<オープニング>
●闇色の猛獣
それは大きな虎のような姿をしていましたが、虎ではありませんでした。
バルバなどと呼ばれる獣人の一種です。
多くが人間と獣が混ざり合ったような姿をしていますが、このバルバ達は、ほとんど虎そのもののような、本物の虎とよく似た姿をしていました。
頭も体も虎そっくりのこのバルバたちは、タイガーロアーと呼ばれています。
両手をついて歩いていれば、遠くから見て虎と勘違いする人がいるかもしれません。
もっともバルバたちは人間のように二本の足で今は立って歩いていました。
獣人たちは100頭ほどの群れで、森の中を移動していたのです。
それを率いているのは、一頭のひときわ大きな体を持つタイガーロアーでした。
体が大きいだけではありません。
その獣人は闇色の毛皮を纏っていました。
闇と言っても、星々が瞬く夜空のような、心地よい色ではありません。
光の差さぬ洞穴のような……先を見通させず心を不安にするような、光そのものすら底のない奈落に引きずり込んでしまうような……そんな恐ろしさを感じさせる暗色のことです。
加えてその獣の肩の上には、3つもの頭が存在していました。
もちろんその頭は、そこいらのバルバの頭をむしり取って乗せたり添えつけたりしたものではありません。
その証拠に、本来の頭の両脇にある頭も、いろいろと周囲を見たり唸り声をあげたりしていました。
もっとも3つの頭はケンカなどをする様子はありません。
それは仲が良いというよりは真ん中の頭に忠実な、しもべという様子でした。
その主である中央の頭が、天を仰ぎ恐ろしげな咆哮を発しました。
空気だけでなく身体も震わすような咆哮は、聞く者の胸の内を冷たくし、内側から蝕んでいくような……ぞっとする暗闇のような力をやどしていたのです。
この心胆寒からしめる『力』と2つの頭をかのタイガーロアーが得たのはまったく同じ時で、その力の根源も全く同じでした。
それは昔から存在する不思議な力によって、生み出されたものなのです。
その力が何なのか、終焉を打ち砕く者たちには察する事ができました。
なぜならそのバルバの胸元に、彼ら彼女らならば『仮面』を見出すことができたからです。
●群れの襲撃
「バルバマスカレイドが率いるバルバの群れが、襲って来ようとしています」
氷月の妖精騎士・モニカは、エンドブレイカー達へと説明しました。
この場に集まっているエンドブレイカーたちは、森の主と共にワームパイプ・ホロウを求めて永遠の森より出発した者たちです。
モニカはマスカレイドたちの狙いは森の主のようですと話しました。
彼女が見聞きしただけでも、他にもたくさんのエンドブレイカー達が、さまざまなマスカレイド達を発見したようです。
「これを放っておく訳にはいきません」
森の主はマスカレイドに簡単に負けたりはしませんが、何しろ数が多すぎました。
たくさんのマスカレイド達に襲われるような事になれば、かの森の主であろうとも無事では済まされないでしょう。
それを想像したのか、妖精騎士の少女は暗く悲しげな泣きそうな顔をしました。
けれどそれは一瞬の事でした。
眉を引きしめ唇をむすぶと、少女はエンドブレイカー達へと向き直りました。
「みなさんには、バルバの群れの迎撃をお願いしたいんです」
そう言ってモニカは詳しく説明し始めました。
迎撃することになるのは、虎に似たバルバ、タイガーロアーたちの群れだそうです。
数は100頭ほどで、1体のバルバマスカレイドが率いているのだと少女は説明しました。
とはいえ全員がバラバラだったり、逆に一纏まりになっているという訳ではなさそうです。
「バルバたちは5〜10頭ほどの小さな群れを作り、それらをバルバマスカレイドが纏めるという感じで群れを作っているようです」
群れと群れの間は、ある程度は離れているようでした。
森の草木を利用すれば気付かれずに群れの奥へ何とか忍び込めるかもしれません。
バルバマスカレイドは5頭の配下を率いて、群れの中央辺りで周囲に目を配っているようです。
「群れの外側にいるタイガーロアーは周囲をかなり警戒していますが、それほど強くありません。逆に群れの中央に近いタイガーロアー達は外側の者ほど警戒はしていませんが、かなりの力を持っているようです」
もし途中で気付かれれば、大変な事になるでしょう。
タイガーロアー達は鋭い鉤爪を持っていて、今回はそれを振るって攻撃してくるのだそうです。
特に、群れの中央付近にいる者は強力な力を使うようでした。
しかも、それを率いるマスカレイドは更に強い力を持っているのです。
「マスカレイドは毛皮の色が違い、頭が3つもありますので一目で判別できると思います」
戦いとなるとマスカレイドは恐ろしい咆哮を攻撃に使うほか、複数の頭で咬みついてきます。
モニカはそう説明しました。
他のタイガーロアー達のように、鋭い爪を振るっての攻撃も行ってくるのだそうです。
「それに、戦いながら吼えることで周りの配下たちを呼ぼうとします」
それを遮るのは、かなり難しそうでした。
もし多くのバルバ達が押し寄せてくるようであれば、マスカレイドを倒すことは極めて難しくなるでしょう。
群れの中をできるだけ気付かれないように、気付かれた場合も、できるだけ多くを相手取らないようにしてマスカレイドへと近付き、できるだけ急いで撃破する。
「マスカレイドさえ倒せれば、他のバルバ達は散り散りになって逃げ去ります」
すべてを倒すのは難しくとも、それなら何とかなりそうだ。
そう考えたエンドブレイカー達に向かって、モニカは最後に付け加えました。
「……私も、ご一緒させてください。精一杯、がんばります」
少女はそう言って、視線を先へと向けました。
バルバたちの軍勢は、もうそこまで迫っています。
エンドブレイカー達は顔を見合わせ頷くと、すぐに行動を開始しました。
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<リプレイ>
●森の彼方へ
「主様の元へは行かせません」
(「かの都市にとっても大切な存在ですもの」)
「絶対、守りきりますわよ!」
誓を立てるかのように、ラーレラーレラーレラーレ・ラーレ(c02476)は口にしました。
(「エルフなのに森の主という存在がよくわからないけれど、守らなければいけないと思う気持ちは確かだわ」)
森の主とモニカさんは何があっても守りたい。
人民と共に歩む者・ルア(c28515)も、そう思いました。
ルア自身も元々ハーフエルフだった為、親近感を抱いたのです。
(「そういえば、お義父様はご存じかしら?」)
彼女は自分の父が元ハーフエルフへの支援を行っていたという話を思い出し、無事に依頼を終えたら会ったことはないか聞いてみようと考えました。
とはいえ先ずは、目の前の任務です。
「お互い、仲間として、共に成長していきましょう」
そう声を掛ければ、氷月の妖精騎士・モニカ(cn0177)は丁寧にあいさつを返しました。
(「年の割に少し小さいかな……?」)
銀灰・クニカラ(c01967)は少女の傍らで、自分と彼女の身の丈の差を感じ、どこか楽しい心地に少しばかり頬をゆるめました。
「……? どうかなさいましたか?」
気付いて不思議そうに問い掛ける妖精騎士の少女に、青年は微笑みを返し何でもないと答え話題を転じます。
「この戦いはあちらにとって時間稼ぎだろうね」
(「あわよくば森の主を倒したいという所かな?」)
「大勢で攻められてもこまりますね」
空を求めて・ソラト(c33966)はクニカラの言葉にそう続けてから、でもと考え込みました。
(「これだけの軍勢を率いて攻めてくるなんて、敵も切羽詰まってるのでしょうね」)
「敵に付け入るチャンスなのかも知れません」
「にしてもなぜここで『カーニバル』?」
黒棘の魔術師・クラウス(c02858)は呟きながら考え込みました。
(「わたしたちをランスブルグに行かせたくないからか?」)
もちろん答えは出てきません。
思い詰めるのも何でしたので、彼は一旦それを頭の片隅に追いやり、今回の敵について考えてみました。
(「『闇色』というからには、やはり黒いんだろうか? だったら黒好きの身としては少しだけ親近感が湧くんだけど」)
「マスカレイドじゃなかったらよかったのに」
そう呟く彼の表情は、いつもと変わらず淡々としたものです。
対して、暁風・サーシス(c18906)の表情はどこか強張っていました。
今回戦う事になる者たちが、彼の心のうちに何かを浮かばせていたのです。
ランスブルグ付近の辺境、村を襲ったバルバの群れ。
そして……それを退けられなかった自分。
その時でした。
宵桜・リーゼロッテ(c24177)は左手薬指の金の指輪を一度外すと、きゅっと握りしめてから再びはめ直しました。
それは彼女が、サーシスからもらった物でした。
その光景が、彼の内に宿る何かを呼び起こしたのです。
(「……でも、今度は守り抜きますよ」)
「共に、森の向こうへ!」
サーシスは言葉を紡ぎながら、心の内で誓いました。
今回は依頼の都合で、マスターの竪琴に合わせて歌えません。
(「けれども……その分、この槍で全てを奏でましょう」)
彼はリーゼロッテに聞こえるように、断言しました。
「あなたの隣は、僕が守ります」
●バルバとの戦い
一行は周囲に紛れるような色で統一した外套に森の土葉を擦りつけ臭いを消すと、装備も金属などには関節部や隙間に布をかませる等して消音の対策を行いました。
そして、アビリティの力も利用して身を隠しながら作戦を開始します。
誤差が多少あるとはいえ、単純計算で言えば8対100でした。
見つかって相手が集まってくれば、袋叩きにあって、それでお終いです。
存在を悟られぬように潜伏し、移動の痕跡を隠すようにして一行は進みました。
遠くから大きな音などが響いてくる事から察するに、他の場所でも戦いが始まったのでしょう。
ラーレは風の向きに気を付け、森の主のいる方や敵のやってきた方角などを考えながら、自分たちが潜伏する場所を探しました。
ルアは木の葉なども服に付けカモフラージュし、できるだけ音を立てぬよう気を配ります。
間もなく一行は木々と茂みで覆われた一角に潜伏場所を定めました。
そして、近付いてきたバルバ、タイガーロアーの群れの1つに、素早く奇襲を仕掛けたのです。
先手取ったのはクラウスでした。
後衛の彼は敵に近付かれないように注意して位置を取ると、棘(ソーン)を餌に邪悪なワタリガラスの群れを召喚しました。
黒い群れは1つの生き物のように動き回り、バルバ達の視界を黒い羽根で覆い尽くしてゆきます。
続くように、ラーレ、クニカラ、サーシスらも動きました。
味方前衛の接近への足掛かりをと考えて。
ラーレは後衛で、羊に似た星霊、ヒュプノスを召喚しバルバに向かわせます。
モニカ様の様子が気になりはしたものの、彼女はそれを押し込めました。
少女は今、仲間として此処に居るのです。
心配するのではなく、信じるべきでした。
一人の仲間として信じ、そして……自分も一人の仲間として、信じてもらう為に!
「敵の数の多さに辟易はすれど、臆す理由も負ける心算も、全くありませんわね!」
(「齎さんとする陰りも照らしてみせますわ」)
「私達はその為の、光なのですから!」
自身に言い聞かせるかのように、ラーレは毅然と言葉を紡ぎました。
他の群れが気付き、近寄ってくる前に。
クニカラも皆と同じバルバへと刃を構えます。
フレイムソードから発された不死鳥の炎を身に纏い、彼はタイガーロアーへと突撃しました。
それが止めとなり、バルバは炎に包まれ倒れました。
槍を頭上で高速回転させながらサーシスがタイガーロアー達を薙ぎ払い、続くようにリーゼロッテも踏み込みます。
彼女は彼の動きに合わせるようにして、踏音開言花を振り被りました。
「貴方の相手は私たちがいたします。これ以上先には進ませません」
ある従者が主を守るために用いたとされる長槍が森の大地に触れるのと同時に、地面から次々と穂先が生え出し、バルバ達を貫きました。
クニカラとラーレに合わせるように、ソラトとモニカも攻撃を仕掛けます。
「不意打ちはちょっと気が引けますけど、そちらも大勢の仲間を率いているのですから、お相子ですよ」
そういってソラトもハルバードを頭上で高速回転させながらバルバ達に突撃しました。
「ボクの槍の技を、その身に受けよ!」
気合と共に振るわれた一撃を受け、傷付いていた別の1頭も鳴き声を上げ地面に転がりました。
「さあ、今よ。見せてやりな!」
モニカのサポートに回っていたエンドブレイカー達が彼女を援護するように動きます。
少女は頷くと、足止めされたタイガーロアーに向かって召喚した妖精たちの群れを突撃させました。
他のバルバ達が来ないのを確認すると、ルアもワッパーと呼ばれる特殊な捕縛具でバルバ達を狙います。
タイガーロアー達は油断してはいませんでしたが、実力があまりに違い過ぎました。
戦いは短時間で決着し、ソラトやリーゼロッテは急いで痕跡を隠す作業を開始します。
その間クニカラは五感を研ぎ澄ませ、剣の柄から手を離さず周囲を警戒しました。
そして作業を素早く終えると一行は、再び森の中へと姿を消したのです。
●森林の暗闘
ローブに身を包み、ステルスを使用して。
リーゼロッテは音を立てぬように潜伏していました。
クニカラも茂みに身を隠し、身振りや手振り、アイコンタクト等で、仲間たちと連絡を行います。
近づいてきた敵の群れに攻撃を仕掛け、殲滅後に再度潜伏する。
それが一行の作戦でした。
とはいえ同じ場所に留まり居場所の感知されるのは避けねばなりません。
クラウスは潜伏する場所を適宜変更するように気を配りました。
もちろんその際は時間の許す限り痕跡を消して移動するのです。
「それにしても何だろうね」
口の中で彼は言葉を響かせました。
『狩り』をしている獣ってこんな気持ちなんだろうか?
そんな問いが、ふと頭をよぎったのです。
戦いは幾度か行われ、手強いバルバ達も幾度か現れました。
エンドブレイカー達も、消耗し始めたのです。
クラウスは仲間の負傷度合いを見つつ癒しの魔法円を描いて傷を癒しました。
ソラトも戦いの合間に竜を体内で循環させ、傷を塞ぎ、自身の力を高めます。
ラーレは星霊の力で負傷を軽減していましたが、仲間たちを癒す為に魔鍵『Sari Kelebek』の力を用いて楽園への扉を解錠していた為、疲労を少しずつ蓄積させていました。
とはいえ、途中で止める訳にはいきません。
エンドブレイカー達は傷の痛みと疲労を堪え、戦い続けました。
サーシスは槍を振るって戦い続け、深い傷を負った者には白銀事花、朝の黄金から夜空の白銀に色を転じた仕込み杖を振るって癒しの魔法円を描きました。
ルアも変わらず戦いの最中にやってくる別の群れを警戒しながらワッパーを投げ、時に正義の桜吹雪を巻き起こし、正義の炎を心に燃やして戦い続けたのです。
増援を呼びに向かおうとするバルバはいませんでしたが、タイガーロアー達は戦いながら仲間を呼ぶように咆哮をあげました。
それによって更に別の群れを相手取ることもあり、一行の消耗は確実に蓄積されていったのです。
リーゼロッテは仲間を呼ぼうとするバルバ達を妨害しようとしましたが、早期に撃破するという以外の対処法はありませんでした。
それでも彼女はサーシスや皆と協力し、集中攻撃することでタイガーロアー達を撃破していったのです。
クニカラも出来るだけ消耗を抑えるようにしながらムーンブレイドの力を揮いました。
ゆっくりとアビリティを使用する時間はありませんでしたが、それも悪い事だけでは無かったかもしれません。
戦いを終えると、ラーレは皆と手分けして周囲を警戒しました。
念の為にと茂る木々の枝にも注意します。
タイガーロアー達は木を伝って移動してくることもありました。
痕跡を隠しきれないと判断すれば直ぐに一行は次の場所へと移動します。
その最中……クニカラは森の生き物の声がしない緊張感をモニカに話しながら、心配してしまう自分を自覚していました。
戦士だとわかっていても、幼い者が戦うという事がどうしても不安になってしまうのです。
つい気にかけて声をかけたり、庇おうとしてしまったり……
実際彼女はこの場にいるエンドブレイカー達の中では一番未熟でしたが、それを手助けすべく幾人かがサポートに回っていました。
大丈夫なのだと言い聞かせ、彼は周囲に意識を向けました。
移動中は定期的に後方を警戒し、支援してくれる者とも協力して。
ソラトは音を立てぬように注意し、サーシスはアビリティを使用して、周囲の音を探りながら。
エンドブレイカー達は闇色の傍へと近付きつつあったのです。
●決戦へ
「足元注意、です。この攻撃が見切れますか?」
リーゼロッテの言葉とほぼ同時に地から伸びた無数の槍がバルバ達を貫き、踏み出した クニカラが炎の華を描く斬撃で1体を焼き尽くしました。
モニカ達に続くようにしてラーレが血の呪いを帯びさせたナイフを振るい、防御態勢を取れなかったタイガーロアーが呻き声をあげ森の大地に転がります。
それで戦いは決着となりました。
物陰に隠れ傷を癒しながら。
クラウスはサーシスと状況を確認し合いました。
既に回復アビリティは話し合った以上に使用しており、幾人かの顔には疲れが滲んでいました。
バルバ達は大よそですが、当初に考えていた一応の目安程度は倒しているように思えます。
話し合った末にエンドブレイカー達は、マスカレイドと戦う事を決めました。
消耗を抑えるように回復を行うと、一行はそのまま群れの中央を目指します。
タイガーロアー達の群れは警戒を強めてはいましたが、マスカレイドの周囲にいるバルバの数は、変わらず5頭のままでした。
森の主への襲撃を最優先に考えているのか、あるいは自分の力に自信があるのか?
「闇色、噂に違わない全てを飲み込みそうな闇色ですね」
ソラトは小声で呟いてから表情を引き締めました。
余裕は全くありません。
クラウスがソーンで戦場を囲うのと同時にエンドブレイカー達は動きました。
ソラトがハルバードを回転させながら闇色目掛けて突撃し、ラーレは周囲のバルバ達を牽制するように星霊ヒュプノスを向かわせます。
サーシスとリーゼロッテも闇色へと攻撃を繰り出し、ルアは配下たちを攻撃しながら増援に警戒しました。
マスカレイドはエンドブレイカー達に牙をむきながら、別の頭部で他の配下たちを呼ぶように咆哮を響かせます。
クニカラとモニカ達は配下たちのバルバ達を抑えるべく、動き出しました。
●棘の闇と終焉
戦いは激しいものとなりました。
配下のバルバ達はクラウスの造ったソーンリングに逡巡したものの、結局は呼び声に従い戦場に馳せ参じたのです。
牙と刃が、鉤爪と刺突が、魔術と咆哮がぶつかり合いました。
モニカが最初に力尽き、他の者たちに保護されました。
サーシスとリーゼロッテも膝を折りました。
サーシスが庇っているようでもあり、リーゼロッテが支えているようでもあって……ふたりは互いを守るように、寄り添うように倒れたのです。
「とにかく、最後まで希望は捨てない!!」
そう叫びバルバ達の動きを封じていたルアも限界を迎えました。
とはいえマスカレイド、闇色も傷付き、周囲を守る配下も1頭のみとなっていたのです。
ですが他に3頭のバルバが傍に駆け寄ろうと暴れ、阻止しようとするクニカラと対峙していました。
一見すれば互角のようでしたが、実際にはエンドブレイカー達の方が圧倒的に不利な状況です。
闇色の咆哮に応じるように、傷付いていない元気なバルバ達が次々と押し寄せてくるのですから。
ギリギリの状況だった。
そう言えるかもしれません。
それでも……取り乱すことなく、淡々と。
支援魔力体に力を注ぎ、クラウスはジェノサイドレイヴンを召喚しました。
黒い群れが配下と共に、闇色をも巻き込んで拡がります。
クニカラはそのまま増援のバルバ達を押し留め、ラーレも妨害するように身を割り込ませました。
そして……ソラトが渾身の力を籠めて振るったハルバードが闇色の毛皮を引き裂き、マスカレイドの身体に叩き付けられました。
心を縮ませるような恐ろしい咆哮が、周囲に響き渡りました。
ですが、それは戦いの終わりを告げるものだったのです。
大きな音を立てて、マスカレイドは森の大地に崩れ落ちました。
そして……逃げていくバルバ達の悲鳴を聞きながら。
限界に近い疲れと負傷の中で、エンドブレイカー達は実感しました。
自分たちの戦いが、ひとまずの結びを迎えた事を。
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参加者:7人
作成日:2013/06/01
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冒険結果:成功!
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