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梅桃ジャムのその前に

<オープニング>

 静謐な森の空気を、唐突に破るものがあった。
 みしり、角に咥え込まれた幹が捩れる。ざわりと色を濃くし始めた葉の群れが鳴いた。
 まるで踊るように、瑞々しい身体が跳ね回る。鋭い爪で戯れに樹皮を引き裂いて、少女たちはきゃらきゃらと笑い声を上げた。爪の先にねっとりと纏わりついた樹液を小さな舌で舐め取って、少女――スタッガーは、とろけるような笑みを浮かべる。
「もっと」
「もっと」
 可憐な唇が歌うように呟く度、巨大な角が、甲殻に覆われた腕が、無邪気に巨木を薙ぎ払う。執拗な攻撃に耐え切れず、どうと幹の半ばから木が倒れる。重なるように、もう一本。
 そうして倒された幹の向こうに、点々と首飾りのような赤い実が揺れていた。けれどもやがて、その上にもまた無数の枝葉が降り注いだ。

「よす。マスカレイド退治だ、手の空いてる奴は居ねえか?」
 大粒の苺にフォークを突き刺しながら、春嵐のスカイランナー・カタリーナ(cn0132)はそう告げた。
「エルフヘイムの森で、スタッガーってクワガタピュアリィが巨木を攻撃したりなんだりしてるって話さ。もう聞いてる奴も結構居るんじゃねえか? そいつの話なんだけどよ」
 元々は巨木の中に巣を作って住んでいた、ごく小規模な群れだったらしいと情報屋はいつもの如く片手で器用にメモを開く。だが、それがマスカレイド化してエルフヘイムの自然を破壊し始めたとあれば――成程、放っておく訳には行くまい。
「マスカレイドの数は六体。まあ、クワガタな見た目通りの戦闘能力を持ってると思ってくれ。ハサミに爪、どっちも充分警戒するに越したこたあねえ威力を叩き出せる。けど、一番怖いのはそれじゃねえ」
 華奢な体躯に似合わず、スタッガーの力は非常に強い。その全てを振り絞っての締め付けをまともに受ければ、それまでに重ねた強化を打ち砕かれるのみならず、傷を抉られ回復に支障をきたす可能性もままあるという。まるで遊戯のように木々をなぎ倒す彼女たちのことを、決して侮ってはいけないだろう。
「つっても所詮はピュアリィの頭だ。こっちがきっちり策立てて向かってやりゃあ、勝ちの目は充分あるだろうよ。ま、油断だけはすんなよってこった」
 さくりと苺を噛み砕いて、カタリーナはあくまで気楽な調子で続ける。窓からの光に、器に残った最後の一粒がつやつやと輝いた。
「今んとこ特に人的被害が出るようなエンディングじゃねえけどよ、マスカレイドが森を壊しちまうのを黙って見逃しちゃおけねえだろ? ……ああ、あとな。連中が暴れてる場所からもうちょっと奥に梅桃の茂みがあるんだよ。知ってっか? 梅桃」
 ゆすらうめ、ともう一度植物の名を繰り返し、彼女は最後の苺を口に放り込んだ。愛らしい宝石のような実はサクランボのように甘く、森にほど近い集落のエルフたちにも愛されているのだと付け加える声は、やはりどこか明るい。
「木が倒されりゃ、その奥の木の実だってもう摘めねえ。そいつだって、ぶっ壊すべきエンディングに違いねえだろ、な?」


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参加者
青空リオン・モカ(c02273)
青空に響く歌声・カイジュ(c03908)
灰白小鳩・ロシェ(c06958)
無限の胃袋・ミーファ(c07005)
臥した獣・カーリグ(c13476)
魔法少女・ルア(c28515)
黙っていればお嬢様・クラリッサ(c34521)

NPC:春嵐のスカイランナー・カタリーナ(cn0132)

<リプレイ>

 風が、森の若緑を一斉に揺らした。突き抜けるような初夏の香を吸い込んで、魔法少女・ルア(c28515)は眼前を見据えた。細く遠く、明らかに人の足で踏み固められた道は吸い込まれるように奥へ奥へと続いていく。
「どうなっているか心配していたけど……見た目は、あまり変わっていないわね」
 僅かな安堵交じりに、呟く。祖国の森は、確かな息遣いと共に彼女を迎え入れてくれた。
 鋭く目を光らせ、風の音に耳を澄ますのは、臥した獣・カーリグ(c13476)。己の領分では他に後れを取る訳にはいかないとばかりに、彼は音もなく足を進めて。
「動くものは必ず痕跡を残すものだ」
 誰にともなくそう言えば、何か耳に障る音が低い声に重なった。葉擦れの音ではない。ましてや、斥候として先行した春嵐のスカイランナー・カタリーナ(cn0132)の靴の音でも。
 振り返り、カーリグは灰白小鳩・ロシェ(c06958)と目を合わせる。彼もまた僅かに眉根を寄せて頷いた。
 樹皮が裂ける音。枝が引きちぎられる音。森の上げる悲鳴にゆるりと首を振って、ロシェはあくまでそっと目の前にかかる枝葉を払う。少しばかり開けた藪の跡を潜りながら、青空に響く歌声・カイジュ(c03908)がふと唇を開いた。
「どんなわけで木を切り倒しているのでしょうか……」
 理由は誰にも分からないけれど、木々を無残に倒すような所業は見過ごせない。鮮やかに茂る生命と同じ色をした瞳に力を込めて、彼は利き手を握る。
「運命を変えましょう……梅桃ジャムのためにも」
 歌うような口癖の最後に悪戯っぽく添えられた言葉が、一向に小さな笑いをもたらす。自然、冒険者たちの肩からは力が抜けていた。大きく頷いた青空リオン・モカ(c02273)が、木製のハンマーをひょいと担ぎ直す。
「ジャムも食べてみたいしな、おいしいものがなくなるのはダメだ」
「絶対に退治するのら〜〜!」
 無限の胃袋・ミーファ(c07005)もまたそこへ気合の声を重ね、まだ見ぬ実りに胸を躍らせる。このまま森が荒らされ続ければ、傷付くのは自然ばかりではあるまい。
 歩みを進めるに従って、森の緑は濃さを増していく。無慈悲な攻撃の気配も、また。
「梅桃を取りに行くのをジャマするたぁふてぇ野郎だな」
 黙っていればお嬢様・クラリッサ(c34521)の抑えた声に、どこからともなく『誤解誤解』と軽いツッコミが入る。声の方向に目をやれば、鳥打帽のスカイランナーが葉陰から手を振っていた。風は、未だこちらに向かって吹き続けている。本隊に合流するなり、やはり気楽な調子でカタリーナは掌を天に向けた。
「お前らも勘付いてるな? この先だ」
 一際強く風が吹き抜ける。揺らいだ細い幹に、真新しい傷跡が長々と走っていた。そこへすいと指を走らせて、カーリグはゆっくりと瞼を下ろした。
「野に生きるものが自然を傷つけるのは摂理に反することだ。狂ったスタッガーは斃してでも止めねばな」
 森に入ったときにはうるさいほどだった鳥の声も、最早聞こえてはこない。異常な事態に怯え、この一帯からは飛び去ってしまったのだろうか。
 そろり、藪の陰に身を潜めれば、その向こうから聞こえてくるのは木々が引き裂かれる音と――本当に楽しげな笑い声。互いに目配せし合い、呼吸を重ね合って――次の瞬間、エンドブレイカーたちは一斉に地を蹴った。

「無茶はしない様にな」
 情報屋にそう一声掛けるや否や、カーリグは肘から棘持つ刃をしならせた。鎌の連撃にすっぱりと胸元を断たれたスタッガーの眼前にすかさずモカが飛び込み、先鋒に続けと腕を閃かせる。
「おまえの相手はモカだ! いくぞ!」
 二つまで創成した蟷螂の腕で薙ぎ払えば、手足を抉られたピュアリィたちがぎっと苦悶の声を上げる。その足元が、不意に爆ぜ割れた。ロシェの奏でる即興曲に導かれるままに砕けた大地がそのまま敵の一体を呑み込もうとするけれど、棘の力を得たスタッガーはすんでのところでそれを免れてみせた。
 そして、モカの頬へと赤が飛んだ。深々と切り裂かれた二の腕の血を拭いもせずに口の端を上げる彼女の横に、得物を抜かないままのクラリッサが並ぶ。
「銃ぶっ放すだけだと思うなよ、ぶん殴ってやるぜ」
 オーラの城壁が、華奢な身体へと幾重にも纏いつく。光の尾を引き、肩からマスカレイドの仮面へと突っ込めば、瞬間長大な壁はがらがらと崩れ落ちてピュアリィたちの頭上を襲う!
 頭蓋を砕かれて倒れ伏した敵の亡骸をひょいとかわして、カイジュがくるりと身を翻した。
「さあ素敵なステップを踏んでくださいね〜」
 棍が唸り、縦一文字に空を切る。肩を強かに打たれたスタッガーが負けじと鋏に力を込めたが、その一撃程度で引き下がる訳には行かない。真っ直ぐに眼前の敵を見据えたカイジュの視界の端を、紫が駆けた。
 紫煙の弾丸が、十重二十重に森の中を駆け巡る。予想だにしていなかった方向からの一撃に、スタッガーは慌てたように振り返るが――銃を構える猟兵が立つ位置は、そこではない。絶えず変化し続ける獲物との位置関係を頭の奥に走らせながら、ルアがじゃきりと銃を構え直した。
 影の腕に足を掴まれて体勢を崩した敵目掛けて、ミーファは迷いなくキノコを投げ放つ。見事に顔面を捉えるなり爆ぜ割れた危険なそれは、たちまち惑わしの煙を辺りに振り撒いて。
 巨大な角に利き腕を咥え込まれ、鮮血を傷口から噴かせながらも、カーリグの表情は揺るがない。荒波にも砕けぬ岩の如く、仲間たちの守りとなることもまた本望だ。ひゅんと棍を回して気を鎮める彼の背中を、勝利の凱歌が力強く押した。
 齢を重ね、いつの間にか歌う声は深みを覚えて低くなっていったけれど、それでロシェが魔曲を紡ぐ想いが変わる訳ではない。その護りとなるよう、彼は身体をいっぱいに使って声を響かせる。
 前肢の爪による引き裂きをガンナイフの刃でクラリッサが弾くと同時に、闘気で練り上げた弩砲が吼えた。白く輝く太矢に腹を射抜かれたスタッガー目掛けて、迷うことなくモカが突っ込んだ。巨大な鎌に溜めていた力を解き放ち、若葉と同じ色をした断ち切りの鎌で一閃。穴の開いた腹のすぐ脇を割られたピュアリィが、膝を震わせながらも腕を振り上げた。
 ほのかな湿気を孕んだ風が戦場を撫でる。自然のそれではない。カイジュの振るう棍が巻き起こすものだ。二体まで敵を巻き込み、打ち据える攻撃の激しさとは裏腹に、その余波とでも言うべき風は柔らかく優しい。
 その風すらも計算に入れていると言わんばかりに、ルアが紫煙銃のトリガーを引く。跳弾の結界を纏った彼女の目の奥で、もう一度紫が煌いた。
 そして、見えざる刃が一直線に敵へと迫る。六まで連ねた虚空の刃に削られた仮面を、カーリグの棍が真正面から叩き割った。
 戦況は刻一刻と変化する。その間にもさわさわと微かに歌う緑に心の片隅を添わせて、ロシェは敵の心まで届けと音楽を織り上げる。
 艶やかな花弁が、芯の通った弱音に誘われるまま次々開く。足元の変化に視線を落としたスタッガーたちの頬を、歌を連れた風が容赦なく切り裂いた。
 敵に背を向けたのも一瞬のこと、次の瞬間クラリッサは背後に銃口を向けてにやりと笑った。
「オラオラ! 踊れ踊れ!」
 紫煙が走り、貫く。仲間の半数までを失ったスタッガーは、けれど動揺の気配など微塵も見せることなく角を、爪をきちきちと鳴らす。モカがその姿を真正面から視界に収め、傷口に鋏の棘が食い込むことすら面白いとばかりに得物を振り上げた。
「ぜんぜんいたくないぞ! こんどはこっちの番だな!」
 回復を受け付けないほどの痛みも、振りかぶった瞬間に気を引き絞って振り払う。身の丈よりも巨大なハンマーの連打が敵の守りを一瞬で突き崩し、強引に隙を作り出す。その瞬間を狙い澄ましていたように、カイジュが甲殻に覆われていない無防備な腹へと痛烈な掃撃を打ち込んで。
 タン、と銃声。合図のようなそれに続いて、無数の弾丸がスタッガーを襲った。限りなく正確な空間把握からルアが繰り出した連続射撃が、緑の底へとピュアリィの身体を文字通り沈める。
「召し上がれなのら〜!」
 そしてミーファが前衛に贈るのは、ライフベリーの大盤振る舞い! 気前よくばら撒かれた甘い果実を口の中へと放り込んだクラリッサが、唇を舌で拭って拳を打ち合わせた。
 残るは、二体。何がおかしいのかくすくすと笑う敵の横合いに踏み込んで、そのままカーリグは体軸をずらす。逃がす訳には行かないのだ。斜め後方に滑り込み、断つ。流れるような攻撃に、間髪入れずにモカが続いた。やはり逃がさぬ位置取りを奪って、右から、左から、幾度となく叩きつける。その度に傷口から血が滲む。だが、モカの両足はしっかりと大地を捕まえていた。
 そして、そんな彼女に向けてロシェが聖戦の誓いをひとつ呟く。それを皮切りに溢れ出したのは、高らかに響く行軍歌。力強く仲間を励ますその歌声は、どこまでも伸びやかに透明に突き進む。
「っと……これでも喰らいやがれ! Burst!」
 暴れるスタッガーが下草を踏み散らすのを見るなり、クラリッサはガンナイフを手の中で回した。ここから邪魔な倒木を迂回して殴りに行くよりは、射撃で確実に削り落とすべき。直感がそう告げていた。目にも止まらぬ速度の弾丸が敵の肩を貫く。仰け反った顔が怒りに歪む。そんなピュアリィの傍に、カイジュはもう一歩深く踏み込んだ。
「静かに暮らしていた貴女方も、原初の力に狂わされれた犠牲者なのでしょうね……お可哀想に」
 言葉を掛け、手を伸ばす。けれど、それは抱擁のためではない。蔓延る棘に取り入られた彼女たちの悲劇を、倒すことで終わらせよう。祈りにも近い決意を込めて、カイジュは何度でも武器を振るう手に力を込める。崩れ落ちた敵の冥福を願うのは――あと少しだけ、後だ。
 大樹の陰に伏せていたルアが絶妙のタイミングで銃弾を撃ち込み、ほぼ間をおかずして前線に駆け上がったカタリーナが空中からの蹴撃を最後のピュアリィの横面に浴びせかける。黒光りする爪がずるりと土を擦りかけ、即座に持ち上げられた。
 遠間からミーファのぶつけた衝撃波が、スタッガーに残された生命力を遠慮なく吸い上げる。鋏に得物の回転を妨げられ、障壁を失ったところで今更何が問題になろうかと、カーリグが巨大な断ち切りの鎌を振りかざす。
 あと一息。季節外れの吹雪を乗せた疾風が、ロシェの呼ぶ声のままに熱気に満ちた戦場を吹き抜ける。その残滓に頭の芯がきりりと冷えて澄み切っていくような感覚を覚えながら、クラリッサはすっかり掌と同じ温度にまで熱くなった得物のトリガーに指を添えた。
 殆ど一つにしか聞こえない銃声が、空気を断つ。目にも止まらぬ早業で放たれた二発の紫が、誤りなくピュアリィの心臓を突き抜けていた。

「どうか安らかな眠りを。大好きな森でどうぞ安息の時を」
 森の比較的開けた土に還されたスタッガーたちの傍らで鎮魂曲を奏でていたカイジュが、ふと視線を上げる。クラリッサとルア、そしてモカ。エルフの集落へ安全の確保を報告しに行っていた面々が戻ってきていた。その理由を今更問う者は居ないだろう。傷付けられた木への応急処置を終えたカーリグを先頭に、一同は先程まで戦場だった場所よりもう少し奥まで進んでいく。
「ゆすらうめ、かぁ。とても綺麗な響きですね、カタリーナ」
 隣を歩く顔にそう微笑みかけ、ロシェは小さく首を傾ける。
「……あなたは味の方が、気になるのかなぁ……?」
 付け加えた疑問には、ただ笑い声だけが返ってきた。枝や蔓草の間を潜り抜けて行けば、やがて緑の中に点々と朱色の煌きが見えてくる。
「光を浴びてキラキラ光って宝玉のようです!」
 ぱっと目を輝かせたカイジュの言葉は、実に的確なものだった。地域によってはその姿を首飾りを付けた女性になぞらえることもあるというその果樹は、つやつやとした小さな実をたわわに付けて冒険者たちを待ち受けていた。
「おいしいのかな……食べてみたいな」
 モカが恐る恐るその一粒に手を伸ばし、ぷちんと摘み取って口の中へ。野性を感じさせる微かな渋味のあとに、初夏らしく爽やかな甘味が舌の上でいっぱいに弾けた。
「おお! すっごくおいしいぞ、ほら!」
 モカに差し出されるままに梅桃を口に放り込んだ情報屋もまた、同じように顔を輝かせて。楽しげに笑い合う二人をちらっと見た後で、ミーファもうずうずと梅桃の木に手を伸ばす。
 味見、味見……と自分に言い聞かせながら一粒摘んで食べてみたけれど、たったそれだけでこのハラペコが治まる筈がない! 思わず一株分全部の実を採り尽くしてしまいそうになる手を睨んで、次にまだまだ一杯なっている梅桃をじーっと見つめて、ミーファはしばらく悶々と唸っていた。
 そんなハラペコ仲間の姿に小さく笑いを零した後で、クラリッサは生い茂る梅桃の木々に視線を戻した。
「ま、お裾分け程度にな」
 いくつか摘み取って口に含めば、たちまち鼻の奥まで甘酸っぱい香りが流れ込んでくる。唇を尖らせて種を吐き出し、彼女は舌の上に残った風味をごくりと飲み込んだ。
「良く熟れていてさっぱりとした味で美味しいです!」
 はち切れそうに熟した実をもう一つ舌の上で転がして、あとはジャム用に……とカイジュは小籠にも少しだけ梅桃を摘み入れる。ころり、藁編みの上で指先ほどの大きさの果実が転がった。
「ロシェのそれもジャムにか」
 カーリグの声に、ロシェは満面の笑みで頷いた。生命そのものの色で満たされた小さな籠を大切に抱えて、彼は待ちきれないように頬を緩ませる。
「……僕の愛し姫なら作れるかなって。楽しみです」
「ジャム、いいわね。村の名産品になったりしないのかしら……そうしたら、私も分けてもらうわ」
 村の方角を振り返ったルアの髪が、動きに合わせてふわりと舞い上がる。肩にかかった毛束を手でさらりと払いながら、彼女はかつてこの都市国家に暮らしていた日々を思い返していた。
 戒律のもとにあったエルフヘイムで、ハーフエルフとして生まれ育った。故に、この地はルアにとって故郷であると同時に青春を奪われた土地でもある。けれど、その日々を悔もうとはもう思わない。
 今では、希望の下に胸を張って生きていくことができる。そう言い切れることが何より嬉しく、誇らしかった。梅桃の枝に指を滑らせながら、ルアは星霊建築の天井を見上げる。きらきらと、初夏の光が枝葉越しに降り注いでいた。



マスター:猫目みなも 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2014/06/10
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冒険結果:成功!
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