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復興の地ランスブルグ

<オープニング>

「玉壁街よりマスカレイドは駆逐された!」
 巡回の最終報告を聞き終えたランスブルグ女王、ジョナ一世は高らかに宣言した。
 七勇者アリッサム率いるマスカレイド軍に占領され、滅亡の寸前まで追い詰められたランスブルグ。『三勇者決戦』を経て市街の大半を取り戻した後も、崩壊した第一階層『玉壁街』では残党との戦いが数か月にわたり繰り広げられてきた。
「これも皆のたゆまぬ努力が実を結んだ成果だ。特に、協力してくれたエンドブレイカーたちには感謝しなければなるまい」
 ジョナ一世は突き従う家臣を労い、同時に最大の勲功者を彼らに示す。
 マスカレイド、棘(ソーン)を滅ぼせる者はエンドブレイカーのみ。先の戦いに続き、マスカレイド残党の掃討もエンドブレイカーの有志たちによって行われてきたものだ。
 ランスブルグの勝利は、エンドブレイカーたちの勝利でもあった、
「これでようやく、ランスブルグも本格的な復興を始められる。彼の者たちにも、引き続きの助力を賜りたい」
 異議の声はない。随分と少なくなった臣下を眺め、女王は宣言をそう締めくくった。

 ジョナ一世のランスブルグ解放宣言からほどなくして。白兎の懲罰騎士・ラヴィエ(cn0155)は酒場のエンドブレイカーたちに式典の案内を持ってきた。
「第一階層の解放を記念して、ランスブルグ公式の祝賀会が開かれるそうよ。もちろん、みんなにも招待状が来ているわ」
 場所は第一階層『玉壁街』の仮設王宮。招待客は主に生き残っていた各地の領主や有力者たちだが、解放の殊勲者であるエンドブレイカーは誰でも参加できるそうだ。
「もちろん、ランスブルグで功績のある人ほど扱いはいいでしょうけど……そこはあまり気にしなくても大丈夫よ。エンドブレイカーみんなへの招待、なんだしね」
 ジョナ一世もそのあたりは心得たもので、好きなようにすごしてくれていいとのことらしい。
 復興し始めた時期もあり、祝賀会は質素なものだという。ダンスパーティなどが予定されているそうだが、盛り上げるような余興や音楽演奏で参加するのもいいだろうとラヴィエは言った。
「たぶんジョナ一世も数曲分くらいは踊ると思うし……なにかランスブルグでやりたい事がある人は、会場で有力者に顔をつないだり、根回しをしておくのもいいかもしれないわね」
 言いながら、ラヴィエは少し声を落す。
「……実はここから先が本題、祝賀会の翌日、今後のランスブルグ運営についての会議があるわ。救国の英雄であるみんなも招待が来ているわ。ランスブルグの今後に意見があったり、国の為に働きたいって人はこちらにも参加してちょうだい」
 ただし油断はするな、とラヴィエはいう。
 救国の英雄というエンドブレイカーの立ち位置はある程度尊重されるだろう。だが、政治の場で意見を通すには発言力や功績が重要だ。
「功績を主張し、賛同者を集めれば、意見はより通りやすくなるわ。うまくすれば、もっと直接的な立場……叙勲をいただけるかも」
 ラヴィエが言うにはランスブルグ王宮は勇者アリッサムとの戦いで人手不足なのだという。
 貴族や有力者が失われており、優秀なエンドブレイカーがいれば貴族として宮廷へと招き入れて復興に協力してほしいと女王や側近は考えているらしい。
「女王を助けて働きたいって人は祝賀会、会議と参加して主張してみるといいと思うわ。力量を見せることが出来れば、きっと歓迎してもらえるわ」
 復興の仕事は大変だけど、やりがいもあるはずだから……と、ラヴィエは皆に招待状を手渡した。


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<リプレイ>

●祝おう、この勝利の日を
 人々の手にした杯が仮説王宮のホールへと掲げられた。主催であるランスブルグ女王、ジョナ一世が面々を見渡し語り掛ける。
「この日を迎えられたこと、全て集まった皆とランスブルグの民のお陰だ。今はささやかな今日が、より素晴らしき勝利の祝日となる日を願って」
 乾杯! 永遠なれ、ランスブルグ!
 人々の重なる声が王宮を満たす。
 豪奢ではないが充分に上等な料理が並び、柔らかな音楽が宴の始まりを告げていく。
「ランスブルグが平和になってよかったな! えっと、それから、パーティーに招待してくれてありがとうだ! 女王様も、みんなも、すっごく綺麗だ!」
 一仕事を終えたジョナ一世に青空リオン・モカ(c02273)が無邪気に声をかける。これからもできる限りお手伝いするぞ! という少女に、女王はよろしく頼むと力強く笑いかけた。
 エンドブレイカーたちもまた多くの者から声をかけられた。救国の英雄、年代も経歴もばらばらなエンドブレイカーたちの姿に、多くの貴族は関心を寄せて声をかけてくる。
「アクスヘイムにいた頃には、王様のいる国なんて、物語の中だけと思っていたのにな」
 人々に祝いの言葉を返しながら、あまりにも自分から遠い場所にいるようで緊張する、と灰皓の衛・エルンスト(c07227)は年の離れた主、駆ける情熱・カルロ(c22554)を見やる。
「解放おめでとうございます! ランスブルグに幸多かれ!」
 二心のない言葉で杯をかわす彼の言葉は、その立ち振る舞いもあって貴族たちにも好評のようだ。もっとも、同じ貴族出身者でも緊張の色の濃い者もいる。
「こういう立ち振舞いも何時ぶりだろうね。ダンスの作法も嫌でも身についちゃって……」
「固い表情しなさんなって。確かに、いつもの豊満強調なのも好きだけど……痛ってぇっ!」
 セクハラか褒めてるのかわからない天醒の王・アッシュレイ(c32213)の耳打ちに足踏みで返答しつつ、編普段と違うスマートなドレスを身にまとうエターナル天才ちっくなメイド・リリィ(c09203)は、これだから貴族って嫌なんだとぽつりと漏らす。
 だが、もう何時までもそうはいっていられないだろう。家出から帰ったら没落していた実家、崩壊しかけた故郷。それに覚悟を決め、彼女はここへ来た。
「わかってるよ。再建、頑張らないとね……と、今宵は素敵な場を有難うございます、陛下」
「ありがとう。君たちの未来に、私も幸運を祈ってるよ」
 寸劇の中、通りかかったジョナ一世に一礼したアッシュレイは、見透かされたような祝福に照れたような笑いで返した。

「女王様にもなると、大変そうだね、色々」
「なに、こんな大変さなら大歓迎だよ」
 二人を見送って歩き出したジョナ一世に今度は三節棍の赤い群竜士・アヤカ(c14761)が声をかける。彼女のドレスも赤一色。ジョナ一世と並べば、そこには眩い紅の空間ができあがる。
「そうだね。これからもがんばっていこう。赤い者同士!」
「それで来てくれたのか。ありがとう。お互い頑張ろうか、赤い者同士」
 共通の色にちょっとした連帯ができあがり、二人はしばしゆるりと会場をみやる。
 冰睛の星狗・ライヒェ(c02963)や千本桜・サクラ(c35274)のように歌や食事に楽しむ者がいる。
 氷砕狂華・ベティカ(c24206)や誓剣の乙女・リスティーナ(c34850)のように、宴にも凛として警戒を怠らぬ有志の姿もある。
 一風変わったところでは氷茨の祭祀長・マウザー(c11248)のヴィオラにあわせ、いばら姫・チサカ(c34909)が即興の薙刀演武を披露して人々を湧かせている。出しものに余裕のない会場を盛り上げてくれる彼女らの存在感は、女王としても有難いものだった。
「まずは復興への第一歩。本当に大変なのはこれからだね」
 仲間たちの一芸に拍手を送りながら、スカイランサー・レティシア(c01915)は気持ちを新たにする。
 動き出したばかりのランスブルグはこの宴のようなもの。これからより発展させ、また悲劇を繰り返させないために考えることは多い。
 から笑いの捨火・ワレモコウ(c25429)もまた、控えめながらに思う。
「数の力とは素晴らしいものだね……絶望に根を張り、人々の血を糧に育った薔薇をかくも消し去ってしまうとは」
 ワレモコウは貴族たちと乾杯する想花落月・ダスティン(c34603)氷砕狂華・ベティカ(c24206)たちを見やり、決意した様子の青年の杯の中身を注ぎ足してやる。
 彼が二十を超えていたら酒を飲みかわすこともできたのだが、とも思いつつ。
「……何か決断しているようだね。私も応援させてもらうよ」
「……ありがとうございます、ワレモコウさん」
 杯をかわし、二人は未来を預ける主たる女王陛下へと目をやった。
「ありがとうございました。会議でもどうか……」
「今後ともよろしくお願いします!」
「うん。こちらこそ、カメロット卿」
 実家の挨拶と礼に推参した虚空・アーサー(c21426)、蒼い銃創・エレイン(c31068)に、少し茶目っ気を含んだ返事を返すジョナ一世。二人と別れ、テーブルの方へと振り返った彼女の目に入ったのは並ぶ料理の前で悩んだ様子の天真爛漫・アプリ(c34598)の姿。
「どうしたのかな?」
「あ、ジョナ女王様! お料理を少し分けてもらっても構いませんか? お家の皆さんにも食べさせてあげたいのです」
「それくらいなら……そんなに大家族なのかい?」
 近くの給仕に皿を頼みながら首をかしげるジョナにアプリは事情を説明する。自分の家、孤児院とそこに住む家族たちの事を。
「……そういうことか。石壁街の皆にも苦労をかけたな」
「そんなこと……ダンスパーティ、皆さんとっても綺麗です。わたしはまだまだ子供ですから、皆さんを見てるだけですごく楽しいですし」
 アプリの言葉に惹かれるように、音楽が楽しげな舞踏曲に調子を変えた。
 宴もまさにたけなわ。暗殺シューズのデモニスタ・エメリー(c35195)をはじめ、エンドブレイカーも貴族たちも歓談から舞踏へと身を移すものが増えてきた。
「ありがとう。ではその言葉にお礼を披露させてもらうよ」

 テーブルより戻ったジョナ一世に早速声をかけたのは、初々しい様子の血風のスカイランナー・スライ(c32682)だ。
「陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう。旅団【OWL FOREST】を束ねる、スライ・レッドと申します……ッス。よろしければお相手をお願いしま……す」
「うむ。固くなり過ぎると踊りは大変だぞ」
 今一つ決まらないなといった様子のスライに気にするなと笑い返し、ジョナ一世はさしだされた手を取った。
 リードを頼みながらも、スライの踊りはスカイランナーらしい軽やかなステップ。アドリブ混じりな二人の舞踏を駆逐系女子・ニーナ(c12571)はうっとりと堪能する。
「勇ましさもあれば華やかさにも溢れてますのね……」
「どうだったー?憧れのジョナ王と近くで話せてっ」
 一踊りを終えて戻るスライに黄金戦姫・アンゼリカ(c32742)が杯を差し出す。
「ようやっとランスも解放だなっ。かんぱーーいっ!」
 宴を目いっぱいに楽しみ、何度目かの乾杯をアンゼリカは交わした。気になったスライがうまいこと女王とやれたようなのも喜ぶべきことだ。
 女王陛下はダンスでも人気者で忙しい。見ればもう魔弾の射手・クロウリー(c16216)、荒野の山羊使い・セヴェルス(c00064)と次々に誘われてはダンスが続いている。
 戦乙女然とした凛々しいジョナ一世の姿をみれば、根回しなど置いても間近にと願ってしまうのは男女を問わず必然の感情なのだろう。
「おめでとうございます、陛下。私からも一曲……お相手願えますでしょうか」
 次に手を取るのは小さな世界のガーディアン・ユンシア(c19879)。没落したとはいえ曲がりなりにも貴族、上物のドレスに袖を通した彼女には令嬢の雰囲気が輝いていた。
「こちらこそ。リオナトーレ、ラズリ、お願い出来るかな?」
「もちろんですとも!」
 ジョナ一世に機嫌よく応える境光を浚う剣奏・リオナトーレ(c29153)のピアノにあわせ、怠惰の藍刻・ラズリ(c35112)のバイオリンも曲調を変える。
 二人のステップが鮮やかに広間へ花開く。だが、そんな二人を見ながらも忘れ雪・ピーア(c16170)は一人、胸に重い気持ちをまだ抱えていた。
「昔は綺麗な街並みだったのにね……」
 仮王宮の窓から外を覗けば、隠しきれない戦火の爪跡がまだ見える。胸が痛い。自分はどうこれに向かい合うべきなのか……。
「陛下……少しだけお時間をよろしいでしょうか。」
「ん? あぁ、君は……」
 会場に目を戻したピーアに飛び込んできたのは、サテュロスの禍角・フィルニア(c07518)の声だった。どこか神妙な様子の彼をジョナ一世は知っているようだが……。
「先日の戦での無礼な態度、お許しください。これからは陛下を、この国を護るために尽力するつもりであります」
「ん、なに……誰にでも勢いや気の迷いというものはある。君がそれを謝って頭を下げてくれているのなら、私も何も言わないよ」
「ありがたき幸せ。一曲、お供させていただいてもよろしいでしょうか」
 後に騎士爵として叙勲を受けることになる女騎士の手を女王は取った。
「貴族は民の為に……」
 二人を見ながら、前を見たいとピーアも想う。亡くなった人達、失われた物らは取り戻せないかもしれない。それでもせめてもの弔いを……彼女の心で考えが一つの形となりつつあった。

●踊る心、舞う言葉
 歓談を目的に祝賀会へと足を運んだものもいる。それと同じくらい、もう一つの目的を主として会場へと臨んだものもいる。
「こ、この度カメロット家の当主となりました。どうかご支援をよしなに!」
 アーサーと共に挨拶に回るエレインもその一人。
 オドラン家へと養女に出されていた彼女は祖父の遺言により生家を継ぐこととなった。マスカレイドの襲撃で痛手を負った実家に分家の支援は不可欠。家を、そして故郷を守るため彼女は慣れぬ社交の世界へと必死に飛び込んでいく。
「解放おめでとうございます。これも皆様のご支援があってのこと……」
「感謝はこちらこそだよ。若いのに苦労されているようだね」
 銀の剣に選ばれし騎士・ローラント(c00434)と先駆ける翠華・ファラーナ(c11114)の夫妻も有力者たちを回る一組。
 このランスブルグで生家の再興を望むローラントにとって、人脈作りは重要な仕事だ。
「えぇ、ではまた……夫のことも、よろしくお願いします」
 ファラーナもまた、貴族婦人たちへと声をかけては交友を築いていく。そのネットワークは夫の助けとなるとともに、有事の情報網としてもきっと役に立ってくれるはずだ。
「へぇーっ、そんなのもあるんだ」
「やっぱり騎士だな、目指すなら。前の戦争で、人手は全然足りないみたいだぜ」
 蒼嵐の騎士・セルティア(c01165)と白嵐の騎士・ウインザー(c31995)の場合は少し変わっていた。
 やりたい事はあるけれど具体的なところが見えない、そこで彼らは仕官の話を人々にしては情報を集めて回っていた。
 だが新進気鋭の二人が効き込む姿は有力者たちの間にも名前を刻んでいく。これも立派な人脈作りと言えるだろう。
 相手を絞っての人脈作りと言えば、水天の妖剣・クリム(c20805)もそうだ。
「……最終的には孤児と言う言葉や存在がない世界を。理想事、世迷言と笑われるかもしれませんが、それを成す為の覚悟はあります」
 子供も独り立ちしていそうな初老の貴族たちに狙いを絞り、クリムは声をかけて回る。彼らならば、自分の求めるものに反応してくれるだろうと考えて。
「私の望みは亡き父の意思を継ぐ事。一度はこの地を追放された身ではありますが、最早当家に残されたのは私のみ。どうか共に戦った皆のお力を今一度……」
 夜鶯・フォル(c15910)が声をかけるのは紋章術士を中心とした有力者だ。その力をもって家を再建すべく、彼女は奔走した。

「どうです、ランスブルグの野菜は?」
「やっぱり土地柄が出てるな。ランスブルクの土壌や水とか、その他もろもろ調べてみないと……」
 もちろん、ランスブルグの有力者たちも話をただ待つばかりではない。研究に興味を抱いたという大地主の問い掛けに、作物学の講師・シギュン(c18130)は専門家らしく答えていく。
「なるほど、階層に囚われぬ交流をね……」
「知識の伝承か。このような事を繰り返さぬためにも、それは必要だな」
 春告げプリムローズ・エルザ(c34611)や心はいつも十七歳・アメリア(c20558)の話題にも食いついてくるものは多い。
 土地や地位に縛られぬエンドブレイカーたちの柔軟な意見は、戦場での勲功もあって好意的に興味深く食いつかれていた。
「慰霊か……そうだな。私の部下も幾人が返らぬものとなったか……」
 ピーアや闘拳と剣斧の天誓騎士・グリム(c35430)の提案も、騎士たちの中で話題となり実を結び始めていた。これは事前に提案を考えて案をまとめていた羽根抱く白銀のシュヴァリエ・ハイド(c01339)の功績も大きいだろう。これらは会議に向けて、一つの大きな流れとなった。
「武器屋か……紹介することはできるが、貴殿の話には心当たりはないな」
「うむ、隠れた店なのだろうかな? ありがとう」
 逆に剛斧の蛮族・カジミール(c05537)へと集まる話は残念ながら有力なものはなかった。噂を頼りに条件を限定しすぎただろうか?
 だが良い武器を求めるエンドブレイカーがいるという話は、会場の騎士たちの間で小さな話題となった。条件に合わずも聞けた多く店の情報には、もしかしたら当たりがあるのかもしれない。

●宴の中の再会
 人脈は新たに作られるものだけではない。過去に繋がりある人々との再開、そこから始まる縁故も宴には多くあった。
「このたび、見聞の旅より帰還しました。これからは父上や兄上と共に、国内の安定に尽力したいと考えております。どうかよしなに……」
「是非もないとも。しかしリナリア嬢がエンドブレイカーであったとはなぁ!」
 スカードとして力に目覚めて後、見聞を広めるためと旅に出ていた幻想の・リナリア(c11514)は、下級貴族の実家と所縁ある人々に帰還を報告していく。
 元々のランスブルグ貴族であったエンドブレイカーはそこそこにいるが、広く認識されるのはこれが初めてというものが多い。意外な人物との意外な再開は、貴族たちに喜ぶべき驚きを提供していた。
「会えて嬉しい……伯父上」
「うむ……うむ。立派になったな、リア」
 碧眼に映る夕焼け空・リア(c07859)もまた約束していた親族との再会を果たし、喜びの挨拶をかわしていく。放棄区域で育った彼女には慣れぬ正装だったが、その価値はあったと思う。
「挨拶もそこそこですまない。実は……」
「うん、うん。皆まで言うな、お前のやりたいこと、応援させてもらうとも」
 力強い声援を受け、リアは復興への計画を語っていく。
 そして彼女らから少し離れた先でもまた一組。
「ほう、セイル卿は引退なさるのか」
「は。復興のついでにとなりまして……ニルについて、どうかお見知りおきを」
 蒼地ノ書・ジオリード(c17646)は令嬢らしく振舞う妹、暁天に紡ぐ・ニールディア(c22167)を人々に紹介して回る。彼の実家、セイル家は女性が家督を継ぐのが慣例なのだという。
「もちろん、実務的なところはまだ両親が関わるし、もちろん陛下の承認をいただければなんですけど! ……あ、いけないっ」
「ははは、若さがあっていいことさ。こちらも元気になる」
 思わず素が出るニールディアに年のいった貴族は子供、孫を見るように暖かく微笑む。彼も時代の移り変わりを感じているのだろうか?
「ノリソン神官方、ご壮健で何よりだ……その、色々な意味で」
「おぉ、ファニー嬢ちゃん。色々と世話になったの、今日も楽しませてもらっとるよ。色々な意味で」
 同じ老人でもなかなか元気な者たちもいる。セルティアや緋炎蒼水・ファニファール(c15723)が鉄壁街攻略戦で説得したノソリン神官たちだ。
 戦いの縁で知り合った双方は、武勇伝や苦労話を語りあい気の置けぬ親交を深めあっていく
「……それで、ジョナ一世の武勇伝には憧れてきた身として、傍で支えていきたいと」
「うむ、微力ながら応援させてもらうよ。今日のドレスもいいが、嬢ちゃんの近衛姿というのもなかなか似合いそうじゃしな」
 いきなり大きくなる話に押されながらもファニファールは神官たちに感謝する。どこまでが本音なのかは結局わからなかったけれど。
 同じような縁では、遥碧・セレスト(c03512)も攻略戦で救出したアーニャと再会を果たしていた。
「あれから大丈夫だった? 元気そうでよかったよ」
「セレストさんも御無事でなによりです! こちらはもう、紋章院が大変で……」
 言いながらも疲れた様子なく明るいアーニャにほっとセレストは息をつく。エンドブレイカーに目覚めてからこちら、長らく厳しい戦いにさらされてきたのだ。
 彼女のためにも自分はここで為すべきことがあるとセレストは決意してきた言葉を紡ぐ。
「アーニャ、君の力を貸してほしい。僕は、この街の『支え』を作りたいんだ」
 それはしっかりとした施療院の設立。医術だけではない、高度な紋章術をも統合した医療環境。少年の紡ぐ夢をしかと聞き、アーニャは微笑んで頷いた。
「応援させてください、セレストさん。期待してますから」

●続く宴、そして明日へ
 音楽は転調し、宴は続く。
「……相方、ありがとうございました」
「こちらこそ。願わくば次もまた宮中で」
 舞踏を終えたアリーセが蒼氷の瞳・アリーセ(c34080)が青年貴族とあいさつをかわす。その様子を壁際から眺めるのはデモン機巧少女・ルミティア(c30986)と、彼女に興味を抱いた貴族の一人。
「彼女が君の言う英雄かい?」
「ふふ、どうかしら。でも、今後のこの国にとって最高の人を推薦するというのは本当よ?」
 楽しみにしている、と貴族はホールを見渡す。エンドブレイカーの多芸ぶりは見ていても感嘆させられる。
 アリーセや日日是好日・マーズ(c34336)のようにダンスによる交流をするものは勿論、氷棘・イーサ(c18047)のように人脈構築へと専念する者もいた。
 またチサカのように実際の技を芸として披露していく者たちの姿も多くあり、出席者の目と耳を楽しませている。
「恥ずかしいところをお見せしてしましたわ……ありがとう、このお礼は必ず」
「礼を言われるほどの事でもありませんけれど。どうしてもなら、運び屋『ランナーズ』をご贔屓に」
 高所にひっかけてしまった髪飾りをエアライダーの技でひらりと取り、鏡の境界・ネイビー(c34599)は貴族の令嬢に一礼する。飾らぬ彼女のクールな姿は一部の令嬢に憧れの的となったとか。
 一部と言えば、紋章術士たちの間で話題となっているのは夏の青空・ディルアーク(c18214)の姿だ。
 ブルームスター、ゼペット、そして勇騎士ジョナ。戦いに鍛えられた彼が鋭く描く紋章は、これほどの術士が在野にいたのかと驚嘆をもって迎えられた。
「いつか故郷であるこの地に戻り、尽力するために続けてきた鍛錬。どうかこれからは国の為に生かさせてください」
 そう語る彼の元には多くの推薦が集まり、後日には紋章院紋章官の地位が送られることとなっていく。
 そして最後にもう一人。
「勝利、幸福、栄光を授けたまえ。おお天槍よ、我らが女王騎士に祝福あれ……」
 宴の締めくくりを告げる演奏に合わせ、女王騎士をたたえる古歌を朗々と歌い上げるのは勿忘草・ヴリーズィ(c10269)だった。
 鉄壁街の劇場の歌劇歌手のなりたい。ブルームスターの紋章で称えられる名女優ソァラのように。あくまで復興の主役は山斬烈槍の人々。自分はそれを支える存在でありたいと。
「いい歌声だな。心が暖まる」
「彼女、歌手を目指すといっていたよ。きっといい役者になる」
 後日、芸術振興協会長として鉄壁街に立つこととなる妖精騎士の歌声は、人々の間で早くも噂となっていった。

●ランスブルグ復興会議
 華やかに楽しんだ一夜が明けた。眩しい朝日が差し込む王宮に、祝賀会の空気は既にない。
「本会議は先日より引き続き、エンドブレイカー有志にも参加してもらっている。意見を交換し有意義な会談としていきたい」
 幾らかの形式的な進行の後、上座に座るジョナ一世が開会を宣言する。
「さっそくだけどいいかな? 水を差すようで悪いけど、まずランスブルグの防衛、戦いの備えを決めておきたいの」
 口火を切ったのは紫瞳・ディフィス(c06187)の発言だった。戦いが一段落したばかりの現状での、整った雰囲気の少女が放つ鋭い言葉に騎士たちがざわめく。
「理由をうかがってもいいかな、ディフィス嬢。我々は勝利し、マスカレイドたちも撤退したと認識しているが」
「理由は二つ。一つは三日月湖の遺跡、もう一つは天槍」
 年若い騎士の言葉にディフィスは淡々と応じる。三日月湖には今もイヴ・ザ・プリマビスタがいる。マスカレイドたちは再び襲撃を試みる可能性は十分にあるだろう。
 天槍もまた同じ。勇者ガンダッタによるアクスヘイムの斧強奪と、それによる都市国家の崩壊はランスブルグにも衝撃をもって伝わっていた。
「ランスブルグ上層は長いこと占拠されていたしねぇ。アリッサムが転移門のようなものをしかけててもおかしくないと思うよ」
「うん、天槍の守りは固めておくべきだと思うな」
 荒野の山羊使い・セヴェルス(c00064)の意見にアンゼリカも同意を示す。更に魔法鎧の半身・サリー(c34219)はシャルムーンで得た情報を女王へと補足した。
「アリッサムの姿が、都市国家シャルムーンにはありませんでした。可能性は低いと思いますが……ガンダッタの例もあります」
 危険を指摘され、ジョナ一世を始め家臣団は厳しい顔を思案する。これだけ勝利を重ねてきて、なおまだ予断は許されないというのか!

 重くなった空気。そこに清き純白・スーリス(c28034)はすっと立ち上がった。
「提案があります。この件、我々エンドブレイカーの力を使えませんでしょうか。この身は遠く祖国から天槍に士道を誓った騎士として、聖地である天槍の守護者たることと、その調査の許可を願います」
「重ねてお願いいたします。自分は戦災孤児でありましたが旦那様によって拾われ、ランスブルグで衣食を与えられ育ちました。この御縁、お許しいただければスーリス殿下のもと、騎士として天槍の防衛に俸禄を戴ければと」
 獅子の槍・ウーイル(c17261)、そしてランスブルグを故郷とするクロウリー、揺籃スカーレット・ジャンカルロ(c35401)たちの声に、思案する様子だったジョナ一世は口を開いた。
「では皆の好意に甘えさせてもらおう。調査したいのなら、もちろん入って構わない。防衛についてだが……ダナーン卿、もう一つお願いしていいかな?」
 手を挙げる女王に、風格ある騎士が立ち上がる。先日の大戦でマウザーたちが救出した天槍騎士団の団長、ヒューバートだ。
「アナム殿、グロー殿からも話は聞いている。天槍騎士団、卿に預けさせてはもらえないだろうか」
 驚きに顔を見合わせる者たちの前でヒューバートは説明する。先の戦いで枯渇した人材を補うため、自分もまた多くの任を受け身動きが取れない状態だ。
 マスカレイドに対抗しうるエンドブレイカーで信頼できる人物がいるのなら、騎士団について自分の後任を頼みたいのだと。
 スーリスは暫し黙り、敬礼と共に答えた。
「……天槍と師たつ赤焔剣聖の名にかけて。謹んでお受けいたします」
「エンドブレイカーなら団員となるくらいは何も問題ないからね。そのあたりは好きにやってくれ」
 補足するジョナ一世。話しを聞きながらスーリスを推挙した一人、薔薇の牆・アナム(c06804)は旅団の方の準備も進めておいた方がよさそうだと思索を巡らせた。
「後は……そうだな。こちらの話題が出たところで、もう一つの人事も進めてしまおうか」
「黒鉄兵団とかか? 支部長的な地域担当くらいなら問題なくいけるんじゃねーかと……」
「よくいってくれた。黒鉄兵団の団長はキミに任せよう」
 ジョナ一世の言葉に焔棘・ケーナ(c10191)は固まった。それ以外、反応のしようがなかった。
「新生黒鉄兵団は全員がマスカレイドだったからな……事実上、消滅していたんだ。だが君がそういってくれるなら大丈夫だ。しっかりした後見もついているし……」
 蒼波・ユル(c16214)のことだろうか。たしかに領地を解放した功績は十分かもしれないが……あまりの急展開で固まるうち、あれよあれよと新・新生黒鉄兵団の人事は決まってしまったのだった。
 養い子の急展開に氷棘・イーサ(c18047)はマイペースで、だが暖かく肩を叩く
「頑張れよ、団長。俺もまぁ、後ろからどうこうするほうで手伝わせてもらうぜ」
 黒鉄兵団の諜報部隊長、それがイーサの希望した地位だった。また同様に諜報の重要性を訴えてきた怠惰の藍刻・ラズリ(c35112)も石壁の街の支部長として就任することとなった。
「国の発展にはマスカレイドの暗躍を事前に察知する諜報が重要になる……だから女王、ひいてはこの国の目と耳を助ける何らかの形で復興を支援したい」
 任官を告げられたラズリはジョナ一世と側近にそう応えた。
 これに石壁の街の警備隊設立を訴えた斧剣使いの傭兵・レテイシャ(c04739)、花歌の守り手・クロエ(c28868)やルナティックシルバー・アストリッド(c33779)たち護民官を希望する者らが加わり、市街防衛の礎は築かれていく。

「それでは話を戻しましょうか。マスカレイド親交の防衛と調査について、他に何か意見のある方はおりますか?」
 一時脱線した議題に剣の天誓騎士・サリア(c34610)がさりげなく修正を加える。甥の暁の朱梟・シュリ(c19933)お手製だという菓子が紅茶と共に並び、固くなった雰囲気を解きほぐした。
「天槍もそうだが、三日月湖も警戒は必要だね」
「それ以外の周辺遺跡についてもだな。」
 瞋恚の焔・フラム(c22151)が手を挙げて発言し、虚空・アーサー(c21426)が同意を示す。
 赤い少女が封印されている三日月湖、封印に何かあれば彼女を狙う魔竜がランスブルグを襲うは想像に難くない。またワームパイプホロウにあった人類王都の一部にも未知の危険、あるいは逆に過去からの有力な情報もあるかもしれないと二人は主張した。
「三日月湖のことは私たちからもお願いしたい。彼の地は私にとっても大切なところだから……」
「お許し願えるなら、シャラと一緒に三日月湖の護り人を引き受けさせてはもらえないでしょうか」
 それに対し、立ち上がった花祈翠・シャラ(c19613)と蒼海・ブルー(c20065)の願いは女王とエンドブレイカー双方で渡りに船だった。ここに三日月湖防衛部隊の設営が決まり、彼彼女らはその要職を担う事となる。

「そうしたら私からもいいかな? 願いがかなうなら、ゼペット老の紋章やワームパイプ・ホロウの調査も進めたいですねぇ。特にワームパイプ・ホロウは一部とはいえ内部の地図もありますし」
 話が決まれば話題が動く。次に切り出したのはユルの調査に関しての議題だった。先の決戦からアララギ量の領主となった彼だが、マイペースな趣味は相変わらずなようだった。
「気になると言えば空中庭園もやな。バルバが空中から投下で集められとったんが……ガイボンいたとかはあるかもしれんがまるで生贄のようで」
「うん。空飛ぶ巨獣、各地から運ばれたバルバ、実にきな臭い」
「きな臭いっていうなら第三層西の大森林も要チェックよ! 噂だけど樹海の魔女って人がいたり気になる事あるんだよね!」
 マーズとフォルトの意見に、チサカも自分の案を加えて後押しする。エンドブレイカーたちの調査願いに対し、女王はわかったと頷いた。
「ワームパイプ・ホロウ、それに空中庭園に大森林だね。そのあたりは特に許可は必要ないよ。旅団で自由に調べてくれて構わない。こちらからも手が空き次第、できるだけ調査に人を裂くようにしよう」
 つまりは今までと同じように、旅団で仲間を集っての冒険でいいということか。天槍と違い、特別な手続きは必要ないようだ。

 防衛と調査に関する話し合いは更に続く。
「ボクはランスブルグ解放までの数々の戦いに身を投じてきたけど、その度に思ったのが『情報』の重要性。いかなる状況でも正確に情報収集し活用するそんな部署が必要だと思うんだよね」
「私も横の繋がりを意識した情報交換、人手の手配等を行っていきたい。まあ、情報の取り扱いを主とした何でも屋に近いですね」
 レティシア、皓の紆雪・マオ(c34616)の提案は一定の指示を受け、機関として情報局『白猫』、『緑の風』騎士団が二人を長として設立された。
 またスカイランナーたちの伝令ギルド復興を掲げたスライも、希望通りギルド長として情報戦の一端を担う事となった。
「私の旅団はさまざまな職種の仲間や常連客がいる。人材の育成や復興、外敵の掃討に貢献できると思うよ。公に出したくない仕事を頼む陛下だけの秘密の私兵団としてでも……」
「私個人への私兵というのは、ちょっとな。けど折角の申し出、何かあった時はよろしく頼むよ」
 悪魔のカード使い・エマス(c30188)の提案には、ジョナ一世は困ったように笑いながらも頼りにしていると返す。
「ありがとうございます。夫や仲間の皆さんと共に女王陛下や夫と出会えた故郷にお尽くしします」
 力のカード使い・リムィリファルァ(c32636)が頭を下げる。彼らの組織は、旅団の名前より『特務EA隊』と名付けられた。
 また特定の組織を希望しないものでも、多くのエンドブレイカーたちからは仕官の申し出、あるいは推薦が寄せられていた。
「私は『強兵』の部分を少しでも受け持ちたいなと思ってる。生き残ってきた私なりの戦いの技術や使う者の心を伝えられたらなって」
「儂も似たようなところかな。騎士団で引き続き忍びの技を教えられればと考えておるよ」
「可能ならばランスブルグの馬を養成できる地位に就きたいのじゃが……ここは騎士の国、午たちも生涯をともにするパートナーじゃからな」
 エンドブレイカーたちだけではない、兵士や騎士の強化も重要となってくるだろうと説いたのは神に愛された格闘天女・カレン(c00737)、ナイトランスの忍者・スフォローグ(c34334)、銀甲のくノ一・エミリアムレ(c34629)の三人もまた相応の地位を授かり、ランスブルグの未来へ貢献していくこととなる。

●明日を築くために
 防衛と方針が一段落すれば、次に出てくるのは本題。復興の方針である。
 話題が移るに際し、ごめんあそばせ・ウルル(c08619)は一つ話を聞いてほしいと切り出した。
「わたし、この国の、とある盗賊さんが襲われている所を救出しましたの」
 何処の誰かという詮索は止めてほしいと前置きし、その男が恋に出会い更生するまで、自分の見聞きしてきたままを彼女は語った。彼に誓った約束を果たすために。
「残念な事に、今のこの国の状態では盗みをやっていた方が収入があるようなの。盗みなんてしなくても真面目に働けば、それに見合った対価を得られる、生きる強い意志があれば応えてくれる誰もが住みたくなる国にしたいの」
 可能ならばそう言った機関や仕組みを作りたい。そう話す彼女に議場からは呻きが漏れる。会議で多数を占める真っ当な権力者なら、それは誰しも願う事。
 だが実際にどうすればいいのか……その時。
「ごめんなさい、遅くなりました!」
 具体的な方策に話が移りかけたところに扉が開いた。やってきたのはエンドブレイカーの一人、暁の少女・シーダ(c19865)彼女のメイガスが抱えているのは……眩いばかりの金塊!
「アナム兄に頼まれてたラッドシティの援助取付、ばっちりだよ! ハンクス長老はいつも通り快諾してくれたし!」
「これは……ありがたい! 感謝する、シーダ!」
 彼女の努力により大きな一つの問題……資金は一気に解決した。ウルルの願う未来も一気に現実のものとなってくる。
 それにここぞとアナムが都市間の協力の有効性を強調する。
「かように、これから世界の脅威に立ち向かうには都市国家間の協調が不可欠です。アクエリオでも進めました都市国家間活性化計画、ランスブルグでもと……」
「あぁ、他の都市国家と安全に行き来ができるようになり、ランスブルグを訪れる者がいるのなら、もちろん協力は惜しまない」
 ジョナ一世は好意的に答えたが、逆に言えば多くの者が安全に行き来のできる交易路の確保は都市間協力に最重要ということだ。間を隔てる海やワームパイプ・ホロウなどの難所は大きな障害となる。
 しかし、そこで身を乗り出したものがいる。残念無双の・ソフィー(c28815)だ。
「では、もし他都市国家に売りたい物があれば私が引き受けます。少し『手数料』はかかりますけど、悪い様にはしません」
「手数料はともかく悪くはない案だな。ラッドシティ特産の時計や水にぬれても光る灯石など、少量でも価値あるものを選べば……」
「ランスブルグからも同じような特産品を運べば物資や資金の工面もできるはずですわ」
 アナムと共に交易の案を出していた臥した獣・カーリグ(c13476)、幻を謳う・グロー(c12883)が賛同する。
 エンドブレイカーなら多少の荷物を運びながら都市国家間を移動することが可能だ。そうして持ち込んだ品が呼び水となり、交易路の拡大に話が進む可能性もあるだろう。
「試してみる価値はあるね。ソフィー、君に貿易振興を頼めるかな?」
「喜んで!」
 威勢よく礼をするソフィー。その脇で春告げプリムローズ・エルザ(c34611)も控えめに手を挙げた。
「あわせていいでしょうか。都市国家内の交易についてですが……」
 祝賀会でも賛同を得たエルザの案……学術を軸とした文化都市としてランスブルグを売り込むという彼女の案は認められ、それは交易振興局からの勧誘を受ける大きな評価を受けることとなった。
 アカデミー街の活性化についても多くのエンドブレイカーが賛同し、協力を希望した。
「ランスブルグ独自の文化、紋章術の発展と研究により新たな技術を作りだすことも民の生活の発展につながるかと」
「昔、紋章院に通っていましたし、此方の復興のお手伝いが出来れば、と」
 天蹄の・ロイ(c01161)や紅閃揚羽・レイア(c03393)、天空へ紡ぐ詩・シアン(c28363)たちが次々と手をあげる。
 要職であるアカデミアの校長にはクロウリー、そして永遠に幼き金色の魔女・アナスタシア(c34608)が希望により納まることとなった。
「見た目は若作りだけど私もいい年だしね、そろそろ上の立場に落ち着くのも悪かないさ」
 年を感じさせぬ外見に似合わぬ言葉で締め、アナスタシアはジョナ一世と笑い合った。
 ここにラッドシティの領主代行の地位を返してきた誇り描く・タラン(c16629)が副校長として就任。紋章院の新体制は形作られた。

 紋章術以外の、総合的な教育の推進には星霊教会司祭・フィリル(c04593)が手を挙げた。
「提案は誰でも入学でき、高等教育を受けられる学校を作ることです。教育水準の向上は復興や発展への大きなメリットになると思います」
「衣食足りて礼節を知る、という言葉もある。避難民や貧民達への支援と共に実施していけば、治安の向上にも効果はあると思う」
 二人の提案は受け入れられ自身の手で実現していくこととなる。フィリルは文部教育局長として、リアは復興対策室の理事としてだ。
 パーティより孤児の対策を訴えてきたクリムや、平民と貴族の連携を提案する花待ちリーベ・ディアナ(c01140)、世界を変える存在になりたい・クリームヒルト(c25643)らもまた、戦災孤児対策室長や民生調査員として共に奮闘していく仲間となった。
 なお、残念ながら希望のかなわなかったものもいる。盾の群竜士・リョウコ(c12565)の希望は、英雄であるエンドブレイカーを投獄はできないとの理由でやんわりと断られた。
 彩風輪舞・フェルネス(c16239)についても、他都市国家まで干渉することはできないと叶えることはできなかった。彼の実績は女王を含めた一同から賞賛されたが、それ以上を求める事はランスブルグでは難しいだろう。

●叙勲
 長い時間の末、最後に残された議題をジョナ一世は話題にあげる。
「ここからは議論より内示に近いものだ。内容に疑問があれば遠慮なく発言してほしい。まずは爵位から。次の者は前へ」
 騎士爵の位を授かったのは黄昏の叢雲・エスティール(c02815)をはじめとした九名。
「ノア、今後ともよろしく。頼りにしてるよ」
「ああ、これからも共に頑張っていこうな、エスト」
 黎明の氷花・レオノーレ(c04664)は揃っての叙勲となった相棒に顔をほころばせる。
「子爵はリィナ・エスフィール、ケーテ・ローレンシウムの二名。それぞれ、家督を継ぐことを承認する。これからもよろしく頼むよ」
「はい! 亡父の分まで、ランスブルグの民の力となることを誓います」
「これからのランスブルグの為、この都市を支えてきた紋章学を再びおさめ、力としてみせます」
 陽だまりの中の笑顔・リィナ(c13285)、籠禽・ケーテ(c28216)が女王へと頭を下げる。奇しくも両家は先代が戦士、行方不明となっており、二人は一族の期待をその身に背負う事となった。
「最後に伯爵。メルツオーネ・ゲルデンハイム、ジオリード・セイル……」
 伯爵は八名。子爵同様、こちらもランスブルグに名を成す貴族の出身者が多い。
「最後に、リオナトーレ・リゼルフュルテ」
「……は! このリオナトーレ、最後の血の一滴まで陛下と槍都が為に」
 士爵を希望していたリオナトーレにも、功績を称えられ伯爵位が送られる事となった。内示を受け、仮面を脱ぎ捨てた魔想紋章士は未来を共にする主君へ敬礼する。
「テオフィルス、アーデルハイトは……いいのかな?」
「はい。地位も立場もいりません。これからは彼女と二人で、ただ一人の人としてランスブルグで生きてまいります」
「両家領地の間にある最愛の二つの家族の墓地。その地を見守らせていただければ、それだけで十分です」
 黒色の残滓・テオフィルス(c18338)、シャススプリーン・アーデルハイト(c18339)は地位を辞退した。亡き家族の眠る地に安住を定めた二人に、ジョナ一世は『そうか』と一言だけを言った。
「……では、進もうか。タルト・デュオロゼッタ、エクレール・デュオロゼッタ両名。希望の通り、亡領主の領土を任せる。今後はデュオロゼッタ領領主および騎士団を名乗るといい」
「ありがとう。復興に向け、尽力させていただきます」
「ランスブルグのため旅で磨いてきた成果。今こそ、役立ててみせましょう」
 紅玉の・タルト(c02907)、蒼玉の・エクレール(c03662)。新たな領主と騎士の誕生に拍手が送られるた。

 叙勲者へのひとしきり祝福が終わるのを待ち、女王は最後の発表にかかる。
「最後に以下の者について、私の直参の近衛騎士としたい。勲功多き勇者と判断しての依頼だ。強制ではないが、受け取ってほしい」
 名を呼ばれたものは多くの仲間より推薦されたアリーセを筆頭に、万里流浪の義士・イーグル(c32873)、緋炎蒼水・ファニファール(c15723)、ランスセイヴァーアイン・ジェイナス(c15904)の四名。
「あー、申し訳ない。無理を承知で一つお願いが」
「何かな?」
 ただ一人、手を挙げたジェイナスは控えめに言う。
「近衛騎士、ってのは柄じゃないかなと……あとまぁ、散々呼ばれてますし『白』を入れてもらう、ってのはできますかね?」
「……よし。ではこうしよう。名誉騎士『白』のジェイナス。よろしく頼む」
 改めての任命にジェイナス、そして近衛の騎士たちが敬礼で応える。今この時より、ランスブルグの復興は始まったのだ。



マスター:のずみりん 紹介ページ
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いまいち
参加者:104人
作成日:2014/02/27
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