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ギルバニアを討て:大討滅作戦

<オープニング>

「何しろとんでもないことが起こったんですよ」
 そう告げたユジェーヌの表情は、めったにないことだが厳しいものだった。
「俺らがずっと気にしていたジャグランツの『王』……ジャグランツマスカレイドを統率するジャグランツ王・ギルバニアが、ついに姿を見せたんです。しかも、ギルバニアとそれが率いる精鋭マスカレイドジャグランツ共によって、遠征に来ていたジャグランツ討伐隊が壊滅させられてしまいましてね」
 ざわつくエンドブレイカーたち。
 しかし彼は、ここで微妙にトーンを変えて言葉を継いだ。
「討伐隊が壊滅したのは明らかに痛手、深刻な事態には違いないです……けど、逆に大きなチャンスが生まれたとも言えます」
 つまり、である。
 大戦果を上げた『ジャグランツ討伐作戦』により、ジャグランツ側は王自らが乗り出さなければならないほど追い込まれているのだ。
「ジャグランツ王が前線に出て来ている現在、もしここで王を討ち取ることが出来たら、この事件は解決にかなり近づくはずです。もちろん、とてつもなく危険な任務になりますが……この作戦、乗ってもらえないでしょうか」
 一通り辺りを見渡して、ユジェーヌは大きく頷いた。
「討伐隊が壊滅の憂き目を見たとはいえ、ジャグランツ軍も甚大な被害を受けて混乱しています。今なら少人数に分かれた部隊で行けば、撤退するジャグランツ王に追いつくことが可能でしょう。ジャグランツ軍の目を欺き、王を守るマスカレイドジャグランツを排除して王の首を取る。誰か一人でもそれが出来たら、作戦は成功ってことです」
 ただし、とユジェーヌは指を立てた。
「ジャグランツ王の首を取るために乗り越えなければならない障害が4つあります。重要なんでよく聞いて下さいよ」
 1つ目。王の撤退路を見つけて追跡すること。
 的確な情報収集の方法や、各部隊が得た情報を他の部隊に知らせる目印の作り方などを工夫すれば、王の撤退路を見つけることはさほど難しくないかもしれない。
 2つ目。ジャグランツの残存戦力をどうにかすること。
 混乱状態のジャグランツだが、見つかって戦闘になればその戦力は侮れない。
 残存戦力に見つからない移動方法、或いは見つかった後の行動などを工夫すれば、作戦の成功率は上がるだろう。
「もし見つかった場合は、出来るだけ大きな騒ぎにして他の仲間の移動を助ける、なんて作戦もイケるかと思います」
 3つ目。王の親衛隊でもある精鋭ジャグランツマスカレイドへの対処。
 精鋭ジャグランツマスカレイドが王を守っている状態では、王を討ち取るのは至難の業だ。
 いかにして親衛隊を王から遠ざけるか。勝利の鍵はそこにあると言っても良い。
 自分たちの部隊で全てを行うのではなく、他の部隊が王を討ち取ってくれることを信じて親衛隊を王から引き離す作戦に専念する必要があるかもしれない。
 最後4つ目。ジャグランツ王・ギルバニア自身の戦闘力。
 全てが首尾よく進み、直接王と対峙することが出来たとしても、勝利の可能性は高くはない。
 どのように戦闘し、どのように勝利するか。その道筋を考えて実行することがとても重要になる。
「ギルバニアは言うまでもなく、親衛隊のジャグランツマスカレイドも、その強さはどれほどのものか」
 ユジェーヌの口調は明るくはない。
「この作戦、無事に戻れる保証は全くないです。撤退とか考えていたら、ギルバニアの元に辿り着くなんて到底無理ですから……だからこそ、充分に覚悟が出来た方に、お願いしたいのです。伸るか反るかの大勝負、覚悟と気合いと冷静さをしこたま積んで臨んで下さい」
 それでも。
 必ず成功すると信じている、と呟くユジェーヌの目は真剣だった。


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参加者
盾の城塞騎士・アダルバート(c00420)
小犬のバラード・プリス(c00625)
空の宅急便・カナタ(c01429)
デイブリンガー・アスラ(c02268)
杯の澱・ヴァールハイト(c02379)
緋霄・クレス(c02885)
空を駆ける新米探偵・ティルナ(c03037)
超・リュウヤ(c03523)
四次元そで殺法・ミークテ(c04659)
聖少女教祖ブレイカーゆんゆん・プー(c04769)

<リプレイ>

●覚悟の道征き
 これが何度目の廃虚だろうか。
 エンドブレイカーたちは愛用の武器を握りしめ、廃虚の残骸を回り込んだ。
 ――何時までもバルバ如きに大きな顔をさせておく訳にはいかぬ。
 アクスヘイムを覆う不穏の影に対するエンドブレイカーたちの思いは、盾の城塞騎士・アダルバート(c00420)の言に端的だった。
「ジャグランツを統べる王を討て……か。これだけ大規模になると戦争だな」
 デイブリンガー・アスラ(c02268)が道幅を測りながら言う。その傍らで、ここまでの道筋を紙に書き入れつつ小犬のバラード・プリス(c00625)がこくこくと首を縦に振った。
「此度の戦、王の首を取れば勝利。取れねば敗北ということだ」
 アダルバートの呟きは続く。
「やっと掴んだ尻尾なんです。たくさんの仲間のためにも、絶対に成功させないといけませんね」
 四次元そで殺法・ミークテ(c04659)は前方を見つめて。
 彼らの他にも小さな部隊を構成したエンドブレイカーたちが、この広大な廃虚に散ってジャグランツの王、ギルバニアを討つべく行軍しているはずだ。
 同じように前方を見つめる空の宅急便・カナタ(c01429)は、そっと宝物を握る。それは大切な人たちから渡された、空色のリボンとブルームーンストーンの腕輪。必ず使命を果たし、そうして無事に帰るという意志を込めて、彼はお守り代わりのそれをなぞる。
「此方からジャグランツを見つけてゆき、これを排除することで他隊の援護とするぞ」
 聖少女教祖ブレイカーゆんゆん・プー(c04769)の言葉に、皆は承知の声を上げた。
 ギルバニアの兵は多い。
 王そのものを討ち取らなければ、この一連の戦いの決着は望めそうもないが、さりとてやみくもに王を狙うは下策。
 そこで彼らの出した答えは、同胞がより早く、より有利にギルバニアと対峙出来るよう周辺のジャグランツ兵を出来る限り引きつけて倒すことだった。
「これ以上被害を増やすわけにはいかないのよ」
 朽ちかけた建物の屋根を伝いつつ、空を駆ける新米探偵・ティルナ(c03037)は自らに言い聞かせる。
 彼女は生業の利点を生かして高所から索敵を行い、何かあれば即座に仲間たちに知らせることになっていた。
 一方下では、仲間から少々離れた所で戦いの痕跡を探る影が2つ。
 杯の澱・ヴァールハイト(c02379)が見るところ、今彼らが向かう方向に多くのものが通ったような痕が増えつつある。
「老い耄れは老い耄れなりに、精々頑張るとしようかのう」
 痕跡に穏やかならぬ物が混ざり始め、ヴァールハイトはニマリと口の端をつり上げて煙を吐いた。
「血痕だ……足跡も増えてる」
 同じく痕跡を探る緋霄・クレス(c02885)が、仲間に注意を促すように声を上げる。
 彼の指し示す足跡は、埃っぽい廃墟の広めの街路を奥に向かっているようだ。
「ここにも印書いておこう」
 既に幾度かやって来たように今度も、と、カナタは塗料を取り出した。
 果たして。

●我ら陽動隊
 「何か見えるわ!」
 屋根伝いに周囲を窺っていたティルナが、急に降りて来た。
 エンドブレイカーたちは一団となって、彼女の示す方向へ早足で進んでいく。
 ほどなく、前方に蠢く気配を感じてアスラが皆を留めた。
「……友軍、だ」
 それは、彼らと同様ギルバニアを追う、エンドブレイカーの別隊だった。
 ヴァールハイトやクレスが見つけた痕跡を追っているのか、こちらに気づかない――もしかしたら、親衛隊やギルバニア自身を討ち取る算段の隊かもしれない。
「お互いに頑張りましょうの一曲でも」
 プリスがにこりとして愛用のビオラを取り出しかけた時。
「待て待て。まだ何かいるようだぞ。ちょっと見てみて」
 超・リュウヤ(c03523)がプリスを制してティルナを振り返った。
 何かが近づいて来ている。
 彼らは崩れかけた壁や瓦礫に身を隠した。
「ジャグランツ部隊よ」
 ティルナの報告に、唸るエンドブレイカーたち。
 20体近いジャグランツで構成された部隊は、討伐隊との共同作戦を思い起こさせた。マスカレイドジャグランツが群れを率いているのも同じ。
 どうやら、先の別隊を尾行しているらしい。
「なら、俺らの敵は決まったな」
 クレスが太刀を振って言った。
「我らしか倒せん敵とはいえ、面倒な戦いであるな」
 やれやれと肩を竦めるプー。だがその顔はやる気満々、ニヤリと凶悪な笑顔を浮かべる。
「おれジャグランツ王の仮面の下がちょっと気になってるんだけどさ。あと下半身」
 とはリュウヤの弁。
「王を倒してヒーローになりたい気もするが、今回は他の奴らに任せるぜ!」
 サムズアップに皆が頷き返す。
「とりあえず仕掛けて、さっきの路地まで引き込むぞ」
「いいですよー」
 アスラがぱしと剣の柄を叩けば、プリスもメモを見つつ同意した。
 以前は、マスカレイドジャグランツのみを狙えば良かった。
 だが今回は、それに加えて部隊を構成する通常のジャグランツ兵をも相手にせねばならない。
 敵数、そして戦力の高さ。
 別隊の方をちらりと一瞥すると、アダルバートは盾を掲げた。
「鬨の声を上げよう。行くぞ」
「おー!!」
 その声を、鳴り渡る楽の音を、付近の者たちは聞いただろうか。

●大討滅作戦
 最も後方に位置を取ったミークテが、別隊に向けて袖を振った。
「ここは私たちが押さえますよー!」
 向こうからも了承の合図が返される。ミークテはもう一度袖を振るとジャグランツの方へ向き直り、同じような大声で挑発した。
「ほぉらほぉら! もっと仲間を呼ばないと危ないんじゃないですかぁ?!」
 その声が消えぬうちに、まず先手を取ったのはヴァールハイトだ。
 火と煙の中から現れた星霊バルカンが、廃墟を駆け抜ける赤と黒のつむじ風となってジャグランツの集団に駆け込んだ。
「一曲お付き合いします。命名・あなたの心に響くアリア!」
 ポーズも凛々しいプリス、プーの盛大な合奏がつむじ風の後を継いでジャグランツを捕え、
「粗野なる汝らにこの美しき調べが理解できるかな?」
 傷と共に闘志を奪う音色も大盤振る舞いのプー。
 その調べの高低を縫って、カナタの鋭いミサイルが次々とジャグランツを貫いていく。ミークテが操る焔は、まるで調べを写し取る音符のよう。
 黒紫に艶やかなその焔を喰らい、ジャグランツはのたうち回った。
 ここに戦端開く。
 ジャグランツの先鋒は騒然とした。
「道は前にしか拓けない。この身を賭して切り拓くのみ」
 剣刃を顔に寄せ、語りかけるように呟くとアスラは剣を構えて石畳を蹴った。至近の敵を包むような刃身の乱舞、ジャグランツは腕を押さえて吼え猛る。
「討伐隊の皆には、帰りを待つ人々も帰る場所もあった……それを奪う権利はお前らに……誰にもないっ。もうこれ以上何も奪わせない!」
 クレスはそびえ立つジャグランツを見上げて吐き捨てた。太刀筋はいくつもの残像を伴い、数体のジャグランツに軌跡を遺す。
 うち一体がティルナの急降下と錐揉みからの一撃をまともに喰らって脳天を穿たれ、他の個体を巻き込んで倒れた。
「ここに集まった皆は行動は違えど、目指すものはただ一つ……王の打倒だ」
 彼女の冷たい一言に、ジャグランツ兵はいきり立つ。
 王の打倒とは!
 殺気が戦場を覆う。
(「顔全体を覆う仮面じゃないし、まさかこんなんじゃないよなぁ」)
 貫いた獣人の顔を見遣り、リュウヤはふと思う。
 ジャグランツ部隊は、もはや完全に標的を切り替えたようだった。
 さして広くない廃墟の一角。
 頃や良し。エンドブレイカーたちは横道へ飛び込む。
 ジャグランツが数体、後を追う。
 だが、冷静さを失わないマスカレイドジャグランツはそれ以外の兵を制し、隊を組み直せと命じた。
 友軍から引き剥すことには成功した。が、さすがはこの戦場の部隊、直裁にギルバニアに仕える精鋭ではなさそうだが、今までよりも統率が取れている。
 マスカレイドジャグランツを倒さないことには、部隊の勢いは止まりそうにない。
 だがどうやって?

●運命の向こう側
 邪剣の群れがジャグランツを切り刻むのを見ながら、ミークテは息をついた。
 乱舞する剣はカナタのマジックミサイルと競い合い絡み合い、展開する結界陣を抜けて飛び回る。
 尤も、彼女もカナタもその表情は芳しくない。
 ジャグランツの数は減りつつあるが、前に立つ仲間たちの体力も相当削られている。ぐらりと体が傾ぐ者もいた。
「こ、怖くないですよ! ぜんぜん怖くないですよ?!」
 プリスの目の前で、最前線のアスラが膝をつく。そこへ派手な動作でジャグランツが武器を振り下ろした。
「わう〜!」
 緊迫の場には少々不釣り合いな、だが生き生きと楽しげなターンが、確実にアスラの体力そして気力をも癒す。
 金属質な音は、彼がジャグランツの武器を剣で受け止めたもの。慌てた獣人に蛇頭の呪詛塊が続けざまに当たり、もんどりうって倒れた。
 カカと笑うヴァールハイト。余裕綽々だがよく見ればその顔がしかめられているのに気づいただろう。
 何か、突破口を見つけなければ。
 と、その時だった。
 突如アダルバートがハルバードを振り上げ、雄叫びと共に横道を飛び出すとジャグランツ部隊のただ中に飛び込んだ!
 不意をつかれ大騒ぎになるジャグランツ。囮に殺到する兵と薙ぎ払われるそれとで隊列は混乱し、わずかな隙間がマスカレイドに向かって開ける。
「行け! マスカレイドを討て!」
 精悍な鎧姿は、あっという間に囲まれて見えなくなった。
(「ワシに攻撃が集中すれば、その分、他の者が楽になる!」)
 壁のようなジャグランツで外の光が遮られる。
 四方八方から打ち据えられ、痛みに詰まる息。
 アダルバートはぎりぎりと歯を噛みしめ、内側から肉壁を崩すべく武器に力を込めた。
「早く! 彼が切り開いたチャンスだ!」
 動いたのはティルナだ。
「仲間を信じろ!」
 隙間に身を滑り込ませ、ジャグランツの体躯を踏み台にして奥へ着地したティルナは間髪を入れず再び地を蹴り、野太刀を構えてマスカレイドのジャガー頭に体ごとぶつかった。
「ういっす、こっちでヒーローになるぜ!」
 リュウヤは振り向くジャグランツに槍を突き立て、その反動で大柄な獣人の頭上を飛び越える。
「我らに任せよ! もう一頑張りだぞ」
 プーは大声で仲間に呼ばわると、大鎌を立ててステップを踏んだ。ジャグランツの肉壁でアダルバートの姿は見えないが、存在することは確実に感知出来る。その『存在感』を手繰れば、癒しの手は伸ばせるはず。
(「倒させはせぬ。我がゆんゆんと送り続けようぞ!」)
「年甲斐もなく無理しおる」
 苦虫を噛み潰したような表情で、ヴァールハイトが毒づく。
 そのすぐ近くでカナタの描く癒しの円が輝いた。
「お願い……守って! こんなところで諦めるわけには、いかないから!」
 接近戦が出来ないのをもどかしさ。その分、皆を信じるという祈りを込めて。
 柔らかな光を湛え、魔法円は空気に溶けた。
「分かった、すぐに戻る!」
 意を決したアスラは、ジャグランツ兵をすり抜けてマスカレイドに迫った。
 マスカレイドジャグランツはさすがに浮足立つこともなく、エンドブレイカーたちを迎え撃つ。
 ぎりぎりと肉に食い込むアスラの剣。白く浮かぶ仮面には感情の片鱗も見えないが、本来のジャグランツの『顔』は笑うように歪んでいる。
「チャンスは潰さない……砕かせはしない! この場所も、命も、俺たちの矜持も!」
 ジジ、と音を立て、帯電した刃が風を切る。
 アスラが体を離すと同時にクレスが飛び込み、太刀を振るった。
 びりびりと周囲の空気が震える。
 マスカレイドジャグランツは唾液と血液を滴らせ、吼え猛りながら彼に武器を叩きつけた。
「おっと、こっちくんな!」
 リュウヤは大きく踏み込むと、加勢しようとしたジャグランツ兵を思い切り突き刺した。槍の穂先が体にめり込むと、向こうから聞こえる妖しい楽音が追い討ちをかける。
 飛び散る鮮血。
(「うわーん、もーやだー。帰るー。お家帰るー!」)
 見上げんばかりのジャグランツが吼える。
 涙目のプリスが、それでもなおそこに居続けたのは、ただひたすら「騎士のように」という一念のゆえ。
 それでも、確かにそのフレーズは敵に致命傷を負わせたのだ。
 倒れ伏す兵。よろけるマスカレイド。
 高い肉壁の頭上に乱舞する黒き剣の群れ。蛇頭の呪い。
「肉団子と闘ってる人たちだってがんばってんです……私たちだって!」
 ミークテの声が響く。
(「ここが……踏ん張り時! やるぞ!」)
 刃が食い込めば肉壁が揺らぐ。だがすぐに別な手が彼を撃つ。
 誰かの呻きが遠くなる。
 決死の覚悟を唱え続ける、あれは仲間、か……?
 それでも大地を踏みしめて、アダルバートは最後の気力を振り絞った。
 クレスが勢いをつけて跳ね起きた。垂れてくる血で前がよく見えない――それでも、分かる。
 マスカレイドジャグランツの方向は――。
「喰らえ!」
「おれ、この戦いが終わったら……いや、それを考えるのはこの戦いが終わった後だ!」
「ここで倒れるつもりはない!」
 太刀、槍そして剣。
 ドロースピカの光を照り返す鋼は、かくも美しく。
 マスカレイドジャグランツの全身から血液が迸るのと、獣人たちがアダルバートの包囲を解いたのは、ほぼ同時だった。

 体力は減っていても、退きはしない。
 もう残っているのは頭を失い敗北した、少数のジャグランツ兵なのだから。
「後ろからだけだと思うなよ!」
 回転する大鎌はその威力を増し、プーの眼前に迫るジャグランツを一気に薙いでいく。
 ヴァールハイトのそれと合わされば、そこにはまるで黒いかまいたちが現れたかのような斬痕が残った。
「無事、かね……?」
 ようやく槍を支えにして、リュウヤが呟く。
 見回せばジャグランツ兵の折り重なる死体。よくぞこれを相手に戦ったものだ。
「別隊の人たち、無事かな……」
 カナタもくたりと座り込んで息をついた。耳を澄まして見るが、不穏なざわめきは遠い。少なくとも、この近くで大規模な戦闘は起こっていないようだ。
「敗残の兵がうろついているやもしれん」
 ヴァールハイトが煙を吐く。その後を継ぎアスラは声をかける。
「そいつらが主力部隊に戻らないよう、こちらも敗走する振りをしておびき寄せよう」
 肩にアダルバートを担いで。
「殿は私が務めましょう。派手に痛がりながら」
 ミークテの言葉に頷き、エンドブレイカーたちは動き出した。
 友軍が一部隊でも多くジャグランツ王ギルバニアの元にたどり着き、撃破が叶うようにと願う。
 戦場は未だ、熱に浮かされたよう。
 彼らの役目はもうしばらく続く。



マスター:葦原いつき 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2010/06/17
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  • カッコいい21 
  • ハートフル1 
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