ステータス画面

空迷宮のラーラマーレ・アクアフィオーレ!

<オープニング>

●夏空の街ラーラマーレ
 世界で一番鮮やかな青をぎゅっと詰め込んだような夏空に、大きな大きな積雲が浮かぶ。
 大きな船の底みたいに平らな雲の底から雄大な山のようにむくむくと盛り上がった雲は、見ているだけで何だかわくわくしてしまう不思議な魅力を持っている。
 あの雲はきっと空の海に浮かぶ大きな島で、雲の島にはきっと夏空の王国があるはずだ。
 ――夏空の街ラーラマーレに住む誰もが、思わずそんな空想をしてしまうくらい。

 星霊の力によって映しだされたこの夏空のもとに広がるのは、何より鮮やかな夏空の青をそのまま映しとって輝く広大な湖だ。大地に落とされた夏空の滴を思わすこの湖の名はマーレ、明るい紺碧の波寄せるマーレの湖畔には、緑鮮やかな街路樹と白く輝く街並みが印象的な街が広がっている。
 夏空の街という二つ名で愛されるこの街は、その名をラーラマーレと言った。
 水神祭都アクエリオの一部たるこの街も交通の要はやはり運河だ。白く輝く街並みの至るところに張り巡らされた水路はまるで夏空をそのまま透きとおらせたような青でラーラマーレを彩っている。
 数えるのもイヤになるくらい数多あるその運河のひとつ、カナル・フォンターナで――二年前の夏にちょっとした事件が起きた。

 夏空の青を映した水面が大きく波立ち、ひときわ勢い良く流れる中で幾つもの巨大噴水が盛大に水を噴き上げる運河、それがカナル・フォンターナだ。
 主にゴンドラ遊びやゴンドラ乗りたちが腕を競う場として使われるこの運河を往く舟は、大きな波を突っ切り自らも派手に波を立て、高々と噴き上げられ雨や滝のように降り注ぐ噴水の水を切り裂き、あるいは巧みにすり抜けて、迅風のごとく翔けていく。
 そんな舟を駆るゴンドラ乗りには当然血気盛んな者が多く、腕を競う彼らの間でちょっとしたいざこざが起きるのもよくある話。けれどある日、腕の立つゴンドラ乗り同士がアビリティでぶつかりあった。
「俺の星霊アクアの大津波を喰らえ!」
「なめんじゃないわよ、こっちにはフェニックスがついてんだからね!」
 翔ける水の流れに己が舟を任せたまま互いに術を放つゴンドラ乗りたち。けれど流石に直接相手を狙うほど頭に血が登っているわけではなかったらしく、舟をも呑み込む津波は滝のごとく降る噴水の水にぶつかって、派手に爆ぜた水飛沫を不死鳥の炎を纏った突撃が切り裂いた。
 生まれたものは巨大噴水のそれよりも盛大な水飛沫に一瞬視界が利かなくなるほどの濃い水煙、そして夏の陽射しと不死鳥の炎を浴びた飛沫の眩いきらめきに、そこかしこに溢れた無数の虹。
 それから――。
「うわー!?」
「きゃああぁぁあ!?」
 術に夢中になって舵を取りそこなった彼らの舟が思いっきり転覆して、壮大なまでに大きく上がった水柱が夏空に描きだした、水と光の花。
 鮮麗な青空に浮かぶ雄大な積雲、夏空の王国にすら触れたように見えた水の花の美しさ、そして、続いて降りそそいだ水とそれらが跳ね上げた飛沫の心地好さと楽しさに、その場に居合わせた街のひとびとは盛大な拍手と歓声を贈ったのだとか。

 けれどこの夏カナル・フォンターナで起こるのは、『びっくりしたけれど楽しかったね!』ではすまない事件だ。それはすなわち――。

●さきぶれ
「なんてことなの巨大噴水の姿をした水のイマージュマスカレイドが出ちゃうんだよ……!!」
 朝採りオレンジをぎゅっと搾った氷いっぱいのグラスを呷った夏空の狩猟者・アンジュ(cn0037)が、だん! と酒場のテーブルにグラスを置くなりそう告げた。
 水神祭都アクエリオの各地で報告されているイマージュマスカレイド事件。夏空の街ラーラマーレも例外ではいられなかったというわけだ。水神アクエリオ様が感じているというアクエリオの外の海での異変も気になるところだが、目下の急務は、今年も夏空の街ラーラマーレで過ごす夏を楽しいものにするための一仕事。つまり件のイマージュマスカレイド退治だ。
「ってなわけでアンジュ行くよ行きます突撃します! ね、折角だから一緒にしてこようよ!」
 陽に透かした蜂蜜の色した瞳を飛びきり嬉しげに輝かせ、暁色の娘が笑みを咲かせて語る。
 ――ラーラマーレ・アクアフィオーレ!

 鮮やかな夏空の青を映した運河の波や、夏空の王国へ届けよとばかりに噴き上がる巨大噴水へと水面を翔けるゴンドラから次々にアビリティが放たれて、夏空の水面に夏空の王国に、眩く華やかな水と光と虹の花が幾つも幾つも咲き誇る。
 二年前の『びっくりしたけれど楽しかったね!』な事件をきっかけに生まれた、皆で夏空色の水面や巨大噴水にアビリティを放って煌く水の花を咲かせる祭り――それがアクアフィオーレだ。
「それをね、今回は巨大噴水のイマージュマスカレイド相手にしてきたら楽しいんじゃないかなって」
 相手は夏空の青を映した水面から眩い夏陽輝く青空へ向け勢いよく吹きあがる巨大な噴水二つ、勿論ただの噴水でなく大波や激しく降りそそぐ水流などで攻撃してくるイマージュマスカレイドだけど、透明な水の煌きや冷たい水飛沫を浴びる爽快感は本物の巨大噴水そのものだ。
「それにねそれにね、耐久力は結構あるし攻撃もド派手なんだけど、攻撃の威力自体はアンジュ達にとっちゃ軽いものなのね。だから戦いそのものを思いっきり楽しませてもらおうよ!」
 本来の祭りであれば、巨大噴水に突撃してそのまま水に落ちたり、派手な波に煽られたゴンドラが転覆してしまったりなんてものまで楽しみのひとつ。
「んでも、幾ら攻撃が軽めだからってマスカレイド相手の戦いの最中にそれはマズいと思うんだよね。カナル・フォンターナはいつも大きな波があるし、水深も結構あるから」
 それに何より、大きな運河とはいえ場所が街中であるというのが問題だ。
「だからね今回はね、敵を湖まで引っぱりだして戦おうよ!」

 巨大噴水のイマージュマスカレイドが姿を現す運河、カナル・フォンターナをゴンドラで翔けたなら、その涯てに見えてくるのは運河と湖を繋ぐ『硝子の門』と呼ばれる水門。
 水門が硝子でできているわけではないが何故そう呼ばれているかはまた別の物語、重要なのは、その硝子の門を飛びだせば、何より鮮やかな夏空の青をそのまま映しとって輝く広大な湖の、大きな浅瀬に出るということだ。
「他にも報告されてる水のイマージュマスカレイドと同じで、この巨大噴水も自分に攻撃してきた敵を死ぬまで追っかける習性があるからね、湖まで引っぱりだすのは簡単だよ! 簡単だよ!」
 硝子の門から飛びだしたならそこに広がるのは水深膝ほどまでの大きな浅瀬、街のゴンドラ乗りに乗せてもらうにしろ自前のゴンドラで翔けるにしろ湖に出たなら皆で舟から飛び降り、何より鮮やかな空と湖の夏空の青の狭間でラーラマーレ・アクアフィオーレ!

 夏空の青に透きとおる波を風に乗って突っ切ってみたいし、滝のごとく降る噴水のヴェールを浴びて桜吹雪を舞わせるのもきっと綺麗。そして煌く水飛沫の中を不死鳥の炎を纏って翔けたなら、きっと夢のような光景が見られるはず。
 風を浴びて水を浴びて光を浴びて。
 夏空の青に水の花を、アクアフィオーレを咲かせに行こう。
 咲き誇れ水の花。
 夏空の王国へ届くまで。

 そうやって思いっきりアクアフィオーレを楽しみ、無事に水のイマージュマスカレイド達を倒せたら、暁色の娘はそのまま夏空の街に滞在するつもりなのだと楽しげな声音で明かす。
「あのね、思いきり楽しい夏の幕開けにできたなら、また逢おうね」
 夏の輝くような歓びも幸せも、眩いくらいの愛しさも泣きたいほどの切なさも、全部全部ここにある。
 ――そんな夏空の街ラーラマーレで、きっと、また。


マスターからのコメントを見る
参加者
絶対自由・クローディア(c00038)
大梟の樹に住む・レムネス(c00744)
水鏡の虹・ロータス(c01059)
花渫う風・モニカ(c01400)
戯咲歌・ハルネス(c02136)
漆黒ノ竜・リューウェン(c02487)
魔法剣士・クロービス(c04133)

NPC:夏空の狩猟者・アンジュ(cn0037)

<リプレイ>

●水迷宮のラーラマーレ・アクアフィオーレ!
 輝く波飛沫を弾けさせ、夏空の水面を翔ける舟が花渫う風になる。
 花渫う風・モニカ(c01400)が櫂を繰るたび舟は加速して、眩い白の街並み鮮やかな緑の街路樹、夏空に映える街の光景そのものも風になって飛び去っていく。滴る緑に見え隠れするのは珊瑚色に咲く柘榴の花に夏陽を実らすオレンジ、輝く純白のガーデニア。
 夏の陽射しの熱気と弾ける水飛沫の冷たさに、甘い花とオレンジの香りに澄んだ水の香り、ひとつ呼吸するたびに戯咲歌・ハルネス(c02136)の胸にも鮮やかな夏が迫るように蘇る。
 眩いくらいの愛しさと泣きたいほどの切なさ。
 ――ただいま、ラーラマーレ。
 激しく波立つカナル・フォンターナで繰り広げられたのは偽りの命と仮面を抱いた巨大噴水たちとの追いかけっこ、その終点に開く硝子の門に至った瞬間、後方から迫りくる巨大噴水が大波を放った。
 透明な青の影が頭上を覆った瞬間、夏空の色映した大きな波が舟の後部を呑む。けれど、
「行っくよー!!」
 勢いで浮き上がった舳先で夏空を目指すようにして、皆を乗せたモニカの舟は湖へ飛びだした。
 爆ぜて降りそそぐ水飛沫の向こうには何処までも広がる空と湖の夏空の青、弾けるように破顔した水鏡の虹・ロータス(c01059)が両腕広げて巨大噴水たちを振り返る。
「さあお立ち会い、ふわもこハンサムによる紅の太陽と緋の華! とびきり熱い夏の幕開けやよ!」
「いっちょ派手にアクアフィオーレを咲かせて、今年のラーラマーレ開きといこうか!」
 眼差し交わした彼とハルネスが披露するのはカナル・フォンターナで巨大噴水たちを誘きだすため咲かせた花の再演、靴先に紅蓮の輝き燈れば一球入魂、全身全霊でロータスが蹴りだした真夏の太陽が水の夏空を翔けると同時、夏空に冴ゆる焔を抜き放ったハルネスも水の夏空へと跳んだ。
 遥か夏空の王国へと噴きあがる巨大な水柱を真夏の太陽思わすエネルギー球が直撃した瞬間、眩く輝き爆ぜた水飛沫と水柱へ奔った剣閃が焔の花弁幾重にも咲き誇る百花の王を夏空の青へと灼きつける。
 爆ぜる太陽、咲き誇る緋牡丹、あでやかな夏の開幕を無数に映して煌く数多の水飛沫。
「っと、見惚れてる場合じゃないね! ここから更に盛りあげちゃうよ♪」
 眩い夏の煌きも水飛沫の清涼感も全身で感じるアクアフィオーレ特等席でひときわ胸を高鳴らせ、大梟の樹に住む・レムネス(c00744)が招来するのは星霊バルカン、燃え盛る火炎弾を水の煌きに融けゆく緋牡丹の芯へ撃ち込めば、天を衝かんばかりの巨大噴水が発火し一気に燃えあがった。
「みんなかっこいい……!!」
 焔の波動で狙い乱れた大波が絶対自由・クローディア(c00038)を頭から呑んだけど、皆で攻撃を引き受けられるなら願ってもない話。透きとおる水に揺らめく焔を咲かせた不思議な波を浴び、猛る金の輝きをもって突き抜ける。
「招かれざるお客様は、お祭りの流儀に則って退場してもらいます!」
 夏空の波に躍りあがったのはクローディアを乗せた金の竜、水と焔の飛沫を撥ねあげ突撃すれば、白く砕けた噴水の飛沫が金の輝きを帯びて咲いた。鮮明な水の清涼、透明感。彼女とともに浴びた大波が引けば魔法剣士・クロービス(c04133)の眼前には眩く花開いた水と光の花。
 これがアクアフィオーレ、と呟けば、隣で漆黒ノ竜・リューウェン(c02487)が笑む気配。
「まだまだこれから! 参ろうか、クロービス殿!」
「ん。魔法剣士の夢のデュオもみせてあげよっ、リューウェン!」
 悪戯な笑みを互いに閃かせれば朱と藍の鞘から奔るは漆黒と蒼銀の風、夜風と雪風めいた剣閃を従えて、剣士二人が巨大な水柱たちへ斬撃咲かせれば、一気に咲き溢れた薔薇が夏空の王国まで噴きあがる。
「さあ、アンジュの花も!」
「はーい、いっぱい咲くよ! 夏爛漫!!」
 振り返ったクロービスのウインクと同時に翻るは蜜色の扇、爆ぜた水飛沫や薔薇と交錯するよう、夏空の狩猟者・アンジュ(cn0037)が解き放った桜吹雪が薔薇の剣士たちの背後から弾けて踊る。
 咲き乱れる水と光と魔法の花、仰いだ夏空から煌く水飛沫が降りそそげばモニカはクローディアに目配せひとつ、夏花咲く竪琴に指先躍らせ、空と水の夏空へ星の旋律を響かせた。
「瞬きする間も惜しい夏空の奇跡をとくと御覧あれ!」
 高らかなモニカの祝音が夏空の王国へと幾多の星を燈した刹那、森の月弓が響かせるは涼やかな弓弦の音色。空と水の夏空一斉に輝かせ、燃え立つ星の雨が降りそそげば、巨大噴水たちが次々水と光の花を咲かせて世界に虹を撒く。
 光と衝撃に湧き立つ夏空の水面が続けてひときわ眩く発光したかと思えば、
「降るよ! 流れ星!!」
 夏空の王国へ放たれたクローディアの星の矢が噴きあがる水を照らし、壮麗な光の尾を引く大きな流れ星となって頂から巨大噴水を貫いた。
 星の水飛沫も星乙女たちの歓声も盛大に爆ぜて弾けて花になる。
 湧き立ち躍動する夏空の水面、それ以上に心へと燈る熱。けれどこの熱を一気に飽和させるのはまだ速いから、
「レムネス君、冷たいのお願い!」
「任せて! ひんやり行っちゃうよ♪」
 躍る心のままにモニカが声を弾ませたなら、溌剌と応えたレムネスの前に真っ白なふわもこ降臨。ごろりんアタックは本日封印で、ふわもこ星霊クリンの氷の息吹が夏空の水面を翔けぬける。
 世界で一番鮮やかな青の中、噴きあがる巨大な水柱に氷粒の奔流が激突すれば強く眩い煌きの飛沫が爆ぜて限りない祝福のように降りそそいだ。輝ける水も光も頭から浴びればロータスの胸にはちきれんばかりの高揚が膨らんで、夏空の街で過ごした日々の記憶が鮮明に蘇る。
「ほな、ふわもこフェアリーからは太陽をお見舞いなんよ!!」
 瞳の奥に込みあげる熱を明るい声に変え、星霊が放ったひときわ大きな氷塊を追いかけ己の熱と高揚そのものみたいな紅蓮の輝きを蹴り放つ。重なる氷と光は朝陽の最初の輝きより強く煌いて、空と水の夏空に朝を呼んだ。
 あの頃と変わった物はいくつもあるけれど。
 空翔ける靴には変わらず藤の護り咲き、ラーラマーレでの記憶は夏陽より眩く輝いている。

●空迷宮のラーラマーレ・アクアフィオーレ!
 華やかな水飛沫と光が幾重にも弾け、夏陽に輝く風は水煙に映る虹を掻き混ぜ翔けぬけた。
 光も彩もめくるめくまま瞳に心に灼きつけて、一段と激しく噴きあがった噴水から滝のごとき水流を落とされれば、被る痛みにもその後吹きぬけた風の鮮やかな清涼にも笑う。
「ラーラマーレの夏はね、楽しくなくちゃあダメなんだよ」
 ――だから君たちも、花になろう?
 必殺! と放り投げたのは水飛沫たっぷりの眼鏡、ひときわ鮮明になった世界を愉しげな藍の瞳に捉えたクロービスの斬撃が、火炎と氷雪の彩爆ぜる水花を世界と彼自身に浴びせて煌かす。
 夏空広がる浅瀬の湖底にまで彩躍る様にアンジュと一緒になって歓声あげれば、モニカはますます浮き立つ心そのものを竪琴の弦に踊らせて、弾けるように楽しい旋律を解き放った。
「さぁさこれよりマーレに虹の波が来るよ! 乗り遅れにご注意を!!」
「虹の波を加速させるよ! アンジュ!!」
 誰もの心を躍らすモニカの声が響き渡った刹那、目も眩まんばかりに目映い色彩が空と水の狭間を満たして乱舞する。次の瞬間に虹の波を大きく煽ったのは勿忘草の娘が招いた烈風、その追い風と虹の波に乗って翔けたアンジュが更なる追い風を喚ぶ。翔ける風の先には金の竜、
「クローディアちゃん、跳んで!!」
 無敵の加速を得た竜の跳躍は追い風に押し上げられ、竜の背でクローディアは夏空に舞った。
 夏空の王国から見下ろす巨大噴水の頂。胸裡から爆ぜる絶対的な自由。
 永遠にも似た一瞬の後に竜が踏みつける勢いのまま噴水へと落ちれば、全身を包んで噴きあがる水の奔流より鮮烈に、生きている実感が体中を翔けめぐる。
「大好き、大好き。アンジュさんもみんなも大好き!!」
「アンジュだっていっぱい大好きだよ!」
「大好きな気持ちだったら私も負けてないからね!!」
 盛大な水飛沫にも負けず弾ける彼女たちの笑みに誘われ、ハルネスの声も笑みも弾けて響く。
 夏も、この街も、今ここにいる君たちも――みんな大好き。
 眩い水飛沫の風に魔道書の頁を躍らせたなら水の夏空の底から夏の深山の淵を思わす翠に輝く石板が突き上げ、夏の緑葉より木漏れ日より鮮やかに煌く光の翠雨を迸らせた。
 世界に爆ぜて溢れて降りそそぐ水と光の花。
「俺だって、大好きは負けへんのやよ!!」
 頬を濡らすのは何より心潤す水花と熱い歓喜。
 今も大好きなひと達が傍にいる。皆の奏でる水花の競演の中に自分もいる。
 それだけでとめどなく溢れくる歓喜のままに撃ち込んだロータスの蹴りが鮮烈な彩の竜巻を生み、噴水たちをも呑んで光の奔流のごとく夏空へ噴きあがれば、
「ここで思いっきり弾けたら絶対綺麗だよね!」
 どうしようもなく躍る心のままに水の夏空へと跳びだしたレムネスが鉤爪を突き入れた。――瞬間、ひときわ眩く膨大な輝きを流し込まれた巨大噴水が奔流の芯から爆ぜる。
 滝を真正面から浴びるような激しい水花を全身に受ければリューウェンの笑みも更に弾け、
「アンジュ殿、良ければ俺とも御一緒願えないだろうか?」
「するするー! ね、リューウェンさんの翼も見せて!」
「承知!」
 暁色の娘が炎の翼咲かせると同時、黒き刃に皓々と輝く光の翼が弾けるように咲いた。
「路を創ってあげるよ! 行きなっ!!」
 響き渡るのは夏をゴンドラ乗りとして過ごす魔曲使いの即興歌、迸る焔と疾風が生んだ夏空の波の路を馳せれば光の翼が更に大きく眩く羽ばたいた。
 夏そのものへ飛び込む心地で剣士が揮う光の斬撃に重ねて不死鳥の炎纏った娘が飛び込めば、青と白に輝く羽根と焔の羽根が水飛沫とともに爆ぜ夢のごとく夏空に舞う。二人を襲う大波が夢幻の光景を掻き消さんとする様に対抗せんと、モニカが開いてみせるは楽園の門。
 蒼穹の滴擁く魔鍵に導かれ、空に広がる楽園の光景が湖面の夏空にも映り込む。空と湖で二つの虹の環が輝いた瞬間、虹の狭間を翠の光風が翔けぬけた。
「俺の出番がないなんて言わねぇよな?」
 光翼で巨大噴水を斬り裂いて嘯く細工師の声に、モニカにも夏の輝きそのものの笑みが咲く。
「言わないよ! 今年も皆で一緒に行こうね!!」
 迷宮を越えた先にある、遥かな夏空の王国へ。

●夏迷宮のラーラマーレ・アクアフィオーレ!
 次から次へ途切れることなく爆ぜて咲く水と光の花、水飛沫に霞む世界には幾つもの虹が架かり、今にも夏空の王国まで届きそう。
 光咲くたび水を浴びるたびに、魔道書を繰る指先にまで歓喜が満ちて溢れだす。己の心も身体も、このいのちまでも、靭く撓やかに煌く弦になった心地で震わせ響かせて。
「さあ、歌おう全身で! 極上の多重奏を雲の上の王国にも届けようか!」
「皆で奏でられるならば、必ず!」
 全身全霊でハルネスが奏でる音が輝く翠の光になる。魔道書の楽譜に導かれた碧水晶の輝きが乱反射する世界を翔け、高速の詠唱を歌へ昇華させたリューウェンが黄金の雷鳴で翠の万華鏡ごと巨大噴水を斬り裂けば、
「重なり合えばもっと響くよ!」
「踊って渦巻いて、何処までも昇ってくやんな!」
 歌に添わせて音色奏でたモニカが弾ける歓喜のままに竪琴を掻き鳴らし、水と光の粒子で咲いた翠と金の花の奥から熱狂の虹を咲き溢れさせた。間髪いれずに水の夏空を翔けたのは、舞うようなロータスの蹴りから生まれた風の双頭竜。
 空と水の夏空すべてを掻き混ぜんばかりの竜巻が水も光も彩も何もかもを勢いよく巻きあげる。
 迷わず風の竜に飛び込んだアンジュの焔の翼が爆ぜる火花めいた煌きを撒いた瞬間、
「もっと咲くよね!?」
「咲かせるよ、飛びきりのアクアフィオーレ!」
 機を狙い澄ましたクローディアの月弓から数多の色彩が迸った。
 夏空の青も夏陽の黄も束ねた矢が奔る。ひときわ高らかに響く赤き鏑矢の歌と彼女の声につられ、クロービスの背筋を翔け昇った高揚も弾ける声になる。
「――咲き誇れ水の花、ラーラマーレ・アクアフィオーレ!!」
 五感すべてで感じる、今だけの極上の生命の歓びがここにある。
 水流に叩きつけた雷鳴の中から吹き荒れる氷雪、噴きあがる火炎、すべてが眩く花咲くけれど、
「まだ終わらないよ! 目指すはオクテット!! ――だよね?」
「もちろん♪ さあ、思いっきり行くよ!!」
 皆で繋いだ心のままに連なる八重の音色が更に極上のアクアフィオーレを咲かす。
 爆ぜる水花の芯へ思いきり飛び込めば、輝き凝縮させたレムネスの爪が水の奥の仮面へと届く。新たな星の爆発めいた輝きが夏空の世界へと迸った瞬間、天を衝かんばかりの巨大噴水が一気に弾け飛んだ。
 降りそそぐ飛沫の滝、万色の煌き躍らす水の紗に映し出された、大きな大きな虹の橋。
「御見事!」
 夏空の王国にまで届きそうなそれに破顔して、リューウェンは光の翼を手に水を蹴った。
 この虹と水飛沫の紗の先にもうひとつの噴水と――何より鮮やかな夏がある。
「行こう、アンジュっ!」
「うん! あの涯てを一緒に越えていこうね!!」
 剣閃とともに咲き溢れ夏空へ噴きあがった無数の光の羽根、それをめがけてハルネスは己が身に纏った不死鳥の翼で水の夏空を飛翔した。傍ら翔ける娘の翼も燃ゆる焔、輝く熱の中で笑み交わし、尽きぬ高揚のままに噴水へと飛び込めば、鮮烈ないのちの輝きが爆ぜるような感覚とともに濃密な水煙が世界に噴きあがる。
「行くで! フィナーレ!!」
「終幕――じゃない、新たな開幕はもらったよ!」
 世界を霞ませた水煙そのものに光を含ませ、ロータスの喜びと切なさのままに舞った妖精の癒しの環が無数の虹を生む。淡く優しい虹の中でひときわ強く透徹に煌いて、クロービスの心のまま翔けた氷の戦輪が水煙ごと巨大噴水を凍りつかせた。
 膨大な水に護られた仮面までもが凍りつけば、力を失った棘が巨大な噴水の氷柱ごと砕け散って、鮮烈に煌きながら世界に融ける。再び開けた視界、開かれた夏への扉の先には――まるで涯てなく広がるような、何より鮮やかな夏空の青。
 やってくれるね、と眩しげに双眸細めたハルネスが両腕を広げてみせれば、欲張り、と弾けるような歓喜の笑みとともにアンジュが飛び込んでくる。眩い夏ごと抱きしめる、光と熱。
 水と光と虹の花の余韻煌く夏空と、そのもとで輝く街並みを飽くことなく眺めるレムネスの肩に軽く手を置いて、ロータスは言葉にするまでもない歓喜と幸福感でモニカと笑いあった。強く鮮やかに煌く夏のかけらはもうモニカの、皆の掌の中にある。
 ここにあるのは無限の喜びと切なさ。
 さあ歌え、咲き誇れ。
 最高の夏がまた始まる。
 今年も必ず、極上の夏にできるはずだから。

 ――ただいま、ラーラマーレ!



マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2014/06/19
  • 得票数:
  • 楽しい9 
  • 笑える64 
  • 泣ける15 
  • カッコいい3 
  • 怖すぎ21 
  • ハートフル1 
  • ロマンティック1 
  • えっち4 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。