ステータス画面

石壁の街解放戦:希望をその手に掴むため

<オープニング>

 三日月湖のほとりに拠点を築くマスカレイドの集団があった。
 どちらかというと見目麗しいと言われる部類に入る者達だろう。
 新生黒鉄兵団警邏隊長セドリックを主とした彼等は湖の拠点を守るという目的があるのだろう。
 所々、行き交うマスカレイドの言葉の端々から、
 こんな声が漏れ聞こえてきていた。

「アリッサム様が帰還するまで、この拠点を必ず死守するのだ」
「我々だけが、アリッサム様から直接命令を受けたのだ」
「この任務を全うしたならば、第2階層でしかるべき地位につける事だろう」
「もしかしたら、アリッサム様のおそばに侍る事ができるかもしれない」
「気を緩めるなっ。全ては任務を全うしてからだぞ」
「周辺の警戒もおこたるな!」
「エンドブレイカーの襲撃があるかもしれないぞっ、気をつけろ」

 特別な任務だ、と言うような高揚感と、
 何時エンドブレイカーが攻めてくるか解らないという緊張感。
 三日月湖の拠点はそんな奇妙な熱気を帯びて、騒然としているのであった……。

「先ずは、ランスブルグの強襲作戦はお疲れさまでした」
 ベル・エンキアンサス(cn0022)はそう言って、冷めた珈琲を一口啜った。みんな無事で何よりだったよ、と、相変わらず少々感情の伺えない声音で一つ付け足してから、
「みんなのお陰で、強襲作戦は無事勝利に終わったよね。それに続いて、ランスブルグの第三階層、石壁の街に残るマスカレイドの拠点を一斉に制圧する作戦が開始されたんだ」
 確か……ベルは指折り数える。あれもこれも。結構な数になるよね。と小さく呟いた後で、
「かなり、戦力がいることになるよね。随分手広くやるみたいだから、大変だと思うけど、成功すればランスブルグの人、凄く喜ぶと思うんだ」
 それは追うきな希望になるだろう。とベルは厳かな口調で言って、
「……」
 ちょっと照れた。軽く咳払いをして、
「えっと、今回僕が教えるのは三日月湖の拠点の方なんだ。そこを攻めて、マスカレイド達を蹴散らしちゃって欲しい。複数のチームでの攻略作戦になるから、気を付けてね」
 名前は綺麗な湖だけど、残念ながらいるのは男のマスカレイドばっかだよ。とベルはちょっとつまらなさそうに冷めた珈琲を啜った後で、
「ま、兎に角チームでの攻略作戦になるみたいだから、色々工夫したらかなり手広くできると思う。勿論無理しないのが一番だけど、無理しない程度に頑張ってくれると嬉しいよ」
 尚、と彼は言う。少々眉根を寄せて、難しそうな顔をした。
「三日月湖には新生黒鉄兵団警邏隊長セドリックとその配下の、なにやら見目麗しい”いけめん”集団が拠点を築いて其処を守ってるんだって」
 顔見たこと無いから知らないけど絶対僕の方が美少年だろうにね。と、無意味に力の入った主張をベルはした後で、
「彼等は、アリッサムの影武者に命じられて其処を守ってるみたい。そういうわけで士気も上がってるし、拠点の警戒はかなり厳しいかもしれない。実力の方は、他の新生黒鉄兵団のマスカレイドよりも少し低めだから、巧く作戦を考えて戦力を分散すれば勝てると思う。ちょっと純粋に突撃するより、考えなきゃならないことが多いかも知れないね。けど……」
 テーブルに頬杖を着いて目を眇める。何かを考えるような間があった。ベルは面白くなさそうに一度、鼻を鳴らす。
「未確認情報は、はっきりしないからあんまり言いたくないんだけど」
 そう、前置きをした後で、
「眠る光の歌声・リィンティア(c05773)お姉さんが聞いた話によると、新生黒鉄兵団に三日月湖に拠点を築くように命じたアリッサムの影武者が、フレイムソードの天誓騎士・ティートを連れ去ったらしい……。んだ」
 何処まで正しいかは解らないけど、セドリックなら何か知ってるかもしれないね。と、ベルは言った後で、
「大規模な作戦になる。とても、大変なことになるかもしれないけれど……」
 うん、と彼は小さく呟く。
「どうか、頑張って行ってきてね。そしてちゃんと、帰ってきてくれると嬉しいよ。はっきりしたことが解らなくて、申し訳ないんだけど……さ。……ああ」
 ぽん、と彼は手を打った。思い出したかのように、
「勿論、何か面白い情報を掴んで帰ってくるとか、あれば良いんだけどさ。でも大事なのは、みんながちゃんと揃って帰ってくることだから。僕はみんなの無事をお星様にお祈り申し上げておくから、ちゃんと帰ってきてね」
 なんて、冗談なのか本気なのか少々解りづらい無表情で彼は頷く。
「みんなだったら、きっと大丈夫だと思うから」
 だから気を付けてと、そう言ってベルは話を締めくくった。


マスターからのコメントを見る
参加者
みんなの恋人・アデルバート(c01702)
花影・ミーアシャム(c01990)
一刃の星・レイジ(c02370)
九龍公・シーヴァー(c03034)
弓の忍者・ライヤー(c10003)
反転・クラウス(c12274)
武豪ドラドの継承者・ガル(c26044)
紫煙の錬金術士・アリサ(c26104)

<リプレイ>

●潜入
 三日月湖のマスカレイドの拠点、その前へエンドブレイカー達は布陣していた。
 どうやら拠点の外で陽動・挑発を行った上で、手薄になった拠点に潜入する作戦のようであった。
 そして、九龍公・シーヴァー(c03034)達もまた、他のエンドブレイカー達の突入に合わせる予定だったので、他の部隊の仲間達が動くタイミングを見計らっていたのだが……。
「ふむ……。全く、動きませんね」
 シーヴァーのぽつりと、思案するような呟きに、武豪ドラドの継承者・ガル(c26044)も眼を細めた。
「ん……。動き、無いよー」
 ホークアイで確認しても解る。砦付近には全く動きがない。一刃の星・レイジ(c02370)が腕を組む。怪訝そうな声音で、
「まあ籠城……って、事だろうからね」
 わざわざ拠点から出て行く必要もないんだろうというレイジの言葉に、弓の忍者・ライヤー(c10003)も拠点の方視線を向けた。
「けれども普通は、少しくらいは気になるものでしょうけれど……」
 全くと言っていいほど、静か。反転・クラウス(c12274)が腕を組み、
「マスカレイド達は『砦の守護』を役割としてるから、出てこないんだろうな。他の場所が全部制圧されても、あいつらにとっては良いんだろ。……と、ちょっと真面目な顔して言ってみる」
 最後の一言は緊張を誤魔化すようでもあった。みんなの恋人・アデルバート(c01702)が両手を組んで小さく頷く。
「綺麗なおねーさんとの約束が最優先なんだろうな。お姉さんを優先する考え方は嫌いじゃないぜ。……マスカレイドじゃなきゃ、な」
 恐らく。アデルバートは思う。他は捨て置いても湖の拠点を護りさえすればアリッサムからの命令を守ったことになる。だからどのようなことをしても、そこから出てこないんだろう。……何かしら、向こうにとって大事なものがあるに違いない。
「信念を持って守ることは嫌いじゃない。まあ、イケメンぞろいというが、俺のほうが絶対にイケメンだけどな」
「はっはっは。イケメン勝負なら俺達が圧勝だろ」
 思わずクラウスも深々と頷きそう答えた。そこに、
「”いけめん”軍団とか。詮彼等は"自称"でしょう? そういうのにはロクなのがいないわ。そこまでして、ここに一体どんな意味があるんでしょうね。……わくわくするわ。一体何が待っているのか」
 紫煙の錬金術士・アリサ(c26104)がメイガスに騎乗したまま、己の胸に手をやった。興奮を隠しきれぬ様子であった。花影・ミーアシャム(c01990)がふき出す。
「や……。そうだな。ここにいるみんなの方がいけめんだとも。兎に角、笑ってる場いいじゃなかったな。兎に角、この拠点以外の第3階層を全て失ったとしても、この拠点を守護する意味があるのだろうな……。それにしても、さて」
 どうしたものかと、呟くと同時にあっとガルが声を上げた。
「他のチーム、攻撃開始したみたい、だよ」
 正面から突破するしかないと言うことなのだろう。動き出す部隊に一同は顔を見合わせる。
「それじゃあ……行こう!」
 レイジの言葉に皆は頷く。制圧を始める仲間達に紛れるように走り出した。

●分かれ道
「はっ、どうせお前らが信奉してるアリッサム様とかやらもどこかに逃げだしたんだろ。気に入った男でも連れ出してな」
「戯れ言に耳を貸すな! アリッサム様こそが全て正しい!」
 レイジの挑発するような声にも即座に反応が返る。……士気は高い。そして何か、確固たる自信のようなものがあった。正面扉を突破して奥に進むこと数刻。そのことが痛いほど伝わってきていた。
「この状態で、情報を引き出すのは難しいか……。なら」
 レイジは軽く剣を旋回させ襲いかかるマスカレイドを切り伏せた。ならば先に進むまでだと言うようであった。
「そっか……。じゃあ、手加減はしない……。急ごう!」
 今は無理でも、もっと地位のある敵からなら何か得るものもあるかもしれないと、ミーアシャムは言う。
「……出来れば、ここでティートの情報も得ておきたいな。助けたい」
 そんな彼女の呟きに、レイジも小さく頷いた。
「ああ……。俺達が到着したとき、表に立って凄いがんばっていたからな。……苦しかっただろうに。だから、こそ」
 同じエンドブレイカーとして、誇りに思いたいと。其処までは口に出さずにレイジは剣を握り込む。その声を後押しするように、ガルがメイガスを駆った。
「助けられるものは何だって助けるよ! そーれ、でーすとろーい!!」
 メイガスから魔獣化された尾が踊った。弓を手に駆けていたライヤーがふっと目を眇める。
「前方、誰か居るねぇ」
 気負いのない口調。しかしその手は様々な自体を想定して即座に弓を引き絞っていた。待って。とアリサは声を上げる。メイガスに騎乗したまま、窺うような間の後に、
「……人よ。先を進んでいたエンドブレイカーの仲間ね」
「あぁ、何かあった……のか?」
 クラウスが緊張気味にそう言って近寄った。近寄ればその理由がわかった。……道が、二つに分かれているのだ。
 一つは地下へと向かう階段だった。恐らくは拠点と同時期に作られたのであろう。奥から冷たい風が吹いてきて、一同の頬を撫でた。
 誰かが言った。どうすると。
「さて、セドリックがいるとすれば、この先でしょうか? あるいは、何かもっと重要なものが……」
「さあな。だが、放っておくわけにもいかないだろうさ」
 声をあげたのは別部隊のカイとジョンであった。
 何せ、「何があるかは解らない」。だから、ここは分かれていくしかない。そんな声が上がる中、シーヴァーは腕を組む。そして仲間達を振り返り、
「……如何ですか。ここは私達で、下へと向かいませんか?」
 そう尋ねた。異論は上がらなかった。元より何があるかは解らず、そして誰かが行くしかない。ならば、何処へ向かって何に出会ったとしても、外れだったとしても、恨みっこは無しだ。
「では僕達は、奥へと往こうか」
「そうだな。予定通り最奥を目指すとしようか」
 もう一つの部隊にいるルシエルの問いに、同じ部隊のイスラティルが頷く。
「んーむ。迷ってる時間も惜しいし、そうしよう。お互い頑張ろうな」
 ラスが軽い声をかけてなんとなく話はまとまったようだった。
「決まり……だな。そっちも、気を付けて」
 アデルバートがそう言って手を振る。決まった後は早かった。振り向かずにレイジを先頭に走り出す。階段の奥へと、消えていった。

●水の守り人
 階段は拠点と同時期に作られたもので、言うほど古くはなかった。しかし暫く進むとその様相も変わってくる。
「……あれ。これ……何だ?」
 前を行くレイジが声を上げた。ライヤーが仲間の肩越しに覗き込む。
「石……かなぁ?」
 壊された石の扉のような物が床に散乱していた。注意深くライヤーはその様子を見つめ、
「もしかしてここのマスカレイド達に壊されたのかなぁ?」
「この遺跡こそ、この拠点を死守しようとする理由かもしれないですね」
 シーヴァーも考え込む。そこから先は石の階段となっていた。見た感じ、この拠点よりももっと古い。元々ここにあった遺跡を発掘し、その上に拠点を作ったのではないかと推測するのが妥当であった。
「かも知れないし……何だろうな。食料庫とか? 旨い酒でもあれば良いんだけど」
 クラウスが軽口を叩く。扉を越えるとしっとりとした空気が広がっていて、道の先はまるで地の底にでも通じているようだった。そうねぇなんてアリサはしばし考え込んだ後、
「何か面白い……おっかないおかしなものが出てくれば良いんだけれど」
「おかしなものか! んー……。」
 ガルが考え込む。何があったら楽しいかなぁ。
 ミーアシャムが思わず笑ったところで、
「……ついたぜ」
 アデルバートの緊張した声が響いた。警戒するように眼を細め前方を見る。神殿……の、様なものだろう。そういった造りの建物の中、目に飛び込んできたのは凶王アニールの紋章だった。
「お……おおおおおー?」
 ガルが駆け出そう、として行っていいかと背後を振り返る。シーヴァーは頷いた。
「少し注意しましょう。……あれは、やはり狂王アニールの?」
「そうね……。あんな風だったと思うわ。でも、あれは?」
 アリサが指を指す。凶王アニールの紋章は、何か別の複数の紋章で囲われていた。それに、紋章の中心には何か石碑のようなものも見える。
 ライヤーが不意に、水、と呟いた。
「が、流れてるねぇ」
「あー。三日月湖の水か?」
 クラウスが化し、と頭を掻いた。ミーアシャムが少しの沈黙の後、
「凶王アニールの紋章……と言うことは、アニールの遺跡なのかな。どうにも違う、印象を受けるのだけれど」
「違う……かしら?」
 アリサの問いかけに、ミーアシャムは頷く。あくまで印象だけど、と彼女は言うと、クラウスは難しい顔をした後、
「んじゃ……アニールの力を弱めるため、とか?」
「あぁ。確かにあの石碑も、何か突き刺してるみたいだから」
 レイジも得心がいったと呟いた。成る程とシーヴァーが納得したようで、
「アクエリオでは、魔王ゼルデギロスを封じる為に、水が使われていました。ならば、この神殿の水も同じ意図なのかもしれません」
「あ、何かそれだと凄くよく解るよー! じゃあこれは」
「何かしらね。見ているだけじゃあ、何も起こらないみたいだけれど」
 触っちゃ駄目かなぁ、触ってみたいなぁ、とガルが言うとほぼ同時に、アリサがふらりとアニールの紋章に触れた。どうなるのかしらと呟いたその瞬間、

 水が騒いだ。
 波打ち水面が盛り上がり何かの形を為していく。
 水で象られたそれはアンデッドの姿に似ていた。そしてその身には、見慣れた忌々しい仮面が宿っている。

「マスカレイド……! 神殿の守護者か?」
 アデルバートがすかさずアイスレイピアを構えた。モチーフの赤い薔薇が水面に映り踊っている。
 彼等が声を上げると同時に、一斉にマスカレイド達もまた侵入者にの方を向き、
「……来るよ!」
 ガルの声と共に、戦闘が開始された。

「そこだ! 思ったほどじゃないね!」
 レイジが空中から輝く剣を翻す。水音が跳ねてそのイマージュの体が揺らいだ。形を失って崩れ落ちる。
「右、避けて!」
 息をつく間もなく、ミーアシャムの声が響く。仲間達の間を縫う様に、走るアンデッドの間から火柱が上がった。
「やれやれ、相手がイマージュというのは……些か、手ごたえがないねぇ」
 炎の間をくぐる様に、ライヤーが矢を射る。炎と矢がイマージュに突き刺さり崩れ落ちた。
「イマージュ? アンデッド? どちらなのかしっかり調べたいところだけれど……」
 アリサがフラスコから赤い蠍を作り出す。それは稲妻と化して残るイマージュの体を打ち抜いた。同時にガルがメイガスの腕を魔獣の腕に変換させる。
「私の必殺、ぐらっぷるー!」
 打たれたイマージュを握り潰す。水が溢れて弾け、零れるようにしてそれは消え去った。メイガスの中からガルは目を眇める。
「どちらかっていうと、イマージュみたい?」
 死骸が残らない。もう少し何か分かればと、ガルが足を踏み出したところで、
「危ない!」
 イマージュの剣が走った。とっさにアデルバートも剣を走らせそれを弾く。
「悪いけど、仲間達には……傷一つ、負わせたりはしないぜ!」
 そのまま舞い散る薔薇と共に剣戟で切り裂く。やはりそれでとどめを刺しても形を失い崩れ落ちる様にシーヴァーはしばし考え込む。
「どうします? 倒してしまっても……構いませんか?」
 その様子にクラウスが伺うよう尋ねた。星霊たちを召喚し、戦闘態勢に入った口調でただ静かに分析するように敵を見据えている。先ほどまで彼の周囲を覆っていた緊張の気配は今や完全に消え去っていた。敵は残る一体。
「……倒しましょう。あれに話が通じるとも、捕獲できるとも思えません。おそらくは紋章に近づいたものを倒すための罠なのでしょう」
 シーヴァーの言葉にクラウスはちらりと彼を見る。シーヴァーが頷いて走り出したので、クラウスも前方を見据えた。
 主の意向を察したかのように、星霊のヒュプノスが走る。羊毛に包まれそれは拒むように剣を振り上げた。
「させないぜ!」
 しかしその剣をアデルバートのサーベル状の炎剣が阻む。
「こっちも、忘れて貰っては困るな!」
 動きを止められたイマージュを、レイジが上空から舞うように斬りつける。それは剣と相まって、流れ星のように輝いた。
「このまま……逃がさない!」
 ミーアシャムの炎が最後の一体を捉えた。その間にシーヴァーは滑るようにそれに近付き、
「逃げても良いぞ。尤も……逃げられるものならな」
 トンファーを旋回させ、叩きつけた。悲鳴は、上がらない。ただ水音を立てて、イマージュは崩れ落ちる。
「これで最後みたいだねぇ」
 ライヤーが落ち着いて周囲を確認し呟いた。ミーアシャムが少々警戒気味に石碑へと向かって近づこうとする。……ところで、
 地響きのようなものが聞こえてきた。一同が顔をあげるとともに、水路の水位が上がり始める。
「駄目だ……、このままここにいると生き埋めになる。脱出しよう!」
 レイジが言った頃には既に水位は彼らの膝の辺りにまで達していた。もう少し。と興味深そうに覗きこむアリサをアデルバートが手を引いて走り出す。一部ブリージングを持つ者もいたが、持たぬ者もいたし、このままとどまれば何が起こるかも解らなかった。
「水の回りが早い……。急ぐぞ!」
 アデルバートの言葉に、一同は走り出す。遺跡を脱出し破壊された石の扉をまたいで階段をかけた。
「やはりあれが……三日月湖の秘密だったんだ」
 ミーアシャムが呟き振り返ると、その頃には遺跡上部まで水位は上がっている。急ぎ階段を上ると最初に仲間と別れた分かれ道が現れた。
「まにあ……った?」
 僅かに息を弾ませながらガルが呟く。そうだねぇ。とライヤーが頷こうとしたその瞬間、
「湖から高潮が来ます! 皆さん、すぐに撤退してください!」
 どこからか声が聞こえてきた。
「休む暇もないな!」
 レイジが即座に反応して走り出す。
「いけるか? 走れないなら、おぶるぜ!」
「大丈夫! なんならボクがおぶってあげるよ!」
 アデルバートの言葉に、ミーアシャムが冗談めかしてそう返す。
「もう少し調べれば、何かわかったかもしれないけれど……」
 残念そうな言葉に、クラウスも頷く。けれども時間的にどうしても無理だったのだ。
「何か手掛かりは……」
「いえ、あるには、あります」
 シーヴァーが小さく呟いた。クラウスは彼の顔を見る。
「女王です。おそらくあの遺跡は相当、古い……。何か曰くがあるはずです。ならば」
「なるほど。ジョナ1世なら、何か知っているかもしれないな……」
 それでも今は脱出が優先だ。迫りくる水から逃れるために、一同は急いでその場を後にする。
 何か計り知れない謎が、その奥底に眠っていることを感じながら……。



マスター:ふじもりみきや 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2013/07/25
  • 得票数:
  • カッコいい10 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。