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【緑の塔主】アサルトバグの森

これまでの話

<オープニング>

●何とかして欲しいのです。
 緑の塔の、謁見の間。
 そこには今、新たなマギラントの後継者として認められた、銀の塔主が訪れていた。
「突然の訪問、失礼致しました」
「え、なになに? どうしたの?」
 死ねばいいのに……とか何とか言っていた緑の塔主だが、今、銀の塔主は高圧的な態度を取っている訳ではない。
 特に不快には感じなかった為か、緑の塔主はマスターメイガスから顔を出し、不思議そうに首を傾げてみせた。
「またしても、はぐれアサルトバグが私共の領地を荒らして下さいました」
「え……」
「本当に困ります。はぐれアサルトバグ事件の解決を急いで下さい」
 無機質な声で、銀の塔主は訴えかける。その表情からは、とてもではないが感情は読めない。
「でも、ほんとに悪いことしたの? あの子達は、みんな悪いことするわけじゃないんだよ」
 決めつけないでよ、と緑の塔主は頬を膨らませた。
「あるんだよね、時々。村の付近に迷い込んだだけの善良なアサルトバグが、まちがってひどい殺され方する事件。ひどいよ、ボクらだって被害者だよ!」
「では、アサルトバグをきちんと管理して下さい」
「え……」
「そもそも、アサルトバグが『迷い込まなければ』、何も問題は起こりませんから」
 緑の塔主、完敗である。これには、返す言葉もない。
「で、でも……とじこめるの、可哀想」
「何も、閉じ込めろとは言っていません。可哀想なのは同意します、彼らも、生きているのですから」
 可哀想なのは同意する、彼らも生きている――その言葉に、緑の塔主は少し気を良くした。
 彼女は一応、アサルトバグ達の気持ちも考えてくれているのだ。
「わかったんだよ、アサルトバグの森にみんなを集める。だからね、長老に良いかどうか聞きに行きたいんだけど、待ってくれる?」
 それくらいは待って欲しいんだよ、と緑の塔主はおずおずと銀の塔主に訴えた。
「ありがとうございます、それくらいは待ちましょう。あと、その時は勇者様にご同行願いましょうか」
「え? なんで?」
「あなたが不正を働かないようにです」
 なかなかキツイ事を言われているが、緑の塔主は既にほとんど話を聞いていなかった。
(「んー、勇者様と一緒に行くのは楽しそうなんだけど、森の守護アサルトバグは絶対ただで通してくれないし、長老に会うのも怖いなぁ……そうだ、お土産たくさん持ってかなくちゃ!」)
 まあ、本人は楽しそうだから、良いとしよう。

●手伝って欲しいんだよ。
「……みたいな感じで、ボクはアサルトバグの森に行くんだよ」
 突然、緑の塔主から『協力して欲しい』と通達があった。
 その話を聞いて謁見の間に集まったエンドブレイカー達は、要点を聞き漏らさないように塔主の話に耳を傾ける。
「あのね、アサルトバグって緑の塔の領地のあちこちに住んでるでしょ? それじゃまずいから、バグ達にはアサルトバグの森にとりあえず行ってもらうことになったんだよ」
 確かに、それならはぐれアサルトバグ事件の解決に繋がるだろう。
 彼らの強さを知るエンドブレイカー達は、うんうんと頷いた。
「でもね、勝手に移動してもらうのはだめなんだ。アサルトバグの森に住んでる、アサルトバグの長老の許可が必要なんだよ」
「ちょ、長老……」
 アサルトバグは、なかなか神秘的な存在だった。
「それでね、勇者様に着いてきて欲しいんだ。メイガスはマスターメイガスしか入れない森だから、協力して欲しいの。銀の塔主も、似たようなこと言ってたし」
 勇者の同行。実際には、銀の塔から半ば失礼な条件として提示されたのだが……緑の塔主、やっぱり楽しそうである。機嫌を損ねなくて、本当に良かった。
「あ、そうだ! あのね、勇者様〜♪」
 何か良い事でもあったのだろうか? 塔主の話は、だんだんと論点がズレていくのであった……。

●まとめてみたんだけど。
「さ、要点確認しよっか」
 緑の塔を出てすぐ、雪硝子の妖精騎士・エリノア(cn0158)は、メモ帳を片手にエンドブレイカー達に語り掛けた。
 人懐っこくて可愛らしいが、話がブレると少しどころかかなり困るということだ。
「どうも、森の入り口で『目的を告げなければならない』んだけど、今回の来訪目的はアサルトバグを怒らせるものだから、森の守護アサルトバグとの戦闘は避けられないって話だったね……力で屈服させれば、森に入ることは出来るんだろうけど、やっぱり相手の言い分もあるからね」
 だから、守護アサルトバグはできるだけ殺さないように、とエリノアは念を押した。
「ちなみに、守護アサルトバグはどうも、巨大な蜂みたいな生き物っぽいね……蜂って言っても硬いみたいだし、毒があるからかなり危険……っぽい」
「……」
 この辺はあまり詳しく聞けていないのだから、仕方がない。
 とにかく、守護アサルトバグはかなり強いらしい。それだけは確かだ。
「まあ、長老が居る森を守ってるんだもんね」
 アサルトバグの長老は、伝説の存在で、緑の塔の民がこの地にやってきたときに、一緒に移住したらしい。
 緑の塔主も、塔主を引き継いだ時に一度だけあった事があるだけで、長老は森の奥の大樹と同化しており、どんな動物かもわからないらしい。
 そんな森に行くのだ。戦闘のことだけ考えてちゃ駄目だよ、とエリノアは告げる。
「最終的に、重要なのは『交渉』だってことは忘れないで。だから、何か手土産を持っていくべきだと思う。交渉を成功させやすいように、ね」
 そもそも、塔主もそれを望んでいる。事前によく考え、手土産の準備をしてから森に向かうべきだ。
「銀の塔主がマギラントの後継者となった事で、マギラントがひとつにまとまる事が期待されてる訳だ。これは喜んで良い事だよ。でも、だからこそ今回の依頼を成功させる事が必要なんだ」
 でも、君達なら大丈夫。メモ帳をパタンと閉じ、エリノアは笑ってみせた。


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参加者
空駆けるペンキ屋・ポーシャ(c01607)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
マスター番長・ガナッシュ(c02203)
明るく楽しく元気娘・シルフィー(c08233)
月紅の雪彪・シュナイエン(c15238)
歩み続けるもの・リンガ(c16123)
春告げの魔女・シェリー(c22845)
群青渡る白翼の鷹・コンヴァラリア(c22980)

<リプレイ>

●何もって行こう?
「お土産ね、何がいいと思うー? 美味しいものが良いなー!」
 集まった八人のエンドブレイカー達を前に、緑の塔主は楽しげに笑う。その口振りからして、明らかに彼女自身もお土産を食べる気だ。
「他の都市国家の名産品とか、どうかな?」
 興味無いかな? と問い掛ける明るく楽しく元気娘・シルフィー(c08233)の言葉に、塔主は目を輝かせる。
(「塔主、好きそうですしね。食べるの」)
 そんな様子を見て、空駆けるペンキ屋・ポーシャ(c01607)はクスリと笑った。
 一応、事前にアリ男爵にも話を聞きに行ったのだが、彼はバグ達の中では特殊な趣向の持ち主なので、あまり参考にならなさそうだった。今回は、塔主の意見を聞いた方が良さそうである。
「お土産余分に多めに用意して、道中でみんなで試食してみましょうか」
「やったー!」
 大喜びする塔主の姿に、月紅の雪彪・シュナイエン(c15238)と群青渡る白翼の鷹・コンヴァラリア(c22980)は顔を見合わせて微笑んだ。
「あと、お弁当とか、お茶とか、蜂蜜の飴とか。色々持っていきましょう?」
「私は果実水や干し果実等を用意しよう」
「わぁ……」
 期待に胸を躍らせる塔主に、楽しげじゃのう、とマスター番長・ガナッシュ(c02203)が笑った。
「早速じゃが、準備しようかの。早いほうが良かろう?」
「えっと、ボク、他の都市国家とかわかんないんだけど……」
 任せて良い? という塔主の言葉に、歩み続けるもの・リンガ(c16123)と春告げの魔女・シェリー(c22845)が前に出る。
「ああ、当然だ。任せてくれ」
「すぐに用意しますから、少し待っていて下さいね?」
 予め皆で書きまとめていたメモを見つつ、阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)は塔主を見上げた。
「果実や野菜、木の実に肉等の自然のまま食べられる物を考えています。味は保証しますよ」
「えへへ、楽しみだなぁ」
 ただ、他の都市国家はどこにあるのだろう? 塔主はぼんやりと、そんな事を考え始めた。
(「何日くらい掛かるかなぁ。一週間? 一ヶ月? 銀の塔主、怒らないよね……?」)
 ――その後、彼女は『世界の瞳』の凄さを知ることとなる。

●一緒にお散歩!
「うーん……なんか怖い森に思えるけど一杯のお土産積んで進むのは楽しいかも!」
 シルフィーが知識の鎧、メイガス越しに先を眺める。『勇者』の権力はそれなりのもので、メイガスに乗ったまま森に入ることも許されたのだ。
「ん〜! 美味しいんだよ〜♪」
 そんな彼女の横で、荷物を乗せた大トカゲの背から適当にお土産を取っては頬張り、塔主は歓喜の声を漏らした。大トカゲは、気を利かせた塔主が用意したものである。
「そういえば今更なのですが、緑の塔主のお名前は何と言うのでしょうか? あとなんとお呼びすればいいのでしょうか?」
 ルーンの質問に、塔主はきょとんとした顔で首を傾げてみせた。
「ボクは『緑の塔主』だよ。まあ、昔はクックベリーだったんだけどね?」
 塔主である彼女に、識別の為の名前は必要ないのだという。呼び名に関しては、特に何も言わなかった。
「塔主さん、前に森に来た時と来た時と違う所は無いかな?」
 シルフィーの問いに、塔主は少し考えてから口を開いた。
「前来た時はうきうきした気分だったけど、今は、ちょっとしょんぼりしてるんだよ。だから、森も、しょんぼりしてみえるよ」
 それ気分の話だよね? とは思ったが、やはり塔主も訪問を不安に感じているのだ。少しでも気を紛らわせようと、シェリーは緑の瞳を細めて笑ってみせた。
「ん、お天気もいいですし、本当にピクニックみたいですねー」
 それでも何があるか分からないと、彼女は棍を強く握り締める。同じく、警戒を怠らないようにしつつ、ポーシャは焼き菓子を手に取った。
「長老ってどんな姿してるんでしょうね」
「長老ね……よく考えてみりゃ、あの虫達の生態とか知らねぇんだよな。ま、穏やかな話し合いになってくれりゃいいんだがね」
 リンガは木々の生い茂る先を見ながら、青の瞳を細めた。そう言えば、とガナッシュが口を開く。
「銀や黒にもやはり長老のような存在が居るのかのう?」
「しらなーい。でも、いるんじゃないかなぁ」
「あと、アサルトバグ達の生態や種族の構造について聞いても良いだろうか?」
 コンヴァラリアは果実水の入った水筒を塔主に差し出した。
「ありがと! えっとね、アサルトバグはアサルトバグだよ?」
「あ、いや……」
 そうではなくて、と言いかけ、コンヴァラリアはハッとした。そもそも、質問が難し過ぎたのだ。
「美味しいか?」
「うん!」
 塔主とは言えども、彼女は幼い少女なのだ。早くも空になった水筒を受け取りながら、コンヴァラリアは軽く微笑み返した。
「勇者について、聞いても良いかしら?」
「良いよー!」
 蜂蜜の飴を取り出しながら、シュナイエンも塔主に問い掛ける。
「迷宮探索の後、聞いた情報なんだけど……マギラントには、共に戦った仲間が二人か三人いたんじゃないかしら? あと、昔マギラントにあったらしい『カーニバル』って組織について、何か知っている事はないかしら?」
 何十というチームが挑んだ、封印の大迷宮。これは、仲間達がそこで得た情報である。しかし、シュナイエンの話に塔主は「なんか違う……」と声を漏らした。
「勇者は四百人くらいの仲間がいて、マギラント様はその半分くらいの仲間と一緒に、ここにやってきたらしいよ? あとね、マギラント様が、ここを『マギラント』って名前にするまでは、ここは『カーニバル』って呼ばれていたんだって。そうボクは教えてもらったんだけど……」
 確かに違う。恐らく教育係的な者に学んだのだろうが、塔主が知るマギラントの歴史と、エンドブレイカー達が迷宮で得た情報には明らかな差があった。
 遺跡の冒険を思い返し、シュナイエンは身に付けて来た青のリボンに触れた。
(「あの子達、元気かしら……?」)
 彼女と、三人の仲間が迷宮で行動を共にした四体のアサルトバグ。個体識別に用いたのは、四色のリボンだった。今でも、その時の事は鮮明に思い出せる。
 悔やまれるのは、共に戦った全てのアサルトバグをこの地に返してやれなかった事――そんな想いを抱くのはシュナイエンだけではない。
 リンガやポーシャ、シェリーも、それは同じだった。それでも、彼女らは後ろばかりを見ているわけではない。
「アサルトバグさん、懐いてくる感じで可愛いですよねー。先日も迷宮探索で、蝶型のアサルトバグさんのお世話になりましたし」
 探索中、自分達を癒してくれた蝶達を思い出し、シェリーは笑った。
「わし等が助けたアサルトバグ達は元気かのう?」
 迷宮以外でアサルトバグと接触のあったガナッシュも、その姿を思い返す。
「彼らには、本当にお世話になりました」
 ルーンも、迷宮探索の時のことを頭に思い浮かべた。
 彼らがバグ達に抱く感情は、明らかな好意。塔主は「だったら」と果物を頬張りながら、やんわりと笑った。
「森に移住する時にみんな集まるから、その時確認してみるといいよ」
 そんな彼女らを見て、コンヴァラリアは密かに思いを巡らせる。
(「今後に繋がる大事な一歩だな。彼女達が統治に尽力する姿を示し安定すれば都市の棘の影響も減るだろう……過去の勇者達が時を超え遺した塔主達やバグ達との絆を確り得て護る為にも、この交渉纏めねばな」)
 ガナッシュは近くを歩く大トカゲの頭を撫で、塔主へと視線を移す。
(「はぐれの件で言いたい事もあったが……まあ良い。わしはお主を信じとるぞい」)
「あ……」
 そんな時、塔主が操縦するマスターメイガスの動きが止まった。ルーンの瞳が、巨大な蜂の姿を捉える。
「守護アサルトバグ、ですね?」
 ピクニック気分も、ここまでだ。巨大な蜂――守護アサルトバグの触覚がピクリと動いた。
「トウヌシ?」
 片言のそれは、守護アサルトバグの声。どうやら、会話能力があるらしい。
「長老に会いに来たんだ」
「ナゼ」
「領地に居るバグ達を、森に集める許可が欲しいんだ」
 塔主の言葉に、守護アサルトバグは怒りを剥き出しにする。
「ヤクソク、チガウ! ワレラ、ジャマカ!?」
「とにかく、話を聞いて欲しい!!」
 塔主の前に、リンガとシルフィーが飛び出した。
「今、緑の塔の領地以外にアサルトバグが入り込んで、バグ達にも住民にも被害が出ているんだ! 原因は不明だ。だから調査の間、バグ達が間違って他の塔の領地に入ってしまわないように一箇所で保護しておきたいんだ。今回は、その許可を長老に貰いにきた!」
「だから、お互いこれ以上犠牲が出ないように対処法を協議したいんです!」
 しかし守護アサルトバグの怒りは収まらない。二人の話には聞く耳を持たず、彼は背の羽を広げた。
「ホカノトウ、カンケイ、ナイ!」
「……不本意だが、お前達の一時の怒りに負けて、お前達もマギラントの民も護る機会を失う訳にはいかん」
 竪琴を構え、コンヴァラリアは静かに塔主の前に出た。他の仲間達も、塔主を守るように前に出始める。
「どうしてもと言うのなら、私達が相手です」
「……仕方ないのぉ」
「平和に解決したかったのですが……」
 シェリー、ガナッシュ、ポーシャが前線に飛び出し、武器を構えた。だが、それを宣戦布告と取ったらしい守護アサルトバグは、いきなり毒針を放った!
「!」
 不意打ちだった。三人が身を貫かれるのを見て、シュナイエンが叫ぶ。
「私達は、戦う為に来たんじゃないわ!」
 シルフィーは弓を取り出しながらも、守護アサルトバグに訴えかけた。
「お願い、話を聞いて!!」
 それでも、彼の攻撃は止まない。刃爪【TALON】を装備したリンガはため息混じりに地を蹴った。
「俺達はもめにきたんじゃねぇんだが……仕方ねぇよな。こっちの都合押し付けるんだから……ワリィがちょっと押し通らせてもらうぜ」
 ルーンは弓を構え、凛とした青の瞳で守護アサルトバグを見据えた。
「戦うことでしか認められないというならば、己が力と信念で道を切り開くまで、阿頼耶の狩手・ルーン・ワイズマン押して参る」

●戦うのは、嫌なんだよ。
 深い森の中で、乱闘が繰り広げられる。
「もう、やめにしませんか……!?」
 シェリーの悲痛な声が響き渡る。守護アサルトバグは確かに強かったが、数の差は大きいのだ。
「ヤカマシイ!」
「く……っ!」
 羽音が生み出す衝撃波が、ガナッシュの身体を切り裂く。それでも、彼女は怯まなかった。世界樹の弾丸を放ち、彼女は流れる血を乱暴に拭った。
「怒りを静めてくれ。私達は共に護る未来の為に来たのだから」
 コンヴァラリアが英雄讃歌を奏で、ガナッシュの傷を癒す。その横をポーシャが駆け、高々と飛び上がった。空中殺法の構えだ!
「行きますよ!」
「ちょっと待った――ッ!!」
 しかし、そこでついに塔主が叫んだ。マスターメイガスの腕に大量のお土産を乗せ、塔主は守護アサルトバグに訴えかける。ポーシャは身体を捻り、攻撃をそらした。
「お願い、もうやめよう!? ほら、お土産だよ! みんなで食べようよ!!」
 守護アサルトバグの動きが止まる。花とジャムセットを取り出し、シルフィーも塔主と共に訴えかけた。
「森の中って案外甘い香り無いしね、冬だと特に! ほら、名産のお花と果物の甘いジャムセットも! 伊達に甘党やってない! 良い物選んだんだから!」
「……」
 守護アサルトバグは黙り込んでしまった。しかし、沈黙は刹那の時の末に、破られる。
「コッチダ」
 触覚を微かに動かし、彼は森のさらに深い場所へと繋がる道を指差した。
「良いの!?」
 お土産に釣られたようだが、何とか平和的に物事が進みそうだ。
(「良かった、最後に一撃入れる前で……」)
 ポーシャはほっと胸を撫で下ろし、森の中心地へと繋がる道を見据えた。
「あと少し、ですね」

●仲良しが一番なんだよ!
「凄い……」
 シュナイエンは巨木を目の前に、感嘆の声を上げた。
「キャク、キタ」
 守護アサルトバグに案内され、辿り着いた森の中心地。
 そこには、その圧倒的な存在を主張する巨木――長老が立っていた。しかし、どうやら眠っているらしい。

「長老、起きないね」
 とりあえず、大人しく待っていたのだが、長老はなかなか目を覚まさなかった。
 塔主一行が持ってきたお土産に釣られたのか、少しずつ森に住むアサルトバグ達も集まってきている。お土産楽しみ、と訴えているように見えなくもない。
 どうしたものか、と思っていると守護アサルトバグが触覚を大きく動かした。
「チョウロウ、ナカナカオキナイ。タノシクサワグ、メヲサマス、ナイカ?」
 その提案を理解したのか、集まっているアサルトバグ達が活発に動き出す。塔主も「おお!」と声を漏らした。
「楽しく待てるなら、その方が良いということか……」
 良いのか? とリンガはコンヴァラリアを見た。しかし、彼女は肩を竦めるだけである。
「ん、彼らが良いのなら、良いのではないでしょうか?」
 そう言って、シェリーは笑う。それもそうかと、リンガとコンヴァラリアは頷いた。

「ウマイ、コレ。ドコ、テニハイル?」
「お? それは、エルフヘイムという地のものじゃ」
 お土産は、各都市国家の名産品。マギラントの住民達にとっては、どれも見慣れない品ばかりだった。
「随分とのんびりしていますが……普段、バグ達はどうしているのですか?」
 くつろぐバグ達の様子を見ながら、ルーンが塔主に問い掛ける。
「んー、ご飯探したりとかしてるみたい。だからね、何かお仕事をお願いした時は、お礼に食べ物とかあげるんだ♪」
 話によると、基本的に彼らは塔主が長老と約束した範囲のお願いを聞くらしい。
 彼女のお願いを聞いたアサルトバグは、他のバグに『塔主のお願い』を伝言する事ができるので、直接各個体に命じる必要はないのだという。
 塔主のお願い以外でも、『仲良くなった人』からのちょっとしたお願いなら、引き受けてくれることも多いそうだ。
 ちなみに、今回の森への移住は長老との約束に入っていなかった為、再びこの地を訪れることになったのだという。要は、約束を結び直しに来たのだ。
「約束しておけば、何でも聞いて頂けるのですか?」
「基本的にはね? でもね、気分が乗らない時とか、嫌だなって思った時とかは他の子に回しちゃうんだ」
 皆も、細かすぎるお願いは嫌でしょ? と塔主は飴玉を頬張った。
 だから、命令はどうしても大雑把なものになってしまうらしい。さらに、その解決方法は個体ごとの判断に委ねることとなる。
「アサルトバグは生物なんだもん。あたりまえだよね♪」
 ニコニコと笑いながら、塔主はジャムの瓶を手に取った――その時、突然地響きのような、巨木が震えるような轟音が、辺りに響き渡った!
「え……?」
「チョウロウ!」
 ジャムの瓶が、草の上を転がる。守護アサルトバグが叫ぶ。一体、何事だというのか。
 エンドブレイカー達は、慌てて巨木へと視線を移した。



マスター:桜音遥祈 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2013/01/25
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冒険結果:成功!
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