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星屑廃城〜ランタンお化けの御話〜

<オープニング>

●廃墟の囁き
 ドロースピカの力により瞬く星空。
 その微かな光では足元を照らすには心許無く、手に持つ光が全ての頼り。
 ゆらり、ゆらり――動きに合わせてランタンが揺れ動けば、建物に伸びる影もぐにゃりと動き、様々な形に変貌する。その様子はまるで怪物のよう……想像力の豊かな子供なら、そう想うのだろう。
「ちょ、ちょっと……雰囲気あるな」
「な、何びびってんだよ……!」
 揺らめく影にびくつき、目の前にそびえ立つ建物を前にひそひそと零れる話し声。
 夜の街には不釣り合いな――2人の少年が立っているのは、既に壊れ果てた廃墟の前だった。
 冷ややかな風が彼等の頬を撫で、荒れ放題に伸びた草木が合わせてざわざわと音を立てる。まるで何かが現れそうな、そんな雰囲気だけは中に入る前から伝わってくる。
 ――けれど、此処で足を踏み入れなければ。
 唾を飲み込み、さくりと地を踏み締め、少年達は手を繋ぎ壊れた門の隙間から敷地内へと侵入する。足元に注意をしながら中を進めば……揺れる人影が見えた。
「っ……!」
 歩む足を止め、2人は息を飲む。――その人影は段々と近付き、ついには彼等の持つランタンがその人影を映し出す。ぼろぼろな身なり……彼等も決して清潔とは言えないけれど、それ以上に荒れ果てた装いの男達が3人、少年の前に現れた。
「あれー。こんな時間、場所にガキどもが」
「良い子は家にいる時間だよなー?」
 不気味に笑う男達を前にして、少年達の背に伝う冷ややかな汗。
 彼等の心を占める恐怖心は、先ほどまでの正体の分からない相手では無い、確かな恐怖だった。

●映り込む影お化け
「貧困街の廃墟で、子供達がならず者に襲われる話」
 ラッドシティの酒場で、鞭のソーンイーター・ユリウス(cn0182)は集うエンドブレイカーに向けてそう簡潔に述べた。――命に別状は無いようだが、それでも様々な危険が及ぶのは必然。
「彼等を遠ざけられれば良いんだけどね……説得は無理かな」
 事件が起きるのは、貧困街の中でも特に損傷の激しい建物。無人の廃墟のようだが、だからこそ居所の無い者が勝手に住みつくのだろう。
 無人のはずの建物にならず者達の声がこだまし、灯りや人影が映り込めば不思議な噂が生まれるのも必然。そしてそういった事に興味を持つのも、子供なら仕方が無い事。それ故に地元の子供達にとってこの場は度胸試しの場として使われているらしい。
 だがユリウスは、藍色の瞳を細め小さな溜息を零した。――エンディングの少年達と年頃は変わら無い筈なのだが、彼はこの手の話に興味は無いらしい。
「まあ、だから。説得が無理だからこそ、別の方法で遠ざけてならず者を追い返しておこう」
 ――それでもやはり、事件自体は気にしている様子だった。

「遠ざける方法。彼等は既に建物の雰囲気を怖がっている。ならば、その感性を刺激すれば十分」
 真っ暗な廃墟となれば、誰しも怖いと感じるだろう。けれどそれだけでは、少年達の恐怖心は好奇心を上回る事は出来なかった。――ならば、一工夫加えてしまえば良い。
「外から見える位置で、人影とか灯りが見えたら恐怖心が勝つはずだ」
 ――そう、それは悪戯のような行為。しかしその行動こそが、彼等を救う事になるのだ。
 折角だからやるなら思いっきり。目立つシルエットの装いをするのが良いだろう。大きな帽子や大きなシーツを不気味に動かせば、人の姿が見えない外からは不気味に映るに違いない。その他の装いでも不気味なシルエットにさえ映れば十分。
「しっかりやれば彼等は逃げ出すよ。――恐らく、悲鳴を上げてね」
 そうすれば、今後はともかくこの日に廃墟へ訪れる事は無いだろう。そのままエンドブレイカー達はならず者をこの場から追い出せば良い。――彼等にも色々と事情はあるだろうが、今後も子供達がこの場に訪れる可能性がある以上、彼等はいないほうが良いのだろう。
「まあ、作戦や戦闘自体は大した事が無い筈だよ。君達ならね」
 それよりも――全て終わった後には静かなひと時を過ごしても良いのでは、とユリウスは口を開く。
 廃墟の辺りに人影は無い。そして天には美しいドロースピカの描く星空。
 ならば一風変わった星見を楽しむのも良いのでは。少し悪ふざけをした後の、廃墟の中で見る星空。それは何時もとは違った景色を見せてくれるかもしれないから。
「別に、やらなくても良いけどね。やるなら僕も付き合うよ」
 まあ、その辺りは君達の判断に委ねるよ。
 淡々と少年は語ると、この話を締めくくった。
 ――君達がどんな悪戯をするのか。興味がある様子で。


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参加者
ひよこ使い・ナハト(c00101)
奏燿花・ルィン(c01263)
静謐の花筐・サクラ(c06102)
陽凰姫・ゼルディア(c07051)
宵闇胡蝶・ナオミ(c19629)
キララ・サヤ(c23230)
花紡ぎの妖精騎士・ルシア(c33314)

NPC:鞭のソーンイーター・ユリウス(cn0182)

<リプレイ>

●宵闇に揺れる影
 暗闇の中、冷たい夜風が頬に触れれば、まるで不気味な手に撫でられているかのよう。夜間なのに羽ばたく鳥の音が、尚の事この場の空気を不気味に彩っていた。
 目の前にそびえ立つのは、崩れ果てた廃墟。
「よーし、しっかりおどかしてやらなきゃな!」
 ずるりと長い真っ白のシーツを手に、ひよこ使い・ナハト(c00101)が元気よく声を出せば、フードの下に微笑みを浮かべ花紡ぎの妖精騎士・ルシア(c33314)は頷きを返す。
「子供達にはちょっと悪いけど、夜遅くに出歩くのは危ないものね」
「張り切って脅かして、おうちに帰ってもらうのよー!」
 頑張ろう、そう言うように宵闇胡蝶・ナオミ(c19629)が手を挙げれば、彼女の肩に乗るバルカンが尻尾の炎を揺らめかせる。その炎は彼女の持つ巨大なフォークを不気味に煌めかせた。
 その炎に反応するように、4匹のバルカンがじっとナオミのバルカンを見つめる。5匹のその様子が可愛らしくて、キララ・サヤ(c23230)の口元に仄かに笑みが浮かんだ。
「ナハトの、仔達も……可愛い。どうぞ、よろしくね」
 彼女の声に合わせるように宵と暁が声を零せば、ナハトのバルカンも返事を返す。その様子に顔を見合わせた後、2人は大きなシーツを被りお化けの装いの準備をする。
 ドクロの描かれたヘルムを被った奏燿花・ルィン(c01263)は、血糊に濡れた巨大な剣を持つ。
「髑髏騎士ってのも良いだろ?」
 ガシャンと鎧の音を鳴らしながら、語るその声はとても楽しそう。――そんな彼等の様子を横目で見つつ、鞭のソーンイーター・ユリウス(cn0182)は裾の破れた長いマントを風に揺らす。彼にその装いを勧めた陽凰姫・ゼルディア(c07051)は、燃え盛るような紅と黄の着物を纏い優雅に微笑んだ。
 静謐の花筐・サクラ(c06102)の棘腕が持つランタンの灯りが廃墟を映し出し、ゆらりと長い影が火の動きに合わせて揺れ動く。少年達の心を刺激するには、その影はとても重要な役割を担う。
「……こんなものが、どうして怖いの」
 けれど彼女は、その心が理解不能故に柘榴石の瞳を細め小さな声で呟いた。

●心を占めるキモチ
 廃墟の入り口近くで準備を整え息を潜ませていると、足音が聞こえてきた。
「本当に行くのか……?」
「行かなきゃ度胸試しにならないだろ」
 ひそひそと囁かれるその声に、反応をしたゼルディアは鳥の鳴き真似を廃墟に響かせる。
 ――すると子供達の息を飲む音が確かに聞こえた。音の出所を探るよう、灯りが動くのが分かる。
「くんくん……夜中に出歩く悪い子の美味しそうな匂いがするぞー?」
 その灯りに向かい、ナオミが聞こえるように少し大きめの声を上げた。――ランタンの灯に照らされ生まれた影は、彼女のとんがり帽子とその猫耳を不気味な形に変化させる。
 それと同時に響くのは、何かをノックする音。
 ――コンコン、コンコン。
 ルシアの作りだすその音は、何の変哲も無い音の筈。
 だが静寂な空間に響き渡る音は不気味さを増し、怪しげな空気が漂う。そして音が止んだかと思えば、次はカタカタと何かが揺れる音――壊れた窓辺に並べられたドクロが、笑うように揺れていた。
 その動きに合わせるように、仕掛けをいじるルィンの腕から漏れるのは鎧の金属音。それはまるで近付く足音のように、不思議な音色を生み出している。
 ゆらゆら揺れるいくつかの炎はなんだろう――正体はバルカンの尻尾の炎なのだが、暗闇に黒い身体はすっかり紛れて分からない。そこに暗闇の恐怖が合わされば、その正体など見破る事は出来ないだろう。そう、それほどに少年達の心は、既に恐怖が占めていた。
 ――あと少し。
 そう判断したナハトがシーツの下で準備を整えれば、サヤも動きを合わせようと姿勢を正す。ランタンを手にする仲間の様子を見て――。
「よーし、悪い子捕まえて食べちゃおー♪」
 バルカンに話し掛けるように楽しげに、ナオミがそう言えば彼女は巨大なフォークを掲げる。――そしてランタンの位置を調整し、壁に映り込むのは数多の影。
 巨大な騎士に不気味に動くお化け。数多の羽根を持つ鳥の姿は巨大だし、黒の衣装を纏う人々はまるで死人のように少年達には映っただろう。
 彼等のその姿は、影の魔法により普通よりもより巨大に、不気味に少年達に魅せる。
「……消えなさい」
 淡々と――しかし確かに響いたサクラの声は、ナオミのものとはまた違った声色で不気味に感じる。
「う、うわああああ!」
 響く叫び声。何かの割れる音と共に光が途絶えた事から、恐らくランタンを落としたのだろう。1つの駆け出す足音が聞こえれば、「置いていかないで!」と云う声と共にもう1つの足音が響く。
「お菓子はいらないから、ここに近付かないで、お家に帰ってくださいな」
 走り去る後ろ姿に向け、紅の翼のような袖を翻し語るゼルディア。彼女の言葉を聞きつつも、追い駆けるようにナハトは駆け出そうとするが――長いシーツを踏んづけてそのまま転びそうになる。なんとか持ちこたえ、サヤと共に怪我をする事態だけは避けられた。
 大丈夫かとサヤの顔を覗き込めば、彼女は声を出さずに笑っていた。悪戯なんてした事は無かったけれど、やってみると意外と面白いものだと。そう思っての事だろう。彼女のその様子を見てユリウスも微かに口元を緩めれば、皆が笑いを零し合う。――敷地の外に漏れない程度の声で。
 大成功。
 そうお互いを讃えるように、彼等は宙で手を合わせた。

●荒れる城への来訪者
 ――普段はしてはいけない事。けれどそう云う事に限って、楽しいと云うのも世の常。
 子供達を無事に脅かし追い払い、今日この日の安全は確保された。けれどそれだけで今回の任務はお終いでは無い。むしろこれからが大きな仕事だ。
 廃墟の中には灯りなど一切無く、少し先に足を踏み出すのも勇気がいる。
 硝子が粉々になり開け放たれた窓には、ドロースピカにより描かれる夜空。きらきら瞬く星の煌めきは美しいけれど、その光は部屋を照らしてはくれない。――それは、うっすらと掛かる紫煙のせいでは無く、それほどの灯りを星は生み出さないから。
 その為、室内を進むエンドブレイカーにとって手元のランタンの灯りのみが頼り。
 耳を澄まし、人の気配を探り。いつどこから敵が現れても大丈夫なように、彼等は歩みを進める。時々鳴る建物の揺れる音は風の仕業なのだが、それでも人が現れたのかと反応してしまう。
 カチャリ、カチャリ――踏み締めれば響く音は、硝子の破片。
 それは度々聞こえた音だが、その音が微かに多い事に真っ先に気付いたのはルィンだった。手に持つランタンが甲冑を染めるのと同じように、ぼんやりと部屋を照らせば先に見える人影。
 近付くその影に、エンドブレイカー達は一斉に武器を構え戦闘態勢に入る。
「人がいるなんで珍しいじゃねえか」
「ガキまでいるぜ」
 3人の男達は不躾にじろじろと眺める。――その視線は全員に注がれたかと思うと、まだ幼さの残るナオミ、サヤ、ルシア、ユリウスへと移る。少し変わった装いにげらげらと下品な笑い声を上げつつ、だらりと持っていた手入れの行き届いていない剣を持ち直した。
「お菓子は不要よ、とびっきりの悪戯をあげるから、ここから出て行って頂戴ね」
 微笑みを浮かべつつ、ゼルディアは葬送歌を奏でる。その歌に敵は苦しむように頭を抱えたが、そのまま一気に距離を詰めるとルィンに向け剣を振るった。刃を受け彼の腕に血が滲むが、大きな怪我には繋がっていない。ルィンは気にする事無く、光輪を放つとならず者の間を駆けるように動き回る。
 ――ふわり。風が起きたかと思うとそれは激しくなり――ナハトの召喚した突風が襲う。
「ルピー」
 がくりと膝を着く相手を横目に、ルシアは妖精の名を呼ぶ。ふわりと光を放つように動くルピーは、敵に近付くと妖精の粉を振りかけ眠りへと誘う。
「悪いことは言わないからちょっとの間眠っていてね」
 柔らかな口調で語るルシア。眠りに落ちる男を一瞥し、最後の相手へとサヤは月色の瞳を向けた。
「ごめんなさい……でも。貴方達が、誰かを……傷つける前に」
 そう呟き神火を宿した符による霊気を送り込めば、ユリウスも同じ対象へと鞭を伸ばし包囲する。続きナオミが威嚇をするように深緑色の月剣を振るえば――三日月の弧が相手を襲う。
「今度きたら、もーっと痛い悪戯がまってるのよー! がおー!」
 猫耳と尻尾を揺らしそう言えば、倒れる最後の敵。
 後に残るのは。暗い部屋を照らすランプの灯りの中に立つ、不思議な8つの影だった。

●星宵のお茶会
 仕事を終えれば再び星空の下へ。
 ばさりとナハトが広げたのは、先ほど仮装に使った真っ白なシーツ。彼に倣いルィンも敷物を広げた。廃墟を背にして座れば冷たい風が吹くけれど、天に描かれた星空が目に映る。
「ふふ、みんなで仮装で星見のお茶会、特別な感じでとっても素敵ね!」
 にこにこ笑いつつ猫耳とんがり帽子を押さえてナオミが言えば、頷くルシアはそっと手元のランタンへと布を掛けた。――それは星見の際に、光源が邪魔にならないように。彼女に倣い、皆々が光を遮断すると、先ほどまで照らされていた辺りが手元だけの微かなものへと変わる。
 微かな灯りを頼りに、ゼルディアが取り出したのは暖かい柚子茶。カップに注げば温かな湯気が辺りを舞い、ふわりと柚子の爽やかな香りが漂う。
「悪戯お化けさん達、お菓子をあげるから、悪戯しないで星見させてね」
 お化けの格好をしていたナハトとサヤにそう微笑み掛けつつ、お化け南瓜のクッキーとお茶をゼルディアは差し出した。その温もりに手を温めた後、サヤがバスケットから南瓜のカップケーキを取り出す。お化けやコウモリ、南瓜ランタン――様々な種類のチョコが乗ったカップケーキを皆に手渡す。
「甘さ、控えめだから……」
 仄かに微笑みを浮かべユリウスへと差し出せば、彼はありがとう、と零し一口。
「村のおばちゃんに作ってもらった自信作だぜ!」
「蜂蜜のクッキー、焼いたの。……期待は、しないで」
 ナハトが用意したのは栗のタルトにプチモンブラン、焼き栗、栗蒸しパンの秋の味覚。サクラのクッキーは色や形が少し不揃いだけれど、そこが手作り感溢れていて美味しそうに見える。焼き栗が好きだと言うゼルディアは、彼の用意した栗を嬉しそうに手に取った。
 次々と並ぶ溢れる彩りのお菓子達に、サヤのバルカンは興味津々。特に暁は、目の前にある蒸しパンへと真っ先に飛び付いていた。自分から動きはしなくても、物欲しそうにゆらゆら尻尾を揺らす宵にはナハトがタルトを差し出してくれた。ありがとう、とお礼をサヤが零せば、彼も笑みを返す。
「皆のお菓子、この時期にぴったりなものばかりで素敵……」
 並ぶ様々な秋のお菓子にルシアは羨ましそうに言葉を零した。サクラのクッキーを1つ口に含めば、彼女は「こんなの作れるなんて、いいなぁ……」とまじまじと見つめている。そんなルシアが用意したのは、料理上手な友人に作って貰ったスイートポテトだった。
「ルシアのスイートポテトもサクラのクッキーも美味しそうだな」
 ルィンがそう言いつつスイートポテトを食べれば、上品な甘みに美味しいと笑みが零れる。嬉しい感想を聞けば、共に零れる笑みも広がり――心に温かなものが満ちていく。
「あったかいお茶に美味しいお菓子……幸せ〜♪」
「お菓子の交換こもおいししくて心があったかくなって楽しいね」
 幸せそうに頬を染め、ナオミが笑えばゼルディアも微笑んだ。ゼルディアがナオミの用意した黒猫クッキーをぱきりと音を立て口にすれば、更に彼女は嬉しそうに笑う。

 ――そのまま彼等は、温もりと甘味を手に瞬く星を見上げる。カップを置いたルィンは、ゼルディアの隣りで天が見やすいように寝転んだ。
「……きれい、ね」
 ぽつりとサクラが呟けば、返る声は誰のものか――けれどその心はきっと皆一緒だから。
 心許せる仲間と共にこうして星見が出来る事に。その出会いに感謝したいと、彼女は思う。だって、こんなに心穏やかになれる日が来るとは、思わなかったから。
 仲間と共に星を見れる喜び。一緒だから、寒いのも平気だし暗闇でも恐くないとゼルディアは心に想いつつ笑みを零す。それよりも、今のこの素敵な光景を目に焼き付けたいから。
 幸せそうに笑う仲間の様子を見て、誘いの言葉を掛けてくれたルィンも満足気に微笑んだ。――廃墟には浪漫が詰まっている、その想いにも同意してくれる者はいるだろう。
「あ、ほらアレ! 流れ星!」
 ナハトが天を指差せば、きらりと輝く筋が見えた。
「流れ星……初めて、見た。綺麗……」
 温かなお茶を手にしつつ、サヤは天をじっと見つめつつ微笑んだ。彼女の隣りでは、同じ月色の瞳を持つナオミも楽しそうに笑い星空へ手を伸ばす。そんな無邪気な2人の様子を見て。
「綺麗、と素直に感動出来るなら。それは良い事だよ」
 淡々と、けれどいつもより優しい声色でユリウスはそう零した。
「なんだか楽しいな、皆でこういう事、するのって」
 人懐っこい笑顔を浮かべ、そう呟いた後ナハトは2匹のバルカンへと今日のお礼を述べる。彼と同じように、サヤもゆっくりとお菓子を頬張る宵、色々なお菓子を口にする暁の順で頭を撫でた。
「みんな……お疲れ様」
 お茶と人の温もりを感じれば、心も身体も温まり。言葉と共に思わず微笑も零れる。隣の少女の言葉と、嬉しそうに瞳を細めるバルカン達に、自身のバルカンを膝に乗せたナオミは笑う。
「みんな素敵に仮装してにこにこ星を眺めれば、きっと素敵な思い出になるのよね♪」
 ――彼女の言葉のように、この一瞬は確かに素敵な思い出に。
 その言葉を聞き、仄かに光る妖精を指先で撫でつつ、ルシアは小さな声で語り掛けた。
「たまにはこんな夜もいいわね。ね、ルピー」

 流れ星の伝説は嘘か真か。けれどその心に宿る感動は本当だから――。
 じっと見つめていれば、次のキセキも見えるかもしれない。
 その煌めきを待つように――変わった装いのお茶会を、あともう少しだけ。



マスター:公塚杏 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2013/11/13
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