ステータス画面

人食い熊があらわれた

<オープニング>

 都市国家の下層域。その廃墟となった一画に畑がある。
「暗くなって来たね。今日はこのくらいでいい?」
 少年は上を仰ぎ見る。天井から光は弱々しくなり、今が夕方である事を告げている。
「それじゃあトニー、帰って夕飯にしましょう」
 母親は応えると、農具に付いた土を拭い取り、帰り支度を始める。
「僕も手伝うよ」
 生活は貧しかったが、頑張ればいつか報われると、懸命に働いていた。
 2人が森を横切る道に差し掛かった時、真横に巨大な影が映った。
「あれ? なんだろう」
 トニーが不審に思い、影に近づいた瞬間、小さな身体が宙を舞った。
 母親の悲鳴が響く。
 駆け寄って、トニーを抱き起こす母の後ろから、大きな影が迫ってきた。
「農家の母子が熊型のマスカレイドに襲われる事が分かったわ」
 剣の城塞騎士・フローラ(cn0008)は、形の良い胸部に掌を当てると、事件の詳細について語りはじめる。
「事件が起こる農地だけど、辺りにはこの母子しか、暮らしていないみたいね」
 農地の近くには森が茂り、作物を育てるのに適した場所が少なめらしい。
「このままでは、熊マスカレイドは、突然に森から現れて、2人を食い殺してしまうわ」
 フローラは、そう言うと、マスカレイドは、もとの熊よりも、ずっと強くなっているから、遅れをとらないようにと、注意を促す。
「熊マスカレイドの身体の大きさはかなりのものね。そして、鋼のように頑丈な身体を備えもち、強力な攻撃を繰り出してくるわ」
 敵はたった1体で、機敏な訳ではなく、特別な能力を持っている訳では無い。
 しかし、強靭な身体にダメージを与える事は、かなり難儀で、力任せの打撃や、鋭い爪での引っ掻きは、接近戦の大きな脅威になるだろう。
「夕暮れ時に母子のそばに居れば、熊には出会うことは難しくなさそうね」 
 だが、母子のそばで戦いを始めれば、戦いに巻き込んでしまう危険性がある。
「敵を倒すだけではないわ。守るべき人を、理不尽な暴力から守る事も私たちがやらなければいけない事よ」
 そう言ってフローラは、姿勢を整えて、話を終えるのだった。


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参加者
弓の狩猟者・ゼロ(c00611)
ハンマーの魔獣戦士・アマラ(c01414)
剣のスカイランナー・レイジ(c02370)
大剣の魔獣戦士・アルカナ(c02976)
大鎌のデモニスタ・クリスティーナ(c03928)
ナイフの魔法剣士・ポタージュ(c04734)
杖のデモニスタ・リゥ(c05591)
太刀の狩猟者・ヤマナ(c05779)

<リプレイ>

●出会い
「誰か来るよ。おおぃー」
 作業の手を止めて駆けてきた少年に、ハンマーの魔獣戦士・アマラ(c01414)は伝えると、大きな笑顔を見せる。
「このあたりに、でっけー熊が出るらしくってなぁー! あたいらはそれを狙ってきた冒険者なんだぜぇー!」
「あの人も、おばさんの仲間なの?」
 少年は、熊の話に、大げさに身震いしてみせながら道の先を指差した。少年が指差す方向に視線を向けると、体格の良い男が真っすぐに近づいてくる。
「おう、早いな、アマラ。今日は熊鍋って、聞いてな」
 ナイフの魔法剣士・ポタージュ(c04734)が、陽気な調子で言うと、少年は眼球を左右に動かし、ポタージュとアマラを見比べる様にの見つめている。アマラの身長の方が、やや高く見えるらしい。
「こんな何も無い場所にどうされたのですか?」
 息子が話している様子を見て、作業の手を止めた母親もやって来て挨拶を交わす。
「あと、トニーは、ちゃんと、ご挨拶はしたのですか?」
 そう言って、アマラをおばさんと呼びつづけるトニーにツッコミを入れると、おねえさんと言い直させる。
(「……お節介な人たち」)
 杖のデモニスタ・リゥ(c05591)は、そんなベタな様子を、樹の蔭から、羨望とも呆れとも分からない複雑な感情を抱きながら見つめていた。
「そんなところで、何をしているのですか?」
 何をするわけでもなくぼうっとしているリゥの姿を認めた母親が、大きな声をあげる。
「……ぁーぅ、熊を見たことがない……でしょうか?」
 いまはやることなんて無さそう……と、思いながらリゥは、言葉少なく用件を語ると、口を閉じる。
 そんな立ち話を重ねているうちに、天井からの光は僅かに色味を変え、夕方が近づいて来ている事を感じさせる。
「熊殺し……武勇の証にはなる、か」
 続けてやってきた、太刀の狩猟者・ヤマナ(c05779)は、そう言って気合いを入れる。大剣の魔獣戦士・アルカナ(c02976)も、巨大熊を倒して名を上げたいのだと、軽く頭を下げる。
 熊を倒したい動機はそれぞれだったが、続々と現れる訪問者は、熊のうわさが真実だと思わせるには充分な根拠だ。
 弓の狩猟者・ゼロ(c00611)が、熊は凶暴だから充分に気をつける様にと注意を促す。
 そんな凶暴な熊が現れたら、被害に遭うのは自分たちだと、母子は不安に思い始めていた。
「あーゴホン、んん。よろしければ、私達に警護をさせていただけますか?」
 母子の不安な気持ちを汲み取って、大鎌のデモニスタ・クリスティーナ(c03928)は、髪をかきあげながら優しい口調で言った。
「おねえさん、ありがとう!」
 トニーの素直な言葉に続けて、母親は夕食のお世話をする位しかお礼はできないけれど、本当に良いのですか? と心配そうに口を開く。
「これも何かの縁です。何か困ったことがありましたら協力します」
 クリスティーナが優しい口調で、きっぱりと言い切ると、それでいいよなと、念を押すように皆の顔を見回す。
「ああ、絶対に守ってみせるさ!」
 剣のスカイランナー・レイジ(c02370)は誰にも理不尽な死は迎えさせない。そう力強い気持ちを込めて言葉を返し、他の者も勿論そのつもりだと頷いた。

●夕刻
 出発が近いと踏んだヤマナが化粧を施していると、トニーが不思議そうに視線を向けているにに気づいた。
「ああ、これは、武勇の化粧をなんですよ」
 ヤマナはそう言って、黒竜が氏族の祖霊である事を説明すると、ついでに武勇の尊さなんかについてもしっかりと語る。
「何から何まで、ありがとうございます」
 感謝の気持ちをいっぱいに込めて母親は言うと、収穫したばかりの野菜を背負う。
「それじゃあ、君たちはそっち側を……」
 熊が出ると予測される森側にエンドブレイカー達、道の中央付近を母子が歩く様にしようと、ゼロが提案する。
「まぁ、これなら熊が襲いかかってきても大丈夫だな」
 クリスティーナがそう言うと、アマラやアルカナも同意を示す。あとは熊の気配にさえ注意を払うだけだ。
「なんだか大げさだね」
 熊は怖かったが、完璧に周りをガードされるのもやはり照れくさい。
「でも、熊に襲われたら大変だろぉー」
 恥ずかしそうに言うトニーに、アマラは後ろを振り向くと、両腕を広げて襲いかかる仕草を見せてやると、トニーも恐怖を忘れて笑う。
(「何の罪もない人を、死なせるわけにはいかないの」)
 アルカナは、そんな子供と接するほんわかとした雰囲気も悪くないと思ながら、戦いに向けて気持ちを引き締める。
 周囲は少しずつ暗くなり始め、前方の森の中で大きな影が動く気配が見られた。
「観測結果を覆そう」
 ゼロはマスカレイドとの接触が避けられないと確信すると、母子の位置を確認しながら弓を引き絞る。
「落ち着いて、下っていてください」
(「これから……、熊さんの命を取る、です」)
 ヤマナが母子の歩みを制止し、前に進まない様に注意を促すと、リゥも小さく呟いて、母子の視界を遮るように杖を構える。前方からの気配は間もなく、旺盛な殺気を伴って膨れ上がる。

●激突
 茂みから現れた熊マスカレイドが巨大な体を晒すと、待ち構えていたゼロが矢を放ち、さらに二の矢を番える。
「痛くしないようにするのよ。少しの我慢なの」
 アルカナは念じるように呟き、両手で大剣を構えたまま前に踏み込むと、荒々しく薙ぎ払う動きで大剣を振るう。予想外の攻撃を受けた熊は咆哮を上げてきょろきょろを周囲を見回すばかりだ。
「このまま一気にゆくんだ!」
 アルカナと入れ替わる様に、レイジは飛び出すと、剣で縦に割る軌跡を描く。瞬間、手伝わる強い衝撃。
「気をつけろ! ものすごく固いぞ!」
 攻撃を当てることは難しくないが、一気に大きなダメージを与える事は難しいことを直感した。
「よぉしーこのまま押してゆくぜぇー」
 だが、悩んでいる時間はない。アマラも前に飛び出ると、ケモノと化した腕を乱舞させて、熊に無数の傷を刻む。瞬間、熊は大きく脚を踏み出し、そのままの姿勢で肩からアマラに激突する。
「……くっ! かなり効いたぜぇー」
 巨体の体当たりを食らったアマラが漏らす。だが、その傷を癒してくれる者は居ない。
(「ただでは済みそうもないですね」)
 ゼロの脳裏に不吉な予感が浮かんだ。ここまでは作戦通り、手数とスピードで戦いの主導権は握っていたが、熊の強力な攻撃を何発も耐えられる者は居ないだろう。そして、熊の頑丈な身体は戦いの長期化を予感させる。
 ヤマナの召還したファルコンスピリットがマスカレイドに急降下の一撃を加え、仮面に覆われた熊の顔を見る。熊の気を散らせば攻撃が誰かに集中することは防げるかも知れない。
「大丈夫。守ります」
 震える母子を安心させようと、そして自分にも言い聞かせるようにヤマナは言った。
 リゥが腕に力を込めると杖先から現れた無数の魔法の矢が熊に降り注ぐ。再び熊は咆哮を上げると戸惑うような仕草を見せている。やはり所詮は熊。いくら強敵とは言っても隙は多い筈だ。
「うは、こいつ遅っせぇ!」
 ポタージュは弧を描く動きで残像を残すと、熊の背後に回り込んで素早く斬りつける。余裕の表情で大声を上げる。
「やっべ、めっちゃくちゃ固いんですけど」
「あぶないっ!」
 アマラが声を上げた瞬間、大げさに声を上げたポタージュに、熊の強靭な爪が振り下ろされた。
「き、効いたぜ!」
 背後からの強烈な一撃を、大声を上げて紛らわすポタージュ。
「これぐらいじゃ、まだ、たりないの?」
 前に踏み出して、獣爪で傷を刻んだアルカナは、思わず言葉を漏らす。
 戦いは一行の期待に反して、泥沼の持久戦となっていた。
 熊の身体には、ハッキリと見える傷が目立つものの、戦う意欲は一向に衰えない。
「効いてないはずは……無い」
 底なしに見える体力もいつかは尽きる筈だ。そう信じてゼロは不安を振り払うように弓を引き続ける。

●戦い末路
 熊の注意を散らしていた事が功を奏して、多くの傷を受けながらも前衛に位置する者は、まだ誰も倒れていない。
「くそう、こいつ無茶苦茶頑丈だぜ」
 熊の注意を惹こうと積極的に動いていたポタージュが率直に感想を零すと、
「ああ、そうだな、俺たちも、よく頑張ってると思うぜ」
 俺たちってかっこいいよなと、精一杯の強がりを見せるポタージュに、レイジも精一杯の笑みを返すと、一拍の気合いを込めて地を蹴る。頭上高く飛び上がったレイジは流れ星の様な軌跡を描いて熊に激突する。
 一瞬の間の後、前に歩み出ようとした熊の身体がぐらり傾いた。
「後少しで勝てる!」
 レイジがそう確信した瞬間、熊は傾きかけた身体を立て直し、大きく口を開き咆哮をあげると、そのままレイジに噛み付く。
「下がれ! レイジ!」
 ゼロが喉が破れんばかりに声を上げる。放たれた矢が熊に突き刺さる。直後、レイジは肩から血を飛沫かせながら倒れる。
「よくも!」
 間髪を入れずにアマラは獣と化した拳を繰り出し、熊の傷口を引き裂いた。その横から流れるような動きで接近したポタージュがナイフを突き刺す。刹那、熊は大きく腕を振るう。不幸にも強靱な爪はポタージュの胸を真横に切り裂いた。
「いけねえな、こいつは……」
 ポタージュは朦朧とた意識で、自らの赤い血が飛沫くのを見ながら呟くと、膝が砕けるように倒れた。
「守ると、言いました!」
 もはや前衛だけでは食い止められない。ヤマナはそう確信して前に駆け出すと、抜き身の一閃を繰り出す。再び熊が咆哮を上げて、口を大きく開いた。
「そうはさせないのよ」
 刹那、アルカナが、渾身の力を込めた横薙ぎの大振りが、熊を弾き飛ばした。
「殺してやる、我々の前に二度とその姿を見せるな!」
 詠唱を続けていたクリスティーナの腕先から黒い炎が現れ、黒い炎がマスカレイドに燃え広がってゆく。
 黒い炎に包まれた熊が、よろよろと立ち上がろうとして、そのまま膝を着いた
「……いかづ、ち」
 立ち上がれずに、両膝を地に着いた熊に向かって、リゥが放った無数の魔法の矢が殺到する。
 熊は上半身も傾きついに手を地面に着けた。そこに腕を獣と化したアルカナが食らいつき、アマラも獣と化した腕を激しく乱舞させると、熊の切り開かれた傷口から肉片が飛び散った。
 刹那、断末魔の叫びと共に、腕を振わんとする熊に後衛からの攻撃が乱れ飛んできた。
 殺到する攻撃を身に刻まれるだけとなった熊は、そのまま土煙を上げて倒れると、動かなくなった。
「終わりなのよ」
 アルカナは熊が完全に息絶えた事を確認すると、黒猫のぬいぐるみを抱き締め、ため息を吐いた。
「もう、だいじょうぶよ」
 クリスティーナに声を掛けられて、ようやく母子も戦いが終わった事を知った。
「それでは解体しましょう」
 ヤマナはそう言って、早速、熊の首を切り落とすと熊の身体に刃を入れる。
「まぁ、使えない事も無いかなぁー」
 作業を見ながらアマラが笑う。熊の毛皮は穴だらけで使い物にはなりそうもなく、肉もボロボロで酷い有様だった。
(「骨も、魂もない……けれど、お墓……」)
 そんなひと仕事を終えて和む空気を背に、リゥは土で小さな塚を作ると一輪の白いヒナギクを添えて目を瞑る。
 辺りが暗くなり始めた。夕食には丁度よい時間だ。
「さぁ帰ろう、鍋が待っているぜ!」
 ポタージュが憎っくき熊を食べて、うんと鍛えてやるぜと言って笑う。
「よし、トニーも、お母さんも守れるくらい強くなれよ」
 傷だらけのエイジはそう言って、トニーの背中を叩くと、トニーも大きく頷くのだった。



マスター:もやし 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2010/03/11
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冒険結果:成功!
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