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はるのとびら

竪琴の魔曲使い・ミラ

<はるのとびら>

■担当マスター:彩庵


「今年の祭は、どうするんですか? 委員長」
「去年みたいに、問題が起こらないようにしてくださいよ、委員長」
 『花びら祭対策本部』と看板の掛かった小屋に、人が訪れてくる。代わる代わるそんな言葉をかけて、祭の参加に必要な書類を片手に出て行くのだ。
「そうは、言われても……。私達は、警備とか得意じゃないし」
 委員長、と呼ばれた眼鏡の女性が溜息をついた。本日にして5度目の溜息だ。
「どうすればいいのかしらね。無事に終わって欲しいけれども……。お手伝いさんの募集、応募来ていますか?」
「いえ、全然です。やっぱり去年より報酬を減らしたのが悪かったのかも……」
 隣にいた事務員の言葉に、彼女は肩を落とした。
「そうですか……。……で、でも、もっと、遠くの街でもお願いして、お手伝いさんを探しましょう! 私、今から走っていって来ます。毎年みんなに楽しみにされているお祭りですもの。何事もなく、無事に終わって欲しいわ」
 拳を握りしめて言う彼女の言葉に、事務員も大きく頷いた。

「皆さん、『花びら祭』というお祭りはご存じですか?」
 竪琴の魔曲使い・ミラが、そう切り出した。
「あ、いえ。マスカレイドがらみの事件ではないのです。ただ、とても困っていらっしゃるみたいで、街の皆さんと親睦を深めるためにも、こういう仕事もしてみませんか? 報酬もいただけますし……何より、お祭りって、なんだかお祭りって言葉だけでわくわくすると思うんです。私だけでしょうか?」
 そう言うと、ミラは笑った。
「『花びら祭』は、このあたりで一年に一度開かれるお祭りです。広場で開かれるんですけれども、色とりどりの花びらが用意されていて、それを人にかけあったり投げ合ったりして遊ぶんですよ。これから来る春を祝うお祭りで、かけられた人は一年食べるものには困らない、なんて言われているんです。また、広場の一番中央には高台があって、そこから実行委員の方々が花吹雪を散らすんです。それを一緒に受けた恋人同士は、一生離れないっていう伝説があって、恋人達にも大人気なんですよ!」
 ミラは胸に手を当てて、ふっと息を吐く。誰かと共に踊っていることを想像したのだろう。周りの者の視線に気付いて、ミラは慌てて赤い顔で首を横に振った。
「あ、でも! 広場にある花を使った展示品は本当に綺麗ですし、出店も沢山あるから、お友達同士とかでも楽しめる人気のお祭りなんですよ。……ですが」
 心なしか口調が早口になってしまっていた。大きく息を深呼吸して落ち着かせ、ミラは人差し指を立てて言った。
「人が多いお祭りです。問題も結構、起こっていて、スリとか、喧嘩とか、そういう被害も出ています。去年は怪我人まで出たそうで……。実行委員長さんが、どうにか無事に祭を終わらせるために人出を貸してくれないか、と、仰ったのです」
 そこで、ミラは地図を広げる。祭が行われる広場の詳細地図だ。花びら祭がある広場から、東西南に一本道が伸びていて、露店の名前がびっしりと書き込まれている。
「去年は、この南側の『超巨大魚すくい』周辺で、かっぱらいがよく出たみたいです。皆さん、荷物を下ろして遊びに熱中されるみたいで、そこを狙われるみたいですね。東は骨董やちょっとしたアクセサリーなんかが置いてあって、万引きが何軒か。西は、食べ物屋さんが多いです。あ、名物の『花リンゴ飴』って、おいしいらしいですよ。おすすめは緑花びらリンゴ飴です。……でも、全体的に、去年はちょっと柄の悪い人が多くて、恐喝やスリなんかがあちこちで出ました。それと、一番多いのが、やはり中央の花びら祭会場付近ですね。カップルが多いので、酔っぱらいに絡まれたり、喧嘩になったりすることが多いです。去年の傷害事件も、ここで起きました。男の子の方も、女の子に良いところを見せようと思って、頑張っちゃうんでしょうねー。……少し、羨ましいです」
 最後の一言はちょっと小声ではにかみ気味に呟いて。ミラは顔を上げた。
「皆さんが楽しくお祭りに参加できるよう、皆さん、一緒に頑張りませんか? もちろん、事件が何も起こらなければ、お祭りを楽しんでくださって構いません。割引券、いただいてきてしまいました。よろしければ使ってくださいね」
 テーブルの上に、どっさりと各店の割引チケットを置いて、ミラは頭を下げた。
 エンドブレイカー達はめいめいにそれを手に取ったり、地図をのぞき込んだりしながら、「任しておけ」と、笑った。

●マスターより

 見てくださってありがとうございます。
 はじめまして、こんにちは。彩庵と申します。
 今回はお祭りがテーマということですので、皆さんと一緒に一足先に春のお祭りを楽しむことが出来ればいいと思います。
 これからどうぞよろしくお願いしますね。
 ここまで見てくださって、ありがとうございました。


<参加キャラクターリスト>


<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

● 杖の星霊術士・マオ(c00092)
■心情
祭りに参加する人々が純粋に楽しめるよう
全力を尽す。

出し物にはあまり集中せず
周りに気を配っていたい。
…が、やはり、少し気になるな…。
何事もなければ祭りを楽しみたい。



■準備
予め腕章を用意しておく。
委員会の人に頼み
『腕章を着けた方が警備員です』等
周囲に知らせてもらう。

星霊スピカは召還し黒いリボンを着け
頭上に飛ばせておく。



■行動
ケレステス(c00867)さんと共に『東』を巡回。


□不審人物
不自然にならない程度にその人物を注意・観察。

□万引・窃盗
現行犯の場合すぐに確保。
犯人が現場から離れてしまった場合
被害者を落ち着かせ特徴を聞き
巡回しながら捜索。

□喧嘩等
まずは割って入り説得を試みる。
↑で無理そうなら拳で制裁→本部へ連行。

□迷子
子供を少しでも安心させ
それからはぐれた場所等を聞き
共に捜索。


他班から応援要請が有った場合
ケレステスさんに走ってもらう。


戦闘アビリティは最終手段として。

● 杖の星霊術士・チコリス(c00348)
せっかくのお祭りなのに、悪い事するなんてふてーやろーもいるもんです!

■事前準備/班分け
キサラさんと南の見まわり
全員お揃いの腕章つけるですよ!
屋台のおっちゃんたちにも何かあったら大声で呼んでもらうようお願い
お店気になるけど、まずはお仕事しっかり頑張るのですっ

スピカさんは予め召喚、一緒に歩きます
チコのスピカさんは首に白いリボンつけてるです
チコたちだけでどうにもならねー(犯人が他の地点に逃げたなど)場合は
まず本部と、仲間のとこにも走ってって貰います

■見まわり
南はかっぱらいが多いそーです
お年よりや女の人、ちっちゃい子の荷物を特によく見ておくですね
怪しい奴が居たら金魚に夢中な子供の振りして近寄り、マークするです
もし現行犯が出たら大声だして追いかけるですよ
スピカさんっ、逃がさねーようにかみついちゃえ!

他の地点で何かあったらキサラさんにお任せ
チコはスピカさんとお留守番してるです

呼び
全員名前+さん

● 槍の城塞騎士・ラクシュ(c00492)
お祭りは、楽しいものじゃないと

事前】
「統一腕章」を全員で付けます
委員会にお願いして
「腕章を付けた警備員が巡回」している旨を
アナウンスや張り紙などで周囲へ告知願います

班分け】
各エリア二人一組で巡回
私はカッツェ(c04197)と一緒に「西」へ

行動】
基本方針は予防・牽制
実力行使は最終手段で

恐喝やスリが多いと聞いたので
巡回しながら屋台主に何かあれば呼んで頂く様お願いし
暗がりの確認をして、たむろ者を解散させたり
人が混雑している所を整理したりします

スリであればカッツェに走って足止めしてもらい
荒事は私が対応し現行犯確保
最悪でもモノは取り返します
恐喝は私が出て出来るだけ荒げず正論で冷静に対応して
退散して頂く様にします

緊急時はカッツェに走って貰い
本部や他の組へ伝令に
他の組からはスピカや鷹が来るので
リボンの色で判別しその組の場所へ応援に行って貰います
一人の間は出来るだけ牽制に努めます

呼び方
年上:名+さん
他:名呼び捨て

● 杖の星霊術士・ルナ(c00642)
お祭りを無事に終わらせよう!

事前準備
メンバー全員が統一した腕章着用
【腕章の人が巡回しています】的アナウンスを委員会に予め通達
張り紙等でその宣伝を頼んでおく

班分け
二人一組で各エリアを巡回
あたしはケイさんと広場を担当、恋人っぽく振舞って
予めスピカを召喚しておき有事の際の連絡手段に
何かあったら本部と仲間たちのところへスピカを
あたしのスピカは赤いリボンが目印

有事
・自分の持ち場で何かあった場合
迷子とかなら自分たちで対処できると思う
暴力沙汰はスピカで応援を頼みつつ、杖を構える
警備員と告げて、何をしているか確認
それでも暴れるようなら手加減はしないよ?
・他の持ち場で何かあった場合
そこで処理できるような事象ならあえて動かない
いつこっちで何がおきるかもわからないしね
手が足りない場合ケイさんにその場を頼み援護に
警備員と告げても事態が収まらなければ実力行使かな

無事にお祭りが終わるように、一生懸命がんばるよっ

● 暗殺シューズのスカイランナー・ケレステス(c00867)
街の皆が心待ちの祭り、笑顔だらけの良い想い出にしたいのは皆同じじゃん?
オレだってそう。だから全力で助けさせてもらうぜ。
春招く扉、無事に開けような!


先ずは仲間統一の腕章用意と祭り会場への周知。
視界広げられる双眼鏡も用意。
祭り始まったらマオと東の露店街を巡回。
露店の人等に気軽に声掛けつつ速度ゆっくりに保って。
東の懸念は万引き、素早さ自慢だっつー予想は付く。
ならスカイランは追跡に最適って奴だ。
マオと連携して露店の上とか死角からの捕獲狙うぜ。

他組の合図(青赤:広場/白:南/カッツェ:西)発見時はスカイラン急行、
東帰還の目印は黒リボンスピカ。
ゴロツキ相手でも外面を存分に有効利用。
出来りゃ仲間の御嬢様方に手を上げさせたくねぇからオレが矢面に立つ心算だが。
あー、勿論ケイも手伝ってくれるよなぁ?(にやり)
アビは使わねぇに越した事無し。

泣いてる迷子は肩車やスカイラン駆使して笑わせつつ親捜し。笑顔が一番だよな!

● 弓の狩猟者・モニカ(c00941)
お祭りは最後まで楽しく終わらせたいよね!
私も、お祭り楽しみたいけど……でもそれよりみんなが大事!頑張るぞっ!
何もなければ、それが一番だけどね!

準備
他の皆と統一した腕章を着ける
事前に委員会の人に「腕章を付けた警備員」の宣伝をして貰うようお願いしておく

班分け
各エリア二人一組、私はレイチェルさん(c03958)と広場を巡回
ファルコンスピリットで鷹を召喚しておいて、目印に青いリボンを結んでおく。何かあったら本部と他の組へ飛ばす
スピリットにリボンが無理なら、自分たちのところまで鷹で誘導する

行動
スリ、万引きはとにかく追っかけて、盗ったもの回収&返却
迷子は一緒に親を探してあげるなどで自分たちで対処
喧嘩など荒事は、鷹を飛ばす準備をしつつ割って入って説得。警備員って言っても相手が応じなかったら実力行使も辞さない
他の組で何かあった場合、レイチェルさんに行ってもらう。その後の再合流の目印のために頭上に鷹を飛ばしておく

● 槍の狩猟者・ケイ(c01410)
目標:皆が楽しい祭にする!

●行動&対策
場所毎に2人組で巡回
担当:広場
同行:ルナちゃん(恋人っぽい演技少々v)

委員会と協力して、警備員の目印(腕章)を用意
全体的な店の特色とか、過去の事例をもう一回確認して把握しとく

基本方針:予防→牽制→大暴れv
まあ最後のは、いざって時の予防だな
羽目を外し過ぎない程度に、ちょっくら派手に、な

不自然に辺り気にしてる奴は、スリを警戒して手元注意
現行犯で速攻逮捕!
かつあげ等の予防も含めて、細やかな見回りは必須だな
喧嘩を見かけたら、まずは笑顔で仲裁に入って、話合いの道を薦めるぜ〜

堂々とした態度で、頼れる警備のお兄さんに見えるように心がけ
案内とかも、できればしてもイイよなっ(↑の雰囲気作りに)
なんか揉めてそうだったら、自分から声を掛けに行くぜ♪

●応援
不測の事態には星霊や鷹で応援要請
俺の鷹の目印は赤、無理なら誘導させる
(↑出番はルナの応援出動時)
逆に連絡がないかにも目を配っとくぜ

● 鞭の魔曲使い・レイチェル(c03958)
せっかくのお祭りですもの。
何事もなく皆さんに楽しんでいただきたいですわ。

【事前準備】
委員会の方にも手伝っていただいて、あらかじめ警備員がいることを周知していただきます。
目印として、メンバーでお揃いの腕章をつけておきましょう。
担当エリアの目印として青いリボンを腕に巻いておく。

【行動】
モニカさんとペアで広場を担当。
広場は人が大勢集まりそうですから、常に気を配っていないといけないかもしれませんね。
迷子や怪我人などは、できるだけわたくしたちだけで対処するようにしましょう。
喧嘩等が起きた場合には、まずは話し合いで場を収めるように努力します。
あんまり派手にやって、お祭りの雰囲気を壊すのも忍びないですから。
でも、言うことを聞かない悪い子には、きつーーいおしおき(実力行使)を受けていただきましょ♪
他のエリアから応援を頼まれた場合には、広場はモニカさんにお任せして、駆けつけます。
その場で指示を仰いで協力を。

● エアシューズのスカイランナー・カッツェ(c04197)
■事前準備
統一腕章を全員でつけて見回りに行くよ
委員会の方に腕章をつけた警備員がいるっていうのを
告知してもらうんだ

■班分け
二人ひと組になって各場所で巡回
ボクは西でラクシュさん(c00492)と動くよ

緊急時はボクが本部への連絡と他の組の人にお手伝いをお願いしに行く
人ごみを避けて建物の壁とかの『上の道』を使って走るよ

■行動
西は恐喝、スリが多いみたいだから
巡回してる時は屋台の人に声かけしたり
二人で混雑整理をやって事前予防

迷子いたら高いところにいってお連れさんを探し

スリ対策に人の手の動きを見るようにしようかな
背が低いから大人とかの手は見やすいしね
やってるやつがいたら追いかけてその場で捕まえるよ
物騒なことはしたくないけど、足を狙って蹴るぐらいはするつもりで
恐喝なんかはラクシュさんに事を収めてもらう、かな

目印を付けたスピカとかで他の組から応援要請が
来たらボクが応援に行くよ

呼称
名前にさんづけ

● 剣の魔法剣士・キサラ(c05188)
僕の警備担当は、金魚すくいがある南側だよ〜。
事前に地図を見て場所と周辺露店の確認。

もし、祭りが始まる前に会場に行けるんだったら、委員会の人たちと打ち合わせしたいね〜。
僕たちが警備しているよ〜って「腕章」をつけて
金魚すくい周辺の露店の店員さんには「何か怪しい人を見つけたら叫んでね〜」と言っておく。
あとは、壁などのよく目に付くところに、「腕章を付けた警備員が巡回中!」と犯罪牽制のためのポスターを貼り付けておくよ。

祭りが始まったら
パートナーのチコリスちゃんと交互に見張りをする。
片方が見張りのときは片方が遊べる感じだよ〜。

何かあったときは、僕たち2人で対応するよ。
2人で無理なら他の班に応援を求める。
他の班に呼ばれたら、僕が行くからチコちゃんお留守番よろしくね。

金魚すくいの場所でかっぱらおうとしている人を見つけたら、
まずは予防、声をかける「こら〜何をしているんだい?」
そして、牽制「捕まえるよ?」

<リプレイ>

●決行
「花が足りないぞ!」
「なあ、あたいのケンスコ、どこにやったかしらねえか〜?」
 等という声があちこちで飛び交っている。
「例年の傾向と特色はどんな感じなんだ?」
 対策本部に集まった面々の中で、まず槍の狩猟者・ケイ(c01410)が口を開いた。
「そうだね。あらかじめ、周辺露店なんかを確認しておいた方が良いよ」
 剣の魔法剣士・キサラ(c05188)も言う。対策本部の委員長は地図を広げつつ、
「はい。去年は警備にもそんなに人を割けなくて。この辺で喧嘩が……」
 喧嘩の起こりそうなポイントや、店の情報を次々と書き込んでいる。待っている間の時間を利用して自分達のスピカに色のついたリボンを結んでいるのは、杖の星霊術士・マオ(c00092)達だ。
「できた。なかなか可愛いな」
 黒いリボンを己のスピカに結んで、満足そうにマオは目を細める。
「はいっ。可愛くできました」
 杖の星霊術士・チコリス(c00348)も、白のリボンをスピカに結んで笑う。踊るようにくるくる回る彼等に、赤い色が加わった。杖の星霊術士・ルナ(c00642)のスピカだ。
「これからよろしくって、言ってるね」
 踊る色とりどりのスピカ達を見やって、ルナが笑った。それを見て、鷹に目印として青いリボンを結んでいた弓の狩猟者・モニカ(c00941)が、その頭を撫でた。
「混ざりたい? ふふっ。ほら、行っておいで」
「はい、警備腕章、持ってきたよ!」
 エアシューズのスカイランナー・カッツェ(c04197)が、袋を抱えて走ってきた。
「ふふ。こうすると解り易くて良いですね」
 鞭の魔曲使い・レイチェル(c03958) が、腕にリボンを巻き付けながら笑った。
「ビラ貼り、終わったぜ! 後、露店のおっさん達にも配ってきたぞ〜」
 暗殺シューズのスカイランナー・ケレステス(c00867)が走って戻ってくる。露店の様子を話し出すケレステス達に、ケイはキサラと共に見ていた地図から顔を上げた。
「おーい。お兄さんの話も聞いてくれよ。寂しいぞー」
「あ。ケイさんの鷹も、リボンしておきましたよ」
 にっこりと笑うレイチェルに、ケイも笑った。
「おっ。ありがとな」
 そうして一通り打ち合わせを終えた後、委員長がぺこりと頭を下げた。
「それでは、皆さんよろしくお願いします。あの、でも、くれぐれもお怪我なんかはしないでくださいね」
「もちろん! 楽しいお祭りにしましょーね!」
 チコリスがそう言って、力強く笑った。

●巨大魚
 人の丈ほどもある巨大な樽が並んでいる。
「おおっ。すごい。すごいー。……つか、巨大魚って、巨大すぎだろ……?」
 キサラがと呟いた。参加者はそれぞれ大きな網でそれを掬おうとしている。時々逆に樽に落ちる人もいるようだ。
「あ、キサラさん! あっちの可愛いよ。大きな赤いの!」
 とはいえそれも慣れた光景なのだろう。樽に落ちた人を引き上げている露店を尻目に、チコリスは嬉しそうに歓声を上げた。
「おっ。本当だね。やってみよう」
 ちらりとキサラは周囲を見回して言う。祭の喧噪に紛れて、屋台ではなく人をくまなく見ているような少年を見つけた。何人かでこそこそと話し合って、荷物の軽そうな人を物色しているようだ。
 チコリスとキサラは顔を見合わせた。少年は腕章をつけているこちらをある程度警戒しているようだ。
「キサラさん、やる? チコも、ちょっとやってみようかなぁ」
 とはいえ、まだ見ているだけなので、チコリスが魚掬いの屋台に向かって声をかける。
「ん。そうだね。ちょっとくらい楽しんでも良いんじゃないかなー」
 キサラも背を向ける。その瞬間、こちらの様子を窺っていた少年が走り出した。近くに金魚すくいに夢中になっている人の荷物を、掴む。
 だが足音が聞こえたときには、キサラはもう振り返っていた。
「こら〜何をしているんだい?」
 同時にチコリスのスピカが飛んで、少年の前まで走っていったので、少年は手を離した。
「もう、駄目だぞ〜。あんまり悪い子だと、捕まえるよ?」
 チコリスもぐっと杖を構えて臨戦態勢だ。少年はふてくされたように、
「別に。ちょっと触っただけじゃん!」
 と言い捨てて走り出した。人混みに紛れて消えていく子供に、キサラは軽く頭を掻いた。
「やれやれ」
「ん。まだ始まったばかりです。がんばりましょうっ」
 チコリスがにっこりと笑う。それで、と続けた。
「金魚すくい、どっちからやります?」
「あ、じゃあ、僕が先に見てるから、チコリスちゃんすればいいよ〜」
「わあっ。ありがとうございます、です〜!」
 キサラの申し出に嬉しそうに、チコリスが金魚すくいに挑戦する。
「行きますよっ! えいっ。この、こら、逃げるなこのくそ金魚!」
「ち、チコリスちゃん……?」
 見張っている間に、何やら背後から物騒な声が聞こえてくる。
「うぅ、金魚さん……お家に連れて帰りたかったです。こうなったら花リンゴ飴やけ食いです!」
 暫くすると肩を落としたチコリスが戻ってきたので、キサラはお察しした。
「あの……」
 声をかけられてキサラは顔を上げた。先程バックを盗られそうになっていた女性だった。
「さっきはありがとうございます。私、全然気がつかなくて。この後も頑張ってください!」
 もう一度、女性は深々と頭を下げる。そうして彼氏と腕を組んで鞄を持って去っていった。
「春を感じるお祭りっていいよね〜。ていうか、心なしかスタート時よりカップルが多い気が……若い乙女っていいね〜」
「そうですね〜。皆さんのために、頑張らないといけません」
 ほんわりとチコリスが呟いた。その時、遠くから人の悲鳴のようなものが聞こえた。返せ〜! 等という声もする。チコリスとキサラは顔を見合わせて、そして走り出した。

●骨董
「こらーっ! 返せー!」
 悲鳴が聞こえた。高そうな壺を抱えた男が、人を押しのけるようにして走っていく。
「泥棒だ、捕まえてくれ!」
 体当たりをするようにして逃げていく。その上空で、影が走った。
 人が驚いて道を空け、男の周りから少々離れた隙を狙って、ケレステスが上空から飛びかかったのだ。同時にマオの魔法が飛ぶ。足下に当たったバランスを崩したところを、ケレステスが上空から頭突き行い転がらせて捕縛した。拍子で壺が地面に落ちそうになる。とっさにケレステスはそれを弾いた。
「マオ!」
「任せて!」
 上手く壺をキャッチして、マオは笑う。
「お前スカイランナーの資質あんじゃん! でも逃避行は頂けねぇ、カッコよく行こうぜ?」
 その鮮やかな手並みに、遠巻きに様子を見守っていた人々が顔を見合わせる。
「何だ。お芝居か。結構凄かったね〜」
「あのお兄ちゃんかっこよかったよ!」
 子供の声が聞こえ、ケレステスは笑って親指を立てた。
「はい。これ、どうぞ」
 駆けつけてきた露店の主人に、マオは壺を帰す。主人は何度も頭を下げた。
「気にしないで、また何かあれば呼んで欲しい。……あっ」
 後ろで見知らぬ少女がマオのスピカのリボンを引っ張っていた。
「こら。だめだろ。お母さんは?」
「……わかんない」
「どうした? 迷子か?」
 男を縛り上げながら、ケレステスは言う。マオは頷いた。最後に小さく呟く。
「……」
「ん?」
「いや、なんでもない。どこではぐれたんだ? 一緒に探すよ」
「そうそう。任しとけ!」
 ケレステスが少女に肩車をする。それを何となく羨ましそうに見やって、マオも歩き出した。もちろん、かっぱらいを引きずりながら。
「あ。あの髪留め、可愛い」
 ケレステスが思わず呟く。マオが頷いた。
「渋いけど、それが良いな。こう言うの、自分で買うのも良いけれども、何となく、誰かに買って貰うのも……いや、そんな相手はいないのだが」
「ははっ。ちがいねえ! おばさん、これください!」
 髪留めを手に、ケレステスが笑って声を上げた。

●緑の飴
「出来るだけ右側通行でお願いしますー!」
 カッツェが声を上げた。
「ほら。そこ、あんまり暗い所で集まってちゃいけませんよ〜?」
 ラクシュが声をかけた。
「えー。なんでだよー」
「危ないからですよ。恐喝してる人と間違われて、こてんぱんにのされちゃいますよー」
 その言葉に、たむろっていた子供達が渋々と退散していく。
「良いから出せば良いんだよ!」
 怒鳴り声が聞こえて、ラクシュは振り返った。子供と母親に男がすごんでいる。
「何事ですか?」
「こ、この人が、うちの娘がぶつかって服が汚れたって……」
 人混みをかき分けてラクシュが訪れる。人々がそちらに気をとられた時、通行人の一人が別の者から財布を抜き取るのを、カッツェは見逃さなかった。
「女は黙ってろ!」
「あら。なら、男なら意見をしても良いというの?」
 ラクシュの声を聞きながら、カッツェは静かに走り出す。そそくさとその場を立ち去ろうとしていたスリの足下を、思い切り蹴りつけた。
「うるさい!」
 転ぶスリをさっと取り押さえる。盗られた財布を奪い取って、カッツェは周囲を見回した。盗られた女性は盗られた事にすら気がついていない。
「だいたい、どこが汚れたかも解らないじゃありませんか。子供のする事ですし、大人げないですよ?」
 尚も言いつのろうとするも、周囲がだんだんと騒がしくなってくる。ラクシュの言葉に同意する声も聞こえてきて、
「お。覚えてろ!」
 男は背を向けて、さっさと逃げ出した。その頃には、カッツェはそっと、財布を盗られた女性に財布を戻し終わっていた。
「あ、あの……。ありがとうございます」
「いいえ。無事で何よりです。……ところで、この屋台の中で一番おいしそうな花びらリンゴ飴屋さん、知りません?」
 そう言いながらもラクシュは振り返る。カッツェと目があって、二人でにやりと笑った。
「花びらリンゴ飴って、リンゴを切って花の形してるんだねぇ」
「緑は薔薇ですね。細工も凝ってます」
「ん。あ、旨い。……って、そこ〜。喧嘩は駄目だよ!」
「ふふ。お土産は、最後ですね」
 二人はリンゴ飴をくわえたまま走り出した。

●花
「皆、結構無事にいってるみたいだね」
 モニカは呟いた。レイチェルが笑う。
「少し、残念ですか?」
「あ。いや、そんなんじゃないけどさー」
 中央広場では、そろそろメインイベントの花びらの準備が始まっている。
「何事もなく終わればいいけど……。あっ!」
 モニカが目を輝かせたので、レイチェルは肩をすくめた。さっきからモニカは、格好いい人を見つければ目を輝かせ、そして彼女連れと解ると肩を落としたりしているのだ。
「うるさいな。良いからそこをどけ。花に触るな」
「良いだろう、花の一本くらい貰っても!」
 花で作られた扉の展示物の前で、職人と客の間で言い争いが起きていた。作品の展示に触れたのだろう。
「イケメンが困ってる!」
「あらあら。待って、モニカさんったら」
 走り出すモニカの後を、にこにこ笑いながらレイチェルが追いかける。
「解ってないな、お前! この扉の花だから良いんだよ! これを一輪取って、君の心の扉を開けるって……」
「馬鹿か、お前は」
「なんだって!」
「はいはい、そこまで!」
 モニカが鷹を持ったまま割って入る。
「気持ちは解るけど、お兄さん。それってただの泥棒だよ。泥棒さんから花を貰ったって嬉しくないって」
「そうですよ。よそ様から貰ったものより、自分の精一杯をプレゼントされた方が、そのお方も喜ばれますよ」
「うるさい! こんなトコに女二人で来るような奴らに言われたかねえよ!」
「……こいつ、やっちゃっていい? ていうかやっちゃえ」
「あら。困った人ですねえ」
 そう言いながらもレイチェルは鞭を男に巻き付けて動きを封じる。そこにすぐさま鷹が舞い降りて、その頭を突っついた。
「え? あ、ちょ、ま……ぎゃー!」
「……くっ」
 その様子を見て職人が笑った。オブジェクトから、白い薔薇を二つ、抜き取った。
「礼だ。ありがとうな」
 二人の髪に挿す。レイチェルが微笑んだ。
「それならわたくしは、お礼に歌を歌いましょう」

●花びらまつり
 レイチェルの歌が会場に流れている。
「あ、花びら……! うわあ、凄く綺麗」
 ルナが顔を上げた。ひらひらと舞い降りる花びらに目を細める。
「ああ。綺麗だな。ほら、もっとこっち」
 腕を組んでいたケイが、さりげなくぶつかりそうになったルナの腕を引いて避けさせてくれる。ルナは頷いた。
「ありがと」
「大丈夫、俺がついてるぜっ」
 にっこりと笑うケイ。
「おうおう、兄ちゃん。見せつけてくれるじゃねえか!」
 明らかに酔っぱらった風な男が声をかける。
「可愛い女の子つれて、いいな。こっちによこせよ」
 酔っぱらいがルナの手を引っ張る。ルナが杖を構えた。それを軽くケイは片手で制して、槍で酔っぱらいをぶん殴った。
「後悔すんなよぉ? 警備やガイドもいいが、物足りなくてよ!」
「警備員です。これ以上するなら容赦はしませんよ」
 ものすごく嬉しそうに笑うケイ。おいでおいで。と、手招きまでしている。ルナもそう付け足した。その様子に、酔いが醒めた様子で男は腕章を見て、
「お……っ、覚えてろ!」
 慌てて背を向けて逃げ出した。
「何だ、つまらん」
 ケイが溜息をつく。ルナは思わず吹き出して笑った。
「皆さんっ!」
 花びら祭の対策委員長が走ってくる。
「ありがとうございましたっ! 皆さんのおかげで、今回は苦情とか、そういうの、殆ど無くて。ありがとうございます!」
「そりゃあよかった! ところで、彼氏いる?」
 早速口説くケイに、ルナがくつくつと笑っている。私もホントの恋人ときたかった。等と呟きが聞こえてきていた。委員長はちょっと顔を赤くして、
「……いないんです。けれど、一緒に見たいな、と思う人はいるんですけれどね」
「そっか。それは残念。あんたにも、幸運をな」
 花びらをかけると、彼女は深々と頭を下げた。

 花びらがどんどん降ってくる。
 祭はもうクライマックスだ。楽しげに笑い合う恋人達。行き交う親子連れ。露店の人々の威勢の良い声が響く。
 今年の花びら祭は、奇跡的に被害届が0という形で幕を下ろしたのだった……。
マスター:彩庵
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参加者:10人
作成日:2010/02/16
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  • 楽しい2 
  • ハートフル10 
  • ロマンティック1 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし