカー達は遺跡を目指し駆けていく。だが、その視界を遮るようにして現れたのは――石造りの砦。
(「……後に続く仲間達の、お役に立てるなら」)
 まずは外観だけでも書き留めておこうと、花巡蝶・フィリア(c13761)が筆記具を取り出そうとした、まさにその瞬間。
「テメェラカ! 砦ニ近ヅコウトスル罰当タリ共ハ!」
 砦から、うって出てきた軍勢がある。勢いよく上がる砂煙に、はっとした彼らが敵の全容を見て取るより前に、
「ソンナコタァ砦ノ四天王、『ぶっちぎりの』ヴァッソ様ガ許サネェゼ!」
 大音声で名乗りを上げた、ひときわ大柄なジャグランツが、むっくりと盛り上がった上腕二頭筋を誇示するように斧を振りかざした。その顔を覆う、マスカレイドの証――オレンジ一色に黒縁取りの蝶マスクを、彼らがちらと見遣ると、
「ヴァッソ隊長、マジカッケーッス!」
「ソノ腕ッ節デ、思イッキリブン殴ラレタイッス!」
 その後ろから筋骨隆々としたジャグランツの一団が、半数ずつ、ハンマーと剣を手に姿を現す。
「ハッ! オ前ラモ、ソノ自慢ノ腕ノ力コブヲ思イッキリ膨ラマシテ、オレト一緒ニアイツラヲブッ殺ソウゼ!」
 ヴァッソと配下の、なんとも暑苦しさが漂うやりとりに構うことなく、
「これ以上は黙ってろ。お前達に、この剣は折れん」
 すでに抜いていた剣に神火を宿し、銀黒の剣・スパイク(c02584)は間近にいたジャグランツへと斬り掛っていた。
「……シビレルゼェ〜」
 快感に肩を震わせるジャグランツを、物言わず太刀で斬り上げていた魁刃・ナガミ(c08545)が素早く辺りを見回せば、
「オレラノ『ダイキョウキン』ガミセモノジャネエッテ、ヤツラニオモイシラセテヤリマス!」
「……フフ、相変わらず惚れ惚れする(大胸筋だ)ねぇ……期待してるよ!」
 ポージングしているバルバたちを眺め、うっとりしている褐色の女海賊の姿があった。
「もしや……」
 不穏な気配に、顕栄の燈・ジークリット(c29208)が後ろを振り向けば、
「アンタたちぃ! あたいの可愛いオークの筋肉ちゃんになんて事してくれるんだい!」
「ぶひ! ぶひぃ!」
 女海賊が鞭を叩く鋭い音と、それに呼応するように嘶くオークの声が響いてくる。
「……マジでここ、こんな連中ばっかなのかよ」
 げんなりしたように、剣の群竜士・マコト(c00561)が目頭を押さえてぼやいたが、
「だーっ、こうなりゃさっさと終わらせる!」
 怒号一喝、手傷を負ったジャグランツにサウザンドアーツで強襲すると、
「目の前に立ちはだかるなら……斬る」
 ひやりとした視線を向け、凶星氷蝶・リン(c17201)も、巨大な魔神と化した影で、眼前のジャグランツを踏みつけにする。
 ――大柄なジャグランツの一団に前途を阻まれ、周囲でも戦端が開かれている。
 さらにその後から、遺跡を目指し続かんとする仲間達の様子は分からない。
 けれど。
「終焉粉砕バクサイガー! 悲しみの分岐点にただいま参上! 仲間の道行きを阻む輩に容赦はしない!」
 こんなことで怖じけはしないと、一般的であることに定評のある・キヨカズール(c01091)がジャグランツ達にバレットレインを浴びせかけていた。
「ナンノコレシキ! 隊長ノ拳ノホウガグットクルゼェ……」
 そう口にし、乱舞さながらに剣をなぎ払うジャグランツをちら、と見。
「ま、俺もちょっと特殊だから、問題ないな」
 茨十字ノ黒キ鬼・シャルシィリオ(c01478)は喜悦の笑みとともに、トリニティスラッシュで斬り掛かる。
「ココハ絶対ニ通すサネェッ! コノ力瘤ニカケテ!」
 ハンマーを持ち上げ、腕の力瘤を誇示したジャグランツへと、
「筋肉それ一つという安い力で何が成しえた物か。その無力さを証明してくれよう」
 冷ややかに挑発し、幸憑き・クニークルス(c08070)が邪剣の群れを召喚していた。


(「どうか、かの御方がご無事であらんことを――そして、囚われた人魚達を救出に迎わんとする仲間達のために」)
 この一投は途を開くため、と社会の理不尽と闘う男・ジョセフ(c11046)がヴァッソ目がけ、手中の斧を投げつける。
「オイオイ、ドウセナラ真ッ正面カラ、ガツント殺リ合オウゼ!」
 足に受けた斧の一撃をものともせず、ヴァッソは最前線に出てきたナガミへと、弓張り月にも似た斬隙を食らわせた。見切る間も与えなかったその一撃に、じり、と足をにじらせつつも、彼は一歩たりとも退く気はないと太刀を構え直す。
「隊長ニ続ケッ!」
 雄叫びを上げて得物を振り回すジャグランツへと、
「ここは絶対に抜かせられないね。後に続く彼らに途を渡すためにも」
 ジークリットは魔道書を繰り、封印儀式を発動させていた。
 後顧の憂いを絶つためにも、ヴァッソ率いるジャグランツの一団を、何としても撃破したいエンドブレイカー達。だが、当のヴァッソは縦横無尽に斧を振り回し、彼らの前に立ちはだかる。
「……邪魔だ、退け」
 その喉元に迫るにはまず配下から、と、スパイクは肩で息をついていたジャグランツに狙いを定め、神火斬妖剣でその命脈を絶つ。
「ヤリヤガッタナァァッ!」
 間近で配下を倒され、激昂したヴァッソをフィリアはまっすぐに見つめ、
「ここで止めます!」
 魔道書を紐解き、呪いの蛇影を放っていた。
「クッ、固メテイイノハ隊長ノ拳ダケ! ソイツヲオレニ振リ下ロシテクダセェッ!」
「……むさ苦しいにも程がある!」
 ヴァッソのもとに駆けつけようとしたジャグランツだが、いち早く前に出たマコトが、ドラゴニックブロウでその息の根を止める。
 ――斬る。
 つよい意志を半月の弧を描く太刀に秘め、己が身へと斬り掛かっていたナガミへと、
「ヤルジャネェカ」
 そうでなければこの身を疼かせる快感など、得られようはずもない――と言わんばかりに、ヴァッソが目を細める。
「クゥッ! 隊長、オレモイキマスゼッ!」
 その不敵な笑みに鼓舞された配下が、ハンマーを振り上げ強襲したところに、
「邪魔するなら、片っ端から朽ちるが良い」
 その脚を狙い、リンが激しく蹴りかかる。
「チッ、ウットウシイッ!」
 ジョセフの巻き起こした桜吹雪に、苛立つ声をあげたヴァッソ。
「オレノ隊長ニ何シヤガンダコラァッ!」
「しまった!」
 その間に後衛にまで突進し、ハンマーを振り下ろしていたジャグランツ――だが。
「後続の憂いを断てるのなら、そして、彼らが囚われた誰かの憂いを払えるなら」
 そうと信じて矢面に立つなど、どうということもないわ。
 そこに駆けつけたクニークルスが、逆手に持った果物ナイフを喉元に突き立てとどめを刺す。
「グワァァッ!」
 溢れる血飛沫と、断末魔の悲鳴を聞きつけた別のジャグランツが、
「ザケンナァッ!」
 剣を振り回し、猛然と押し寄せてくる。
「むっ、仲間達には指一本触れさせん!」
 キヨカズールが向けた紫煙銃の銃口から、雨あられと浴びせかけられた魔力弾を前に立ちすくんだジャグランツへと、
「ブチ撒けさせてやろうか?」
 にっ、と笑ったシャルシィリオが、その身にはしる深傷を狙い、手にしたナイフで斬り上げていた。
「ブチノメスッ!」
 仕返しとばかりに振り回された、尻尾の一撃をものともせず、
「邪魔だよ君!」
 ジークリットは爪を振り立ててジャグランツを左右に引き裂き、その進撃を止めていた。


 後続の仲間達が進むべき途を切り拓かんとするエンドブレイカー達は、その行く手を阻む、砦の四天王を名乗るヴァッソ率いるジャグランツの一団と対峙している。だが、配下の手数を減らし、当のヴァッソにも幾分か傷を負わせはしたものの、
「ソンナムキニナッテモ、何カト筋金入リノ『微笑みの』サンディガ守ル砦ノ門ハ、ソウ簡単ニ越エラレヤシネェゼ?」
 その戦意は、未だ衰えない。
「ほう……なかなかやりよるではないか」
 リンが投げつけた重感のある手裏剣を、ヴァッソは腕から引き抜き投げ捨てるなり、斧を振るって雪崩れる気刃を撃ち出していた。
「真っ正面からと、最初に言ったのは貴様ではないか?!」
 仲間達を傷つけたその一撃に、ジョセフは断罪ナックルでヴァッソの頬を殴りつけて応酬すると、
「グゥッ……イイゾ、モットモット、本気デカカッテコイヨ」
 愉悦に目を細めたヴァッソが、力瘤を見せつけるように斧をかざす。それに呼応し、前線を押し上げようとしたジャグランツへと、
「――その逞しさに心奪われ固執するなど思ったら、大間違いよ?」
 クニークルスはそうと囁き、レギオスブレイドで退かせていた。
 だが、キヨカズールが仕掛けたグランドスライダーに続き、シャルシィリオが向けてきたナイフの刃を、その身に受けたヴァッソは、
「イイネェ……コウデナクチャ、テンデ気持チ良カネェゼ!」
 感じる愉悦を剥き出しに咆吼していた。
「まずいね、こんな敵が相手では」
 ぽつりと呟き、ジークリットはヴァッソを見遣る。攻撃を我が身に受けることにも悦楽を覚え、対峙する相手の本気を誘うために、自らの本気をさらけ出して襲撃する相手が、首領であるならば――
「我が名において命じる! ガルトゥース!」
 先に封じてしまうが上策と、ヴァッソを狙い再び魔道書を紐解いていた。
「ソノ程度デ、『切り裂く』ティグリヲ相手取ルドコロカ、オレヲブチノメスナンテデキルモノカヨッ!」
 真っ向から殺る気がないならとっとと去れと言わんばかりに、斧を振り上げ横切りにしてきたヴァッソへと、スパイクは鋭い視線を投げかけ、
「……面白い。そのくらい本気でなければ、退屈で仕方ないからな」
 楽しげな笑みを浮かべるなり、業焔を上げる剣を振るって反撃したのに続き、ナガミは黙然と、無表情のまま半月斬で斬り掛かる。
(「戦況は必ずしも、こちらに優位と言いきれない状況ですのに……」)
 しかし、そんなナガミの肩が震えるのを、さらに、ここまでヴァッソの猛攻を食い止め続けた前衛の仲間達の顔に浮かぶ疲労の色を、フィリアは見逃すことはなかった。
「どうか、この紋章が皆さんの力となりますように……!」
 切なる想いをこめて、フィリアが描いたコルリ施療院の紋章から引き出された治癒の力に後押しされて、
「……その暑苦しさ、もういい加減にうんざりだしな」
 呟いたマコトが気咬弾を放ち、ジャグランツの威勢を削ごうとすれば、巨大な魔神と化したリンの影が再び、敵の身を踏みつけ撃ち据える。
「アアッ……!」
「……バカ野郎、スッゲェ気持チ良サソウナ面シテ、死ンデル場合カヨッ!」
 事切れた手下を見下ろしたヴァッソが、怒り以上の感情も露わに斧を振りまわす。
「ハハッ、まだだ、まだ足りねぇよ!」
 だが、肩に深傷を負いながらも、シャルシィリオの楽しげに笑う声が戦場にこだまし――その残響が消えるより前に、彼女はヴァッソの巨躯にナイフを突き立てていた。


「コッカラカァッ?! 『一本気な』リーオンガコダワル、ヤバイ勝負ッテノハッ!」
 浅深問わず、その身にはしる傷を増やしながらなお、愉しげにそう口にしていたヴァッソを目の当たりにし、
「クッ……まだあんなに……!」
 再び前に出たマコトが溜息をかみ殺す。
「隊長ッ!」
 そこに駆け寄ろうとしたジャグランツの眼前で、黒い魔女服がひるがえった――と見る間もなく、その胸にクニークルスのナイフが深々と突き刺されば、
「これ以上の狼藉は許さん!」
 キヨカズールのスライディングに、足を払われ倒れ込む。
「まったく、どこまで粘れば気が済むんだい?」
 呆れ口調のジークリットが、再びまとった爪でヴァッソを引き裂くと、スパイクが大きく振りかぶり、千刃発破を放つ。
「真ッ向カラ来ヤガレッ!」
 さらなる愉悦を求め、前線に出るエンドブレイカー達目がけてヴァッソが振るった斧の斬撃は――
「……もうちょい頑張れ。まだ、一緒に立っていようぜ?」
 シャルシィリオの細い身に、したたか食い込んでいた。声もなく、ずるりとその場に倒れ込んだ彼女を庇うように、
「止まりなさい!」
 凛と一喝したフィリアが繰る魔道書から撃ち出された衝撃が、ヴァッソとその配下の手許を撃ち据える。続けざま、マコトが放ったサウザンドアーツに後退を余儀なくされたジャグランツが、苛立ち紛れにリンへとハンマーを振り下ろしたが。
「……我に関わるより前に、優先すべきものがあるのでは? ……ヒヒッ」
 嘲り声と、乱れ投げの爆破手裏剣で報復される。
「隊長ッ!」
 慌てて振り向いたジャグランツの視界をクニークルスのレギオスブレイドが遮る間にも、ジョセフの投げつけた斧がヴァッソの胴に、深々と突き刺さる。
「グフゥッ!」
 その痛みに頬を歪めながら、三日月の鋭利な軌跡を描いたヴァッソの斧が、最前線でかれを抑え続けていたナガミの体に叩きつけられるのと。
「嗜好がどうこうではない。お前達は、俺が斬ると決めた『敵』だ」
 彼が大上段に振りかざした重い太刀の一撃を、頭上からお見舞いしてねじ伏せようとしたのは――ほぼ、同時。
「モット本気デ来イヨ……モット……モット気持チヨクサセテクレヨ……ッ!」
 戦意剥き出しの声に反し、その手から落ちた斧を――再びヴァッソは手に取ることなく、その場に倒れ伏す。
「隊長ォォォッ!」
 その傍らで、身じろぎひとつせず横たわるナガミを踏みつけにせんばかりに、駆け寄ってきたジャグランツへと、
「……近づくな!」
 キヨカズールのバレットレインが、手加減なしで降り注いだ。
「頭を失ってなお手向かうなら、殲滅してやるまでのことよ」
 くくく、と喉奥で笑い、影魔神の術でジャグランツを踏みつけたリンに続き、逃しはしないと、スパイクも千刃発破を飛ばす。立て続けの攻撃を真っ向から受け、落命した同胞をジャグランツ達はちら、と見、
「覚エテヤガレ!」
 捨て台詞を残し逃走する。
「ふん、戦場には常に『今』しかないものを」
 その向かわんとする先が砦や遺跡ではないと見るや、スパイクは全てに興味を失ったように、気怠げな表情を浮かべていた。
「他の、部隊は……」
 シャルシィリオを背負ったマコトの目に、後方で健在を示すように高々と掲げられたクリスティナのハルバードと――遺跡を目指し駆けていく仲間の背が見える。
「どうやら、無事だったようですな」
 周囲を警戒していたジョセフが、一息つきながら言うと、
「だが……ここは一度、引き下がるしかないな」
 ジークリットの言に、この先に進む余力のないことを悟る彼らは首肯し、入り江に戻るべく歩を踏み出していた。



マスター:内海涼来 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2012/08/15
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  • カッコいい10 
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