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手作りアクエリオ様クッキーが美味な理由

<オープニング>

●クッキー露店商の休日
 水神祭都アクエリオ、凍りついた跳ね橋。
 手作りクッキーを売る露店商は、休みの日にもこの跳ね橋へ来るのを楽しみにしていた。名をミズキという。
 露店商としてではなく、恋人である男性のゴンドラへ同乗して、デートとして訪れる。
 もう何度も来ている2人にとって、ガラス製の跳ね橋自体は見飽きている。
 ただ、凍りついた跳ね橋なる逸話が、水路にゴンドラを長時間停めておくには都合の良い内容だから、よく利用しているのだ。
 通行止めを食らってゴンドラが通れない跳ね橋とは、つくづく便利だと思う。
 物語を追体験するふりで水路にひしめく多数のゴンドラの中、実際に恋人達が何をしているやら知れたものではない。
(「ふふ……橋の上であくせく働いている同業者達をこうしてゴンドラ越しに眺めるのは良い気分だわ」)
 愛する男の腕に抱かれて、優越感に浸る至福の時。
「そろそろ飯にしねぇ?」
「じゃあ私買ってくるわ」
 男と自分のための買い出しも苦にならない。
「すみません、カニ焼き飯大盛りを1つに、ホットコーヒー2つね」
 互いに少食なので、1つの焼き飯を分け合って食べるのが丁度良い。そんな按配を考えるのも楽しい。
「お待たせ」
 自分と同じ女商人は、愛想の悪さに反して焼き飯の量をオマケしてくれた。サービスが良い。
 上機嫌でゴンドラへ戻ったミズキは、男と一緒に焼き飯を食べようとして、驚愕した。
「やだ、何これ……!?」
 山と盛られた焼き飯の下から、何と果物ナイフの刃先が顔を出している。
「嫌がらせにしても酷過ぎる。文句言ってやる」
「私も行くわ!」
 いきり立つ男を追ってゴンドラを降り、ミズキは先ほどの屋台へ走った。
「……?」
 男は女商人へ滔々と文句を垂れているものと思っていたミズキは、2人が無言で睨み合っているのを視界に入れて、不審がる。
「どうしたの?」
「……女房なんだ」
 嫌そうに答える男の言葉で、全てを察した。
「奥さん……!?」
「……今頃気づいたのね」
 カニ焼き飯屋台の店主に扮した中年女が、本性を現す。
「休みの度に馬鹿みたいにめかし込んで出掛けていくんだもの、わかり易いったらありゃしない……貴女もいつも同じ場所へ連れて来られて満足? えらく安上がりなのね? それとも」
 2人きりにさえなれれば、場所なんて関係ないのかしら――若いって良いわね?
 中年女の侮蔑と憎悪に満ちた言葉が、彼女の度重なる尾行を物語っていた。
「……バレたなら仕方ない。俺も腹を括ろう」
 男は独りで結論を決めてしまったらしく、中年女へ見えるように、焼き飯を焼く鉄板の上に何かを置いた。
 結婚指輪だった――妻と別れるつもりなのだ。
(「別れて私と一緒になってくれるのね!」)
 ミズキは喜びに打ち震えたが、そこまでだった。
 女はキレると何を仕出かすか解らない。
 ――ズブッ!!
 中年女の握った出刃庖丁が、ミズキが気づいた時には、男の腹に深々と刺さっていて。
「嫌ぁあああああああああ!!?」
 倒れる男、自分の声が神経に響くほどの絶叫。
 涙でままならない視界の中で、必死に男の身体へ取りすがって、無事を願って。
「アンタみたいな小娘に誑かされた夫が許せないんだもの、仕様がないわよね?」
 中年女の声と同時に、腹へ焼けつく痛みが疾って、意識が途切れた。


「……私は、あの見た目にも可愛らしいアクエリオ様クッキーを焼いていた方の背景を知って、何だか納得してしまいました……殿方の心を掴むのが上手い女性というのは、自らを可愛く見せる術をしかと心得ていらっしゃるものです。クッキーの売れゆきが好調なのも頷けますわ……」
 深窓魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)は、しみじみと語ってみせてから、説明を始めた。
「まぁ納得ばかりもしていられません。ミズキさんと恋人さんを殺そうとなさるマスカレイドの討伐、宜しくお願い致します」
 クッキー商人ミズキを殺す中年女性は、名をマリカという。
 今回倒して欲しいマスカレイドは、そのマリカひとりだが、自らマスカレイドになっただけあって一撃の威力がそこそこ高い点には注意して欲しい。
「マリカさんは出刃庖丁を使って、バックアタックやシャドウリッパーと同等の攻撃をしてきますわ……」
 事件が起きるのは、正午を少し過ぎた頃である。
「つい先日に水のイマージュによる被害を受けそうになった場所ですから、現場の跳ね橋にいらっしゃる方々は、避難指示などに素直に従って下さるとは思いますの……ですが」
 そこまで言って、微かに表情を曇らせるレフルティーヴァ。
「マリカさんは、自ら望んでマスカレイドになっています……これは、一般の方へは未だ隠しておくべき事実です。その辺り、うまくごまかして避難を促す工夫が必要やもしれませんわね」
 そう注意して、神妙に深々と頭を下げるも。
「それでは、マスカレイドの討伐、重ね重ね宜しくお願い致します。無事に事件を解決なさいましたら、橋の露店を冷やかすなり、ゴンドラを楽しむなりご随意に……でも私は」
 あのお2人の行く末が、どうしても気になってしまいますけれど。
 結局は修羅場好きの野次馬根性を覗かせ、悪戯っぽく笑う情報屋であった。


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参加者
アウトロー・トリエラー(c02678)
凶星氷蝶・リン(c17201)
廻るセントウレア・ナギサ(c21540)
導きの紅き月・ルア(c28515)
火神の舞姫・タツヒメ(c30422)
紅蓮の如く・オータム(c34500)
星詠の炎剣・ツバキ(c34798)

NPC:深窓魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)

<リプレイ>


 水神祭都アクエリオ、凍りついた跳ね橋にて。
「不倫はいけないことよ。だから、マリカさんには同情するわね……」
 でも、マスカレイドになってしまったからには退治せねばならないわ。
 導きの紅き月・ルア(c28515)は、多感な少女らしい潔癖さからきっぱりと不倫を否定してみせて、今回マリカを倒さなければいけない複雑さを吐露している。
 彼女は一般人の避難誘導を請け負っており、そのために馬を借りて来たかったようだが、ゴンドラが普及しているこの近辺は船宿ばかりで馬を貸し出している所は残念ながら無かった。
「問題は、ミズキさんが不倫関係の恋愛であると御存知だったか否かです」
 御存知でなかったと思いたいところですね……。
 星詠の炎剣・ツバキ(c34798)は、心優しい彼女らしい希望的観測を述べて、深く吸い込まれそうな黒い瞳を揺らした。
「どちらにせよ、御相手が不誠実である事は間違いようもない事実ですが」
 溜め息をつきながらツバキが視線を落とす手元には、跳ね橋周辺の地図が描かれた羊皮紙。
 マリカを誘い込むのへ丁度良いひと気の無い場所を探すべく、記憶と照らし合わせているのだ。
「この船宿の裏手、行き止まりなのね」
 その地図上の一点をさり気なく指差すのは、廻るセントウレア・ナギサ(c21540)。
 彼女も以前跳ね橋へ訪れた事があるため、その時使った船宿に自然と視線が行っていたのだろう。
「戦闘するには良いかもね」
「そうですね……一般人の避難誘導班が後から合流するとなると、自然と退路も絶てますね」
 仲間が素直に頷く横で、ナギサは遠目にマリカの焼き飯屋を眺め、彼女の動向へも注意を払っている。
 他の客に紛れて気配を消せば、相手に気づかれる事もない。
「ツバキ、買い食いは後でな……道案内頼むぞ」
「はい、お任せください……」
 アウトロー・トリエラー(c02678)は、地図と格闘する黒い頭をぽふぽふと軽く叩いた。
(「丁度良い高さだな」)
 跳ね橋を行き交う人の多さから煙草を控えている彼は、手持ち無沙汰を紛らわせるように仲間の頭へ手を伸ばしている。
「まぁ、自分からマスカレイド化してもう後戻りできねぇってんなら、遠慮は無しだ」
 思いっきりぶん殴ってやる。
 そんな決意を語りつつ、今は深窓魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)の頭を撫でていたが。
「同感。心おきなくぶちのめしてくれ」
「……お前のナリでその口調は違和感あるな」
 下から聞こえてくるガラの悪い激励には、苦笑で返した。
「この跳ね橋自体が呪われてる、なんて噂が立たねえか心配だぜ」
 ばれずに解決するのが一番だが、そうもいかねえだろうしなあ。
 紅蓮の如く・オータム(c34500)は、被害者達の無事も勿論のこと、友人であるツバキが気落ちしてしまわないような結末を迎えたいものだと、思案に耽っていた。
 彼もこの跳ね橋を訪れた経験があるゆえ、被害者2人を安全に逃がせる方法を検討しようと、ツバキの地図へ目を走らせる。
「ふむ……向こう側には大通りが見えるのう」
 一方、凶星氷蝶・リン(c17201)は、跳ね橋全体を見下ろせる位置の屋根へと登って、一般人の避難経路の検討を付けていた。
 気配をしっかり殺した上で常人と掛け離れた視力を発揮して街を眺めるリンは、いかにも忍者らしい風情である。


 ミズキが、山盛りのチャーハンを持ってゴンドラの方へ歩いていく。
「……焼き飯屋、ここか。ちょっとおたく、どういうつもりで――!?」
 すぐに戻ってきた男は、怒って皿を屋台の鉄板へ叩きつけようとして、固まった。
 後を追って来たミズキへ、辛うじて小声で受け応えしている。
「どういうつもり、ですって? こういうつもりよッ!」
 そんな2人の様子が癇に障るのか、マリカが出刃庖丁を構えて恫喝する。
「まぁ……こんな調子じゃ浮気されても仕方ねぇな」
 マリカの目が彼だけを捉えるように誘導するのはトリエラーだ。
「外野は黙ってて頂戴!」
 苛立たしげな声が返ってくる。
「やぁ、おばさん。浮気が腹立つのはわかるけど、そんなに嫉妬するのは見苦しいわよ? あと醜い顔が更に醜くなってるわね!」
 齢16のナギサが、右手で串をくるくる弄びながら挑発するのへは、同じ女だからか相当堪えたようで。
「誰が醜いおばさんですって、クソ生意気な小娘ね!」
 マリカは携えた出刃庖丁ごと向き直って、彼女の方へ刃を向けた。
「俺たちはエンドブレイカーだ!」
 あんたら2人を避難させる! こっちについてきてくれ!
 その間にも、オータムはミズキ達の背中を押すようにして先導する。
「待ちなさいこの小娘がッ!!」
「おばさんに追いつかれるような足してないのよ」
 ナギサはそう笑いつつ、ここまで激昂させられたなら先を行くオータム達にマリカの意識が向かない方が良かろうと、狭い路地を壁走りしてみせる。
 トリエラーとツバキも、被害者達が万が一攻撃を受けないように、うまくオータムとナギサに挟まれた位置取りで逃げ続ける。
「わたし達はエンドブレイカーです。この橋に関する危険なエンディングを見ましたので、暫くの避難をお願いします……」
 同じ頃、跳ね橋の上でも火神の舞姫・タツヒメ(c30422)の号令により、一般人達の避難誘導が始まっていた。
(「怪我でもされたらたまったもんじゃないわえ」)
 リンがそう懸念する程に、通行人の数や露店商の数が多く、ルアやレフルティーヴァも協力してやっと充分な人払いが出来た。
 ちなみに水路の方では、影姫・アレクサンドラ(c01258)が自前のゴンドラを使って、他のゴンドラへ避難を呼びかけてくれたようである。
 その頃、跳ね橋へ来た事のある者達でアタリをつけていた行き止まりの路地では。
「エンドブレイカーです! 貴女に2人は殺させません!」
「竜を纏いし拳士が一人、オータム・スカイ……参る!」
 ツバキとオータムが身を挺して被害者達を庇い、マリカの広げた影による連影刃を食らっていた。
「ツ……俺のダチに手を出しやがったな!」
 てめぇは今日の夕陽すら拝ませねぇ……!
 思わず熱くなったオータムが、力を集中させた腕による飛翔肘打ちを叩き込む。
「ぎゃあっ」
 マリカは潰れた蛙のような声をあげて、尻餅をついた。肩が外れたかもしれない。
「やっぱ旦那には浮気されたくないわよね。うんうん。わかるわ」
 ミラージュ・スカイを構えてからの横斬りで、マリカの腹を引き裂くナギサは、いつにも増してつっけんどんだ。
「御託は良いのよ、よってたかって私を馬鹿にして! 全員殺してやらなきゃ収まらない!」
 みるみるうちにエプロンが血みどろになったのも構わずに、マリカは怒りのままに攻めてくる。
「ちったぁ黙れよ。俺たちが相手してやるつってんだろ?」
 トリエラーは、背中突きをものともせずに嘲笑って、構えたシルバー・ルークから紫煙弾をぶち込む。
 マリカの大根足に幾つも穴が空き、ごぽっと血が滴った。
「ぎっ……とにかく全員殺して、その後が夫とあの女……どこに逃げても無駄よ、絶対絶対逃がしてたまるもんですか!!」
 痛みを堪えるためか、声を張り上げるマリカ。
 既に被害者達は壁の隙間から船宿の敷地内へと逃がしてある故、ツバキは冷静に星霊クロノスを喚び出した。
「いらら、行きなさい……」
 クロノスキックを顔面に受けて、マリカの顔が怒りに歪む。
「人の三角関係ほどドロドロしておるものは無いのう」
 いやぁ、どす黒いその感情……我は好きぞ。
 すると、一般人達を避難させてきたリンがマリカの後ろに立ちはだかり、退路を遮断した。
「どす黒くて悪かったわね!」
 鬼の形相で振り向くマリカ。
「おおっと! すまんすまん」
 リンは全く悪びれない様子で、楽しそうにマリカを煽ってみせた。
「まぁ、旦那が若い女の所に行って悔しいのは分からんでもないがの……我には関係ないか」
 言い終えた刹那、絶氷刃・凪継が閃いて、赤い刀傷が十字に疾る。
「がはっ――!?」
 胸を斬られて血を吐くも、マリカは邪影無尽斬で反撃、今しがた合流したタツヒメへ襲いかかる。
「くっ……」
 胴を貫かれてタツヒメは呻くも、お返しに旋風黒魔刃を見舞った。
 怨霊籠りし大鎌が、見事マリカの頭部に突き刺さり、だくだくと血を流す。
「お待たせしたわね」
 次いで戦闘に加わったルアも、太刀を抜き払って斬りかかる。
 鋭い痛みが水平に疾り、マリカの両腕を鮮血に染めた。
「でもまぁ、私もイラっと来るときはあっても刺したいとまでは思わないわよ。殴る蹴るの暴行は加えるけど」
 ナギサはそんな持論を語りながら、オーラウイングを纏って超加速の勢いで斬りつける。
 ミラージュ・スカイの刀身がマリカの腰へ深々と減り込み、赤黒い溝を作った。
「オォォォラァァツ!」
 トリエラーは気合い充分に咆哮を上げ、マリカの出刃庖丁をシルバー・ルークの銃身で捌き切ると、びたりと左胸へ銃口を押しつけ発砲。
 ドウッ!
 凄まじい衝撃に声もなく苦悶するマリカ。紫煙の残滓が銃創から立ち昇った。
「竜よ、内にて荒れ狂え!」
 オータムが双掌破で爆発的な気を叩き込み、さらなる追い打ちをかける。
 マリカの体内を膨大な圧力が暴れ回り、細かい骨を粉々に砕いて激痛を生み出した。
「ひらら、頼みました」
 星霊フェニックスを召喚し、不死鳥の羽を羽ばたかせてタツヒメの深手を癒すツバキ。
「ククク……やり場を失った怒りに震える女は哀れよのう。もはや誰も受け止めてはくれぬものな?」
 どうやら捻くれ者を地で行くリンは、仮面で隠れていない右半分の面(おもて)に酷薄な笑みを浮かべて、アックスソードならではの重みある刃で横薙ぎの一閃。
 地面と水平に放たれた剣撃がマリカの腹の半分以上を斬り裂いて、ついに彼女を絶命させたのだった。


「こんな結末はとても悲しいもの」
 マリカの死体を目の前にして、最初に呟いたのはルアであった。
「せめて、ちゃんとした綺麗なお墓に葬ってあげたいわね」
「そうね」
 短く同意するナギサ。
「『後始末』はきっちりしとかないとな」
 トリエラーが遺体を担いで近くの墓地へと運び、埋葬はリンやオータムも手伝って、手厚く葬ってあげた。墓地の場所はレフルが知っていた。
 遺品である果物ナイフと出刃庖丁を墓前に供えて、トリエラーは呟く。
「誰か来てくれるといいな」
 オータムも優しく言葉をかけた。
「辛かったろう。ゆっくり眠りな……」
(「――どうか彼女が安らかに眠れますように」)
 ルアは跪いて、真摯に何やら祈っている。
 その後は、船宿へ逃がした被害者達を迎えに行って、跳ね橋まで戻ってきた一行。
「いい? ミズキさんが不倫なんてしたから、命の危機に遭ったのよ」
「マリカさんをここまで追い詰めたのは、貴方です」
 ルアはミズキへ。ツバキはマリカの夫へ。
 不倫などという不毛な恋愛がどれだけ周囲を傷つけるのか教え諭すべく、それぞれのお説教が始まった。
「ミズキさんに対してもマリカさんに対しても、貴方のしたことは許し難い裏切り行為です」
 別れる気があるのなら、別れてから付き合うべきでした。
 滔々と強めの物言いで語るツバキ。彼女自身幾度も道ならぬ恋絡みの依頼を経験しているためか、マリカだけでなくミズキの立場でも物事を考える思考の柔軟性を見せた。
「どちらにも嘘で固めた結果が、この現実なのですよ」
 マリカさんにも元々マスカレイド化する素養はあったのでしょうけれど、最大の原因は貴方の浮気です。
 ツバキの黒い瞳はその純粋さでマリカの夫を圧倒し、女の傷ついた心境を切々と訴えた。
 一方で、しっかりお灸を据えたいと燃えるルアは、あえて厳しく言い放つ。
「悔い改めて、もうこんなことはしないように」
 人間はもともと『よいもの』で、成長できる存在だと思っているわ。
「そして、失敗から学び、悔い改めることができると思うの」
 ルアの語り口は、厳しい中にちゃんと優しさも滲ませていて、ミズキの再出発を芯から望んでいる事が伝わってくる。
「今回のことに懲りて、ミズキさんがまっとうな商売をし、まっとうな人生を送ることを心から願いたいわ」
 立ち直る気があるのならば、最大限応援するわ。
 最後にそうビシッと励まして、ルアは話を締め括った。
「……やれやれだぜ」
 トリエラーは、人の減った橋の上で煙草を満喫中。何故かレフルがその背中に隠れていた。
 一般人の避難誘導をしていたアレクサンドラも戻ってきて、いそいそとウォータくんキャンディを売り始める。
「あんたらも、コレに懲りたら不倫も程々にね。誰に見られてんだかわかんないんだから」
 ナギサは、ミズキ達へ彼女なりの忠告をしてから、跳ね橋そのものへ視線を向ける。
 キラキラ煌めく水路の水が跳ね返すのは、ドロースピカの光。
 その光を受けて巨大硝子が輝く様は、以前と変わらず美しい。
 じっと眺めるナギサの胸に去来するものは、果たして。
「リン、気晴らしに何か食いにいくか?」
「うむ」
 他方。ずっと傍観に徹していたリンは、トリエラーの誘いに頷いてみせてから、素早くミズキのもとへ駆け寄る。
「レフルも何か食うか?」
 後方では、さらにレフルを誘っている声がした。
「アクエリオ様クッキー1つ、もらおうかの」
 何の屈託もない声色で注文したリンは、少しばかり顔色を取り戻しクッキーの袋を手渡してくれるミズキを見やると。
(「……しかし、この女もなかなかに強かな女よな。まだまだ男とか居そうじゃのぉ……」)
 率直な感想を抱くとともに、意地の悪くも楽しい想像を巡らせて、思わず笑いを噛み殺したのだった。



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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2014/04/05
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冒険結果:成功!
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