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リヴァイアサン大祭2013:雪薔薇姫の秘密

   

<オープニング>

 12月24日は、リヴァイアサン大祭だ。
 1年に1度、この日だけ、エルフヘイムの外周を支える星霊建築の元となっている、水の星霊『リヴァイアサン』が半実体化して空中を飛び回る。
 すると、空からは雪が降り続き、泉は温泉に変わり、小川には甘い蜜が流れるという……。
 そんなリヴァイアサン大祭の日は、エルフ達にとって『パートナー』との絆を尊重し、静かに世界の平和を祈り合うという大切な日なのだという。

 君も、大切な人や仲間達と一緒に、リヴァイアサン大祭を楽しんでみてはどうだろうか?
 
●雪薔薇姫の秘密
 さあ雪薔薇姫、あなたの秘密の唄を教えてよ。
 ――大祭の夜、そんな秘密の呪文を知る者だけが辿りつけるのは、純白の雪化粧を施された森の奥に雪と氷で生まれた、綺麗な綺麗な小さな街。
 深い藍色に抱かれた夜の世界、星明りで白銀に煌く街並みは、雪と氷でできた家々や聖堂の中に燈されたランプのあかりで暖かな蜂蜜色の輝きを抱く。聖なる夜ただ一夜限りの、雪と氷と光の街。そのいたるところに雪と氷の薔薇が咲いていることから、この街は『雪薔薇姫の夢』と呼ばれていた。

 雪薔薇姫は、このあたりの御伽噺に語られる少女姫。
 一年にたった一日、大祭の日にだけ目覚める眠り姫。
 薔薇とラズベリーで仕込まれたワインに憧れてやまない、ずっとずっと少女の姿のままの花の姫。
 このあたりのエルフ達はみんなみんな彼女のことが大好きで、誰もが彼女の物語を大切に大切に胸に秘め――そうしていつしか、誰一人彼女の物語そのものを語ることがなくなったという、不思議な不思議な夢の姫。
 今となっては誰もが知る事柄といえば、雪薔薇姫が大祭の日にだけ目覚める少女姫であることと、姫が薔薇とラズベリーで仕込まれたワインにずっと憧れ続けていること。
 そして、誰かが彼女のために、薔薇とラズベリーで仕込んだ『お酒じゃないお酒』を創ったことだけ。

 さあ、雪薔薇姫の夢と謳われる、雪と氷と光の街へ繰り出そう。
 雪降る聖夜に白銀に煌いて、中から柔らかな蜂蜜色に輝く雪と氷の街の通りではワインスタンドが皆を待っている。薔薇を浮き彫りにした銀のゴブレット、あるいは白樺をまぁるくくりぬいたころんとしたマグカップに注がれるのは、もちろん雪薔薇姫あこがれの薔薇とラズベリーで仕込んだワイン。
 もしくは、誰かが姫のために創ったお酒じゃないお酒、薔薇とラズベリーで仕込んだコーディアルだ。
 どちらも深い深い赤葡萄酒の色と濃厚な風味を湛え、熱く仕上げられたそれをひとくち飲んだなら、身体の芯から暖かなぬくもりと薔薇やラズベリーの香りが咲く。
 一気に飲んでしまうのはもったいないから、温かな杯を手に雪と氷と光の街の散策へ出かけよう。

 雪と氷の薔薇咲くアーチを潜り踊るような足取りで雪と氷と光の街並みを眺めて回るのも素敵だし、綺麗な綺麗な小さなおうちに入ってみるのもきっと楽しい。
 美しく壮麗な雪と氷の聖堂で、あるいは雪と氷の薔薇咲く庭に揺れる氷のブランコに暖かな毛皮を敷いて、聖なる夜や雪薔薇姫に想いを馳せるのもこの上なくロマンティックなひとときになるはずだ。
 雪薔薇姫の夢――そう呼ばれる雪と氷の街はとても不思議で、この街は毎年必ず同じ姿を見せてくれると言う者も、この街は毎年少しずつ姿を変えていると言う者も同じ数だけいるという。
 それはまるで、皆が語る雪薔薇姫そのもののよう。
 雪薔薇姫がずっとずっと少女の姿のままでいるのは、彼女が永遠に歳をとることがないからだとも、一年にたった一日目覚める大祭の日にしか彼女の時が進まないからだとも言われている。
 不思議な夢の姫が象徴するものは、永遠。あるいは、ゆっくりと変わり続けるもの。

 ――あなたが望むのは、どちらのほう?

 深々と雪降る夜にふわり風が流れれば、雪と氷の葉が澄んだ音を響かせ、雪と氷の薔薇の花片が優しく震えて唄う。
 さあ雪薔薇姫、あなたの秘密の唄を教えてよ。
 
「秘密の呪文を教えてもらったの」
 それこそとっておきの秘密を明かすように、暁蝶の狩猟者・アンジュ(cn0037)が笑みを燈す。
 居合わせた同胞達にこっそり秘密の呪文を伝えて、暁色の娘はこの上なく嬉しげに手を伸べた。
「ね、アンジュと一緒に――雪と氷と光の街に行ってみない?」
 雪降る聖夜に白銀に煌いて、中から柔らかな蜂蜜色に輝く雪と氷の街を、雪薔薇姫があこがれた薔薇とラズベリーで仕込まれた温かなワイン片手に散策するのだ。酒精が苦手な者や歳が足りない者のためには、『お酒じゃないお酒』こと薔薇とラズベリーのコーディアルが用意されている。
 元は香草を酒に浸した飲料を指していたコーディアルだけど、今では摘みたての香草やフルーツをたっぷり使った酒精のない飲料を指すことが多い。
「アルコールがあるのがリキュールで、ないのがコーディアル……って言うとわかりやすいかな?」
 ほんとにね、お酒じゃないお酒なの――と暁色の娘が内緒話めかして笑う。
 薔薇とラズベリーの香りも甘酸っぱさもぎゅうっと凝縮させたコーディアルは、温かなお湯で割ってもなお香りも風味も奥深く濃厚で、味わえば極上の葡萄酒をも思わす充実感を齎してくれるのだ。
 永遠を望むなら銀のゴブレット、変わり続けたいと望むなら白樺のマグカップを手に取って。
 誰もが薔薇とラズベリーの熱に酔える――雪と氷と光の、聖夜限りの夢の街。

 さあ雪薔薇姫、あなたの秘密の唄を教えてよ。
 
 雪薔薇姫の夢を心のままに楽しんで、望むものに手が届いたなら。
「あのね、また逢おうね」
 翌日には消えてしまう、けれどとてもとても愛しい、冬の恵みの祭り。
 思い出を語り合えるひとがいれば、ずっと先までも、この日の想いを覚えていられると思うから。


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参加者
NPC:暁蝶の狩猟者・アンジュ(cn0037)

<リプレイ>

●雪薔薇姫の杯
 聖なるこの夜限りの魔法で生まれた雪と氷と光の街。透きとおる雪と氷が暖かな蜜色の輝きを抱く夢の街はさながら冬の宝石で、靴先で唄う雪のささめきも凍れる白と暖かな光を愛しむ声も、優しい煌きに溶け込んでいく。
 軽やかに跳ねる煌きと皆の笑顔で自然と足取り弾んだアヤメが暁色を見つけたなら、フェイランが彼女とラツの手を取り駆けだした。幸せな輪へ手招いたなら、次に手を伸ばすのは薔薇とラズベリー香るワインの杯。
 けれど白樺と決めていた手は銀へ伸び、銀を選ぶはずの手は白樺を包み込んでいた。
「不思議だ!?」
「不思議ね!?」
 奇遇な廻りあわせに気まぐれな手の二人が笑み交わし、
「ラツさんの惹かれる永遠が其処に在ったのかしら」
「フェイランちゃんは変わったとこだもんねー!」
 素直に白樺のマグを手にしたアヤメが悪戯な笑みを覗かせ、暁蝶の狩猟者・アンジュ(cn0037)が短くなった娘の髪に降りた雪花を掬えば、皆で笑みを咲かせて乾杯を。
 薔薇とラズベリーの酒が甘酸っぱく喉に落ち、心と身体に滲みた熱が吐息へ変わる。
「雪薔薇姫の杯、アンジュさんはどちらだと思う?」
「んとね、白樺!」
「まあ、私達とお揃いね!」
 白く燈ったラツの吐息に暁色が手の杯を掲げれば、幸せな薔薇色を頬に燈したフェイランが娘達に飛びついた。弾けるように笑って抱きとめたなら、アヤメもラツの唱える呪文にそっと耳を澄ます。
 さあ雪薔薇姫、あなたの秘密の唄を教えてよ。
 優しく響いた、その音は――。
 雪と氷の街に映える黒の三つ揃えに身を包み、雪降る夜に金の髪踊らせてミストラルは急ぎ足。
 銀の杯に揺れる薔薇とラズベリーの滴が零れぬよう気遣うけれど、一歩ごとに恋しさ募って自然と足も鼓動も速まっていく。出逢った時には想像もできなかった、この気持ち。
 可憐なミニ丈の衣装にファー付きコートを重ねた姿を見つけた途端、鼓動が跳ねた。
「待たせたかな?」
「お帰りなさいミスティ! 大丈夫ですよっ」
 待ちびとを満面の笑顔と白く弾んだ息で迎えたマクシムは、手渡された銀の杯に篭められた願いに気づけば耳まで薔薇色に染めた。そっと見れば照れ隠しのように逸らされる青の瞳。見て回ろうかと手を差し出されれば、胸の裡を光の羽で擽られるような心地で手を重ねて。
 聖なる夜に生まれた夢の街を、夢見心地でさあ行こう。
 雪薔薇の花弁重ねたような裾を翻し、振り返ったロゼリアが紡ぐ言の葉は。
 ――この誰かの姫じゃない雪薔薇姫の秘密はね?
 明かされた秘密にお安い御用だとナルセインが笑み返したなら、迷わず取るのは白樺の杯。熱い薔薇とラズベリーのワインが注がれれば、優しい白樺の香気までもが香り立つ。
「一足早く春の森に連れていかれた心地♪ よね」
「それじゃ、雪降る春に――乾杯」
 軽やかに鳴る木の音色。
 ひとりぼっちじゃないのに殊更胸に沁みる夜だから、いつかこの夜を語り合える誰かと一緒がいい。
 雪と氷から生まれた小さな家は暖かなあかりを抱いて、小脇と肩を定位置にしていた子ぱんだ達が楽しげに転がり込む様にズィヴェンとリーフが笑み交わせば、更に優しい空間へと変わる。
「ちび達もカップ持った? んじゃ」
「乾杯! そして、メリーリヴァイアサン!」
 ころころした仔達には勿論コーディアル、けれど大人な銀細工師とその弟子は深く甘く香るワインを満たした銀のゴブレットを軽快に鳴らす。喉に落とした薔薇とラズベリーの熱が咲かせるのは幾重にも重なるような深い香りと甘さ。
 成程これはとリーフが破顔すれば、
「んだ弟子、そっち美味そうだな?」
「隣のワインは甘いとか? って、あれ!?」
 腰に回した手で奪った杯をズィヴェンが呷り、同じ味ダガ、何だかとても甘かったぜと喉を鳴らす。
 今夜は心ゆくまで、甘さに酔おうか。
 雪薔薇に甘い光瞬く街の、綺麗な綺麗な小さなおうち。そっと足を踏み入れあったかブランケットに二人くるまれば、互いに自然と咲き零れる笑みの花。
 凍えたこころの花は綻び始めたばかり。
 けれどこの気持ちだけはきっとずっと、とヴリーズィが掲げたのは銀の杯。
「大好きだよ。リズの大好きなアンジュ」
「アンジュも、リズちゃんが大好き」
 ぎゅっと片腕に深く重なる温もりに咲き綻んだ唇をワインで潤ませ、響かせるのは秘密の唄。
 ――ね、あったかいね。

●雪薔薇姫の唄
 雪降る夜の寒さは気紛れに糸を継がれたマフラーで遮って、温かな杯と大切なひとの手で両手を埋めて、聖夜の夢のそのまた奥へ。引いて引かれる手に重ねるのは幾つもの思い出話、銀の杯から夢の熱を喉へ落としたオニクスは、
「これからも変わらず、一緒にいれたらいいなって思うんだけど」
 アンタはどうだ? と金の眼差しを傍らへ向けた。
 知らず掌で白樺の質感探るのは後押ししてくれるものを探してか。酒香と街に酔ったせいと覚悟を決めて、ヴフマルは秘密の唄を声にする。
 誇れる自分でありたいよ。思うまま君の隣で笑えるように。
「まだまだ到らぬ俺だけど、少しずつでも歩むから」
「――ん」
 そのまんまでもいいのになー、なんて想いは胸に秘め、指先に燈った温もりにありがとうの気持ちを込め、娘は微細な雪花煌く彼の髪をくしゃりと撫でた。
 いつまでも、よろしくな。
 これから先もずっと、よろしくね。
 柑橘のミニリースを添えた包みに秘められた雪苺のシュトレンは帰ってからのお楽しみ。雪と氷の薔薇は夢の街での楽しみにと誘うゼルディアに、ナルセインは心底愉しげに歩調を合わせた。
 少女姫の憧れ満たすのは白樺の杯。
 たとえ羽ばたきは緩やかでも、望む形に近づけるよう変わり続けたい。言の葉に紡げば、
「お互い見霽かす先へ往けたら極上だよな」
「ね、そうよね……!」
 眩しげな笑みが返ったから、娘も瞳を輝かせて杯を掲げた。
 いつもありがとうと、これからもよろしくねの想いを乗せて――二つの白樺で、乾杯。
 氷のブランコで一緒に揺れて、未来を語り合おうか。
「そういうのは恋人や特別なひとに言ってあげて?」
 誘われた娘は悪戯っぽく笑って雪と氷の街へ消えた。深意はなくとも、初対面の相手には難のある誘いだったか――なんて零れた苦笑は白く凍らせ、アルガスは甘い熱香る杯を傾ける。
 さあ、薔薇とラズベリーの熱を満たし、世界が移り変わろうと永遠に幸せ残せる未来を唄おうか。
 雪降る夜を彩る淡桃チェスターコート、花彩纏う姫君のため細工師が用意したのは姫の特等席か彼の役得か。彼女を膝に抱きかかえるようブランコへと座れば、エアハルトの唇から零れるのは白い息と暖かな笑み。
 白樺のマグ二つをこつり唄わせ、雪薔薇姫の夢のひとかけら、氷のブランコを揺らすのはモニカの薔薇色ショートブーツ。幸せの永遠を望まぬわけではないけれど、日毎愛しさが募るよう、幸せだってきっと限りなく増していく。
 なら――終わりを決めちゃうのは勿体ないじゃない。
 愛しい声はエアハルトの裡に微睡む幸福の種をも揺らす。
 ゆっくり変わり往く、異なる彩重ねる幸福に感謝を。
「そういうことだよな?」
「そういうこと!」
 振り返れば鼻先に唇落とされ、薔薇とラズベリーの香りにモニカの笑みが咲いた。
 さあ雪薔薇姫、俺達の秘密の唄を歌おうぜ。
 雪薔薇咲き溢れる庭のブランコに暖かな毛皮を敷いて、恋人達は甘い熱を分かちあう。待ち遠しく迎えた二十の歳をふふりと笑って、アリスティエラはアテアの杯からワインの熱を身体の芯へと燈す。彼女の想いも愛しく見守る彼の想いも同じ。
 銀杯に願うのは――隙間無く感じあう温もりも愛しさも、永遠に続くよう。
「うふふふ、テアくんだぁい好き」
 薔薇とラズベリーの熱でアテアの薔薇姫はいつもよりひときわ甘えんぼ。溢れる愛しさのままに抱き寄せ額に唇落とせば、猫みたいに身をすりよせたアリスティエラが抱き返す。彼の唇も囁きも、甘くて擽ったくて、あったかい。
「オレ以外の前ではお酒飲み過ぎないようにね?」
 ――ただでさえ可愛いのに、もっと可愛くなるんだから。
 彼の耳打ちが届いたかは謎だけど。
 聖夜が明けても幸せな響きと温もりは、ずっとずっと胸のなか。

●雪薔薇姫の夢
 薔薇とラズベリーの香が秘めるのは温かな酒香、酒に弱い恋人を気遣いつつも、彼女のほろ酔い姿を独り占めできる特権を思えばラスティニャックの目元も和らいだ。
 愛しい娘との永遠願い、銀の杯に口づける。
 彼の手許の銀に胸を高鳴らせながら、ユリオールが掌に包むのは白樺の杯。
 ――薔薇姫さま、私、変われるかな。
 もっと想いを伝えたくて、近づきたくて、歌姫は酒香の熱を心に燈した。
「誰よりも、私が一番あなたのことが好きだよ」
 今日はもっと、あなたと触れ合っていたい。
 彼が面食らったのも一瞬だけ。雪降る夜にそっと響いた言葉が胸に溶ければ、自ずと唇が綻んだ。
「それは俺の台詞、だな」
 片手を絡め華奢な身体を引き寄せて、愛してる、と囁き落とせば。
 金の髪に結ばれたリボンが優しく震えた。
 濃藍の夜に白銀と蜜色煌く雪と氷の街。凛と張りつめる冷気さえ幻想的に思える世界で、ふわふわ真白なマフラーで二人寄り添えば、雪薔薇咲く庭園ごと永遠に抱かれたよう。
 銀杯のワインで熱を燈した手で肩を抱き寄せ、リョウは白銀の恋人に囁きを落とす。
「目に映るは白銀の煌き、手には白銀の杯と白銀の騎士……とても綺麗な組み合わせだね」
「騎士……もいいですけれど。今夜は貴方にとっての白銀の姫でいたいかも、なんて」
 頬に淡く薔薇色燈したソフィアが見つめ返せば、勿論、一番綺麗なのはソフィアだからと彼の瞳の光が優しく蕩けた。
 甘い熱と口づけを心と唇とすべてで受け入れ、白銀の姫は彼の金の髪を愛しく撫でる。
 ――貴方は私の、金の王子様。
 聖夜が明ければ消える、星霊の贈り物。
 夢の名冠された雪と氷の街に想い傾けながら、アルジェンが手に取るのは銀の杯。
 たとえば絆、たとえば縁。そして自分なら、経験重ねて得た変化を受け入れつつも、その芯だけは不変でありたいと願う。
 寒くないですか? なんて彼の気遣いに微笑み返すユーフィの手には白樺の杯。
 新しい言葉遣い、暖かな衣服や温かな習慣、美味しいお菓子作り。
 この一年で得た己の変化にふわりと笑み咲かせ、少女は彼を見上げて望む。
 貴方から一本取れて、主と共に失った自信を取り戻せたら。
「そうしたらこの想い、聞いていただけますか?」
「……え……?」
 故郷を出て始めて覚えた、甘く切なく胸へと燈る――この想い。
 お姫様意識したマニートの装いは、純白ベルベットのドレスにふんわりショール。可愛いペンギンの雛姫様、なんてナルセインのは褒め言葉なのか悩みつつ、取るのは彼と同じ白樺の杯。
 旅立つ渡り鳥はまた戻り、過ぎ去る春もまた巡り来る。
「なら、変わり続ければいつかは私も元通りに――」
 雪薔薇姫の憧れで滑らかになりかけた口をはたと閉じ、変なこと言ったかもと笑みに紛らせれば、聞き流した風情でこれは受け売りだが、と前置き、同道巡りに見えて螺旋だったってこともあると男も笑んだ。
 同じ処を巡るようで、その実、上に昇っている。
 何れにせよ――進み続ければ、いつか極上に辿りつけるさ。
 たったひとつへ伸ばした手、ちぎれようとも決して引っ込めたりはしない。
「俺は、生き急いでると思うか?」
 思うひともいると思う、と光希う瞳を覗き、アンジュが笑みを燈す。
「んでも、諦めたらきっとロータスさんは息もとまってしまうよね」
 手の届かないものなんて、限りなく少ない。
 雪の星掴んだ夜の言葉が重なれば、次から次へと涙が零れ落ちた。
 ――ああ。
 降る雪、月光、架かる虹。永遠でないからこそ綺麗なもの。
 たとえ夜明けや涙と共に消えても永遠なんてないと心が叫んでも、身体に刻んだ真実はきっと俺が生き続ける限り、限りなく。
 永遠に近づくはずだから。

●雪薔薇姫の花
 白樺のまろみに抱かれたワインは、夢の深みへ誘うように香り立つ。
 杯と一緒にコヒーレントが掌へ包んだのは、歩き続けたいと思う心。今は暖かな毛皮の隣に座り、温かな酒でお針子さんと一息を。
 ――特別な秘密の味がする……。
 初めての酒精に口づけたリラの唇から零れるのは夢の馨、熱も馨も身体の芯に咲いたなら、ゆるり白に埋もれ瞼を落とす。このまま眠ってしまえそう、なんて思えば。
「俺はね、貴女が眠ってしまったら、とても寂しい」
 雪と降りてきた声に、眠り姫は瞬きひとつ。
「コヒーさまが起こしてくれるなら……巡る彩を一緒に歩いてくれるなら眠らな、い」
 幸せ紡ぐ大事な指先が伸ばされたなら、指も掌も包み込むよう手を取って、彼は眠り姫を目覚めへ導いた。永遠も変化もあるだろう色々な季節を、一緒に見て行きたいから。
 ――また遊ぼうね。
 凍れる薔薇が咲くのは雪降る聖夜。
 深々と降り積もる、冬夜の冷たさは好きだけど。
「凍えて貴女をうまく抱きしめられないのが難点かな」
 冷えた指先で嫋やかな手に触れれば、笑んだ彼女から差し出されたのは白樺に抱かれたワイン。ひとくち含めば氷の花ささめく唄も、花に雪に踊る光の欠片も甘さを増し、唄も光も纏うサリエこそが幻めいてイツカの瞳に映る。
 真白の庭園は時の箱庭。
 揺蕩う永遠は微睡みの夢にも似て、変わり続けることを望む彼女もその淵へと漂う誘惑に揺れる。触れなば落ちん、その稀なる刹那を腕に閉じ込め、彼が口づけ魔法をかけた銀杯のコーディアルを差し出せば。
 永遠と変わりゆくもの、双方の熱を燈した彼女の頬が腕に寄せられた。
 ――もう暫く、夢の狭間を共に歩きましょう?
 静かな聖堂の奥、淡い光透かす氷の薔薇窓仰ぎ見て、遠く永遠を望んだ日に思いを馳せた。
 永遠という名の約束が時に枷となることを、アルマは誰よりも識る。今望むものは妹のようにも想うあの子の成長。けれど私は、と不安が過ぎった瞬間、まるで見計らったかのように扉が開かれる。
「お待たせアルマ、温まるよ♪」
「寒かったでしょ? ありがとう」
 薔薇とラズベリーが温かに香る白樺のマグを二人分、大事に持ち帰ったレンは、大切なひとの白く暖かなマントに包まれた。綻ぶ笑みのまま他愛ない話を語り、やがて優しい静寂が訪れれば、彼女の腕を抱きしめるように己がそれを絡ませ、想いを紡ぐ。
 貴女と出逢えた幸せ。変わる思いも、変わらない想いも、みんな貴女が教えてくれたから。
 変わりゆく時の中で――何処までも、貴女とともに。
 凛と聖性纏う雪と氷の聖堂で、繋いだ手と白樺に揺れるワインの熱を意識する。
 ――姫がワインに憧れ続けているように、私も君と作るしあわせな家庭にずっと憧れ続けている。
 息つくように溢した想いに返るのは暖かな笑み。すぐ手の届くところにあるよと幸せ紡ぐ彼女の唇で冷えた鼻先に甘い熱を燈され、確り繋ぎなおした手でハルネスは、暁色にも愛しい熱を燈した。
 酒精残る唇でそっとキスをして、甘い香りをも燈す。
「誰より君をあいしてるよ、アンジュ」
 ――私が君をしあわせにするね。
「……蕩けそう」
 甘さ燈した唇が、愛してると熱を注いだ。
 アンジュも貴方を、幸せにするね。
 雪と氷で咲く薔薇へと甘い香りを届けるのは銀杯から昇る熱。杯を傾けリューウェンは、己にも甘い熱を燈す。永遠って信じてる? と訊ねるラヴィスローズにも燈る、薔薇とラズベリーの熱。
 今日みたいな日には永遠を望む。
 もっとたくさんお話したいし、もっとたくさん――。
 好きに、なりたいから。
 泡のように浮かんできた気持ち、けれど言葉にする勇気は沈んだまま。
 唇を結んだ少女の手を彼が握った。誰もいない永遠、愛しい者と離れてしまう未来を思えば。
「離したくない……と思ってしまうのだ。――永遠に」
 手に伝わった力に勇気を浮かび上がらせ、薔薇の少女は震える声を絞り出す。
「……離れないもの。だから離さないで」
 ――リュー殿の秘密の唄を、教えて?
 ありったけの勇気で願った少女の耳元に届くのは龍の青年の秘密の唄。
 唄い終われば熱燈る唇が耳元に触れ。
 龍から薔薇への、永遠の想いを捧ぐ。



マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:34人
作成日:2014/01/07
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