ステータス画面

回廊の演技者達

<オープニング>

●回廊の演技者達
 むき出しの歯車の上を飛び、歩き、辿り着いたその場所は真っ直ぐに続く回廊だった。道幅は広く、その両脇には石像が並んでいた。騎士達は剣を構え、王と王妃がその奥に立つ。その奥に道は無い。行き止まりの回廊には、カタ、カタと歯車のようなものが動く音がしていた。
 その音がふいに、途切れる。次の瞬間、ガタン、と大きな音がした。
 その音に反応したかのように、両脇にあった石像達が面を上げる。騎士は剣を振り下ろし、王の持つ剣が炎を纏う。振り下ろされた一撃は、回廊の床を抉り取った。
 床に描かれた炎の紋様が砕け、壁に穴が開く。王妃の石像は杖を手にしたまま警戒するようにぐるりとその頭を回しーー元あった場所に戻る。
 再び、回廊にはカタ、カタ、と歯車のような音が規則正しく刻まれていた。

●誘われるもの
「いろいろと、ことが動いている時にすまない。私に、君たちの時間を少し貸してくれるかな?」
 例のラッドシティの遺跡について、少しね。と言って宵行の魔法剣士・クラウディオはエンドブレイカー達を酒場の一角へと招いた。
「世界の瞳の遺跡の中に、正しく稼働しない遺跡がある、という話は聞いているかな。その修復をするのに、君達の手を貸してほしくてね」
 遺跡の内部にあるゴーレムが、誤作動を起こしているというのだ。
「ゴーレムがいるのは、歯車の重なり合った道を抜けた先、回廊だ。……もっとも、回廊といってもその先は行き止まりになっていてね。空間としては、長方形になるかな」
 道幅は随分と広く、天井も高いのだとクラウディオは言った。
「誤作動を起こしているゴーレムは、回廊の両脇を飾るようにあった3体のゴーレムだ」
 本来であれば出迎えの礼をする筈だった石像のゴーレム達は、敵味方の判別もつかないまま回廊に響く音に反応して暴れてしまっている。
「ゴーレム達を倒し、遺跡を再起動する必要がある。……あぁ、再起動後は自動修復によって修復される、という話でね。ゴーレム達もそうだけれど、回廊にも被害が出ても大丈夫だよ」
 回廊の壁に傷ができたりすることはあっても、そのまま崩落に繋がるほど遺跡自体は弱くはないのだとクラウディオは言った。
「暴れても大丈夫ではあるが……、先にゴーレム達が壊してしまっているのもあるからね。足下の瓦礫には気をつけて欲しい」
 ゴーレムの数は3体。
 騎士の姿、王の姿、王妃の姿をした石像だ。
「大きさとしては……普通の人間よりは、大きいな。遥かに大きい、というほどでは無いが、やはり石像だからね。それなりの大きさを持つ」
 ゴーレム達は、こちらが回廊に入るまでは両端で飾りのように立っている。音に反応して動き出すらしい、とクラウディオは言った。
「大きな音や、回廊に聞こえて来ている歯車の音が乱れたりすると動き出す。何を狙うわけではないが、それまで回廊にはいなかった者が現れれば、そちらを狙ってくるだろうね」
 歯車の音自体は、この遺跡の不具合で時折乱れるものらしい。これに関してはゴーレムを倒した後の再起動で、修復されるそうだ。
「回廊には今回動き出すのと同じ姿をした石像もあってね。王と王妃の石像はそれぞれ一体ずつだが、騎士は何体かある。どれが動き出すかは……すまない、分からなくてね」
 ただ回廊にある石像は、騎士達、そして王妃と王という並びになっているのだとクラウディオは言った。
「両脇に騎士、その奥、右に王妃、左に王となっていてね」
 騎士の石像は大剣を持ち、王の石像は剣を、王妃の石像は杖を持っている。
「やはりゴーレムだからね。見た目は石像でも動きは良い。特に、騎士の石像には気をつけて欲しい」
 王妃の石像は回復も持っているらしい、とそこまで言うとクラウディオは顔を上げた。

「正しく稼働しない遺跡を残しておくと、世界の瞳全体に悪影響を及ぼしたり、大きな事故を起こす危険性もあるからね」
 そこで一つ言葉をきって、クラウディオはエンドブレイカー達を見た。
「どうか、君たちの力を貸して欲しい」


マスターからのコメントを見る
参加者
眩暈の尾・ラツ(c01725)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
花非花・アトラ(c03756)
水奏戯曲・アクアレーテ(c09597)
蒼い薔薇の茨姫・ヘイゼル(c20389)
剣の城塞騎士・セルジュ(c25038)
地狂星・メランザ(c26024)

NPC:雇われ店長の魔法剣士・クラウディオ(cn0035)

<リプレイ>

●回廊に音はなく
 開き戸の向う、最初に見えたのは奥へ奥へと続く空間だった。それが回廊であると分かったのは、床に彫り込まれた紋様と両側に立つ騎士の石像のお陰だろう。見上げる程に大きな石像は大剣を構え並んでいる。騎士の石像達の向うには、王妃と王を模した石像があった。
「こういう石像って、本当に今にも動き出しそうで、厳かな雰囲気を醸し出しているよね……」
 石像を見上げ、蒼い薔薇の茨姫・ヘイゼル(c20389)は静かに口を開く。
(「王に王妃に騎士の石像か…ここは昔、王族が住んでいたのかな? まぁ、放っておけばいずれは被害者も出るだろうし、ボク達で葬ってあげないとね」)
 回廊の入り口、奥にはまだ進まずにいるのはその石像達が音に反応するからだ。話し声くらいは特に問題は無いのか、回廊の入り口に立つエンドブレイカー達の耳に、何かが動き出す音は聞こえなかった。
(「王様と王妃様と、騎士達は……複数」)
 回廊に立つ石像を視界に納め、水奏戯曲・アクアレーテ(c09597)は藍色の瞳を僅かに細める。
 海の藍を宿す瞳が一瞬浮かべた憂慮は、この騎士のうち一体のみが動き出すという事実に注がれる。
(「耳を澄ましても聞き取れるか分からないけど、後れを取らないようにしなくちゃ」)
 カチ、カチ、と響く歯車の音以外に、この回廊に音は無い。踏込んだ自分達の足音と、互いの息づかいだけがあった。だが『何かがある』と思う。事実、この回廊の石像達が動き出すのだから『何か』はあるのだが。
 見られている……いや、聞かれているに近いかな。
 静かに一つ息を吐き、阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)は回廊から石像へと目をやった。
(「それにしても頻繁に誤作動を起こす遺跡ですね……出来た年代から考えたら無理も無い話なのかな……」)
 所々、見える石の塊や回廊にある罅は、例の誤作動によるものだろう。
 騎士と王妃、王の石像による破壊行為。
 誤作動を起こしている遺跡は一つではなく、その原因を取り除くことによって再起動し、修復するーーと言う。実際、そうやって修復した遺跡はいくつもあるのだが詳しい所が分かっていないのも事実だった。
 勇士号に世界の瞳。
 私達にとってはもう欠かせない便利さですよね、と眩暈の尾・ラツ(c01725)は今の所反応の無い石像達に目をやる。
「けど」
 呟きは口の中、くるりと見渡した男の赤橙の瞳が床の紋様を捉え、揃いの石像を見た。
(「遺跡だけあって構造も理屈もさっぱり解りませんし、一部の不具合ならまだ対処のし様はありますけど。……是が全体で誤作動を起したら、と思うとね」)
 背筋が冷える心地ですよ。
 自分達が普段、使っているものが牙を剥くのだ。
 静かに一つ息を吐けば、道すがら拾って来た石の塊を手にした地狂星・メランザ(c26024)が見える。はみ出ている銀の棒は何かの装飾部分だったのか。不思議とさして重くは無い。
 これを回廊に投げ、音を鳴らす。騎士の反応を見てから、行動開始だ。
(「……行き止まりの場所に御丁寧に鎮座してあるゴーレムか……。重要な装置が配備されているような場所だったかもしれんが……」)
 いずれにせよ、とメランザは思う。
 遠い昔の話であり、何かの役割があったとしても既に終わっていることだろう。
(「役目を終えた王侯貴族の方々には丁重に御退位頂くとしようか」)
 ぐっと、持って来たガラクタを持ち上げ、ハンマー投げの要領で遠くに飛ばした。

●回廊の演舞者達
 どぉぉん、と音がした。
 投げ込んだ遺跡のガラクタが床にぶつかって砕け、響き渡った破砕音にず、と何かが擦れるような音が混ざる。
 それまであった違和感が、肌を刺す敵意に変わって行く。
「……さあ、盛大な謁見式といこうじゃないか」
 口の端を引き上げ、笑うメランザの瞳に騎士達の列の中腹にあった、石像が動き出したのが見えた。
 来るぞ、と響く声に、剣の城塞騎士・セルジュ(c25038)は剣を抜き女神へと亡き恋人へと祈りを捧ぐ。彼女が手にしていた剣を手に、城塞騎士が見据えた先、ず、ともう一度、擦るような音が響き、回廊の真ん中に躍り出た騎士が罅の入った床を踏込み――来る。一歩は大きく、石像の重さを示す様にどん、と鳴り、体に伝わる振動に回廊を見据えた花非花・アトラ(c03756)の瞳に動き出した王と王妃の姿が見える。
「クラウディオさん、後ろは任せてください」
 レイピアを抜き払った雇われ店長の魔法剣士・クラウディオ(cn0035)に、傍にいたアトラは、そう言ってぐぐ、と拳を握る。ず、と音を鳴らし、信頼をもって今は目を合わせる事無く、ただ駆け出す前にクラウディオは言った。
「では前は任せてもらうよ」
 瞬間、光が弾けた。
 王妃から放たれた魔法弾だ。
「後ろだよ!」
 警戒を告げるヘイゼルの声が響き、ラツ達は地面を蹴った。飛ぶ様に前に出れば、さっきまで自分達の立っていた場所に魔法弾がぶつかる。狙いは前衛のうちの誰かか。炸裂した青に、床板が剥がれる。飛ぶ砂塵を視界にルーンは弓を構えた。
「石像とはいえ女性を寄ってたかって狙い撃ちするのは気が引けますが、回復役から落とすのは兵法の定石。破壊させてもらいます」
 射ち出すのはライフエナジーを込めた一撃。
 ルーンの一撃は、吸い込まれる様に王妃の胸に突き刺さった。切っ先が像を抉り、僅かに傾いだ石像の前に立つように騎士が動く。
 後衛を狙うつもりか。
 真っ直ぐに、叩き付けられた敵意にルーンは再び弓を構える。きり、と弦を引く音に石像の足音が混ざる。
 だが、それよりも先に一撃が届いた。
「そう簡単に抜かせはしない」
 一撃の後、紡いだ言葉に騎士の頭部が動くのをメランザは見た。
 叩き付けたのは、騎士の胴を切り裂く虚空の刃。
 一撃に、騎士の石像の意識がこちらに向き――その足が、こちらに向いた。
 早い。
 ドン、という音と共に床を蹴った騎士がメランザに向かって大剣を振り上げた。次の瞬間、ごう、と唸る火柱と共に叩き付けられた斬撃が回廊を震わせた。
「メランザ!」
 鋭く呼ぶ声は、無事を確かめるものだ。
 大丈夫だと言う代わりに、追撃を交わした狼の娘は、瓦礫を足場に飛び上がる。身を低め、加速する勢いで交わしたのは迫る王の刃だ。石像とは思えぬ動きと早さに、ラツは召喚したリングスラッシャーを放つ。同時に、騎士の懐へと走り出した。足下の罅を飛び越え、前のめりになって加速する。着地と同時に魔法鏡の名をもつガンナイフを抜けば、召喚した光輪が騎士の肩を削っていた。
 ダメージとしては浅い。
 だが、接近に気がつき、振り上げられた騎士の腕が何かの違和感に気がついた様にひくり、と震えた。
「制約、一つですね」
 光輪は、騎士の頭部を擦って消えた。
 火柱を伴う一撃は、その炎を広げることはできない。
 なら、と重なる声は、王の石像を前にレイピアを構えたクラウディオのものだ。
「私は貴方の相手をさせていただこう」
 掌から放たれる光輪が、王の石像へと向かうのを見ながらアクアレーテは唄う。ゆっくりと、だが強く響くその旋律は回廊に獣達を創造する。幻獣は、アクアレーテの旋律に呼応として駆ける。飛び込み、喰らいつく先は杖をもつ王妃。腕に喰らいつけば、ぐるり、と石像の頭部が回ってこちらを見た。
 来る。
 叩き付けられる殺気に、振るわれる力は、この遺跡にただあった石像達の姿からは遠い。
(「規則正しく動く歯車の音に、最初はお辞儀をするだけだった石像はレーテの思うより少し大きいけど少しだけ、かわいそう」)
 でも、とアクアレーテは思う。
(「誰が悪戯をして細工したりっていうのは分からないのだけど、世界の瞳に悪影響が出たり事故にならないようにここで止めなきゃいけないから」)
 だって今以上の事故が起こってはいけないもの。
 息を吸い、娘は敵意を正面から受ける。
 ドォン、という音と共に火花が散った。
 振り下ろされる王と騎士の剣は、大きさもあって重い。セルジュとメランザが受け止め、返す刃を飛び退けたクラウディオとラツが援護する。制約を受けた騎士の攻撃は、最初よりは鈍ってきていた。だが、振り下ろされる一撃に重さがあるのは変わらないのだろう。回廊を震わせる攻撃に、ヘイゼルはく、と前を見る。杖に、淡い光が灯った。

●烈火
(「あれは……回復」)
「やらせないよ」
 言って、ヘイゼルは幻覚のキノコを手にする。
「それ、この幻惑のキノコで痺れてて……」
 ヘイゼルの投げたキノコが、王妃の頭上で炸裂する。惑わしの煙に引火して、爆発が起きた。爆発の中、王妃の杖を手が震えた。
 マヒが利いている。
 息を吸い、アトラは魔道書の持つ力を解放した。
「これ以上暴れないで大人しく、してください」
 ガルトゥース、アルファザール、とアトラは紡ぐ。封印の儀式が、王妃の石像を絡め、胴が欠ける。
 カン、とこぼれ落ちた破片が床の上で跳ねた。思うより軽いのか――否、剣を受けた限りでは騎士は重かった、とセルジュは思う。盾を構え、眼前の石像に城塞騎士は身を固める。振り下ろされる一撃は、ただひたすらに重い。騎士の剣は、振るうというよりは叩き割るに近い。上段から勢い良く、震われる大剣が嵐をよんだ。
 ガン、と重い音がした。
 固めた防御が大剣を受け止め、痺れる腕に力を入れて前に出る。直突きで寄せた体で、騎士の懐で剣を振り下ろす。肩下から胴へと、一気にふるった剣が、石像に罅をいれた。
 ギ、ギ、と軋むような音が戦場に響く。
 回廊の戦いは激しさを増していた。振るわれる剣は、マヒや制約によって少しばかり動きは鈍くなっていたが――だが、それでも石像達は動く。こちらは傷を受ければ仰け反るが相手にはそれがない。こちらが振るう剣を気にせず受け止め、身を刻みながらも踏込み、体重をかけて振り下ろされる刃が届く。
 ダメージは五分五分。
 回復こそまだ使ってはいないが、傷は決して少なくは無い。だがらこそ、今、足を止めるだけの余裕は無かった。
 ルーンの放った一撃は拡散し、踏込んだ前衛達が全力の一撃を叩き込む。
 剣戟が響き渡り、火花が散る中、王妃がその杖を高く掲げた。広がるのは癒しの光。行く先は――騎士だ。
 回復を受けた騎士が振るった大振りの一撃が、セルジュを吹き飛ばした。
「ぐ……っ」
「……っと」
 声を上げ、吹き飛ばされたセルジュを受け止めたラツが、距離を殺す様に地面に手をかける。回復を告げるアトラの声が響き渡り、追い打ちをかけようとする騎士に、メランザが駆ける。その背を、たたき落とそうと振るわれる王の剣をクラウディオが受け止めるのを目に、ヘイゼルはキノコを放り投げる。煙は回廊に広がり、王さえも巻き込んでいく。
 パキ、と石像が軋む音をメランザは聞く。
 振り上げた爪で虚無の力を生み、振り下ろされる剣から避けたルーンを視界にアクアレーテは他の前衛へと回復を紡いだ。
 落ちた血が床の紋様を染め、落ちた石像の欠片が瓦礫の間に落ちて行く回廊に癒しの歌が響く。
 敵はまだ3体。だが石の体に入る罅の音は後衛として立つルーンの耳まで届いていた。
 真っ直ぐに、王妃を狙って弓を構えれば王妃の魔法弾が襲いかかって来た。
 瞬間、炸裂した力にルーンは息を詰め、だが血に濡れた指で弓を引き絞った。
 狙いは決まっている。
 ならば後は放つ、だけ。
「我が太刀の一矢に貫けぬもの無し」
 ルーンの手から離れ、撃出された一撃は、空で二方に別れ、王妃と騎士を貫いた。
 その刃に、王妃の石像が崩れた。一撃は、反撃を狙う騎士を貫き、僅かに、震えた間を狙いラツは至近距離で電撃を放った。
 電撃に、騎士の石像が震える。大剣をもったまま、騎士の石像が崩れ落ちる。
「これで」
 薄く、口を開いたメランザが王の石像を見上げた。
「最後だ」


 王は立つ。欠けた王冠を振り返ることなく、踏込んだ王の石像をセルジュは己の盾で受け止める。振るわれる一撃は鋭く、それでも打ち上げて、己の刃を突き出す。ぐっと、差し込んだ胴に罅が入る。
 手伝いに降りて来ていたエンドブレイカー達の回復と、攻撃が届く中、エンドブレイカー達は動き続けた。王の石像が振るう剣には炎が宿り、移った熱を払う様に、メランザは幻惑する動きで懐に入り込み、鋭く爪を振るう。肩を引き裂けば、気がついて振るわれた剣が届くよりも早く、アトラの封印の力が届いた。
「……傷付けさせません!」
「行くよ」
 同時に、放られたのは幻覚を齎すキノコだ。脱力の煙に、石像の動きが鈍くなったのにヘイゼルは気がつく。
「今だよ」
 応じる声の代わりに、前衛陣は駆けた。アクアレーテは旋律を紡ぎ上げ、幻獣が走る中を、ルーンの放った一撃が届く。王の胸に吸い込まれた白刃が、罅を深くさせる。
 王妃と騎士への攻撃に巻き込まれていたのか、王の体は既に所々罅が入っていた。マヒと制約がかかった体では、攻撃も鈍る。マヒによって動きを阻害され、振り上げられた刃が空で止まったのを見て、メランザは爪を振り上げた。
 生まれたのは虚無の刃。ラツの召喚した光輪と二つの力は王の石像に届き――貫いた。
 ピシ、という音がルーンの耳に届く。構えていた弓を下ろす。
 次の瞬間、王の石像が剣を納め、砕けた。

 は、と疲労から僅かに息が漏れた。ちりちり、と僅かに痛む体は、擦り傷か切り傷か。回復もあってか、酷い怪我の者は誰1人いなかった。
 ゴーレム達に敬意を払い、セルジュは静かに祈りを捧げた。 
 後暫くすれば、遺跡は修復機能によって蘇ることだろう。
 床に描かれた紋様に、アトラは辺りを調べる。紋様は回廊の床にのみ続いているようだった。
「自動的に修復されるとはいえ太刀が刺さったままでは修復に差しさわりが有りそうですから回収しておかないと」
 ほう、とルーンは残った石像の胴から撃出した剣を引き抜く。見事に刃こぼれした太刀に、刀使いは溜息をついた。
 石像の近くまで行ったヘイゼルは、その破片を手にとっていた。
「……ん」
 何が原因で動いていたのか、興味があったのだがゴーレムの破片を調べた限りでは分からなかった。
「規則正しい歯車の音は少し我々の鼓動にも似ますね」
「ん、確かに」
 目元を緩め、頷いたクラウディオにラツは回廊の奥へと目をやった。
「この寄り添う王と王妃。忠誠を尽した騎士達はどんな人達だったのでしょうか」
「きっと……聡明な方々だったのではないかな」
 こうして、未だあり続けるに相応しい。
 言って、クラウディオは石像へと目礼する。その姿を横に、ラツは「うん」と頷いた。
「うん。きっと止まってなお美しい。この姿に相応しく勇敢な人々だ」
 やがて、この地は正しい姿に戻るだろう。
 規則正しい歯車の音と、並ぶ騎士と王妃、王の守る地にエンドブレイカー達は別れを告げ、帰路についた。



マスター:秋月諒 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2013/04/12
  • 得票数:
  • カッコいい6 
  • ロマンティック3 
  • せつない1 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。