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アマツカグラ調査隊出発!

これまでの話

<オープニング>

「神隠しが原が、こんな場所に繋がっていたなんて……」
 アマツカグラの神楽巫女ナミネは、終焉に抗う勇士号の偉容に圧倒されたように、少し押し黙ったが、すぐに感謝の言葉を口に乗せた。
「この度は、寄る辺なき難民である私達をお救い頂き、ありがとうございました。更に、アマツカグラの為にお力をお貸しいただけるとの事……。皆様の温かいお心に触れて、わたくし、感動に打ち震えております」

 ナミネの感謝の言葉に、集まったエンドブレイカー達は、うんうんと頷いてみせる。
 その中で、代表して答えたのは、楓・ラン(c15073)だった。

「勇士号はマギラントに向かうので、調査隊は30名程になるのかしら。人数は決して多くないけれど、必ず、有益な情報を持ち帰り、アマツカグラ再興の礎を築いて見せるから」
 安心してねと続けたランの言葉に、ナミネは涙を浮かべて祈るように手を合わせた。

「それじゃ、早速、積み込みを開始するぜ。乗り込む奴は早くしないと置いていくぜっ!」
 そんなしんみりとした空気を破ったのは、人生謳歌・ウィード(c30524)である。
 勇士号はマギラントへと進んでいる。
 用意された調査船は勇士号のように波を突っ切って進むわけにもいかないので、タイミングは重要となるのだ。

 こうして、勇士号がマギラントに到着する前に、有志によるアマツカグラ調査隊がアマツカグラへと船出していったのだった。


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参加者
祝炎纏う細剣・エリック(c00544)
双龍の代行者・アスワド(c01232)
フォイアロートドラッヘ・リリエッタ(c01975)
至天狼・ユスト(c02236)
無敵老人ボンボットスリー・ボンベエ(c02353)
一刃の星・レイジ(c02370)
キナコロカムイ族の龍祭司・アルカ(c04731)
くろねこの守護騎士・マージュ(c05678)
彩雲の巫女・ミスズ(c05739)
とんがり帽子の森の人・フォレス(c07267)
テツワンガール・アミーテ(c08455)
魁刃・ナガミ(c08545)
神刀巫姫・シーナ(c09793)
狂嵐獅子・ミハエル(c10562)
稲妻の如き戦慄の・アスール(c13470)
飛燕疾風・クレハ(c13832)
楓・ラン(c15073)
咆哮する銀鷲・ナイアー(c15152)
碧空の渡り鳥・ソウヤ(c17258)
守護の巫女・カヤ(c18756)
赤毛の・エリーザベト(c22117)
特攻好きの放浪屋・フェイ(c23916)
蒼焔・トウヤ(c25197)
華節陽伯・スイエン(c25289)
穢死檻の巫女・シュプリムント(c25576)
静かなる暴風・ミアン(c25632)
待雪草・スズクサ(c25719)
翠雨の描き手・クラウス(c26397)
人生謳歌・ウィード(c30524)
喜び夜駆け回る・サツキ(c31518)

<リプレイ>

●出発
 終焉に抗う勇士号の一角。
「ヨーソロー……であるか?」
 狂嵐獅子・ミハエル(c10562)が、ドヤ顔で説明する漁師に復唱してメモをとる。
「なるほど、こう帆を操れば逆風でも船は進むというわけだな?」
「そうだ。追い風が一番良いが、風さえあれば何とかなるもんよ。一番怖いのは風の無い凪だ」
 咆哮する銀鷲・ナイアー(c15152)が元海賊の教えに感心し、元海賊は日焼けした顔に笑みを浮かべる。
 広場では彼らをはじめ漕ぎ手となる者達が、漁師や改心した海賊から操船の指導を受けている。
 その様子を傍目に、船には航海に必要な物資が続々と積み込まれていた。
「海上では野菜や果物が不足がちじゃからのう」
「人手は足りてますか? 宜しければ手伝いますよ」
 無敵老人ボンボットスリー・ボンベエ(c02353)が積み込む食材は、野菜が多く、とんがり帽子の森の人・フォレス(c07267)も運搬を手伝い、干し肉の入った箱を運ぶ。
「修理用の資材、ロープ、照明と油っと。水と保存食はもう少し積めない?」
「海の上は思っているより寒いので、長袖や外套があった方がいいと思います」
 積荷のチェックをしていたフォイアロートドラッヘ・リリエッタ(c01975)が声を上げ、キナコロカムイ族の龍祭司・アルカ(c04731)が、シャツ1枚だけの仲間にそう言って唇を尖らせる。
 そうこうしている間にも、次々と荷物が運ばれ出港の準備は整ってゆく。

 積み込みとは別に、アマツカグラの避難民が集まる場所では、アマツカグラの神楽巫女・ナミネを航海に同行願うべく、幾人かのエンドブレイカー達が訪れている。
 中央で野太刀に神火を宿らせ、真円を描き舞い踊った蒼焔・トウヤ(c25197)が、笑顔の民達の拍手に口元を隠して一礼する。
「現地調査の為ですが、責任をもって必ず無事にお返しします」
「みんなを故郷に返す為、有益な情報を見つけてくるから待ってて欲しいんだ。心配だろうけど、ナミネと一緒に必ず無事に帰る。約束するよ」
 不安がる避難民たちに、楓・ラン(c15073)が笑顔のまま深々と頭を下げ、喜び夜駆け回る・サツキ(c31518)が一番年配の男性の手をとる。
「ナ、ナミネ殿を宜しく頼みます。またアマツカグラに住めれば、わしは……わしは……」
「大丈夫です、任せて下さい」
 男性の声は嗚咽混じりとなり、周囲からも嗚咽が漏れ聞こえる。守護の巫女・カヤ(c18756)も男性に手を重ねて、その漆黒の瞳に決意を漲らせた。彼らの笑顔の為にも……訪れたエンドブレイカー達はそう決意を新たにしたのである。

「なかなか慌ただしい出発になりそうです。まぁ、仕方ありませんけどね」
「アマツカグラにあんまり良い思い出は無いけど、何があったのかはやっぱり気になるねぇ……」
 くろねこの守護騎士・マージュ(c05678)が、モノクルの下からアマツカグラの方角を見遣ると、隣に立つ穢死檻の巫女・シュプリムント(c25576)もと同じ海の向こう、まだ見ぬ大地を思う。
「神隠しが原を目指して出航……だね。ナミネ……同行よろしく……安全に航海できるように、がんばるよ」
「何はともあれさくっと調べ上げて、解決の糸口を見つけないとな」
 テツワンガール・アミーテ(c08455)がナミネに微笑むと、彼女も決意を込めた視線を返し同じ様に頷いた。そのナミネに肩に手を置き一刃の星・レイジ(c02370)が歯を見せて笑う。
「じゃあ出発するぜ、目指すは『神隠しが原』でOK?」
 舳先に立った人生謳歌・ウィード(c30524)が振り返って言うと、
「あたいもそれでいいぜ。でも、余計な寄り道は無しで行こうぜ」
(「行ってくるぜ。……アイツ、大人しく待ってるかねえ」)
 特攻好きの放浪屋・フェイ(c23916)が纏めた白髪を揺らして応え、至天狼・ユスト(c02236)が見送りに来た仲間達の中に見知った顔が無いか視線を泳がせた。他の仲間達も頷き、あるいは岸に別れを告げる。
「……さらば勇士号、と。……必ず戻ってくるから、待ってて」
 新調した厚手のマントを翻し、赤毛の・エリーザベト(c22117)は勇士号を顧みた。
「出発進行!」
「『ヨーソロー!』」
 ウィードの号令に皆が掛け声を返し、勢いよく上げられた帆が風を受けて膨らむ。
 見送りの声援と海原を渡る風を受け、一行は勇士号から旅立ったのである。

●夕食
 30人のエンドブレイカー達は、3班体制を敷いて航海に臨み、幾日か過ぎようとしていた。
「皆の者、晩飯の用意が出来たのじゃ。今日はわしの作った『凡カレー』なのじゃ」
 夕刻、ボンベエの作ったカレーがふるまわれる。
「沢山ありますから、押さないで下さい」
 彩雲の巫女・ミスズ(c05739)がお玉を手に、押し寄せる皆に声を上げている。丁度斑交代のタイミングで各班の者達が顔を合わせ、甲板のわいわいとした雰囲気の中、食事が始まった。
「御苦労様、代わるわ」
 早々に食事を終え、長い青髪のツーテールを海風に靡かせマストを上った静かなる暴風・ミアン(c25632)が、アミーテと交代する。
「さっきあっちの方に船みたいな影が見えた気がしたんだよ。見えなくなったから気のせいかもしれないけど、念の為気を付けて」
 アーミテは進行方向に対し右横に当たる方角にを指してそう告げ、マストを降りると、舳先で周囲の警戒に当たっていた待雪草・スズクサ(c25719)と食事の席につく。
「少し日に焼けた気がするな」
 消費物資の確認を終えたトウヤが自分の腕を見て呟くと、ウィードも袖をめくり自分の日焼けを確認すして笑う。
「慣れないロープ捌きは大変だな」
 その隣に魁刃・ナガミ(c08545)が腰を下ろした。
 風を受ける帆をロープで操る為、かなりの力で引っ張らねばならぬ場合もあり、その掌はうっすらと赤くなっていた。
「あ、ナミネさん、聞きたいことあるけど今いいかい?」
「はい、何でしょうか?」
 隣に座って切り出したフェイに、カレーに入ったキノコを突いていたナミネがスプーンを置く。
「神隠しが原からアマツカグラまでの道で注意する場所とかあるか?」
「あ、それ僕も聞きたい。地図を作っておきたいんだよね」
 フェイが切り出すと、少し離れた所に座っていた翠雨の描き手・クラウス(c26397)が、カレーを置き、紙とペンを手に寄って来る。
「ほとんど一本道です。神隠しが原からアマツカグラの太刀鳥居は見えますし、森など幾つかありますが、迷う事はないと思います」
(「それ程気にしなくてもいいのかな?」)
 ナミネの答えにクラウスはメモをとりながら、内容を整理する。
「神隠しが原の伝承ってどんなのかな? あと神隠しにあった時の状況は?」
「伝承は沢山話があります。駆け落ちした恋人同士が逃げ込んで神隠しに合い、遠い場所で幸せに暮らした話とか、高名な武人が戦乱の土地に飛ばされて王になった話。銀の雨が降る異なる世界へ旅立った話。実は潜んでいる化け物に食われてしまうという話、今も森の中を彷徨っているという話。……棘霞の魔物に追い立てられ、あの時は無我夢中でした火那山津見神に祈ったところまでは覚えているのですが……」
 シュプリムントの質問に応えるナミネ。その時の事を思い出したのか、答えたナミネは目を伏せ少し身震いする。誰かが天守閣連峰についても尋ねてみたが、知らないとの事だった。

●釣り
 時間的には午前4時頃。
「よっしゃ、どうだ。50cm級だ」
 白む朝焼けの中、魚を釣り上げたユストがガッツポーズをとると、レイジが苦虫を噛み潰した様な顔になる。食料の足しにと釣りを始めたのだが、レイジはまだ1匹も釣れていなかった。
「おっと、俺は3匹目です」
 碧空の渡り鳥・ソウヤ(c17258)も3匹目の魚を釣り上げ、レイジの眉間の皺が更に深くなる。
「あははは。それにしても割と皆に心配されてるし、情報も大事だけど何はともあれ無事に戻らないとなー……」
「そうそう頑張って情報集めて帰らないとね」
 その様子を見ながら稲妻の如き戦慄の・アスール(c13470)は、後ろ……勇士号の方角を省みて小瓶に入った金平糖を口に運び、隣に腰掛けた神刀巫姫・シーナ(c09793)が差し出した掌に、金平糖を3つ乗せた。
「わわっ、引きました。そのまま引っ張ればいいのかしら?」
「魚の力に合わせて引くと良いそうです」
 今度はランの竿に当たりがあり、慌てて左右に助けを求めると、華節陽伯・スイエン(c25289)が隣についてその体を支える。
「くそっ、坊主はオレだけだよね?」
 レイジは悔しそうに船の縁を叩き、仲間達から笑い声が漏れる。
「こういう楽しいのもいいですね。何事もなく到着すれば良いのですが……」
 そんな仲間達を見て、飛燕疾風・クレハ(c13832)は口元をほころばせるのだった。

 自由時間であるが、マスト上で水平線を見ながら、ぼんやりとアマツカグラの事を考えていたミアンだったが、大物を釣り上げた仲間の嬉しそうな声に視線を下げる。釣りをしている船の右舷側、白む朝焼けが煌めく海面に巨大な黒影が見えた。
 同じくマストに居るサツキはホークアイを使い遠くを見ており、下の見張りであるカヤは、前方左舷側に居て気づいていない。
「スイエン! カヤ!」
 マストの上から声を上げたミアンが、白弾銃『white bullitt』を手にロープを伝い降りて来る。
 その声にただならぬものを感じたスイエンは、躊躇う事無くホイッスルを吹き鳴らした。
「何事だ!?」
「敵襲でしょうか?」
 甲板の掃除をしていた祝炎纏う細剣・エリック(c00544)はデッキブラシを放り出すと、Blizzard Wingを鞘から抜き、朝食の準備中だった双龍の代行者・アスワド(c01232)も飛び出し、他の仲間達もおっとり刀で甲板に出てくる。
 次の瞬間、海面が盛り上がり『其』が跳躍した。
 黒を基調とした流線型のフォルム。腹側は白く、その胸びれは鳥の翼の如く広げられ、右舷側から舳先をかすめる様に跳び、左舷側へと落ちる。その大きさ約20m。派手な水飛沫が上がって船が揺れ、甲板に水飛沫が降り注ぐ。
「アレ、何なんですか!?」
「オルクライ、飛翔するシャチです」
 何人かのアラームが発動する中、フォレスの声にナミネが答える。
 シャチにトビウオの胸びれがついた様な巨獣で、こうやって跳躍するのは、体に付いた寄生虫を振り落とす為だという。
「何か落ちて来たぞ」
 舳先の方へ視線を向けたリリエッタがRasen Dracheを構えた。
 跳んだオクルライの体から振り落とされた寄生虫。フナムシやウチワエビの様な虫が甲板の上で蠢いている。寄生主がでかいだけあって、寄生虫とは言え30cm〜50cm程のサイズがある。その虫達が臭い汁を吐き始めた。
「何、この臭い。わー洗濯物がー!」
「デカいのも戻って来るぞ!」
 エリーザベトの叫び声を掻き消すナイアーの声に振り返ると、回頭したオルクライ……海面に突き出したその背びれが真っ直ぐ船に向かって来ていた。この頃には就寝中であったナミネとA斑も含め全員が甲板上で戦闘態勢をとっている。
「あれに突撃されたら、かなり拙い事になるでしょうね」
 眠い目をこするスズクサの弁は、皆の弁を代弁した様でもあった。
「一発勝負になるね。頭を狙って全員で一斉攻撃だな」
「で、あるな」
 クラウスの見立てにミハエルが頷く。
「各自、最大威力を持つ遠距離アビリティを準備、タイミングを合わせオルクライの頭にぶつける!」
 ミハエルが大声を上げ、皆が得物を掲げて応える。
「来るぞ、3、2、1、撃てっ!」
「放てっ!」
 ミハエルとトウヤの怒号砲による大喝に合わせエンドブレイカー達の一斉攻撃。
「ジェノ、噛み砕け!」
 フォレスが召喚した星霊ジェナスが真正面からぶつかったところに、ウィードとスズクサの棘が二重の螺旋を描いて撃ち出され、ミスズとシュプリムントのバルカンが神火弾を飛ばして神火の柱を打ち立てる。
「仕事開始だ……」
「返却不要だ。全部もってけ!」
 無表情のままミアンが手裏剣を投じ、エリックが鎌剣と匕首を飛ばす。
 月光のカーテンが垂れ空間が裂かれ、気咬弾が跳び次々と攻撃が決まると、オルクライの頭が裂け出血で海が赤く染まり、オルクライはのたうって体を捻った。
「きゃっ!」
 その尻尾が叩きつけられた衝撃で船が大きく傾き、幾つかの荷物が海に投げ出され波飛沫が甲板を洗う。小さく悲鳴を上げたカヤも投げ出されそうになるが、なんとか縁を掴んで踏み止まった。
「何処へ行きましたか?」
 アックスブレイドからオーラの刃を飛ばしたマージュが、敵を見失い周りに尋ねるが、深く潜ったのかオルクライの姿は見えない。
「あ、あそこ!」
 襲撃中に別の敵の接近を見逃さない様、上に残っていたサツキの声。そのサツキが指さす方を見ると、タイミング良くオルクライが跳ねた。その胸びれや尾びれに別の魚が食い付いているのが見え、派手な水飛沫が上がりその魚達が振り解かれる。
「あれはサメの群れだね」
 眉に手をかざしホークアイを発動させたアミーテが言う様に、オルクライの周りには取り囲む様に幾つもの背びれが海面から覗いていた。血の臭いに集まって来たのだろう。
「今の間に離脱しましょう」
「そうですね。留まれば危険が増えるばかりです」
 アルカにクレハが同調し帆を操り始めると、操船担当の者達も斑を越え、効率よく風を受ける様に帆を操る。
「手隙の者は手伝ってくれ。コイツらも排除せねばならんだろう」
 ナガミの眼前にはオルクライの置き土産、20匹の寄生虫がイヤな臭いを放ちながら蠢いている。
「うわー近寄りたくないぜ」
「近寄らなければいいじゃないの。撃ち抜きましょう」
 鼻を押さえたフェイが辟易した顔で振り返ると、ガンナイフを構えたアスールが1匹を撃ち抜く。パシュという音と共に動かなく寄生虫。飛び散る体液と共に広がる臭い。
「……別の意味で強敵ね」
「ここは俺の出番でしょうか?」
 ランが言いながら5歩程後ろへ下がると、L'ala del dragone di argentoを手にアスワドが進み出た。アスワドは冬の嵐の領域を拡大し寄生虫達を氷壁に閉じ込めていく。
「すごいすごい。これなら臭いも安心だね」
 シーナをはじめ皆が称賛し、10分程で全ての寄生虫は氷壁に閉じ込められ、海に投げ捨てられた。
 因みにその日の夕食時は、A斑雑用係の掃除と洗濯の愚痴が酷かったそうである。

●凪
 索敵担当の各位の働きもあり、一度遠くに船影を発見したので回避したのと、クジラの巨獣とイカの巨獣が戦っているのを発見し回避行動をとった以外は、順調に航路を重ねていた。
 ……が、その日は今まで順調だった風がぴたりと止んだ。
 元海賊が一番怖いと言っていた『凪』である。ブレイドタイフーンや、木の葉竜巻の術、バイドウインドなどで風を起こしてみたが、帆が裂けそうになり、あえなく失敗に終わる。
「焦っても仕方ないし、緊張ばかりしても本番まで持たないぞ。こういう時はのんびりしようぜ」
 そう言ってナイアーは何人かとカードゲームに興じ始める。
 結局、皆で話し合った結果、明日も続く様なら休憩の斑を除いて全員で漕ぐ事に決め、今日は風を待ちながら修理と大掃除という事になった。
「航海は思ったより大変だけど、だいぶ揺れにも慣れて来たよ。アルカの故郷、まだ見えないね」
 マストの上でホークアイを使い遠くを眺め、そう漏らすアミーテ。いつもは風に靡く藍色の髪も今日は所在なく腰へと落ちている。そのアミーテと肩を寄せ合っているアルカが、んっと小さく反応して瞬きし、
「アマツカグラを気にしてくれる人が多いのは嬉しいよ。それにアミーテも一緒だもん」
 と嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「……交代」
 そこに上がって来たミアンが無表情のままそう口にする。そのマストの下。
「たとえ掃除だろうと負けはしないよ」
「掃除屋ウィードとはオレの事だぜ」
 トウヤが袖をまくり、ウィードもデッキブラシをくるくると回し不敵な笑みを浮かべる。
「んー負けないわよ」
「よっしゃ! じゃあ、飛ばしていくぜ」
 シーナも聖衣を揺らし、デッキブラシをトウヤに突き付け、レイジも気合十分でデッキブラシを掲げた。
「ふふん、休憩明けだから力が漲ってんだ。負けないぜ」
「なんで競争になってるの? みんなで一緒に掃除しましょうって話じゃなかったの?」
 デッキブラシを肩にユストが不敵に笑うのを見て、困惑しているのはアスール。
「いんじゃねぇの? 負けた奴は夕食のおかず1品を勝者に献上って事で」
「生きると言う事は大変どすえ」
 操船に関する本を読んでいたフェイが顔を上げると、悪戯な笑みを浮かべて皆を煽り、振り返って僅かに口角を上げたスズクサは、海中からの襲撃を警戒し海面に視線を戻す。
「バルカン様。どうか、どうか……」
 逆側の縁ではスズクサと同じ様にスイエンが海面を覗き込んでいた。
 水面に映る自分の顔に、アマツカグラに居る家族の事を思い出したのか、彼女は少しだけ目を閉じて祈りを捧げていた。舳先のところにはナガミが鎮座しており、夕闇に暮れようとする海を見つめている。
「……」
 端然と背筋を伸ばし微動だにせず腕を組むその様は、航海の安全を祈る船首像の様であった。
「よーい、どん!」
 フォレスがドローブラウニーを描いたデッキブラシを手に、6人が一斉に甲板を洗い、周りの者達が囃し立てる。結局、アスールが勝ち、ユストがおかず1品を取られるハメになった様である。

 その夕食を作る厨房。
「干し肉の箱が1つオルクライの時に流されたみたいですね」
 今日の分の食材を取り出しながらミスズが口を開く。あの時船から落ちた荷物の中に干し肉の箱があった様で、在庫チェックをしたアスワドから報告を受けていた。
「まぁ、肉は魚で補えるからのう。野菜が流されなくて幸いじゃ」
 フライパンを振りながらボンベエが細い目を更に細める。幸い魚釣りは好調で、様々な海の幸が一行の胃袋を満たしていた。ミスズがおにぎりを握っていると、
「私は今手すきになっていますから、手伝わせていただきますね。皆様の負担が少しでも軽い方が良いですから」
 入って来たクレハが、魚の臭いの付いた樽を海水を使って洗い初め、
「ボンベエちゃん、この野菜はザク切りでいいのかな?」
「カボチャ切り終わりよ。1つだけ目と口が繰り抜かれたカボチャが混じってたけど」
 包丁を振るうシュプリムントが、ピーマンに似た野菜を手に尋ね、切ったカボチャをざるに移したランが顔を上げる。夕食の支度で厨房はてんやわんやだった。

 夕食の後、全斑揃ったタイミングで、誰かが切り出したのを皮切りに質問大会となった。
「霧霞の魔物の中で、特徴的な者や強い者などは知らないか?」
 リリエッタの質問に少し首を傾げるナミネ。
「特徴的というのはあまり覚えがないですが、霧霞の魔物になった忍者に、就寝中の神楽巫女3人が殺された時は戦慄を覚えました」
 ナミネはその時の事を思い出したのか、肩を抱えて震える。
「ナミネ殿の組織というか所属みたいなのはあるのじゃろうか? 例えば『全アマツネコミミ協同組合』みたいな」
 ボンベエがネコミミを手に尋ねる。
 例えはおかしいが知りたい事でもあったので、皆は耳をそばだてたが、
「……もう全て無くなってしまいました。仲の良かった者達が棘霞の魔物になり、生きている人がいるのかどうかも……」
 ナミネの声は暗く沈む。
「沈んでいるところ悪いんだけど、この際に聞いておくね。アマツカグラが壊滅に時に何が起こったの? あと『神火』を崩された原因はなにかな?」
 重苦しい空気の中、シュプリムントが質問する。
「ある時、棘霞の魔物が消えたのです。その時、何故だか分りませんが私は『逃げなければ』と思いました。同じ様に逃げた人々……皆さんに保護された方達……本当はもっと多く居たのですが……、彼らとアマツカグラを離れ振り返ると、アマツカグラに大きな薔薇が咲いていました」
 ナミネは一度言葉を切り、息を整える。
「ですから何が起こったのかは良く知らないのです。棘霞の魔物達が現れ、一緒に逃げていた人の一部も棘霞の魔物になってしまいました。後はもう無我夢中で、気が付いたら皆さんに……という状況です」
「なるほど」
 言い終って目を伏せるナミネ。マージュはその言葉をメモしていく。
 自由時間にナミネと良く行動していた彼の手帳には、ナミネから聞いたアマツカグラの伝承が色々書き込まれており、ナミネの質問にも色々応えていた。

 湿っぽくなった話を反映したのか、垂れ込めた雲が星空を隠す夜であったが、夜半を過ぎた辺りから再び風が吹き始めた。
「来た! これは未来へ続く追い風であろう。帆を上げるのだ」
「OKじゃなかった、ヨーソロー! だね」
 ミハエルが風に舞う己の銀髪に愉悦の言を漏らすと、小さく舌を出したエリーザベトとナイアーがメインマストの帆を広げ、
「よし、今日の遅れを取り戻すぞ」
 エリックがサードアームも使い、一気にサブマストを広げる。闇の中に大きな白い帆が広がる。
「ちょっと視界が悪すぎじゃないでしょうか?」
「こんなものかな?」
 何かに頭をぶつけたアスワドがボヤく横、ロープを固定したフォレスがハンパンと手についた埃を払うと帆を張る作業が一段落する。静かになった闇夜の中、マストの上のサツキは何か音が聞こえた様な気がして、振り返ると闇夜に目を凝らした。

●海賊
 それは船体から帆までもが漆黒の船。
 サツキがそれを視認できたのは小さな赤い点が見えたからだ。
(「バカヤロウ、見つかったらどうするんだ!」)
 その船では煙草に火を付けた海賊が、親分らしい海賊に張り倒されていた。
「あれは? ……カヤ、みんな後ろに何かいる!」
 マスト上から響くカヤの声に、甲板上にいた仲間達が船尾に集まり、ソウヤが休憩中のA斑の皆を起こす為、船内へと姿を消す。
「何も見えないが?」
「ちょっと試してみますか」
 赤い瞳を細めるリリエッタの隣、A斑の皆が出て来たのを確認したクラウスが進み出ると、船の後方海域目掛け、ファイアーワークスで花火を撃つ。花火が大きな音と共に赤い炎を散らして弾け、その炎が闇の中の黒い船を映し出した。
「海賊船っ!」
 カヤのアラームが発動し、それを追う様に笛の音が響く。
「ちっ、気づかれた。野郎供、行くぞ!」
 海賊船に幾つもの明かりが点き、『エイホ、エイホ』という掛け声と共に船速を上げると、みるみる船尾に近づいて来た。海賊船からは次々と虚月輪が飛び、エンドブレイカー達も遠距離アビリティで応戦する。
 ドン! という衝撃と共に船体がぶつかり、海賊達が跳び移って来る。
「夜は安眠の時間です。お休みなさいませ」
「道程の邪魔ですよ? 先は長いので早々に退場願いましょうか……」
 フォレスの掲げたスネークロッドから眠りの雲が広がり、その雲に包まれた先頭の海賊にアスワドが吹雪を叩き付けた。足が凍った海賊は上手く跳躍できず、そのまま闇が広がる海へと落ちてゆく。
「ええぃ、怯むな。行けっ!」
 けしかける声に視線を向けると、豊かな黒ひげでムーンブレイドを掲げた四つ腕の海賊。その胸にあるはマスカレイドの仮面。
「マスカレイドよ、気を付けて!」
 降り注がせた光の剣に映ったその姿にランが声を上げ、視線がマスカレイドに向いた隙をつき、5人の海賊達が跳び移ろうとする。
「今です!」
 くろねこ魔法店制服の裾を翻したマージュがアックスブレイドを振るうのに合わせ、フェイが赤双牙をナイアーが斧剣「豪葉月」を振るう。標的を拡大したオーラの刃が雪崩の如く乱れ飛び、鮮血を撒き散らした海賊2人が海に落ち、
「ほっ、それ以上行かせんぞ!」
「アマツカグラへの道、阻ませないのです!」
 ボンベエが裂いた空間から月の魔力を撃ち出し、スイエンがディスインテグレートのエネルギー球を飛ばす。
「闇に紛れて這い寄るしかない者に、余らが志断てる訳なし!」
「俺達の船をその血で汚さないで頂けますか?」
 怯んだ海賊の1体をミハエルの斧が両断し、もう1体をソウヤが切り上げ。血まみれの海賊が海に落ち水飛沫を上げる。
「やらせん」
 更にナガミの太刀が闇を一閃し鞘に納められると遠間より空間が断たれ、アミーテが胸を押さえるその海賊を、海に蹴り落とした。
「ぐぬぬ、おのれ。撃て、撃てー!」
 取り付く事が出来ない部下達を見た海賊の親玉は、方針を変え一斉に虚月輪を飛ばしてくる。
「それ以上の攻撃で撃ち落とすまで」
「その通りでございます」
 トウヤが懐から匕首と鉄大鉈を飛ばし、スズクサが実体化させた棘を撃つ。空中で衝突した双方の攻撃が激しくぶつかり掻き消える。海賊達はムーンブレイドを振るって次々と虚月輪を放ち、
「接近を見抜けなかった……不覚です」
 自責の念に顔を曇らせたカヤも虚月輪を放って迎え撃つ。
「大人しく海の藻屑となりなってよね」
 船にすがりつく落ちた海賊に、容赦なく銃弾を浴びせているのはアスール。
「何人いるのか分らないのが不気味です。が、それは相手も同じことでしょうか?」
「だが、この攻撃の手数ではこちらより多いとは思えない。なんとなりそうだな」
 大きく振りかぶったクレハが鋸刃剣を飛ばし、エリックも同じく千刃発破で刃を飛ばし、虚月輪を撃ち落とし、海賊達を削ってゆく。
「キミ達の力を貸して!」
「悪いが構ってる暇はないんでな!」
 その攻撃に紛れ、跳び移って来る海賊を、妖精と同化したシーナとInherit the Starsを鞘から抜いたレイジが迎撃する。
 エリックが言う様に、跳ぶ虚月輪の数は減っており、なんとかなりそうな勢いだった。
「眩しいですよ、気を付けて下さい」
「合わせます」
 孔雀扇で舞ったミスズが熱き輝きを招来したのに合わせ、アルカも雷撃を招来する。
 この攻撃で辺りが一瞬明るく照らされた。海賊船の上には倒れ伏した何人もの海賊達、四つ腕のマスカレイドとムーンブレイドを振るう3人の海賊が視認出来た。これなら圧倒できる。
 誰もがそう考えた時、マストの上からサツキの声。
「左舷、もう1隻来ます」
 明るくなった闇の海上、激しい剣戟の音が響く船尾を避ける形で、もう1艘の黒い船が接舷しようとしているのを、サツキが見つけたのだ。
「C斑このまま船尾の敵を、A斑B斑は新たな敵を!」 
 ミハエルの声が響く。
 逡巡している暇はなかった。エンドブレイカー達はミハエルに従い、二手に分かれて迎え撃つ。
「策を弄してくれますね。お仕置きが必要かな?」
 クラウスの放ったハイパー虚月輪が1体の海賊を斬り裂き、リリエッタの放った気咬弾がその海賊を海に叩き落とす。
「ボクも手伝うよ」
 マストから降りて来たサツキも忍犬のスピリットを嗾け、アスワドの放ったレギオスブレイドとフォレスの放った雲に紛れ、何人かが相手の船に乗り込んだ。
「海賊になった気分だな」
 軽口を叩いたマイアーが海賊の1体を屠り、残るは四つ腕只一人。
「私らの船を狙った落とし前、ちゃんとつけてもらうよ」
「こんな手練れ供が乗ってるたぁ、誤算だったぜ!」
 両腕を広げたエリーザベトが、攻防一体の構えから童子斬切白姫を振るい、海賊は4つのムーンブレイドを巧みに操り、それを防ぐ。更にカヤとエリックが周りを囲み、海賊に出血を強いていく。
「ちぃい、鬱陶しい」
「お褒めに預かり光栄ですよ」
 吹雪に腕を凍らされた海賊のボヤきに、アスワドが壮絶な笑みを浮かべて応える。次の瞬間、クラウスのムーンカーテンが海賊を包み、
「そのまま眠りの世界に誘われるのです。」
 更にカヤのハイパームーンカーテンがその上から海賊を包む。急激に襲い掛かる睡魔に倒れそうになるのを堪える海賊。
「終いだ。大人しくしてろ」
 その胸板を、神火を纏ったエリックのBlizzard Wingが斬り裂き、海賊は鮮血の水溜りの中へと崩れ落ちた。

 一方側面に接舷した新たな敵を迎え撃ったA斑とB斑の面々。
「許可の無い奴の乗船はお断りだぜ」
 突っ込んだウィードが海賊の襟口に赤金鋼を突き入れると、そのまま海へと投げ飛ばす。
 アルカの神鏡から清浄なる輝きが海賊を撃つと、その光に他の海賊達が照らされた。
「うん? 思ったより少ないか?」
 ユストが言う様に海賊は少なく見えるが、ユストは油断なく紅蓮雪華に神火を纏わせて海賊を斬り、その横を抜けたアスールのリングスラッシャーが、分裂して海賊達を斬ってゆく。
「話が違うじゃねーか!」
 思いの外強固な反撃に狼狽した海賊は、頭を紫煙弾に撃ち抜かれ脳漿をぶちまけて絶命する。これはマスト上に残って更なる敵を警戒していたミアンが放ったものだった。
「美味しい話は大抵そういうものだ」
 ミアンは戦う仲間達のアビリティに照らされた海賊目掛け、頭上から次々と紫煙弾を撃ち放った。
 結果としてこちらの船は、船尾の海賊船が後方撹乱の為に回した少数の陽動部隊だったらしく、手痛い反撃にはなから及び腰であった。
 スイエンの焔剣に斬られた海賊が、マージュの放ったオーラに裂かれボロ雑巾の様になって落ち、
「小細工は所詮、小細工ですね」
「まったく、つまらぬ戦で安眠を妨害してくれるものだな」
 ソウヤが大上段からの重撃で1体を屠ると、ナガミに最後の一人が倒され壊滅した。
 ざっと船を調べ生き残りが居ない事を確認すると、詳しくは夜が明けてから船を調べる事にし、ロープを結わい付け曳航する。
 海に落ちた海賊達が這い上がって来る可能性もあり、見張りを増やし夜を明かす事となった。

「海賊島の残党みたいだぜ」
 フェイがやれやれと言ったポーズをとって溜息をつく。
 朝になってすえた臭いのする彼らの船を調べ、大した荷物もなく奴隷も居ない事を確認した。
「水と食料はもらっておきましょう。あって困る物でもありませんし」
「えー、なんか腐ったりしてない?」
 クレハが言うのにシーナが眉をひそめる。
「あれ、この箱」
 そんな中、ミスズは見覚えある箱を発見して声を上げ、箱の中身を確認する。
「やっぱり、私達の干し肉です。流されたのを拾ったのでしょうか?」
「それ見つけて獲物が近くに居ると、追って来たのかもね」
 ミスズが干し肉を見せるとフォレスが笑う。
 とりあえず水と食料を移し替え、2艘の船を切り離した一行は、そのままアマツカグラを目指し航海を続けるのだった。

●望陸
 海賊襲撃の数日後。
「陸地が見えたよ!」
「陸地が見えるよ! あれが、神隠しが原?」
 マストの上、隣のアルカを叩きながら叫ぶアミーテの声と、黒いツーテールを風に舞わしたサツキの声に、甲板の皆が船首側に集まる。
「ついに見えましたか……!」
 クレハをはじめ休んでいたB班の面々も、眠い目を擦りながら甲板に出て来る。
 舳先には相変わらず、風を受け羽織をはためかせたナガミが鎮座していたが、
「うかれる前に、浅瀬や岩礁に気をつけるのだな」
 と、画竜点睛を欠かない様声を上げた。一行は気を引き締め見張りを強化する中、マスト上のアルカが目に掛った白い髪を払った時、最初は判らなかった陸地がホークアイを使えない面々にも見えて来た。
「あれがアマツカグラの大地……」
(「アマツカグラ……私の故郷……必ず取り戻してみせる」)
「何があったのか。それを知りたいんです」
 ボンベエの片眉が釣り上がり、見開かれた眼がその島影を捉え、トウヤが久しぶりに見たアマツカグラの大地に決意を新たにする。そのトウヤの隣でスイエンも目を見開いて呟いた。

「この先、鬼が出るか蛇が出るか……」
「さぁ、ここからだな!」
 近付いて来る島影に目を細めたスズクサが呟くと、ユストが掌に拳を打ち付ける。
「〜〜♪」
「その歌は?」
 ミハエルが吟じる様に口ずさんだ詩をリリエッタが問う。
「あそこには亡き主君と孤児が眠っている。その孤児たちが歌っていた詩だ」
 ミハエルの瞳がそこに主君と孤児を殺めた敵が居るかの様に細められる。
「あの地に『笑顔』を取り戻すぜ。その為に色々調べないとな……」
「そうですね。アマツカグラが滅んだなんて信じたくありませんが、そうであっても頼もしい仲間達と未来を切り開きましょう」
 誰に話すとはなしにウィードの口から漏れた決意に、頷いたミスズがナミネと手を取り合って頷く。
「生き残りがいるかもしれないし、早く行きたいぜ。必ず再興しようぜ」
「ほんと、みんなで頑張ろうね」
 その手にフェイの手が重なり、アスールの手も重なる。
「アマツカグラは本当に幼少期の頃しか居なかったですが、それでも様々な風景を覚えています。取り戻せる様、頑張りましょう」
「情報も大事だけど、ナミネが戻らなければ避難した皆が悲しむよ。だから、無茶だけはしないでね」
 ソウヤも思い出を語りながら手を重ね、最後に手を置いたランがナミネの瞳を覗き込んだ。

「『神隠しが原』って思ってたよりも大きいんだよう」
(「アマツカグラ……なんだろう。初めて来た感じがしないな。私の失った記憶に関係するのかな?」)
 近付いて来る大きな森にシュプリムントが目を見開き、シーナが既視感を感じて首を傾げる。その後ろでは船首から下がったミアンが、上陸に備え無言で自分の武具の手入れを始めていた。
「そうだな。ここがゴールじゃないんだな。ここがスタートだ」
「えぇ、アマツカグラを再興させる為にも必ずこの調査を成功させないといけません」
 そのミアンを見たエリックも、隣に腰を下ろし、同じ様に手入れをはじめる。その声に振り向かずに答えたカヤは、下からの襲撃に備え縁から海を覗き込んでいた。
「ないとは思うけど、ホークアイ持ってる人は、待ち伏せがないか確認お願いします」
 風で飛びそうなとんがり帽子を押さえ、マストを見上げたフォレスの声に、りょうーかいーと風の乗ったサツキの声が返って来る。
「ここまでは何とか来れたな……だが問題はこっからだな。必ずアマツカグラまで辿り着こう」
「さてさて、どうなっている事か、前途に垂れ込める暗雲が晴れれば良いですが……」
 レイジが振り返ると、アスワドが自分に頼み込んだ男の顔を思い浮かべ嘆息し、
「本当だね。有益な情報を持ち帰れるといいけど……」
 クラウスもある少女の顔を思い浮かべていた。
「この揺れとも、暫しお別れだな」
 船板を踏締めたナイアーが、航海中なんども磨かれたそれに目を落とす。
「あ、あそこが上陸できそうだよ」
 エリーザベトが上陸できそうな場所を見つけ指差した。
 30人のエンドブレイカーとナミネによるアマツカグラの調査は、まだ始まったばかりなのだった。



マスター:刑部 紹介ページ
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いまいち
参加者:30人
作成日:2012/10/26
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冒険結果:成功!
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