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拝啓、親愛なる

<オープニング>

●幼心が抱く夢
 幼い頃の憧れは、中々色褪せる事はない。緑の塔の領域にある村に住む少女、ルゥにとってのそれは、お気に入りの物語に出てきた勇者達の事に他ならなかった。
 剣を振るい、魔力を行使し、或いはその知識をもって、人々の生活を脅かす者達を倒してゆく勇者達。ルゥは彼らに憧れ、そんな人達に出逢う日を夢見ていた。それは背丈が少し伸びてきた今でも変わらない。メイガス乗り達も格好良いと思うけれど、身ひとつで武器を手に戦う彼らの方が、より眩しく見えたのだ。
 しかし、彼女の気持ちを否定したのは幼馴染の少年だった。
「そんなの物語の中だけだし。勇者なんて言えるような強い奴、実際はいねーよ」
「なんでそういう意地悪な事言うの!? ジオのバカっ、知らないっ!」
「バ……バカはルゥの方だ! こんな森ん中ひとりで入るとかさ!」
 勢いよく歩き出した少女。少年が腕を咄嗟に掴んだのは、これ以上先へ進ませない為だった。森の奥は危ないと、大人達から言い聞かされていた。何より、どこか危なっかしい幼馴染をひとりきりにするのは心配だったのだ。その思いも虚しく、少女は少年の制止を振り切って森の奥へと進み始めた。
「勝手に着いてきたのはジオなんだから、ひとりで帰ればいいでしょ。それに良いじゃない、私はひとりで森に行きたかったんだから……馬鹿にするだけなら放っておいてよ!」
「ルゥ!」
 少年の手を振り解き、走る少女。次第に森の奥へと遠ざかる少女の背を、少年はただ見つめるだけだった。しかし、少し行った先で少女は自ら足を止めた。
「……ルゥ、どうしたんだよ。一体何……が……!」
 不思議に思った少年が少女に駆け寄った先で見たものは、緑色の妖精の姿。彼らにも分かる、暴走したマシンフェアリーの姿だった。足が竦んだ少女を庇う為、少年は妖精達の前に立塞がった。
 せめて彼女だけでも助けたい。そう願い立ち向かう少年の姿に、少女は――、

●語り部の声
「緑の塔の領域に暴走マシンフェアリーが現れる。倒しに行って貰えないだろうか」
 秉燭の自由農夫・ヨスガ(cn0160)が語ったのは、とある少年と少女の話だった。
 少女はルゥ、少年はジオ。幼馴染である二人は、訪れた森の中でマシンフェアリーに襲われ、そのまま命を落としてしまう。
「被害はそれだけに留まらない。彼らが命を奪われた後、彼らの住む村もフェアリー達に襲われてしまうんだ。だから、君達にそれを阻止して欲しい」
 マシンフェアリーの数は5体。身体に緑の色を纏い、蝙蝠のような羽を持っている。攻撃力が高く、耐久力が低いのはこれまでに出現した物と同様。それぞれが異なる武器を有しているが、何れも近接攻撃しかしてこないらしい。現場となる森と村までは少し距離がある為、その場で倒してしまえば村に危害が及ぶ恐れはない。問題となるのは、現場に居合わせるルゥとジオの事だという。
「出来るだけ、彼らが傷付かないようにして欲しい。配慮の仕方は君達に任せるよ」
 牽制し合う三塔の塔主達。従者兵器による被害は頻発しているが、何れの塔もその責任を追う事はなく、拮抗したままの状態が続いているのが現状だ。それでも、自分達が介入する事で助かる命があるのなら、見過ごす事など出来はしない。ヨスガはそう告げ、思いだした事を最後に添えた。
「そういえば、ルゥは『勇者様』に憧れている子らしくてね」
 それは三塔主が言う意味合いではなく、彼女が好む物語に出てくる者達の事らしい。
 剣を振るい、魔力を行使し、或いはその知識をもって戦う者達。もしかしたら、エンドブレイカー達が戦う姿は、少女の目には『勇者様』のように映るかもしれない。
「人々の命は勿論だけれど、小さな女の子の夢も、守ってあげたいって思うんだ」
 だからほんの少しだけ、格好良く華麗な気分を持って戦うのはどうだろう。
 気構えひとつで良いし、勿論無理にとは言わない。
「そんな風に気に留めてくれるだけでいいよ、だから是非」
 命と夢と、何よりも未来を守ってあげて欲しいのだ。
 襲われる瞬間、少女の為に勇気を振り絞った小さな勇者と、少年を助けて欲しいと勇者の名を呼んだ、優しい少女の為に。


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参加者
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
蒼穹を翔る風・ランディ(c04722)
唄猫・ユリウス(c06006)
風鞘・サーシス(c18906)
夕焼け小焼けの・タユ(c20343)
手折られた花・ジョシュア(c22256)
ナイフの狩猟者・カイン(c22309)
退紅の狗・アオト(c32000)

<リプレイ>

●序章
 今日、少年少女に齎されるものは、彼らの未来を奪う死の終焉。
 それを阻止する為にエンドブレイカー達は森の中を急いでいた。闇雲に探すのではなく、しかし確かに足早に。その道中、ナイフの狩猟者・カイン(c22309)は抱いていた疑問を投げかけた。
「3人の塔主達は、この事を知っているのでしょうか?」
 先に行われた塔主達との会談、そして情報屋達の話から察するに、従者兵器による被害に関して、各塔はそれを認識している。しかし、責任の所在に言及する塔はひとつもない。だからこそ、彼らはこうして森へと向かうと決めたのだ。
「しかし、どうしてルゥ嬢は森に行きたがったんだろう?」
 そもそもの理由に頭を捻らせていたのは風鞘・サーシス(c18906)だった。危険と言われていた森に、少女は自ら赴いていったという。答えたのは夕焼け小焼けの・タユ(c20343)だ。
 物語への憧れゆえではないかと、タユは言った。
「あたしにも覚えがあるわ」
 本の中だけにある、無現の世界。その中で戦う、勇者達の姿。剣や魔力を操り、知識をもって道を切り開く姿。それは幼い心を震わせ、眩しいまでの憧れを抱かせるもの。ルゥという少女にとっての憧れはそれであり、一方で退紅の狗・アオト(c32000)は、別の憧れの形を脳裏に浮かべていた。
(「大切な誰かを守るために勇気を奮う人の方が、僕には眩しく見えるけどなぁ」)
 例えば終焉の中、少女の為に身を呈した少年のように。苦言を漏らしながらもルゥを一人にしなかったジオ、その心中を察し唄猫・ユリウス(c06006)は微笑んでいた。
「ま、呼ばれたんなら行くしかないでしょー」
「そうだね。しかし、まさかユーリと一緒になれるとは……こちらでも宜しくね?」
 胸に挿した花を愛でていた手折られた花・ジョシュア(c22256)が、信頼する友の愛称を呼んだ、その時だった。
 ユリウスの視線がある一方へと向けられた。
「――あッちか……!」
 足を止めた一同の耳に聞こえる、誰かの声。言い争うような、子供の声だった。
「近いな、急ごう」
「行きましょう、先導します」
 阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)が一目散に駆け出し、蒼穹を翔る風・ランディ(c04722)が間髪入れずにそれに続いた。誰一人遅れを取るような事は無く、一同は森の中を一斉に駆け抜けてゆく。
 恐怖に震える呼び声よりも先に、彼らの元へと辿り着く為に。

●その手を離さない
 彼らの視界に飛び込んだものは、震える少女を背に庇う少年と、機械妖精達の姿だった。
(「ルゥだけでも逃さないと……!」)
 焦りの色を表情に滲ませる少年も、恐怖を感じていない訳ではない。先程から足元は震え、指先は酷く冷たい。それでも、せめて幼馴染の少女だけは。
「ルゥ、逃げろ!」
「む、むり……動けない、よ……」
 しかし足が竦んだ少女は動けず、涙を溜めて震えていた。妖精達は容赦なく、彼らへと迫る様に前進する。襲ってくる痛みに覚悟を決めて少年がきつく目を瞑った、その瞬間、
「――お待たせ!」
「はい、其処まで」
 連なった声に驚いて少年が目を開ける。目の前にいたのは妖精達ではなく、知らない三人の姿。
「僕達が来たからには、もー大丈夫だよ」
「間一髪、ってことかな」
 溌剌としたユリウスの声に、アオトが続く。彼らの更に前方には、既に武器を構え終えた五人の姿があった。
「……此処からは僕らの仕事、だよ」
 ジョシュアの言葉に目を丸くして驚く少年、代わりに声をあげたのは尚も震えている少女だった。
「ゆ、勇者……さま?」
「そんな柄じゃ無いな、只の冒険者だ、だけど……」
 期待を込めた様な言葉に返されたのは、淡々とした言葉。しかし、誰かが理不尽に傷付けられるのは気に入らないと続けられたランディの言葉に、少女は物語で見た彼らの姿を重ねていた。
「後は任せときな」
「ええ、勇者からは程遠いですが……努力はしてみますか」
 言葉と共にルーンは矢を放ち、ランディは光を纏った太刀を奔らせた。両者の攻撃は広範囲に及び、盾持ちの妖精へその力が重なった。しかし彼らが狙ったのは、あくまでも異なる妖精。それは狙いがずれた訳でも、足並みが揃わずにいた訳でもない。全ては彼らが決めた手筈通りの事だった。
 遠方からの攻撃が出来ない妖精達。それらから少年少女を守る為、彼ら各妖精達の抑え役を決めた。高い攻撃力を有する妖精だが、耐久力は然程のものでもない。
 まずは抑え役と後方の三名が集中して攻撃を落とし、その数を減らす。盾持ちから始まり、最後は槍の妖精へ。最後まで抑えに徹する事になるランディやサーシスに負担は掛るものの、敵の数が減るに連れて援護も行き渡り易くなる。
 それぞれが役割を確りと把握している彼らにとって、この作戦は決して難しいものではなかった。
「勇者の力、見せてあげるわ」
 ルーンの矢が射抜いた先に、タユが自らの武器を振り上げる。放出された闘気をその身に、生まれた衝撃は妖精へと放たれた。痺れが残り、妖精の動きが鈍る。一見すれば年の近い少女の姿に、少年は思わず声を荒げた。
「なっ、お前も戦うのかよ……!」
 少年なりに心配していたのだろう。しかしタユは笑顔で振り返り、告げた。
「あたしは、あたし達は負けないわ。だから安心して、見守っていて」
 その姿は少年の目に、何より心に焼きついていた。感化されたように瞳の輝きを増した少年へ、念押しの言葉を送ったのはユリウスだった。
「絶対に前に行かないで。ジオは、ルゥの事、お願いね」
 その勇敢さが向けられるべき場所を、彼は言葉と笑顔を持って示したのだ。
「な、なんで俺達の名前……」
「さァて、何でだろー?」
 勇者だからって事にしておいてと嘯き、ユリウスは間を置かずして狂乱の旋律を奏でた。
「熱狂的な一曲、如何ですかー?」
 幻光が盾と大鎌の妖精を包み込む。目も眩む程の輝きに、妖精達は広い視野を奪われていた。呪いを帯びたアオトの眼が、自らに向けられている事に気付かずに。
「素早い動きも厄介だから、これで固まってくれないかなぁ」
 視線の先で解放された力は、死の色を帯びていた。光は余すところなく放出され、連撃の中傷付いた盾持ちの妖精の身を石へと変えてゆく。妖精は堪らず身を捩じらせるが、そのまま動きを封じられ、地に落下し爆発した。
 まずは一機。次なる標的の前で、カインは鍵群を放ったばかりの相手に接近した。彼は平静の色を浮かべたまま、妖精の身に刃を突き立てて言い放つ。
「相手が人でなければ手加減する事もありませんので、破壊させてもらいます」
 一撃に籠めた思いその儘に、彼は飛びまわる妖精に自由を与えはしなかった。
 それは他の者達も同様に。月を描いた後、黄金の蝶を舞わせたサーシス。彼も妖精の動きに応じて技を使い、傷の痛みに耐えながら応戦を続けている。回復を持たない彼は仲間の援護を信じて前へと立ち、出来得る限り傷を軽減するように立ちまわっている。
 一方、仲間の攻撃によって呪縛を施された大鎌持ちに、ジョシュアは死角からではなく、直進から繰り出した斬撃を喰らわせた。激しい血煙の中、赤い瞳が敵を捉えて放さない。振り上げられた鎌に傷つこうとも、彼は余裕の笑みを崩しはしなかった。
(「どんな傷みも堪えてあげよう」)
 少女の夢見る者達は、このくらいで苦しみを見せるはずはないのだから。
「必ず、守ってみせるさ」
「……っ」
 その姿に、震えていたはずの少女が立ち上がる。見つめてくる幼馴染の視線に、ジオはその決意を察して手を握り締めた。
「兄ちゃん達! オレ達、あっちに隠れてるから!」
 自分達がここに居ては、きっと彼らの邪魔になる。そう思った二人は手を取り合って、戦場から離れる為に走り出した。
「――勇者のお兄ちゃん達、頑張って……!」
「ドレスのお前も、怪我すんなよな!」
 思わぬ激励。その姿を見届けたルーンは再び前を向いて思っていた。
「現実を知ることも大事ですが……」
 時に、夢や憧れを持つ事が何よりの力となる事、それは否定出来ぬものであるのだと。

●連なる闘志
「少女の夢を壊す程、僕は無粋な人間じゃない」
 少女達が戦場から遠く離れた今、言葉の替わりに刃がそれを体現した。血煙で帯びた力を銀の輝きに添え、後方から激しい斬撃が大鎌の妖精に直撃する。魔鍵に続いて捩じ伏せられた機体は爆発し、ついに機械妖精は二体を残すのみとなった。
 傷を負ったランディの元にユリウスの戦歌が響く。サーシスの傷も深く、しかしルーンとカインの招いた風が仲間の元へと降り注がれた。
「生命を運ぶ風よ、我が戦友に癒しの息吹を」
「まずはこちらで援護を」
 織り重なるように連なる風。その力に後押しされて、サーシスが再び掌を翳した。
「君の槍はその程度かい?」
 向き合う妖精の得物は、自らの主たる少女と同じもの。あの華麗な槍捌きに比べれば、眼前の相手など、然したるものともなり得ない。
「彼らを襲うなら、自分を倒してからにするといい!」
 それを叶わせる心算も毛頭無い。指一本たりとも触れさせはしないと決めているのだから。その思いの儘にサーシスは黄金の蝶を呼び、光の群れが妖精の変貌した羽音ごと、竜巻の中に飲み込んでゆく。同時に、少女達の行く先へと迫ろうとしていた剣持ちの妖精に、アオトは奔流と化した自らの髪を仕向けていた。
「此処から後ろは、簡単には通らせないよ?」
 言葉通りの技に妖精は怯む。その隙をランディは見逃す事無く、打って出た。
「その理不尽な終焉、破壊させて貰うぜ」
 太刀が帯びるのは稲妻の闘気。間合いは一瞬で詰められた。反りの浅い刃が、雷撃となって妖精に向けられる。タユが解放した力によって召喚された妖精、彼らによって齎された活力が、ランディの刃に更なる力を付与してゆく。
「全てを斬れ……! 剛烈雷刃斬!」
 斬撃の痕を見る間もなく、戦場に四度目の爆音が響き渡った。
 残るは槍を持つ妖精。決着は目前に迫っている。爆発の衝撃で巻き上がった砂塵を切り裂くように、タユとジョシュアが大地を蹴り上げ疾走した。与えられた痺れによって思う儘の攻撃が行えない妖精の反撃では、彼らの身に窮地を呼ぶことは敵わない。
「関節、継ぎ目、たとえ装甲で覆われていようと弱点はある」
 終わりと共に敵の弱点を見据え、後方に下がっていたルーンが前進した。腹部に直撃した彼の一撃、弱り果てた機械妖精にはとても耐えられるものではない。衝撃と共に最後の妖精は地面に叩きつけられ、火花と共に上がった爆煙の中に消え果てた。
 その残骸も爆発によって消え、片付けの必要が無いと知ったアオトが漸く一息をつく。続けて皆も武器を下ろし、ユリウスは仲間の傷の手当てに駆け出した。深い傷は戦いの中で癒され、皆それぞれ傷はあるものの、動けぬ者は見当たらない。
 少女の憧れる物語風に言えば、『勝利の女神が、勇者達へ微笑んだ瞬間』というやつである。

●頁の先に
「兄ちゃん達ー!」
 戦いを終えた森の中に、ジオの声が響く。手を振って駆け寄る少年、その片手は確りと少女の手を握りしめていた。やがて一同の元に辿り着き、佇む二人。ルーンは彼らを見つめ、ユリウスは安堵する様に言った。
「怪我はありませんね、何よりです」
「大丈夫だッたー? 良かッたァ」
「兄ちゃん達のおかげだよ、ありがとな……ほんと、ありがと」
 感謝の気持ちを一心に伝えるジオ、一方の少女は何か言いたげに、しかし言葉に出来ずに俯いたまま。その姿を見て、タユはそっと手を差し伸べた。
「……っ」
 自分と同じ位、小さなてのひら。それが勇敢で、勇気に満ち溢れたものであると、ルゥは知っている。小さな、しかし強くて頼もしい姿に、少女は自然と手を伸ばしていた。
「よく頑張ったわね」
 そっと抱きしめれば、肩の力が和らいでゆく。漸く落ち着いたルゥと笑みを交わし合いタユが離れた後、ジョシュアは少女に近づいた。少女の両手へと手渡されたのは、彼の胸元に飾られていた一輪の花。
「竜胆の、花……」
「その夢を忘れないで、それはきっと、君を強くするから」
 花が好きな少女は、その花の名と籠められた意味を囁いた。
 正義と共に。愛おしそうに花を頬に寄せ、少女はありがとうと微笑んだ。
 こうして少年少女の悲劇は、訪れたエンドブレイカー達の活躍によって破壊された。心穏やかな儘、彼らは共に村へと帰還する事に――、
「その前に、お説教と参りましょう」
 と言う訳にはいかない。和やかな雰囲気の中、ルゥとカインの視線が重なった。
「え、お説教……い、いやーっ!」
「逃げんなルゥ! しっかり聞いとけ!」
 くるりと振り返って逃げる間もなく、ジオがルゥの腕を掴む。少年はお願いしますと改まって、カインの言葉を待った。
「いいですか、森に入る事がどんなに危険なのか、マシンフェアリー以外にも」
 云々続々。正論すぎてぐうの音も出ないルゥ。心配しているからこそ語られている言葉だと思っているジオは、項垂れる幼馴染の分までしっかり耳を傾けている。対照的なその姿に、アオトは少女に助け船を足す様な気持ちで言った。
「危険を冒してその夢を抱き続けなくなっては意味がないからねぇ」
「ほんと、勇者の兄ちゃん達はイイ事いうよな」
「うう……」
 しかし、少女の耳に痛い言葉の続きに、少年は不意を突かれる事になる。
「だからこれからは身近にいる、小さな勇者さんの話にも耳を貸してみては如何?」
「ね、もッと身近に、キミだけの勇者がいるんじゃないかなァって思うんだけど……」
 アオトとユリウスの視線の先は、勿論ジオ。嫌な予感を感じて後ずさる少年に、後ろからサーシスが問い掛ける。
「自分も、問いたい事があるんですよ」
 危険と承知で、それでも森へと進んだ理由を。
「何かを倒すだけでなく、何かを守る事もまた勇者の証だから、かな?」
 思い至った事を含ませたような言葉に、ジオはむっと彼らを睨んだ。しかしどんな凄みだとしても、耳まで真っ赤な顔で言われては、微笑ましい以外の何物でもない。
「……兄ちゃん達、分かってて言ってねぇ?」
「……? ジオってば、へんなの」
 知らん顔の勇者に、さっぱりと言いたげな少女。そんな困り果てた少年を見兼ねて、ランディは違う言葉を掛けてみた。彼の視線が示す先にいたのは、彼の呼んだ星霊、白の軍馬だった。
「二人共、良かったら雪風に乗ってみるかい?」
 振舞いでは分からなくても、ふたりとも疲れているのかもしれない。思った以上に気丈な少年に至っては、もしかしたら言いづらくて我慢している恐れもある。ならばと思って自ら誘いを掛けたのだが、少年少女にとってはそれ以上に、格好良い軍馬の背中は魅力的なものだったのだろう。
「「乗りたい!!」」
 良ければ村まで。その言葉に目を輝かせて、ふたりは仲良く声を重ねたのだった。



マスター:彩取 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2013/01/05
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