ステータス画面

Look-a-like

<オープニング>

「おい、なんだあれ……」
「目を合わせるなよ、絶対普通じゃないぜ」
 買い物客でごった返すシャルムーンのバザールは、『彼ら』の登場によってあっという間に凍り付いた。
『彼ら』は10人で構成された一団だ。
 痩せぎすな女にでっぷりと太った巨漢。年端もいかぬ少女に、髪に白いものが混ざり始めた初老の紳士……。
 その一団に性別や年齢といった統一感は無い。
 その代わり、10人全員が同じ格好をしていた。
 勇者シャルムーンと同じ服を着て。
 勇者シャルムーンと同じ装飾をつけて。
 勇者シャルムーンと同じようにただの一言も発することなく。
『彼ら』はバザールの一角、家畜を販売しているテントへと押し入った。
「あっ、おまえら大切な商品になにを……ひっ、うっ……や、やめ――」
『彼ら』は目の前で動くモノ全ての首を切り、その血を石壁に塗りたくることで宣言する。
 我ら10人の勇者シャルムーンが、信仰を忘れた愚者へと天罰を下す、と。

「また変なのが現れたぜ、シャルムーンのコスプレ集団だ」
 スパイスの薫る冒険者の酒場。爪の群竜士・チェン(cn0019)は鋭い犬歯で鉄串から肉をかじり取った。
「ヤツらはシャルムーン姫の狂信者だ。すっかりなりきってて喋らねえから詳しい理由はわからねえが……んぐ」
 チェンは肉を果実の搾り汁で一気に流し込み、手の甲で口元を拭う。
「ま、大方シャルムーン姫の敵討ちかなんかだろうよ」
 それから石壁に背中を預け、腕組みをして集まった冒険者達を眺める。
「アホみたいな集団だが、やってることはシリアスだぜ。早めに手を打たねえとヤバい」
 事件が起こる場所はとあるバザールの一角、所狭しと屋台が立ち並んでいる地点だ。
 道に面した屋台はどこも精一杯商品を売ろうとして道へと商品がはみ出している。
 ただでさえ狭くなっている道には買い物客がごった返していて、身動きが取りづらい上に一般市民へ被害が出る可能性もあった。
「コスプレ野郎達はみんな土地勘がある、逃げられるとまた厄介だろうな」
 彼らの行動自体はシンプルだ。視界に入った人間を一人でも多く殺害しようとする。
 その為に各自がバラバラとなって広範囲に活動し、一人では倒せぬ強敵と遭遇した場合は逃亡。他の狂信者と合流し複数でもって排除にあたる。
「単純に倒すだけならそれほど強い相手じゃなさそうだが……できる限り被害を抑えてくれ」
 チェンは石壁から体を起こすと冒険者達へと顔を伏せ、頭を下げるのだった。


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参加者
空の宅急便・カナタ(c01429)
天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)
白衣の書生・クラウス(c03723)
蒼穹を翔る風・ランディ(c04722)
退かない媚びない顧みない・エレノア(c04817)
嫉妬の移動爆弾・クレア(c31055)
暴食の黄卍・ヴァーグ(c35110)

<リプレイ>

●嵐の前
 早朝、まだバザールの人間が準備をしている時間帯。
「店を出させて欲しいだぁ?」
 バザールの出入り口のひとつ、角で出店の準備をしている店主は突然の申し出に耳を疑った。
「はい。今日1日だけで良いので、ぜひお願いしますなのですよ」
 嫉妬の移動爆弾・クレア(c31055)は頭を下げてお願いする。
「馬鹿野郎、お前、俺がこの場所を借りれるようになるまでどれだけ苦労したと思ってるんだ」
 バザールの人に危険を周知するため、出入り口付近の人通りの多い場所に店を出して案内する計画を立てたクレアだが、店主はにべもない。
「え、いや、事情が……」
「ガキはおままごとでもやってな」
 クレアはまだ若い。子どもだというだけで低く見られてしまっていた。
「ソリの合わねえ商会長にも頭下げてすり寄って、ようやく念願かなってだな……」
「すみません、まずはこちらを」
 延々と続きそうになる店主のサクセスストーリーを遮り、白衣の書生・クラウス(c03723)は何かを握らせた。中身を確認して目を見張る店主。
「こいつは……」
 このバザールで通用する通貨だった。
「1日の稼ぎにはならないかもしれませんが……恐らく、今日はそもそも稼げない日になりそうですよ」
 微笑みを崩さす交渉するクラウス。
「………」
 隣に立つその大きな体と、人生の経験値の違いにクレアは嫉妬するのだった。

 路地裏、ひそひそと集まって現状を共有しあう冒険者達。
「誘導のほうは、どう?」
 尋ねたのはターバンを巻き、現地の人と同じゆったりとした面積が多い布の服を身にまとう空の宅急便・カナタ(c01429)だ。
「ああ、身分を明かした上でなるべく屋内で静かにしているよう伝えてはいるが……まだ 時間が早いからか、そこまで成果は出ていないな」
 天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)は時刻を確かめて首を横に振った。
「エンディングを見ようと思ってるんだが、なかなか見えないのも時間帯のせいか」
 蒼穹を翔る風・ランディ(c04722)は納得したようにうなずいた。
 この時間帯に買い物をしている客は、事件が起こるころにはすでに帰宅していて事件に巻き込まれないのだろう。
 エンディングが見えた人々へ警戒を説き、情報を収集しようとしていたがまだそのような兆候は表れていない。
「とりあえず今は世間話を装ってウワサを流すしかないかな?」
「じゃあ買い物ついでに俺へ道案内をしている風に頼む。バザールの地形も把握しておきたい」
「ん、わかった」
 二人一組になって歩きだすカナタとランディ。去り際にカナタがサクヤへと声をかける。
「サクヤも気を付けて」
「ああ。こっちはできることをやって、あとはエレノアの歌を待つさ」

●Look-a-like
 太陽が昇り切ろうとしているころ。
「おい、なんだあれ……」
「目を合わせるなよ、絶対普通じゃないぜ」
 ひそひそと囁きあう買い物客。
「もしかしてアレが、エンドブレイカー様の言ってた……」
「シッ! さっさと行こうぜ」
 バザールの人通りはいつもより格段に少ない。
 そんな状況で、彼らの異様さは一団と際立っていた。
「………」
「………」
 シャルムーンのコスプレをした一団は家畜販売のテント前までやってくる。
「ようやく来たのね……臭くて鼻が曲がるかと思ったわ」
 テントの側、物陰から一団の接近を確認するのは退かない媚びない顧みない・エレノア(c04817)。
 魔法のスティックを生み出すと、高らかに歌いだした。
「♪家畜の小屋に、豚が10匹〜」
 適当な節と相反する美しい歌声が響き渡る。
 普段ならバザールの喧噪で掻き消えてしまったかもしれないが、事前に注意喚起をしていて人も少ないこともあり歌声が通る。
 更に歌は当然別々に活動している狂信者集団にも聞こえてしまう懸念点があったが、今は10人全員がまとまって行動しているので問題ない。
「?」
 いきなり歌が聴こえてきて、戸惑い硬直する狂信者たち。
「驚いても声を上げないなんて、えらいじゃない?」
 歌い終えたエレノアは家畜販売のテントを守るように立ちふさがる。
 その眼は細まり、サディスティックな光を帯びていた。
「しゃべらないってなると、しゃべらせたくなっちゃうわよねぇ?」
 背中に隠しておいた棍を抜く。
「「「!!」」」
 かなりの手練れの上に仲間が来る。本能的に危険を察知し、蜘蛛の子を散らすように逃げ始める狂信者たち。
「良い声で、鳴かせてやるぜ!!」
 振り下ろした棍が、一人の狂信者を打ちのめした。

「っ、……っ!」
 息を切らして逃げようとする狂信者二人。その進路にターバンと布をまとったカナタが現れた。
「!!」
 二人なら勝てると踏んだ狂信者はナイフを構えカナタへと突撃する。
 閃く金属の軌跡。ナイフが切り裂いたのは、カナタのまとっていた布だけだった。
「はっ!」
 布でナイフを絡み取り、そのままナイフの持ち主の顔へ布を投げつける。
「……っ」
 布の下、カナタもシャルムーン姫のコスプレをしていた。仲間だったのか、ともう一人の狂信者の顔に一瞬安堵の光が灯る。
 しかし、希望の光はすぐにかき消された。
「まだ至らない狂信者さん、皆さんが倒すべきは、このエンドブレイカーじゃないですか?」
 顔に布をぶつけられて視界が見えなくなった狂信者を蜘蛛の糸が包み込む。
「!」
「シャルムーン様の真似をして喋らないなんて烏滸がましいんよ! 暴力に頼らない静寂だったからこそ素敵なのに!」
 逃げようとするもう一人の狂信者の目には、召喚された星霊アクアが映っていた。

 同じように、逃げようとした三人の狂信者。
 十字路に差し掛かってさらに散り散りになって逃げよう、としたところで―― 
「そうはさせるかっ!!」
 横道からやってきた緑の塊。逃げ損ねた一人がふっとばされて地面に転がり、昏倒する。
 緑の塊は星霊ノソリンで、声の主はサクヤだった。
「よくやったな、リウ」
 物陰から姿を現したサクヤは、ノソリンの背中を撫でる。
 慌てて逃げる二人を阻んだのは別の影。
「ま、掌返すやつらが気に食わないってのは分からなくはないな」
 道の中央に佇み、刀を鞘から抜き放つランディ。まばゆいばかりの光を放つ刀身。
「でも、こっちにも譲れねえものがあるんだ。一般人は誰一人殺させやしない……お前らも含めてな!!」
 そしてもう一人へ光の如き疾走で肉薄すると、その腹を剣の峰で殴りつけた。

「ふぅ……」
 エンドブレイカーの包囲網から抜け出したた一人の男性狂信者は安堵のため息をついていた。
 あとはこの出入り口付近で仲間と合流するのを待って、その間に買い物客を殺しまくればいい。
 そう考えた狂信者の目に留まったのは、一軒の小さな出店だった。
「いらっしゃいませ〜、シャルムーン焼きだよ〜」
 年端もいかない少女がシャルムーン姫を模した饅頭を鉄串で刺し貫いて焼いている。
 シャルムーン様になんてことを……! 狂信者は憎悪の瞳で少女をにらみつける。
 手にしたナイフで喉笛を掻っ切ろうとした、その時だった。
「そこまでです」
 いつの間にか背後に紛れ込んでいたクラウスがナイフを持つ手首をつかみ上げる。
「……!」
「ふふ、小さいとこういう時、便利なのですよ」
 少女……クレアが店から道へと出てくる。その額には王虎アルギオスの紋章が浮かび上がっていた。
「……っ!」
 逃げようにも狂信者はクラウスに拘束されている。クレアは拳を大きく振りかぶった。
「男でその恰好はキモすぎるのです!!!」
 強化された拳で、狂信者は宙に舞った。

 ここまで倒れた狂信者は計七人。残りの三人は一緒に行動し、土地勘を駆使し逃げ回っていた。
 細い路地を抜ける。その際、一番後ろにいた女性の狂信者に何かが襲い掛かる。
 鈍い音に振り向く二人の狂信者。
「……」
 その場に立っていた女性は、申し訳なさそうに頭をさすり、ぶつけたとジェスチャーで示す。
「………」
 狂信者二人のうち一人が両手を伏せる。女性が疲れているのだと判断し、ここで休もうと提案していた。
「……」
 女性は二人をじっと見たあと、フルフルと首を振る。
 そして紙にペンで地図を描き始め、クレアたちのいる出入り口へ向かおうと図示してみせた。
「……」
 こくりとうなずき、また前を向き走り始める狂信者二人。
 彼らがもう少し注意深ければ気づいたはずだ。同じ色黒の肌、同じシャルムーン姫の恰好をした『本物』が物陰で昏倒させられているのに。
 さらに言えばさきほど振り返った際に、彼らの顔を光景として彼女がしっかりと『記憶』に刻み込んでいたのだが……これは彼らがどれだけ注意深くても気づくことは難しかっただろう。
 包囲を抜けてすっかり安心して背中を向けている狂信者二人。
 彼らを捕まえるのは、暴食の黄卍・ヴァーグ(c35110)にとっては既に簡単なことだった。

●顛末報告
「ふぅ〜、やっとしゃべれるなぁ〜ん!」
 自分が捕まえた三人の狂信者を縄で数珠つなぎにして、果実を1個丸かじりにするヴァーグ。この果実は狂信者たちが逃走する際に店にぶつかり、売り物にならなくなってしまったモノをヴァーグが買い取ったのだった。
「このフルーツ、おいしいなぁ〜ん。みんなの分もあるから食べるなぁ〜ん」
「いただくよ……一人で一番多く信者を捕まえたのはヴァーグか。お手柄だな」
 ランディと共に狂信者三人を捕縛したサクヤが山盛りになった果実をひとつ手にしてかじる。シャクッとした歯ごたえと共にみずみずしい果汁が口の中に広がる。
「そんなことないなぁ〜ん、照れるなぁ〜ん」
「果物屋にちょっと被害が出ちまったが、誰も死ななくてよかったよ、ホント」
 ランディの言葉には実感が籠っている。おおむね作戦通りに行ったとはいえ、やはり実戦はなにが起こるかわからない。被害者を出さなかった点において、ランディも満足できる成果だっただろう。
「まあ、あとは官憲か自警団に任せましょ」
 戦い足りないといった様子のエレノア。仲間を呼ぶような歌を歌ったり脅しすぎて敵は皆彼女から逃げてしまったのだから仕方のないことではあるのだが。
「それじゃ、最後は果物屋さんを片づけておしまいにするなぁ〜ん」
 ヴァーグとサクヤは雑巾に星霊ブラウニーの絵を描き、掃除の効率を上げる。
「ボクも手伝うよ」
 そう言うカナタはまだシャルムーン姫のコスプレをしたままで。
「……えっと、できれば別の服を着てほしいのですよ」
 身長的に男の生足を目の前で見せつけられているクレアから、苦笑交じりのツッコミを受けるのだった。



マスター:蘇我県 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2014/03/09
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  • 楽しい2 
  • カッコいい7 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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