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ジャグランツ討伐隊:Octet in hotel

<オープニング>

 ジャグランツ討伐隊の編成計画が進んでいるとは先日の報。
 その討伐隊が下層に派遣されたというのが最新の報である。
「ついては我々討伐隊は協力者を求めている」
 スラムにある廃墟街の一角で、若手の騎士が不安げに身を寄せ合う住人を見渡している。
「ジャグランツの居場所を探索、報告出来る若者はいないか? 無論、討伐は我々がやる。必ず討ち果たそう。誰か土地勘のある者は――」


 扇の群竜士・シモン(cn0063)は酒場に来て早々、エンドブレイカー達の集まるテーブルに紙を広げた。
「ジャグランツがスラムに集結中ってのは周知だろ、あの件が好転しそうだ」
 ジャグランツとは豹頭鳥脚竜尾で体長3m程度のバルバ類である。
 集結を指示している『王』の正体についてはまだ判明していないが、ナイフのスカイランナー・ベルファ(c01267)が予測したとおり、ジャグランツ討伐の為の討伐隊が結成。スラムへ派遣されたそうだ。
「まずはベルファの慧眼に拍手を。で、その討伐隊が何だって事だがー、上手いことジャグランツ討伐してもらえればこっちに有利なると思わねぇか?」
 にやっと笑ったシモンはエンドブレイカー達の反応を見守ってから、紙に竹ペンを走らせる。

「狙いはこうだ。討伐隊は現在案内人募集中。それに乗って廃墟に向かい探索。群れを確認したらマスカレイド化してるジャグランツを先に倒す。で、残りは討伐隊に押し付ける」
 大多数を相手にせずに首領格を叩くのはいつもと変わらない。
 違うのは討伐隊の存在。
 マスカレイドジャグランツ撃破後の残存戦力は、討伐隊の元へ誘導するか、居場所を討伐隊に教えて救援隊に来て貰って片付けてもらおうという作戦になる。
「敵数だが凡そ30、内2体がマスカレイドジャグランツだ」
 まともに戦って勝てる量じゃねぇよなと、シモンが紙に大雑把な円を書き付けた。
「これが討伐隊のいる北にある廃墟街。探索対象はこの街全体……と言いたいが、怪しいのは中央のここ。三階建ての元宿屋だ」
 大人数を収容出来るのはここだけだろうとバツを書き込んだ。
「最上階に南向きの見晴らしの良いスイートルームがあるんで、首領格のマスカレイドジャグランツとお供数体が入るならここだ。裏口から侵入してすぐに厨房があり、側に従業員用の狭い階段があるが……宿屋周囲に巡回がいないはずがない」
 シモンが眉根を寄せた。バツを円で囲み、巡回警戒範囲、と書き込む。
「スイートルームで戦ってるのが巡回に目撃されれば、宿屋に戻って下にいる数十体に呼びかけるのは確実だろう」
 しかし獣の津波が襲ってくるにも少しの時間を要する筈だ。
 その間にマスカレイドジャグランツを倒し、撤退出来れば活路は見える。
「能力は皆が今まで戦ってきた奴らと大差無い。マスカレイドジャグランツ1は大剣、2は大鎌。他は棍棒と剣。全員戦いに飢えてるんで死ぬまで撤退しないし、逃げれば追ってくる。注意点は、討伐隊と一緒に戦闘をしないでくれって事だ。あくまでも立場は『スラムの若者』だからな。怪しまれる」
 マスカレイドジャグランツを討ち漏らしていた場合等は、状況に応じて対応が必要になるかもしれないが。
 と、まで説明してシモンが竹ペンの柄で頭を掻いた。
「ま、そんな心配してねぇけどな。ちょっとアレコレ面倒かもしれないが、やれねぇ仕事じゃないだろ? それに討伐隊の討伐が成功すれば、ガツーンっと今回の事件も良い方向に解決してくだろうしな」
 だから死なない程度に無茶して来いと、シモンが明るい笑顔で告げた。


マスター:山崎おさむ 紹介ページ
ここまで閲覧してくださって有難うございます、山崎です。
ジャグランツ討伐隊が編成されました。
依頼についてのヒントはOP内にありますが、一部補足だけ。

●成功条件
マスカレイドジャグランツの撃破

●巡回について
1組3体程度。組数は不明で移動はランダム。
お互いどこを巡回しているかは知りません。
参加者
太刀の魔法剣士・ゲイル(c00815)
空の宅急便・カナタ(c01429)
大剣のデモニスタ・ネロ(c01471)
不均等な二律背反・ユミナ(c01686)
剣の魔獣戦士・クイン(c04141)
大剣の城塞騎士・クロミア(c04585)
踊るピンクローズ・ルリア(c09842)
九龍娘娘・シンルー(c10380)

<リプレイ>

●A
 南向きの乾いた風が吹いていた。
 丁度良い風だと、黒衣の青年――大剣の城塞騎士・クロミア(c04585)は空になった油樽を投げ捨てると、壁の横に積み上げた藁の小山へ煙草を放った。
「さぁて、戦闘奏曲の始まりだ」
 クロミアの目的は陽動。炎から立つ煙で巡回のジャグランツ達を引き寄せ、憂いなく仲間を戦わせるようにする。同じ煙は討伐隊に場所を報せる合図も兼ねている。
 つまり、見た者を戦いへと誘う狼煙だ。
 頼りない炎が火勢を増してから、クロミアがその場を離れる為に動き出した。巡回に出会えばただでは済まないだろう。合流する前に人知れず倒れたくなければ遭遇しないように道を選ばなければと、身を屈めて走り出す。

 宿屋に程近い、打ち捨てられて久しい酒場に7人のエンドブレイカー達は潜伏していた。
 自分の描いた星霊建築もいつの日かこうして朽ちて行くのだろうかと、スラムの若者風に衣装を調えた空の宅急便・カナタ(c01429)は思いを馳せながら宿屋の概観を眺めていたが、北側の空に煙が昇ったのを見て、目にかかるバンダナを持ち上げた。
「合図だね」
 すると外を窺っていた九龍娘娘・シンルー(c10380)が、しっ、と口の前に立てた指で酒場の外を指した。ジャグランツ退治も三度目ともなれば、慣れたものだ。知り合いもいるならば頑張ろうと心にも決めている。
 大剣のデモニスタ・ネロ(c01471)が示された先に視線を移すと、巡回しているジャグランツの姿が見える。
 ジャグランツ達はきな臭い風を嗅ぎ、煙に気付くと北へと走り出していく。各所にいる巡回達もまっすぐ北へ向かっている筈だ。
「クロミア兄は大丈夫かな〜」
 シンルーの言葉に寸の間、景色を透かし見るようにしていた剣の魔獣戦士・クイン(c04141)。
 アイツなら必ず成し遂げる、信じている――。だが口には出さず、周囲から巡回の気配が無くなった事を確認すると、仲間とともに慎重に酒場を出た。
 今頃、討伐隊も狼煙を見ているに違いない。
「絡んでるのに『軍』や『隊』と名が付いてりゃ気を抜くな、両方付いてりゃ近づくな、ってね」
「しかし、ボスジャグランツだけを倒して去るっていうのは中々面白そうだ」
 撤退時を想定して移動中も地理を見ていた踊るピンクローズ・ルリア(c09842)は、太刀の魔法剣士・ゲイル(c00815)と低く囁きを交わすとお互いに笑みを浮かべた。
「正直なところ、わたしも討伐隊で真っ正直から戦いたかったわね」
 大軍の中にマスカレイドが混ざっているって厄介だと、不均等な二律背反・ユミナ(c01686)は口惜しそうに溢すが、やるべき事はやる。自分達の手で必ずマスカレイドを倒す。
 決意を胸に、エンドブレイカー達は滑るように宿屋の裏口から厨房へ。そして獣の臭いが満ちる階段を駆け上った。

●Overture
 カナタが部屋の周囲の安全を確認した後、エンドブレイカー達は一斉に室内へと突入した。
 卒然の登場に驚愕しているジャグランツは、大きさが違いながら4体。剣と棍棒を持つ2体はエンドブレイカーが入ってきた扉側に。その奥に、肩に仮面を付けた4mにもなろうという大柄のジャグランツが2体いる。武器はそれぞれ大鎌と大剣、間違いなくマスカレイドジャグランツだ。
 その4体は闖入者が武器を携えているのを見て吼え哮る。
 空気を震わす猛獣の咆声を聞いて、姿を見て、感想を呟いた者が二人いた。
「にゃーんって鳴くって聞いてたのに! 違うじゃない……!」
「ん〜前に戦った赤いのや六本腕に比べると……地味?」
 カナタとシンルーの言葉をに、ジャグランツ達が剣呑な笑みを浮かべる。
「面白イ事を言ウ客ダ。しかし客なラバもてナさんとナ。――寸刻みダ!」
 戦いに飢えている彼らにとって、エンドブレイカー達との戦闘は気晴らしの出来る余興でしかない。
 宿屋の中は凶暴な喧騒に満ちている、戦闘音がしようとも、気に止める者はないだろう。
「さっさと倒させて貰うぞ」
 吹き当たる腥風を微風のように交わしたゲイルが、コートの内側から取り出した剣を右手に、刀を左手に構える。
 カナタは仲間が部屋の外へと吹き飛ばされないようにと、扉の前へと位置を変えた。
 エンドブレイカー達とジャグランツ達の激突が始まった。

 『マスカレイドジャグランツだけを倒す』という目標から前哨戦を語るならば、僅差で六分四分。
 ジャグランツが六、エンドブレイカー達が四だ。
 最初に倒す手筈になっている大鎌のマスカレイドジャグランツが防御を固めてしまった事。
 クインの十字剣が大剣のマスカレイドジャグランツにマヒを与えていたが、同じ技を操る者はジャグランツにもいる。後方に位置していた大鎌のマスカレイドジャグランツの元へと飛び出したユミナの脚は、剣のジャグランツから受けた脚砕きで痺れてしまっている事。
 不利とは言い切れないが、戦況は甘くない。

 しかしマスカレイドに屈する訳にはいかない。
 放置しては面倒になりそうだと、痺れる脚を引き摺ってユミナが剣のジャグランツへ対峙する。
 自分の体力を気にしながら魔力の矢を撃ち出そうと杖を振るうカナタの姿を、ちらりと見た。
 彼がいるなら安心して敵へと立ち向かえる。そして敵は全て倒すと、激しさを秘めたまま、ユミナは敵の懐へと一足飛びに潜り込み、ジャグランツの膝を蹴る。体には似合わない大きさの大剣で空気を裂きながら、遠心力を活かして低姿勢からの薙ぎ払いを一撃、更に双撃。剣のジャグランツに深手を与えていく。
 クインと大剣の相対は一騎打ちの様相を見せている。
 痛むのは先程左腕に受けた浅手だけではない。古傷が疼くのを感じながら、クインは試み続けているバトルトークの結果に苦々しい顔をした。
 戦闘前、クインは色々な疑問を抱いていた。ジャグランツ集結の理由は。ジャグランツの王の情報は。何処から来て、何処を目指すのか。
 だが、求めた答えは見えず、殺戮を求め、血に悦ぶ心しか感じ取れない。
 堪らず怒りが込み上げてきたクインは、裂帛の気合を込めて剣の乱撃を閃かせた。
 残る大鎌のマスカレイドジャグランツと棍棒のジャグランツを前衛で相手取っているのはネロだ。
 たかが二匹、修羅場と呼ぶにはまだぬるい。ならばネロの太刀筋も心も揺らぐ筈が無い。攻撃の機を逸し続けている棍棒のジャグランツを横目に、防御に使っていた真紅の大剣を下ろしたネロは冷静に剣群を呼び、2体のマスカイレドジャグランツを裂いていく。

 後方からもエンドブレイカー達の攻撃は放たれ、大鎌が幾度かはそれらを凌げたとしても、当たる時は必ず来る。
「さぁ、今度は逃れられるかしら?」
 嫣然と微笑んだルリアが奏でる魔曲によって。ゲイルの雷撃によって。大鎌の動きがようやく縛られた。癒す術を持たないジャグランツ達にとって、その束縛は死ぬまで枷を付けられたのと同義だ。
 二重の枷に囚われた猛獣へシンルーが舞う。
「九龍族秘伝の神舞……とくと御覧あれだよ〜」
 偉大なる赤竜と名付けた爪と、氷嵐の支配者の名付けた扇を使い分けながら、祖先伝来の型で舞い続けて来たシンルーが深い傷を刻み込んでいく。
 大鎌が徐々に追い込まれていく。倒れるまで、あと一手――。

●Attacca
「おいおい、こんなに見晴らしが良い場所なのに室内ばっかり見てるなよ」
 不意に、剣戟に割って入った声がある。その声はテラスから聞こえた。そのテラスには撤退した筈のクロミアが立っており、驚く仲間を楽しそうに眺めている。
 何故、彼がここにいるのか。
 放火の後は討伐隊へ向かうと仲間に伝えていた彼は、最初から単独で宿屋へ向かうつもりで動いていたのだ。
 道を選び、ここに飛び移るのに時間を要したが、戦闘には間に合った。
「よぉ、大丈夫か? やっぱり、俺も遊ばせてもらいにきたぜ」
「いけない子ね、我慢できなかったの?」
 ルリアがねめつけながら、甘い囁き声で叱る。それに笑い返してクロミアが無造作に大剣のジャグランツの元へと跳ぶ。
「奇襲とは小賢シイッ!」
 咆える獣へ剣を振るい、部屋の端へと吹き飛ばした。
「かはは。吼えてねぇで楽しめよ、獣頭」

 予想外とはいえ、一人の帰還を得てエンドブレイカー達の有利は定まった。

 とはいえ、局地的な不利もあった。
 槍を支えに使うユリアの、ストームチャージで強化された艶やかで楽しげな踊りで傷を癒されたとはいえ、剣のジャグランツの利き腕砕きによって、ユミナの行動は更に制限されていったのだ。雑魚を担おうとしてくれた結果の名誉の負傷とはいえ、看過は出来ない。
「ちょっと厳しいか? 俺も前に出よう」
 だが、庇う為に前に出たゲイルの判断もあり、てこずらせてくれた剣のジャグランツが息絶えた。

 これで流れを掴んだカナタの顔に笑みが戻ってきた。
 すぅっと息を吐いてから結界陣を展開、更に術式を拡散させて無数の矢を形作る。
「宿屋だからね、ベッドはいっぱいあるから安心すると良いよ!」
 言葉とともに放たれた七本の光は、構えられたマスカレイドジャグランツ達の武器をすり抜け、音を立てて身体を貫いていく。最後の一本が消え、一拍後れて大鎌のマスカレイドジャグランツの仮面が割れた。
 幾度もクインと撃ち合い、今や肩で息をしている大剣のマスカレイドジャグランツの身へ、大鎌が倒れた故に転じた矛先が向けられる。
 呼吸を調えたシンルーが軽く跳躍し、幼いながらも龍の威を備えて爪を振るった。衝撃波を受けて血を吐く大剣のマスカイレドジャグランツ。
 そして大剣には大剣を――。
 ユミナの、クロミアの、ネロの。
 三振りの大剣が、最後のマスカレイドジャグランツの身体を切り分けた。

 仮面が砕けた時の、パァン、と響いた音に弾かれたようにゲイルが叫ぶ。
「目的は達した、さっさと逃げるぞ!」
 マスカレイドはエンドブレイカー達の手によって討ち果たされた。
「ふふっ、今日の主役は私たちじゃなかったわね」
 そう、ここからは討伐隊の仕事だ。
 棍棒のジャグランツの横を抜けながら、ルリアは手早く唇に薄紅色を乗せ直す。テラスの柵に足を乗せ、口紅を仕舞いながら、じゃあね、とからかうようにルリアが室内へ投げキッスを送った。
 追い縋ろうとする棍棒のジャグランツをいなし、エンドブレイカー達は次々に隣接している家屋の屋根へと跳躍していく。高所から飛び降りるのは一瞬だ。着地したクロミアが早くと手招きするカナタから目を移し、テラスを振り返りざまに声を投げる。
「暴れ甲斐のある連中が近づいて来てるから、そっち相手に暴れてきな」
 まだ残っているジャグランツがエンドブレイカー達を追って来ようとも、向かう先が討伐隊の元である事に変わらず、獣達が待ち望んだ戦場へ誘う事にも変わりない。
 八人が奏でる闊達な奏曲は終わった。
 近付いてくるのは、討伐隊が奏でる獣達への重厚な葬送曲だろう。



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いまいち
参加者:8人
作成日:2010/06/01
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