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天津放浪記 -救世の光-

<オープニング>

●救世の光
「……お、おら、もうダメだ……」
 バタッ。
「タゴサクどん!! 諦めちゃダメだ! 諦めたらそこで何かが終わるって翁も言ってたろ!」
「もうムリだ……おらの中で決定的な何かが切れちまっただ……」
「タゴサクどん!!」
 襤褸を纏った青年が、自分の親ほども歳の離れた男――心身ともに疲弊した彼は実際の年齢以上に老けて見えるのかもしれないが――タゴサクどんを助け起こす。畑を耕せど耕せど、一向に作物は実らず、運良く芽が出たとしてもすぐに枯れ果ててしまう。
 ヤマミナミ村は今、絶望の淵に瀕していた。
 肉を狩ろうにも適した獣がおらず、周辺の山村とも離れ、孤立した地域であり、他に誇れる点といえば温かい湯の湧き出る泉があるということだけ。だが、他から湯治客が訪れることもなく村は寂れていくばかり。
 そもそもヤマミナミ村は、壊滅状態にあった村々の人間を寄せ集め、数か月前に作られたばかりの村なのだ。ヨサクどんとタゴサクどんは故郷を同じくする者同士、そこそこ仲が良かった。
「ヨサクどん……、村に帰ったら、かあちゃんに伝えてくれ、おらは……」
「そんなこと言っちゃダメだっぺ!」
 タゴサクどんは虚ろな眼差しで何か言い残そうとしているが、彼が倒れた場所は民家が点在する間に作られた畑であるため、どこへ帰らなくてもここは村である。
「大丈夫だぁ、いつか、いつかきっと、救世主様が来てくれるべ!!」
 ヨサクどんは目に涙を溜めて叫ぶように言った。
 もう、彼らに残された最後の希望は、そこにしかない。

 それはヨサクどんとタゴサクどんの生まれ故郷に、古くから伝わる御伽噺。
 善き人々が危機に瀕したとき、どこからともなく異国の服を纏った者が現れて、『てぃんくるてぃんくる・はりけーん!』と叫びながら、村を襲う悪しき者どもを華麗になぎ倒すという……。

『むしゃむしゃ……』
 そして今、ヤマミナミ村は本当に滅び行こうとしていた。
 悪しきマスカレイドが、人間たちの住処を嗅ぎつけたのである……。

●天津放浪記
「……という感じ、なのですが」
「意味がわからないよなのね!!」
 戸惑いがちに事件の概要を語る扇の神楽巫女・ナミネの言葉に、ショコラの錬金術士・パルフェ(cn0133)は力強く答えた。
 わからないと言ったものの、そのショコラティックな瞳はきらきらと輝いている。
 わからなくても、心で、感じた!

「ヤマミナミ村の人々は、マスカレイドに殺されるため、より深い絶望をアマツカグラに生み出すために集められたようです……。そんなこと、許されることではありません」
 どうか、彼らを救ってください。
 ナミネは悲痛な声でエンドブレイカーたちに語り掛けた。
 ヤマミナミ村に現れるマスカレイドは、真っ白な毛並み、真っ赤な瞳、そして耳の部分が笹葉状の、人間大うさぎ――稲葉兎のマスカレイドである。数は7匹。連携などはせず、好き勝手に方々から村を襲うため、村の被害を抑えるためには1人1殺のつもりで向かわねばならないだろう。
 自分の担当の1匹を倒し終わった者が他者の救援に向かおうとしても、襲撃地点同士は当然離れていると予測されるため、余程のことがない限り、救援が辿り着く前にタイマン(戦闘)は終了している可能性が高い。それでもうさぎをそのままにはしておけないため、自分の担当分が終わった後も、村の様子を確認に回ったほうが良さそうだ。
「この村の方々は、ヨサクさんとタゴサクさんが語る、いつか救世主が現れて村を救ってくれる……という夢物語を信じ、最後の希望としています。彼らが絶望に堕ちてしまわないためにも、できるなら、彼らの心を鼓舞する形で戦闘を行えると良いのですが……」
「了解しましたなのね! パルフェは正直タイマンだと完敗を喫すると思うのでね、できたら援護を中心に行いたいと思うの主にファイアーワークスで! それから余裕があれば、てぃんくるてぃんくる・ごーるでんすとりーむ(舞い踊る黄金の蝶)と、きゅあきゅあ・ぷらちなはーと(束縛する白銀の鎖)で援護するね!」
 そのような余裕はたぶんなさそうだが、そのような感じである。

「マスカレイドに襲われる人々を救うことができれば、アマツカグラの蔓延する絶望を減らすことができます。これはアマツカグラを救うため、敵の力を削ぐために大切な任務です。……皆さん、どうか、ご無事で」
 ナミネは、ぎゅっと拳を握り締め、エンドブレイカーに未来を託した。


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参加者
泥濘の輪郭・アンブローズ(c00259)
陽若竹・ランシェ(c00328)
花紺青・ユウ(c01588)
毒芹の粮・ラグランジュ(c02051)
夢壌の壁・エルヴィン(c04498)
陽凰姫・ゼルディア(c07051)
薄暮の魔女・アトロポス(c17639)

NPC:ショコラの錬金術士・パルフェ(cn0133)

<リプレイ>

●救世主様、見参!
「うわーッ!」
『むしゃむしゃ!』
 村人たちが逃げ惑う。飛び跳ねる稲葉兎が獲物を狙う。万事休す。誰もが未来を諦めた。
 しかし、そのとき!
「てぃんくるてぃんくる・はりけーん!」
「!?」
「!?」
『!?』
 ヨサクどんは息を呑み、タゴサクどんは目を剥いた。稲葉兎もギョッとした。
 風が吹き、梢が鳴る。樹上に立った人影は躊躇わず枝を蹴り、全身をはりけーんさせながらドリルクローに近似した必殺技を華麗に繰り出す。
「これで終わりだっ!」
『むしゃー!?』
 稲葉兎はギャッと倒れた。
 もちろん終わっていないが、様式美というものだ。村人の窮地を救った男――仙人掌の衣に身を包む異邦人、夢壌の壁・エルヴィン(c04498)が告げる。
「危ないところだったな、ここは我々に任せろ!」
「あ、あんたは……?」
「まさか、伝説の……!?」

 そう。今日こそが新たなる伝説の幕開けだった。

「そこまでよ。善き人々に害為す者!」
 悪逆非道の地獄絵図が作られる寸前、凛とした声が響き渡る。
 民家の屋根に仁王立ちした薄暮の魔女・アトロポス(c17639)は颯爽と梯子を降り、村人を背に庇うように稲葉兎の前に割り込む。
「たとえお上が見逃そうと、この愛と希望の制服美少女戦士・アトロポスが許しません!」
 バサァとマントを脱ぎ捨てれば、本人いわく制服風(どこの制服かは機密事項である)の提灯袖シャツとプリーツスカートが現れる。胸元と腰の赤いリボンが愛らしい。
「悪い兎は、ブレイクです」
 陽光を背に薄桃の髪を靡かせ、紅玉の呪符を頂く杖を構え、腰に手を当てウインクでキメっ☆
 愛と希望と美と少女と胸はどこへ行ったのか、あえて尋ねるような愚行を侵す者がいたとすれば業火に焼かれて力尽きるだろう。
「らぶはーと・ばーにんぐ♪」
 尋ねなくても焼かれるのがマスカレイドの辛いところだ。燃え盛る火球が稲葉兎を包み込む。
 畑は無事だ!
 万が一、多少燃えても作物もないしオールオッケー!

「魔法の国のおじ様、只今惨状!」
 両腕を交差させたカッコイイポーズ!
 同音だから然したる問題もない名乗りと共に、星霊ノソリンに跨る毒芹の粮・ラグランジュ(c02051)が心なしかドリフト気味に村人たちの危機へ駆けつけた。
 タキシードとシルクハットは当然の黒、仮面舞踏会を彷彿とさせるマスクで素顔を隠し、真紅の薔薇を咥えたその姿、なんだか遠い昔から知っていた、ような……!
「なぁ〜ん」
 胸のときめきを隠せない村人たちの前で、荒ぶるノソリンも雄々しく嘶いた。
 ラグランジュは己が決闘相手の稲葉兎に、手袋の代わり、薔薇を投げつけた。ぺしっ。
 当たった。
 落ちた。
「なぁん・デストロイ・なぁ〜ん!」
 戸惑う稲葉兎に、ノソリンが突撃する!

『むしゃ!』
「うわあーッ!」
 稲葉兎の歯がギラリと光る、そのとき――。
「おまちなさーいっ!」
 勇ましい声が時に空白を生む。駆け抜ける陽凰姫・ゼルディア(c07051)はフリルとシフォンに彩られた衣装をなんと威勢良く脱ぎ捨てた!
「きゃっ!」
 村人たちと稲葉兎が思わず目を覆う。
 裸体ですか?
 何かプリズム的発光が邪魔して見えませんでした。
 再び目を開けたとき、そこにいるのはふわふわふりふりプリティぴんく!
「村の平和は私が守る、悪い兎にはおしおきよ! てぃんくるてぃんくる・ぶらすとうぃーんどっ!」
『むしゃーッ!?』
 飛翔演舞めいた颶風突撃に稲葉兎が弾かれる。
 乙女的鉄壁ガード(ふわふわパニエ)を柔らかに揺らし、大地に降り立ったゼルディアは、ふう、と額の汗を拭った。
「手強い相手だったわ……他の皆は無事かしら。ううん、きっと無事よね。信じてるわ!」
 念のため補足するとまだ戦闘は続いている。

「ハッ……!」
 鳥を愛する心ゆえだろうか。ふと同志(心友)の声が聞こえたような。
 深緑の瞳に覇気を燈して青年は高々と跳躍する。
『むしゃ?』
 陽若竹・ランシェ(c00328)は逆光を背に現れた。もふもふ羽毛とふさふさ羽根を至るところに纏い、雀の羽根模様を描く外套(ときめいた勢いで買ったけれど着る機会と勇気に恵まれなかった不運の逸品)を羽ばたくように広げれば、何か大事なものが伝わる、はず!
「貴方たちの叫びを受けて……救世主、推参です!」
「見ろ、雀様だー!」
「雀様ー!」
 あ、伝わってる。
 ランシェは少し頬を染めたが、理由は当然、激戦の熱気を受けたせいだ。本当です。
 躍る心に雀愛を詰め込んだ青年に向け、放置されていた稲葉兎が『むしゃー』と襲い来た。彼はすぐさま応じ、緑雲の弓に矢を番え、鋭嘴を思わせる構えで引き絞る!

 村のあちこちを満たしていた悲鳴は、次第に、歓喜の声へ変わり始めた。

 カッコイイポーズ――世界を救うには欠かせない、救世主なら誰もが使う業だ。
 より深きを望む花紺青・ユウ(c01588)は眉間にしわを寄せて新たなる必殺ポーズに思い悩むが、温泉という二文字が思考の邪魔をしたので諦めて稲葉兎を奇襲した。
「おひさまキラキラあたーっく!」
『むしゃーッ!?』
 眩い光輝疾走が白い毛皮を浅く切り裂く!
 花嫁さんを思わせるメルヒェン衣装を靡かせれば、ちょうウェディングホワイト!
「魔法少女ホワイトユウ参上。悪い兎さんはおしおきよっ」
 夢と希望に溢れたごてごてしい飾りつけの大剣を振り回し、まだ状況を掴めていない稲葉兎目掛けて再び輝かしい一閃を繰り出す。
「村人たちには肉球ひとつ触れさせない! さんしゃいんキラキラあたーっく!」
 新技の登場に村人たちが騒然とした。
「さっきのと同じ技だべ……!?」
「な、なに言うか、明らかに違う技だべ!」
 まじょっこ可愛いポーズに騙され、もとい誤魔化され、もとい心酔した村人たちが自主的にフォローを入れてくれる。ちなみに同じ技である。

「刮目せよ、そこな兎! この身を包む黄金は錆びることなき闘志の証!」
 風と共に颯爽と現れ、彼はクルンと回した大剣を肩に担ぐ。
 凶悪な笑みを浮かべるその男の名は泥濘の輪郭・アンブローズ(c00259)だ。
「とくと味わえ、てぃんくる・すとーむぶれいど☆」
 らぶりーきゅんきゅん☆
 ごーるでんふりひら(夜なべして作ったけど眠くないです)な衣装を靡かせ、片足立ちのらぶりーポーズを決めたなら必殺爆殺デストローイ!
 筋肉質な太腿が眩しい。
 無骨な得物に似合わないお花が哀愁を誘ったりなんかしないんだからね!
「意味はわからんがとにかくすごいべ……!」
「おお、兎の攻撃をバク転で避けたべ!」
 村人の言葉が事実かどうかはともかくとして(時として彼らの瞳に灯った希望の光が現実を覆い隠してしまうこともある)、救世主様は当然の如く善戦を繰り広げる。

●こうして世界の平和は守られた。
「シャボルーンアーマー・メーイクアーップ!」
 シャキーン!
 際どい詠唱の後、ぷらちなむ・すたー(紙吹雪)がどこからともなく降り注ぎ、エルヴィン(サボテンきぐるみ)の全身を神々しい武具が覆う!
 ちなみに戦神の力を感じるほどの輝きを業界用語で『サボテンらしい』と言う。
「(キラッ!)」
「キャー! カッコイイべ!」
 虚空に笑顔を向ければ、黄色い悲鳴(彼の観客は主に前述2名だが)が村を席巻する。
「ヒュルリルヒュルリル・ウエスタンオーラ! 大地の気よ、突き刺されっ!」
 おろおろしている稲葉兎にエルヴィン流エクスペルクローが叩き込まれたなら、観客のテンションはダダ上がり。後はもう、一気にバシッと決まる瞬間まで秒読みというところ。

「らぶあんどほーぷ・めでぃけーど!」
 足元に広がる癒しの魔法円は別名・愛の泉。
 溢れるらぶを力の源とし、アトロポスは最後の一撃に賭ける!
「頑張れ、あーちゃん!」
「いけるべー!」
 村人たちの声援を受け、杖を握る手に力を込めたなら、抗う稲葉兎に向けて漆黒を放った。
「らぶ・てぃんくるてぃんくる・はりけーん!」
 触れたものを消滅させる球体が客観的に禍々しくとも、大丈夫。
 村人たちの澄んだ目にはとても清らかに映りました!

「先代の勇者よ、力を貸してくれ!」
 村人たちが興奮気味にざわざわした。救世主様は世襲制らしいべ!
 からからと嗤う水晶髑髏を高く掲げた姿はちょっぴりピュア度をダウンさせていたが、先代発言の衝撃に心奪われた村人たちにはそんなものは目に入らない。
 稲葉兎も先程からきちんと攻撃をしているのだが、やっぱり目に入らない!
 にやりと唇を歪め、ラグランジュは星霊アクア姐さんを抱き寄せた。
「ビューティー・スプラッシュ! ラヴエナジー・チャージ!」
 アクアのくちづけを受け、己が力を高めていく。
 次(のターン)で決めるぜ!
 3人の手を合わせて最終奥義ラヴラヴワルツを繰り出さんと、彼は援護を後方に求めた。
 しかし、ショコラの錬金術士・パルフェ(cn0133)は手が届く距離にいなかったので、ちょっと考えてからにっこり笑ってサムズアップした!
「よしッ! 究極合体魔法ラヴラヴデュエット・スタァストリィ〜〜ムッ!」
 腰を捻って気魄を放たんとする彼と掌を合わせたアクアが、巨大な大津波を招いた。
 水流に呑まれた稲葉兎の悪しき仮面は今、打ち砕かれる。

「きらきら・しゃいにんぐえーる!」
 ひとりで戦っているのは私だけじゃない。
 みんなにまた笑って逢うために、頑張らなくちゃ!
「村の皆は私が守るわ、うさたんの好きになんてさせないんだからっ」
 魔法のスティックを片手にゼルディアがたっぷり3ターンほど掛けて宣誓の言の葉を紡げば、完璧なタイミングで守護の水晶群が彼女をきらきら取り巻いた。単に傷が癒えた以上の効果が村人たちにもたらされ、戦場は興奮の坩堝と化す。
 そこまで窮地ということもないが、そろそろ支援は来ないものかと期待を胸にちらりと視線を走らせたところ、ばたばたと走って来たパルフェが黄の輝きをパパーンと打ち上げた。
 これで勝つる!
「みんな、私を助けてっ」
 ゼルディアの魔曲に呼応して創造された幻獣は、容赦なく稲葉兎をむしゃむしゃした。

「春になったので脱ぎ捨てた冬羽毛を鋭い軌跡に変えて! 『輝く羽根の矢』!」
『むしゃー!』
 ランシェは無数の矢を続け様に撃ち出して稲葉兎を射抜く。さらに跳び掛かってくる兎の攻撃に身を強か打たれながらも、雀様風マントを靡かせ、琴剣の絃から涼の響きを紡ぎ出した。
「心を乱す愛らしい声を音色に乗せ、『眩い朝の囀り』!」
『むしゃー!?』
 光を伴う熱狂的な楽曲は稲葉兎を幻惑し、副作用的にランシェの心も掻き乱す。
 わいわい応援してくれる村人の姿に気を取り直し、どうも、とはにかみながら手を振り返していると再び稲葉兎が突撃してきた。青年はバサァと羽ばたくように外套を翻し、仕上げに入る。
「身近な脅威を力に変えて――『散華の罠』!」
 とてもハンティングストリングス!
 後には、ひらりはらりと羽根が舞う。

 背には盛り上がってきた村人たち。
 胸には温泉への想いを秘め、ユウはこの地に救世主伝説を刻み込む!
「必殺☆魔女っこユウ、てぃんくるてぃんくる・レイン!」
 同じ技だとでも思った!?
 と彼女が言ったわけではないが、村人たちのボルテージは初見の必殺技で鰻上りである。
 天誓の道から馳せる光の剣が星の数ほども降り注ぐ。
「光の雨で反省しなさいっ!」
 決まった……!
 勝利を察知したパルフェも、青い光を空にパパパーンと打ち上げた。

「ごーるでん・てぃんくるすまーっしゅ!」
 きゅん☆
 必殺の一撃を繰り出すため、アンブローズは全身の力を練り上げる。すると不思議なことに背後から美しい桜吹雪が吹きつけ、なんだかちょっぴり、きゅんってしたかも!
 もごもごと唇を動かさないように頑張りつつ、彼は自分でナレーションを入れた。
『君の愛と勇気が救世主の力になるぞ。さあ大きな声で声援を送ろう!』
 おおお、と村人たちがどよめいた。
「救世主様ー!」
「おらたちを救ってくれー!」
「アン子、今キラ〜!」
 まるこくて、角と牙が生えていて、きぐるみのせいでアンブローズと同じくらいの大きさになっているてぃんくるマスコットだって応援する。方々からの声援を受け、稲葉兎に生じた隙を見逃さず、彼はてぃんくる・すとーむぶれいどでマスカレイドを叩き斬るのだった――。

●激しい戦いだったぜ……。
「救世主様……!」
「ありがたや、ありがたや……!」
 拝んでくる村人たちに向けて救世主は語り掛ける。彼らの表情は、背にした夕暮れのせいか、それとも溢れ出る喜びの涙のせいか、村人たちにはよく見えなかった。
「ありがとう、君たちの声援が我々に勇気をくれた!」
 エルヴィンの声は力強い。
「忘れるな、その心が明日への希望となるんだ!」
「救世主様、もう行ってしまうんだべか……」
「大丈夫。救世主は永遠に不滅なの」
 不安がる村人にユウは大変なことを請け負う。
 白い歯をきらりと光らせながら、村を悠々と回って来たアンブローズも爽やかに言う。
「悲劇はてぃんくるぱわーが吹き散らした。救世主を信じた君たちの勝利だ。そして……」
 平和な村に俺たちはもう必要ない。
「さらばだ!」
「救世主様……!」
 すぺくたくるな黄金色の姿を目に焼きつけながらアトロポスも頷いた。
「今後も絶望に負けないよう、愛と希望のマントをここに置いときますね☆」
「てぃんくるてぃんくるはっぴーえんど〜♪」
 フリルを翻してアンブローズが歩み去る。
 パルフェは急に肌寒さを感じたのか、しきりに腕をさすっていた。
 崇め奉られたランシェも人々に手を振りながら村を後にする。後ろ髪引かれる思いはありながらも、ゼルディアも格好良く暮れゆく世界を歩み出す。
 が、村人たちは「せめて温泉だけでもー!」などと言っていたので、普通に引き返して温泉を堪能することに何ら問題はなさそうではあった。

 問題なさそうだったので、温泉を愛する救世主一行はひっそり引き返してきた。
 夏も冬も秋も良いが、春の温泉とはまた良いものである。
 ユウは温泉浪漫に頭までずぼんと浸かる。
 温泉はとても良いものなのだが、何故か先程の戦いがフラッシュバックして胸が騒いだ。
 エルヴィンはせっかくだからと村の状況を確認しようかとも思ったが、村人を困惑させない尋ね方が思い浮かばず温泉を満喫するに留めた。
 本日の功労者、水の姫君を労りながらラグランジュはため息をつく。
「しかし肩と腰が痛いですなぁ。パルフェさん、どうかマッサージを! ……パルフェさん!?」
 答えは帰らなかった。
 彼が浸かっていたのは男湯だからである。

 ――こうしてひとつの救世主伝説が生まれた。だが、彼らは戦い続ける。
 この世に棘(ソーン)がある限り! 行け、救世主よ! この世の希望を守るため!



マスター:愛染りんご 紹介ページ
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いまいち
参加者:7人
作成日:2013/05/01
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