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最高の一振りを求めて

<オープニング>


「お前が悪いんだ……俺を……裏切るからッ!」
 ソーンに憑依された青年ジン。
 足元に横たわる妙齢の女性――サヤに太刀を振り下ろした。
 この太刀は他ならぬ、サヤが鍛えたものだ。
 だが、その太刀は事もあろうに、サヤを殺めるのに使われてしまった。

 アクスヘイムのとある村。
 そこに暮らす青年と妙齢の女性――ジンとサヤは幼馴染である。
 二人の出会いは幼少期。
 ともに東方風の名前を持つことからもわかるように、二人の親はどちらも東方から伝わった文化を愛好する者だった。
 それゆえ、親同士の仲が良かったことが、二人が友人となった理由である。
 
 やがて二人は親の影響で東方よりの品に興味を持ち、その中でも特に太刀へと惹かれた。
 それもあってか、成長するに従ってジンは剣術に、サヤは刀鍛冶の技を学ぶことに夢中になっていった。
 次第に技を上達させた二人。
 その甲斐あってか、ジンは城塞騎士に、サヤは鍛冶師となる道が見えたのだ。
 
 互いに夢を追う者同士としてはもちろん、二人が男女の仲になるのは自然な流れだった。
 そして、二人はとある約束を交わす。
 
 ――サヤが一人前の鍛冶師となって最初に鍛えた太刀をジンに贈る。
 
 その約束を果たすべく、サヤは一人前の鍛冶師となった自分が作れる最高の一振りを完成させた。
 そしてそれを届ける日――遂に見習いを脱し、ジンが一人前の城塞騎士と認められた日に事件は起こった。
 ソーンに憑依され、情緒不安定になったジンがあらぬ誤解から、サヤをその手にかけてしまうのだ。
 
 最高の一振りを作るにあたり、サヤは自らの先輩である鍛冶の達人の意見はもちろん、武器を振るう者の意見にも大いに耳を傾けた。
 意見を求めるべく、サヤはジンの先輩にあたる城塞騎士のもとを、太刀の試作品ができる度に幾度なく訪れたのだ。
 熟練した剣術の使い手である彼の意見を幾度をなく聞いたおかげで、太刀は最高の逸品に仕上がった。
 
 だが、ソーンに憑依されたジンの目には、それが裏切りと映ってしまったのだ。
 サヤが自分から先輩へと乗り換えたと誤解したジンは、他ならぬサヤの鍛えた太刀を彼女に振り下ろしたのだった――。
 
 サヤにとどめを刺した瞬間。
 ジンは自らの行いが正しいと、誰でもない自分で心の底から信じ込んだ。
 そしてその瞬間、彼はマスカレイドとなり、どこかへと消えていった。
 

「マスカレイドによる事件が起ころうとしているんです」
 酒場に集まったエンドブレイカーたちに向けて、竪琴の魔曲使い・ミラ(cn0007)は話し始めた。
「事件が起こるのはアクスヘイムのとある村。マスカレイド化した青年が、誤解から最愛の人を手に掛けてしまう……そんなエンディングが見えたんです」
 そう説明すると、ミラは痛ましげに目を伏せる。
「マスカレイド化してしまうのはジンさんという方で、彼はソーンに憑かれていますが、今ならまだ助ける事ができます。でも、本当のマスカレイドとなってしまえば助ける事はできません……その前にできれば、彼を救ってもらいたいんです」
 声を震わせながらも、ミラは気丈に語る。

「ジンさんは太刀の剣術を学んでいる見習い城塞騎士さんで、同じく見習い鍛冶師のサヤさんという幼馴染がいます。二人は剣士と鍛冶師という関係であると同時に恋人同士でもあるんです」
 ミラが語る内容に、エンドブレイカーたちも聞き入っていく。
「見習いを卒業したジンさんに、同じく見習いを卒業したサヤさんが最高の一振りを作って贈る――二人はそう約束を交わしていたんです。その約束を果たす為にサヤさんはジンさんの先輩の元に何度も通いました」
 語りながらミラは再び目を伏せる。
「それをジンさんは、サヤさんが自分から先輩に乗り換えたと誤解してしまったんです。そして、サヤさんが完成した太刀を届けに来る日――見習いを卒業した自分の為に先輩たちが開いてくれた祝賀会の日に、事件が起きてしまうんです」
 二人の事情を語り終え、ミラは次の説明に入る。
「ジンさんは自分がマスカレイドの力を使うとは思っていませんし、事件直前まで、自分がそのような感情を激昂させて相手を攻撃しようとする事を理解できません。ですので、説得は『事件が発生する直前』に行う必要があります」
 頷いたり、相槌を打ちながら、エンドブレイカーたちも耳を傾ける。
 彼等に向けて、ミラは更に説明を続けた。
「事前に本人と接触したり情報を集めたり、相手側と接触して説得を手伝って貰ったりといった準備があれば、説得を成功させやすくなるでしょう。もちろん、接触に失敗して疑われたり警戒されてしまった場合は、かえって不利になるかもしれませんので、慎重な行動が必要です」

 ミラは紙とペンを取り出し、太刀を持ったマスカレイドの絵をざっと描く。
「ジンさんは見習い鍛冶師だった頃のサヤさんが鍛えた太刀を持っていて、自らが学んだ剣術で攻撃してきます」
 絵を見ながら頷くエンドブレイカーたちに、ミラは更に説明する。
「当日、ジンさんは太刀を届けに来るサヤさんを待ち伏せるため、祝賀会の会場から離れた道まで出てきます。そこには先輩の城塞騎士さんたちはもちろんいないですし、通りがかる村人もあまりいません」

 一通り説明を終えたミラは、忘れずにこう付け加えた。
「マスカレイドを倒せば一応エンディングは破壊できます……でも、本当の意味で悲劇のエンディングを破壊する為にも、ジンさんを助けられるように頑張ってください」


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参加者
天暗星・フェイ(c03258)
オヤジうたうたい・アルヴァス(c10068)
桃宮・ロイ(c31056)
さすらい手品師純情派・グレイ(c33296)

<リプレイ>


 天暗星・フェイ(c03258)は道端でジンを待ち構えていた。
 修行の旅を装って修練中のジンに接触してみるのが彼の目的だ。
「勘違いって怖いんだね〜」
 そんな事をふと考えている十五歳であった。
「まあ、そこは剣士として相対してみれば分る事だよね、うん」
 フェイがそう呟くと、ちょうどジンが通りかかる。
 彼が通るのを予想して待っていたフェイだが、偶然を装ってジンへと話しかける。
「こんにちは〜。あの、ぶしつけな話なんだけど……ひとつ手合わせお願いしてもいいですか?」
 いきなりそう話しかけられてジンは面食らったようだったが、フェイが手に持っている杖が仕込杖だと見抜くと、事情を察したようだ。
「旅の剣客の御方ですか。しかし、俺はまだ駆け出しの身。手合わせなどしても、貴方に得るものがあるかどうか……」
 とはいえジンは恐縮しきっているようだ。
(「真面目な人なんだね〜」)
 胸中でそう呟きつつ、フェイはのほほんとした声音で彼へと語りかける。
「そんなに謙遜することないよ〜。僕はあなたと手合わせしてみたいんだ〜」
 そこまで言われては断るわけにもいかないのだろう。
 ジンは深々と一礼する。
「では……お相手つかまつります……!」
 同じく一礼し、答礼するフェイ。
「よろしくね〜」
 ジンの案内でフェイはすぐ近くの空き地へと向かう。
 空き地に足を踏み入れ、適度な距離に立った二人は、改めて礼を交わす。
「申し遅れました。俺はジンと申します――この村で城塞騎士……といっても見習いですが」
 肩肘を張って名乗るジン。
 対照的にフェイはやはりのほほんとした調子で名乗りを返す。
「フェイ・アーキスだよ〜。それじゃ、よろしくね〜」
 名乗りの後、ジンは太刀を抜いたのに対して、フェイは仕込杖を抜かずに構える。
 しばし無言で見合う二人。
 先に仕掛けたのはジンだった。
 小細工などは挟まない上段からの斬りつけ。
(「一気に決めにきたね。いや――」)
 身を引いて上段からの一撃を避けながらフェイは相手の動きを読む。
 その一撃を避けた後、仕込杖を抜いて相手に刃を突きつける――。
 フェイはそれを考えていた。
 手としては悪くない。
 だが、フェイにはジンの攻撃がこれで終わりではないように思えたのだ。
 案の定、ジンの攻撃はそれだけではなかった。
 太刀を振り下ろした直後、ジンは素早い手首の動きで刃をかえすと、そのまま上に向かって斬り上げる。
 最初の一撃を避け、相手の攻撃は終わったと判断して反撃に移ろうとすれば危なかったかもしれない。
 しかし、この追撃を予想していたフェイは冷静に仕込み杖を持ち上げると、先端でジンの手首を打ち据える。
 絶妙なタイミングでの痛烈なカウンターが決まり、ジンは思わず太刀を取り落とした。
「参りました。お見事です」
 太刀が転がって音を立てると同時、ジンはフェイに一礼する。
「いやいや、ジンさんの方もすごかったよ〜。これならすぐに正騎士さんになれるね〜」
 するとジンはどこか照れたように、そして嬉しそうに言う。
「実はつい先日、正騎士として取りたててもらえることが決まりまして」
 それを聞き、フェイは微笑みを浮かべた。
「そっか〜、正騎士さんになるんだね〜。頑張ってね〜」
 そう言って手を振ると、フェイは終始のほほんとした印象のまま去っていった。


 一方その頃、オヤジうたうたい・アルヴァス(c10068)はジンとサヤの情報を集めていた。
「『恋人の身辺調査』みたいで凄くアレな気分だが」
 苦笑して一人ごちるアルヴァス。
 二人の仲はそれなりに有名だったようで、情報収集にはさほど苦労しなかった。
 アルヴァスが話を聞いた村人は皆、異口同音に答えたのだ。
 ――二人は互いに恋愛感情を抱いてはいるが、それを口に出せない幼馴染だと。
 六人目の村人からも同じ話を聞き、アルヴァスは微笑ましいものを見るような顔で思わず微笑する。
「これって、幼馴染でクサい仲の、典型的なジェラシーだよな。恋愛小説とか絵空事の出来事ってばっかり思ってたが……周りは『あーあ』とかいって終わるんだろうけどな」
 微笑ましげな顔で呟いていたアルヴァスだったが、やおら引き締まった表情を浮かべる。
「それで茨につけこまれた挙句。殺っちまったら洒落にもならんのだが」
 引き締まった顔を垣間見せた後、アルヴァスはまた先程の穏やかな笑みに戻る。
「ま、一応俺も詩人の端くれだし? ハッピーエンドになるような努力を……するフリはするか」
 そう呟いて不真面目なポーズをしてみせるアルヴァスからは、先程垣間見せた印象はもう感じられなかった。
 周囲を見回したアルヴァスは丁度良い街角を見つけると、そこに腰かける。
 そしてアルヴァスはバリトンボイスで歌い始めた。
 アルヴァスが歌っているのは恋愛の歌だ。
 職業が吟遊詩人というだけあって、アルヴァスの歌は見事なものだった。
 何人かの村人が拍手や称賛の言葉を投げかけ、中には果物をくれた者もいた。
 そうしてしばらく歌っていた頃だろうか。
 真面目そうな顔をして、腰に太刀を差した青年が歩いてくる。
 その青年――ジンはアルヴァスの前を通り過ぎる際、しばし立ち止まって歌に聞き入っていた。
 聞いていた特徴と一致する青年が目の前にいることもあり、アルヴァスはその曲を歌い終えた後、ジンへと問いかける。
「そんなに気に入ったかい?」
 アルヴァスの問いかけに、ジンは静かに頷いてみせる。
「はい。素晴らしい歌でした」
 ちょうど良い具合に会話を始められたこともあり、アルヴァスは水を向けてみる。
「ほう、俺にしてみれば意外だな。こいつは恋愛の歌だ。兄ちゃんみたいに質実剛健そうな奴は、そういったことに興味がないように思えるが」
 するとジンはしばし考えむ素振りをみせた。
 その様は、誰かのことを考えているようだ。
 予めエンディングに関する話を聞いていたこともあって、アルヴァスはジンの反応に気付いた。
 すかさずアルヴァスは再び水を向ける。
「お、その様子は気になる女がいるって感じだな」
 図星だったのか、ジンの様子が明らかに変わる。
 観念したのか、ジンは照れたように答えた。
「ただの幼馴染ですよ……」
 アルヴァスはというと、茶化すこともなく、真面目そうな顔で頷いた。
「いいじゃねえか。その人を大切にしてやんな」
 だが、ジンは浮かない顔だった。
「向こうは俺よりも好きな人ができたみたいですが……」
 寂しそうな顔でそう言うジン。
「では、俺はこれにて」
 一礼し、去っていくジンの背。
 それを見ながら、アルヴァスは小さな声で呟く。
「やっぱり典型的な誤解だよな。あれが若さってやつか」


 フェイとアルヴァスがジンと接触していた頃、さすらい手品師純情派・グレイ(c33296)はサヤとの接触を図ろうとしていた。
 一振りの太刀を持ち、サヤの工房がある辺りを歩くグレイ。
 その作戦は功を奏し、ほどなくしてサヤは見つかった。
 工房のドアが開き、長く真っ直ぐな黒髪と、真っ白な布を帽子のように巻いた女性――サヤが道路へと出てくる。
 すかさずグレイは自然な風を装って、彼女へと話しかけた。
「失礼、少々よろしいでしょうか?」
 見慣れない人物に話しかけられて少し驚いたものの、すぐにサヤは穏やかな表情を浮かべる。
「ええ。なにか?」
 グレイは手にしている太刀を掲げてみせた。
「この太刀の打ち直しをしたいのですが、その為に腕のいい鍛冶師を探しておりまして」
 グレイの要件が意外だったのか、再び少し驚いた顔をするサヤ。
 だが、すぐに真面目な顔になると、彼女は答える。
「私も鍛冶師のはしくれですが――」
 それを初めて聞くふりをしつつ、グレイは言った。
「それは丁度良い。では、あなたにお願いしましょう」
 するとサヤは恐縮し始めた。
「いえ……そんな! 私はまだ未熟。師匠に頼んだ方が良い仕上がりになるのは明らかです」
 恐縮するサヤに向けて、グレイはゆっくりと頷いてみせる。
「ここでお会いしたのも何かの縁。あなたの言う通りかもしれません、それでも……私は他ならぬあなたに頼みたいのです」
 グレイの言葉を聞き、しばし考え込むサヤ。
 ややあってサヤは、はっきりと頷いた。
「承知しました。まだ未熟ですが、お請けした以上は全力を尽くします」
 両手でしっかりと太刀を受け取ると、一礼して少しだけ刃を抜くサヤ。
 既に目は鍛冶師の目になっており、彼女が本気であることが伺える。
「特に酷い錆や刃こぼれもありませんから……それほど長くはかからないかと」
 刃を戻してサヤが言うと、グレイは微笑みを浮かべた。
「なら良かったです。では、改めてお願いしますよ」
 グレイにつられて、サヤも微笑みを浮かべる。
「私としても丁度良かったです。丁度――大きな仕事が終わったところですから」
「大きな仕事?」
 グレイが水を向けると、サヤはほのかに顔を赤らめながら答える。
「ええ……大切な人に贈る、最高の一振りを打ち終えたところなんです」
 そう語るサヤは照れているようだ。
「最高の一振り、ですか」
 グレイが微笑ましげに見ると、サヤは更に照れた様子で顔を赤らめる。
「といっても、私にできる最高の一振り……という意味ですが」
「大切な人に贈るとのことですが、その方はやはり武人なのでしょうか?」
 問い返すグレイに、サヤはすぐに頷く。
「私と同じでまだ駆け出しですけど、その人は城塞騎士なんです」
 楽しげに語るサヤ。
 その様子をグレイは先程から微笑ましげに見つめている。
 そしてサヤは、温かな笑顔で言った。
「見習いを卒業したその人に、同じく見習いを卒業した私さんが最高の一振りを作って贈る――そう、約束したんです」


 事件が起こる少し前、桃宮・ロイ(c31056)は、この村の城塞騎士の面々が集まっている酒場に潜り込んでいた。
 エプロンに手袋・箒で清掃員風に装い、集まった城塞騎士たちを観察するロイ。
 ちょうど今はジンが見習いを卒業した祝賀会の最中らしく、宴もたけなわだ。
 その中心にいるジンは真面目な性格ゆえか、しきりに恐縮しきっている。
 先輩たちもそれをわかっているのか、とにかく盛り上げにかかっていた。
 それを横目に見ながら、ロイはこれから起こる『エンディング』に思いをはせた。
(「幼馴染や親友って、寿命があるものなのかも。一度お互い赤の他人になって、其々のなすべきことに一心に打ち込んだらどうかしら」)
 ロイが胸中に呟く間も、宴が進んでいく。
 そんな中、ジンは頃合いを見計らったように立ち上がると、すぐ戻る旨を先輩たちに告げて中座する。
 そのままジンが酒場を出ていくのを見届けたロイは、少し間を置いてから彼の尾行に入った。

 しばらく尾行した頃だろうか。
 それなりに広い道路を歩くジンの向こうから一人の長い黒髪の女性――サヤが歩いてくる。
 彼女は太刀を抱えており、ジンの姿を見つけると、嬉しそうに微笑んだ。
 だが、それとは対照的にジンの顔は怒りに歪んでいた。
 みるみるうちにジンの顔に仮面の一部が現れる。
 それと同時にジンは腰に差していた太刀を抜き放つと、サヤに斬りかかった。
 他ならぬサヤから贈られた太刀で、ジンがサヤ自身を斬りつけてしまう直前。
 状況を見守っていたロイが二人の間に割って入ると、魔獣の尾を生やし、それで太刀を受け止める。
「自分を応援してくれてる人を、よりによって贈り物で殺めるなんて。私には……ちょっと理解できないわ」
 ロイが説得の言葉をかけるが、それを突っぱねるようにジンは再び太刀を振りかぶった。
 先程と同様にそれを受け止めることはしないロイ。
 誠意を見せるべく、その一太刀を自ら浴びる。
 何とか踏みとどまると、ロイは腕を魔獣化し、ジンの身体に爪を立てる。
「でも、私はあなたをマスカレイドなんかにはさせないわ。あなたの幼馴染の為にも、立派な騎士になってほしい」
 一方のジンも怯まず太刀を振り上げ、ロイを斬り伏せようとする。

 その時、近くに隠れていたアルヴァスも姿を現し、ジンに声をかけた。
「城塞騎士が人様に手上げるのは宜しくないぜ。嫉妬、まして誤解じゃあな。お互いの気持ちぶつけ合ってみりゃすっきりすると思うぜ」
 次いでアルヴァスは周囲に聞こえるように大声で叫んだ。
「俺らはエンドブレイカーだ! この兄ちゃんは憑きものに憑かれててな、危険だから下がっててくれ!」
 アルヴァスの説得で動きを鈍らせたものの、ジンは太刀を振り下ろした。
 それに斬られながらも、ロイは魔獣の血に覚醒してそれを癒す。

 ロイが傷を癒すと同時に、アルヴァスと同じく近くに潜んでいたグレイも姿を現し、ジンに声をかける。
「その太刀は誰のために鍛えた物なのか……よく思い出してごらんなさい」
 再び動きを鈍らせるジン。
 それを見て取ったグレイは更に畳みかける。
「誰よりもあなたを大切な人と思う女性が、あなたの為に鍛えた『最高の一振り』でしょう」
 グレイの言葉でジンは刃を左へ右へと揺らす。
 どうやら心に迷いが生じているようだ。
「仮面に流されぬよう、自分をしっかり持つのです――あなたは、人々を守る城塞騎士なのですから」
 刃を揺らしたまま、動きを鈍らせているジン。
 それを見て、グレイは呟く。
「二人で誓った誓いがこのような形で茨の惨禍にまみれる、というのは頂けませんね……しっかり仕事していきましょうか――万物の原初たる炎を、刃に変えて……」
 グレイはフレイムソードを振るい、業炎の刃でジンを斬る。
 だが、ジンはまだ倒れない。
 今度こそサヤを斬ろうと、ジンは太刀を振りかぶった。
「そこまで」
 サヤを庇うように立ちはだかったのはフェイ。
 彼もまた、近くに潜んでいたのだ。
「その刀、誰の為に作られたものなのか……はっきりさせてみようか」
 サヤの足元に転がる太刀を拾い、フェイはジンに渡す。
 新たな太刀に持ち替えたジンはフェイへと斬りかかった。
 今度は杖から刃を抜き、フェイは打ち合いに応じる。
「数合撃ち合えば手に馴染む事は分るはず。見習いを終えたばかりの刀鍛冶が相手に馴染む刀を打つ……普通では考えられない……よっぽど相手を想っていなければ出来ない事だ。分るな?」
 語りかけながら、フェイは杖に刃を納め、腰を落とす。
 そんな彼に、ジンは大上段から斬りかかる。
「妄想より、手の中にある事実を見ろ」
 ジンの刃が到達するよりも一瞬早く、左逆手抜刀で振るわれたフェイの刃がジンを断ち切った。

 倒れた後、ジンはほどなくして起き上がった。
 駆け寄るサヤと彼が抱き合うのを見て、フェイは彼が救われたのを確信する。
「うん、これでよし! ま、後は当人同士で解決する話だよね〜」
 こうして些細な誤解から起ことることとなった悲劇のエンディングは無事に破壊され、ジンとサヤは救われたのであった。



マスター:鈴音ハヤテ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:4人
作成日:2013/02/16
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