ステータス画面

わた毛とたわむるもふ毛

<オープニング>

 それは、とある朝。
 すくすくと伸びた綿の木になった実は、はじけて、ふっくらとした白い繊維のボールができる。これが、コットンボールと言われる綿だ。
 機織り娘は、家族で育てている綿の実りを見に郊外の畑へと出掛けて来た。
「わあ、今年もよく出来たわね。これならもう数日置けば採れるかな……♪」
 つん、と指先で綿に触れ、ふふと笑った少女は、視線を上げる。

 その時。畑の脇、木々の生えた茂みの方から、何かが飛び出てきた。
「……っ!?」
 オレンジと、灰色と、白の。まあるい、綿毛のような、何かは。
「……ウサギ?」
 腰を抜かして道端に座り込んだ少女は、そのもこもこの生き物が何であるかに気づいて、ほっと息を吐く。
 なぁんだ、ウサギか。長毛で隠れているから見逃しそうだが、つぶらな目や短い前足が、動くたびにちらちらと覗いている。
 見れば、狩人が捕まえてくるノウサギ達よりもやたらと大きな、犬ほどもあるウサギであったが、こちらが構わない限り、そのうちどこかに行くだろうと思い、少女はそのもこもこ達にふと笑みなど誘われ、しばしころころと走る様を見ていた。
 しかし。
 少女の安堵の表情はあるとき、蒼白に染まった。3匹のウサギ達は、腹でも空かしているのか、はたまたコットンボールに興味を示したのか……綿の木を、その立派な歯でもぎり倒しはじめたのだ!
 がさり、がさ、ばき。
 もふもふ達は、華奢な綿の木を立派な前歯で折り、その巨体が動く度にまた、綿の木がなぎ倒されていく。
「や、ダメ、ここはお父さんの畑……!」
 慌てて娘は、もこもこの、それこそ大きなコットンボールのようなウサギ達を追い払おうと、近くに落ちていた棒きれを振り回して……。

 けれどその、成犬程にも育った大きなウサギには、敵わなくて。

●もこもこ畑の、もこもこ達。
「……でね、その娘さん、ウサギ達にどしーんってぶつかられて、背中をひどく打ってね、立って歩けなくなっちゃうの」
 逢菫の星霊術士・ペルフメ(cn0036)は、そこの辻で出会った少女から視たエンディング告げ。それだけでなく、その後、ウサギ退治に来た狩人達も大きな怪我を負う事になるのだと言って、スミレの瞳を曇らせる。

「ウサギさん、可愛いけど。長毛でね、もっふもふで、それこそ綿毛みたいな子達なんだけどね……みんなが大怪我しちゃうような事をする子は、こらしめないといけないよね? だから、みんなでもふもふ……じゃなくて、うんと叱って、ここが人のいる所で、近づいちゃいけないよって懲りさせないといけないと思うんだ」
 じっと、皆の方を見て、きりりと真面目な顔で告げる。もふもふ、と。つまりまあ、凶暴なウサギを退治してきてくれ、そのついでに、もふもふ達を思い切り撫で回してくればいいんじゃないか、と、そういう趣旨なのだろう。
「えっとね、場所は郊外の綿畑なの。今はふんわり、コットンボールがなったすごく素敵な光景が見られるんだけど、そこに犬ぐらいの大きさの、おっきいウサギさんが3匹、現れるんだ。色はね、灰色と、橙色と、白いの。
 彼らは畑の横手、東側にある茂みの方から綿畑に突っ込んで行くんで、そこに注意していれば、すぐに応戦出来ると思うよ。
 ウサギさんはね、体力あって動きも素早い感じだけど、攻撃はそんなに痛くないかな。
 魔獣戦士の、ビーストクラッシュに似た鋭い牙でかじったりおっきな後ろ足で蹴ってくる攻撃と、ワイルドランページみたいな、どーんってぶつかってくる攻撃をするよ」
 体力ある子達だからしっかりもふれるね! と、目をきらきらさせ。
「機織りの女の子が来るのと、ウサギさんが来るのはそう時間が違わないけど、女の子の方が先に到着するみたいだし……うーんと、被害者の子には『野獣が出るから退治しに来たんだよ』 って言って、避難して貰えればいいかなって。そんなにやんちゃな子じゃないし、きっと話も聞いてくれる筈」
 早めに現場へ到着していれば、畑へ来た女の子へ説明し、退避させる時間も取れる筈だ。

 全部話したかな、と、手元のメモ帳を覗きこんだペルフメは、再び皆の方を向くと、笑顔を浮かべて、ぐっと拳を握る。
「逃げてもらったあとは、思いっきり戦って、悪い子のウサギさんを懲らしめちゃおう! みんななら、それが出来るって信じてるから」


マスター:伊家メグミ 紹介ページ
やんちゃで大きなウサギさんをもふりつつ懲らしめましょう。
という依頼です。
戦闘がっつり、もふもふもがっつりといきましょう。
もふ愛やどのようにもふりたいかなどを、パフォ欄でがんがん頂けると盛り上がるかと。

ちなみにギネス記録のチャンピオンウサギさんは体長1m超えで24.5kgもあるんだそう。超ずっしり。

* なお、女の子の説得場面からリプレイ描写します。

■成功条件
・でかウサギ(灰・橙・白)3匹をKOすること。
 畑の被害程度、ウサギの生死などは、成功条件に含まない。

■エネミーデータ
 でかうさぎ×3
 アンゴラ種に似た、ふっさふさでもふもふの長毛種なうさぎ。犬並みにでかい。
 体力高い、動き素早い、攻撃あんまり痛くない。
 魔獣戦士のビーストクラッシュ、ワイルドランページ相当の攻撃をする。

■フィールドデータ
西側に畑、台車がかろうじて通れる細い道を挟み、東側に低木で覆われた茂みがあります。
敵は東側の茂みから飛び出てくる模様。
図にすると以下のような感じ。

畑畑畑■木
畑畑畑■木←敵
畑畑畑■木

■は細道

■NPC紹介
・サキ(15歳、女)
 近くの村の機織り娘。茶色の髪をお下げにした素朴な娘さん。
 父の畑の様子を見に来た所で、皆さんと会う事となります。
 素直な性格なので、OPの例のように、「獣退治に来たんだ」 等説明すれば、すんなり帰ってくれるでしょう。
参加者
黒騎士・メリーヌ(c00153)
空の宅急便・カナタ(c01429)
ふわぽわ・ルシフェル(c01520)
紅き魔獣拳士・フォティア(c08486)
瓢箪から熊・ルクレーシャス(c13132)
雷氷の魔術士・ヒカリ(c19862)
武豪ドラドの継承者・ガル(c26044)
青硝子の雫・エステル(c26617)

<リプレイ>

●早朝、綿畑にて
 それは、よく晴れた日の早朝。綿畑の調子を見るべく、こざっぱりした装いの大人しげな少女、サキはわだちの刻まれた道を鼻歌まじりに歩いていた。
 少女の父が育てている綿畑は、もうすぐ。遠目にもふんわりとした綿毛が見え、少女は思わず頬をゆるませる。
「あら……?」
 見慣れた風景の中に人影を認め、少女は足を止める。
 そこには、武装した一団がいた。エンドブレイカー達だ。
 なぜ、うちの畑に? ……戸惑う様子を見せる少女に気付いた一人が、仲間へ手振りで示し、彼女へ近づくと口を開く。
「凶暴な獣が出ると聞いて退治しに来ました」
 端的に告げ、黒騎士・メリーヌ(c00153)は念のためにと仲間を振り返ると、口元に指先をあて。その仕草に、分かっているという風に皆頷く。
(「でかうさぎさんが現れる、なんて知ったら残ってしまうかも知れませんからね♪」)
「えっ……!」
 少女は心底驚いた顔をした。それはもう、鳩が豆でもぶつけられたかのように。
「この近くに、猛獣が潜んでいると聞いたので退治しに来ました。これから退治しますので、すぐに避難して下さい」
 呆然とした少女に、かのような理由で退治に来たのだ、と、騎士然としたメリーヌが生真面目に、大人しやかな雷氷の魔術士・ヒカリ(c19862)が真摯な表情で言う。
 そこへ、如何にもここが危険だという説得力を加えるよう、言葉が続く。
「野獣を追い払うまでは危険だから、お家で待っていてくれないかな?」
「大丈夫、ボク達が退治するから。それまでは避難していて下さい」
 如何にも腕に覚えのありそうな人々が、ここは危険だと言うのだ。すっかり凶暴な獣のイメージが備わったのだろう、震え上がる娘に、紅き魔獣拳士・フォティア(c08486)や青硝子の雫・エステル(c26617)が宥めるよう伝えれば、純朴そうな娘はこくこくと何度も頷く。
「み、皆さんお気をつけて……! 無事成功するよう、祈ってます!」
 ぺこりと頭を下げるやいなや、慌てて村へと走っていく。
 後には、風に揺れて涼しげな音を立てる綿の木と、凶暴な獣(?) を倒す有志達の姿ばかりが残された。

 村へとまっすぐ続く道を走る少女の背は、小さな歩幅もあって、ゆっくりと小さくなっていく。
 ふんわりとはじけた綿の木、たっぷり実った麦の穂など、秋の気配を見せ始めた牧歌的な風景が、そこにはあった。背を見送りつつ、ふうと息を吐くエンドブレイカー達。
「まさか本当の事を言う訳にもいかなかったですからね」
 黙っているのも大変だと、空の宅急便・カナタ(c01429)は小さく呟く。お疲れさまですと説明に当たったメリーヌらをねぎらえば、同意するように笑みが返り。
「ルシーちゃん、黙ってるけどどうしたの?」
 ボクがいると説得に欠けそうだから、と、皆の背に隠れるように静かにしていたふわぽわ・ルシフェル(c01520)に、気遣うようにフォティアが視線を向ければ、もふもふな星霊を抱えた少女の無垢な笑みが返る。
「なんでもないの〜。うさぎさんをもふもふするの〜♪」
「そうだね、楽しみだね」
 にこにこと笑み交わす二人。ほのぼのとした空気がただよう。
 時間はもう少しある筈。綿畑と茂みの間に位置する細道に半円を描くよう陣を敷いたエンドブレイカー達は、話す間も敵が進入してくるであろう茂みへと、意識を向ける事を忘れない。
 ……ガサリ。
「「!」」
 木々を揺らす音に、非常事態を告げるよう、武豪ドラドの継承者・ガル(c26044)の表情豊かな獣尻尾がぴんと立った。
 言葉少なながら、皆の話に加わっていた瓢箪から熊・ルクレーシャス(c13132)も、反射的に視線をそちらに向ける。

 ぽーんと、鞠のようにまるまるとした、ふかふかなものが茂みを突っ切ってこちらへと跳ね飛んでくるのを、皆は見た。
 それは灰色と、白と、橙色の。
 まんまるな。
「……毛玉、だ」
 ぽつり、ルクレーシャスが呟く。それはまさしく毛玉と称すに相応しい、もふもふなウサギであった。
「いざ、もふもふ、対決」
 言葉少なに、しかし雄弁に。ガルのもふもふな狼めいた獣尻尾が、好敵手を前にして揺れた。

●跳ねまわる、もふ毛たち
 秋空映す星霊建築の空をバックに、大きな毛玉が宙を跳ぶ!
 ぽぉんと、見事な脚力ですっ飛んでくるウサギの数は、三羽。
「…………ぐっ」
「ぐぐっ」
「ぐぐぅ」
(「あれがアンゴラ型のウサギさん……。本で存在を知りましたが本物を見るたのは初めてですよ、すごい毛玉ですね」)
 ヒカリは思わず目を見張る。確かにあれに触ったらとても心地よさそうだ、と思えるボリュームとふさふさっぷり。
 すたっと着地したウサギは、改めて見ると確かにでかかった。犬程もある毛玉というのは、何とも言えない……迫力? である。
 そして睨みあう……にしては、エンドブレイカーらの表情はゆるみがちで、おだやかですらあったが……3つのまんまると、8人。
「ぐうっ!」
 意を決すよう、ウサギは勇ましく鳴いて、再び動きだした!
 ――素早い!
 それに応えるよう、エンドブレイカーらも動き出す!
「! こっちのが美味しいですよ〜!」
「ほら、こっちにはキャベツもあるよ」
「これで……気が引ける、かな」
 人参をちらつかせ、声を上げたメリーヌ。
 キャベツやぬいぐるみをひらひらと振って気を引くエステル。
 毛糸玉や野菜くずを掲げたルクレーシャス。
 それぞれ、少しでも気を引こうと用意していたものを掲げて誘うようにすれば、動きにかその手に持つものにか、つられたウサギは3人へと向かって勢いよく突進!
 どぉん!
 派手な衝撃音が3つ上がった。
「……っけほ、い、痛いというかすごい、勢いが……!」
「でも……」
「もふもふ、だ……」
 勢いよい突進に胴腹をえぐられて息を詰まらせるも、突っ込んできた毛玉をもふるのは忘れない。
 もふもふっ!
 感触に喜んでいるばかりではない。
「うらやましいの〜、でもヒュプノスちゃんもふわふわなの〜」
 頑張って眠らせてねと、ルシフェルが願いを込めて送り出したヒュプノスもまたぽぉんと高く跳び、ふんわりした毛で灰色ウサギを包み込む。
 ふんわり、もふっと。
(「あらら、どうにも和んじゃいそう」)
 まあるいウサギ達は、ビジュアル的にどうにも憎めなく。思わず笑みなど浮かべそうになりながら、フォティアは駆けより、そして。
 もふっ、がぶり!
 赤き拳士が鋭い牙でもって食らいつけば、びっくりした灰色ウサギはまどろみから叩き起こされ。
「か、可哀想な気もするけど……! クロノスお願いっ」
 僅かに覗く黒目がちの瞳がうるうるしているのにどきどきしながら、カナタは時の星霊を遣わす。
 ぽぉん、ぽぉん! 宙を駆けるウサギめいた星霊は、懐中時計を光らせながら大きな脚で灰色と白を次々キックする!

 ぽぉんと鞠のようにウサギが跳ねる。
 まだまだ夏の暑さの名残を感じる朝に、跳んで、走って、ぶつかって。ちょっと早いスポーツの秋とばかりに体を目一杯動かす人々の表情は、何とも愉しげに明るい。
(「確かにこれを見たら、あの子も、混じりたくなっちゃったかも知れない」) 
 幾度めだろうか。もふもふ対決に動き出したガルは、そんな事を思い。
 蓬髪の下の白き面は常と変わらずとも、ガルは自らの獣尻尾を誇るよう、灰色ウサギへぐいと突き出し、ぶんと振り回す。
「……どう? 私のもふもふ……」
 少女の立派な尻尾に殴られ、ころころと転がるウサギ達はまるで鞠のよう。でももふもふっぷりは負けちゃいないと、ガルはガルで思うのだ。
 星霊に、獣尻尾に……何だかもふもふ度が高い戦場を、男装の少女が走る。
「一羽ずつ確実に倒していこうね」
 仕込み杖は弧を描き、灰色ウサギを撫で斬るよう滑りゆけば、そろそろ長くなってきた追いかけっこに疲れてきたのか、ウサギの動きが鈍る。
「痛っ……いや、ウサギの一撃でなく……主に肩が……」
 やんちゃなウサギの攻撃に左肩を押さえつつも、ヒカリは光の薔薇を散らして華麗に斬り込む。さらに、クレーシャスの槍が起こす竜巻に大きく巻き上げられた灰色ウサギは、ぽてんと地へ落ちると、目を回したかのように動かなくなった。
「ようやく、一羽目、だな……」
 果たして何度やり合ったものかと、すっかり温まって調子が上がってきた我が身を振り返り、成る程体力あるなとしみじみ、灰色ウサギを見下ろす。
 続いて2匹目と、狙い定めたるは白ウサギ。
「うさぎさ〜ん♪」
 きゃっきゃと無邪気な声上げ、ルシフェルはヒュプノスを使役する。ふわり、宙跳ぶもふもふが、地面のもふもふにふわんとぶつかれば、ちらり覗くつぶらな目は眠たげに細められ。出来る事ならば一緒に駆けていって白ウサギをもふりたいところであるが、今は戦いに集中。後のお楽しみの為にも、ウサギをこらしめなければ。
 ころころと、地を転がるウサギと星霊。何だか楽しそうな風景に笑み浮かべ、フォティアは毛玉へ向かって再びガブリッ! ぴゃっと驚きの声上げ飛び上がる白いのも、これまでの追いかけっこ……ぶつかり合いっこ? の影響か、そろそろへろへろの態。
 それでも果敢にぽぉんと飛んで。勢いよい頭突きに、顎をかち上げられたフォティアは小さく声を漏らす。
 どぉん!
「やるなぁ♪」
 体ごと持っていかれるような強烈な当たりにくらり頭を揺らされた赤き拳士は、好敵手でも見つけたように明るく笑う。
 跳んで、跳ねて、噛みついて。泥んこになって遊んだ子供の頃でも思い出すような、体一杯使った戦いは爽快ですらあり……。ほほえみ浮かべたメリーヌも、おのが拳に込めた断罪の力を、やんちゃな子への窘めにと、力強く振るう。
 すぅっと、大きく息を吸い。ぐっと握りしめた拳が突き出されれば、唸りを上げて罪を砕く!
 どぉん!
 くらりぱたんと、白いのが地に転がる。静かになった灰、白二羽の様子を眺めやり……。
(「あ、怒ってる」)
 残る橙は仲間を倒された事にお怒りのご様子。
「ブゥッ!」
「……っ!」
 大きく鳴いて、前歯をむき出しにする姿は、なるほどおっかない。鋭い前歯の攻撃に、エステルは悲鳴をこらえる。
 気付けば、長丁場のぶつかり合いに疲労が重なっていたのだろう、うっすらと滲む血だけでなく、身体も重く感じて。
 それは、何もエステルだけでなく。目の前のウサギも、散々に走り回る間の攻防に足下は既に覚束ない様子だ。
「エステルさん、大丈夫?」
 ふわり、跳んでくるスピカに撫でられ、ふと顔を向ければカナタが心配そうに聞いてくる。
「大丈夫だよ、やっぱり、うさぎさんも獣だね……うん、最後まで頑張ろう」
 エステルの言葉に、カナタが頷けば、お仕置きを完遂すべく、仲間達が猛打を繰り広げていた。
「私の必殺・もふもふですとろーい!」
 そう、最後まで油断しないと、ガルは自慢の獣尻尾を振り、もふもふっと橙ウサギを叩く。
 もふっ! もふっ! もふっ!
 乱打の勢いにさらにふらついた橙に、エステルはそろそろ終わりにしようと、黄金を媒介と毒を持つ蝶を舞わせる。
 きらきら黄金に輝く蝶の群れ。それに続くよう、突き出されるヒカリの氷剣は光の薔薇をまとわせて、華麗なる斬線を刻む!
「この一撃で、華麗に決めます!」
 輝くような一瞬を終えれば、橙もまた、ぽうと魅了されたようにその場へ立ちすくむのであった。

●戦いの、そのあとで〜魅惑にもふもふたいむ
 戦い終えて。
 長丁場に乱れた息を整えた皆は、しっかり懲らしめられて、すっかりおとなしくなった毛玉達を取り囲んだ。
 ……むろんそれは、更なる仕置き、という訳ではなく。

「うわぁ、ふわふわだー!」
「本当にふかふかですね……こんな、全身で抱きしめられちゃうなんて凄いです」
 きゃっきゃと声上げ、すっかりおとなしくなったウサギ達をもふるエンドブレイカー達。
 初秋を迎えた木々のはざま、繁茂する草の絨毯に座って、思いっきりもふる、もふる!
 我を忘れるように、全身で抱きついて、無邪気な笑顔を見せるのはエステル。
 おひさまの匂いのするもふもふは、両手でようやく抱えられる程のボリュームだから、ぎゅっと抱きつくには最適の大きさだ。
「動くコットンボールさん捕まえたっ、です♪」
 機嫌よくメリーヌは言い、顔を埋もれさせるよう、もふっと抱きしめる。
 枕にしたいぐらいのふかふかに凭れていると、そのまままどろんでしまいそう。
「ああ……癒されます」
 ふわふわのボリューム感ある背を優しく撫で、大きな体を抱き上げて、喉元をくすぐるようにしながらヒカリはほうと息を吐く。
「心地良い毛並みです……流石、世に聞く驚異の毛玉ウサギ……今の私の力じゃこの可愛さに打ち勝てそうにないです……」
 常と変わりのない表情で毛玉のようなウサギを抱くガルは、小さく呟きをこぼし。
「……良い感じ……こういうもふもふも、悪くない……」
 言葉を裏付けるよう、感情豊かな獣尻尾がゆらりと機嫌よく揺れる。
「顔から突っ込んでも痛くないなんて、何て柔らかさ……!」
 カナタは待ちきれないとばかり、杖を投げ捨てウサギへダイブ! ぼふっと勢いよく突っ込んでも、たっぷりの長毛が受け止めてくれるから大丈夫。
 その横で、がしっと抱きしめ、わしわしとウサギを撫でるのはルクレーシャスだ。表情には全く出ていないが、連れ帰りたいとか、むしろついて行きたいぐらいだとか、そんな事を思う程度にはご満悦の様子。
(「そういえば、女性、ばかりか……」)
 ふと、気がゆるんだか、ルクレーシャスは今更ながら自らと共に戦った仲間らが女性ばかりである事を意識し、面はゆさに視線を外す。畑を守る為とはいえ、女性を受け止める役とは、何だか申し訳なかったような。

 メリーヌやカナタらは、もふる合間にウサギ達の傷などチェックし、治療を済ます。
 ついでにびしっと、お説教もしてみたが、野生の獣には通じておらぬ様子で。きょとんと見上げる視線に、思わず表情がゆるむ。 
 ようやく動く体力が戻ったのか、ウサギ達がのろのろと動きだす。それを遮らず、皆は自然へと帰るウサギ達をお見送りした。
「メッてしたからね、もうひとのいるとこきちゃだめだよ〜」
 茂みの中へ消えてゆくウサギを見送る仲間らの背に、フォティアが声を掛ける。
「ルシーちゃん、皆、お見送りは済ませた? そうそう、帰りにサキちゃんに報告に行かないとね」
「あ、そういえば……」
「サキちゃん、心配しているかも知れませんね」
 慌てて身支度などし、皆はわだちの残る道を辿りだす。

 見上げれば、夏の気配を残し、秋へと衣替えをしつつある雲が星霊建築の映す空にゆったり流れていく。
 それは、今見送ったあのもふもふ達に似ているようでもあり。
 晴れ晴れとした空の下、一つの出会いと別れを経験した仲間達は、殊更急ぐでもなく、牧歌的な風景の中を村へと歩いていった。



マスター:伊家メグミ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/09/22
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  • 楽しい1 
  • ハートフル11 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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