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ランスブルグ強襲:繋がる世界

<オープニング>

●代理者の言
「ランスブルグの危機を救って頂き、感謝の言葉も無い」
 山斬列槍ランスブルグへと辿り着いたエンドブレイカー達。
 彼らの前に現れたのは、ランスブルグ現女王・ジョナ1世その人だった。
 彼女が語ったのは、勇者アリッサムの暗躍。それを防げずに、エリクシルをアリッサムに奪われてしまったという事の顛末だった。平穏な日々は脆くも崩され、終わりの時さえ覚悟した者もいた。
 しかし、その窮地を救ってくれたのが、今まさに他国から駆け付けてくれた同胞たる彼らだった。
 感謝の言葉も無い。
 ジョナ1世は新たな同胞達を称え、続けて、これから成すべき事を口にした。
「民のためにも、ランスブルグの平和は必ず取り戻すつもりだ」
 彼女は先程、世界の瞳の声を聞いたという。
 ハンクス長老から話も聞き、ランスブルグに到着したばかりの同胞――別の都市からやって来たエンドブレイカー達が、どれ程の苦難を越え、強大な敵を戦ってきたかを既に知っていた。
 聞き及んだ限りでも、彼らが越えてきたのは険しき道。
 ランスブルグの事件だけで汲々としていた自分達には、想像もつかない困難であったに違いない。
「皆様方こそ、真の勇者であるのだろう」
 ならばと、女王は息を深く吸い、彼らに対して宣誓した。
「私はランスブルグの女王である前に、一人の代理者として」
 共に、この世界を救う手となろう。

「エンドブレイカーと共に、この世界を救う手助けをさせて頂きたい」

●新たな繋がり
 天空を貫くが如き巨大な槍。
 噂にだけ聞いていたその光景を前にして、紅鉤のデモニスタ・プリマ(cn0016)はくるりと振り返り、少々高揚した声で集まってくれた仲間達へと語り掛けた。
「ランスブルグに到着デス♪ と、喜びたいところデスガ」
 喜ぶにはまだ早い。
 ワームパイプ・ホロウから転移し、山斬烈槍ランスブルグへ辿り着いたエンドブレイカー達。
 彼らが駆け付けた事により、ランスブルグの最大の危機は阻止出来たと言えるだろう。アリッサムにエリクシルは奪われたが、ランスブルグのエンドブレイカー達を救出する事が出来たのだ。
 しかし、数々の問題は山積したままだった。
 今も此処、ランスブルグ第三階層では、勝利の余韻に浸り、暴れ続けているマスカレイドがいる。
 このまま奴らを放置しておく訳にはいかない。
「という訳デス。ランスブルグを解放するためにも、マスカレイドをやっつけマショウ!」
 プリマが見つけた敵は、新生黒鉄兵団百騎長サジュリア配下の一団だ。
 第三階層にある、とある街の通りを重点的に巡回しているらしい。街の住人達は息をひそめて、彼らに見つからないように隠れたままだ。
 数は五人。天誓騎士が三名に、魔想紋章士が二名の構成だ。
「巡回ルートは分かってマスので、アタシと一緒に来て下サイ!」
 一団をこのままにしておけば、住民達に平穏の時は訪れない。
 必ず平和を取り戻す。
 そう言った女王の言葉を、現実のものとする為に、プリマ達が取るべき手段とは。
「それはとっても簡単デスヨ♪ アタシ達が、見つかってあげればいいのデス」
 巡回中の一団にとって、突然現れたエンドブレイカー達は、間違いなく捨て置けない相手だろう。奴らが巡回する最大の目的は、第三層にいるエンドブレイカーを殺す事なのだ。よってこちらから現れてしまえば住人達に目が向く筈もなく、奴らは襲いかかってくるはずだ。
 そうなれば、後は倒してしまえば良い。
 既に第一と第二階層は陥落している。
 ランスブルグ解放の為に、まずは何としてでも第三階層を死守しなければならない。
「あっちの勝利の余韻なんて、吹き飛ばしちゃいマショウ♪」
 辿り着いたこの場所は、新たな扉が開かれた、ようやく繋がった世界なのだから。


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参加者
毒芹の粮・ラグランジュ(c02051)
天蓋の屍狗・ライヒェ(c02963)
クリップラー・ビビアーノ(c04157)
黒焔・グレン(c09850)
春の詩篇・マリア(c12111)
独彩卿・ヴィサージュ(c13941)
紅舞・アヤメ(c26331)

NPC:紅鉤のデモニスタ・プリマ(cn0016)

<リプレイ>

●天槍の都市
 赤褐色の煉瓦の塀。そこに残っているのは、斬撃の跡や、乾いて間も無い血痕だった。
 夜になれば、鏡のように日常を映し出すであろう窓硝子にもヒビが入り、埃にまみれて曇っている。
 荒れ果てているという点において言うならば、今や大通りも裏路地も大差はない。
 平穏な頃の儘であるのは、顔を上に向けた時、映り込む空の色だけだった。

 山斬列槍ランスブルグ。その象徴たる巨大な槍は変わらずに、空を背にしてそこにある。
「こんな形で踏み入る事になったのは、少し残念だけれど……」
 春の詩篇・マリア(c12111)は、荒れ果てた街を見た悲しみを堪えるように、てのひらに力を込めた。憧れの都を訪れて、彼女が改めて、胸に抱いた思いがある。それは、この都市の同胞たる者達の無念を思えばこそ、言葉に出来ないと言った毒芹の粮・ラグランジュ(c02051)にとっても同じ思い。
 それをぶつける相手が、間もなく、此処に現れる。
 ワームパイプホロウから転移し、ランスブルグ第三層へと到着したエンドブレイカー達。彼らが身を潜めて待っていたのは、勇者アリッサムを名乗るマスカレイドが退却してもなお、この都市を蹂躙し続けるマスカレイド達。
 ランスブルグは、足掛けとなる第三層は渡さない。
 彼らの反撃の一手は、今まさに、この瞬間始まった。
「皆サン、今デス!」
「その殲滅、請け負ったぜ!」
 紅鉤のデモニスタ・プリマ(cn0016)の声で、一斉に大通りへと飛び出した一同。ラグランジュが強い一声を放ったその先には、剣を持つ三人の騎士と、杖を持つ女性の姿があった。
「な……お前達は――!」
「弱い者いじめが仕事たぁ、格好いい騎士団だなぁオイ!」
 振り切られたのは、ラグランジュの掲げた闇染めの大鎌。旋風と共に攻防の技が放たれ、天誓騎士の一人に直撃した。突然の襲撃に目を見開いた敵の一団。
「お、お前達は例の、奴らの援護に回った新手の――、」
「誠、俗塗れた輩の気疎さよ、」
 しかし敵が刃を抜くより速く、独彩卿・ヴィサージュ(c13941)の気怠げな声が落とされた。男が宙に描いた紋は、禍々しくも恐ろしい狂王アニールの章。
「騎士を名乗る等、嗤わせる」
 不遜な笑みを口元に引き、ヴィサージュの鋭い眼光が向けられたのは、同じ術を駆使する女達の元。広がる狂気をも顎で使い、男は獲物となったその者達へ、かの力を解放した。
 声荒げる事すら億劫だが、この場において気負う物等一つもない。
 男は唯、狂王の哄笑と、抑えきれぬ殺戮の衝動を、敵へと差し向け笑みを浮かべた。
「くっ……!」
「ヴィサージュさん、今日は格好良い処たくさん見せてね!」
 上々。そう感じた瞬間、ヴィサージュはふいに肩を竦め、ちらりと視線を横へと向けた。隣には、戦場とは思えぬ程無邪気に笑み、目を輝かせた紅舞・アヤメ(c26331)の姿。
「嗚呼――…傍らに在る、」
 奇縁の悪友と、アヤメを称する男は思う。己が肩が竦んだのは、彼女が緊迫感に欠けた、天真爛漫な良家の子女であるからではない。無邪気な笑みとは裏腹に、戦場で狂喜を露わに舞い踊る、魔性の類いであると知っているからだ。
「跳ね返りの、雄々しき小娘には劣ろうがなァ」
「さあさ、楽しい闘争を始めましょ。アヤメの眼を見て頂戴!」
 開眼したのは悪魔の力が宿った眼。禍々しい光と共に、紫水晶の瞳が紋章士の姿を捉えていた。
 如何に壊し甲斐があろうと、凝視は一瞬。
 命を砕かんと、アヤメの睨みが強さを増した。
 この二手を与えた事で、形勢は思惑通り、エンドブレイカー達の方へ傾いた。
 敵は『新生黒鉄兵団百騎長サジュリア』の配下。騎長に忠実な部隊のひとつ。
 奴らの構成は天誓騎士の男が三名、魔想紋章士の女が二名。そして今回、一同が優先して対処すると決めたのは、魔想紋章士の二人だった。
 陣形を崩す黒鉄兵団の紋章に、呪縛を祓う勇騎士の紋章。加えて騎士達の傷を癒す、施療院の紋章。勇騎士の紋章を駆使する彼女達を、牽制だけで後回しにするのは、少々手間が掛かっただろう。ならば回復の術を、暴走を付与する事で奪い、早々に倒してしまえば良い。
 仮に暴走を祓われたところで、再び付与すれば同じこと。何より、こちらの陣形を崩す手段――黒鉄兵団の紋章を使わせない為にも、勇騎士の紋章を誘発するのは好都合であった。
 そして、付与した呪縛の恩恵は、それだけに留まらない。
 後方からの援護をが見込めぬ現状で、三人の天誓騎士達も思う様には戦えなかった。
「お前達が、第三層に侵入したエンドブレイカーか!」
「ならば逃さん! サジュリア様の命により、貴様らは俺達が――!」
 勇む男達の姿を映し、天蓋の屍狗・ライヒェ(c02963)が浅い溜息を落とす。
 彼の狙いは、敵の前線にあらず。その奥へと向けられた。
「わざわざ逃げた獲物のほうから狩られにと御所望か、」
 青い双眸が射抜いたのは、杖持ちの女のひとり。砂塵の舞い散る戦場であっても、ライヒェは狙うべき相手を、決して見誤りはしなかった。
「――ごくろうなこった」
 静謐の光彩を大地に撓らせた瞬間、音は弾け、すぐさま溶けた。
 瞬間、紋章士の足元に落とされたのは、揺らめく水紋。そして、波を招いたライヒェの星霊の影だ。
「っあああ!」
 鮫の牙が敵を襲い、その儘噛み砕く程に力強く、白の巨体が波を打つ。
 痛みに悶える仲間の隣で、しかし、もう一人の紋章士は笑みを浮かべていた。
「随分やるじゃない……でも、このまま終わると思って?」
 その言葉と共に動いたのは、女ではなく前に立つ騎士達だ。
 勢いよく横に手を振り、腕元に竜巻を生み出しながら直進する二人の男。その渦が接近した瞬間、ラグランジュとクリップラー・ビビアーノ(c04157)の身体に、複数の傷が残された。
「『勇者』等と呼ばれようが、所詮は貴様らなど!」
「は、俺が勇者ってガラかよ。せいぜい文句を言いながら勇者を助けるアンチヒーローの役だぜ」
 手応えを感じた気がした騎士と、堪えた様子のみえない男。どちらが確かなものであるかは、次の一撃が物語る事となる。
「覚悟はいいか。シバキの時間の始まりだぜ」
 不敵な声と共に、腰を低く落としたビビアーノ。しかしそれも束の間の構えに過ぎなかった。
「――なっ!」
 放たれたのは敵の腕を払うどころか、砕く程に強烈な一蹴。敵が詰めた間合いからその儘、天高く上げられた脚が、重力に逆らう事無く騎士の背中へと落とされた。
「がああっ!!」
 思わず地に伏す形となった騎士の姿に、ビビアーノの脳裏に浮かんだもの。それは兼ねてより、彼が騎士に抱いた思いだった。
 権力を笠に着て、威を張る者。あまつさえ、それを仕事だとばかりに振舞う騎士は、少なからずいるものだ。それが偏見である事も承知の上で、性分であると彼は言う。
「挙句マスカレイドになりゃ、なお始末が終えねえ」
 しかしその言葉は、これまでを見てきたからこそのものだった。
「ッチ、言わせておけば!」
 だからこそ、騎士は言葉に牙をむき出し、眼前の男に刃を振るった。
 キンと激しいつばぜりの音。しかし力は拮抗する事無く、銀剣の前に弾かれた。
「――これが、同じ天誓騎士とはな」
 黒焔・グレン(c09850)が憤りを言葉にするには、その一撃は充分過ぎた。
 護るべき者に刃を振るう者。曲がりなりにも、奴らは伝説と謳われた兵の名を語ったのだ。
 それがこうも、味気ない。
 挑発して、騎士の気を此方に引き寄せる。そのつもりではあったが、
「来ないのか? ……は、私達が恐ろしいのか?」
 もう少し、挑発し甲斐があっても良いだろうに。
 故郷を脅かした敵の姿は、元より在ったグレンの冷静さに、鋭く、冷やかな気を纏わせた。
「貴様等のどこが、その名を語るに相応しい所業か」
 銀の一振りが十字を描き、名折れの騎士を切り裂いてゆく。
 炎を纏ったもう一対を、グレンは抜かない。その剣の熱を知らしめる必要は、
「貴様等に、黒鉄兵団の名を語る資格など――、」
 どこにも在りはしないのだから。
「ッ、サジュリア様の名を穢すような事、そう言わせる訳にはいかないわ!」
 防戦一方の前衛の姿に、次第に紋章士の声に、焦りの色が滲んでいった。
 女が描いたのは、狂王の呪縛をも払う光の斬撃。光を浴びたグレンは陣形を乱す事無く攻撃を耐え、鋭い眼光で術者を見た。
「――貴方達こそ、よくも私達相手に、その紋章が使えたものね……!」
 堪らずに声を上げたのは、マリアだった。
 その紋章は、勇気に溢れ、絆と共に戦った、偉大なる勇騎士『ジョナ』のもの。
 マリアの脳裏で重なったのは、この地を守る為に戦った騎士の姿と、悲しみを堪えて誓いを述べた女王の姿。
 それは長き時を経て、今もなおこの都市を守り続ける、気高き騎士の紋章だ。
「街を、人々を脅かす貴方達が、振り翳していい力じゃない」
 紅茶色の瞳に、確かな思いと、強さを込めて。
 春躑躅の髪が、紋章から溢れた気流に揺れた。
「胸に刻みなさい――」
 狂王の呪力と共に、凛とした声が戦場にこだまする。
 この反撃は、第三層に及ぶだけで、終わりはしない。
 楽しみと学識に溢れた鉄壁の街も、いにしえより在る王の地も、必ず取り戻してみせる。
「私達が来たからには、仮面憑きをのさばらせはしないわ」
 それは世界を繋ぎ、救う手となると彼らに誓った、女王ジョナの願いでもあるのだから。

●始まり
「俺のノソリンは凶暴だぜぇ!」
 なぁ〜んと鳴く星霊の背で、ラグランジュがその頭をわしゃりと撫でた。
 同時に、マリアが描いた奇術師の紋章が魔法の手を呼び、その力を奪ってゆく。
「もはや回復手はいないもの、貴方達だけよ」
 言葉の通り、既に紋章士の二人は倒れ、残るは力を削がれた三人の騎士だけだった。
 前衛で騎士を抑え続けたラグランジュ、ビビアーノ、グレンの傷は、ライヒェの星霊オラトリオと、ヴィサージュの施療院の紋章、アヤメの魔法円により癒され、前線は維持された。中衛ではライヒェやマリアに遅れをとらぬ様にと、プリマも懸命に血の猟犬を放っている。
 陣形を三列にし、回復手を後方に置いた事で、回復も滞る事無く供給された。
 しかし敵の斬撃もまた、軽いと言い捨てられる程軽くはない。
 傷は重なる度に痛みを増し、身体に重荷となって圧し掛かるものだ。
 突進したい心をもって、仮面を睨むララグランジュ。
「アタシ達も、オジサマと一緒に頑張りマスヨ♪」
 全ては守る者の為、死力を尽くすと決めている。加えて、後ろからの声援に後押しされれば、
「おじさんは絶対に倒れられねぇな!」
 ひとつ後ろにウインクを残して、敵へは一層の剣幕を向けるのだ。
 残るは三人。包囲陣を展開しながら、最初の絶叫は二つ、グレンによって上げられた。
 大地と水平を記した剣戟が三度重なり、敵の影を二つ、ヒビ割れた大地へと薙ぎ払ってゆく。
「――っがああっ!」
「己のした事を悔いながら、天槍の下で果てるが良い」
 餞の言葉も厳しく、剣の血を拭う替わりに、グレンは剣先を斜めに振り下ろした。
 残るは一人。幕を下ろす役目は、ビビアーノの技に托された。
 無事にやり過ごせる筈が無い。その瞬間が迫る中、紛い者同然の黒鉄兵団を名乗った男は、直進する寸前の男にこう言った。
「お、お前達は何故、この都市の為に戦う!?」
 それは、いわゆる愚問である。
 此処が長らく離れたきりの故郷である者。学問を学ぶ内に憧れの地となった者。中には先の戦いの中で、異国の地より参じた彼らと、共に戦うと決起したばかりの者もいるだろう。
 戦う理由など、人の数だけあるはずだ。
 しかし、ビビアーノは強く大地を踏みしめ、宙に身を委ねた瞬間、
「この都市の未来も気がかりだが――」
 それより、気になるものがあると言い、騎士を蹴りあげ、再び軽やかに地に着いた。
 戦いの中で乱れた髪に手を添え、軽く指先で整えながら、男は言う。
「ここに美味い酒を飲ませてくれる酒場があるかどうかだ」
 その減らず口が聞こえたかどうか、仮面の騎士は答えぬ儘に沈黙した。
「騎士共から情報をとの算段であったが……まァ、仕方或るまい」
 砕けた仮面を一目見て、ヴィサージュが感慨無さげな声色でそう零した。
 そうとなれば、後は早々に事を済ませ、仲間達の元へ帰るだけ。
 周囲に追撃の影は無く、多少の時間であれば問題ない。アヤメは敵であった遺体に刻印を刻み、ひとつ、またひとつと跡形も無く消滅させた。
「よし、終わったよ――ん?」
 ふと気づくと、頭を軽く叩く様に撫でていたのはヴィサージュの手だ。
「そなたの舞い、悪くはなかった」
「ふふ、有難う。貴方も紋章も、凄く格好良かったわ」
 今し方まで戦場であった街並みの中で、他愛ないやり取りを交わし合う二人の姿。それこそ、この都市にもあったであろう、奪われてしまった日常の姿の断片だった。
 今日の戦いは、それを取り戻す為の、新たな都市での第一歩。
 たわまぬ決意と共に、踏み出した者もいるだろう。
 そしてまた、流れの儘に辿り着き、今此処に立つ者もいる。
(「正直、此処にゃ戻る気なんざなかったしよ」)
 思うところは多々あれど、それでも、思い入れが無いと言えば嘘になる。
 先の強襲で抱いた靄が払えぬ儘でも、今は目の前の為せることを、為すまでのこと。ようやく静けさを取り戻した道に佇み、ライヒェは黙したまま天を見上げた。

 天空を貫くが如き巨大な槍が見える。
 山斬列槍ランスブルグでは、あの天槍をも覆う巨大な薔薇が、開花の時を迎えたばかりだ。
 しかし、女王騎士を名乗る仮面の女、はひとかけらの宝石を奪い消え去る時、こう言った。
 ――ランスブルグには、また再び収穫の時が訪れる。
 その時が訪れるのがいつなのか。彼らには分からない。
 だが、やるべき事は分かっていた。
 第三層だけではなく、マスカレイドに奪われた第一、第二層も取り戻す。街を、人々を脅かす仮面を倒し、壊れた街が復興する手助けとなる事。それらは積み重ねた経験のように、その一歩一歩が道となり、やがては、あるべき場所へと繋がってゆくだろう。
 天槍を仰ぎ、目を瞑っていたグレンがゆっくりと瞼を開けた。マリアもまた同じように、その瞳に空と天槍の姿を映している。
 辿り着いた都市との出会いは、彼女が夢に描いていた姿でとはいかなかった。
 人々は傷付き、街は荒れ、絶望は確かに注がれたのだろう。
 それでも、まだ終わってはいない。悲劇の終焉があるならば、仮面と共に砕けばいい。
「漸く繋がったのだもの、マスカレイドには渡さないわ」
 諦める事も、屈する事も、望みはしない。
 ここは新たな扉が開かれたばかりの、ようやく繋げられた世界なのだから。



マスター:彩取 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2013/07/04
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  • カッコいい11 
冒険結果:成功!
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  • なし
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