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鉄壁街攻略戦:突撃! となりのノソリン神官

<オープニング>

●天槍見下ろす街
 振り仰げば『天槍』はすぐそこにあるように見える。
 実際は、どれだけ近づこうとも見える大きさが変わらないほどに遠い。手が届かない。ましてやランスブルグの第三層『石壁の街』からでは、届くはずもない。
 その第三層から見える空を、斜めに横切る道……大階段があった。丸天井で覆われ管のような外見をした大階段が第三層と第二層をつないでいる。第三層から第二層へと向かう者は、必ずこの大階段を、大階段の関所を通過しなければならない。
 今、関所の扉は固く閉ざされていた。
 
●現状把握
「第二層へ潜入し、探索を行ってこられた方々が様々な情報をもたらして下さいました」
 『冒険者の酒場』の卓で。
 集った面々に花の妖精騎士・ウェンディ(cn0100)は真剣な面持ちを向けた。
 第二層からもたらされた情報を大まかにまとめると。

 ――勇者シャルムーンらしき人物がいる。本人かどうかは未確認だが、しかし配下がマスカレイドなのは確かだという。
 ――勇者マギラントのマスターメイガスがいる。マギラントその人がいるかどうかは、これまた未確認。
 ――第三層側から第二層の関所を開くことは出来ない。
 ――空飛ぶ巨獣が、都市外から戦力を集めている。

 等々だった。
「これらの調査の結果から、マスカレイドの今後の出方として考えられるのは。
 まずは『世界の瞳』の代理者の予知に対抗する手段を用意する事。
 次に関所を封鎖し、時間稼ぎをする事。
 そして時間を稼いでいる間に、勇者やその他の戦力を招集し、準備を万全に整え一気に攻勢をかける事。
 こう見てよいかと思います」
 確かめるように語を繋ぎ、ウェンディは少し息をついた。
「このうち『エンドブレイカーの予知に対抗する手段』は、紋章院を調査したエンドブレイカーの方々の働きによって見事破壊することが出来ました。
 ですが、これは修復されれば元に戻ってしまう類のものです。言い換えれば、修復が行われるまでマスカレイド側は予知に対抗できません。
 つまりマスカレイド側の準備が整う前、代理者の予知が行える今だけが、第二層に攻め入る好機なのです」
 好機、と言いつつウェンディの表情は硬い。
「この機を逃せば、マスカレイド側は充分な攻撃の準備を整え、好きな時に第三層へと攻め入ってくる事でしょう。私達は非常に不利な形勢で防衛戦を行うことになります。
 そして、仮にその戦いに勝利できたとしても、第二層以降が支配されている状況は変わらない為、状況は好転しないのです」
 少女は戦況を語り慣れているようだった。
「現在は関所の仕掛けがあるため、こちらの第三層側から第二層に攻め込む事はできません。秘密の通路はありますが、そこから潜入できる人数だけで第二層を制圧することは叶わないと思われます」
 どれだけの猛者であっても、多勢に無勢という条理には逆らえない。
「しかし、秘密の通路を通った精鋭部隊で、関所を第二層側から破壊すれば、第三層から第二層へと攻め込むことが可能になります」
 人差し指で開けた穴が、堤防を決壊させる糸口となるように。この場合、少数が戦況を変化させうるのは、多勢を引き入れるときだろう。
「勿論、関所の警備は厳重でしょう。しかし、第二層で多くの騒ぎを起こすと同時に、3つの関所に同時に攻撃を仕掛ければ、関所の攻略は決して不可能ではありません」
 兵を幾つかに分け、それぞれの役割を果たす。
「可能ならば3つすべて、最低でも1か所の関所を開くことが、今回の作戦の目的となります」
 
 攻略すべき関所、その一つが『ランスブルグの星霊術士協会』が管理している関所だ。
 この関所は、効果時間は短いが強力なドローノソリンをかけつづける事ができる、ランスブルグの星霊建築の権威たちによって強化されている。
 また、彼らが強力なドローノソリンをかけ続ける為に、シャルムーン配下の巫女マスカレイドがサポートも行っているという。
 このドローノソリンの権威たちは、ランスブルグの市民から『ノソリン神官さん』と呼ばれて親しまれているご老人達だ。けっして悪人というわけではない。
 勇者シャルムーンに騙されて、関所の守りに利用されているだけというから、可能ならば助け出したいところだ。
 ノソリン神官たちに、勇者シャルムーンの言葉以上に説得力のある説明ができれば……上手くいけば、仲間にすることが出来るかもしれない。
 彼らの協力を得られれば、都市の復興などで大きな力になってくれるに違いない。

 しかしそもそも関所へ向かうのにも工夫がいる。
 関所に続く道には、星霊の姿をしたイマージュマスカレイドが多数放たれているのだ。なかでもノソリン型のイマージュマスカレイドは、かなりの強敵と言ってよい。
 このイマージュマスカレイドを撃破、あるいは迂回し。
 ノソリン神官を説得しつつ。
 シャルムーンの巫女を倒す。
 その果てに最良の結果が待っている。
 説得に失敗した場合、ノソリン神官の老人達は勇者シャルムーンの為に死ぬまで戦うだろうから、仲間にすることは出来ない。――例えそうなってしまって、ノソリン神官を倒した場合でも、作戦は成功になるのだが。
 
「この作戦が成功した場合、関所の扉を開けて、第三層に脱出することが出来ます。
 ですが、作戦に失敗した場合、脱出は非常に困難なものとなるでしょう。『作戦に失敗した場合でも撤退を行えるような手段』について、考慮に入れておく必要があります。
 またこの作戦中は、黒鉄兵団などの増援が派兵されることも予想されます。
 陽動作戦が充分に効果を発揮していれば、増援は少なくなるでしょうが……全く増援が無い、というわけにもまいりません。
 増援の足止めをしつつ、素早く通路を抜ける。作戦が失敗した折には、それが重要な鍵になるかもしれません」
 ウェンディは憂慮と信頼の混ざった視線を一同に向けた。
「考慮すべきことも多く、難しい戦いとなるでしょうが……。
 このランスブルグを一刻も早くマスカレイドから取り戻すためにも。皆様、どうか力をお貸しください」
 そう言ってウェンディは深々と頭を下げた。


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参加者
蒼嵐の騎士・セルティア(c01165)
空の宅急便・カナタ(c01429)
天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)
常夜の歌姫・ヤト(c04397)
緋炎蒼水・ファニファール(c15723)
鳥曇・アサノア(c19009)
サイレントフリーザー・リリナ(c19783)
騎嬢天衝・メリーアン(c30107)

<リプレイ>

●突入
 階層を上がっても、同じランスブルグには違いないのに。
 雰囲気だけを見れば、まるで別の都市国家のようだった。道行く人々の顔にあるのは安堵の色だ。自分たちはこの『鉄壁街』の住人で良かった、ここは護られている……そんな信頼と安堵の色。
 かつては第3階層『石壁の街』にもあったであろう色だ。
 今現在の『石壁の街』の姿を脳裏に思い浮かべ、鳥曇・アサノア(c19009)はぐっと拳を握りしめた。……その荒廃は、かつて破壊されたアサノアの故郷の風景と重なる。
(「勇者様だか何だか知らねえが、平和な街をこれ以上破壊させる訳にはいかねえんだよ」) 
 秘密の通路を通り、エンドブレイカーの一行は目立たぬよう関所への道を急いでいた。先日の調査で得た情報に従ったおかげで、一般人でも行き来できるという関所の入り口までは難なく辿り着く。
 関所の施設の門構えに目立った警備の兵は無い――少なくとも遠目に見える範囲内には。周囲に人が多いので誰何されることはあるかもしれないが、突入するだけなら容易に思える。
 きっと、本当の『警備役』は突入してから遭遇することになるのだろう。
 各々目の前の目的を確認し、了解しあって――一同は息を揃えて、関所の入口へと駆けた!
 門を難なく抜け、関所の施設の奥へと……ここはそれなりにまとまって行動するというのが共通認識だったのだが。
「突っ切りますわよ! ハイゼット!」
「!?」
 騎嬢天衝・メリーアン(c30107)が単騎抜け出した。作戦をあまり把握していない彼女は、最低限の情報のみで動くつもりのようだ。
 だが、一同はそれを止める余裕はなかった。
 どこに潜んでいたものか……星霊の姿を借りたイマージュの群が、物陰から雲霞のように湧き出してくる!
「ここは私達が引き受けます。今のうちに、早く!」
 ローゼリィが月の剣をイマージュ達に向け、こちらに呼び掛ける。
「――お任せする!」
 緋炎蒼水・ファニファール(c15723)は彼らの後ろ姿に向け短く叫んだ。
 イマージュの群が、残ることを選択した班のエンドブレイカーらに次々と向かっていく。
 ファニファールは彼らの、そして他の陽動作戦に携わる皆の武運と無事をひととき強く祈った。そして前へ。
 メリーアンはイマージュの群に方向をそらされたのか、姿が見えなくなっていた。少なくともファニファールらの行く手……関所の奥へ続く道にはいない。しかし合流を模索している暇はなかった。
 残ってくれた班がイマージュ群を引きつけてくれている貴重な時間を、無駄には出来ない。
(「何としても成功させねば!」)
 最大限の速さで進んでいるのに、自分の足の動きがもどかしかった。

●神官と巫女と星霊術士と
 走ることしばし。
 不意に一行は開けた場所に出た。
「なんじゃ……?」
 不思議そうな顔つきで振り返るのは、広場に円陣を作るようにして立つ老人達だ。これがノソリン神官たちだろう。
 その手前、ノソリン神官たちに向かってそれまで「やれやれ」といった風情で相槌を打っていた女性たちが幾人か、何事かと驚いた顔でこちらを見た。皆それぞれに魅力的だ。身なりから星霊術士かと思われた。ノソリン神官らの世話役だろうか。
 そして一番手前、剣呑な光を放つ瞳でこちらを一瞥する女性がいた。
 豊満にして流麗な輪郭線を描く肉体。美しく、まったく隙のない……シャルムーンの巫女。まごうかたなきマスカレイド!
 す、と細くなる巫女の眼差しに、蒼嵐の騎士・セルティア(c01165)は体温が下がるような気がした。セルティアは乾いた唇を舐め、息を整える。
(「ド丁寧に、話をしにきたというスタンスで……」)
 用意していたセリフを投げる。巫女にではなく、まずは人間の、星霊術士の女性たちに。
「関所が封鎖されて困っております。神官さまと話をさせて下さい」
 城塞騎士として礼節に則った、可能な限りの丁寧さでもってセルティアは請願する。無害さ、純真さをアピールする。
 背後のもう一班をかばうように立ち、常夜の歌姫・ヤト(c04397)も敵意のないことを示そうと言葉を繋げた。
「私たちは話し合いに来たの」
 星霊術士たちは顔を見合わせる。ノソリン神官たちもきょとんとした顔つきだ。
 この隙に、とばかりにサイレントフリーザー・リリナ(c19783)は言い募る。
「上層からの人、物の流入が断たれ、第3階層の混乱が広がっています。どうか混乱を収めるため、一度封鎖を解いていただけないでしょうか」
「ううむ?」
 困惑の表情のノソリン神官らとは裏腹に、巫女の表情は微動だにしない。リリナは巫女の視線を真っ向からとらえ――ほんのわずか、巫女にだけわかるような挑発の文言を混ぜた。
「……民に対して保護責任を負う立場は、巫女様も同じでありましょう?」
 巫女の返事は短かった。
「民のために関所を封じているのです」
 ファニファールが巫女のその言葉に反駁する。
「関所を封鎖し戦力を整える……か。
 だが裏を返せば、その間、第3階層の人々を見捨てているも同然」
 その言葉に。
 今まで「そんなん言われてものう」「巫女様素敵じゃし」となにかとうるさかった神官らが、ぴたりとお喋りをやめた。……やはり関所を閉ざすということについて、心のどこかで引っ掛かりを覚えていたのかもしれない。
 セルティアは畳み掛けた。
「神官様、巫女様も、どうか俺達をお救いください!」
「ねぇ、大先輩方、今まで何を見てきたんですか?」
 空の宅急便・カナタ(c01429)は訴えた。
「クローレ・ナナ・ジョナ、ジョナ一世陛下、見てきたでしょう? 人々に寄り添う姿、見てきたでしょう?」
 カナタは問いたかった。皆を幸せにするはずの星霊建築、星霊術を、よくわからない巫女の言うがままに使って、これでいいのかと。
 だが、神官らが揺らぐのを察した巫女の決断は早かった。
「この者たちは、警備をかいくぐってここまで辿り着いた不審な侵入者です」
 ひゅん、と鋭い音がした。
「……そのような者たちとこれ以上話すことなどありませんわ!」
 巫女が手にするのはムーンブレイド。一振りで空間を切り裂き、異様な力の刃が一同を襲う!
「くう……っ!」
 カナタはその刃をまともに受けた。
(「今は頑張って、色々耐える……!」)
 傷跡から赤いものが散った。

●盾
 巫女の攻撃はカナタだけではなく、天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)やファニファールをも襲っていた。 
「問答無用で攻撃するなんて」
 ヤトは突然の流血に動転する人々にわかりやすく訴えた。『民を理不尽に攻撃する巫女』の構図を。
 これが一同の策だった。
 自分たちが信用してもらえそうにないから、敵を自分たちより信用できないようにさせる。慎重で狡猾な敵であったらこの手には乗らなかっただろう……だが好戦的な巫女はかかってくれた!
 ノソリン神官らの視線が泳いでいる。善悪の、信頼の秤が巫女とエンドブレイカーの間で揺れている。
 今が好機!
 背後のソフィアが……ノソリン神官を説得するための秘策を用意した班だ……神官たちへ声を掛け始める。
「巫女さんは人間ですか? 不可解な処はありませんか?」
「ちいっ!!」
 説得を妨げようと伸ばした巫女の腕は巨大な獣のそれと化している。
「させん!」
 ファニファールは身を晒す。巫女に貼り付いた仮面を鋭く見据え、盾の役に徹する。巨大な手指がファニファールの全身に食い込んだ。
「私が天に誓いしは……力なき悲しき終焉を祓う剣……」
 苦悶とともに声を絞り出す。
「見極めて欲しい……どちらが民の剣かを……」
 と。
 不意にファニファールの痛苦が和らいだ。眼前に築かれるのはオーラで組まれた二重の城壁。
 セルティアの打ち建てた不動の城壁が、巫女の攻撃を跳ね返していた。
「ユエンっ!」
 サクヤの召喚したスピカが、カナタの身体をぎゅっと抱きしめる。刃の傷はきれいに拭い去られていた。
「まだまだ、この程度じゃ倒れへんよー!」
 自分の傷は後回しのサクヤの耳に、ヤトの凱歌が響く。ふつふつと身体が熱く、力がみなぎってくる!
(「でもまだ攻撃したらあかんよねぇ〜?」)
 サクヤはノソリン神官と、彼らを説得する背後の班をちらりと見やる。……すごいとしか言いようのない、本気のお色気大作戦だ。
 背後のナルシュナイヴの説く言葉が切れ切れに聞こえる。
「勇者様は……大魔女に、操られているんだ……」
 それを聞いて、自然とアサノアの口の端は上がった。眼前の巫女にはっきりとあてつけるように言う。
「そう、今のシャルムーンはピュアリィを利用した計画にも加担させられているようだし、ね」
 巫女に向けての挑発は、晴れ晴れとした笑顔とセットになっている。神経を逆なでされた巫女はまた獣の腕をふりかぶる――!
「ぐぅ……っっ!」
 巫女の巨大な拳がアサノアを握り潰そうと閉じられる。
 拳が開くと同時に、アサノアはその場にがくりと膝をついた。だが全身を押し潰された痛みは、直後には失せている。
 ふわり。
 傍らでリリナが舞っていた。清冽な鈴音さえ響かせて、リリナの舞はサクヤの手傷も癒している。舞いながら、リリナは神官の側へと徐々に近づいていた。
 形勢の不利を見てか、巫女は引き連れていた星霊術士の女性らに指示を飛ばす。
「貴女方も不審者を攻撃するのです!」
「は……でも……」
「逆らうのですか?」
 冷徹な声に震えあがった彼女らは、おずおずと攻撃のために星霊を召喚する。
 しかし、その攻撃が一同に深手を負わせることはなかった。
 捨身とも思えるお色気大作戦の果てに――ノソリン神官たちがエンドブレイカーらに応えていた。
「良かろう、開門しようぞ」
 望んでいた言葉が、はっきりと聞こえた。
 その強さは、攻撃を引き受けていた一同の心と体に、新たな力を与えてくれるようだった。
「その言葉を待ってたんだ!」
 カナタの声は歓喜に満ちていた。

●反撃
 ぶん!
 ファニファールの頭上で旋回するハルバードが空を切る。
「我が誓いの刃が……民の為の未来を紡ぐ!」
 耐えに耐え、溜めに溜めてきた意思を込めて薙ぎ払う。
 その刃は巫女の腕を切り裂いている。
「きゃあ……っ!」
 旋風の余波は星霊術士の女性にも及んでいる。次々と気絶し地に伏していく彼女らを、一同はそれ以上傷つけるつもりはなかった。
「シュエ、いっとけ〜!」
 サクヤが喚んだ星霊クリンがごろごろと転がり横合いから巫女に突っ込む。まとわりつかれた巫女の、片腕が凍り付いている。
 顔をしかめる巫女。
 その耳に、明瞭な歌が響いた。
「人々を惑わす巫女。放ってはおけないわ。ここで決着をつけましょう……」
 ヤトの即興曲がその場に響く。
 巫女をさらに凍えさせるような歌。そしてヤトの傍らのカナタの心に焔を灯すような歌。
「みんなの、幸せのために……!」
 カナタの召喚するは星霊クロノス、その手にした時計の針が勢いよく逆回転し……そして時空が歪曲する。巫女の動きは止まって見えるほど鈍くなっていた。
 神官説得にあたっていた班の者も巫女や星霊術士に攻撃を加えている。優勢は明らか。
 セルティアはオーラで作り出した戦旗をしっかりと握りしめた。
(「勝てる……けど、まだ油断は禁物だぜ……!」)
 戦場を二つに切り分けるように戦旗を薙ぐ。一直線に巫女まで開かれた道を行くようにアサノアは跳んだ。
 疾く。軽やかに。
 回転の力と体重が乗った踵が巫女の仮面を、そして顔を躊躇なく砕いていた。

●正体見たり
「あう……っ」
 地に倒れ伏す巫女の姿は、あくまで蠱惑的だった。その容姿こそ最大の武器なのだろう。
 ノソリン神官達は顔を見合わせ、おずおずとエンドブレイカーらに切り出した。
「可哀そうだから、逃がしてやってくれないかのぅ……」
 一同は一瞬の間に様々なことを思い、視線を交わし合い、またしどけない姿勢の巫女の仮面を見、一所懸命な様子の神官達を見た。
 ……敵は、マスカレイド。
 だがここでノソリン神官を完全に味方につけるためならば……見逃すのもやむを得ない、か。
 そう結論が出そうになった時だった。
 巫女の瞳がぎらついたように光った。
「敵に奪われるくらいならば……ノソリン神官を殺すっ!」
 どこにそんな力が残っていたのか、振り下ろしたムーンブレイドから幾本かの刃が放たれる。狙いはノソリン神官たち――。
「させません……!」
 先程と同じく。今度は神官たちをかばって、リリナが、さらにファニファールがその身に刃を引き受けていた。他班の幾人かも神官を背にかばっている。
「予想した通り……です」
 リリナは流れる己の血に怯むことなく神官たちを背に巫女を見据える。
 ……と、何か異様な視線を感じて、ほんの少し後ろを振り向く。
 神官たちの目は、リリナの纏う丈の短いローブの、ふわふわの裾からのぞく腰から下……いまにも見えそうな清楚な下着と、それに包まれたお尻のあたりに釘付けだった。
「きゃあっ……!?」
 神官説得の一助にと着てきた服だったが、要らぬタイミングで効果を発揮してしまったようだ。
「じいちゃんたち……」
 巫女の本性に神官たちがショックを受けるかと思いきや。神官たちの本性に、セルティアは呆れたように嘆息した。リリナが裾を押さえて恥ずかしげにたしなめる。
「そ、そんな場合ではありません……」
 実際そんな場面ではなかった。
 巫女の息の根を止めたのはジャッジメントセイバー。シャルムーンの巫女……マスカレイドは今度こそ、二度と立ち上がることはない。
 立ち上がったのはノソリン神官たちだ。
 頭を掻きながら……しかし悪びれた様子もなく、扉の前に立つ。ゆっくりと扉を開く。
 奇妙に動作が緩やかに感じるのは、これまでの戦いが短く激しいものだったからだろうか。
 ゆっくりと、関所の扉が開きはじめる……。

●遅れてきた勇者たち
 遅れることしばし。
「わたくしはジァルフィー家がメリーアン! いざ!」
 勇ましい声が響いた。施設内で単騎敵に突っ込み、目的を見失っていたメリーアンだ。神官対策にと、これだけは頭に入っていたのか非常に肌色面積の大きい出で立ちだった。
 メリーアンが関所の奥に辿り着いた時、丁度門が開き始めたところだった。
 イマージュと戦い、引きつける為に残った班も既にやってきており、無事を喜びねぎらう声があがっている。
 カナタは星霊術士としての興味と使命からか、ノソリン神官に矢継ぎ早に質問を投げてはのらくらとかわされている。今はこんな態度でも、きっと今後、ノソリン神官たちは様々な場所で活躍し、助けとなってくれることだろう。
 全員無事そろったのを確認して、ヤトは頷いた。
「さあ、他の仲間にも報せないとね」
「ああ」
 ゴーグルをはずして、アサノアは開かれた扉の先を見晴るかした。……まだまだ先は長いけれど。
「行こうか」
 完全に開いた扉の向こう。
 きっと、ランスブルグの平和への道に続いている。



マスター:コブシ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2013/10/22
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