ステータス画面

土中に潜むもの

<オープニング>

●骸骨の宴
 骸骨が笑う。
 その何もない仄暗い空洞の奥から、カタカタと楽しそうに笑っている。
 苦しそうに見上げる青年の顔からはどんどんと血の気が引いていき、その視界はぼやけていく。
 彼の見つめる先には、大きくそびえ立つ何本もの柱。その上に僅かに見える宝箱。あと少しで手に入るはずだった。後数手動かせば……。
 だが、もう彼は動けない。
 その両足を掴むのは地面から生えた五本の骸骨の手。そして三体の骸骨がのしかかるように彼におぶさり、さらに別の一体が楽しそうに彼の首を掴んでいた。
 朦朧とする意識の中、彼の手は一枚の床石を押す。柱は再び沈み込み宝箱が近づいてくる。同時に土中から新しい骸骨が這い出してきた。
 骸骨たちは楽しそうに歯を鳴らし、その指先に力をこめ、青年の命を手折った。
 
「そこにお宝があるから進むんだよ。本当に絶えないね」
 扇の星霊術士・フリュニエ(cn0175)は、椅子に座りなおし言った。
「アクエリオの地底湖の遺跡は、まだまだ発見されているようだから仕方ないのかな」
 広大な地底湖の水位が少しづつ下がり、水中に沈んでいた遺跡が未だに続々と探索可能になっている。トレジャーハンター達にとっては浪漫の塊りが現れたようなものだ。
 勿論とレジャーハンターである以上、遺跡の危険な罠などは覚悟しているはずだ。
 だが、実際に命を失うと判っているのを見過ごすわけにもいかないだろう。
「宝を目の前にして骸骨に殺されてしまう青年が居るんだ。彼がを助ける為にも、みんなに協力して欲しい」
 彼は普通に説得しても、お宝があると分かっている以上、探索を諦める事は無いだろう。諦めさせるには、先に遺跡を攻略し、宝を手に入れるしかない。既に誰かが攻略しお宝を手に入れた事がわかれば、他のお宝を探しにいくだろう。
 洞窟は見通しの悪いくらい通路が迷路のように入り組んでいるので、気をつけて欲しい。
 途中に粘着性の強い大蜘蛛の巣が何箇所か道を塞いでるだけで、大きなトラップはない。難点なのは軽い痺れ毒をもっていることだろうか。
 力技で突破することも出来るかもしれないが、蜘蛛はどこから現れるか分からないので確実ではないだろう。刺激しないで通り抜けれるのが一番なのだが……。
「あれ、蜘蛛の糸ってどっちかはネバネバしてなかったような?」
 フリュニエは首を傾げ、説明を続ける。
 宝箱は再奥の部屋にそびえ立つ柱の上にあり、今のままでは取ることは敵わない。仕掛けを動かし柱を沈めなければならない。
 その仕掛けは色違いの床石を押すという簡単なもの。
 ただ、一つ沈める毎に二体の骸骨が現れる。
 柱は複数あり、お宝のある柱が分かるようになるのに、最低三回。確実に取れるような高さになるまで五回は床石を作動させなければならないだろう。
「お宝をとって、脱出すればいいから無理はしないでね。確か部屋の外までは追いかけてこないはずだから。お宝は早い者勝ち、最初に手にした人のものになるから、頑張ってみるのもいいかもね」
 フリュニエは、激励するように扇を広げ微笑んだ。


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参加者
やわらかさわ・ディー(c00031)
紅蓮の闘士・エルフィン(c04895)
ぴよたん刑事・キサラ(c05188)
三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)
衛生兵・プラリネ(c21280)
無垢なる魔女・タツヒメ(c30422)
さすらい手品師純情派・グレイ(c33296)
殲滅戦姫・ヨミ(c33612)

<リプレイ>

●地下に潜って
 静かな行軍が進んでいく。
 天井から滴る水滴の音が響きそうな、その歩みは周りに潜んでいるかもしれない蜘蛛や他の化物、罠を警戒してのこと。
 前を行く殲滅戦姫・ヨミ(c33612)と三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)の灯りが前方を照らし、直ぐ後ろを手なづけた大トカゲが神妙についてきている。
 そのさらに直ぐ後ろでは、ぴよたん刑事・キサラ(c05188)が、僅かな光を頼りに奥のほうへ眼をこらし、紅蓮の闘士・エルフィン(c04895)が注意深く辺りを確認する。
「遺跡の探索って、冒険っぽいね!」
「確かに……本格的に冒険者らしい仕事ですねぇ」
 キサラの言葉に、さすらい手品師純情派・グレイ(c33296)が後方を照らし答えた。
「最近、遺跡にもぐる機会が増えていますね……件の兄弟ではありませんが、まるでトレ ジャーハンターになったみたいです」
「そんなことぼやいていると、蜘蛛に後ろから襲われるわよ」
 衛生兵・プラリネ(c21280)に、無垢なる魔女・タツヒメ(c30422)が、クスリと微笑みかける。
「それはこまるね。立体的に襲われると時間が掛かりそうだし困るかな」
 そうアヤカは持参した長い棒を動かし、蜘蛛の巣を巻きとるような仕草をしてみせた。
「蜘蛛が居るのでしたね。できればやり過ごしたい所ですが……」
「うーん、お宝はほしいけどあんまり手間かけると、目的が達成できないからな。すばやく……すばやぐー……」
 やわらかさわ・ディー(c00031)の声が寝息のような音に変わり寝たのかと思いヨミが振り返れば、軽く横に揺れてはいるが、どうやら起きているようだ。
「んー……お宝欲しいよね、ふぁ……」
「え、私は宝になんて興味ない。それより、のんびりしている場合ではないだろ。兄弟が来てしまう」
 そう凛々しく言ったが、内心ではほんの少し気にはなっていた。お宝と聞けば気になるのは当然だろう、勿論本当に無関心の者もいるが。子供ではないのだ、そう眼を輝かせて口にするようなことではないと、自重していた。
 ディーのサーチウィズスピリッツのおかげで、事前に蜘蛛の巣を探査できたのは大きな時間短縮になった。同じ突破でも、少しでも厄介ごとは少ないほうがいい。
 エンドブレイカー達は、先を急いだ。

●蜘蛛の巣
 彼らの視線は目の前の大きな蜘蛛の巣に注がれていた。その巣の大きさから推定するに、大蜘蛛が現れれば人間くらいは軽く丸呑み出来る位の大きさはあるかもしれない。
「大きいですね……なるべく刺激しないように気をつけ通り抜けましょう」
「縦糸には粘着性がないらしいな。それを念頭に置いて間を通れば」
「粘つかない縦糸を切って蜘蛛を誘い出し集中攻撃でたおすのはどうでしょうか?」
 グレイ、ヨミ、プラリネが、縦糸の粘着性の無さに気付きそれを生かし突破できないかと相談を始めた。
「では、切りますわよ」
 静かに剣を抜いたタツヒメが、注意深く縦糸を切った。
 その後ろでは、いつ蜘蛛が現れてもいいように戦闘準備を整え、エルフィンがハンマーを構え、ディーがガトリングアローを放てるように弓を構えた。
 しかし、何も起きなかった。
 十分に注意しながら今度は、アヤカが縦糸をそっと切る。
 ……やはり、何も起きない。
「もしかして、振動してないから?」
 出来るだけ声を潜めて、キサラが仲間を見回した。
 半信半疑ではあるが、現れていない以上そうと考えるのが正しいだろう。
 まずキサラが縦糸がなくなったことで、大きく開いた網の隙間を通り抜けた。続くように女性陣が通り抜け、若干ヨミの豊満なボディが危ないとこだったが女性は通り抜けた。残るは男性陣と、大トカゲ。
 忘れてしまいそうだったが、大トカゲが居た。男性は今の開いている隙間では通り抜けるのは困難ぐらいだが、大トカゲは流石に無理だろう……
 そこまで考えたところでエンドブレイカー達の意思は決まっていた。
 時間が掛かるなら、倒す覚悟も必要。襲われたら迎撃できるように、武器を構える。幸い 奥には終点と思われている扉が見えるから最悪駆け込むことも可能だろう。
 行動が決まれば後は動くだけ。エルフィンが横糸に触れないよう気をつけ一閃する。大きく蜘蛛の巣の間が大きく開く。これは流石に巣の形を十分に保つことが出来なくなったようで、さらに複数の糸が連鎖的にぶち切れていく。
 その度に、蜘蛛の巣が揺れる。
 エルフィンが通り抜け、ディーが続いた。最後にグレイ、そして大トカゲが通り抜けようとしたときだ。音もなく真っ黒な巨体が迫り降り、襲いかかろうとしたするが、そこに 無数の矢が飛び、タツヒメの吹き付けるドラゴンブレスの火炎が巣を燃やす。
「油断大敵―だよ、ね……ぐぅ」
「これは足止めにしかならないわ」
 突き刺さった矢の激痛と、燃えていく巣の炎に不気味な奇声を上げていたが、確かに大したダメージはなさそうだ。
 エンドブレイカー達は素早くその場から離れ、目の前の扉へと飛び込む。
「閉じます」
 プラリネのかざした手のひらが輝き扉にゲートエンブレムの魔法の紋章が描かれ、封じられた。これで蜘蛛も勿論だが、万が一青年が来てしまってもこの部屋に入ることはできないだろう。
 部屋は大きく開けており色違いの床石が並び、中央に大きな柱がそびえたつ。
 うっかり仕掛けを作動させないように気をつけ、円陣を組むように彼らは展開し三人がいっせいに色の付いている床石を踏む。
 軽い地響きと共に、柱が沈み始める。目でとらえることはできないが、あの上に宝物はある。同時に地面から一気に生えた真っ白い手がエルフィン、アヤカ、ヨミの足を掴んだ。そしてバラバラと前方に這い出してくる三体の骸骨。残りの三体は手だけを伸ばし、エンドブレイカー達を捕まえている。
 そう、外に完全に出なければ攻撃を簡単にくらうこともない。逆に攻撃をすることも出来ないが、簡単な足止めになれば十分というわけだろう。
 エルフィンは軽く口の端をあげると、ハンマーに神火を宿らせ骨の手が伸びる地面に向かって、一気にたたきつける。
 地面は抉れ、爆発したかのように土砂と潜っていた骸骨がふきとぶ。そこに突き刺さるディーの矢と、大木を切り倒すかのごとく横薙ぎに振られたソードアックスの一撃が、骸骨の肋骨を砕く。
「このていどで、動きを封じられるとおもうなよ!」
 同じように地面を攻撃し、こちらは骸骨の片手を砕き早々に脱したアヤカは三節棍を構えなおし、挑発するように骸骨に向かって手招きをした。
「さあ、かかっておいで! 全てを、撃ち砕く!」

●生える骸骨
 三体目の骸骨が、壁に思いっきり叩きつけられバラバラに砕け散った。
「蜘蛛といい骸骨といいまるでお化け屋敷だよ〜」
 次の手裏剣を構えながらキサラはぼやいた。だが、そんなことを言っている場合ではない。お宝は届くかもしれない位置まで降りてきているのだから。戦いの様子を気にしつつ、柱のほうへと移動していった。
「万物の原初たる炎を……」
 グレイに召喚された星霊のフェニックスの不滅の炎が、仲間を癒していく。
 骸骨はそれほど強い相手ではもちろんない。ただ、地面にはまだ潜ったまま姿を現さず、動いている骸骨が二体いる。
 仲間が引きずり出され、破壊されたのを察しているのだろうか。拘束するのを諦め、攻撃の邪魔をするように残った片方の手で邪魔をしてきていた。おかげでダメージこそはないが、妙に長引いているようだ。
 時間を掛けたくないとライフエナジーをこめた矢をまとめてディーが放ち。その雨が止めば、勢いよく三節棍を回転させながら飛び込んだアヤカのサイクロンドライブが、袈裟に薙ぎ払うように繰り出される。
「まだまだぁ!」
「はぁぁぁ!」
 魔獣化したした腕を振り下ろしタツヒメのビーストスラッシュが、虚ろな頭蓋骨にヒビを入れ、入れ替わるようにプラリネの斧が振り切られ、再び骸骨は壁に叩きつける。
 こうして常に距離をとっていれば、逃走はたやすいだろうが、まだ土中に骸骨は居る。
 もちろん骸骨に痛みはないのだろう。楽しそうにカタカタと笑う様に歯を鳴らし続けた。
 効果のほどは分からないが、グレイは見えない相手に向かい白銀の鎖を伸ばす。
「森羅万象の理もて、束縛せよ!」
 その鎖が見えない相手を捕らえる。その確かな手ごたえに、逃すまいとグレイは鎖を操る力を強めた。
 同じとき、柱の前ではお宝奪取作戦が始まっていた。
「はうぅ……、なかなか取れないんだよ。でも諦めたくない〜」
 ロープがうまく当たらず苦戦していたキサラが、再び投げようと構えた横を、颯爽と鷹のスピリットが通り抜ける。
「これで、上手くー引っかかって落ちるといいよねー」
 やる気があるのか無いのか、眠そうな声で緊張感無くディーが言った。キサラとは随分と温度差があるようだが。
 周りでは、潜っていた骸骨を引っ張りだせたようで、ヨミ飛び上がった落下の勢いでハイジャンププレスを決め、骸骨を粉砕した。
「お宝は、まだ手に入れられてないのか?」
 青い髪を揺らし、気にかけるように振りかえる。
 さらにその奥では、骸骨の攻撃を受けつつ神火斬妖剣で抑えこんでいる。
「狙っているのは一人じゃないんだよね」
 敵を抑えるのに余裕が出来たのだろう。アヤカが連れてきた大トカゲを足場代わりに柱に向かって飛び上がった。慌てて再びロープが投げられる。
 また狙いが甘い。そう思ったときだった。何の前触れも無く、柱が沈み始める。
 誰が踏んだのだろうと周囲を確認すると、大トカゲの前足の下に床石が……。そこまで精密に誘導できないのは当然。さらに二体の骸骨が土中からゆっくりと這い出してくる。沈んで狙いがずれたアヤカは僅かに悔しさを浮かべ、だがそのまま体勢を整えると、竜の輝きを足に纏い弱っていた骸骨に向かって流星のごとく蹴りを決める。
「これで、とどめーーっ!」
 威勢のいい声と共に、骸骨がバラバラに砕かれた。
 そして、お宝は……
「取れたよ!」
 その引き寄せたロープの先についているのは宝箱。狙うのが難しかっただけのようだ。キサラは中のお宝を取り出すと、ディーに言われたとおり分かりやすいところに宝箱を置く。
 それを見届けたプラリネは、ランバークラッシュで骸骨達を吹き飛ばし扉を開ける。
「撤退ね」
 タツヒメの声にエンドブレイカー達は、まだ動いている骸骨を放って、いっせいにその場を脱した。

●さて、その中身は?
 脱出は蜘蛛の巣も気にせず最短ルートを進んだ。
 炎が思いのほか効果があったので、帰りはタツヒメのドラゴンブレスや、グレイのフェニックスダイブが活躍した。
 とはいえ、いきなり背後に下りてきたときは一瞬大騒ぎになったが。
「これで、目的は達成できましたね」
「怪我人がでなくて良かったです」
 穏やかにプラリネが安堵を浮かべる。
「お宝の中身は確認したのか?」
 取ることは出来なかったが気になるようで、ヨミが笑みを浮かべ尋ねる。
「俺も気になる、ぐー」
 歩きながら聞こえてきた寝息に仲間は一瞬驚くが、やはりディーは寝てはいないようだ。
「可愛いものだと嬉しいけど、帰ってからのお楽しみだよね?」
 嬉しそうにキサラが答える。
 そう話しながら出口に近づくと、入り口の方から一人の青年が慎重に入ってくるのが見えた。
 青年の方もエンドブレイカー達の姿に気づき、予感したのだろう。身構えるように近づいてくるの様子を、足を止め待った。
 エルフィンが、青年にニッと笑いかけ通りぬける。
「お先に頂いたぜ」
 達成感の雰囲気に疑う余地は無い。青年はしばらくその場に立ち止まっていたが、お宝が無いのなら仕方がないと、向きをかえ入り口へと戻っていった。



マスター:凪未宇 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2013/03/03
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