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死の道を往く

<オープニング>

●死の道を往く
「くそっ……!」
 手綱を強く握り締めながら、ギャロは何度目になるか分からない舌打ちをした。
 時は深夜。廃墟の居並ぶスラム街を、彼の操る幌馬車は駆けていた。治安も道も悪いこの道を、しかも真夜中に行く。用心棒を雇っているとはいえ、傍から見れば自殺行為にしか見えない。しかし、彼はこの方法を取らざるを得ない状況にあった。荷造りに手間取り、出発が予定よりも大幅に遅れてしまったのだ。時間までに商品を届けられなければ、報酬は一切支払われない。その為に、最短ルートであるこの道を選択したのだった。
(「ガキ共が……商品で無ければ殴って聞かせるものを」)
 歯噛みしながら、彼は幌の掛かった荷台を一瞥した。すぐに前へと視線を戻す。
(「こんな薄気味悪いところ、とっとと通り過ぎてしまおう」)
 そう考え、馬に鞭打つ。その時、視界の先に人影らしきものが現れたのが見えた。近付くにつれはっきりと見えたその姿に、ギャロは顔を引きつらせた。
「ボアヘッド……!」
 慌てて馬を止める。そこに、ボアヘッド達は一斉に群がった。槌を手にした個体を中心に、斧や剣を振りかざし、襲い掛かる。
「や、やめろォっ!」
 用心棒に庇われながらも、ギャロは悲鳴を上げた。だがボアヘッド達はそれを聞き入れる事無く、次々に刃を振るってくる。
「ひ、ひぃ……!」
 恐怖に身を震わせながら、ギャロはその場を脱出するべく駆け出した。しかしボアヘッド達がそれを見逃すはずが無く――その身体に複数の刃が付き立てられた。嘲笑を浮かべたボアヘッド達に見下ろされながら、彼は絶命した。

●贄達を救え
「簡単に言えば、大金持ちサマのところに買われた子供達を送ろうとしていた運搬屋が、近道しようとしてスラムを横断しようとしたら、そこに居たボアヘッドマスカレイド共に狩られてしもうたっちゅー感じじゃの」
 杖の星霊術士・リコ(cn0031)の言葉に、エンドブレイカー達は一様に顔を顰めた。
「ボアヘッドっちゅーのは、猪頭で肥満体の獣人族じゃ。身長は人間と同じくらいじゃが、鋭い牙を持っとる。……ギャロが襲撃される場所も大体の時間も分かっておる。皆には今からそこに向かって貰って、マスカレイド共を倒して欲しいんじゃ」
 コップの水を飲み干して、リコはエンドブレイカー達を見回した。
「まあ運搬屋は自業自得かも知れんが、かと言ってマスカレイド共を野放しにしておく訳にはいかん。子供達も居る。どうか、協力してくれんじゃろうか」
 何の罪も無い子供達の命を救う為にも、マスカレイド達を倒さねばならない――エンドブレイカー達は頷いた。
「ようし。マスカレイド共は、ハンマーを持ったのが1体と、その配下で斧や剣を持ったが7体じゃ。それぞれに武器アビリティに似た攻撃をしてくる様じゃの。知能は通常の奴等より低いが、その分力は強い。油断は大敵じゃけぇ、気を付けてな」
 彼曰く、統率のとれた行動を取る事は無いが、その分思い思いに刃を振るってくると言う。
「現場はスラム街の街道じゃ。周りに人は居らん。思う存分戦ってくれて構わんよ」
 そう言って、彼はにやりと笑った。
「運搬屋や子供達の処置は皆に任す。まあ、出来れば子供達は解放してやって欲しいがな。――それじゃ、頑張って来てくれ。宜しく頼んだぞー」
 酒場を出ていくエンドブレイカーの背を、彼は手を振りながら見送った。


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参加者
アクセラレイター・ナハト(c00101)
冒険商人・ダウト(c01015)
紫煙の城塞騎士・ヴィヴィス(c01449)
風疾る斧槍の騎士・アルフォンス(c02075)
大剣の魔獣戦士・ヴェリス(c08657)
黒麒麟・ヤクモ(c09421)
千夜一夜・モルティ(c10075)
花見酒・カルマリー(c10625)
無明長夜・ナポポラッサル(c11541)
杖のデモニスタ・ペテネーラ(c11890)

<リプレイ>

●暗がりに潜む
 人気の無い、スラム街を貫く街道。そこに到着したエンドブレイカー達は2班に分かれ、物陰へと身を潜めた。幌馬車が襲われる地点を中心に、後方に迎撃班、前方に挟撃班。彼等はそれぞれの場所で待機した。
「こんな良い月の夜に、何とも酷い話の連続じゃないか。人売りが行われ、ボアヘッドに襲われ、殺され――」
 迎撃班である花見酒・カルマリー(c10625)は、そう言って酒に口を付けた。
「一番の被害者は売られ行く子供だよ。美味い酒も知らずに逝くなんて、勿体無い話さ」
 その言葉には、幌の中で怯えているだろう子供達への痛心が滲んでいた。愛すべき子供達を救い出す――それは、彼女にとって最も優先すべき事であった。
「しかし人身売買とは気に入らないねぇ。事を終えたら灸を据えてやらないとな」
 肩を竦める彼女に、傍に座る千夜一夜・モルティ(c10075)が頷いた。
「勿論。自業自得、だもの。――それより、子供達は大丈夫かな」
 きっと自分とそう変わらない年なのだろう。その事に胸を痛めながら、彼女は目を伏せた。
 その遣り取りをよそに、大剣の魔獣戦士・ヴェリス(c08657)は街道へと目を遣った。
(「人買いだの子供だの、割とどうでも良い事なんだけど」)
 それらの要素は、彼女にとって大した意味を成さない。彼女が今ここに居る理由は、マスカレイドを倒したいが為であった。
(「まあ、小悪党の吠え面が見られるのは面白いかもね。折角だから、物のついでに逃がさない様にしておこうかしら」)
 その光景を想像しながら、彼女はひとり笑った。
 一方、挟撃班である風疾る斧槍の騎士・アルフォンス(c02075)もまた街道の様子を窺っていた。異変が無いのを確認して顔を引っ込めると、彼は天を仰いだ。
「しかし、可哀相にな。貧乏でも子供は外で遊んでんのが一番だぜ」
 このまま金持ちの下に行ったとしても、幸せが待っているとは限らない――そんな想像が頭を過って、彼は首を振った。
(「大丈夫……必ず、守る」)
 その脇で、黒麒麟・ヤクモ(c09421)は小太刀を手に囁いた。女性と見紛う程の美しい顔立ちの下で、彼は静かに怒りを抱いていた。
(「子供達への所業、許せるものでは無い――絶対に破ってみせる」)
 内心でそう囁きながら、彼は柄を握る手に力を込めた。
 彼から目を逸らすと、紫煙の城塞騎士・ヴィヴィス(c01449)は煙草に火を点した。
(「子供達さえ救えりゃ、人買いはどうなろうと構わないが……相手がマスカレイドでは捨て置けない、か」)
 面倒な事だ、とぼやきながら紫煙を吐く。
(「まあ、死ぬ前に人として法の裁きを受けるべきだからな。それまでは生かすか」)
 そう考えて、彼女は煙草を咥えた口で笑った。
 その時、彼女の耳に微かな物音――幌馬車が駆ける音が聞こえた。
「来たな――」
 囁くと、彼女は剣の柄に手を掛けた。

●幌馬車を死守せよ
 その音は、迎撃班である杖のデモニスタ・ペテネーラ(c11890)の耳にも届いていた。
「幌馬車が近付いて来てるわ」
 彼女の声に、自らも音を確認した無明長夜・ナポポラッサル(c11541)が頷く。
「いよいよ始まりか」
 冒険商人・ダウト(c01015)は不敵な笑みを浮かべた。
 その間にも、幌馬車は街道を駆ける。近付く音に、迎撃班の間に緊張が走った。
 彼等の役割は、停止した幌馬車とボアヘッド達の間に割り込み、幌馬車を護衛しながら戦う事である。ボアヘッド達に幌馬車を奪われる事が無い様、飛び出すタイミングは慎重に見極める必要があった。
「もう少し……もう少し」
 杖を握るペテネーラの手に力が篭もる。彼女は心臓が激しく打つのを感じた。
 その音に混じって靴音が聞こえて来た事に、アクセラレイター・ナハト(c00101)が気付いた。挟撃班の仲間達に合図を送り、物陰から顔を出す。そこにはボアヘッドの群れの姿があった。
「……良い面してやがるぜ」
 身体に浮かんだ白い仮面と猪頭に滲んだ下卑た笑みに、ナハトはそう吐き捨てた。
 ボアヘッド達は眼前に迫る幌馬車を見つめた。無骨な得物をその肩に担ぐ。彼等を前に、幌馬車は大きな音を立てて停車した。
「――今だ!」
 ダウトの声と共に、迎撃班は一斉に物陰から飛び出した。停止した幌馬車の前に陣を展開する。突然の乱入者に、運転席に居たギャロが目を剥いた。
「何だ、あんた等は」
 それを無視して、ナポポラッサルとペテネーラの2人は同時にカンテラを照らした。突然灯った光に、ボアヘッド達もまた驚愕の表情を浮かべた。
「はは、不細工ヅラが悪趣味な仮面つけちゃって」
 ヴェリスが嘲笑する。
「今、それを剥がしてあげるわ。さあ、始めましょう?」
 大剣を振り被ると、彼女は地を蹴った。

●命を売る者、狩る者、守る者
 眼前で繰り広げられる戦闘の傍ら、ギャロは密かに運転席を降りた。ダウトがその身体を組み敷く。彼はギャロの腕を手早く拘束した。
「人買いにちゃんと言っときなさいな、逃げたらぶった切るって」
 飛んできたヴェリスの声に、ダウトは肩を竦めた。
「――だ、そうだ。命が惜しければ言う通りにするんだな」
 ギャロを放置すると、彼は戦線に加わった。
「幌馬車には指一本触れさせん!」
 カルマリーは大剣を大きく振るった。その軌跡が、2体の剣ボアヘッドに刻まれる。
(「大丈夫、すぐに終わる。それまで、どうか耐えてくれ……!」)
 得物を肩に担ぎながら、彼女は幌の中の子供達へ内心で語り掛けた。
 その時、ボアヘッド達の背後から声がした。
「待ち伏せなんていい趣味してんな。だけど今回はお前らの負けだぜ?」
 振り返った剣ボアヘッドへと水の奔流が襲い掛かる。足元を掬われた剣ボアヘッドが倒れるのと同時に、ナハトはぱちりと扇を閉じた。
「へっ、待たせたな。いくぜー!」
 アルフォンスは斧を投げ付けた。それを胴体に喰らって、剣ボアヘッドが大きく身を揺らす。
 挟撃班の姿に、迎撃班の間に笑みが広がった。ここに陣が完成したのだ。前後から挟まれた形となったボアヘッド達が狼狽する。やがて彼等は力任せに刃を振るい始めた。
 最優先は剣を持った者、次が斧を持った者、ハンマーを持った者は最後に――作戦に従って、エンドブレイカー達は各個撃破を試みた。それによって、ボアヘッド達は1体また1体と倒れた。
 ボアヘッド達の攻撃力は高いが、攻撃は分散していた。大きなダメージや状態異常を被った者には適宜癒しが与えられる。エンドブレイカー達は僅かながらも有利に戦闘を進めた。
「当たれよ〜」
 そう呟きながら、ダウトは鞄から取り出したナイフを5本同時に投げた。それはただ1体残っていた剣ボアヘッドへと見事に集中した。悶絶する剣ボアヘッドへと、ヴェリスは間合いを詰めた。
「これで剣はお終いね」
 大剣を横薙ぎに振るう。その一撃は白い仮面にひびを入れ、身体を吹き飛ばした。地に転がる姿に、ヴェリスが笑みを滲ませる。止めを刺そうと踏み出した彼女の前で、剣ボアヘッドは身体を起こした。
「グオオオオ!」
 雄叫びを上げると、剣ボアヘッドはヴェリスへと襲い掛かった。怒涛の勢いで振るわれた剣撃は、ヴェリスの身体に幾筋もの傷を刻み込んだ。
「がっ……あ……!?」
 体力を大幅に奪われ、ヴェリスが膝を折る。その隙を突いて幌馬車に駆け寄ろうと、斧ボアヘッドが彼女の脇を駆けた。
「子供達……守る」
 それを見咎めたモルティが進路を塞いだ。鞭に鋭く打ち据えられ、斧ボアヘッドが後退する。
「馬車には……中に居る子供達には手出しさせないっ!」
 赤い瞳に滲む怒りに、斧ボアヘッドはたじろいだ。
 ナハトから癒しの力を受け立ち上がったヴェリスに、ペテネーラが胸を撫で下ろす。その耳に、ギャロの悲鳴が聞こえた。
「お、おい! 俺まで殺す気か! 助けろよ!」
 必死に懇願する彼に、ペテネーラは冷ややかな視線を送った。
「自分の尻拭いは自分でするのね、いい大人なんだから」
 吐き捨てると、彼女はギャロに背を向けた。
「ふん、お前達の力はこの程度か!」
 言い放ちながら、ヴィヴィスは盾を手に斧ボアヘッドへと接近した。剣を力強く振り下ろす。よろめいた斧ボアヘッドをナポポラッサルが掴み、豪快に投げ飛ばした。体勢を整えつつ、地を転がり動かなくなった斧ボアヘッドを見つめる。
 順調に数を減らすのに並行して、使用出来る癒しの力も減っていた。手早く残りを倒さないとジリ貧になりかねない――そう思案した時、彼は視界の端でハンマーが降り上げられるのを見た。
「しまっ……」
 声が漏れる。必死に身を捩ったが、かわすには至らなかった。重量を伴った強烈な一撃がその身に叩き込まれる。追い打ちを掛けようとする斧ボアヘッドの前に、ヤクモが割り込んだ。
「貴方の相手はボクがします!」
 斧の一撃をすり抜け、稲妻の闘気を纏った一閃を放つ。身体を貫く電流に悲鳴を上げながらボアヘッドは後ずさった。
 ナポポラッサルへの回復がなされる一方、エンドブレイカー達は残る斧ボアヘッドへと攻撃を集中させた。残りが2体、そして1体になり、それも瀕死の状態となる。自らも傷を負いながらも、カルマリーは大剣を振りかざした。
「これでっ……あとひとつ!」
 横薙ぎに払われた斬撃に、斧ボアヘッドは断末魔と共に倒れた。
(「もう少しだ、あともう少し……」)
 顔に散った血飛沫を拭いながら、カルマリーが幌馬車へと目を遣る。用心棒によって拘束を解いたギャロが運転席に乗り込もうとする姿に、彼女は目を剥いた。
「数が減った今の内だ! とっとと逃げるぞ!」
「他の方が戦っているのに逃げるとは……あまり良い行いではありませんよ」
 ヤクモがギャロへと小太刀の切先を向ける。ぎくりと顔を強張らせると、ギャロはそろそろと運転席から降りた。
「いちいち面倒な奴だな……まあ、それは置いておいて」
 ハルバードを振るうと、アルフォンスはハンマーボアヘッドへとその切っ先を突き付けた。
「斧槍の騎士、アルフォンス様の前に出てくるたぁ、てめぇも運が悪かったな!」
 不敵に笑い、彼は盾を構えて突進した。上段から渾身の一撃を放つ。開いた傷口に手を添え、ハンマーボアヘッドは悲鳴を上げた。舌打ちすると、ダウトは鞄から鞭を取り出した。
「早く片付けないと逃げかねないな、あれ」
 よく撓らせ、鋭く放つ。激痛を伴う一撃に身を捩らすハンマーボアヘッドには目もくれず、彼はギャロを睨みつけた。
「そうだな。それじゃ、とっとと片付けるか!」
 片手で扇を開くと、ナハトはそれを鋭く横薙ぎに振るった。そこから生まれた奔流は荒波となり、ハンマーボアヘッドを押し流した。地に倒れたその身体に、立て続けに攻撃が加えられた。
 漸く立ち上がったハンマーボアヘッドは、ふらふらと身を揺らした。焦点の定まらない瞳でハンマーを振り上げる。放たれた一撃をかわすと、ヴィヴィスは間合いを詰めた。
「これで終いだ!」
 裂帛の気合と共に、彼女は闇夜を切り裂く聖光と名付けられた剣を振るった。放たれた剣の乱舞はハンマーボアヘッドの身体へと無数の傷を刻みつけ――そしてその命を刈り取った。

●その道の先にあるものは
「流石に8体は手間だったわねぇ。まあ、丁度良い運動になったわ」
 ヴェリスの言葉と共にボアヘッド達の亡骸から目を逸らしたエンドブレイカー達は、幌馬車の荷台を覆う幌へと手を掛けた。
「や、止めろ! そこには手を出すな!」
 後ろ手に縛られたギャロが叫ぶ。歯噛みしながら、彼は用心棒へと視線を振った。
「くそ、お前等あいつらを――」
 しかし、そこで言葉は途切れた。先程の戦闘で観念したのか、用心棒達も膝を屈していたのだ。
「ええい、腰抜け共め! 幾ら金を積んだと思ってるんだ! こんなガキ共等――」
 尚も喚くギャロに、ナハトは幌を裂く手を止めた。
「おいおい、大人しくしときなよ。抵抗する気なら、この馬車ぶっ潰すぜ? ――徒歩で生きて帰れる自信があるなら、止めやしないけどな」
「それは良いな。命の重みを知るには良い体験になるだろうよ」
 ナハトの言葉に、カルマリーが続いた。ギャロの顔から血の気が引く。
「お前には聞きたい事が山ほどある。彼等の言う通りにされたくなければ、洗い浚い喋る事だ」
 ダウトに胸倉を掴まれて、ギャロは小さく悲鳴を上げた。
 ギャロへの尋問が始まった横で、数人のエンドブレイカーが幌の中へと侵入した。荷物を掻き分け、奥に向かう。その先には、手足と口を拘束された子供達が居た。
「もう大丈夫だ……お姉さん達がちゃんと家に返してやるからな」
 膝を突いて目線を合わせながら、ヴィヴィスは頭を撫でた。優しい笑みにも、子供達は怯えた瞳を返した。
 その横で、アルフォンスはその拘束を解いた。
「心配すんな、お前達を無理やり連れてきた野郎共はもうやっつけたからよ」
「本当?」
 子供の声に、アルフォンスは頷いた。子供達の顔に漸く笑みが滲んだ。
 子供達を伴って出てきた仲間達に、外で待機していた者達が歓声を上げた。ペテネーラは子供達へと駆け寄り、優しく抱き締めた。辛かったでしょう、怖かったでしょう――その言葉に、子供達は涙を零した。
「……無事で良かった」
 声を掛けられて、子供達はモルティへと目を向けた。涙を拭い、有難うと返す。モルティは驚いた様に目を見開いた。恐る恐るその手を伸ばす。ぎこちないながらも優しく撫でられて、子供達は微笑んだ。
 彼等をよそにギャロは歯噛みした。
「おい、そいつ等をどうするつもりだ」
 唸る様な声に、ヤクモが振り返る。
「それは俺達の商品だ。置いて行けよ」
「人を……人を物と見ますか!」
 声を荒げたヤクモに、ギャロは肩を竦めた。
「そいつ等をどう見ようが、お前達には関係ないだろうが?」
「……ボク達を怒らせたいのですか? 命が助かっただけでも十分な報酬だと思うのですが」
 沸き上がる怒りを抑えながら、小太刀の柄に手を掛ける。ギャロは顔を強張らせた。
「貴方達と同じ言い方をするなら――」
 赤い瞳を見開きながら、モルティが声を上げる。
「これが、あなた達の命の値段。そう思えば安いでしょう?」
 モルティもまた鞭を手にした。ギャロは唇を噛み締め、観念した様に項垂れた。

 ギャロと用心棒達を乗せた幌馬車が走り去っていく。その姿を見つめながら、ナポポラッサルは口元を緩めた。ギャロ達を含む全員を救う事。望みだったそれが叶った事に安堵したのだ。しかし、彼がその表情を見せたのは僅かな間であった。
 子供達は一旦街に連れ帰る事となった。エンドブレイカー達と談笑する子供達を見つめながら、ペテネーラは微かに顔を曇らせた。
(「この子達、帰る場所あるのかしら?」)
 売られた経緯を辿れば分かるであろうそれを、彼女は脳内から消し去った。
(「考え過ぎよね、きっと」)
 子供達の未来が、どうか幸せなものであります様に――そう祈りながら、彼女は仲間達と共に帰途についた。



マスター:蜜柑箱 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/05/30
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