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アクスヘイム崩壊:絶望は再び人々を襲う

<オープニング>

 その日、アクスヘイムは崩壊した。
 ランスブルグで三勇者との決戦が行われたころ、突然に都市を襲撃した一億越えの賞金首ガブラス……勇者ガンダッタの一味により、日常は一夜にして失われた。
「こんなのは夢だ! 夢だといってくれ……」
「街が……僕らの街が……」
 多くの人が死に、多くのものが絶望の声で瓦礫の山をさまよった。都市国家を象徴する斧はもはや頂点にない。
 人々の目を楽しませた仕立て街の店々。少し小うるさくも頼もしかった城塞騎士団。多くの恋人たちを見守ってきた広場の木々。みんな、みんな、失われてしまった。
「よりどりみどりってなぁ感じですなぁ」
「まったく、七勇者様々だぜ!」
 日常に代わり、廃墟のアクスヘイムを闊歩するのは襲い掛かった災厄たち。
 逆立てた髪、無秩序で攻撃的な紋様と服装で飾り立てた野盗崩れのマスカレイドは、崩壊したアクスヘイムで勇者からの『おこぼれ』を存分に楽しんでいた。
「この都市の奴ら、無駄に抵抗してくれるから嬲り甲斐があるぜ。どうよ、これ!」
「ふン。俺はもっといい使い道を見つけたぜ」
 あるものは殺した貴族や騎士の数を誇示するように身に着け、あるものは城塞騎士たちからはぎ取った武具で偽物へと身に着ける。
 統一感のない行いは、しかし人々に絶望を与え棘(ソーン)を増やすという目的には共通していた。その冒涜的な快楽に、マスカレイドたちはこれ以上なく酔っていた。

 廃墟の中、外で繰り広げられる悪虐を隠すように生き残りの大人は子供たちを抱きしめる。
「大丈夫だ、きっと助けは来る」
 傷付いた冒険者の一人が言った。横たわる城塞騎士の生き残りが頷いた。かつてアクスヘイムが絶望に飲み込まれかけた時、立ち向かったものたちがいた。
 エンドブレイカー。英雄たちはきっと再び絶望を吹き飛ばしてくれる。荒れ狂う破壊の嵐の中、人々はそれを希望に日々を耐え続けた。

「大変なことになったわ……」
 勇者ガンダッタによってアクスヘイムが崩壊させられた。調査隊からはいった緊急連絡に、伝えるソードハープの魔曲使い・ヴィーナ(cn0017)の口も震えていた。
「連絡が途絶えたのも当然だわ……調査隊の皆は代理者のフローレンスさんを救出して、世界の瞳の扉も守ったというけど……状況はかなり酷いわね」
 勇者ガンダッタは何処かへ撤退したが、勇者ガンダッタ撤退後もアクスヘイムには多数のマスカレイドが残留、被災した市民を狩り出して暴虐の限りを尽くしているという。
「ガンダッタの行方については、航海中のマギラント艦隊の力も借りて追跡する事になると思うわ。それより今はアクスヘイムよ」
 マスカレイドたちはアクスヘイムでの暴虐を通じより強い棘(ソーン)を手に入れようとしているのだろう。そんなことを許すわけにはいかない。絶対に。

「皆に向かって欲しいのはここのあたりよ。生き残った人たちが隠れているらしいのだけど……」
 ヴィーナの開く地図には、有名な仕立て街だったという街並みが絵が描かれている。この地図もほとんど役には立たないだろうが……。
「いくつかの大きな店の倉庫や地下室……城塞騎士団の詰所とか、かろうじて残った空間に避難した人々がいるようなの。ただ、マスカレイドたちもそれを探している」
 厄介なことにマスカレイドは奪った武具で城塞騎士や救助になりすまし、出てきたところを襲うような真似をしているという。
 マスカレイドの仮面を見ることができるエンドブレイカーならば一目瞭然だが、そうでない人々には厄介な問題だ。
「マスカレイドを殲滅してから捜索するか、人々を助けてからマスカレイドを倒しに向かうか……作戦は皆に任せるわ」
 マスカレイド撃破を優先した場合、戦闘中に生き残りを人質にされたり、また時間をかければ生き残りの容体にも影響が出るかもしれない。
 逆にお救助を優先する場合、救助中のところを攻撃される可能性がある。
「幸い、そこまで強いマスカレイドは残ってないみたい。頭の方も……せいぜい、浅知恵をめぐらす程度ってところよ」
 確認されている数は六体。いずれも野盗崩れのような外見で、略奪品で身を飾った『追剥ぎ』、城塞騎士や冒険者からはぎ取った武具をまとう『偽物』が三体ずつ。
 仮面を隠しもせず行動しているので、一般人が遠目に見るならともかく、エンドブレイカーが見間違うことはないだろう。
「アクスヘイムには知り合いがいたり、思い入れのある人も多いと思う……遠慮は必要ないわ。皆を助け出すためにも、侵略者たちには手早くご退場願いましょう」
 珍しいほどに感情を込めた声で、ヴィーナは皆の背中を強くおした。


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参加者
鋼鉄の孤狼・リュウキ(c00349)
ギ・ア(c01635)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
鈍骨喰・サンディ(c02629)
這い寄れもふ毛・プレノア(c03487)
無銘の騎士・フェミルダ(c04105)
弔いの宵闇・アビス(c05229)
棍の天誓騎士・カイラス(c23006)

<リプレイ>

●再び、アクスヘイム
 一面の廃墟と瓦礫の街並みは、在りし日の通り以上に見通しが悪い。愛用の大剣を無造作に担ぎ、鋼鉄の孤狼・リュウキ(c00349)は油断なく襲撃者たちへと歩を詰めた。
「胸糞悪い」
 押されるように後ずさる野盗崩れのマスカレイドに詰まる思いを吐き捨てる。
 崩壊したアクスヘイム到着後、二班に分かれて生存者の救助に当たったエンドブレイカーたちは、ほどなくしてマスカレイドと衝突した。
 対峙する間にある廃墟から漏れてくる血臭が、双方を引き寄せたのだ。
「き、聞いてねぇぞ……エンドブレイカーが、こんなに来るとか……!?」
「だから残った、無法を働いた。そういう理屈ですか」
 棍の天誓騎士・カイラス(c23006)は冷静に分析して言う。
 ランスブルグの、他の都市国家での機動を聞かされていれば、対応の早さは容易く予想できただろうに。情報をもらえなかったか、思いつかなかったか……どちらにしてもこいつらは小物だ。
「っっしゃぁーっ!」
 死角から飛びかかってくるマスカレイドが思索を遮る。こいつも略奪品で着飾った『追剥ぎ』の類だ。確認してカイラスは棍を抜くが、それより早く鋭い一矢が仮面を撃ち抜いた。
「もう一体きます。手早く片づけましょう」
「……感謝します」
 阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)の警告に感謝を返し、カイラスは目を撃ち抜かれてのたうつマスカレイドへ光の剣の雨で止めを刺す。
「ちょっ、待て……待ってくれよ! 何でもいうことは聞く! 物も返すって、だから……」
「大将が居なくなったら何も出来ないゲスどもか? そんな連中の首には興味ないが……」
 同胞の最期に目もくれず安堵する追剥ぎ、だがリュウキの剣は容赦なく振り下ろされる。
「お前らは俺達の敵だ。確実に殺す。調子に乗ってられるのも此処までだ」
 火柱をあげる剣をそのまま旋回。隠れ場所から逃げようとする最後のマスカレイドめがけ、天狼の剣は追撃を浴びせる。
 火炎に包まれ悲鳴を上げた野盗崩れに止めを刺すのは這い寄れもふ毛・プレノア(c03487)のヒュプノス。
「虐殺はさせる訳には行きませんからね」
 ぽんっと頭を踏みつけるような羊の星霊の跳躍。悲鳴が消え、倒れた敵はもう起き上がらない。
「さぁ、きっちり助けるのですよ。ノンノン」
『なぁ〜ん、なぁ〜ん』
 殲滅を確認し、プレノアは探索に呼び出した星霊へと呼びかける。形容しがたい鳴き声で大地の星霊は廃墟を示し続けている、が。
「……」
 瓦礫をどかしたリュウキが無言で首を振った。
『古着物、預かります』
 脇にやった看板が無人の街に空しくアピールを続けている。ここは古着問屋だったのだろうか? 傾きながらも原形をとどめていた建物の中は、倒れた家具と生地が占領していた。
 引っ張り出した数人の被災者……もう店員なのか、客なのかもわからないそれに生気はない。押し潰された肉体から漏れだした血が着物を赤茶色に染めている。
「……次に行きましょう」
 震える声でカイラスがいう。このようなことは、これが初めてではない。普段より冷静沈着を旨としてきた彼も、状況に大きく心が揺れている事を意識した。
 本当にまだ生存者はいるのだろうか? そんな後ろ向きな想いさえ溢れてきてしまう。
「はい……あっ」
 それでも何とかプレノアが歩き出そうとした時、一行に覚えのある直感が閃いた。
『南西方向、廃墟の中に発見と危険あり』

●絶望が歩く街で
 プレノアたちの班がマスカレイドとあったのと遭遇とほぼ同刻。ギ・ア(c01635)たちの班も一つの建物に目をつけていた。
「おぉ、ご丁寧に片づけてくれてるぜ。こりゃ、うん、アレだな」
「アレですね……」
 鈍骨喰・サンディ(c02629)と感覚的な会話を繰り広げながら、アの目が鉄仮面の下で鋭く光る。崩れ落ちた入口の瓦礫は撤去されている。にもかかわらず、中から外への足跡は見当たらない。
「どうやら、先客がいるようだな」
「ルーンさんたちならいいのですけど……違うでしょうね」
 弔いの宵闇・アビス(c05229)の結論に、無銘の騎士・フェミルダ(c04105)は別班が探索していた先を確認し、警戒して侵入する。
「た、助かりました! ありがとうございます!」
「もう大丈夫だぞぉ! すぐ連れ出してやるからな!」
 はたして踏み込んだ奥から聞こえてきたのは、しゃがれた浮かれ声だった。サンディが耳をそばだてて見つけた階段を下れば、地下室に閉じ込められた数人の男女と城塞騎士らしき男が見える。
「さぁこっちだ。いこう……」
「そいつらから離れて! マスカレイドです!」
 ランタンの灯りに見えた光景に、フェミルダは叫んだ。その男の横顔に見えたのは、被災者の目には映らないマスカレイドの仮面。そして被災者たちの死角で抜かれる剣!
「エンドブレイカー!?」
 予想外卯の展開に城塞騎士の『偽物』は咄嗟、固まった被災者をつかむ。反射的な行動だったが、それの効果に気づいた『偽物』は震えながら叫んだ。
「う、動けばこいつの命はねぇぞ!?」
 典型的な脅し文句にアは舌打ちした。不味い状況だ。
 フェミルダのミスではない。彼女が叫ばなければ敵は既に刃を突き立てていただろう。この選択は仕方ない、だが問題は次の一手だ。
「騎士を騙り、人質を取るとは卑怯な!」
「うるせぇ! 勝ちゃぁ何でもいいんだよ! いいから動くな……あ、いや動いていい! 下がれ下がりやがれ!」
 アビスの挑発に怒鳴り返すマスカレイドの罵声は、アとしても同意な信条だが、それを口にする義理も余裕もあるけはない。
 エンドブレイカーたちはじりじりと押しだされるように店の中から後退した。
「逃げられそうなら撃つぜ。感情は戦闘の前と後にありゃいんだ、今は欠片もいらねー」
 窮屈な地下室から脱出したメイガスのアームが連装式の紫煙銃に手をかける。アビスとフェミルダは仕草で制止しながらも、アの決断を否定できない。
「よーし、いいぜ。もうちょっとだ……へへ、すぐ解放してやるからな」
 入口まで来た『偽物』が勝ち誇ったように笑う。マスカレイドは、ただで人質を解放などするまい。恐らくは切り捨て、時間を稼いで逃げおおせる。そんな算段なのだろうから。
 だが、幸いにも悲劇に希望は間に合った。
「……あと少し、だけ」
 サンディの眼鏡が反射で光る。首を向けた視線の先には、やってきた仲間たちの姿があった。


●災厄の残滓を討て
「ここまでくりゃぁ……いぎゃッ!?」
 ほどなくしてチャンスは訪れた。逃走を確信した『偽物』たちが最後の仕上げと武器を振るおうと瞬間、強烈な電撃が網目のように身を弾けた。
「今です!」
「おぅそっち頼むぜ」
 カイラスの援護に、快哉をあげたアがすかさず紫煙の弾幕をぶちまける。瞬間最大百数発もの弾丸が人質とマスカレイドの間に走り、その間をこじあけた。
「てめっ……」
「因果応報……蹂躙される側の恐怖、その身に刻み込め……!」
 切り離された人質に怒りを燃やし切りかかろうとする『偽物』マスカレイドたちだが、その罵声はアビスの低い怒声にかき消される。
「騎士を装う以上、その覚悟も出来ていると判断させて頂きます」
 フェミルダが開戦の騎士礼と共に、すらりと愛用のワルーンソードを抜き放つ。柄の竪琴が銘を示すように軽やかに鳴った。
「一切の容赦はいたしません。覚悟を」
 処刑道具を思わす重厚なアビスの大剣、堅実に鋭く戦旗のオーラを描いて敵を切り裂くフェミルダの長剣。対照的な剣は、共通の非情さをもって卑劣なマスカレイドを追い詰めていく。
「……すぐに終わる。しばし我慢してくれ」
 被災者たちに短く詫びを述べて、アビスは止めの一打を振るう。切り上げた刀身が『偽物』の長剣を易々とへし折り、通り名を体現するように首骨を叩き潰す。
「ひぃっ!?」
 響く鈍い音に、残る『偽物』が駆け出した。もはや形振り構わず、剣も仲間も見捨てて脱兎のごとく……駆け出そうとした矢先、その脚を飛来した一矢が貫いた。
「誇り持たないぬ野党ども、屍を大地に晒せ」
 勢いのままに転がるマスカレイドに、強弓を手にしたルーンがゆっくりと姿を現す。二班が合流した今、数でも力でも劣るマスカレイドたちに勝ち目も退路もなかった。
「わかった! 降参だ、降参する! だから命だけは……ッ」
「潰れて……目障り」
 言葉を待たず、最後に残った『偽物』をサンディの巨大化した魔獣の腕が掴みあげた。必死の反撃がつける傷など意にも介さず、その腕に破壊の力がこもる。
「アクスヘイムは私の冒険が始まった場所……これ以上、させない……」
 直後、宣言通りにマスカレイドの肉体はぐしゃりと握り潰された。

●そして、再び希望を
 廃墟の街並みに癒しの風が吹いた。
「ありがとう……ありがとう」
 助け出された被災者たちをルーンとプレノアは、それぞれの技で癒していく。『シアン』と呼ばれたプレノアのスピカが人々の感謝の言葉にちょこんと礼をして見せる。
「やれやれ、これでやっと任務完了だ」
 一方でアはそそくさと荷物をまとめてもう帰り支度を決め込んだ。だが、そのメイガスの風防が目ざとく周辺を警戒していることは、彼がただの横着でないことをよく示している。
「……このあたりの人はこれで全員のようですね」
「あぁ。ピエールだったか? まだ見つかってないみてーだな」
 興味なさ気に投げかけられたアのメイガスからの声にルーンは頷きを返す。
 アクスヘイムの代理人でもあるフローレンスの夫、青年領主ピエールは以前にプレノアと共に関わった他人ではない身の内だ。どこか、他の仲間たちが見つけてくれているのならいいのだが……。
「なぁに、きっとどこかで無事に生きてるさ。頼りなさ気だが、悪運は強いって聞くしな」
 避難所を片付けるリュウキが笑って励ます。分の悪い賭け、逆境を好む快男子の彼の笑いは、暗くなる空気の中で皆を支えてくれていた。
「遅くなって申し訳ありません。後は私達に任せて下さい」
 自分たちが暗くなってはいけない。そう思いを奮い立たせ、フェミルダは怪我人を世話し、庇護の騎士として毅然と振舞う。
「あぁ。頼りにさせてもらうよ。きっと、戻って来てくれるって信じてたからね」
「はい……大丈夫です……もう一度、何度でも、助けます……!」
 極限にありながらも温かい住人達の言葉に、サンディは不器用ながらも精一杯に決意を返す。
「しかし……予想もつかぬこととはいえ、海賊群島でガブラス……ガンダッタの行方を追えていればと思うと、悔やまれますね」
 しかし、温かい言葉を有難く思いながらもカイラスの中には後ろめたさがあった。困難ではあれ、防げたかもしれない悲劇。そう思うとどうしても心は揺らいでしまう。
「相手は一昼夜にして都市国家をここまで滅ぼす力の持ち主です。過ぎた事はともかく、彼らを逃しては我々に未来はないでしょう」
「じゃあ、次に潰すのは、ガンダッタで……」
「それに、都市復興の道のりも立てないとな」
 サンディの握りしめた拳の中で瓦礫が砕ける。その音を聞きながら、リュウキは都市国家の天井を見上げた。
「象徴たる大斧……そこに鍵がないかと思うのですが」
 アクスヘイムの頂点より消えた大斧はどこにいったのか。考えることもやることも山積みだと、カイラスは柔和な碧眼を宙に凝らした。



マスター:のずみりん 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2013/11/22
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