ステータス画面

俺を食ぇぇぇっ!!

<オープニング>

 三搭戒律マギラント。
 その日、緑の塔の領内にある屋敷では、盛大なケーキの品評会が行われていた。
 高級な生クリームを使った定番のショートケーキから、色鮮やかな果物が乗ったフルーツタルト。大人の香りを漂わせるビターな風味のチョコレートケーキに、可愛らしい装飾に彩られたシュークリームまで。およそ、ありとあらゆる種類のケーキが、所狭しと並べられている。
「さて、お集まりの皆様。ここにあるのは、どれも厳しい予選を勝ち残った優秀な職人の手によるケーキ達です。本日はこの中から、最優秀賞を決めたいと思い……」
 主催者である、恰幅の良い商家の男が集まった審査員達の前で語っていた。だが、次の瞬間、そんな彼の演説をぶち破るように、突如として部屋の扉が轟音と共に開け放たれたのだ。
「ちょっと待ったぁ! お前達……まさか、そんな貧弱なケーキの中から、最優秀賞を決めるなんて言い出すんじゃないだろうなぁ?」
 声のする方へ顔を向け、そして全員が絶句する。扉の向こうに立っていた者。それは他でもない、全身を生クリームと洋菓子で装飾し、後はパンツ一丁というガチムチ兄貴マンだったのだから!!
「な、なんだね、君は!?」
 あまりのことに、主催者の男もそれ以上は何も言えなかった。だが、ガチムチ兄貴はそんなことはお構いなしにポージングを決めたまま会場に乱入すると、パンツの中から流れるような動きで一本のリボンを取り出し叫んだ。
「ここにあるケーキは腐ってやがる! 真のケーキというものは、もっと力強く、雄々しくなければならないのだぁぁぁっ!!」
 だから、今からこの会場にいる人間に、俺が真のケーキを食わせてやろう。当然、それは他でもない、装飾された俺自身だと言い放ち。
「さぁ、楽しい宴の始まりだぁ! ここにいる全員、思う存分に俺を味わぇぇぇっ!!」
「う、うわぁぁぁっ! 変態だぁぁぁっ!!」
 一瞬にして、阿鼻叫喚の地獄絵図と変わる審査会場。
 リボンを振り回して暴れまわる変態男の顔には、マスカレイドの刻印である白い仮面が貼り付いていた。

「夏になると、色々と変な人が出るっていうけど……いくらなんでも、これは酷過ぎるよね……」
 その日、緑の塔の主であるクックベリーは、集まったエンドブレイカー達に力無く告げた。
「世界の瞳を通して、ボクの治める領地内で変質者が暴れるエンディングが見えたんだ。これがただの変態だったら、メイガス騎士団を派遣して取り押さえるだけで済んだんだけど……」
 残念なことに、その変態は事もあろうかマスカレイドなのだという。しかも、性質の悪いことに、自分から復讐のために悪しき力に手を出してしまったのだとか。
 全力で退治する以外に、悲劇を回避する方法はない。早くも説明するクックベリーの口から、大きな溜息が一つだけ零れ。
「マスカレイドになっちゃうのは、グリンチさんっていうケーキ職人だよ。近くの街でケーキ好きの商家の人が開く品評会に、自分の作品を出品したみたいなんだけど……あまりの酷い外見に、予選で落とされたんだってさ」
 クックベリーの話では、グリンチは洋菓子職人でありながら、何故か身体を鍛えることが好きな変わり者だったという。それだけに、自分の作るケーキにも美しさより力強さを要求し、なにやらマニアックな思考を持った一部の人にしか売れないものばかり作っていたらしい。
「グリンチさんの作るケーキはボクも見たことないけど、なにしろ見た目が酷かったみたいだね。たぶん、皆もグリンチさんの姿を見たら、直ぐに解ると思うけど……」
 これ以上は、自分の口から語ることもおぞましい。そう言うクックベリーの口から渋々ながら告げられたのは、実に気色悪いガチムチ兄貴の生クリーム盛りだった。
「マスカレイドになったグリンチさんは、自分の全身を生クリームと洋菓子や果物で飾り付けているんだよね。後、武器はパンツの中から取り出したリボンを、鞭みたいに使って来るよ」
 なんというか、これは酷い。だが、真に恐ろしいのはこの後である。
 クックベリーの話では、グリンチのリボンで捕縛されてしまった場合、そのままリボンで縛られてデコレーションされてしまうらしい。更に、グリンチは群竜士のアビリティを使用して、こちらを虚脱させようと狙って来る。そして、万が一にも虚脱させられてしまったら……最後は彼の全身に盛られた生クリームや洋菓子を、抵抗できない状態で、余すところなく堪能させられることになるという。
「いくら甘い物が好きなボクでも、正直、あれは許せないよ! あんな物見せられたら、トラウマでケーキが食べられなくなっちゃうじゃないか!!」
 それこそ、毎日夢に現れて、今にノイローゼになってしまう。許すまじは邪悪なる棘。こんな可憐な少女に不潔な物体を見せるなど、それだけで万死に値する。
「皆が品評会の会場に到着すると、グリンチさんも直ぐに会場に現れると思うよ。会場にいる人達を逃がしながら戦う必要があるから、色々と面倒だとは思うけど……」
 できることなら、品評会を無事に継続できるようマスカレイドを退治して、帰りに美味しいケーキを貰ってきてはくれまいか。そう言って、クックベリーは改めて、エンドブレイカー達に依頼した。


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参加者
マスター番長・ガナッシュ(c02203)
グロリアスハンマー・パロル(c08367)
アイスレイピアの魔法剣士・エミリア(c13709)
爆笑する筋肉魔人・オルトラ(c24254)
夜が訪れる刻・シキミ(c32374)
可愛い子と楽しいことが好きな・オリヒメ(c33287)
バトルガントレットの城塞騎士・ベルトラント(c34094)
自堕落系懲罰騎士・ダレン(c34576)

<リプレイ>

●生クリームのお味
「うわぁぁぁっ! 変態だぁぁぁっ!!」
 華やかなケーキに彩られた会場に、審査員達の叫びが響き渡る。
 品評会の会場に現れた変態マスカレイド。それを退治するべく現場へと向かったエンドブレイカー達だったが、やはりこうして実際に見ると、なかなかどうして厳しいものがあった。
 マスカレイドの男、グリンチの身体には、所狭しと生クリームが盛られている。股間にはブーメランパンツの上から貝の形をしたマドレーヌが貼りつけてあり、肩に見えるマスカレイドの仮面でさえも、きっちり砂糖菓子で装飾されているのだから抜け目がない。
「うわ……。また、変態仮面だ……」
「ええ、何という変態なお方でしょうか? あまり関わりたくはないですけど、これも仕方のないことですわね」
 敵の姿を前に、なにやらげっそりとした表情のまま、可愛い子と楽しいことが好きな・オリヒメ(c33287)と夜が訪れる刻・シキミ(c32374)が項垂れる。
 かつて、これほどまでに変態なマスカレイドが、他に存在しただろうか。今まで戦ってきた敵の中でも、屈指の強敵に違いない……無論、別の意味で。
「やっぱ食べ物の見た目は大事っていうか……。ま、まあなんにせよ、こんな迷惑な奴をほっとく訳にはいかないよね」
「同感じゃ。しかし……世界の瞳の所為とは言え、あんな変態マスカレイドを見る羽目になるとは塔主も災難じゃったな」
 グロリアスハンマー・パロル(c08367)の言葉に、マスター番長・ガナッシュ(c02203)も同意を示す。が、そんな彼女達の言葉など耳に入っていないのか、グリンチは早くも無駄にポーズを決めながら、会場の人間に襲い掛かろうと動き出す。
「この場は勇者様方にお任せを。あの変質者、仮面が憑いております!」
 ここで被害を出してなるものか。すかさず、バトルガントレットの城塞騎士・ベルトラント(c34094)が避難誘導を開始したところで、自堕落系懲罰騎士・ダレン(c34576)が入れ替わるように大剣を構えて前に出た。
「暑いのが続くとやっぱちょっと変な奴が増えるよな……って、こいつはあまりにあんまりだろーが!」 
 眼前に迫る変態の姿に、早くも泣きたい気持ちになって来る。
 これが女の子なら、どれだけ眼福なことだったか。しかし、今回の敵はド変態のガチムチ兄貴。そんな者と最前線で向き合って、既に目は完全に死んでいた。
 だが、それでも彼とて男だ。なんとか気力を奮い立たせ、レイドバスターの一撃を叩き込む。しかし……。
「どうだ……って、よけいに酷いことになってねーか!?」
 斬撃と共に放たれた火柱。それがグリンチの身体のクリームを溶かし、その辺に返り血よろしく撒き散らしたのだ。
 飛び散る返り血、もとい返りクリームを浴びながら、ダレンは思わず死にたくなった。
 すいません、やっぱり下がってもいいですか? というか、このまま帰ってもいいですか?
 思わず本音が零れそうになるが、そんな彼の見せた隙を、グリンチが見逃すはずもなく。
「はっはっはぁっ! まずはお前に食わせてやろう!!」
 ドロドロに溶けたクリームまみれの身体のまま、破鎧掌を繰り出すグリンチ。クリームだらけの手をしたまま、それは事もあろうかダレンの顔面を直撃した。
「……げふぅ」
 残念ながら、これ以上は無理だった。
 膨大な気の奔流と共に、なにやら余計なものまで身体に注ぎ込まれ、ダレンは目に涙を浮かべながらその場にうずくまった。
 口の中いっぱいに広がる、汗の臭いの入り混じった生クリーム。まだ、辛うじて倒れることだけは免れてはいたが……とてもではないが、戦意を保てるような状況ではないわけで。
「さて、俺のお味はどうだったかな?」
 攻撃が決まったことで、調子に乗ったグリンチがこれみよがしにポージング。
 いかん、このままではダレンが二度と消えぬ悪夢を植え付けられた挙句、新たな男体盛りにされてしまう。
「あちゃ〜、モロに食らっちゃったか……」
 そう言いつつも、オリヒメはしっかり桜花演舞でダレンをフォロー。が、しかし、どうやら心に負った傷が深すぎるらしく、体力は回復しても彼の顔は青ざめたままだった。
「オルトラさん、出番です!」
「任せておけ。さぁ、力比べといこうか!」
 もう、黙って見ているわけにはいかないと、爆笑する筋肉魔人・オルトラ(c24254)がダレンに代わり前に出た。
 アイスレイピアの魔法剣士・エミリア(c13709)の呼ぶ冬の嵐にを背に受けて、鋼の肉体が降臨する。そのままグリンチとガッチリ組み合い、額と額をぶつけて睨み合う。
「バーッハッハッハァッ! 覚悟はいいかっ!」
 ぶつかり合う肉と肉。変態と筋肉魔人の熱い戦いに、再びグリンチの身体のクリームが溶け出した。それでも何ら怯まずに、オルトラはグリンチの身体を持ち上げると、豪快に扉の方目掛けて投げ飛ばす。
「ぐぁっ! 食べ物を粗末にするんじゃない!!」
 衝撃で身体から菓子が落ちたことで、投げられたグリンチが怒りを露わに叫んだ。
 いや、食べ物を無駄にしているのは、むしろあんたの方ですから。それに、あんたの身体から出る汗と混ざったクリームなんぞ、既に食べ物ではなくなっていますから。
「貴方のケーキはとてもでは無いですけど、わたくしのお口には合いませんわね」
「というか、食べるとか食べないとか、それ以前の問題だよ! そんなもの、ケーキなんて認めないから!!」
 シキミの言葉に続け、パロルがハンマー片手にグリンチに言い放った。そのまま左右から挟み込むようにして、互いに手にした武器で変態を断つ!
 輝ける碧羽を背中に背負い、滑るような動きで敵を斬るシキミ。更に、巨大なハンマーを大きく振り被ったパロルが、それを超高速で叩きつける。
「決まった! ミリオンスタンプ!」
 ボコボコにされるグリンチの姿を見て、一般市民の誘導をしつつベルトラントが実況している。しかし、投げられ、斬られ、果ては全身を叩かれても、グリンチの歪んだ欲望が消えることはなかった。
「やるな……。だが、まだまだ俺は倒れんぞ。真のケーキのなんたるかを知らぬ者どもよ……。お前達も、俺を食ってこちらの世界に来るがいい!!」
 無駄に股間を強調させたポーズのまま、グリンチも負けじと言い返した。見ているだけで吐き気を催す光景だが、ここで退いては後ろにいる一般市民達にも被害が及ぶ。
「ならば、そのケーキ食ってやろう。じゃがそれは、このわしを倒せたらの話じゃ!」
 こうなれば、真っ向勝負で徹底的に叩く他にないだろう。
 槍先鋭いナイトランスを構え、ガナッシュがグリンチの身体を突く、突く、突く!!
 ミラージュランス。残像を伴う無数の矛先による攻撃は、グリンチの身体を捉えて逃がさない。が、それは彼の身体に施された装飾を吹き飛ばし、あまつさえ周りに飛び散らせる結果となるわけで。
「ちょっ……またかよ、おい!?」
 飛び散ったクリームの欠片が顔面に付着し、ますます涙目になるダレンだった。

●犠牲、そして覚醒
 華やかなケーキに彩られた品評会の会場は、今や変態の暴れ回る地獄と化していた。
 敵は一体。まともに戦えば、数の上ではこちらが有利。が、しかし、そこは腐ってもマスカレイドということだろうか。
 グリンチの技は、その一撃、一撃がかなり重たいものだった。その上、多少の打撃を与えたところで、彼はすぐさま虚空から新たな菓子類を召喚して体力を回復させてしまうのだ。
 長期戦は間違いなく不利な戦い。精神的ダメージを考慮すると、戦えば戦うほどに戦意を喪失させられて行く。
「ところで、お嬢さん達……これを見て、どう思うかね?」
 生クリームの盛られた胸筋をピクピクと動かしつつ、パンツの中からリボンを取り出して問うグリンチ。
「なんて格好して……って言うか、変な所から武器を出すな〜!!」
「とても美味しそうには見えませんわね。貴方はケーキ職人なんかじゃない、唯の変態です」
 ドン引きしたパロルがハンマーで殴りかかり、エミリアもまた、冷徹に言い放ちつつムーンブレイドを投げ付けた。が、それでもグリンチは不敵な笑みを浮かべると、手にしたリボンを巧みに操り彼女達に向かって解き放った。
「うわぁぁぁっ! やめろぉぉぉっ!!」
「えっ? い、いやっ!!」
「ちょっ! なんでボクまでっ!?」
 放たれたリボンが鞭の如く唸り、パロルを、エミリアを、そしてオリヒメを絡め取る。そのまま彼女達の身体を締め上げて、身動き出来ないよう縛り上げ。
「うっ……。も、もう限界かも……」
 全身をリボンで縛られたまま、まずはオリヒメが力尽き倒れた。先程から、回復技を使い過ぎていたのだろう。
 身体のラインを強調する様に縛り上げられ、ガックリと意識を失った。口元や胸元に飛び散った生クリームが、なんともいえぬエロティックさを醸し出し。
「こら〜! 見るな〜!!」
 一方、パロルはパロルで縛られたまま叫んでいるが、グリンチの捕縛は完璧だった。後ろ手に縛られた状態のまま、転がることしかできずにいる。そしてそれは、仲良く捕縛されたエミリアもまた同じこと。
(「んっ……だ、駄目……。こんな……格好……」)
 彼女に至っては、リボンで縛られた身体に生クリームまで盛られていた。動けば動くほどリボンが胸元を強調するように食い込んで、更には全身が生クリームでベトベトになって行く。
「ああ、皆様が大変なことに……! というか、いつまで呆けているんですか、ダレン様!」
 このままでは、次に捕縛されるのは自分かもしれない。貞操の危機を感じ、シキミがすかさずフェアリーストームを放つ。呼び出された妖精達は、嫌々ながらもグリンチに突撃して行くが……彼女の真の狙いは、そちらではない。
「さあ、妖精たちよ。活力の針をかの者に捧げて下さいませ」
 狙うはグリンチではなく、未だ死んだような目をしているダレンの方だ。活力の針が彼の尻に突き刺さったところで、今しがたまで死んでいた目がカッと見開かれ。
「はっ!? こ、これは……」
 そこまで言って、目の前の光景にしばし言葉を失った。
 リボンで縛られ、全身にクリームを散らせた三人娘。それを見たダレンの身体に、今までにない活力が湧き上がる。
「うぉぉぉっ! なんて素晴らし……いや、違った! お前は一発殴らないと気が済まねぇ!」
 もう、今の彼に恐怖はなかった。既に、返りクリームも気にしない。断罪ナックルの一撃で、容赦なくグリンチの顔を殴り飛ばす。捻り込むように敵を打つ様は、先程の姿が嘘の様に輝いて見える。
「おぉっと! あれはラッドシティ秘伝の必殺拳!」
 そう、ちゃっかり実況しつつも間合いを詰めて、ベルトラントもまた拳を握った。
「農家と粉屋と塔主様に謝れー!」
 メイガスの手に装着された巨大な戦小手が、変態男の身体を正面から吹き飛ばす。剛腕の一撃で吹っ飛ばされた先には、爪を構えるガナッシュの姿が。
「ナイスなタイミングじゃ。ならば……次はこれを食らうが良い!」
 炸裂するエスペルクロー。オーラの本流を直に体内に注ぎ込まれ、グリンチが身体をくねらせて悶えている。攻撃する度に気色悪い反応を示すため、どうにもやってられない気持ちにさせられるが。
「な、なぜだ! 俺の肉体もケーキも、こんなにも素晴らしく雄々しいのに……なぜ、誰も食べてくれないんだぁぁぁっ!!」
「当然だ。鍛え上げた肉体に装飾なんぞは愚の極み。職人としても筋肉としても、中途半端で話にならんな!」
 悶え叫ぶグリンチの言葉を、オルトラが跳ね付けるように否定した。
 筋肉魔人の名にかけて、最後は自分が決めさせてもらう。そう締め括り、オルトラは仁王立ちのまま武器を構えて笑みを浮かべ。
「この動き……お前さんだけができると思うなよ?」
 次の瞬間、直立姿勢でポーズを決めたままのオルトラが、グリンチの方へと突撃して行った。負けじとグリンチもポーズを決めて、迫り来るオルトラを迎え撃つ。
「何と無駄のない動き。あれこそ真に鍛えられた男の戦い……」
 マスタームーブを利用したポージング合戦を目の当たりにして、ベルトラント、思わず放心。
 生クリームが飛び散る中、互いに一歩も譲らずに間合いを図る二人の男。踊る僧帽筋に、猛る上腕二頭筋。これぞ正に、色々な意味で別次元の戦い。変態と魔人による筋肉王者決定戦!
「ぬぅっ! 後ろを……」
 気が付くと、いつの間にかグリンチの後ろに武器を構えたオルトラが回り込んでいた。
 装飾を施された前面は変態オーラに充ち溢れているが、代わりに後ろは隙だらけ。即ち、そこに必殺の一撃を叩き込めば、それで勝敗は決すると言っても過言ではない。
「残念だが、お前さんよりも俺の方が、少しだけ上手だったようだな」
 そう紡いで、手にしたトンファー諸共に、オルトラが必殺の体当たり。勇気を具現化した気を乗せた一撃を食らったところで、グリンチの肩に付いていた仮面が音を立てて砕け散り。
「まだまだ鍛え方が足らんな!」
 武器に付着したクリームを振り払い、オルトラが最後にポーズを決めつつ言い放つ。だが、それに答えるだけの力は、既にグリンチには残されていなかった。

●口直し
 戦いの終わった会場では、再び華やかなケーキの品評会が開かれていた。
「オルトラ殿のように、頼もしきガチムチもいらっしゃる。皆様もご覧になったでしょう?」
「そういうこと。あれは悪いマッチョで、オルトラさんは良いマッチョなんだよ!」
 ベルトラントと共に、捕縛から脱出したパロルが会場の者達に説明している。その横では豪快に笑いつつ、オルトラが自慢の肉体を惜しげもなく披露している。
「バーッハッハッハァッ! 見よ、この研ぎ澄まされた肉体を!」
「流石オルトラさん、素敵な筋肉です」
 同じく捕縛を解かれたエミリアも、駄目押しにオルトラを賞賛するのを忘れない。
「さて、無事に終わったことですし、美味しいケーキを味わいたいですわね」
「そうじゃのぅ……。帰ったら、塔主の所でケーキパーティじゃ」
 お土産のケーキを受け取りつつ、シキミの言葉にガナッシュが頷く。
 今日のことは悪い夢だ。できれば美味しいケーキを食べて、綺麗サッパリ忘れたい。そして、そんな彼女達の横では、会場の女性達をナンパするダレンに割り込むオリヒメの姿が。
「さて、デートいつにしよっか?」
「えっ? いや、俺は今、こっちのお嬢さん達とお茶するつもりで……」
「えー、行こうって言ったじゃん。約束したのに……ボクの心を弄んだんだね! 酷いや!!」
 最後は少し、嘘泣きも混ぜて言ってみた。その途端、周囲にいた令嬢達の刺すように冷たい視線がダレンの身体に注がれて。
「すんませんっしたァ! お詫びにお茶を奢らせて頂きます……!」
 結局、人生二度目の土下座をした揚句、まんまとお茶を奢らされる羽目になったのであった。



マスター:雷紋寺音弥 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2013/09/01
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冒険結果:成功!
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