ステータス画面

タナトスの門

<オープニング>


 ――ぴちゃん、と。
 天井から水が滴り、床の水溜りに落ちた。
 ほんのりと薄暗い遺跡の中、たいまつを燃やしながらアレックスはごくりとつばを飲み込んだ。
「ついにやって来た……」
 長く続く回廊の向こう側には、見上げるとひっくり返ってしまいそうなほどの巨大な門がそびえ立っている。
 美しい宝石がちりばめられた、黄金に輝く門。細やかな装飾は天使を形作っているらしく、恐ろしいほどに精巧だ。
 これが、数多のトレジャーハンターたちが立ち向かい、敗れ去ってきた遺跡。宝物が眠る天国への入り口。
 ――別名、タナトスの門。
 あまりの壮大さに身震いしつつ、アレックスは門へと手をかける。
 本来はがっちりと施錠されていたのだろうが、錠は破壊されて、手で押せばすぐに開くようになっていた。
 両手で力いっぱい門を内側へ押し込む。
 ギギギ、と音をたてながら重厚な門が開かれ、目の前に巨大な大広間が現れた。
 パーティーでも開けそうなほど豪華絢爛な広間の天井には、たくさんの宝石がはめ込まれ、外からもれ入ってきた光が反射してキラキラとこの異質な空間を輝かせている。
 奥には、まるでこの遺跡の王であるかのように、真紅のソファーに鎮座する天使の石造があった。
 その石造の奥には、小さな扉がある。あそこに宝があるとみてまず間違いはないだろう。
 アレックスはゆっくりと歩を進める。
 このまま宝を手にすることが出来ればいいのだが、遺跡には罠がつきものだということをアレックスとて身を持って理解している。
 いつかのトレジャーハントの際に失った左腕に顔をしかめながら、右手でしっかりと剣を握る。さぁ、どこからでもかかってこい。
 アレックスがちらりと視線を右にやる。そして、左に。
 目の前には宝物。あと一歩で手が届くはずなのに、誰もがそれに触れていない。その「一歩」があまりにも大きいのだ。
 ハンターの屍はない。
 それが意味していることが、百戦錬磨のアレックスにはわかった。
 そして――敵が突如姿を現した。
 目の前の石造が動き出した。
「きたかっ!」
 身構えて敵と対峙した直後――背後からの奇襲がアレックスを襲った。
 何が起こったのかわからずに後頭部に激痛を感じて振り返ると、そこには無数の小さな天使の石造がいた。
 一瞬の気の緩みは致命傷となり、石造が一斉にアレックスに襲い掛かった。
 そして抗う術を持たない彼は、そのままゴーレムによって叩き潰され、跡形もなく燃やされてしまった。


「アクエリオの地価にある広大な地底湖のことは知っているか?」
 この地底湖では、最近、水位が少しづつ下がってきているらしく、水中に沈んでいた遺跡が次々と探索可能になっている。
 そのため、地底湖の周りには、古代の遺跡で宝探しをしようとするトレジャーハンターが集まってきているらしい。
 しかし、トレジャーハンティングは危険な仕事でもある。
 遺跡には、古代の邪悪な星霊建築によって生み出された、ゴーレム達や、危険な罠が存在し、まさに命がけといって間違い無いだろう。
 だが、実際に命を失うと判っているのならば、話は別だ。
「遺跡探索中に命を落とすトレジャーハンターを助けるために、一肌脱いでくれないか?」
 エドアルドは不敵な笑みを浮かべて言った。
「今回、探索中に命を落とすのは、アレックスというトレジャーハンターだ」
 各地でトレジャーハントをしている猛者で、今回も危険を承知で宝探しに挑んでいるので、いくら「命の危険が」あるといっても、探索を諦めることはないだろう。
「だから、アレックスよりも先回りして遺跡を探索して、宝を手に入れるしかない」
 すでに誰かが探索して宝を手に入れたことがわかれば、彼もその遺跡からは手を引くだろう。
「遺跡の中の広間までは難なくたどり着けると思う。でも、ソファに座る天使の石造の前に来ると、石造が動き出すらしい」
 石造のゴーレムの他に、背後からは門の装飾品だった小さな天使の彫刻ゴーレムが無数に襲い掛かってくる。
「小さい天使の方はたいしたことないだろうけど、目の前の石造は要注意だな」
 説明を終えて、エドアルドはきらきらした目でエンドブレイカーたちを見た。
「古代の遺跡かぁ。綺麗だろうなぁ……! 古代の遺跡に宝物! どんなものがあるのかはわからないけど、きっと冒険の記念になるいい宝物だろうな」
 そしてすぐに「そうだ!」と何かを思い出したらしく、顔を引き締めた。
「探索が終ったら、後から来るアレックスに挨拶して、この遺跡が探索済みだってことを教えてあげてくれよ。そうすれば、遺跡に挑戦することも、悲劇のエンディングを迎えることもなくなるからな! それじゃ、頼んだぜ」
 いつものように強気な笑みを見せ付けて、エドアルドは遺跡の探索に向かうメンバーを募った。


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参加者
幻虹陽炎・アゼル(c02796)
白衣の書生・クラウス(c03723)
守護騎士・ミルカ(c06334)
征服者・ヴィンツェンツ(c15253)
風に乗りて歩むもの・フェイリス(c16412)
黒色浮遊・サイファ(c24336)
堕落浪士・アミナリス(c24448)
バトルガントレットの城塞騎士・ヘレナ(c27908)
トーテンブルーメ・シュテファニア(c31524)
夜が訪れる刻・シキミ(c32374)

<リプレイ>


 風に乗りて歩むもの・フェイリス(c16412)の持参した照明の灯りが床の水溜りによって反射し、目の前にそびえる門を妖しく揺らめかせていた。
「この扉の向こうだね。入ったらこの扉の天使が襲ってくるのかな」
 彼の言葉に、白衣の書生・クラウス(c03723)も喉仏をさらしながら眼前を見上げた。
 ――タナトスの門。その煌びやかな門には、まるで生きたまま閉じ込められたように精巧な天使の彫刻が施されている。
「天国に一番近い場所、かな」
(「戦闘で荒したくないが……これ以上、天使に召される者を増やす訳には行かない」)
 彼の言葉に小さく頷く夜が訪れる刻・シキミ(c32374)。
「天使の石像が沢山並んでいるとは、元はこの遺跡も神聖な場所だったのでしょうね」
 堕落浪士・アミナリス(c24448)は「トレジャーハンター憧れの遺跡ね……」と気だるげに呟いてぼりぼりと後ろ頭を掻いている。今日も相変わらず「面倒くさい」と口癖を言いながら門を確認していた。
「腕を失ってなお、宝を求める情熱か……すごいなぁ……。でも、命には代えられないし……私たちが頑張らないと、ね……」
 トーテンブルーメ・シュテファニア(c31524)がゆったりと口を開くと、幻虹陽炎・アゼル(c02796)も柔和な表情を浮かべたまま言う。
「トレジャーハントに魅せられる気持ちもわかるけれど、見えてしまったエンディングは放っておけないからな」
 皆が意気込む中、バトルガントレットの城塞騎士・ヘレナ(c27908)は緊張した様子でそわそわと落ち着かない。
 仲間とアレックスの命がかかっているということで真面目に振舞おうとしているらしい。無事帰還したときのことを考えて、危険だと判断した脇道の扉をゲートエンブレムで封鎖もしてきた。準備は万端だ。
 エンドブレイカーたちは陣を整えて、いざ門の内側へ一歩足を踏み入れる。
 目に飛び込んでくるのは、思わず溜め息が出てしまいそうなほどに豪華絢爛な大広間。その中心の玉座に座るのは、宝を守るべく威厳たっぷりな天使の石像。
 エンドブレイカーが目の前まで足を進めると――石像が突如動き出し、一行の前に立ちはだかった。
 同時に門からは小さな翼をはためかせながら、大広間を埋め尽くす勢いで無数の天使たちが入り込んできた。
 シキミをはさみ、エンドブレイカーたちは前後の敵と向き合う。
「迎撃を開始する。背中を頼むよ」
 クラウスが背中越しに言うと、守護騎士・ミルカ(c06334)が騎士らしく、勇ましく応えた。
「こちらは任せてくれっ!」
「まずは小手調べ……いや堅さ調べと行こうか……」
 気だるげな物言いをしつつしっかりと鞘に手をかけてアミナリスが言う。
 そして一斉に襲い掛かる敵に負けじと剣を振るった。


 赤ん坊ほどの大きさの天使が、一斉に翼を羽ばたかせて突撃してきた。その様子は天使というよりはむしろ虫のようだ。
「生憎、しぶとさは人一倍でな」
 臆することなくむしろその群れに突っ込んでいく征服者・ヴィンツェンツ(c15253)が棍を回転させて天使を弾き飛ばす。もろい石造りの翼がもがれて天使がぼろぼろと墜ちていく。
 天使は30体。突撃攻撃をするものに気をつけていると、遺跡が崩壊してしまうほどの声量で繰り出される悲鳴に鼓膜をびりびりと震わされてしまう。
「こんなに大勢に歓迎されるとはね。まぁ、」
 戦闘前まではのんびりとしていたフェイリスがニヤリと笑って薄目をすっと開く。
 流れる所作で仕込み杖に手をかけると、今しがた攻撃してきた天使目がけて抜刀した。
 緩やかに見える斬撃はしかし目にも留まらぬ速さで敵を仕留める。
 ――と、背後からじりじりと熱い気配を感じた。それが石像のゴーレムによる炎の弾だと言うことに気づくのに時間はかからなかった。
 火球が飛散して大広間を煉獄に導いていく。
「やれやれ雑魚を早く倒してこちらのお手伝いがほしいところですかねぇ」
 にやにやと笑いながら黒色浮遊・サイファ(c24336)が攻撃を防御している。
 ちょっとした皮肉を言いながら、背中を任された身としては奮闘しなければならない。
「広がると厄介なのでね、その広さを封じさていただきますよ」
 黒いローブを翻しながら取り出したフラスコから赤い蠍を解き放つ。
 蠍は解き放たれると素早く石像に接近し毒液を吹きかけた。石像は痛みなど感じはしないが、それでもギシリと音をたてて動きにくそうにしている。
 それでも余裕の様子で動く石像ゴーレムと、背後には押さえきれずにこちらまでやってきている装飾天使たち。その2つに板ばさみになりながら、ミルカが強気に微笑んだ。
「威勢はいいな。だが――」
 チキリッ、と剣を鳴らして構え、一気にゴーレムとの距離をつめる。
「この程度で!」
 青白い神火に輝く剣を豪快に振り上げ、その場にいるものを一掃する。
 石像の肩口にビシッ、と亀裂が入り、巻き添えを食らった天使たちが「ギギイィィィィ!」と断末魔の悲鳴を上げてぼろぼろに崩れ去り塵となる。
 敵とほどよい距離を保ちながら、ミルカは騎士らしく凜と敵を見据えた。
「この程度で怯む私たちではないぞ?」
「そういうこと! だから甘く見ないほうがいいよっ!」
 続けざまにヘレナが肉薄し、ガントレットを大きく振りかぶってゴーレムを殴りつけた。
 小さい体からは想像もつかない強力な攻撃に石像が吹き飛び、広間の壁にめり込む。
 ヘレナはふんっ、と鼻をならして拳を構えている。さきほどまでの緊張はまだとかれていないようだが、その張り詰めた緊張感が彼女を洗練しているために不自然な硬さは見受けられない。
 側壁がぱらぱらと崩れて石埃が舞う中、むくりと立ち上がる石像の首はすっかり曲がってしまっているが、まったくの無表情が不気味さを際ださせていた。


 エンドブレイカーたちが圧倒的力を見せつけているとはいえ、装飾天使の数は多くなかなか数が減っていかないというのが現状だ。
「雲霞の如く、か。数は多いが……止めてみせなければな」
 背後の仲間を庇うように立ちはだかり、クラウスは淡く光を発する魔道書の頁をぱらりとめくった。
 もはや目の前の天使たちよりも神々しい光を湛えながら、手で敵を指す。
 刹那、見えない衝撃波が一直線に撃ちだされて天使たちを一気に穿っていく。
 フォースボルトに翼を打ち抜かれ首をはねられた天使たちがばらばらと床に転がっていった。
「石像とはいえ赤ん坊が戦う姿はぞっとしない、大人しく眠れ。子守唄は唄ってやれないが、な」
 しかし天使は攻撃の勢いを緩めない。
 アゼルは全体の様子を見ながら、色男らしい優雅な振る舞いで、とんっ、と一歩引いた。
「さすがに数が多いね。一気に叩かせてもらうよ」
 そして星霊を召喚すると、いとおしそうに柔らかい毛並みを撫でてやった。
「レム、彼らに眠りを」
 解き放たれた星霊ヒュプノスがふわふわと天使たちの間を縫うように躍動する。その愛らしい動きに目を奪われた天使たちは突然糸が切れたように動きを止め、床に体を叩きつけて沈黙した。
「対妖精……か。負けられないね、スヴュート……!」
 普段は口下手でのろのろと話すシュテファニアだが戦闘中は迷いがないためかはっきりとした口調だ。
 彼女の言葉に従い、妖精のスヴュートが群を率いて一気に突撃を開始した。
 妖精と天使が突撃し合って入り混じる異様な光景だったが、最後に勝利したのは妖精だったようだ。
 次々と羽をもがれて天使たちが落下していく。
 ついに全ての装飾天使が打ち落とされたことを確認してクラウスは踵を返した。
「此方は終わった。最後の天使、全員で打ち砕くとしよう」
 その視線の先では、ビキビキと入ったヒビによりまるで涙を流しているような天使の石像が、今まさに攻撃を繰り出そうとしているところだった。


 天使の歌声が大広間に響く。その音は可視の弾丸となって天使の周囲に浮かび上がり、一直線にエンドブレイカーたちに放たれた。
 音の弾は大爆発を引き起こし、着実に一行を襲っている。
「こりゃ……防ぐより避けたほうが早そうだな……」
 言葉こそ棒読みで台詞じみているが、アミナリスはじぃっと敵の攻撃を真剣に見極め床を蹴った。
 そして音の弾丸をすれすれのところで回避しながら、剣先を敵に向けた構えで一直線に敵の懐へと突っ込んでいく。
 アミナリスの攻撃に気づいて敵が体を反転させるがそれよりも彼の攻撃の方が早かったようだ。剣は天使の腹を貫き風穴を開けた。
 間髪入れずに連携をとったシキミがキリッと前を見据えた。
「天の使いが人を殺めるなんて、そんな間違った悲劇は起こさせませんわ」
 すっ、と敵を指差すと、命に従い召喚された妖精たちが彼女の周囲に沸きあがる。
「妖精達よ、わたくしの仲間達の手助けをお願いしますわね」
 直後、フェアリーストームが石像に襲いかかった。
 ゴーレムの脆い部分を狙うように、妖精の針が敵を貫いていく。
 数に圧倒されて石像が動いているが、この数を回避するのは難しいようだ。敵の体には無数の穴が穿たれとても天使と呼べる優雅なものには見えない。
 虚空を見つめる天使の瞳が、ギロリと目の前を見つめ――前衛として構えていたヴィンツェンツに飛び掛った。
 伸ばされた爪が彼の体を抉る。噴き出した血が天使の染め上げ洗礼な姿を堕天させる。
 ヴィンツェンツはよろりとしながらすぐに後退して敵との距離を測る。そこへ援護するために飛び出したのはミルカだ。
 裂帛の気合いはそのまま彼女の力を示し、爆発的な風となって大広間を震動させた。
「悪いが、これで終わらせる!」
 風を纏ったまま床が捲れ上がるほどに蹴って敵に肉薄すると、渾身の力を篭めて剣を振るった。
 妖しく揺らめくブラッドソードが敵の体を力任せに突き、生命力が傷口から漏れ出した。
 剣は漏れた生命力を吸い尽くし奪い取る。
「お助けいたします。次につなげてくださいな」
 相変わらずにやにやしたサイファが言い、彼の周囲にざわざわと影が具現化される。漆黒の帯のように伸びる腕は刃を所持し、四方から石像に這い寄っていく。
 影の刃が天使を攻撃し、そこからヒビが広がって左腕がゴトンッと音を立てて床へと落ちてしまった。
「言われなくても続くつもりだよ」
 シャドウリッパーの間を縫って石像に近づくと、フェイリスは天高く飛び上がった。いきなり目の前から消えたフェイリスに敵が翻弄されているところに、頭上からスカイキャリバーで立ち向かう。
 ぐらりと傾いたゴーレムをしっかりと見据えてヴィンツェンツが空中に紋章を描く。滑らかな指の軌跡に、ぼうっと狂王アニールの紋章が浮かび上がり、邪悪な呪力が這うように広がっていく。
「止まる事無き我が主君。蹂躙し強奪し征服を為さん。我が主君の名は――強欲。さぁ、死という未来を再征服して塗り替えろ!」
 禍々しい赤紫色の呪力が敵を取り囲むように広がり、幻影となって翻弄していく。
 ガクンッと音を立ててゴーレムが崩れ落ちた。
 それを好機とみたアミナリスが鞘に手をかけて飛び出す。一度剣は抜いていたのだが居合いのためも含めて一回一回鞘へと戻しているのだ。
 太刀がすらりと抜かれて大広間に差し込む光を反射して煌く。月光斬は時が止まったかのように緩やかな弧を描くがその時間は刹那だ。
 鋭い切り込みが天使の羽を切り落としバランスを崩させる。
「これで最後だよっ!!」
 もぎとられた羽が床に落ちて石埃が舞う中、間髪入れずにヘレナが煙をきって飛びだした。
 一瞬遅れて攻撃に気づいたゴーレムが曲がった首をなんとか動かしてヘレナの方を向くが、そのときにはすでに彼女の大きく振りかぶった拳が眼前まで迫ってきていた。
 そして強烈なフルメタルナックルが炸裂し、衝撃にゴーレムの体が捻じ曲がって回転する。
 ゴーレムがどんっ、どんっ、と何度か床をバウンドしているうちに次々と体は崩れていき、ついに首がもげて四肢がばらばらになり天使はその動きを止めた。
「さて、これで一先ず大丈夫かな」
 フェイリスは刀の汚れを一振りして落とし、すっ、と鞘に戻すと今まで開きっぱなしだった瞳をいつもの細長く柔和なものへと戻していく。
 きらきらと光が差し込み輝く大広間の中心、役目を終えた天使たちがその羽を休めて穏やかな眠りへとつく。


 宝物があるだろう小さな扉。誰がそこへ向かうか、ここは公平にじゃんけんで決めようという結論になり、エンドブレイカーは円になって拳を構え、シキミが全員を見据えた。
「うらみっこなしですわよ。――いきますわよ」
「「「「さいしょはぐーっ! じゃんけん」」」」
 ぽんっ!
 おのおの出した拳を真剣に見比べる。
 アゼルとシュテファニアがパー、クラウス・アミナリス・シキミの3人がチョキ、ミルカ・ヴィンツェンツ・サイファ・ヘレナの4人がグーという結果になった。
 残されたのはアゼルとシュテファニアだ。
「宝物が一体なんなのか楽しみだったからね、負けないよ?」
「私も……」
 にっこりと笑うアゼルにシュテファニアがゆったりと答え、2人が拳を上げた。
「あいこでしょっ!」
 出されたのは2つのチョキ。あいこだ。
「あいこで――しょっ!」
 最後のじゃんけん。出されたのはチョキとグー。
 グーを出したシュテファニアが、ぼうっとした様子で自分の出した拳を見つめる。
「勝った……」
 観戦していた仲間から「おーっ」と拍手が起こった。
 後腐れない結果に皆納得し、宝物はシュテファニアが手に入れることとなった。
 なんのへんてつもない扉にシュテファニアが手をかけ、ゆっくりと押す。
 ――すぐに、周囲が光に満たされた。
 小さな部屋の天井はガラスになっていて天使の絵が描かれている。そのガラスがきらきらと光を反射し、部屋の中を洗礼された純白としていたのだ。
 中央には、ゴーレムが座っていたのと同じように真紅の玉座があり、宝物が大切におかれていた。
「これは……」
 それは靴だった。ブーツだ。
 死の門をくぐった後に天国でも自分の足でしっかりと進んでいくことができるように――そういう意味がこめられているのかもしれない。
 シュテファニアは手に入れた宝物を大事に胸に抱えて、小さく微笑んだ。

「――えっ!?」
 一足遅れてやってきたアレックスには、大広間で出会った。
 そしてゴーレムのことや宝物はすでに手に入れたことを説明されると、アレックスもがっくりと肩を落としながら納得した様子だ。
 無事にアレックスにも出会えたことでようやく緊張が解けたヘレナがはしゃぎ出し、エンドブレイカーたちも一息ついてアレックスと共に遺跡を後にした。
 これでもう二度と誰かがこの門をくぐり命を落とすことはない。
 残ったのは美しい大広間と、その先にある天国の光景。
 タナトスの門という別名は今回を最後に忘れ去られ、本来の神聖な天国の門として存在することだろう。



マスター:高橋なつき 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2012/10/29
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