ステータス画面

膿ミ堕トサレル魔女ノ仔

<オープニング>

 ブチブチュ、……グチャリッ!!
 血塗れた臓腑の中から、『ソレ』は這い出し顔を出す。
 おおよそ目というものは見当たらない、ブニブニとした胴体に牙の並んだまあるい口が、餌を求めているのか呼吸しているのかパクパクと動いている。
 4対8脚の短い手足はウゴウゴと動き、その指先は何本もの伸縮性のある触手になっている。
 ドクリ、ドクリと脈打つ青紫の血管のようなものが赤黒い体に浮かび脈打つ様は……あまりにもおぞましい。
「か、ハァあぁ〜……」
 彼女、アリッサムは、ため息とも苦悶にあえぐ声とも言える呼吸の後、再び移動を開始した。
 ズルリ、グチャリ。
 かつては勇者であり、乙女と称された穢れ無き存在は、今や異形の存在に成り果てていた。
 喪に服す女性を思わせる黒いベールのマスカレド。
 白百合のような透き通る肌と豊かな胸、しかし、その下半身は臓腑が絡みあい縺れたような、肉塊そのもの……。
 血みどろの不気味な半身を引きずり、アリッサムは、なお移動を続けていた……。
●力の代償
「あぁ、よかった、皆集まっているね。また、困った問題が発生してね。手を貸して欲しい」
 酒場に集まるエンドブレイカー達を見つけた情報屋の彷徨の錬金術士・セルジュ・ファリエール(cn0145)は、さっそく話を続ける。
 魔女となったアリッサムは、ガルシェンから西側の荒野を西に向かって移動しているようだ。
 その歩みは遅く、追いつくことは不可能ではないと思われるのだが、捜索を行ってくれている巨人達が怪異現象におそわれ、アリッサムの居場所を突き止める事ができないでいるという。
 
 その原因は、魔女アリッサムが産んだ『アリッサムの落し仔』が関係していると思われる。
 アリッサムの落し仔は、気味の悪い触手を持つ虫のような姿をしており、自分あるいは魔女アリッサムを捜索しようとする者が『正しい選択をできない』ように妨害をしているらしい。
 おそらく、この力は『自分の望む結果が出るまで何度でもやり直す』という、大魔女の力に関係しているのだろう。
 といっても、アリッサムの落し仔の持つ力はとても弱く、エンドブレイカーには、何の影響も及ぼす事は無い」

「そこで、君達に巨人達の捜索の邪魔となっている『アリッサムの落し仔』を探しだし、撃破してもらいたい」
 セルジュが言うには、まずは、ガルシェンの西の荒野に移動し荒野の捜索を行っている巨人達と接触して、彼らから『不自然に捜索に失敗する場所』を聞いてくる。
 その後は、情報にあった付近を捜索して『アリッサムの落し仔』を見つけ出して撃破すれば良いだろうということだ。
 アリッサムの落し仔は、体長1m程の触手の生えた虫のような姿をしており、場所の範囲が特定されれば発見は難しく無いという。
 どれも『GUTSが非常に高い』という共通性があり、その他は、個体によって大きく差がある様子だ。
「その、酒場でするには気持ちの悪い依頼内容ですまないと思ってる。だが、アリッサムの落し仔を見つけ出して撃破する事ができれば、荒野に慣れたガルシェンの巨人達が、きっと魔女アリッサムを見つけ出してくれるハズだ。だから、今回もどうかよろしく頼む」


マスターからのコメントを見る
参加者
天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)
紅竜姫・テュケ(c02954)
氷の桜桔梗・アヤ(c03522)
薔薇の牆・アナム(c06804)
戦う領主王・ソル(c07090)
砂糖菓子の弾丸・ニコル(c11346)
キュア・パコ(c32268)
緋色の月・アリス(c35760)

<リプレイ>

●探索
「この辺りでしょうかぁ〜。お話でうかがった、『巨人さんが迷子になってしまう場所』というのは」
「方角も途中の目印も合ってる。案内を頼んだ巨人達は、突然ぼうっとして引き返してしまった。ここで間違いないやろね」
 紅竜姫・テュケ(c02954)の問いかけに、手にしたメモを確認しつつそう言った天狼の黒魔女・サクヤ(c02573)。
 『そこ』は、隆起した岩石がいくつも高くそびえ立つ場所だった。
 岩と岩とが障害となり先の見通しが悪いとはいえ、迷うほどの場所ではない。
 そして、奇妙なことに、途中まで快く道案内をしてくれていた巨人達は、この場所に近づいた途端、何故かぼうっとうつろな表情となり自分たちのキャンプの方へと引き返してしまったのだ。
 まるで、何か抗えない力に操られでもしたかのように……。
「エンドブレイカーの僕達が平気で先に進めるところを見ると……この先に『落し仔』が潜んでいると見て間違いなさそうだね」
 薔薇の牆・アナム(c06804)は言った。
「ここでアリッサムに逃げられるわけにはいかない……物音に反応して、上手く誘い出せたらいいが」
 緋色の月・アリス(c35760)はそう言うと、数体の人形を取り出し動かした。
「厄介な力を持ってるんだろうな。さて、何はともあれお仕事お仕事っと」
 戦う領主王・ソル(c07090)も、本格的な捜索を前に持ち物を確認する。
 足元は岩場、先の見通しも悪い。
 不意打ちを食らう、などということが無いよう、ここは入念に準備を……。
「ん〜、よくわかんないし、とりあえずピューと飛び込んでパコパコ殴るのらー♪ キュアパコッ、参上ぉッ!」
 ピシッ! と魔鍵を構えてポーズを決めると、突撃あるのみ。
 唖然とした仲間達を他所に、キュア・パコ(c32268)は、脇目もふらず単身突き進む。
「あらあら、困りましたわぁ〜。お一人で行くのは〜、危険だと思いますぅ〜」
 その後ろ姿を見ながら、氷の桜桔梗・アヤ(c03522)は、ほんわかとした笑顔で言った。
 言葉の通り、本当に困っているのかどうかは、他人からは判断がつきにくい。
「……行ってしまいましたね。仕方ありません、私達は焦らず行きましょうか」
 砂糖菓子の弾丸・ニコル(c11346)は、溜め息をひとつつくと、そう言って肩の妖精たちに微笑みかけた。

●おぞましき邂逅
「あら、この岩陰にベタベタしたものがありますよぅ」
 星霊と共に、落し仔の痕跡を探していたアヤが、ドロリとした粘液のようなものを見つけた。
「……そう、ありがとう。皆! なんや大きいもんを引きずったような跡が、向こうの樹が生えてる辺りに続いてるようや。敵が移動した跡やないかな。確かに、身を隠すにはうってつけの場所やろうね」
「岩だけでも見通しが悪いのに木に囲まれてるときたか。厄介な場所をねぐらに選んでくれたもんだぜ」
 サクヤの知らせにソルは毒づく。
 これには、この場の誰もが同意見だ。
「では、あちらの方を重点的に見通しますねぇ〜。早く見つけませんと。……うぅ、でも、落し仔……あんまり気持ち悪くないと良いんですけどねぇ〜。嫌ですよね〜、ウネウネしてたり、グニョグニョしてたり……」
 見つけたい、でも見たくないテュケ。
 仲間たちが警戒しながら木々の中へ分け入り、しばらくすると。
「うきょー!」
「……聞き覚えのある声ですね。そう遠くない場所です」
 ニコルが銀に輝くフォークを手に取ると、青い燐光を纏ったシエルが、くるりと周囲を回った。
「声から察するに、もう誘き出す必要もなさそうだ。急ごうか」
 アリスは、そう言って人形を収めた。
 他の仲間達も、協力してくれていた星霊や妖精をいったん下がらせ、パコの悲鳴? がした方へと急ぐ。
「キャッ! き・気持ち悪いもの見ちゃいました〜。大きくて、ブヨブヨで、左の岩陰へパコさんを追いかけていますぅ〜」
 ホークアイを持つテュケは、いち早くその姿を捉えたらしい。
 回りこむように仲間たちが移動すると!
「う〜ん……可愛くないですねぇ。洗ったらぁ……」
「洗ってどうこうなるレベルのもんやないね、アレ」
 アヤの言葉にサクヤがツッコむ。
「勇者の子供が、コレか……」
 ソルはそう言って前方の敵を睨む。 
 『アリッサムの落し仔』、それは巨大な肉塊のようにも見えた。
 パコの足にその身体に脈打つ血管のようなものと同じ青紫の触手を絡ませ、動きを封じると同時に牙の並んだ口を大きく開き涎を滴らせている。
 かつての勇者が産み落としたのは、もはや人型でもない醜悪かつ獰猛な忌むべき存在だ。
「ともかく、早く攻撃しよう! あのままでは食べられてしまうよ」
 アナムは叫んだ。
 テュケは、ソルブレイカーを手に駆け込むと、落し仔を十字に斬りつける。
 ブチャリ! という嫌な音と共に紫の体液が飛ぶ。
「ひっ!」
 返り血? を見て思わず声がうわずった。
「見た目的にあんまりかじりつきたくはねェが……、仕方ねえ!!」
 ソルは獣のちからを解き放つ。
 敵の体に深々と突き立てた牙。
「いきますぅ!」
 アヤの生み出したフォトンは、そびえる岩の影から一斉に敵を狙い光線を照射する。
 死角から打ち込まれる光線に気を取られ、敵はその上体を仰け反らせた。
 その隙を突くように、アナムは動く。
 絶妙な距離から繰り出す連続突き。
「彼女は『家族』、旅の苦楽を共にする旅団の仲間だからね」
 その連携は確かなものだ。
(「あの時に諦めていればよかったのに……」)
 アリスは思う。
 邪眼に捉えた異形の姿。
 その境遇から生より死を選んだこともある、恐れから関わることより先に避けることを選んでしまう。
 アリッサムの落し仔、そんな自分には無い『執着』から生まれた忌むべき存在。
「ここで、断ち切る」
「ワン、あの無鉄砲な子のトコに行ってやってや」
 サクヤは、星霊オラトリオを喚び出した。
 星霊は、口元に穏やかなほほ笑みを浮かべコクリと頷くと、純白の羽をはためかせ、傷ついたパコの元へと飛んで行った。
「よろしく頼みます」
 ヴェールとシエルが敵の周りを舞い飛び、妖精の粉を振りまくと、その動きが先程より明らかに鈍る。
「まだまだ元気! パコパコパコピュ〜!」
 特に戦法など無いパコ。
 ただ、目の前に悪者が居る限り、魔女っ子ヒーローは決して屈しない。
 ということで、癒やしを受け回復すれば、また突撃あるのみ、だ。

●長期戦
 その大きさから考えて最初から予想はしていたものの、敵のタフさは並ではなかった。
 その身体を抱え込むように丸く包まり守りを堅めたかと思えば、ジリジリとこちらの体力を奪い取る事もする。
「醜怪極まりないですね……恐ろしくタフだ」
「あぁ、まったくや。毒が効いてない、なんてこと無いはずやけど」
 サクヤとニコルが、未だ倒れない敵を前に、あがりそうになる息を整えそう言った矢先だった。
 あの不気味な触手が空を切って伸び、前衛に立つパコを捉えた。
 あっという間に全身を締め上げるように巻き付くと、その不気味な身体に引き寄せる。
「むきゅ〜」
 幾本もの触手が、その身体を雁字搦めに締め上げ完全に捕縛した。
「触手を1・2本切ったところで、倒さん限りもう助け出すのは無理やろな。代わりに前に出るけん、サポート頼むな!」
 紅珀から引き抜いた朱色の刀身を煌めかせ、サクヤは前衛に踊り出る。
「了解です、任せて下さい」
 ニコルは軽く頷き応えた。
 剣を通じ、敵の生命力を吸い上げ自らの糧に吸い上げるテュケ。
「気持ち悪いですぅ〜」
 勝つためには仕方ない事とはいえ、この気持ち悪さには泣きたくなる。
 目を覆いたくなるような敵を相手に、死力を尽くす攻防が続いた。
 ただ闇雲にぶつかるだけでは勝てない。
 仲間たちは敵の動きをできるだけ封じ、確実に着実に、その力を削いでいく。
 ザリっと大地を力強く踏みしめ、ソルは轟竜斧を握り直した。
「そろそろ終わりにしようぜ」
 その口元に不敵な笑みをたたえ、踏み込むと同時に戦斧を振りかぶる。
 エネルギーが煌めきとなり集まれば、巨大化した轟竜斧は、まるで古の竜が敵を飲み込むかのように落し仔に襲いかかる。
「コイツで、どうだっ!!」
 それは、強烈な一撃だった。
 巨体が倒れ、地面をのたうつ。
 トドメを刺すべく、アヤの援護を受けたアナムが、その頭部をえぐるようにブリューナクで貫く!
 不気味な青紫の体液が高く吹き上がり、ビクリビクリと身体を痙攣させた落し仔は、ついにその動きを……止めた。

●今はただ時を待つ
「なんとか倒せましたねぇ〜。もう二度と、こんな気持ちの悪い敵とは戦いたくないですぅ〜」
 足元を選んで、少しでも早く敵から離れるテュケ。
 数歩進んでは、小さな悲鳴をあげている。
「う〜ん、う〜ん」
「のびてるようやから、まぁ帰れるくらいには回復してやらな。ワン、またお願いな」
 引っ張りだされたパコを前に、サクヤは頼れる『家族』に声をかけた。
 手当をすれば、歩いて戻る位のことは出来る様になるはずだ。
 そして、問題はこの眼の前の、死んでなお不愉快極まりない亡骸だ。
「悪いけど、このままってわけにもいかんやろうから、死体の片付けを頼めたら助かるんやけど駄目かな?」
「引き受けよう」
 その亡骸を前に、こみ上げる吐き気を抑えつつ、アリスは頷き手をかざす。
 醜い亡骸は浄化され、徐々にその姿を消していく。
(「せめて最期は美しく……」)
 それは、アリッサムに対しても同じ気持ちだ。
「さて、これでアリッサムに一歩近づいたってところかねぇ……」
 周囲を警戒しつつも、ひとまず一服、武器をしまったソルが言う。
「魔女とはいったいなんなんでしょうかね?」
 その隣に立ち、ニコルがつぶやくようにそう言った。
 マスカレイドと化したかつての勇者が、その力を投げ打ち、自らの身体を抉ってでも欲した『魔女』という力。
 エンドブレイカーたちを妨害するために、逃げ切るために生み出されたのがこの子どもたちなら、
「他の落とし仔も、今頃倒されている事でしょう。巨人達がアリッサムを見つけたなら、その時には、この答えが見つかるのでしょうか……」
「さぁなぁ……ともかく、今は帰って風呂でも入りたいぜ」
「ハハ、まったくですね」
 ソルの答えにニコルも微笑んだ。
 一人、ぽうっと消え行くアリッサムの落し仔を見つめていたアヤ。
「産まれてきたことに意味はあるとぉ聞いた事がありますぅ。……あなたの分までぇ……私が産まれてきた意味を探してあげますねぇ? 」
 何かが心のなかにあるような?……しかし、それは掴みきれないまま……何一つ残すこと無く落とし仔の姿が消え去ったその時、不思議と、ポロリ一粒の涙がこぼれ落ちた。
「帰ろう、アヤ君」
 いつの間にか、その傍らに立っていたアナムがフワリとタオルをアヤに手渡す。
 こうして、無事敵を倒した仲間達は帰路につく。
 アリッサムにつながるこの一手、エンドブレイカーの仲間達の結束があればきっと……結果を信じ、今はただ戦果を待つ。



マスター:stera 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/05/17
  • 得票数:
  • 笑える2 
  • カッコいい2 
  • せつない1 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。