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三日月湖の戦い:波紋の担い手

<オープニング>

●波紋となりて
「おかえり……!」
 二つ夜のデモニスタ・ニヤ(cn0185)はまずそう言うと、集まったエンドブレイカー達を見た。
「石壁の解放戦は勝利に終わったぜ。みんな、ありがとう。お疲れ様。でもってやっぱり、おかえりなさい。それと、駆けつけてくれたみんなはありがと」
 一部のマスカレイドが第2層に逃走しているが、この勝利の結果、第3層は全てマスカレイドから解放されたと言っても過言ではない。
「それに、前の戦い……オレ達が最初に駆けつけた時に起きてた戦いで、行方不明になっちゃった人達も救えたんだ。それとぶん殴れた相手もいるしね」
 天槍騎士団長のヒューバートが救出されたことで、女王軍の強力も得やすくなり、上層への進軍も可能になってきている。
「ただ、戦いの中で「妬む杖ビュレファスト」とかも確認したし、第2層の以降のマスカレイド軍勢は健在でさ。ランスブルグの半ば以上が、マスカレイドの支配下にあるって状況だから、勿論、予断は許されないと思うんだ」
 たぶん、みんなそーだよね? と集まったエンドブレイカー達の目を見ると、ニヤはうん、と1つ頷いて口を開く。
「で、どうだってこのタイミングで、ランスブルグ第2層のマスカレイドの動きが判明したんだ。
 世界の瞳の代理者である女王からの情報では、第2層のマスカレイドの一部、新生黒鉄兵団の主力部隊が、石壁の街解放戦で解放した、三日月湖の遺跡への侵攻を準備してるらしいんだ」
 三日月湖にいた新生黒鉄兵団は、もともとこの遺跡を守ろうとしていたらしいという事は先の解放戦で知られている。そこに、この動きだ。
「どーにもきな臭いよねって話でさ」

 第2層から出陣してくるマスカレイドの軍勢は、勇者アリッサムの影武者を指揮官として、盾の将アーガン、剣の将ルィズティックがそれぞれの軍を率いている。
 また、勇者アリッサムの影武者の傍らには、新生黒鉄兵団の鎧に身を固めた、フレイムソードの天誓騎士・ティートの姿もあるのだという。

「同じようにさ、狂王アニール軍勢にも動きがあるんだ。こっちは、新生黒鉄兵団の動きを妨害しようと動いてる。
 狂王アニールの軍勢は、屍の黒鉄兵団長・ルドグドル率いるアンデッド部隊が主力で、はからずも、新旧の黒鉄兵団が戦場に揃うこと感じになりそう」

 勇者アリッサムの影武者は、三日月湖の遺跡の奪還を目指しており、エンドブレイカーを蹴散らし遺跡を制圧しようとしている。
 後背の狂王アニールの軍勢に対しても警戒はしているようだが、アニールの軍勢に横槍を入れさせない為にも、短期決戦で遺跡の制圧を行おうとしているようだ。

「でで、屍の黒鉄兵団長・ルドグドルの目的も、三日月湖の遺跡だとっぽいんだ。つかたぶんそう。
 ルドグドルの軍勢は、エンドブレイカーが新生黒鉄兵団に勝利するようならば、戦闘終了後の消耗したエンドブレイカーに襲いかかろうとしてるんだよね。
 逆に、新生黒鉄兵団が優勢な場合は、エンドブレイカーとの戦闘中に後背から襲いかかり、新生黒鉄兵団を全滅させてからエンドブレイカーと戦うつもりでね」

 普通に戦えば、新生黒鉄兵団を撃退した後に、屍の黒鉄兵団との連戦となってしまい、厳しい戦いとなってしまう。

「それで、女王さんから、作戦の提案があったんだ。
 女王率いるランスブルグの部隊が、三日月湖の遺跡に陣を張って防御を行う。って」

 当然、劣勢になる為、屍の黒鉄兵団が新生黒鉄兵団に襲いかかり、三つ巴の戦いになる。

「その混乱した戦場に、精鋭のエンドブレイカーが乱入して、マスカレイドの指揮官達を討ち果たすって作戦」

 言い切って、ニヤはエンドブレイカー達を見た。

「もらったのは信頼だよ。信頼だと思う。最小限の被害で、最大限の戦火を期待できる作戦。
 だから、みんなの力が欲しい。全力が欲しい。この作戦に応えるため、女王さんや部隊のみんなの覚悟に応える為に、力を貸して欲しいんだ」

 そんでもって、オレはみんなの力を信じる。とニヤは言った。

「いつもお願いしてばっかでごめん。でも、みんなに頼みたい。でで、みんなも無事に帰って来て欲しいんだ」

 いってらっしゃいを言うから、おかえりを言わせてと1つ言って、ニヤはエンドブレイカー達を見た。
「あと……やっぱこの三日月湖の遺跡、怪しいと思うんだよね。マスカレイド達が他の拠点無視してさ、互いに争ってまで欲しがるなんてそうないと思うし。無事に終わって、おかえりってやったらちょっと探索する必要もあるかもね」

 だからそれをするためにも、みんなに全力で行って、帰って来て欲しい。そう言って、ニヤはエンドブレイカー達を見た。

「気をつけて」


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参加者
白銀の守護聖剣・フェリーナ(c00202)
月の剣に導かれし騎士・ローゼリィ(c00261)
黄金騎士・ハインツ(c00736)
幸せに綻ぶ花の巫女・ミミ(c02229)
一刃の星・レイジ(c02370)
光狩・ラス(c05348)
星舞幻奏・クレア(c12658)
蜂蜜色の・ラディ(c19472)

<リプレイ>

●混乱の戦場
 砂塵が、戦場に舞い上がっていた。剣戟の音は遠く、波のような足音が8人の潜む高台に届く。戦場の気配に星舞幻奏・クレア(c12658)はきゅ、と拳を握った。
 序盤で出撃した、他の班の皆は大丈夫だろうか。
(「死者の魂を冒涜して死者を動かしている狂王アニールは許せない。でも、今私に出来るのはその苦しみを終わらせる事だけ……」)
 クレアは、す、と息を吸い、顔を上げる。眼前には身を隠す岩。その隙間から、多くの敵兵が見えた。
「うわー……。この数はげんなりしそう」
 遠眼鏡で覗きながら、光狩・ラス(c05348)は息を吐く。
 一面、アンデッドの皆様が勢揃いだ。
「これは……崩せてないってことだろうな」
 アニール軍が優勢であるのは間違いない。なにせ、陣が厚い。
 アリッサム軍の戦場はエンドブレイカーの方が優勢に見える。あちらを崩しすぎたということか、こちらの人員が足りないのかーーと、そこまで考えた所で、ラスが息をつけば、黄金騎士・ハインツ(c00736)の視線がこちらに向いた。
「どうかしたのか?」
「あー……忙しくなりそうだと思って」
 道中、書き込んだ地図から見ても、狂王アニール陣営は恐らく無傷だ。
 詳しい情報は、チェンジリングを使っている月の剣に導かれし騎士・ローゼリィ(c00261)と、バルカンソウルを使っている幸せに綻ぶ花の巫女・ミミ(c02229)が調べてきてはくれるだろうが、状況が厳しいのは事実だ。
「厳しい、か」
 劣勢と言い切らない理由は、ハインツにも分かる。
 全体的な戦いで言えば、優勢か。だが、狂王アニールの本陣を狙う8人からすれば、厳しい戦いになる可能性は高い。戦いが始まる前偵察した限り、アニール軍本陣もそうとうな数の兵がいるのは確かだ。
「敵陣の指揮系統とか警戒の感じから考えると、あの辺りが怪しいよな、本陣」
 遠眼鏡を使いながら、一刃の星・レイジ(c02370)は陣を辿っていく。事前にジョナ女王などに話を聞く事はできなかったが、敵陣の警戒具合から、だいたいの目安はつけてある。
 そんな彼の横、白銀の守護聖剣・フェリーナ(c00202)が戦場へと目を向ける。
 敵対する、2つのマスカレイド勢力。次から次へと……まったくもってキリの無い連中だ。
「この遺跡に何があるかは分からんが、まずはこいつらをなんとかせねばな」
 1つ息を吐けば、丁度ローゼリィとミミが戻って来た所だった。
「……戦場は、アニール軍の優勢ね。その所為だと思うけれど、屍の黒鉄兵に動きが出ているわ」
 我先にと、進軍してきているのだ。
 それと、一人、体躯の良い騎士がいたとローゼリィは言った。
「ルドグドル、かな」
 顔を上げた蜂蜜色の・ラディ(c19472)に、ローゼリィは頷く。
「恐らく」
(「三日月湖に何が眠っているのか分からないけど敵の動きをみれば、とても大切なもの、この先の趨勢を左右しかねないものが眠っている事は分かるわ」)
 それがアリッサムにとっても重要であることは間違いないわ、とローゼリィは思う。
 なら、この戦いを制してランスブルグに平穏を取り戻したいーーと。
 身体を預けていたクレアに礼を言うと、ミミは今、自分達以外に狂王アニール本陣近くにエンドブレイカーはいないのだと告げた。
「屍の黒鉄兵は、天誓騎士や城塞騎士がほとんどみたいです」
「騎士か」
 薄く、ハインツが口を開く。
 戦争の前の、高揚感。これほど心が湧き立つ時間は、他にない。
 敵を選び策を巡らすのは、戦略的ではあるが……私には、関係の無い話。
(「私は騎士。正義を示し、目の前の敵を全力で打ち負かすまで……フッ」)
「まさかあの時見つけた遺跡がここまで重要だとはな」
 レイジは1つ息を吐く。
「だが調査は後だ。まずは故郷を踏みにじった奴らをぶっ飛ばす!」
 気合いを入れ直し最愛の相棒を見る。
「悪いなフェリ。最後まで付き合ってもらうぜ。絶対に勝つぞ」
「なに、どこへだろうと、共に行くのみだ」
 目指すは、狂王アニール本陣、屍の黒鉄兵団長・ルドグドル。
 これは強襲だ。
 優勢な側の指揮官を撃破し、狂王アニール軍勢の勢いを削ぐ。
「そろそろか。……さて、大きな波紋を起こしに行きますか!!」
 ふ、と息を吐いてラスが言う。
 応じる声が重なり、交わす視線を8人は揃って外に投げ――身を隠していた高台から一気に戦場へと飛び出した。

●屍の黒鉄兵団長・ルドグドル
 たん、と8人は戦場を駆ける。突然、姿を見せた敵に反応したのは、死者の軍団達だった。跳ねる様にその顔を上げた死者の軍団にハインツは名乗りを上げる。
「栄えある血筋は遥か大帝の元に連なりし、我こそは黄金の騎士ハインツ! 今こそ見せん、マッケンゼンの突撃を!」
 騎士槍ヤークトフレーテと共に、突撃するハインツの一撃が、死者の剣を砕く。血と泥に濡れた鎧を纏い、呻く曽ての騎士が伸ばした腕に、ラスは魔剣を抜き払った。
「俺達の狙いはアニール軍本陣。共に頑張ろうな」
「あぁ」
 応えるフェリーナは、駆け抜けるまま屍兵を切り裂く。顔を上げれば、先導するレイジの姿が見えた。
「どけぇええ!」
 飛び込んで来る死者の剣を飛び越え、頭上からの一撃で沈めたレイジが着地と共に顔を上げれば、その目に『闇』が見えた。
「……来たか」
 闇のように蠢くもの。血に濡れ、錆びた剣をずるり、と引きずり、やがて面を上げる者達。
「……あれか」
 ハインツが低く呟く。己が武器を構えた騎士の前に見えたのは屍の黒鉄兵精鋭部隊だった。そして一際大きな屍の騎士の姿。ゆうに50を越える兵を従える団長。
「オレハ、ナゼ、コロシテ、ルノカ、モウ、カンガエラレ、ナイ」
 それこそ、屍の黒鉄兵団長・ルドグドルだった。
 曽て狂王アニールに反抗した黒鉄兵団の団長にして、そのアニールにより命を奪われ――アンデッドとされた騎士。
 ルドグドルの発見にラディは、合図のファイヤーワークスを打ち上げる。その音にさえ、ルドグドルは反応を見せず――ただ一つ、「ナゼ」と問いが落ちた。言の葉に混じり、騎士の手にした大きなフレイムソードがぶわり、とその熱量を上げた。
「ナゼ……」
 ルドグドルの視線がこちらを向く。殺意と敵意とない交ぜにした虚空の瞳がエンドブレイカー達を見据える。
 来るぞ、と誰かが言った。
「ナゼ、ナゼ、ナゼ……ナゼ!」
 救われぬことの無い魂を持つ騎士の咆哮が、戦場に響き渡った。

「散れ!」
 フェリーナとレイジの、散開を告げる声が響く。同時に、横に飛ぼうとした2人よりも速く、ルドグドルのフレイムソードが炎の華を描く。
 炎華連斬。
 抜き放たれた刃の炎が、武器を抜き払った2人を切り裂いた。
 痛みが、全身を襲う。だが、フェリーナとレイジの2人は――動いた。
「マダ、ウゴク、カ」
「悪いけどな」
 身を跳ね上げ、レイジは右に、フェリーナは左に飛ぶ。
「後ろ、来てるよ……!」
 囲まれない様に気をつけて、とラディが声を上げる。敵の数は――多い。だが、将自身が前に出てきているのも事実だ。
「お気をつけ下さいっ」
 ルドグドルの一撃を避け、横に退いたラスを狙い、飛び込んで来た屍の兵に、ミミは神火を宿した符を放つ。
「グル、ァアア!」
 ガウ、と獣のように吼えた屍の兵士が、ぐん、と顔を上げると同時に武器を掲げる。同時に見えたのは、狂王アニール。狂王の哄笑がミミを襲った。
「……っ、ぁ」
 ぐ、とミミは顔を上げる。暴走は、受けていない。手もしっかりと動く。竪琴を抱え、巫女は真っ直ぐに戦場を見据えた。
「……後ろに魔想紋章士と天誓騎士がいるのね」
 ローゼリィが呟く。ルドグドルは今、前衛と相対している。つまりこの一撃は、敵兵団の後衛に属する誰か。
「分かったのなら、簡単にやられはしないわ」
 呟いて、ローゼリィは息を吸う。ゆっくりと、だが力強く彼女が歌い上げるのは幻の光を伴う熱狂的な楽曲。その旋律を受け、ラスに飛びかかろうとしていた屍の兵士が崩れ落ちた。
「お前がルドグドルだな。その仮面を――ぶち壊す!」
 宣言と共に、ラスは眼前の敵を薙ぎ払う。地面と水平に放つ剣戟。三重水平斬が、ルドグドルの胴を裂いた。
 だが衝撃に屍の兵士は傾ぐ事無く、ぐん、と勢い良く顔を上げるのがクレアの目に見えた。
「来ます……!」
 同時に、腕が動く。
 剣戟だ。
「我が剣と誇りに賭けて、貴様等の好きにはやらせん!!」
 腕が上がり切るよりも先に、フェリーナはルドグドルに斬り込んだ。叩き付ける衝撃は希望の先導者の二つ名を持つ剣と共に輝いた。
「蒼光一閃、勝利の軌跡を刻み込む!!」
 フェリーナの叩き込んだ一撃に、ルドグドルの鎧が軋む。零れ落ちた血と泥に、声1つ上げず、ただ、かつての騎士は炎剣を振り上げる。行け、と低く、紡がれた言葉に反応したのは屍兵達だ。剣を手に、距離を取った2人を追いかける様に動く背を、クレアは月の魔力で撃抜いた。
「どうか、安らかに眠って下さい」
 紡ぐのは謝罪と、弔いの言葉。
 残る一体を、切り伏せたのはレイジだ。
 前衛に後衛、敵兵団も見事に揃ってはいるが――こちらの攻撃も充分に、向こうに届いている。
 剣戟の果て、追いすがる屍兵を散らす様に、ハインツが大剣を振り上げた。
「黄金騎士ハインツが一撃! このフラムドールに誓って……我は死をも、ましてや不死をも打ち負かさん!」
 瞬間、戦場に上がる火柱が屍兵達を包み込んでいた。

●波紋の担い手
 戦場は、血と泥にまみれていた。剣戟の果てに、打ち上げた屍兵の身体が浮く。その一体を、後方からローゼリィが旋律で絡めとり、フェリーナ、レイジ、ラス、ハインツの4人は前に出る。だが、その誰もが既に傷を負っていた。今すぐ動けなくなる、という程のものではないが、浅くはない。特に、前に出て壁役となっているフェリーナの傷は他の3人よりは深い。
「回復するよ……!」
 後方から、ラディは声を上げる。
 変えたい世界がここにある、変えたい自分自身がここにある。
 だから奏でる、目の前の英雄達と変わり行く世界の歌を。
 少年は竪琴を手に、声を張り上げ歌う。
 今日、もう既に何度も歌った旋律で、仲間の回復を望む。ラディ自身も無傷ではなかった。誰もが傷を受け、それでもと腕を、足を動かし続けていた。足を止めているだけの余裕は、流石に無い。
 ルドグドルは強敵だ。
 屍兵は倒せてはいるが、敵数は相変わらず多い。だが、ギアスはローゼリィによってルドグドルに刻んである。クレアから連携を受け取ったミミが、2人で前衛を狙う屍兵を討つ。
「ジャマ、ヲ」
 落ちた声にレイジは高く飛び上がる。
「いくぜフェリ!」
 上空からの一撃。落下の勢いを使い、レイジは回転突撃する。
「俺が貫きそして!」
「そして、私が斬り開く!!」
 レイジの一撃が、ルドグドルの背を貫きそこにフェリーナは斬り込んだ。
「我らの邪魔は、何人たりともさせない!!」
 裂帛の気合いと共に、二人はルドグドルに一撃を叩き込む。同時に、飛び込んだラスの一撃は砕かれるが――防御に使った一刀。意識は正面。横から向かう、ハインツに向いてはいない。
「荒野に在りては竜と臥し、四海に出でては竜と飛ぶ! 名は芳しき、マッケンゼン!」
 宣言と共に、突撃する騎士の一撃と、上空からの一撃がルドグドルを襲った。血濡れの鎧が欠け、騎士として時代、確かに負った筈の傷がある身体から血が重吹く。
 それだけの攻撃を受けながら、ルドグドルは炎剣を天に掲げる。
 瞬間、ドラゴンの形をした雷撃がハインツを襲った。
「回復します……っ」
 声1つ上げず、武器を握る騎士に後方からミミが声を上げる。清らかなる巫女の舞に一度距離を取った前衛陣を囲むように屍兵達が動くのがラディの目に映る。
 回復の隙を狙うつもりだ。
「右、囲まれるよ、気をつけ……!」
「グルォオア!」
 気をつけて、と言う言葉より早く、屍兵の一体がラディを狙い、光の剣を降らせた。
「あ……」
 衝撃が、ラディを襲う。
 回復を重ねていた体に、一撃を受け止めるだけの余裕は無かった。それでも、せめて、とラディは顔を上げる。
(「戦いは苛烈で、自分はちっぽけだけれど、そのちっぽけは絶対に無駄にはしないよ」)
「後ろと、右から……来てる、から……」
 敵が指示を出す自分を狙ったという事は、囲い込みを狙っている可能性は高い。
 絞り出した言葉に応じる仲間の声を聞きながらラディは地面に崩れ落ちた。

●決意
 剣戟を放つルドグドルに、一撃を砕かれながらもエンドブレイカー達は、全力で攻撃を叩き込んだ。
 戦えてはいる。だが、倒しきれないのだ。
 さすがに、一部隊だけでは本陣でルドグドルを相手にするのは厳しかったか。
「回復ハ、サセナイ」
 一撃を砕かれた合間に、ミミを狙った屍兵達の攻撃が降り注いだ。
 歪む視界でミミは願う。
「とどいて……!」
 回復をみんなに。
 リン、と静かな鈴音と共に、回復を紡いだ巫女は崩れ落ちる。
「これ以上……やらせはしない……!」
 声を上げ、フェリーナはルドグドルに一撃を叩き込んだ。Vの衝撃。確かに一撃を叩き込んだ彼女の目に見えたのは、炎剣を振り上げるルドグドルの姿だった。
「!」
 炎の華を描く斬撃が、フェリーナを襲った。
「フェリ!」
 何とか直撃だけが逃れたフェリーナをレイジが引き寄せる。トドメを狙う様に、飛び込んで来た屍兵はローゼリィが斬り伏せ、ラスとハインツが前に立つ。回復を告げたのはクレアだ。
 これ以上は、無理だ、とラスは思った。
 撤退条件は満たしていないが、これ以上戦った所で戦力差が違いすぎる。ならばここ引いて、ルドグドルを含め、敵陣の情報を仲間に伝えるべきだ。
「撤退だ」
 低く、ラスが告げる。キツく拳を握りながら、フェリーナが頷き、ノソリンと共にクレアが顔を上げる。
 後はただ、視線だけをあわせた。
「殿は俺が務める」
 言った傍で「撤退は、しない」とハインツの言葉に耳に届く。
「退く余力が残っているなら、それをもう一撃のために使う」
 私は騎士。とハインツは言った。
「最後まで不屈の信念を貫くのは、当然だ……フッ」
 騎士は敵を見据え、魔想紋章士は剣を抜く。
 殿となった二人が、時間を稼ぐ様に、もう一撃を叩き込む為にルドグドルに向かう。
「行け……!」
 ギン、という音と共に騎士槍と、剣がルドグドルの炎剣を受け止めた。同時に響いたその声にレイジ達は戦闘不能になった仲間を庇う様に、戦場を離脱する。伸びる屍兵の腕をすり抜け、追撃の刃をレイジが、クレアが、ローゼリィが、フェリーナが砕く。
 エンドブレイカー達は撤退をする。突撃の為に切り裂いた道を、帰る為の道として。
 剣戟を耳に、殿を務めた2人は続く斬撃を斬り払い、傷の深い体で殿を務めた2人は合流を目指す。
 知り得た強敵と、その規模を知らせる為にも。
 次の勝利へと繋ぐ為に。彼らは戦場を、駆け抜けた。



マスター:秋月諒 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2013/08/15
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