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お菓子を求めて大暴走!?

<オープニング>

●暴走するマシンフェアリー
 三塔戒律マギラント。この三つの塔からなる都市国家内では、現在バルバやピュアリィといった害獣レベルでの『厄介者』が一般的に発生している。本来なら兵器として正しく運用されている筈のそれは――時に暴走し、他の塔の領域で騒動を起こしていた。
「うぉおおお!? や、やめろぉ! 俺の店を壊すんじゃねぇ!!」
 ある店屋の店主が、闇色に染まったマシンフェアリーの傍若無人な暴れっぷりに、涙を流しながら悲鳴を上げていた。どっかんどっかん壊されていく大切な店や商品達。機械的な鎧を纏ったマシンフェアリー達は、店主の叫びも無視して槍振り回したり、黒い魔法の球体を投げつけたりしている。
 やりたい放題だ。このままでは店主の大事なお店が粉微塵になってしまう。
「いい加減に……いい加減にしやがれー!」
 そうなって生きていく希望も無くなる。無謀だと心のどこかで思いつつも、店主は拳を振り上げてマシンフェアリーに挑むのであった。
 ……だが、ただの店主に……そう、ただの『お菓子屋さんの店主』に兵器であるマシンフェアリーに勝てる道理は無い。
 すぐに店主は殺されて、大事な店も木っ端微塵に壊されてしまうのであった。

●とりあえず止めましょう
「と、それがあたしの見たエンディングなんだけど……んー、その前にこのマギラントの状況を説明するな。えっと、あんた達も知ってるように三塔戒律マギラントには、黒の塔、緑の塔、銀の塔という勢力が存在してるんだけど、今ちょっと関係が険悪になってるんだよ。それぞれの塔には、最強のメイガスである「マスターメイガス」を操る塔主を筆頭に、知識の鎧(メイガス)を纏うメイガス乗り、塔主の命令に忠実に従う、レッサーデモン、アサルトバグ、マシンフェアリーという従者兵器があり、常に互いを武力で牽制しているっていうのが今の現状だぜ。幸いな事に、多数のメイガス乗りが招集される大規模戦争は、ここ数十年起こってないようだけど……いつ何が起こるか解んないぜ。特に最近は、今話したエンディングみたいに従者兵器が、他の塔の領地に被害を与える事件が続いていて、緊張が高まってるしな」
 長い説明を終えて、閃きの錬金術士・ガーネット(cn0130)は溜息を一つ吐いた。
 マギラントに着いて早々見知った厄介な現実。三派閥による緊張は、既に一種の戦争状態だ。
「それで、今回の事件の発生場所だけど……黒の塔の領域でマシンフェアリーが暴走する。お菓子屋さんで大暴れするってのは想像すると何か可愛らしいけど、実際問題堪ったもんじゃない。エンディングには人死にも出てたしな。何とか止めてやってくれよ」
 ガーネットの言葉に頷く一同。お菓子を求めるだけならまだしも、物を壊し、命を奪う暴走を見過ごす事はできない。全力で事に当らねば。
「実際に暴れるマシンフェアリーは五体。肌の色が闇色になってるから解りやすいと思うぞ。ただ、攻撃方法に魔法的なものがある。気をつけないと店と店主を守り抜くのは難しいぜ。あと、街中だから周辺の人達にも目を配ってな。エンディングでは店主以外は殴りかからなかったけど実際はどうなるか。一応あたし達の役目は暴走したマシンフェアリーを撃破することだけだけど、どうせなら最高の形で終らせたいしな」
 助けられる命があるならば、助ける事に異論があろう筈も無い。
 ついでだ。一仕事終えた後はお菓子屋で何か甘い物でも食べて帰ろう。
「あ、あと、少し心に留めて置いて欲しい事が……実はこういうマシンフェアリーの暴走で銀の塔への抗議が行われているんだよ。でも銀の塔は『マシンフェアリーを暴走させているのは、緑の塔と黒の塔である。暴走したマシンフェアリーの変化を見れば、それは一目瞭然であろう』と、逆に緑と黒の塔に抗議を行っている状況なんだ。これでますます緊張が高まっちゃって……ようするに、今の段階では何も確証が無いから慎重にって話だぜ。こういう時こそ、急がば回れってやつだ。じっくり行こうぜじっくり」


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参加者
白雪の騎士・メイフェリア(c01621)
数学屋・キッド(c02698)
永誓の蒼き隼・ミュルス(c04654)
氷笑アルテミス・ジュリア(c17193)
放浪パティシエ・アミュグデール(c18191)
夕焼けポルカ・ウグニア(c20212)
風渡り・アル(c20398)
水天の妖剣・クリム(c20805)

<リプレイ>

●者ども、話を聞きなされぃ!
「――本当だって! 暴走マシンフェアリーがこっちに向かって来るのを見たんだよ! ここは危ないから早く逃げて! ほら店主さんも! 街の人も早く!」
「本当ある! ウグニアの言うとおりあるよっ! アル達が撃退するから慌てず速やかに安全なところに隠れてて欲しいあるよ! お菓子屋さんを襲うなんて許せないある――じゃなくて違ったあるっ。罪もない人達を困らせるなんて許せないあるからな!」
 現場に急行したエンドブレイカー達。その中で夕焼けポルカ・ウグニア(c20212)と風渡り・アル(c20398)の、二人の少年少女が懸命に事情を説明し、周辺住民の避難を促していた。
 中には大騒ぎして、混乱の極みにある人も居たが、そんな者達は氷笑アルテミス・ジュリア(c17193)が冷静に避難誘導を。
「こっちだよ。慌てる必要は無いから、安心して離れていて」
 敵が出現する前に、本格的な戦いが始まる前に、周囲に被害が及ばないであろう場を作り上げる。
 エンドブレイカー達が慌てていたのでは、住民達も等しく焦ってしまう。それを知ってか知らずかジュリアは慌てる様子を微塵も見せずに、住民達を避難させていた。
 滞りなく進む避難活動。自身もそれを手伝いながら、胸にある種の怒りを宿す放浪パティシエ・アミュグデール(c18191)。流れの菓子職人としても活動している彼からすれば、今回の事件は、菓子店が破壊されるこのエンディングは、とても看過できるものではないのだろう。
(「大切なお店を破壊された上に殺害されちゃうなんて気の毒すぎるよ……こんなエンディングはさっくり料理して、甘くて美味しいエンディングに変えちゃおうね」)
 横目で向けた視線の先にあるのは、立派なな菓子店。甘いケーキやクッキーの匂いが店の外まで漂ってくる。こんな美味しそうな店が破壊されるなんて――アミュグデールでなくとも見過ごせない。
「うん、これで大体避難は終ったね……ニコ、離れていて。ちょっと危ないからね」
 粗方の避難が済んだのを確認した後、ウグニアは自らの肩に乗っている一羽の小鳥に声をかける。今から此処は戦場になる。そうなれば小鳥の一羽、簡単に巻き込まれてしまうだろう。主人の言葉に従い離れていく小鳥。
 だが、中には中々離れない者も。それはある意味当然な――菓子店の店主だ。
「お、俺は離れないぞ! この店は俺の命だ! 俺が護らねぇで誰が護るってんだ!」
「僕達が護る。街の人たちも、貴方も、そしてこの店も。全て護る為に僕達が来たんだよ……店主さんは全て終った後、美味しいチョコを売ってくれればいいからさ」
 数学屋・キッド(c02698)が説得をして、店主を店先から離れさせる。全ての仕事が終った後、この店の美味しいお菓子を馳走になる予定なのだ。最初から被害を出す気は無い。
 全て護りきってみせると、その態度で表明して見せた。
 やがて、闇色の肌をした集団がこちらへ向かって駆けてくる。黒き肌となった暴走マシンフェアリー達だ。エンドブレイカー達は揃って武器を構え、その集団を迎え撃つ。
「マシンフェアリーに被害を出させない為にも、ここで止めなければ。……刃を向ける覚悟は出来ている、妖精騎士だからこそ眼を背ける訳には行かないんだ」
「……みんないくよ! ボクらであの子たちを止めてあげるんだ!」
 二人の妖精騎士。水天の妖剣・クリム(c20805)と白雪の騎士・メイフェリア(c01621)は互いに妖精を呼び出しつつ、迫るマシンフェアリー達に攻撃を仕掛けた。
 クリムは多数の妖精の群れに命じ、範囲攻撃陣系を敷いて突撃させる。形は違えど、自らが使役する妖精と同じ名を持つ者を撃つ。その事に痛みを覚えながら。
 メイフェリアは妖精達と力を合わせ、華麗な連携攻撃を。月の魔力が篭められた剣で妖精を斬る――その現実にめげそうになる自分を叱咤しながら。
 そして――風の霊棍を旋回させつつ、永誓の蒼き隼・ミュルス(c04654)は敵を見据える。
「信念なき破壊は憎しみしか生まない不要な存在、故に価値なき貴女達は殲滅するのみ……来なさい。制御できなくなった破壊だけの妖精達。私が終らせてあげる」
 暴風が巻き起こり、攻防一体の棍旋風が敵の前に障壁となる……そしてエンドブレイカーとマシンフェアリーは激突した。

●護れ菓子店!
「アルのお菓子を台無しにはさせないあるーっ! お店を壊したりさせないあるからなーっ!」
 飛来する黒き魔力球を、己が体で受け止めるアル。前衛の数は五人。この五人が敵の射線上に立ち店を、そして周辺を護る。受ける痛みは大きく危険も多々あるが、エンドブレイカーの目的、悲劇を砕く為に迷わず遂行する。
「行くあるよエリエ! 合わせるあるっ!」
 妖精の攻撃に合わせて鞭を振るうアル。妖精と共に、目前のマシンフェアリーを確実に抑える。
「ふっ! そう簡単にはお菓子屋さんを攻撃させないよ! 故意だろうと事故だろうと関係ない。キミ等の攻撃は僕達が絶対に届かせない!」
 円月の構えからなる反撃態勢で、マシンフェアリーの攻撃を捌きつつキッドは猛る。月の弧を描く斬撃で応戦しながら、彼もまた作戦通りに敵の攻撃を防ぎきっていた。
「――そこね。後ろは気にしないでいいよ。私達が見てる」
 そんな前衛陣の後方では、ジュリアが曇りなき眼で戦場を見据え、正確な射撃で援護を。
 番え引くのは狩用の合成弓。冷静に敵の四肢を射抜き、その動きを阻害させる。
「アージェ、皆! もう一度武装して突撃! 休む暇を与えないでくれ!」
 自らのフェアリーに指示を放ちつつ、後衛の任を全うするのはクリムも同様。マシンフェアリー達に攻撃を休む事無く続けて――同時に周囲への警戒も怠らない。
 万が一にも周辺住民が寄って来てもらっては困る。後方より全体を見ながらクリムの戦いも続く。
 だが、さりとてマシンフェアリー達もエンドブレイカーを薙ぎ倒して破壊活動を為そうとする。何がそこまで彼女達を暴走行為に駆り立てるのか定かではないが、手にした槍に黒き輝きを纏わせて放たれるのは連突き。正面から喰らい、苦悶の声を上げるメイフェリアとウグニア。
「この子達は……っ! もう、駄目なんだね。ボクの声、もう届かないんだね……!」
「……機械妖精ってやっぱり普通の妖精とは違うね……ううん、暴走してるからなのかな。触れ合っても今は無理……どうにもならないか」
 ただただ攻撃を繰り返すマシンフェアリーに思うところは多々ある。彼女達の容姿から考えて、本来なら背後の菓子店の客として、これほど似合う者も居ないであろうに。
 けれど、今は詮無き事。言葉は通じず、返って来る応えは武器と魔法による攻撃のみ。
 魔力を編み上げた月光のカーテンを閉めて、身を清めると同時に防御を固めるメイフェリア。
 高々と跳躍し、華麗な襲撃を連続で浴びせかけるウグニア。
 思うところはある。けれどそれらの煩悶を今は胸の内に仕舞い込み――戦いは続く。
「舞咲くは蝶、誘うは夢幻……終曲へと導きましょうかしら」
 ミュルスの掌より、無数の金色の蝶が舞い踊る。
 黄金蝶の乱舞。変幻自在に舞う黄金蝶の舞は、夢とも幻ともつかぬ世界を創りだし、その世界の中でマシンフェアリー達を蹂躙する。敵対者に容赦は無い。暴走した機械妖精にミュルスが与えるのは、今の彼女達が行おうとしている破壊そのものだった。
「君達みたいな容姿の子が、お菓子屋さんを破壊する為に武器を振るうなんて、本当に空から飴が降るくらい有り得ない事だよ……ごめんね? 食材切る為でもなく刃物振るうのは趣味じゃ無いけど……容赦はしないから」
 笑顔は絶やさぬまま――されど瞳に一切の躊躇い無く、アミュグデールはナイフを投げつける。
 マシンフェアリーの体に突き刺さっていく多数のナイフ。針鼠と化したマシンフェアリーの一体はその場に崩れ落ちて――その姿を消失させた。
 残るは四匹。次は誰をカッティングしようか――そんな事を呟きながら、アミュグデールは再度ナイフを構えた。

●倒れ逝く機械妖精
「平伏しなさい……苦しんでくれないのならばせめてその散り様で興じさせなさい」
 対峙するマシンフェアリーの脳天に、上空から棍を持って強襲するミュルス。風の霊棍に闘気を集中させて、一撃にて打ち砕いた。
 無表情な顔のまま消えていくマシンフェアリーの体を見て――すぐに視線を別の個体に向ける。振るう棍の風は、まだまだ治まっていない。全ての敵を打ち倒すまでミュルスの暴風は止まらないだろう。
「ほら、もう少し。私が風を送るよ。最後まで頑張ってね」
「こっちも。ライフベリー欲しい人いるかい? 今ばら撒くよ」
 減ってきた敵。優勢のまま進む闘い。それら全てに気を抜かず、後衛よりジュリアとアミュグデールの援護が飛ぶ。癒しの風が傷を癒し活力をもたらして、ばら撒かれたライフベリーが体を浄化し体力を回復させる。
 援護には回復も含まれる。ただ攻撃を繰り返すだけのマシンフェアリーと、回復も念頭に入れたエンドブレイカー達とでは、その時点で戦いの優勢が決まる。
 そしてその結果は目の前に。既に残ったマシンフェアリーは二体のみだ。
「それにしてもアル達の妖精とは大違いあるね? ちょっとミステリアスで素敵あるけど……そろそろお終いあるっ! この後はお菓子が待ってるあるからねーっ!」
 これで果たして何度目か。アルは妖精と息を合わせて、連携攻撃を仕掛ける。妖精の舞が、アルの鞭打が、マシンフェアリーの体を打ち据えて――。
「それっ! 機械妖精さん達! オヤスミの時間だよっ!」
 天高くより、ウグニアが強襲。一見すれば普通の安全靴。その安全靴に仕込まれた鋭利な刃が、マシンフェアリーの頭上に襲い掛かる。突き刺さるよう撃ち込まれた刃。ぐらりと揺らめき倒れ、消えていくマシンフェアリー。
 残るは一体。既に勝敗は決した同然だが――やはりそれでも、彼女達の暴走は止まらない。闇色の魔力球を撃ち出して、槍を突き出して、尚も破壊行動を続行する。
「このっ……この期に及んでお菓子屋さんを襲うなんて、言語道断ー!」
 続くマシンフェアリーの攻撃を防ぎながら、キッドは鬼を纏う。そして振るわれるわ鬼斬の太刀。鬼を斬る一閃を浴びて大きな傷を負うと同時に、放出された斬気がマシンフェアリーの態勢を崩す。
 防御が崩れた無防備な状態。止めを刺すのに、今を逃す手は無い。
「できればとどめは刺したくないけど……どうにもならないからね。辛いけど終らせるよっ!」
 顔を歪ませながら、メイフェリアが最後の止めを。
 最後の一撃は自らの妖精と共に。華麗な、舞い踊るような連携攻撃。
 けれど、メイフェリアの顔に歓喜の色は無く、ただ憂いに満ちた顔だけがあって。
「……おやすみ……機械で出来た私達の友よ……」
 思わず、クリムも祈りを捧げていた。
 暴走し、元に戻る事無く消えて逝った機械妖精の最後を見送って――。

●勝利の味はとても甘くて、ちょっぴり悲しい
「これは……!? む、むむむ……これは唸るね。南瓜のシフォンケーキは薄味になったり南瓜の味が濃すぎたり分量が難しいところなのに、これは極々自然に南瓜の上品な甘味を残してる……それに食感も最高のしっとりふわふわ感で……む、むむむむ……!」
 振舞われたお菓子とお茶で、簡単なお茶会を楽しんでいる一同であるが、その中でアミュグデールがやけに唸っている。どうやら将来スイーツ店を持ちたいと思っているパティシエの彼は、このシフォンケーキに対抗心を燃やしているようだった。目の輝きと燃え具合が凄まじい。
「……なに、これ? 何でしつこくないの……? 練乳のロールケーキよねこれ……何でここまで濃厚なのに口の中に残らないのかしら……滑らか過ぎるわよ……」
 ミュルスもまた、練乳のロールケーキをガン見して眉根を寄せている。戦闘中一度も揺らがなかった顔が僅かとは言え揺らいでいる。店主にレシピの伝授もせがんでいるし……果たして彼女は自身でこのロールケーキを作れるようになるのだろうか。
「そんな、売ってくれるだけでいいぜ。これだけのチョコを買わずに貰うなんて僕には出来ないよ」
「そんなこと言わず貰ってくれ! あんた達のおかげで俺の店は傷一つ無く無事なんだ!」
「……解った。じゃあこの二箱は貰うよ。ただ、そっちのチョコレートケーキは買っていくよ。いくらかな?」
「おう! ありがてぇ! えっとこっちはだな――」
 キッドは箱詰めのチョコを貰いつつ、チョコレートケーキも買っていた。チョコは試しに一個食べたら、上品で滑らかな口解けの甘さの絶品であった。これだけのチョコで作られたケーキは果たしてどれだけ美味なのか……考えただけで垂涎ものだ。
「本当に美味しいある〜! このガトーショコラ、生クリームと一緒に頬張ると、もう最高あるよ〜……何でこんなに美味しいお菓子屋さんをマシンフェアリーは襲ったあるかね?」
「私も気になっていた。今回みたいな事ってよくある事なのかな?」
 アルとジュリアは、比喩抜きで蕩けるガトーショコラに舌鼓を打ちつつ、店主にマギラントで発生している事件について問うた。
 どうやら、今回のようにマシンフェアリーが暴走する事件は多々あるらしい。半ば日常にもなっていて……その所為もあって、最近塔の勢力間はかなりの緊張状態とも。
「難しい状態なんだね……あ、ニコどうしたの? ……ああ、ごめんごめん、ニコも食べたかったよね。ええと、このケーキが良いの? それじゃおいで食べさせてあげるから」
 相槌打ちつつ、肩に飛び乗った小鳥にケーキをあげるウグニア。微笑を浮かべながら、小鳥の頭を優しく撫でて、ほんわかした空気を醸し出す。甘いお菓子と可愛い小鳥のコンビネーションに、かなり頬が緩んでいるウグニアであった。
 だがそんな中――黒いチョコレートクッキーを手に取りつつ、クリムは悩む。
(「闇色の肌と魔力球、関係があると考えた方が自然か。しかし……」)
 嫌な考えが脳裏に浮ぶ。だがまだ何も確証は無い。すぐに頭を振るって振り払い、チョコレートクッキーを口に放る。しっとりとした甘さとサクサクとした食感が、嫌な考えを払拭する。折角店主が笑顔で喜んでいるのだ。こちらの不安を悟らせる訳にはいかなかった。
 メイフェリアもまた、倒れ消えたマシンフェアリーを思いながらケーキを見詰める。
(「あの子達を助けられなかったのはやっぱり悲しいなぁ……色々調べたい事もあったし残念だよ。でも、おいしいお菓子を食べることができた。それは少しは守ることのできた物があるって事だよね……次は、もうこんな思いしなくていいようにしたいな」)
 悲しみを含んだ笑みでケーキをぱくりと一口食べる。
 広がる甘さはとても甘くて美味しくて……ほんのちょっぴり涙の味がした。



マスター:哀歌 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/11/06
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