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季節外れの肝試し

<オープニング>

「やめようよ、やめようよぉ!」
「お前、臆病だなー」
 怖がる子をからかい、一人がボロボロの扉を押し開ける。ギギギギ、と不気味な音がした。
 ここは小さな廃病院。幽霊が出るとまことしやかに町中で噂されている場所だ。
 好奇心旺盛な子供達は噂の真否を確かめようと、幽霊の出そうなこの時間に集まってきたのである。
 ゆらゆら揺れるロウソクの灯りを手に、子供達は恐る恐る室内へ足を踏み入れた。中は真っ暗闇で、ほこりだらけの蜘蛛の巣だらけだった。薬品の匂いがつんと鼻をつく。
 彼らはしっかりと手を取り合い、クスクス笑ったり脅かし合って叫び声を上げながら、奥へ奥へと進んだ。
 いくつか部屋を回った後、廊下の先に階段を見つけた。
 先頭の子が言った。
「二階に行く? 地下に行く?」
「地下に降りてみない?」
「いかにも出そうだもんなー」
「やめようよ、もう帰ろうよー!」
「じゃあ、一人で帰れよ」
 先ほどの子が半泣きで訴え、皆で笑っていると、急に一人の子が顔をしかめた。
「ねぇ、今変な音がしなかった?」
「音?」
「どこから?」
 その子が黙って下に伸びる階段を指差したのと同時に、ギシッと床板が軋む音がした。
 全員が驚いて飛び上がった。
 ギシッ。
 また音がした。
 ギシッ。ギシッ。ギシッ。
 だんだん近づいてくる。誰かが階段を上っているような音だ。
「だっ……だだだ誰だっ!」
 ガクガク震えながら、先頭の子がロウソクの灯りをかざした。
 ゆらりと闇の中に浮かび上がったのは、此方へと上ってくる骸骨の集団だった。ぼろ布をまとい、古びた剣を一振りずつ握っている。
「ぎゃあああああー!」
 子供達は金切り声を上げ、一目散に逃げ出した。
 しかし、出口まで辿り着けた者は一人もいなかった。

 子供達を襲ったのは、スケルトンというアンデッドです。
 彼らはいつの頃からかこの建物に住みついており、侵入してきた子供達の騒ぎ声がうるさくてたまらず、排除しようと集まってきたようです。
 スケルトンは二階建ての廃病院の地下の部屋にいます。そこへ直接向かっても構いませんが、かなり狭い場所です。一階の廊下におびき寄せた方が楽に立ち回れるかもしれません。
 中は暗いので灯りをお忘れなく。

 スケルトンの数は6体。全て倒してください。
 剣を装備しており、剣のアビリティと同等の攻撃が可能です。
 スケルトンが病院の外に出ることはありません。しかし、隠れる部屋がたくさんありますので、逃走されると見つけるのが大変でしょう。

 尚、噂となっている幽霊の正体が彼らであるかどうかは定かではありませんので、十分お気をつけ下さい。
 この季節に肝試しをしに来る子供達も子供達ですが、彼らが襲われてしまわないようこのエンディングを打破してください。


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参加者
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)
ダンシングブレード・エリーシャ(c15180)
踊り子兼歌姫・ステラ(c22234)
水花の輪舞・リーアン(c22531)
フロプト・ダドリー(c32864)

<リプレイ>

●肝試しの前に
 廃病院のひび割れた窓から西日が射し込む。突如入口がギギーッと開き、六つの影が埃だらけの床に伸びた。
 音を立てないようにそうっと、エンドブレイカー達は中へ忍び込んだ。装備に布を噛ませ、小声で話しながら、彼らはこっそりと作業を始めた。敵が逃走しづらいように室内中の扉に縄を張って塞いでおこうという作戦だ。
「なかなか大変な仕事ですね」
 フロプト・ダドリー(c32864)は縄を縛りながらそう口にしつつも声音は優しく、父親の顔をして笑っている。
「子供の好奇心にも困ったものです」
「廃屋で肝試し……定番といえば定番ですよねー」
 とダンシングブレード・エリーシャ(c15180)が彼に微笑む。
 別の扉の前では水花の輪舞・リーアン(c22531)と三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)が、作業しつつこんな話をしていた。
「スケルトンの他に、本当に、幽霊がいるの、かな?」
「いたら面白いよね」
 とアヤカが満面の笑みで言う。彼女の辞書に『恐怖』という文字は無い。
 音に反応するという敵に気づかれないよう細心の注意を払い、逃走経路を全て封じた。
「細工完了ですね」
 阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)が満足気に室内を見回す。
 アヤカは入口の方を振り返った。
「さて、後はコールリザードで大トカゲを連れて来て、入口を塞いでもらおうかな」
 彼女の提案に、少し考えてからダドリーが穏やかに言う。
「スケルトンは外には出ないようですから、そこまでしなくても大丈夫だと思いますよ」
「そっか。じゃあ、入口はそのままでいいね」
「後は夜になるのを待つばかりね」
 踊り子兼歌姫・ステラ(c22234)の言葉に、全員が頷いた。
 一度外に出て静かに扉を閉め、夜の訪れを待つ事にする。
 そして、辺りがすっかり暗くなった頃。灯りを手に再び集まった六人は、忍び足で暗い廊下を進んだ。
 階段の手前で立ち止まると、ステラが一歩前に出て仲間を振り返り、小声で言った。
「準備いい?」
「お願いします」
 ルーンが囁き返し、他の四人も黙って頷く。
 エリーシャがソードハープを爪弾き始め、軽快な音楽に合わせてステラがとんと足を踏む。くるりと回って華麗に舞いながら、一つ息を吸うと甘やかな声で歌い出した。
 仲間も手拍子足拍子で大きな音を立てる。竪琴の音色と歌、楽しげな笑い声が建物中を満たしていった。

●怒れる死者
 程なくして、地下へ続く階段がギシッ、ギシッと軋み始めた。骸骨の頭が見えてくると、二人は演奏と踊りを止めた。ゆっくり後退し、間合いを取る。
「やあ、待ってた、よ」
 上がって来た六体のスケルトンに、リーアンが和やかに声をかけた。
 物言わぬ相手は一斉に剣を振り上げ、床を踏み鳴らして全身で怒りを表現している。
 通訳するとしたらこうだ。
 うるっせーんじゃお前ら! 今何時だと思ってんだボケ! 近所迷惑だろーが!
 相当怒っているらしい相手に申し訳なさを覚えつつも、ダドリーは武器を構えて毅然と言った。
「騒がしくしてしまって申し訳ありませんが、子供達を危険な目に遭わせる訳にはいきませんので」
「しっかり退治させてもらいますよー」
「全てを、打ち砕く!」
 エリーシャとアヤカも前に出て身構える。
 スケルトンが刃こぼれの酷い剣を構え、六人にわらわらと向かって来た。
「こいこい!」
 迫り来る刃を受け止めたアヤカは、三節棍を図上で回転させて敵の懐に突っ込む。
 風圧で吹き飛ばされた敵と入れ替わりに、別の一体が隙をついて彼女に斬りかかろうとした。だが、いつの間にかばら撒かれた大量のトラバサミに足を取られてたたらを踏む。
「我がトラバサミは肉を抉り骨まで食いつく……って肉は初めから無かったか」
 とルーンがほくそ笑んだ。
 素早く薙ぎ払われた刃が闇に一閃を残す。
「赤き猟犬の狂想曲、いきます!」
 避けきれなかった剣の乱舞に顔をしかめつつ、エリーシャが流れ出た血液から猟犬を作り出し、ソードハープを奏でて操る。ステラが優しく囁くような子守唄を歌って援護する。敵の動きが僅かに緩んだ所を、紅い群れが疾駆し、飛びかかった。腕の骨に喰らいつかれ、敵が声無き悲鳴を上げる。
 十字斬りを受け流したものの別の一体の突きを受けたダドリーは、体勢を立て直してアックスソードを振るった。撃ち出される大量のオーラの刃に混じって、リーアンが投げた茸の煙がもくもくと辺りに広がる。
 振り上げかけた剣を震わせて動きを止めた一体は、攻撃方法を変えた。妖しいオーラを帯びた剣がアヤカを袈裟斬りにする。別の敵に気咬弾を放った直後だった彼女は、避けきれずまともに喰らってしまう。
「っ……まだまだぁ!」
 強気な笑顔で三節棍を握り直し、反撃に出る。ステラの戦歌が傷を癒し、鼓舞してくれるのを感じた。
 諸刃の一撃を何度も受けながら全員で集中攻撃し、数を減らしていく。

●立場逆転
 三体目が倒れると、六人は即座に陣形を変えて敵を包囲しようとしたが、残りの敵が降参とばかりに慌てて逃げ出すのも同時だった。
 しかし、ダドリーがチェイスを付けた一体は近くの部屋に飛び込もうとして張り巡らされた縄に絡まり、わたわたともがいた。星霊グランスティードを呼び出して飛び乗り追いかけた彼にとどめの一撃を放たれ、がくりと崩れ落ちる。
 逃走する一体にルーンがチェイスを付けてアヤカと追い、もう一体にはリーアンがチェイストマトを投げ付けてエリーシャと追う。
 ルーンとアヤカから逃げた一体は、入口の縄を斬り裂いて診察室へ逃げ込んだ。
「どこにいる?」
「あっちの方です」
 彼が灯りを差し向けると、間仕切りのカーテンの下から白骨の足が覗いている。
 彼女は不敵に笑んで忍び足で近づいた。
「わあっ!」
 カーテンごと突き飛ばすと、敵は仰天してひっくり返った。次の瞬間には細糸が首に絡み付いて宙吊りにされる。
「我が糸から逃れる術なし、絞首刑にて裁かれよ」
 ルーンが糸をぴんと張って弦のように鳴らす。
「これで、とどめ――っ!」
 アヤカの流星脚が炸裂し、敵は糸に絡まったまま動かなくなった。
 最後の一体は廊下を駆け回ってエリーシャとリーアンを引き離し、ある病室の扉に張られた縄を引き裂こうと躍起になっていた。
「見つけましたー」
 エリーシャが灯りを向けると、敵はびくっとした。赤い物がべったりと付着した頭骨が、かたかた震えながら此方を振り向く。
「血まみれみたいで、雰囲気ある、ね」
 リーアンが余裕の微笑みで言った。
 エリーシャが己のデフォルメ人形を呼び出して、剣を振り回して抵抗する敵を羽交い締めにする。すかさずリーアンが手の中で高速回転させたトンファーで殴りつけ、とどめを刺した。
 二人が敵の遺骸を運んで戻ると、仲間も他の五つの遺骸を廊下に集めている所だった。
「これで全部ですね」
 ダドリーが言うと、ステラが哀れむように目を伏せた。
「今度こそ安らかに眠れるよう祈るわ」
 彼女が鎮魂の歌と踊りを捧げる中、エリーシャも祈りを捧げて遺骸を一体ずつ消していった。

●肝試し
「折角だから探検してく?」
 アヤカがぽんと手を合わせ、いい笑顔で言った。
 エリーシャもほわほわと微笑んで賛同する。
「そうですねー。他に危険があるかもしれませんしー」
 一階は仕掛けをした時に見て回ったので、まずは地下室を調べてみる。
 階段を降り始めてすぐ、誰からとも無く「うっ!」という声が出た。酷い腐敗臭が漂って来る。地下室は更に酷かった。棚には開きかけの棺桶が六つ……ある意味生活感がある。元々何に使われていた部屋だったかなんて、言うまでもない。
「ここを戦場にしなくて良かったですね」
 鼻を押さえてダドリーが言う。悪臭に耐え兼ね、逃げるように地下室を後にした。
 上の階へ向かいながら、ステラは脆くなっている場所がないか慎重に調べる。古い建物だが、踏み抜いてしまう危険はなさそうだ。
 二階は入院患者用の病室が幾つかあった。ベッドやカーテンもそのまま残っていて、何とも不気味である。
 危険な物がないとわかった所で、六人は一階へ戻った。
「何だ、何もなかったね」
 アヤカが少し残念そうに明るく言う。
「まぁ、幽霊なんて唯の噂ですし……」
 とルーンが出入口の扉に手をかけた矢先。
 チリーン。
 小さくもはっきりと鈴の音がした。
「……?」
 全員が黙って、廊下の奥へと顔を向ける。
 チリ、チリーン。チリーン。
 しーんとする中、奇妙な鈴の音が鳴り響く。まるで、帰ろうとする六人を引き止めるかのように。
 エリーシャとステラは青ざめ、ルーンは表情を消した。アヤカはきょとんとし、リーアンはわざと驚いた表情を作る。ダドリーは苦い微笑みを浮かべた。
 エリーシャが無理矢理笑みを形作る。
「こ、これまた定番といいますか、お約束といいますかー」
「あっちの方からするね」
 平然と歩き出すアヤカの腕をステラが掴んで止めた。
「いい! 見に行かなくていいわよ!」
「何で? 危険なものだったら片付けておかないと」
 ふと、音がぷつりと途絶えた。
「ほら、止まったし!」
「ただの鈴だし、害はないと思いますよ」
 扉に手をかけたままルーンも固い表情で言った。ダドリーは相変わらず苦笑いしている。
 ステラが説得の言葉を並べようとした時、アヤカの背後の暗闇に二つの目が一瞬だけ光った。
「いっ! いい今、目が! 目があったわ!」
「目?」
 振り返ろうとした彼女の肩を、今度はリーアンが掴む。
「見ない方がいい、よ。早く、退散、しよう」
「何で?」
「だって、何かわからない方、が、色々想像できて、楽しいんじゃ、ない、かな?」
 と彼はにこにこと言う。
「撤収撤収!!」
「お邪魔しましたー!」
 渋るアヤカの背をステラとエリーシャが押し、全員が外に出た。
 チリーン。
 再び無人となった廃病院に鈴の音が響く。光る目の持ち主が月明かりの下に躍り出て、にゃあと一声鳴いた。その首には小さな鈴が下がっていた。



マスター:水月鏡花 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:6人
作成日:2013/03/11
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  • 楽しい4 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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