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マスカレイド艦隊水際防衛戦:海からくるもの

<オープニング>

「……気に入らないな」
 椅子に腰掛けどうにも難しい顔をして、ベル(cn0022)がぽつりとそう漏らした。カレン(cn0200)は微かに目を細め、両手で温かいココアの入ったカップを握り込み、
「何が……ですか?」
 その、いつものごとく世の中全く面白くもないとでも言いたげな横顔に問いかけた。ベルは小さく頷き、顔を上げる。それから周囲に集った人々の顔を見返して、口を開いた。
「滅びの大地で建造されていたマスカレイド艦隊が、こっちに向かってやってきた。僕から見れば、やっと、とでも言いたいくらいだけれど」
「それは、ベルさんがせっかちだからですよ」
「そうみたいだね。彼等の目的はアマツカグラ。そして、マスカレイド艦隊に乗って指揮を執っているのはいるのは、アクスヘイムを崩壊させ、『戦神斧』を手中にした勇者……黒刃使い・ガンダッタ」
 ぽつりと、なおざりな口調で投げ出された言葉。その奥にある何とも言えぬ感情に気付いたのか、いなかったのか。カレンは眉根を寄せる。
「名前だけは存じ上げております。人となりまでは……私はものを知らないので」
「でっかい図体のくせに小心者のおっさんだよ。本人曰く、「慎重で用心深い」……んだっけ? とにかく周到に何でも準備するあのおっさんが、ここまで大がかりに動くのは初めてかもしれない。……だから、気に入らないって言ったんだ」
「それは……慎重で用心深く準備した果てに、勝算があると思って行動に出たということですね」
「そういうことだろうね」
 そう言いながら彼は睨むようにテーブルの上に広げられた紙を睨み付けた。
「マスカレイド艦隊には、千体近いマスカレイドを収容できる大型強襲揚陸艦が5隻あり、その周辺に相手の艦船を攻撃する戦闘艦と、シーバルバマスカレイドが操る小型艦を展開させているって報告が上がってる」
「では、海上での戦いになりますか? 此方にも船はありましたよね?」
「いや、マギラントの艦隊で真正面から海戦を挑めば戦闘艦に沈められるし、小型船で近づいて乗り込もうとすれば、シーバルバマスカレイドの小型船に取り囲まれる事になる」
「はぁ、私はあまり難しいことは解らないのですが」
 ベルの解説にカレンは首を傾げる。
「勇士号を使うことは出来ないのですか」
「んー。っていうか相手の方が、こっちの終焉に抗う勇士号を破壊する事を目的として建造されているみたい。勇士号で乗り込んでも、敵の戦闘艦を数隻撃破してる間に沈められちゃうだろうっていう予想だよ」
「それは……とても困りましたね」
 腕を組んで、カレンは天を仰ぐ。だがベルの方は淡々と、それに構わず話を続けた。
「だから海戦はしない。現時点で僕たちがとれるのは、大型強襲揚陸艦から上陸しようとするマスカレイドの軍勢を水際で阻止する事だけだよ。上陸阻止できたらマスカレイド艦隊は撤退するか、海上戦力であるる戦闘艦や小型艇に乗っているマスカレイドを上陸させに来るだろう。……そこを叩く。それをきっかけに反撃を行うために、今、このマスカレイドの軍勢の上陸を阻止するのが重要になってくるんだ」
 そう言って、ベルは一息ついた。
「大型強襲揚陸艦は5隻あって、それぞれ別々の場所から上陸しようとして来るんだ。だから、指定されたポイントで防衛線を引いてこれを迎え撃って欲しいって、話」

 ベルの言葉に、カレンはそう……と考え込みながらもテーブルに広げられた資料に目をやる。瞬きを一つ。怪訝そうに、
「この、喋る武器というのは、何ですか?」
「えっと……何って、喋る武器だよ。そういうのがあって。勇者ガンダッタの配下には喋る武器を持つ戦士団って言うのがあるんだ。有力なマスカレイドを率いて揚陸艦で指揮を執っているみたい。今回の戦いで出てくるのは、彼等勇者ガンダッタの配下と、滅びの大地から連れてこられたマスカレイドだよ」
「どうやら主戦力は、滅びの大地から連れられてきたマスカレイドみたいですね。ではまずは、このマスカレイド達の上陸を阻止することが目的になりますか」
「そういうこと。その上で、喋る武器を持つ戦士を撃破したり、敵の目的を知ることが出来れば上出来だね。……尚」
 彼は言う。揚陸艦は、岸に乗り入れた後、ハッチが開き、大量のマスカレイドが上陸してくる。
 この上陸作業中は、マスカレイドも実力を充分に発揮できないので、エンドブレイカー側がかなり有利に戦える好機なのだと。
「だいたい揚陸艦一隻につき250名程度の戦力があれば、敵の上陸をほぼ阻止する事ができるだろうって試算が出てるみたい」
「250名……ですか。それに失敗すれば、どうなりますか?」
「敵に橋頭保を築かれて、残るマスカレイドも上陸してくると思う。そうなったら、霊峰天舞アマツカグラで決戦だね。アクスヘイムの象徴だったあの斧で……。『戦神斧』を持つ勇者の力で、またアマツカグラに戦いが起きることになると思う」
「……」
 あまりに淡々としたベルの言葉に、カタン、と音を立ててカレンはカップをテーブルの上に置いた。
「また、あのような戦いが起こりますか。その戦いに巻き込まれて、今度はどれだけの人が犠牲になるのでしょう」
「さあ。計算してみる?」
 問いかけに、カレンはしばし考え込んだ。それから、言った。
「いえ、必要はありません。私は皆さんを信じていますから。……私が、皆さんを信じていますから」
 迷いのない力強い口調であった。そう、とベルは微かに目を伏せて、
「じゃあ僕も、信じることにしようかな」
 そう、ぽつりというのであった。それから切り替えるように、顔を上げたときにはいつもの表情で、
「……聞いての通りだよ。アマツカグラの未来は、この戦いに掛かってるって言っても過言じゃない。……思うところはみんなそれぞれあると思う。それでも、どうか気をつけて行ってきてね。……」
 ふと、
「僕、あの斧好きだったんだよな。多分、きっと」
 そして、よろしくお願いします、とベルは頭を下げるのであった。


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<リプレイ>

●絶望の中で光る
 シイナは迫り来る敵を前に突撃した。ヴァゼルも武器を構える。
 凄い数だとリエッタの冗談めかした声。イチハも味方を鼓舞する風が舞わせた、マナは前を見る。目の前の敵は自分たちよりも圧倒的に多い。劣勢も良い所だ。……けれど。
「諦めはしない」
 少女の言葉にゲンジ(c34070)は頷いて、
「物量でかてねぇなら各個撃破って奴だな」
「そうですね。最後まで……死にものぐるいで行きましょう!」
 ゲンジの言葉にニコル(c11346)は言った。上陸したマスカレイドが我先にとエンドブレイカー立ちに圧し掛かって来た。ニコルの妖精が走ると同時に、ゲンジの銃弾が飛んだ。

「体力温存と行きたいが」
 戦場はすぐに混乱を来した。ガルドがもう何体目かの敵を仕留める。アレスも血塗れの得物を握った。
「人間死ぬ気で戦えば何とかなるもんだ」
 戦場を、ヨゼフ(c04167)が駆けた。仲間の頭上に閃いた刃を一本釣りでその敵を吹き飛ばす。
「大丈夫か!」
「大丈……」
 武器を握りしめたまま傷だらけのノイズの身体がゆっくりと倒れる。とどめを刺そうと襲いかかってくる敵にヨゼフは叫んだ。
「気に入らないな……。最後まで、戦い続けてやるよ!」

「指揮官達を先に……!」
 【煌星】のフォルトが声を上げる。同じくタージェもひたすら癒しの舞を舞う。
「負けないんだよ!」
「ファーレン、仲間のために最後まで力を貸して!」
 エリーゼも強い疲労を感じながらそれでも前へと進もうとする。
 けれどもその努力も空しく、敵の数は途絶えることが無く増え続けた。
「ハハハ、いつもこんなもんだろ?」
 大丈夫とエマスがガーディアンクリスタルを展開する。【*緋兎*】のエミリーも続けるようにフェアリーサークルを展開した。
「……でも」
 エミリーは小さく呟いた。このままでは皆が危険だ。
「怪我人はこっちに運んでね」
 クオンもそれは感じていた。頷いて負傷者に手を貸し始める。
「お一人さんお帰りだそうだぜ」
 傍らでジョージも傷だらけの腕でフォースフィンガーを使用した。
 諦めたくない。誰もが諦めたくなかった。
 けれどもアラレズ(c34367)は戦況を見据え、気付いた。勝ち目はないということを。
「……動ける人は負傷者を担いで! 撤退するわよ!」
 声を張り上げる。
「まだまだ、頑張れるんだよ!」
 けれども仲間達は止まらない。ナギも叫んでマスカレイドの群れに突撃していく。
「無理よ……死んだら元も子もないわ!」
 アラレズの言葉に、ヨハネスは、
「それじゃあそれを、伝えようかねぇ」
 とボイスブースターを使用する。
「ならば殿で派手に暴れよう!」
 ヴィンツェンツもジョナの紋章を掲げた。
「また次も、その次も戦っていかねばいけません。だから今は……」
 尚も走ろうとする仲間をニール(c30118)が言い含める。そして撤退を開始した。
 しかしそれを敵が許すわけもない。敵の群れが撤退を始めるニール達に襲いかかった。
「まだだ! まだ私達は……終わってはいない!」
 ミストラル(c10585)のレイピアが敵を貫く。彼女もまた傷に苦しげに息を吐く。
「やれやれ、きつい戦いですなぁ」
 エンカイが言いながらも手裏剣を投げ、ミストラルは頷いた。

 【機動武闘團】のアイリーンが支配の烙印の烙印で援護する。
「機動武闘團、参上!」
 まだまだ押し潰すとアヤカ(c14761)が流星脚で敵を蹴り砕いた。
「まだまだ!」
 負けない。アヤカの言葉にシャオリィ(c00368)も気咬弾を飛ばす。
「分が悪くても、諦めるわけにはいかないからな」
 だが、現実には撤退の声が届いている。レサト(c02802)が小さく頷く。
「アクスヘイムと同じには、させない」
 一人になるまで、それでも戦い続けるのだとレサトは駆けた。
「ファナは無事逃げたかしらん?」
 ノシュアトがディヴァイン(c03131)に背負われながら苦しそうに言う。
「逃げるわけ無いだろなぁ。……そら、負傷者は下がるぞ!」
 これ以上は無理だと走り出すディヴァインを敵が追う。しかし、
「させるかよ! 俺だってこの前助けられたばっかだ。護るのだけはきっちり仕事すんぜ」
 ケーナ(c10191)が身を挺して止めた。【一天】のイリアンと共に、前線を死守していく。
「まだ、方法はまだあるはず!」
 ニャルラ(c08107)も攻撃の手を休めない。殺到してくる敵にひるまず、果敢に攻め立て押し返す。
「ナナ、ほんの小さな力かもしれないけど、がんばるんだからね!!」
 アマツは大事な場所だから、とナナ(c01539)もライフベリーを投げた。
「だからまだ……まだ、行けます!」
 ナナはそう叫んだ。しかし振り向くと後ろに立っている者は誰もいなかった。ぎゅっと手を広げ、隣のニャルラの手を無意識に掴む。ニャルラは笑って、
「それじゃあ、行こうか……最後まで」
 【ルメルシュ】のニーナ(c01336)も血に染まった足で駆ける。その後をレオノーレ(c04664)が追いかけた。
「そうだな。私は、私が為すべきと思ったことをするまでだ」
 レオノーレは振り返る。仲間達は撤退を開始していた。ならば最後まで戦いを続け、この場所を支えるのが彼女たちの仕事であろう。
 目の前には無数とも言える敵。それに僅かにレオノーレの唇の端が歪む。
「よくも、まぁ……」
 シャイニングレインで敵を薙ぎ払いながらも、レオノーレは呟いた。傷の痛む脇腹に僅かに指を這わせる。
「負けるにしても最後まで苦しませてやるさ……。行こうか、ニーナ」
「はい。わたしも、最後まで戦いを続けます!」
 レオノーレの言葉に力強い言葉が返った。

●戦場にて笑う
「撤退よ……!」
 ガルバード(c18200)が声を上げて伝えている。ルサリエは血塗れの身体を辛うじて起こした。途中はぐれてしまった彼は無事だろうか。
「ぜるがー。生きてるー?」
「あぁ、撤退だってな」
 【銀夜狐】、ソウジの言葉にゼルガ(c01231)は小さく頷いた。
「不本意だが致し方ないか」
 仲間をこのままにしておけない。倒れていたスノーを背負い上げてゼルガは言った。
 敵の攻撃はやまない。無事に仲間を守るのが精一杯であろう。追撃する敵にウミが相方の身を案じながらもウインターコールで牽制する。リジアがそれに続いた。
 くそっ。と傷だらけのジャンカルロが呟く。【時雨石】のフォルトゥナートとレインも互いを支えながら漸く立っていられる有様だった。
 守れなかった。それが悔しい。守ると決めたのに。
 【*緋兎*】のラヴィアもユーリに肩を貸す。ユーリは傷を負いながらもフェアリーサークルを展開させた。
「牽制しながら、撤退しましょう。苦肉の策ですけど、私達も死ぬわけにはいかないのです」
 リデル(c34372)が冷静に言う。頷いてアリサもフラスコの蠍を解き放った。
「我、難に臨みて退かず! 仮面憑き共に我らが意地を見せん!」
 イーグル(c32873)が仲間達を守るように突撃した。それをリデルが援護する。無数の敵が押し寄せる中、リデルは小さく唇を噛んだ。
「私一人なら、せめて……でも」
 大事な人の命を、守りたいから。彼女は目を伏せ呟いた。

「キャロル、離れるな!」
「うん!」
 怒声が飛び交う中、ヘカテイレスとキャロルの声がする。奇声を上げながら襲いかかってくる敵にジーユ(c16905)は斧を走らせた。
「負けたとしても、みんなの命まであげないよ」
「左様でございますね。此度はなかなか厳しい戦……。ならば次の為にも皆様をお守りするのが私の務め」
 【PURPLE HAZE】のシルベスター(c05709)が、倒れるまで戦いたそうなキドーとメロを後方へ引きずっていく。
 【紅芙蓉】のミリアが、敵の一太刀を受けて倒れた。セナが慌てて駆け寄る。しかしその身体にも刃が降り注いだ。
「……!」
 マーベリック(c15694)が手を伸ばす。苦しげに、それでも攻撃を続けようとする二人に彼も頷いた。
「くそっ。それでも俺は最後まで……戦い続ける! せめて、皆を守る為に……!」
 後は頼むと二人も小さく頷いた。
 敵が押し寄せてくる。撤退する仲間に追いすがる敵を、ロットバルトもフォースボルトで迎撃する。撤退支援と言いながらも、少しでもと強敵を捜していた。
「どちらがより多くの敵を屠れるか勝負と致しましょう」
「しかたねーなぁ、受けてたってやんよ!」
 アルトゥール(c01240)の冗談めかした声にクラウス(c12274)は頷いた。
「俺の援護を無駄にすんじゃねーぞ!」
「無論です。愚かな者には似合いの夢を――ドルンレースヒェン」
 押し寄せてくる敵に、星霊達が踊った。
「やれやれ皆さんどうにも血気盛んでねぇ」
 セヴェルス(c00064)が肩を竦めて血の猟犬を作り出す。
「まぁ、解っていたことですが」
 ぼやくように言う彼。皆厳しい戦いになるのは解っていて、相応の覚悟を持って参加したことは解っている。
「当然だ! さあ! 貴様の未来を置いていけッ!! 私の未来を喰らってみせろ!」
 アルメイア(c02067)もエッジアバランチを雨霰と降らしていった。無論仲間達を守る為もあるが、それ以上に、一歩も退きたくなかったのだ。
 エンドブレイカー達の反撃に、敵は一瞬ひるむような仕草を見せる。……だが、
「怯むな! 数で分があるのは此方だ!」
 後方から誰かが声を上げた。それに呼応するように敵は吼えるような声を上げ、一斉に此方へと突進してくる。
「数が敵になると、これほど怖いものはないって事だよねぇ」
 セヴェルスの呟きに、レイア(c03046)が小さく頷いた。
「それでも、例え最後には倒れるのだとしても……。この撤退、最後まで支援させていただきます」
 レイアはそう言って癒しの魔法円を描き出す。ユエル(c03933)がレイアを庇うようにゆっくりと前に出た。
「了解。任せておきなって。お嬢さんが後ろにいる限り、俺も最後まで戦うとするさ。……ここから先は、何があっても踏み込ませない」
 雷の力で敵を討つ。カレン(c01117)も頷いた。
「生き残ります。必ず……! そして守ります。この空の下、何処かで戦っている私の仲間達が無事に逃げ延びれるように……!」
 声を上げて斧を掲げカレンは突進した。敵の中に突っ込んで、蹴散らし、更に斧を振るっていく。
「ああ。援護させて貰うよ!」
 ユエルもまた彼女も何処かにいる仲間のことを思って支援の歌を歌う。
 そんな彼女から逃れるように、敵の一部が回り込もうとする。しかし、
「ここは、わたしが通さない……!」
 シェミア(c19503)が突進していった。黒旋風で戦場の敵を刈り取る。
 最前線で撤退を支えた者達の奮闘は続いた。
 しかし次から次へとわいてくる敵を前に、彼等もまた撤退を余儀なくされる。
 そして……。

●闇穴を進む
 足音が聞こえる。【*緋兎*】のファウナ(c22864)は己が月光剣を握りしめた。傷で視界が霞む。アウレリーア(c28604)が振り返った。
「大丈夫ですか!」
 ソラトが攻撃しながら言う。バラノラもそ武器を振るった。リシフィアもリーナも決意を込めた瞳で攻撃を続ける。
 戦況は芳しくなかった。人数差は如何ともし難い。それでも一同は最後まで戦いを続けるつもりであった。
「きゃ……っ」
 しかしアヤカが小さな声を上げ敵の攻撃に倒れ、マナも血塗れの手で断罪の拳を振るう。攻撃を受け、よろけながらもう一撃。しかし、
「大丈夫か。……もう良い。もう良いから下がるんだ」
 後は自分がと、ナハト(c23195)が仲間を庇うよう前に出る。
「はっ。ご冗談を。何とかなる……いや、何とかするさ」
 月光剣を振りかざすファウナ。その背中合わせに立って、アウレリーアも血に染まったガンナイフを握りしめた。
「ええ。このようなときに、下がってなんて居られません」
 吠え声を上げながら敵が突進してくる。仲間達を薙ぎ払いながら此方へ向かってくる。リゼリア(c34301)がそれを迎撃するように騎士槍で突撃した。
「大丈夫ですか?無理はなさらないで下さいね」
「はい。ありがとうございます」
 倒れる敵を前にミント(c12096)が体勢を整えてエアシューズの踵を蹴る。
「様々な悪事、ここで許すわけには参りませんね。ここが正念場でしょう」
「はい。厳しいですが……」
 リゼリアが目を伏せた。あちこちで負傷者が倒れ伏している。逃げるという選択肢を持つ者は少なかった。皆最後まで、戦い抜くつもりである。……その決意をもってしても。
「私にも心強い仲間がいます、どんな敵が来ようとも、必ず阻止しましょう」
「そうですね……。ここで退くわけにはいきません」
 ミントの声と共に、リゼリアは頷いた。それでも……最後は、たとえ敵に背を向けてでも大切な仲間を守り抜こうと誓って。

「近づくなー!」
 【PURPLE HAZE】のガルは声を上げながら尻尾を振り回す。その後ろには傷だらけのアレンカレンと戦い抜き傷付き倒れたヴァイオラの姿があった。
 疲労滲む手でアレンカレンもぎゅっと魔道書を握りしめる。武器を振りかぶる敵へと攻撃しようとするも、間に合わない……と、
「あたしがいる限り、みんなにこれ以上傷はつけさせないんだよ!」
 ローザ(c01277)の高速蹴りがその敵の身体を吹き飛ばした。
「ローザ!」
「まだまだ、大丈夫!」
 アレンカレンの声にローザは親指を立てた。その頭からも血が滴っている。
「さ、まだまだ来るよ……。あたし達の底力、見せてやろうじゃないの!」
 不敵に笑ってローザは再び走り出す。二人もそれを援護した。
 敵の数は絶えず、遂にスナは力尽き倒れる。それを守るよう戦っていたアルヴァードも倒れた。
「……させません!」
 とどめを刺そうとする敵に、【紅芙蓉】のミミが走る。庇うように前に出た彼女にとっさにケイがクレセントブーメランを投げた。だがすぐに次の敵が向かってくる。
「厳しいな……」
 ヌイとナージャの声が被った。目の前の仲間達がどんどん倒れていく。敵は捌いていても途切れることを知らない。
「これは負けず嫌い全開でいってもいいってことだな。よし爆ぜよう」
 【一天】のアッシュ(c13746)が気軽な口調でそう言って、駆けた。
「援護するわ」
 アリルがそう言ってスピカを飛ばすので、アッシュは頷いて走り出した。最早一つの武器になり、アッシュは駆ける。戦う。倒す。倒す。気付いたシキヤもリオンもそれに続いた。最後まで、一人になっても戦うつもりだが複数居ればそれだけ楽だから。サクラとサラが気付いて援護する。ウィスタルテもヒュプノスを飛ばした。
「おぉ。駆け抜けるのか。なら、ついて行くぞ!」
 アンゼリカ(c32742)も高らかにそう宣言して、走り出した。それを見てユエイン(c00108)が僅かに肩を竦め、
「やれるだけやる。いつだってそうしてきた……今も変わらない。いくぞっ」
 走り出した。

 どれだけ敵を薙ぎ払ったのか。どれだけ傷を負ったのか。いつの間にか仲間達と散り散りになり、それでも生き残った者達だけで力を合わせて駆けた。
「くそ、そろそろ……」
 アンゼリカの声に、ユエインも小さく頷く。限界だった。
「今、傷を……」
 ニエ(c08103)の言葉に、彼等は首を横に振る。それに気付いて、ルーク(c07530)が彼等を守るよう立ち塞がった。
「僕たちは……負けますか?」
 掠れるようなルークの声。心眼で心を保ちながら言う彼。置いて行けと、ユエインが行った。敗北は確実だ。ならば逃げてくれと。逆にその言葉を聞いて、ルークは前を見る。
「置いては、行きません。皆さんを連れて帰ります。絶対」
 その言葉に、ニエはそっと微笑んだ。
「私も、そのつもりです。……さあ、行きましょう。皆さんで……帰るです」

 その日、それほどまでに。彼等は圧倒的に……負けた。
「私は……、負けたくない!」
 それでも最後まで、【機動武闘團】のレオナ(c26057)は戦い続けた。アメリア(c34101)もフェアリーストームを飛ばす。
「全ての敵を、私達で倒してしまえばいいのですの」
 アメリアの言葉にジェイナス(c15904)は思わず笑いかけ、帽子を目深に被り直す。
 ……信じられるか。
 己に、問う。
 その後ろに、立つ味方は最早一人としておらず。
 その眼前には、未だ沢山の敵が健在であったとしても。
 それでも信じられるか。奇跡を。……否、
「諦めません。最後まで。諦めたら私達は、そこで終わってしまう!」
 ホライゾンスラッシュを繰り出しながら、レオナは言う。がむしゃらに目の前の敵を、ただ斬り続ける。
「ええ。撤退なんて、ごめんですの。少しでも敵を減らして、そして倒れればそれで充分ですの」
 アメリアも癒しの魔法円を描き出す。そうだな、とジェイナスは小さく頷いて、
「じゃあ、信じることにすっか」
「何を?」
 レオナの問いに、ジェイナスは笑った。
「俺と、二人の力を……さ」

●緋い手を掴む
 うめき声がした。誰もが何処かに傷を負い、または疲労困憊で立っているのがやっとの状態であった。
 そこに倒れる誰もが最後まで戦った。レイヤも、イングリートも、アリカも最後まで前線で戦ったし、そんな彼等を自らの身も顧みずシルヴォやポリーナは支え続けた。
 それでも敵は留まることを知らず、倒れた者達を庇うように立っていたカシムやシヅマ達にも敵は襲いかかる。ヤクモも魔曲を奏でながらも、目だけは逸らすまいと顔はしっかり上げていた……のだけれど、
「……っ!」
 シヅマの腕に刃が食い込む。血が噴き出して蹌踉ける彼に、
「こっちだよ!」
 セリカ(c01569)が冬の嵐を召喚してそれを止めた。
「立てる? 早く撤退しよ! こういう時こそ諦めずに出来る事をやるよ!」
 一人でも仲間を守ること。今はそれだけを考えようとセリカは言った。敗北を噛み締めるのは、その後で良い。
 【*緋兎*】のルシックやアスールも仲間に手を貸し歩き出す。バジルも負傷者に手を貸した。
「大丈夫ですわよ、何も心配する必用はございません。……皆さんも、きっと無事です。だから……」
 シキミ(c32374)が小さくそう言う。今は帰りましょう、と。
 とにかく、動けなくなった人を孤立させてはいけないと。こっちよ、とリムィリファルァも後ろを指さす。そっちの方が敵が少ないと、リジュも指さした。
 仲間の肩を借りながら、レムは振り返る。同じく肩を借り歩きながらもララ(c12094)は微笑んだ。
「目くらましの光だよ、さぁ、今のうちになの!」
 気咬弾を追いすがる敵に放つ。押し寄せるそれをイオン(c35175)とアイリス(c34883)が牽制した。
「必殺パンチ、受けてみなさい!」
「私達も、ただでやられるわけにはいかないからね……!」
 そうしてじりじりと後退するも、彼等もまた敵の群れに呑まれていくのであった。

 敵が沢山いる、とフィグは微笑み爪の先を舐める。心躍るように人の波に呑まれていく彼女。敵の悲鳴が聞こえ……そしてすぐにその姿も人混みに呑まれて見えなくなった。
「多勢に無勢……。やむなし、か」
 【機動武闘團】、エルザの言葉にアキホ(c19159)は首を横に振る。
「それでもまだ、為すべき事は残っております。……参りましょう」
 ムーンライトシャワーで傷を癒しながらアキホは言う。……倒す戦いは、負けた。次は、仲間を守らなければいけない。
 そして、この戦いは負けるわけにはいかなかった。
「私達が死んでしまえば、本当に終わってしまう……。だから」
 そんな想いと呟きに、【PURPLE HAZE】のギィも舌打ちした。
「ったくそう簡単にやられてたまるかっての」
 眼前に迫る敵へと至近距離で攻撃を放つ。全力で、闘えなくなるまで抗うしかないと彼は笑った。
「まったくだ。次から次へと懲りない奴等だ……こ……」
 言いかけたリュウのからだが攻撃を受けて傾く。無理もない。殿、いわば最前線でずっと攻撃を受け続けていたのだから。ギィがとっさにそれを支える。
「……」
 シーヴァー(c03034)は目を眇め、その様子を見ていた。その身には故郷を踏みにじられた怒りが迸り、決して己が死ぬまで敵を許す事は出来ぬと言葉には出さぬが背中がそう語っていた。
 ……しかし、
「ならば、何度でも挑もう。決して諦めはせぬ。私が手に入れた故郷を、大切な仲間を踏み躙った貴方を……決して許しはしない」
 想いのこもった声はすぐに剣戟に紛れて消えた。
「ユストさん!」
 【銀夜狐】のヘミソフィア(c03151)が声を上げて、とっさにユストは顔を上げる。しかしその時には遅く、振り下ろされた野太刀がその身に食い込んでいた。
「へへっ。……鈍ったかなぁ」
「お喋りしている余裕があるなら大丈夫です! 下がって!」
 近づいてくる敵を槍地獄でヘミソフィアは迎撃する。
「故郷が……」
 呟いて、ヒュウガが何処へともなく手を伸ばした。その手をサァド(c12899)が掴む。
「まだです。まだ終わってません」
 攻撃を受けながら、残像で弓を撃ちサァドは首を横に振る。だが、
「逃がすな、ここで終わらせろ!」
 敵の声がして斬りかかられる。傷付きながらもがむしゃらにサァドは弓を射った。
「それを……言われる側になるとはね」
 自嘲するようにエスティールがそう言って、叫んだ敵を掌で打ち、倒した。
「逃がしはしないよ。君はここで僕らが倒す」
 それでも、気持ちは前に。戦い続けるエスティールにティルキアが水晶髑髏で回復をした。
「大変ですけれどここが正念場です……」
 敵はそんな二人を遠巻きに見守っていたが、やがて数を頼りに一斉襲いかかってくる。刃が身体を貫き、ティルキアは激しく咳き込んだ。だが、
「私が倒されたとしても仲間の皆さんが安易にここから先に進ませる事はさせないでしょう……」
 その言葉と同時に、黒い影が襲った。ルッツ(c01102)のシャドウリッパーであった。
「……っ、誰か無事な人はいないのか!」
 倒れる者を見ようともせずにルッツが声を上げる。答える者はいなかった。思わず息を詰めて、振り返ろうとして……やめた。
 恐ろしかった。振り返った先に誰もいなかったら? 【黒隊】の仲間も、誰も……死んでしまっていたら?
「違う。負けない。絶対に負けない。負けるのは、諦めたときだから。……俺は」
「……おいおい、随分派手にやられたもんだな」
 不意に声がした。イーサ(c18047)の声であった。敵をかき分け彼は進む。同時に、ログレス(c00473)の咆吼が戦場に響いた。
「無事な者はいるか! まだ終わってはおらぬ!」
 ログレスが声を上げると、イーサは肩を竦めた。
「いるさ、ここにな。けれどな大将、これをどうする? 勝ちはない。これからは負けないことが大事だろう?」
「うむ。この迸る気合いで何とかできぬものかのぉ」
「気合いで何とかできる段階は、とっくに過ぎてるだろうさ」
 そうか、と真面目な顔をするログレスに、ルッツは思わず小さく吹き出した。やれやれとイーサは呟く。……それを見て、では、とログレスは武器を抜いた。
 ……最早闘える者が他に誰もいないなら、彼等が戦い仲間達が撤退するのを守るしかない。
「参ろうか。最後の大仕事だ。諦めるわけにはいかぬからな」
 そうしっかりと言い放って、ログレスは走り出した。

●その背を、見送る
 そして、唯一。一部勝利をおさめた場所があった。
「それ、この突撃を止められますか!?」
 【*緋兎*】、フェンネル(c17578)がキャッスルクラッシュで敵を薙ぎ倒し、蹴散らし顔を上げると、デイジーとナナミもそれぞれ敵を仕留めたところであった。
「大丈夫でしょうか?」
 アルトリア(c02393)がブレイドタイフーンで周囲の最後の一匹を仕留めると、顔を上げた。フェンネルも小さく頷く。
「このあたりは、何とか。……とはいえ」
「戦闘を続行するのは……困難ですね」
 アルトリアは目を伏せる。
「皆さんは……ご無事でしょうか」
「解りません。でも今は、私達に出来ることを行いましょう。……加勢に行かなくては」
 しっかりという。ロゼッタが微かに微笑んで、
「大丈夫ですわ。*緋兎*の皆さんが負けるわけありません。……さあ、行きましょう」
 信じていると、団長が走り出すので、二人もその背を追うように走り出した。
 リィンティアの妖精が走る。ゲルダも氷柱を打ち出して援護した。その援護を受けながらフラムとコズエが確実に敵を仕留めていく。……そして、
「ん……。この調子だと勝てそうだね」
 シャラーレフ(c04126)が目の前の敵を握りつぶした後、そう言った。
「いっきまっすよ〜」
「にゃはは、任せるんだよ〜!」
 ファルゥとセレスが明るく敵を倒している様子に目を細めつつも、シャラーレフは周囲を見回す。
「うむ。とはいえ消耗も激しい。残って闘える者も少ないだろう」
 ヴェニエルがそう言うと、シャラーレフは頷いて聖炎を翳した。
「こまったねえ」
 ライヤーの言葉にアリーセも頷いて血の猟犬をけしかける。
「ここは勝てたわ。でもじきに……撤退になるかもしれないわね」
 なら、とシャラーレフは走り出す。最後まで全力で戦うこと。そのためだけに。

「なにこれ気に入らない。なに調子乗っちゃってんの?」
 エルが弾丸を連射すると同時に、ジゼルも棍を振り回し突撃していく。
「ああ、本当に。目障りで小賢しい奴らだよ。さっさと僕の目の前から失せなよ」
 ジョシュア(c22256)が妖精と共に敵を切り裂いた。

 この戦場は唯一辛くも勝利を収めていた。
 無数とも思われた敵の攻撃が徐々に途切れていく。

「行こう、フヨウ! あと少し。あと少しだから……!」
 セリ(c03885)がそう言って妖精と励まし合った。その時であった。
 誰かの声が上がり、皆己の耳を疑った。ここ以外の戦場は、敗北したという知らせだった。
「え……。そんなはずは。何かの間違いじゃ……?」
 セリが思わず声を上げる。ジョシュアは面白くも無さそうに鼻を鳴らし、目の前にいた、最後の一体を切り裂き倒す。
「じゃあ、撤退をしろって言うのかい? ……いや、しなければならないだろうね。他が破れたなら、ここもじきに……」
「だったら、限界まで……! いいや、限界だって、越えてみせる……!」
 セリの声に、ジョシュアは一つ頷いた。気持ちはわかった。けれども同時に彼の目は前方を捕らえている。無事、まだ戦える者達が遙か先に向かって走り出し、その目の前に未だ健在の敵が待ちかまえているのが解った。
 ……自分たちは、そこに行くだけの力は、もう残ってない。
「済まねぇ、ラビ。最後まで、共に戦うって言ったのに……」
 レジェロがそう言って、彼の隣にいた男は首を横に振った。
「意味わかんないし。レジィや、他のみんなが一緒だったから、俺はたまたま生き残ってるだけだから。……じゃ、行ってくる」
 走り出す。ぽつりと最後に、彼はそう言った。
「だから、みんな連れて逃げてくれ。……死ぬなよ」

●棘に呑まれる
 戦場で辛うじて健在だった者達は、それぞれに戦いを続けていた。
 いつの間にか隣にいた仲間が一人減り、二人減り。ただがむしゃらに走り続け、仲間と出会えばまた共に前へ進み戦い続け……、そして気がつけば、十五名になっていた。
 それぞれ精一杯、己の為すべき事を行おうとした。通常の戦闘であれば、それで問題はなかったであろう。……だが、この戦場を覆う大きな敗北を覆すには、残念ながら力が足りなかった。
「上だ!」
 白夜・ラビ(c03369)の言葉にとっさに蒼魔天征・リゼル(c02036)が身を屈めた。頭上より振り下ろされた斧を間一髪で避ける。
「……っ、助かった!」
 即座にトンファーで反撃し、リゼルは声を上げた。しかし次には槍を持つマスカレイドがリゼルの腹を貫く。
「回復します。無理はなさらずに!」
 しっかり者のメイドさん・セシリー(c17640)がライフベリーを投げるので、隣でオーラの城壁と共に突撃した翼雲・ルク(c00833)が思わず声を上げて笑った。
「無理しないなら、こんなところまで来てねえだろ!」
「ああ。確かにな」
 ラビが頷く。彼等は撤退を始める仲間達を守るため、最後まで戦うことを選んだ。……あるいは、ひけと言われても引けないところまで来ていたのかもしれない。
「僕……も、頑張ります。皆さんから、置いて行かれないように……」
 今はこれがせいいっぱい・フィアルー(c15388)もまた邪悪なる渡り鴉を召喚して、なるたけ弱った敵を狙って数を減らしていく。
「しっかり狙うのだ。弱っている敵と……少しでも指揮官らしき者を見つけたら、狙い撃て」
 魔弾の射手・クロウリー(c16216)も諭すように言いながら、自信は楽園の門を開いた。長い戦いでかなり消耗しているが、やらねばならなかった。
 そんなクロウリーを、弓を持ったマスカレイドが狙っている。きっちりと狙い定め、矢を入ろうとしたその瞬間、
「そう……簡単にやらせたりなんかしないわよ」
 仲間の背後、影に紛れるように赤案山子の・ジュリア(c17193)の声がして、そのマスカレイドの眉間を貫く。倒れる敵を見もせずに、すぐさまジュリアは次の矢を引き絞った。
「本当に。今更疲労が激しいから気をつけろと言うわけにも……参りませんね。我が領主、領民、領地に仇なすものは何者であろうが、全力で叩きのめさなければいけませんから」
 紅輝獅子・ミルバ(c29275)が微かに微笑んで、舞うように扇を走らせた。癒しの舞を舞う体力は最早残っていないが、代わりにその扇が突風を巻き起こす。
「あー、くそ、落とし穴でも掘ってやりたいところだな!」
 暁の朱梟・シュリ(c19933)が冗談めかしてそう言って、死棘槍を投げつける。巨大な棘の槍に貫かれて倒れるマスカレイド。しかし次の瞬間には新たな敵が現れていた。
「……っ」
「マリーリナさん、大丈夫!?」
 【*緋兎*】の豊穣の舞姫・マリーリナ(c20431)が斧の一撃を受けて膝をついた。音速の一矢・ベルガモット(c24965)が代わりにその敵に矢を射かけると、それをまた隙として別のマスカレイドがベルガモットの背後に回り込む。
「まだまだ……行けます!」
 辛うじて顔を上げ、目眩のする身体でマリーリナは大樹の苗木をベルガモットに襲いかかるマスカレイドに突き刺した。
「そのまま、離さないで! でりゃぁぁぁぁぁぁ!」
 かけ声と共に槍が一閃する。それいけ弐槍で駆ける戦乙女・ティファナ(c05979)が追うように槍を突き刺した。
「大丈夫!?」
「ええ、何とか……」
 マリーリナは傷口を押さえながら頷いた。
「厳しい戦いですが、負けなきゃ勝ち。そんな気構えで参りましょう。粘れば粘れた分だけ、仲間達が無事に逃げられると信じて」
 蒼波・ユル(c16214)もまた勇騎士ジョナの紋章を叩きつけながらもゆっくりという。ベルガモットも疲労のにじむ様子で、
「まだまだ、平気よ。今のうちに、みんなが逃げてくれてると良いんだけれど……」
「さあ、どうかしらね。でも馬鹿じゃなかったら、逃げるぐらいはしてるでしょ。……ああでも敵に背を向けるぐらいなら戦って死にたいなんて言う、ある意味馬鹿も多いから、やっぱり逃げれてるかなんて保証はないわね」
 ものすごく淡々とした口調で、【機動武闘團】の楽しくやりましょ・ハルナ(c20456)が神火纏ったハンマーを振り回しながら言うと、高みを目指して・トウカ(c20010)が肩を竦めた。
「それ、は、人のこと言えないと思う、ね」
「あら、私がそうじゃないなんて、一言も言っていないでしょう?」
 軽口は叩きながらも息を合わせて攻撃を続けていく。徐々に戦いは激しくなり、仲間は疲労感を増していく。
「絶対に奴らを逃がすな! 生き残らせてまた挑まれても面倒だ。ここで皆殺しにしてしまえ!」
 声が聞こえる。ティファナの口元が思わず歪んだ。
「なんだろ、すっごいわくわくする。いつもと立場と全然逆だし、これから大逆転するっきゃないね!」
「ふむ、そうだな。だがお喋りできるのもここまでだろう。最後に何か言い残しておくことはあるか?」
 クロウリーがそう言って、煙草を取りだし口にくわえて火は点けず目を細めた。
「……帰ったら一服しよう」
「え、最後に。最後か。最後なら……ぜーったい負けない」
 ティファナもポニーテールをぶんと振って、槍と共にいの一番に走り出す。
「え、えええええ、えっと、せ、精一杯頑張りますっ」
 フィアルーが棘の鴉を召喚し、
「んー。じゃあ俺は、帰ったら旨い飯が食いたい! 後みんなは俺が守る!」
 からからと笑ってルクも彼女を追った。
「いえ、ルサリエに膝枕して貰うまで死ねません」
 セシリーがくそ真面目な顔をしてライフベリーを振りかぶった。
「膝枕か。膝枕はなー。ちょっと違うと思うんだ。でも頑張った分だけ、何か良いことあっても良いと思うんだよな。何が良いと思う? ご褒美とか」
「全くもって興味がないな。私達が為すべき事はいつも変わらない。全力で、ただ多くのマスカレイドを踏みつぶすのみ。……始めるとするか」
 ラビが首を傾げながら言うのとは裏腹に、リゼルが淡々と言ってトンファーを構え走り出す。
「そうね、やることは変わらない。全力で守るのみです」
「言いたいことは帰ってから言うわ。早撃ちは、私の得意分野よ。その身に受けなさい!」
 マリーリナとベルガモットも武器を構える。
「では、私も一つ舞いましょう。……たとえ、この身朽ち果てようとも守りぬく覚悟です」
 そんな一同を追うように、ミルバも駆け出した。足取りはあくまで軽く。
「え、これなんか格好いいこと言わなきゃいけない流れかな。えーっと……」
 思わずシュリが笑ったところに、
「良いから手は動かすの。倒れるにしても一人でも多く敵を屠ってからにしましょ」
「あ、いや、倒れないからみんな!」
「あぁ……それも、そうね」
 ジュリアの言葉に返すシュリ。そう、と納得がいったように、彼女は仲間の後ろから弓を引き絞る。
「ええ。簡単なことですね。諦めないし、最後まで負けるつもりはありません」
 ユルが微笑む。
「……結局、全然一言になって無いじゃない。本当にこんな時までお喋りして、ただの馬鹿じゃないかしら」
 ハルナが呆れたように、いつもと全く変わらぬ皮肉な口調でそう言ったので、トウカは小さく頷いた。
「そうだ、ね、いつもと一緒。ただのピンチだから……それじゃあ、行こう、ね。ん、頑張る」
 そうして彼等は一歩も退くことなく戦いに身を投じた。
 戦いの後、参戦した百八十三名中、百六十八名の帰還は確認されたが、残る十五名の姿は、何処をどう探しても見つけることが出来なかった……。



マスター:ふじもりみきや 紹介ページ
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参加者:183人
作成日:2013/12/06
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<戦闘結果>

●Battle1(勝利!)


順位戦功点名前
11344高みを目指して・トウカ(c20010)
21094楽しくやりましょ・ハルナ(c20456)
31062それいけ弐槍で駆ける戦乙女・ティファナ(c05979)
41004紅華絢爛・セリ(c03885)
5999乙女チックなロマンス・フェンネル(c17578)
6724赤案山子の・ジュリア(c17193)
7709蒼波・ユル(c16214)
8537豊穣の舞姫・マリーリナ(c20431)
9511音速の一矢・ベルガモット(c24965)
10508手折られた花・ジョシュア(c22256)
11397レディバガール・シャラーレフ(c04126)
12321暁の朱梟・シュリ(c19933)
13320紅輝獅子・ミルバ(c29275)
14318魔弾の射手・クロウリー(c16216)
15280ラピュセル・アルトリア(c02393)
16270冷厳なる鉄鎚・ヴェニエル(c18446)
17247翼雲・ルク(c00833)
18239今はこれがせいいっぱい・フィアルー(c15388)
19211赤き静焔・ジゼル(c08357)
20203白夜・ラビ(c03369)
21184斜陽の福音・エル(c21366)
22172黒の野獣・レジェロ(c04702)
23167しっかり者のメイドさん・セシリー(c17640)
24161気高き薔薇の槍姫・ロゼッタ(c00618)
25158眠る光の歌声・リィンティア(c05773)
26140時の旅人・ルイカ(c28323)
27120無垢なる漣・ナナミ(c34823)
28119弓の忍者・ライヤー(c10003)
29115蒼氷の瞳・アリーセ(c34080)
30112幼き悠久の狐姫・セレス(c01242)
31107王道滅却紅蓮の炎・ファルゥ(c05128)
32104杖の武芸者・コズエ(c35363)
32104蒼魔天征・リゼル(c02036)
34102破竹円舞・デイジー(c05482)
3558ナイトランスの魔想紋章士・アンジェリカ(c34588)
3633アイスレイピアの妖精騎士・ゲルダ(c34769)
3731瞋恚の焔・フラム(c22151)

●Battle2(敗北……)


順位戦功点名前
1675黎明の氷花・レオノーレ(c04664)
2602ストロベリーイーター・ナナ(c01539)
3587蝋燭の正しい消し方・ニャルラ(c08107)
4580焔棘・ケーナ(c10191)
5565ナジュムの棘・レサト(c02802)
6553暁烏・ニール(c30118)
7543白い羽根・ニーナ(c01336)
8530三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)
9460空翔る天馬スカイウォーカー・ディヴァイン(c03131)
10428靡く千の藁・ヨゼフ(c04167)
11414双眸に宿す紫水晶・アラレズ(c34367)
12363天蒼牙・シャオリィ(c00368)
13304碧霧の騎士・ミストラル(c10585)
14263砂糖菓子の弾丸・ニコル(c11346)
15190紫煙銃の忍者・ゲンジ(c34070)
16185桜花の術士・クオン(c23084)
17180潮竜・イリアン(c07827)
18175宴会好きの破戒坊主・エンカイ(c29015)
19165征服者・ヴィンツェンツ(c15253)
20164竜剱・ノイズ(c08532)
21158ペティアガラ・ヨハネス(c00139)
22138天然お気楽極楽アーパー娘・ナギ(c02610)
23135古龍蛇・ジョージ(c15355)
24129夜紫の星巫女・エミリー(c21297)
25107新緑を纏う狩人・アレス(c01633)
26106銀目の踊り子・タージェ(c19470)
27105優しく奏でるは妖精組曲の音色・エリーゼ(c06134)
28102運命の車輪・アイリーン(c29061)
2983白薔薇兎・ノシュアト(c02822)
3075切り札・エマス(c30188)
3149従光の魔想紋章士・フォルト(c34866)
3246艶獣・ガルド(c13422)
3343護法の戦姫・マナ(c08375)
3441蜂密ヴァニラ・イチハ(c26152)
3539風止み・リエッタ(c17971)
3630紫色の新生どじっこ皇女・ヴァゼル(c13187)
3630孝一文字・シイナ(c30040)

●Battle3(敗北……)


順位戦功点名前
1822ランスセイヴァーアイン・ジェイナス(c15904)
2804獅子の少女・レオナ(c26057)
3614スプートニク・ニエ(c08103)
4575白華遊夜・アッシュ(c13746)
5475黒華・アウレリーア(c28604)
6385橙灯・ルーク(c07530)
7327薔薇揺り籠の蝋燭・ミント(c12096)
8320花の妖精姫・アメリア(c34101)
9315優しき戦士・ナハト(c23195)
10256絶対零度・リゼリア(c34301)
11233黒衣の剣士・ユエイン(c00108)
12222緋燕飛舞・ローザ(c01277)
13221黄金戦姫・アンゼリカ(c32742)
14203混世魔王・ファウナ(c22864)
15201日陰の眠り姫・サラ(c28985)
16190穏やかに咲く月見草・ウィスタルテ(c03467)
17161蒼海の獅子・リオン(c34220)
18160ルーガルー・ヴァイオラ(c12629)
19158格闘系賢者・アヤカ(c34221)
20156幻奏調律士・サクラ(c01323)
21148世界が嫉妬するほど美しい・リーナ(c32966)
22145流離いの・エルヴィン(c20729)
23140銀陽狐・シキヤ(c01155)
24134不香の花・アリル(c07426)
25127幸せに綻ぶ花の巫女・ミミ(c02229)
26105空を求めて・ソラト(c33966)
2777黒鋼の守護獅子・アルヴァード(c04639)
2876ブラックラック・バラノラ(c13473)
2959星を探す娘・ナージャ(c02152)
3052月と泡沫・ノアージュ(c23299)
3147碧炎灯爲・ヌイ(c25614)
3245智一文字・ケイ(c35396)
3344ホークウインドと呼ばれたい・スナ(c25202)
3439武豪ドラドの継承者・ガル(c26044)
3538ハニーフィンチ・アレンカレン(c03179)
3633幸せの四葉・マナ(c34244)
3729地の燈翼・リシフィア(c16309)

●Battle4(敗北……)


順位戦功点名前
1844花咲く正義・カレン(c01117)
2691鏡花・ユエル(c03933)
3614叡智の闇・リデル(c34372)
4465雪華の祈り巫女・レイア(c03046)
5423秋の新作スイーツ調理中・マーベリック(c15694)
6384悪夢の刈り手・シェミア(c19503)
7338真銀のトロバイリッツ・アルメイア(c02067)
8330荒野の山羊使い・セヴェルス(c00064)
9286エンブレ初のロックギター弾き・ガルバード(c18200)
10278反転・クラウス(c12274)
11268万里流浪の義士・イーグル(c32873)
12239白緑・アルトゥール(c01240)
13230素敵な齧られ帽子の・ゼルガ(c01231)
14219宮宰・シルベスター(c05709)
15218アッシャレ・ジーユ(c16905)
16202赤き獣・メロ(c12347)
17173禍つ女・ホノカ(c25747)
18172穢れ無き偽り・セナ(c31353)
19169星蝕・ロットバルト(c01303)
20138ちょっとずれてるおねぇさん・アトラ(c21057)
21124紫煙の錬金術士・アリサ(c26104)
22118飄飄蒼空・キドー(c05202)
22118白雪に紛れし小花・ユーリ(c30911)
24113ちょうちょ結びの・リジア(c18681)
25103昊涯・レイン(c01239)
26102月影に舞う銀狼・ゲオルグ(c15479)
26102黄龍に近づきし者・ヘカテイレス(c00644)
2893おねむ騎士・ミリア(c02694)
2992魔鍵の星霊術士・キャロル(c27596)
3090マイペースエルフ・ラヴィア(c34422)
3185夢見の鉱石・フォルトゥナート(c04323)
3271天鳴空啼狐・ソウジ(c00485)
3365ナイトランスの天誓騎士・ジャンカルロ(c35401)
3460シュトゥルムフロイライン・ルサリエ(c34957)
3553月の薔薇乙女・ウミ(c09537)
3647螺旋の槍騎士・スノー(c34467)

●Battle5(敗北……)


順位戦功点名前
1621牙持つ灰色鴉・ログレス(c00473)
2575氷棘・イーサ(c18047)
3418木を育て歩む者・フォムルス(c16410)
4396和装の令嬢・アキホ(c19159)
5392朱弦烈火・ルッツ(c01102)
6351九龍公・シーヴァー(c03034)
7326勿忘草・ティルキア(c33712)
8282黄昏の叢雲・エスティール(c02815)
9278剣の誓い・サァド(c12899)
10236夜来香・ヘミソフィア(c03151)
11230夜が訪れる刻・シキミ(c32374)
12212氷月の双舞・セリカ(c01569)
13202奇跡の花の戦士・アイリス(c34883)
14173赤きフレームの眼鏡っ子・イオン(c35175)
15166月への誓い・ララ(c12094)
16147神楽の火公子・ヒュウガ(c25201)
17134至天狼・ユスト(c02236)
18125餓狼・リュウ(c15878)
19118夢見る暴力・フィグ(c00731)
20116菜園の守り人・バジル(c12095)
20116黒曜の騎士・レム(c34647)
22115切り込み刑事・エルザ(c35000)
23113喫茶店ミミの女店主・リムィリファルァ(c32636)
2499夢歌い・ヤクモ(c01272)
2596漢字で書くと山岡志津摩・シヅマ(c25203)
2693小さな竜眼・カシム(c31419)
2790果物屋・リジュ(c22699)
2886光り輝く紅い刃・アリカ(c32337)
2970ハイドラハルス・アスール(c13470)
3068陽に照る穂波・ポリーナ(c35258)
3158白い鴉・ギィ(c08806)
3256黒竜・イングリート(c14479)
3337沈黙の奏演者・シルヴォ(c19708)
3426ロードオブ・ミスルール(c35301)
3523槍の武芸者・レイヤ(c34770)
3523荊の身体・ルシック(c35349)