ステータス画面

ハイテンションスタッガー

<オープニング>

 エルフヘイムの放棄領域にある森……巨木に生い茂る葉が陽光を遮る深き森の中。
 茂みと下草を掻き分けるガサガサという音と共に、その森を歩いているのは、頭に大きな角を備えた女性達。
「よっしゃー、この木にするぞー。準備はいいかー!」
 先頭の女性が拳を掲げ、巨大な2本の角を打ち鳴らすと、
「『よっしゃー!』」
 あとに続く女達も腕を突き上げ、鬨の声を上げる。
 彼女たちの頭にあるのは鍬形……甲虫の『クワガタ』に似たそれである。
 彼女達はクワガタのピュアリィ、スタッガーであり、顔や胸、腹など、それぞれ思い思いの場所にマスカレイドの仮面があった。
「よっしゃいくぞー!」
 最初に声を上げたスタッガーが拳を振り下ろすと、他のスタッガー達が巨木目掛け、一斉にその角とを突き立て、打ち倒し始めたのである。

「森の主さんから知らせが来たんだけど、マスカレイド化したクワガタのピュアリィ……スタッガー達が、次々と巨木を切り倒そうとしているみたいなのよ」
 噂詠の魔曲使い・ルトゥン(cn0053)はそう言って集った皆を見渡すと、手帳のページをパラパラとめくり始めた。
「放棄領域だから近くに村とかも無くて被害は出ていし……どういう意図があるか分からないんだけど、巨木を次々と倒されると森が減り、エルフヘイムにとって好ましいものではないわ。
 それにマスカレイドのやる事だから、放置して良い結果になるとも思えないしね。面倒だけどお願いできるかな?」
 ルトゥンはそう言ってウインクし、手帳を閉じる。

「スタッガーの数は5体。あ、スタッガーはさっきも言った通り、クワガタのピュアリィね。森の主さんの話だと、なんか『よっしゃー!』『よっしゃー!』と声をあげるテンションの高い連中だそうだよ。
 当然攻撃は頭のクワが中心で、なかなかの威力があるので鋏まれるのは危険よ。
 彼女達は巨木を倒すべく森の中を進んでるから、その道中で戦いを仕掛ける事になるわね。
 巨木の生い茂るエリアだから地面まで陽光が届き難く、巨木の幹が点在する以外は特に障害物も無い様な所で戦いになると思うから、奇襲とかは難しそうだね。そのつもりで作戦を立てるといいと思うよ」
 ルトゥンは皆が頷くのを確認しつつ説明を続けた。
「何が目的か分からないけど、マスカレイドのやろうとしている事の芽は早く摘んでおかないとね。エルフヘイムの為、そして全世界の為にも、みんなの働きに期待しているよ」
 最後にそう付け加え、ルトゥンは皆に頭を下げるのだった。


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参加者
荒野の山羊使い・セヴェルス(c00064)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
天華の欠片・キリィ(c01934)
オヤジうたうたい・アルヴァス(c10068)
スクラップマシン・オート(c34187)
誓剣の乙女・リスティーナ(c34850)
ハーレムクイーン・バクコ(c35333)

<リプレイ>


「よっしゃ行くぞー!」
「おー!」
「おー!」
 薄暗い森の中、ハイテンションなスタッガー達が、拳を振り上げ行進している。
(「……な、なんだあの連中は……」)
「やたらと陽気なスタッガーだが、何かやる気が出ることでもあるのかねぇ?」
 天華の欠片・キリィ(c01934)がポカンと口を開ける隣で、振り返ったオヤジうたうたい・アルヴァス(c10068)が、鼻の頭を掻きながら肩を竦めると、
「なにを意気込んでいるのか知りませんが、エルフヘイムにとって大事な巨木を、傷つけさせるわけにはいきません!」
「ほんと、何のために木を切ってるんだかねえ……?」
 腕を組んだ誓剣の乙女・リスティーナ(c34850)が頬を膨らまし、スクラップマシン・オート(c34187)もあきれ顔で小首を傾げる。
「なんにせよ、森に生きる者でありながら森を破壊する者には、森に代わってお仕置きです」
 阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)が、微笑を浮かべ機工弓【魔戯嵐屠】の弦の具合を確かめ、
「そうだよねぇ、いったいスタッガーはどれだけ居るんだい? 上でおとなしくしているインセクテアを見習ってほしいよ」
「ほんと、アタシもう4回目だよ」
 ルーンに同調した荒野の山羊使い・セヴェルス(c00064)に、オートが相槌を打つ。そんな中、
(「ふふふ……せめてマスカレイドでなければ後で色々と楽しめたのに……そこは残念だけど、せいぜい可愛がってあげるわねぇ」)
 ハーレムクイーン・バクコ(c35333)は、その赤い瞳を妖しく輝かせていた。
「ん! なんか嫌な予感がするぞー。みんなはどうかー?」
「しないぞー!」
「しないぞー!」
 バクコに見つめられたスタッガー(乳大き目)が、何かを感じ取ったのか、うなじの辺りを押えてキョロキョロと辺りを見回すと、獲物を見つめる蛇の如き視線で、自分を見つめるバクコと目が合った。
「それにしてもなぜ自分達の住む場所を破壊するような行動をとるのでしょうか?」
「どういう意図があるにせよ、『害虫』に違いないよねぇ。放置もできないし……」
 ルーンとセヴェルスがスタッガーの意図について話し合う中、
「お前は誰……」
「スタッガーちゃん達発見ーーーー! いただきまーす!」
 スタッガーの誰何の声を遮るバクコの大声。機関車ダッシュで走り出すバクコに、
(「あのテンションで行かねばならんのか? ……よ、よし……っ、頑張るか」)
 目を丸くしたキリィがテンションを上げるべく小さな握り拳を作り、
「若いのは元気で羨ましいぜ」
 ゆっくりと得物を肩に担いだアルヴァス達と共に、バクコに続く。
「たぶん敵だー! 迎え撃つぞー!」
「合点承知―!」
「合点承知ッ!」
 スタッガーの方も得物を構える面々を見て敵と認識したのか、仮面を浮かび上がらせ、クワガタを打ち鳴らしエンドブレイカー達を迎撃するのだった。


「おっといけない、私は後ろから戦うんだったわ」
 先頭を走っていたバクコは、ギリギリのところで本来の役目を思い出すと、白狼孤鳴を撓らせ、手近な岩をその鞭で絡めスタッガー目掛けて投げつける。
「どっ、せーい!」
 飛んで来た岩をクワガタではさみ、勢い良く後ろへ放り投げるスタッガー。
「……そのテンションの高さを維持する秘訣を教えてもらいたいものだ」
 そのがら空きになった胴へ流麗な動きで距離を詰めたキリィが、冷気を集中させた雪華剣『スノーホワイト』の切っ先を突き入れる。
「させないぞっ! ……たっ!」
 そのキリィにクワガタを打ち鳴らし横合いから別のスタッガーが突っ込むが、その側面に次々と突き刺さるボウガンの矢。
「アンタの相手はアタシだよねぇ? そのまま昆虫標本にしてほしいのかい?」
 ニイッと歯を見せて笑ったオートが、スタッガーが反応するより早く銃を抜くと、連続で紫煙弾を撃ち込んだ。
「どんどんいくわよぉー!」
 その後ろではスタッガーに負けず劣らずのテンションで、バクコが鞭を鳴らし、手当たり次第物を投げつけていた。

「……堅い装甲に大層自信がありそうだが、その無駄に高いテンションごとブチ砕いてやろう」
 瞳を細めるセヴェルスの両手首から流れる血が、猟犬に姿を変え下草を踏み駆ける。
「ヒャッハー、汚物は消毒だー!」
 その猟犬たちと共に奇声を上げながら駆けたルーンが、スタッガーのクワガタの左側に弓の弦を絡ませ手繰り寄せる。
「むむっ、力勝負なら負けないぞー!」
 スタッガーも方も、セヴェルスの猟犬達に食らい付かれながらも、ルーンに対抗して力を込める。
「ええぃ、隙ありです」
 そこに別のスタッガーと斬り結んでいたリスティーナが、そのスタッガーのクワガタを大剣で跳ね上げ、その勢いのまま体を回転させる一閃で起こした竜巻をぶつけ、再び振り下ろされたクワガタを刃の側面で受ける。
「ほぅ、今の動きはなかなかだよねぇ」
 その動きにピクリと眉を動かしたセヴェルスは、リスティーナを援護すべく、そちらへ猟犬を差し向けつつ、スタッガー達の動きを見ながら立ち位置を移動させる。
「死ね死ね死ね死ね、絞殺刑にしてやる」
 横合いからの竜巻に怯んだスタッガーの首に弦を巻き付かせたルーンは、狂喜的な哄笑を上げながらその首を縛り、
(「スタッガーさんより、ルーンさんの方が怖いです……」)
 傍目に見たリスティーナをドン引きさせていた。

「どーん!」
「やられるかよっ、俺の歌を聞いてシビレな!」
 クワガタを向けて突っ込んできたスタッガーを、地面に突き刺し体重を掛けた無銘の一振の刃背で受けたアルヴァスは、眼前でカチカチ鳴るクワガタを余所に、そのバリトンボイスを響かせる。
「ぎぎー、この歌はなんだー!?」
 紡がれる魅惑のフレーズに警戒心を奪われたスタッガーが、声を上げた所にキリィ。
「歌に耳を傾けるとは、可愛いところもあるじゃないか」
 白いロングドレスの裾をはためかせたキリィが、至近距離から衝撃波を叩き込む。
 装甲で殺しきれなかったのか痛みに顔を歪めたスタッガーが、キリィの体をクワガタで挟むが、それを嘲笑うかの様にその体が掻き消える。
 それはフェイズストライクの分身であったが、気付かず目を丸くするスタッガーの眼前に、
「善いスタッガーは死んでいるスタッガーだけだ」
 ルーンの投じた閃光手榴弾。視線を向けた瞬間それが炸裂した。
「目がー、目がー!」
「考え方次第だが、別のところが痛くなれば目が痛くはなくなるかもしれないぜ? 手伝ってやろう」
 のたうつスタッガーにアルヴァスがサーフブレイドで突っ込み、その切っ先がスタッガーの背から飛び出し絶命させたのである。

「私も頑張らないと。見せかけの気合なんかに負けたりしません!」
 隣でルーンが1体を倒したのを見て、リスティーナも気合を入れ攻勢に出る。
「ぬー、負けないあうっ!」
 目尻を吊り上げてクワガタを振るい、リスティーナの振るう剣を弾いたスタッガーだったが、直後にバクコが鞭で投じた『拳より二回り程度大きな石』を顔に受けて舌を噛む。
「チャンス! もらったよ!」
 その間隙を突き、素早くガンナイフの銃口を向けたのはオート。言い終わらぬ内に紫煙弾を連射した。……が、着弾より早くスタッガーは背を向け、オートの放った紫煙弾は、鞘羽に弾かれた。
「ちっ、今までの連中に比べてなんて硬さだい! やはり腹を狙うしかないねぇ」
 舌打ちしたオートは、鍔迫り合いを繰り広げるリスティーナを援護する様に紫煙弾を放ちつつ、装甲の弱い部分が狙えるポジションを求めて動き回る。
「よっしゃぁぁぁーーーー! ハイパー溜まったー! いっくよぉーーー!」
 若草色の長羽織を脱ぎ捨てたバクコが、ずびしぃ! と人差し指を突き付けて宣言すると、その指し示すスタッガー目掛けてバルカン達が飛び、入れ替わる形でリスティーナが跳び退く。
「ぎゃー! 熱いー!」
 2匹のバルカンとバクコが形成する森羅浄炎陣。その中に閉じ込められたスタッガーは、リスティーナの攻撃で大きなダメージを受けていた事もあり、多重業炎に焼かれると断末魔を上げ崩れ落ちる。
「これで後2体。押し切るよっ!」
 オートはガントレットに仕込んだボウガンを起動させると、残るスタッガーに向けその矢を撃ち放った。

「うぉー、押されてるぞーなんでだー!」
 羽音を響かせるスタッガーは、首を振り次々と倒される仲間を見て声を上げる。
「ノリと勢いでなんとかなるのは若い内だけって事だ。こちとら年季が入ってるんでな」
 言い返したアルヴァスが再び声量を上げて歌を紡ぎ、残るスタッガー達を惑わせる。
「……なぜボクを見るのです? ボクはそんなに年季が入っているつもりはありませんよ」
 アルヴァスの視線に気づいたセヴェルスが、心外だという顔で応じる。
 既に2体になったスタッガーを囲む様に仲間達は移動しており、2体は逃走に備え、リスティーナとキリィにチェイスの印まで刻まれている。
「罪のない木を切り倒してばかりいい加減にしてください!」
「また会いましょう? ……いつかあの世でね」
 リスティーナがそのクワガタをかち上げたところに2人のキリィ。
 スリットから美脚を覗かせた2人はそう微笑むと、斬撃と魔法を叩き込む。
「ま……まだまだぁ!」
 全身を血で染めながらも踏ん張り、顔を上げたスタッガーが見たのはガンナイフの銃口。
「その根性だけは認めてやるよ」
 オートの言葉が銃声と重なり、スタッガーは仰向けに崩れ落ちる。
「くっ……! 重ね重ねマスカレイドである事が悔まれる。縛り上げて色々と楽しめそうなのに……」
 バクコが、アルヴァスの歌に耳を押える最後の1体となったスタッガー目掛け、鞭で絡めた倒木を投じて残念がると、そのスタッガーのクワガタをルーンが絡め取る。
「ヒャッハァーどうする? 後が無いぞ?」
 ルーンがニヤリと笑い、キッと鋭い視線を向け翅を広げたスタッガーの背に衝撃。
「これなーんだ?」
 振り返ったスタッガーが見たのは薄ら笑いを浮かべるセヴェルスと、その手に握られた脈打つ赤い塊。……其れは自身の心臓。
 セヴェルスは、死角からナイフを突き入れた所に手を捻じ込み引き抜いたのだ。
「う……あ……ぁ……」
 何か言おうとするスタッガーだったが、その口からは鮮血しか漏れず。
 やがて白目を剥くと、膝から崩れ落ちたのだった。


「仮面憑きに理屈を尋ねるのも意味ないのは知ってるが、巨木を倒す意図が読めんな」
「巨木はいっぱいあるのに行進していたという事は、どの木でも良いという訳ではないのだろうか?」
 アルヴァスが疑問を口にしたのに応じたのはキリィ。
 今回は行進途中で攻撃を仕掛けた為、どの木を狙っていたのかは不明のままだが、辺りの幹を見ても、木々によってそう違いがある様には感じられない。
「とりあえず回り道でもして倒された木が無いか調べてみるかい?」
 ぼさぼさの髪を揺らして振り返ったオートの提案に皆が頷く。
「じゃあスタッガーちゃん達は埋葬してあげましょうか」
「手間を掛ける事も無いと思うねぇ。ボクが消すよ」
 バクコの言葉を遮る様に前に出たセヴェルスが、スタッガーの躯に刻印を刻んで祈り始める。そんな中、
「さっきのあれは演技です。決してのりのりでも、楽しんでいた訳でもありません」
「え、いや、分かってますよ……」
 明らかに自分を避けるそぶりを見せるリスティーナに弁解するルーンは、
(「強敵と戦う時には、かなり近い状態になりますけど、ね」)
 誰にも聞こえない声でそう付け足した。
 こうしてエンドブレイカー達はマスカレイド化したスタッガー達を屠り、巨木の森を回りながら帰路についたのだった。



マスター:刑部 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2014/05/01
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