ステータス画面

かまいたち疾走る

<オープニング>

 霊峰天舞アマツカグラの街をひた走る、三つの白。
 キッキッと鳴き交わすそれらは、カマイタチと呼ばれる動物である。前足の爪は鋭利な鎌になっていて、餌をとったり敵から身を守ったりするのに使われている。
 だが、今アマツカグラを走るカマイタチは、普通のカマイタチではない。
 通常のカマイタチよりも若干、もふもふしている――のは置いておいて、仮面憑きなのだ。
 アマツカグラのマスカレイドでも、動物のマスカレイドは知性が特に低い。
 エンドブレイカーの予知から身を守るために、何もせずにじっとしていろという命令に、離反し、本能の赴くまま疾走するカマイタチは、次々と目にも留まらぬ速さで、人々の首をはねて行った。
 キッキッ!
 真っ白な体を返り血に染め、カマイタチはただただ走る。罪のない人々の命を刈り取りながら。

「たいへん大変! アマツカグラから出て行ってたマスカレイドが帰って来ちゃったよ!」
 と、息せき切ってとびこんできた喜び夜駆け回る・サツキ(c31518)は叫び、冒頭のカマイタチによる被害を訴える。
「とっても見た目はもふもふしてて、すっごくカワイイけど、起こす事件はちっとも可愛くないんだ。お願い、やっつけてきて!!」
 カマイタチが疾走する先の街は、市場になっていて老若男女でごった返している。
 人混みの中を、カマイタチが通過すれば、血の池地獄になることは火を見るより明らか。
「市場に入る前に、やっつけてほしいんだ! すっごくすばしっこいから、逃げられないようにね」
 幸い、市場の入口は高い石垣と門で守られている。市場の者に頼んで門を閉めてもらえば、石垣を登られない限りは大丈夫だ。
「市場の人にはボクから言っておくよ。だから、石垣に登られないようにだけ、気をつけてね」
 カマイタチは全部で三匹。
 その中の一体はかなり強いが、残り二体はそれほどでもないようだ。
「一番強いカマイタチは、尻尾の先も鎌になっているからすぐわかると思うよ」
 サツキはいうものの、残りの二体も弱くはないから油断大敵であろう。
「せっかく平和にお買い物が楽しめるようになったのに、こんなことで市場が台無しになるのは許せないよね。皆、がんばってね!」
 サツキはぐっと拳を握って、一同を激励した。


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参加者
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
銀灰・クニカラ(c01967)
ニンジャ・クライアード(c02864)
月影に舞う銀狼・ゲオルグ(c15479)
ルナウィアートル・ステラ(c19796)
魔法鎧の半身・サリー(c34219)
黙っていればお嬢様・クラリッサ(c34521)

<リプレイ>

●疾風
 しっかと閉められた扉と石垣を背に、エンドブレイカーは来るはずの仮面を待っていた。
 ビョォオと吹きすさぶ風は、カマイタチが起こすものなのか、それともあらぶる自然なのか。
 門を閉めてもらえるよう話をつけてくれたアマツカグラの代表者に、心のなかで礼を言いながら、メイガス騎士はコクピットの中で顔を上げた。
「カマイタチを市場の中にいれず、城壁や門を守るのが、ボクたちの為すべき事、ですね」
 厚い門の裏側では、事情を知りつつも平常を保ち、威勢よく声を張る店主らと、何も知らずに買い物を楽しむ客の活気にあふれている。
「そーだ。俺らは門と城壁は死守しなきゃならん」
 黙っていればお嬢様・クラリッサ(c34521)は腕組み仏頂面で、魔法鎧の半身・サリー(c34219)の確認に頷いた。
「……無事に終わるように手伝う」
 新月夜色の長い前髪から透かすように、ルナウィアートル・ステラ(c19796)は前を見た。
 白い点が三つ。みるみるうちに大きくなっていく。
「……来た」
 ステラは呟き、そっとナイフを構える。
 地面に大量に刺した太刀は彼の矢。一本引きぬき、強弓につがえ、阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)はギリギリと弦を引き絞る。敵は遠いが既に戦場内。加えて、ルーンの狩猟者の目は、敵をもう正確に捕らえている。
「防衛線よりもどちらかというと攻城戦など攻撃側のほうが得意なのですが……やれるだけやりましょう」
 ビンッ!!
 大きな音をたて、矢はまっすぐに、迫り来る白へと飛んで行く。
「キィッ!!」
 運命の赤い糸によって必ず突き刺さる運命を伴った刃は、果たしてカマイタチを貫いた。フワッとした体毛が散る。
「ああっ、ふわっふわ……!! くっ、可愛らしい外見だけにとても残念です」
 聞きしに勝るふわもこなカマイタチ軍に、銀灰・クニカラ(c01967)は渋面を作る。握りしめて、彼が見下ろす拳は、ついさっき迄もふりたいがあまりにワキワキと動いていた。
 しかしカマイタチは、ルーンの一撃に耐え、エンドブレイカーに迫る。
 シュッと風が一陣通り過ぎた……とおもった瞬間、クラリッサは転んだ。
「なっ……んだとぉ!?」
 カマイタチの転ばせる攻撃が見事に決まる。もう一匹は、クニカラを転ばせ、理性を失わせた。
 刃尾カマイタチの両手の鎌が唸ると、真空刃がニンジャ・クライアード(c02864)の肩口から脇腹へと斜め十字に切り裂く。
 吹き上がる鮮血。
「……っ」
 死して屍拾う者なしとは言えども、まだ倒れるには早すぎる。
 クライアードは忍犬をカマイタチへと走らせた。
「ふわふわだのもこもこだの、その様な誘惑に負ける拙者ではござらぬ」
 そもそも大怪我を負わされて、なお毛玉に傾倒するような者は忍びではない。
 刃の下に心。それがクライアードが是とする忍者である。

●水際
「マスカレイドでなければ、そして人に仇なす存在でなければ倒さずにすんだというのに……」
 クニカラ同様、ふわもこした敵を攻撃することに苦しむのは、スイーツとふわもこをこよなく愛するオッサン、月影に舞う銀狼・ゲオルグ(c15479)だ。
 誘惑魔曲を歌いつつも、戦い合わねばならぬ運命を嘆く。
 ふわもこをもふることが彼の喜び。ふわもこを愛でることが彼の幸せ。
 だというのに、今日というこの日は、ふわもこを殺さなくてはならないのだ!
 これが不幸でなくて何なのか。
 ゲオルグの魔曲はもはやエレジーである。
 うず……っとナイフを握る手を震わせるステラは、揺らがぬ満月色の瞳でふわふわした敵を認めた。
「もふも……ふ。い、いや、私はアマツを守りたくて……!」
 目を泳がせかけ、ちょっとその毛並みいいかも……と思ってしまった自分を内心恥じるステラだが、彼の瞳から放たれる黒い光線は容赦なく、敵を石に変えていく。
「ここで撃退しておかないと。この一歩から、アマツカグラの完全解放も成ると信じて!」
 サリーがレギオスブレイドを走らせる。
 毛玉に剣山のごとく突き刺さるデモンの刃にも、サリーの心は揺るがない。
 マスカレイドならば、民を守るためならば。サリーの心はふわもこに惑わないのだ。
「ハッ。ふわっふわのもこもこ、ねぇ……」
 クラリッサはニヤァと笑い、右拳を左手で包む。
「なんとまぁ、撃ちがいのある敵だよなぁっ」
 ズハッと抜き放つは紫煙銃。無骨な一挺は、弾丸を放ってカマイタチに無数の穴を開ける。
「……悪く思うなよ」
 フゥと紫煙を吹き払い、クラリッサは笑った。街の治安維持のためだ、と。
 カマイタチは、邪魔者を倒すよりも、沢山の血が流れそうな場所へ向かうことにしたらしい。
「待て!」
 ルーンの矢を掻い潜り、
「アッ」
 クニカラのブロックは間に合わず、
「させぬでござる!」
 クライアードが振り返って魔眼で睨みつけた。
「キィィッ」
 悲鳴はあげるが、カマイタチは止まらない。
「逃がさない……っ」
 ステラが走るも一歩及ばず、クラリッサの弾丸は高速の白を捉えきれず。
 サリーのレギオスブレイドがかすって血を吸うものの、落とすには至らず。
 だが。
「そこまでだ」
 ゲオルグの黒い棍がカマイタチを引っ掛けて、石垣から引き剥がして地べたへと叩きつけた。
 伸びた先は、クニカラの燃える刃の側。
「もふに罪はない……が、仮面付きならば放置はできないよ」
 もはや彼のフレイムソードは迷わない。乱れ緋牡丹、炎の華が白を黒へと。
「やりましたね! まずは一体!」
 サリーがクニカラを激励する。
 瞬間、刃尾カマイタチの尻尾の鎌が、真っ赤な軌跡描いて、クライアードを裂き、毒に侵した。

●歪笑
「げほっ」
 血反吐を吐くクライアードに、癒しの風が巻き付いた。
「生命を育む息吹よ、我が友を癒したまえ」
 ルーンが喚んだ生命を運ぶ癒しの緑風だ。
「……かたじけなく。恩義には必ず報いるでござる」
 クライアードはまるで地上を歩くかのような自然さで、石垣を素早く登る。
 忍者とスカイランナーが誇る、素晴らしい軽業、身のこなし。
「強い……でも、石垣を、超えはさせない」
 ステラが足を強く踏み込み、機敏な動きで弧を描いた。切り裂く先は、カマイタチ。
 登りかけた前足を切り落とす勢いで。
「オラオラ! 踊れ踊れ!」
 滑り落ちかけつつも爪を立てて踏ん張るイタチへ、クラリッサが畳み掛ける。
 メイガスが実体化した影を伴って、挟み込んだイタチの臓腑を抉る。
 サリーのデモンは、カマイタチを蹴り落とす。
 そして二度と石垣を登らぬようにとカマイタチを地面に縫い止めたのは、ルーンの太刀矢。
「ギャエッ」
 刃尾カマイタチが吼えた。その目は真っ赤にギラギラとまるで脂のように光っている。
「……怒っているのでござるな。だが、こちらとて、譲れぬ。御下命如何にしても果たすべし」
 クライアードの目が鋭く光る。忍者刀の直刃が刃尾カマイタチを円に斬る。
 クニカラの分身が、サリーのデモンたる分身が、刃尾カマイタチを羽交い絞め、主の攻撃を無防備に浴びさせた。
 再び、カマイタチの咆哮が響く。
 門向こうの、市場の空気が固まったのが分かった。
 固唾を呑んで、こちらの様子をうかがうような、怯えの空気に刃尾カマイタチの表情が歪んだ。……喜んでいるのだ……。
「! ナメた顔しやがって!」
 クラリッサが背に城壁を背負った。
「銃ぶっ放すだけだと思うなよ。ぶん殴ってやるぜ!!」
 突進し、にやつくカマイタチにオーラを打ち込む。
 片肌を脱いだゲオルグが三日月の描かれた扇を持って、舞う。轟音と共に落雷がマスカレイドに落ちる。
 キャーッと市場の方から女子供の悲鳴が聞こえた。
「大丈夫……あと少しですよ……」
 サリーは、不安に怯えているであろう人々を励ましてあげられないことに心を痛めた。
 えぐれたようなクッキリした鎌の痕を無数につけつつも、まだサリーのメイガスは動ける。
「せっかくの市場……」 
 得物持て走るステラの無表情の目は何を思うのか。
 闇の髪から覗く白銀の瞳は、まるで夜そのものだ。
 逆手で握られた白刃で、カマイタチの急所を深々と突く渾身の一撃だったが、カマイタチは痛みと憎しみにおぞましく顔を歪めながらも、まだ生きていた。
「そんな」
 刃尾カマイタチは、振り向き、目を見開くステラに鋭い尾を振りかざした。
 すわ、一刀両断……だが。
「獣の弱点は腹側にあり。はらわたをぶちまけろ」
 高速でステラとマスカレイドの間に割って入った狩猟者が、矢代わりの太刀で刃尾カマイタチの腹をえぐり捨てる。
 腹圧に耐え切れず、まるで落ちるようにイタチの内蔵が飛び出た。
 ルーンの凶悪な一手に、ウンとも言わず、マスカレイドは生命を手放す。
 石垣を転げ落ちていく白い毛玉は、もはや臓物と血にまみれた汚物であった。

●活気
 ステラが駆け寄り、遺体を消していく。
「せっかくのもふもふですし、毛皮を……」
「出来なくはないですけど、正直気味が悪いですよ」
 サリーがルーンを止める。
「ちゃんと弔ってやりたかったがな……。通常よりもふもふしていると聞くとどうも……」
 煙草をくゆらせるゲオルグは、血にまみれて膠で固めたようになってしまったカマイタチを惜しそうに撫でた。
 クニカラは拭いても拭い切れない汚れすぎた毛玉達を、切なげに見下ろす。
 しょんぼりとしてしまうのは、カワイイ毛玉が凶悪なマスカレイドであり、それを断罪せねばならなかった運命について。
「ともあれ、市場は無事でござる。平和が一番でござるよ」
 クライアードが、石垣を越えていく。
 彼が事件の収束を告げ、扉は開かれ、市場は活気を取り戻した。
 安堵もまじり、今まで以上に賑やかになっていく。
「……市場を少し覗いてみたいかも」
 ステラがつぶやく横で、サリーは既に門をくぐっている。
「ボク、ちょっと市場に行ってきますね。旅団の皆へのお土産とか、キモノとか面白そうなのがあるかも知れませんし」
 サリーが行ってしまったことで、ステラも吹っ切れたか、あとに続いた。
「あ、俺も……!」
 クニカラも慌てて付いていく。既にクライアードは買い物に行ってしまったようで、戻ってこない。
「お前はどうするんだ?」
 短くなった煙草をもみ消し、吸い殻を袂に入れながらゲオルグは、クラリッサを見下ろす。
「俺? 俺は早々に撤退さ。感謝されるのもこそばゆいんでな」
 ヒラヒラと手を振って、クラリッサは市場を後にする。
 彼女の背中に、楽しげな喧騒が聞こえる。
 それで、十分…………。
 ぐぅ。
「……ハラ減ったなぁ……」
 市場から漂う焦げた醤油の匂いが、腹ペコ少女の腹の虫を騒がせた。



マスター:あき缶 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2013/10/30
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  • カッコいい9 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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