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七色の金平糖使い

<オープニング>

●七色の金平糖使い
 世界の彩が薄氷を透かし見るように寒々しく、頬撫でる風が氷みたいに冷たくても、ドロースピカが届けてくれる陽射しにふと『……あったかぁい』なんて声が零れる冬のある日。
 戦神海峡アクスヘイムの片隅、ゲートルートの森に七色の金平糖使いがやってくる。
 きっと今日辺りだねなんて、ずっと難しい顔をしていた村の大人達が頬を緩めて教えてくれたなら、大人達に影響されてずっと笑顔が控えめだった村の子供達の顔が一気にぱぁっと輝いた。
 抑えきれない歓びを身体中であらわした村の子供達は嬉しげに頬を紅潮させ、この村で初めての冬をすごしている新しい仲間達の手を我先にと引っ張って森へと誘う。
「早く早く! 一緒に行こうよ、七色の金平糖使いが来てくれるよ!」
「誰それ? どんなひと?」
「ひとじゃないよ! 森を吹き抜けてく風の名前!! すっごく綺麗なんだから!!」
 都市国家の崩壊。
 この村がある辺りはその未曾有の災厄から直接の被害こそ受けなかったものの、それでもやはり大きすぎる災厄はひとびとに翳りを落とした。街の知人や親戚を亡くした者、街の勤め先や農作物の取引先を失った者。住んでいた処で何もかもを失い、つてを辿ってこの村へ移り住んできた幾つもの家族達。
 大人達が沈んだ顔をしていれば、詳しいことの解らぬ子供達にもそれはうつるもの。
 皆が息を潜めるように過ごしていた村にとって、七色の金平糖使いの訪れはあの日以来初めての明るい報せだった。

 さあ、世界の祝福を浴びにいこうよ!

 飛びきり背の高い針葉樹達が競うように天を目指すゲートルートの森。この森の針葉樹達は秋から冬にかけて、金平糖そっくりな実をつける。取り揃えれば虹もできそうな様々な色、小さな星みたいな形と煌き、舌の上でころりと転がした時の甘さ――と、何もかも金平糖そっくりな可愛らしいこの実は唯一点、ひとの手が到底届かない高所にだけ実るというところが可愛くない。
 けれど、陽射しにふと『……あったかぁい』なんて声が零れる冬のある日。
 普段は鳥達が独り占めしているこの幸せを皆の手に届けてくれるのが、七色の金平糖使いだ。
 不思議な名前を持つこの風は、氷みたいに冷たい空気に暖かな陽射しの匂いを含ませて、深々と冷えて静まり返るゲートルートの森の大気をかき混ぜる。
 幾つもの風達はまるで遊ぶように樹々の周りをくるくる回って幹にそって翔けあがり、遥か高みの梢を揺らして七色に煌く金平糖みたいな実をたくさん、たくさん降らせてくれるのだ。
 森の中から仰ぎ見るその光景はまさに世界の祝福。
 冬の透きとおる陽射しの中から様々な色に煌く小さな星達が幾つも幾つも降りそそぐ。
 上手く受けとめられたなら飛びきり嬉しくて、地面に落ちてしまったって軽く土を払えば平気。ぽんと口に放り込めば広がるのは幸せな甘さ、しゅわりと弾ける不思議な実に当たったなら、それは樹上で鳥に食べられることなく完熟した、最高の祝福だ。

 さあ、世界の祝福を浴びにいこうよ!

 きらきらと七色に煌く祝福を浴びて受けとめ口へと放り込んだなら、子供達ばかりでなく大人達にも歓びいっぱいの笑顔が広がっていく。
 けれどそれも、飛びきり攻撃的な動物達が襲撃してくるまでのこと。

●さきぶれ
「その飛びきり攻撃的な動物達の名前はね――弾丸ハリネズミって言うの!」
 このうえなく真剣な顔つきで、七花の狩猟者・アンジュ(cn0037)はそう告げた。
 くるんと丸まって四方八方に針を向け、ものすごい勢いで弾丸のごとく突撃してくるハリネズミだ。
 普段はほとんど人里近くに現れることはないのだが、崩壊の影響なのか、アンジュが終焉の光景で視た弾丸ハリネズミ達はゲートルートの森近くで冬を越そうとしているらしい。
「それもね、ものすごくいっぱいいるの! そしてね冬だからね、おなかも空かせてるんだよ!!」
 大変わかりやすい自然の摂理である。
 つまり森の中に美味しいものが降ってくるのを察知したはらぺこ弾丸ハリネズミ達が目の色変えて森へ突撃し、そこで遭遇した村人達に『美味しいものは渡さないでキュー!』とばかりに襲いかかるというわけだ。
 特別強い動物ではないが、とにかく数が多い。
 数の暴力によって大怪我を負う者が続出する――というのが問題の悲劇である。
「ってなわけで! アンジュと一緒に対弾丸ハリネズミの防衛線を敷きにいこうよ!」

 現場に到着できるのは、弾丸ハリネズミと村人達が遭遇する少し前だ。
「森の中に綺麗な金色の黄葉を残してる針葉樹が二本あってね、それがいい目印になると思うの。その針葉樹の間のラインで弾丸ハリネズミ達を食いとめられればね、村の人達に被害なく、そして、危険にも気づかれずに済むと思うんだよ」
 七色の金平糖使いが吹くのは一年にただ一度、昼間の数時間だけのこと。
 村のひとびとにとっては本当に久々の明るい出来事だ。避難させたり不安がらせたりすることなく、とことん楽しんでもらいたいなぁって思うの、と暁色の娘が笑みを燈す。
 ただ問題は、村の人達に被害なく、そして、危険にも気づかれずに済むと『思う』というところだ。
「そのへんちょっと不確実なのね。もしかするとこっちの方まで来ちゃうひとがいるかもしれないけど、んでも『こっち来ちゃダメ!』とか言いたくないから――」
 防衛線をただ護るんじゃなくて。
「弾丸ハリネズミ達がやってくる方に向かって、アンジュ達から打って出ようよ!!」

 弾丸ハリネズミは然程強い動物ではなく、しかもある程度ダメージを受けるとびっくりしてその場にひっくり返り、そのまま半日くらい動かなくなるという習性をもっている。
「ある程度鍛錬を積んでるひとなら一撃でこの状態にできるのね。半日たてば村のひともめいっぱい七色の金平糖使いを堪能して帰った後だから、弾丸ハリネズミ達も地面に落ちた実を平和にもぐもぐできるってわけ」
 数匹程度なら恐ろしくはない相手だ。
 だが今回はとにかく数が脅威。その総数はアンジュにも『すごくいっぱい!』としか判らない。
「その全部が一斉に来るんじゃなくて、後から後から続々と来る感じなんだけどね、それでもやっぱり多いから、こっちもプラスワン効果があるアビリティで対抗すべきだと思うの」
 ――それも、できれば近接プラスワン攻撃で!!
 と、暁色の娘は主張した。
 森が戦場となるだけに遠距離攻撃は射線が塞がれることが多い上、ただ防衛線を護るのではなく続々と敵がやってくる方へ向けて戦線を押し上げていこうという作戦だ。
「森を突っ走って戦うことになると思うのね、だから移動と同時に攻撃できる手があるといいなぁって」
 幸い、飛びきり攻撃的な弾丸ハリネズミ達はとにかく近場の相手に突撃してくるから、こちらが全滅しない限り防衛線を突破されたり取りこぼしを出したりするようなことはない。

「んでね、そうやって弾丸ハリネズミ達をみんなひっくり返せたらね」
 ――さあ、世界の祝福を浴びにいこうよ!
 それこそ飛びきり嬉しげにアンジュが笑う。
 七色の金平糖使いが吹く森で、きらきら煌く世界の祝福を思いきり楽しんでこよう。
「あのね、めいっぱい世界の祝福を浴びられたら、また逢おうね」

 都市国家の外、辺境に育った彼女にとり、世界はいつだって美しいもの。
 世界をどう感じるか、どう変えるかも――いつだってそこにいるひと次第なのだ。


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参加者
斧の城塞騎士・フラン(c00997)
昏錆の・エアハルト(c01911)
星筏・クロアハルト(c02432)
漆黒ノ竜・リューウェン(c02487)
青空に響く歌声・カイジュ(c03908)
空とビブリア・ルカノス(c26263)
うっかりボコる群竜士・リチ(c33420)

NPC:七花の狩猟者・アンジュ(cn0037)

<リプレイ>

●七色の森
 冬色の世界はまるで薄氷を透かし見るかのよう、深々と冷えたゲートルートの森で陽射しの彩より眩い金色の黄葉残した針葉樹二本を見出せば、皆でそれらを繋ぐように陣を敷く。
 冴ゆる夜の双眸で見据えるのは眼前に構えた刃に燃える蒼き焔、星筏・クロアハルト(c02432)は蒼よりも凛然と焔よりも灼然と胸に決意を刻んだ。止めるべきは、数多の弾丸の軌道。
「――征こうか。盤上の駒、全てひっくり返してみせるさ」
「ええ。迷わず進んで、運命を変えましょう」
 冬の木漏れ日は淡く、けれど樹上の七色の実の彩ほのかに映して虹の色。穏やかな笑み湛えて瞳を細め、青空に響く歌声・カイジュ(c03908)は強く棍を握り直す。
 辛さ苦しさが心苛む時にこそ、家族や仲間と分かち合う楽しい時間は掛け替えのない大切なもの。だからこそ、村の皆がこの日の世界の祝福を存分に楽しめるように。
 祝福みたい降る実も弾丸みたいに来るハリネズミもまぁるいとげとげ。
 金平糖を食べに来る金平糖――まるで絵本みたいだな、なんて斧の城塞騎士・フラン(c00997)も笑みを洩らせば、折よく吹き始める不思議な風。
 氷みたいに冷たい森の大気に暖かな陽射しの匂いを含ませ掻き混ぜる、七色の金平糖使いだ。
 そして。
「さあ皆、はりっこ達のお越しだ!」
 森の彼方から駆け来る数多のハリネズミ達を捉え、七色の金平糖使いに蒼きオーラの戦旗を大きく雄々しく翻したフランが先陣を切った。
 凛と冷たく、けれど暖かな陽の気配をも抱く風は森の樹々をくるくる回って翔けあがり、天を目指す針葉樹達の樹冠を揺らして七色の星めく金平糖の実達を空に躍らせる。
『ぷしゅー!』
『ぷきゅー!』
 美味しいものひとりじめ! と威嚇の声響かせた弾丸ハリネズミ達もくるんとまるまり突撃開始!
『ぷっきゅ〜!!』
 何この気の抜ける威嚇。けれど勢いだけは一人前のまんまるとげとげに激突されると結構痛い!
 ハリネズミのふあはるとさんと他人ではない昏錆の・エアハルト(c01911)の胸中はとっても複雑な哀愁マーブル模様、全身にも哀愁滲ませ、細工師は降り始めた虹色の煌きの中へ身を投じた。
「率直に言おう――俺に哀愁を漂わせんなっつーほうが無理だ! リューも俺を見んでいい!!」
「それも少々無理な話だと思うのだ、エアハルト殿」
 律儀に答えた漆黒ノ竜・リューウェン(c02487)の眼差しちらちらっと感じた彼は自棄気味に、
「弾丸具合なら負けねぇぞ!」
 自ら弾丸となって弾丸ハリネズミに突っ込んでいった。
 だがオーラの翼で光の軌跡を描かれてはリューウェンも瞳を逸らせない。小動物達の可愛らしさと秘密の何かにちょっぴり気が引けながらも一気に加速、虹の星降る森と光の路に黒き夜風の剣閃と残像描き、弾丸ハリネズミ×3を瞬時にころころころん!
「エアハルトさんとふあはるとさん……深いですね」
 何とはなしに何かを感じ取ったカイジュもちょっぴり笑みを深めつつ、きらきら降りそそぐ金平糖ごと弾丸ハリネズミを弾き飛ばす勢いで高速回転させた棍ごとハリネズミ弾幕へ突き進む。
 颶風が吹き寄せた、と思えば蜜色の扇が翻った。
「ね、お手伝いさせて!」
「ありがたく!!」
 七花の狩猟者・アンジュ(cn0037)の追い風受けたクロアハルトは凛然と輝く英雄騎士の剣も盾もその身に重ね、まっすぐ突っ込んできた弾丸を光の鉄拳で勢いよく裏返す。次いで大剣で風を薙ぎ、突撃してきた弾丸ハリネズミ×2を刃で弾いて眩く噴き上げた火柱ごと宙に躍らせた。
『っきゅー!』
『きゅっきゅー!!』
 彼らが次々白いおなかを見せて大地にひっくり返っていく様は、
「成程、オセロだね」
 愉しげに紡いだのは空とビブリア・ルカノス(c26263)、黒き鞣革に護られた脚は軽快そのもので、思うさま盾槍を振り回した彼は旋風となってハリネズミ達をアクションオセロ、もとい薙ぎ払う。
「っと、一匹そっち行ったよリチ!」
 お任せ! と応えた少女がすぐさま地を蹴った。
「今日は弾丸ハリネズミさん達をボコッちゃうよ――ってのも可哀想だから、おやすみしてもらうよ!」
 なんて言うが早いかうっかりボコる群竜士・リチ(c33420)はボコるガントレットのリミット解除、全力全開ジェット噴射で弾丸を殴り飛ばしたなら、全身に竜をめぐらせハリネズミ弾幕へ馳せる。
 凛とした冬と柔らかな陽の気配を抱いて七色降らせる風と馳せれば、心躍らす高揚も加速した。
「アンジュ殿とこうして駆け抜けて行くのはもう何度目になるだろうか?」
「ねー! 色々走って面白いとこもいっぱい走ったよね! 世界の瞳やらおっきな豆の木やら!」
 今日もすっごい楽しい、と金の瞳が輝く様にリューウェンが安堵したなら、気配を感じたらしい彼女が申し訳なさげに笑んだ。
 けれど駆け抜ければ屈託ない笑みが咲くだろう。いつだってそうだった。
 鮮烈な残像従えた彼が夜風のごとく地を馳せるなら、空追う運び屋は光招く風を追って跳躍する。七色の光の雨を突き抜け優しいばかりでない日々にも眩い世界を全身全霊で感じて。
「ねえ、もし金平糖使いが人の姿をしていたら、どんな奴だと思います?」
 一気に降下した勢いで弾丸ひっくり返した彼に問われた娘と顔を見合わせ、ルカノスが破顔した。
「「そりゃもうきっと――こんな感じ!!」」
 暁色と異口同音に言って弾けるように笑って、槍の旋風携えゲートルートの森を駆け抜ける。
 数多の弾丸ひっくり返せば大地に降りそそいだ七色の金平糖達も再び跳ねて宙に躍る。
 そう、僕らもまた、七色の金平糖使いの端くれだ。

●七色の光
 薄氷を透かし見るかのようだった寒々しい世界も、今や七色の硝子粒が幾つも踊る万華鏡めいた彩に溢れていた。遊び戯れ翔けあがる風、耳元で勇ましく鳴る風音は七色の金平糖使いのものか、はたまた蒼き戦旗がはためく音か。
 もっと風を孕めとフランは大きく戦旗を掲げ、弾丸達を叩き落としてはりっこ弾幕を切り開く。
「後でゆっくり食べていいから、今は待ってくれよ!」
『ぷきゅっ!?』
『ぷしゅー!!』
「少しの間だけお休みくださいね!」
 拓かれた戦場へ飛び込むのは謳い手たる戦装束を風に躍らせるカイジュ、彼らも思いっきり世界の祝福浴びておなかもいっぱいにして冬を越したいだろうと思うから、命でなく時間を譲ってもらうだけ。
 撓らす手首は柔らかにけれど描く軌跡は鮮烈に、自らも掃撃の軌跡で風呼ぶ棍は世界樹の一枝。希望呼ぶ風に弾丸ハリネズミ×4を一気に巻き込み、弾丸の結び目ほどいてひっくり返す。
 一瞬途切れた弾幕の更なる向こうから突撃してくる弾丸×1、七色の世界へと跳躍したルカノスは盾槍ではりっこを大地に押さえつけ、あ、と思い出したように声を上げた。
「そうだ、走りすぎて迷子とかならないでね。……特に、暁色の娘さん?」
 もうチェイスは貼っつけてある、と応えたのはエアハルト。
 念のためのフットプリントも万全だが、
「森の中なら迷子にはなんねぇよなアンジュ? んでもって『ふ』とか何とか言うなよ!」
「はい先生、アンジュは言いません! ――んでもね」
 良い子のお返事をした娘が嬉しげに見遣る先には紫煙樹の苗木ではりっこを迎え撃つ某農園主。黙っていてごめんね、と詫びる彼の口から衝撃の事実が明かされる。
「実はまだ棚出ししてない農園マスコットに、『ふあはるとさんファミリー』というのがあるんだ……!」
「何でそんな懺悔みたく言うんだよ! ってかお前それ言うためだけに来たんじゃねぇだろうな!?」
 農園主も暁色も、リューウェンまでもがさっと目を逸らした。
「容赦しねぇぞコラァ!!」
『ぷきゅっ!』
『ぷっきゅー!!』
 自棄を加速させたエアハルトは弾丸達を呑み込む紫煙樹を足がかりに大きく跳躍、はりっこ弾幕に突撃して弾丸ハリネズミ×2を撃墜する。
 続けて暁色の扇舞が弾幕破れば、リューウェンの足元にもひっくり返されたハリネズミ達がぽとぽと落ちてくる。この姿も可愛らしいなと思わずにはいられないが、足は緩めずそのまま飛び越して、連続突撃してきたはりっこ×2に夜の切っ先と残像重ねて弾丸裏返し!
 彼らもまた崩壊の被害者だから、目覚めた時には存分に甘い実を味わえるように。
 翔ける七色の金平糖使いが気まぐれに風向き変えれば、それに乗るかのごとく弾幕が厚くなった。
「あいたっ! いたたたたっ!」
「んきゃー!?」
 個々の威力はそれほどでもないけれど、でっかい毬栗にも似たそれに突撃されればチクチク痛い。でも頑張るよ! と勢い殺さずリチは千竜の飛翔めく蹴りの連打で周囲のはりっこ達を叩き落とす。
 連続突撃されたアンジュがひっくり返ったが、
「大丈夫みたいですね、このまま運命を打ち砕きましょう! きっともう一息です!」
「うん、変えにいこうね!」
「さあ、ころんころんさせちゃおっ!」
 即座に跳ね起きた娘に笑ってカイジュは彼女をひっくり返した弾丸達を薙ぎ払って白駒に。暁色に蒼き水晶結界纏わせてやった剣士も藍の双眸にはりっこ弾幕映して残像とともに馳せる。
 歓びは、邪魔させられない。
 漆黒のプロテクターで弾丸を撥ね返して跳ぶエアハルトの手には閃くナイフ、こいつはどんな針より鋭いぜと嘯いて、彼は弾幕へと襲いかかった。
『きゅっ』
『きゅっ!』
『きゅ〜!!』
「って、何かこれすっげぇ切なくねぇか!!」
 瞬く間に弾丸ハリネズミ×3をひっくり返した男の声に嘆きが混じる様に微かに笑み、クロアハルトも英雄騎士の構えから一気に大剣を振りあげ、彼とともに戦線を押し上げる。
「その切なさも、きっと完勝のための試練――!!」
『『『ぷっきゅー!!!』』』
 降りしきる七色の金平糖を強く煌かせつつ噴き上がった大剣の火柱が、はりっこ×3を裏返した。
 甲冑纏ったフランは比較的ちくちくを感じていなかったが、
『ぷっしゅー!!』
「ぶはっ!? いやはや、お前達も災難だったよなぁ」
 ひときわ鼻息荒いはりっこに顔面突撃されれば流石に痛い。
 けれど何処か嬉しげに破顔して、七色の風に思いきり戦旗を靡かせオセロの森をまっしぐら。
 傷はとても浅いけれど冬の風真っ向から受ければ鮮やかに沁みて、だけどそれが堪らなく楽しい。こんな風の中で、力いっぱい旗を靡かせてみたかった。
 次々突撃してくる弾丸ハリネズミ達を片っ端からひっくり返して七色の星降る森を駆け抜けて。
 一瞬振り返ってみればもう、スタートした金色の針葉樹達はもう見えなくなっていた。
「どこまで駆け抜けていけるかな!?」
「森の果てまで、かな」
 声も息も楽しげに弾ませたルカノスが盾槍舞わせ旋風となってはりっこ弾幕裂いたなら、ひときわ明るくなった陽射しにクロアハルトが笑みを覗かせる。
 弾幕も針葉樹達もまばらになって、大きく開ける視界。
『ぷきゅっ!?』
『きゅっきゅー!!』
 慌てて突撃してくる彼らにも、半日ばかり静粛にして頂こう。
「これで――わたし達の完勝だ!!」
 鮮烈な斬り上げで荘厳な火柱噴きあげ、クロアハルトは盤上の駒すべてを白く変えた。

●七色の風
 針葉樹達ばかりでなく皆の周りをもくるくる回って翔けあがる七色の金平糖使い。
 風そのものは氷を撫でてきたばかりのように冷たいのに頬に触れる陽射しはあったかくて、誘われ見上げれば限りなく透きとおる陽射しの中から七色の煌きが降りそそいだ。
 真昼の天から、満天の虹色の星屑が落ちてくるかのよう。
「あーいい風だ……!」
 ひとの手によらぬからこその世界の祝福を全身全霊に浴びながら、エアハルトは魂の底から呼び醒まされる歓びのままにこの光景を噛みしめる。
「わぁ……!」
 空へ抜けていくルカノスの感嘆。
 それ以上は言葉にならなかったらしい彼の心も一緒に描きだすかのように、カイジュがきらきら輝き楽しげに弾む音色で即興の曲を響かせた。
 奏でながら七色の星降る真昼の天を振り仰ぎ、そのまま口に煌きひとつを受けとめたなら、優しい甘みがしゅわりと弾けて躍る。大当たりだ。
「こんなにも世界は美しいんですから、きっときっとアクスヘイムはこれからも大丈夫です!」
「――そうだね、世界は美しい。落ち込んでなんかいられないね」
 この素晴らしい世界を絶対に守りますよ〜、と幸せそうに、けれど確かな決意を口にするカイジュに自然とルカノスも笑い返すことができた。
 そう。
 悲しい事が起きたからって、楽しい事が終わった訳じゃない。
 星色の髪ふわり掬って翔けあがった風を追ってクロアハルトも頭上を振り仰げば、尽きる様子もなく降る金平糖の実がまた新たな七色となって降りそそぐ。
 急ぎ両手でつくった器を差し伸べたなら、掌の中で幾つもの色が跳ねて躍って煌いて。
「掬えた……!」
「こうやって受けとめるのも楽しいぞ」
 緊張が解けたのか、はりっこオセロの時よりも随分柔らかな笑みを燈すクロアハルトに笑いかけ、両手広げたフランは頬に身体に、兜を外して風に踊る髪に七色の煌き受けとめた。
 たたんと金平糖達が跳ねる感触も楽しくて、舌の上でころり転がる甘みにも頬が緩む。
「弾丸ハリネズミさん達の分も残しておいてね、って村のひとにも伝えておかないとね」
「大丈夫ではないだろうか。――ほら、このように」
 陽射しを見上げて世界の祝福を浴びたリチが呟けば、眦緩めたリューウェンが少女に地面を示して見せた。数えきれない七色の星が跳ねて煌いて、まるで硝子ビーズの細波に洗われたかのような、彩り溢れる森の大地。
 世界の歓びそのものみたいに煌く祝福は、きっと皆の心の糧となり、復興への力となるだろう。
 素敵なものだな、と甘い星をリューウェンも掌に受けとめる。
 お土産に少し持ち帰ることを許して頂こう、と大切そうに七色の煌きを仕舞い込む姿に、俺も持って帰るかね、とエアハルトも瞳を細めた。七色の金平糖使いと戯れ煌き浴びる、世界の祝福の歓びを。
 風孕む首飾り、風にそよぐ髪飾り、脳裏に七色のスケッチ幾つも描いて。
 ――さあ、俺の姫さんに一番似合うのはどれだ。
 掌に七色の光と小さな星の実を受けとめたなら、フランはそれを暁色の掌に乗せてやった。
「私もアンジュの招く風が好きだよ。うまく言えんのだが――」
 命への言祝ぎを乗せて運んでくるところが。
 そう続ければ、何度も瞬いた彼女に、殊のほか嬉しげな笑みが燈る。
 ――あのね、そう言ってもらえるの、すごくすごく、幸せ。
「さて! 折角だから唱えます、金平糖の魔法! 金平糖使いアンジュも如何?」
「きゃー唱える唱える唱えますともー!」
 悪戯っぽく笑ったルカノスが呼べば暁色が飛んでくる。
 両の掌にたっぷり掬った七色の金平糖を二人で思いきり放り投げ、
「「まじかるみらくるはらぺこぽっぺん!!」」
 魔法の呪文を唱えれば、七色の金平糖使いにひとの金平糖使いの祝福重なって。
 ひときわ彩溢れる世界の祝福が幸せいっぱいに降りそそいだ。



マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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いまいち
参加者:7人
作成日:2014/02/05
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