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天槍の要諦

<オープニング>

 ランスブルグ女王、ジョナ1世の御前。
 ジョナ1世の前には、天槍の探索に携わった者達が集っていた。
「あなた方の探索への協力に感謝する。ついに、天槍の中枢への道が開かれる事となった」
 長いテーブルの奥、椅子から立ち上がったジョナ1世は、テーブルを囲むエンドブレイカー達にそう告げると、深々と頭を下げる。
 幾人かは同じ様に頭を下げ、天槍騎士団団長の清き純白・スーリス(c28034)など幾人は、恐れ多いと恐縮し、ジョナ1世が頭を下げるのを制そうとしていた。
 その長いテーブルには今まで天槍に挑んだ者達が持ち帰った情報や、書き記した地図を元に作られた1枚の巨大な地図があった。
 含羞草・ティルキア(c33712)達の遭遇したスライムの湧き出る部屋や、黄金戦姫・アンゼリカ(c32742)達が情報をもたらした鉄球が飛ぶ回廊。
 その奥には蒼氷の瞳・アリーセ(c34080)が抜いた蒼き柱の間や、暁風・サーシス(c18906)が打ち破った壁の部屋など数々の部屋があり、挑んだ多くのエンドブレイカー達のもたらした情報を総合した結果……天槍内部の詳細が、その地図には記されていた。
 しかし、その地図には記されていない一角。
「ここが天槍の中核となる場所だ」
 ジョナ一世の指が動き、灰皓の衛・エルンスト(c07227)達の戦った真珠色のゴーレムの居た部屋や、バーガンディランス・ティアナ(c01457)が撃破したノソリン型ゴーレムの部屋を通り、未踏破部分を指して指が止まると、視線を向けた蒼穹を翔る風・ランディ(c04722)の真紅のバンダナが揺れ、隣に並んだ水天の妖剣・クリム(c20805)も顔を向け蒼いポニーテールが揺れる。
「この道に赤い少女の姿のゴーレム兵器が複数配置されているようだ」
 その中枢に至る通路をとんとんと指で叩くジョナ一世。

 赤い少女……すなわち、エンドブレイカー達が三日月湖の冒険で出会った少女、イヴ・ザ・プリマビスタ。
『ワタシたちノおうノたメに……』
 そんな言葉を繰り返し背中の翼を動かす12体の少女型ゴーレムに、剣呑な雰囲気を感じ取り、情報収集を優先し撤退したエンドブレイカー達によりもたらされたその情報。
「邪悪な星霊術で生み出されたゴーレム兵器と、中枢に至るまでに仕掛けられた様々な罠。そして『私達の王』と呟く赤い少女の姿をしたゴーレム兵器……。これまでの情報を総合した結果、天槍の中枢を封じていたのは、狂王アニールである可能性が高いと考えられてる」
 ジョナ一世の言葉に多色のアスター・クィ(c03420)を始め少ない驚きの声と、赤い瞳の・ティ(c01976)ら頷く幾人の顔が見える。
「アンデッドマスカレイドとして蘇った後に、そのような事を?」
 疑問の声に、ジョナ一世は答えた。
「いや、おそらくは生前のアニール……つまりランスブルグの王として恐怖政治を敷いていた約五百年前の彼が行ったことだろう」
 現在、天槍の由来をはじめ過去のランスブルグの歴史に関する記録の多くは失われている。
 それというのも、狂王アニールが約五百年前に行った恐怖政治の中で、過去の文献を大量に焼き払ったためだ。
 アニールが自ら天槍の内部を調査し、本来の用途とは異なる仕掛けを施していたとしても、その記録は残されていない。当時の調査や作業に使われた者達もアニールに処分されてるか、ゴーレムを創造するための邪悪な星霊術の生贄にされたというところだろう。
「昨年、蘇った狂王アニールは、勇者アリッサムと共闘こそしていたが、それぞれの配下が争っていた事からも判るように、完全な仲間ではなかった。共通の敵……即ちエンドブレイカーに対抗する為、一時的に手を結んでいたと考えられる」
 空ばかり見てる・ルスラン(c35273)を始め皆が頷くのを確認し、ジョナ1世は言葉を続ける。
「となれば、いずれ敵対するであろう勇者アリッサムに『対抗する為の何か』として、天槍内に遺したものを勇者達にも秘匿していたと考えるのは不思議では無い。仮に勇者に対抗する為の何かでないとしても、天槍の中枢には少なくとも、アニールにとって『価値のある何か』があるのは間違いない。探索の意義としては十分だろう」
 地図から顔を上げたジョナ1世の瞳が輝き、それを見た荒野を駆ける探偵・ティルナ・キリシマ(c03037)の紫の瞳が興味深げに細められ、荒野の山羊使い・セヴェルス(c00064)も瞳を細める。
「……勿論、情報を持ち帰った部隊が判断した様に、中枢を衛るべく配されたこの『赤き少女型のゴーレム兵器』を、通常の戦力で打ち破るのは少々厳しい。相応の精鋭達を送り込む必要があるだろう」
 ジョナ1世の言葉に玲瓏の月・エルス(c00100)や魔弾の射手・クロウリー(c16216)、夢歌い・ヤクモ(c01272)らが顔を見合わせる。

「人選はあなた方に任せる。天槍の中枢を攻略できる戦力を集め、必ずや探索を成功させて欲しい」
 ジョナ1世の力強い号令に、絆紡ぎしガントレット・ウルスラ(c25465)らは礼を正して敬礼し、幾人かが頭を下げ、恭しく頭を垂れた空翔る天馬スカイウォーカー・ディヴァイン(c03131)の長い髪が垂れる。
 こうして、天槍中枢を衛る赤き少女型のゴーレム兵器を排除する作戦が、開始されたのだった。


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参加者
わんぱく戦士・コンラッド(c00353)
黄金騎士・ハインツ(c00736)
空の宅急便・カナタ(c01429)
天華の欠片・キリィ(c01934)
怪しくない神楽巫狐・リーリア(c02014)
刺し穿つ黒白の槍・リーゼリット(c02065)
銀牙狼・アルジェン(c02363)
九龍公・シーヴァー(c03034)
紫風天翔・レイラ(c03886)
アマキツネの・カケル(c05038)
それいけ弐槍で駆ける戦乙女・ティファナ(c05979)
竜剱・ノイズ(c08532)
氷茨の祭祀長・マウザー(c11248)
棘食む妖魔の共生者・ミシェル(c11604)
風の祝子・イストテーブル(c14196)
貴方のためのクローバー・ヨツハ(c15542)
お菓子な館長・マーベリック(c15694)
魔弾の射手・クロウリー(c16216)
辰星・ルイシュ(c16527)
紫刻の幻影・クトラ(c16568)
悪夢の刈り手・シェミア(c19503)
蒼き疾風の・ヨベル(c20415)
から笑いの捨火・ワレモコウ(c25429)
武豪ドラドの継承者・ガル(c26044)
繊月の射手・ウォルター(c28226)
空駆ける太陽・シルグ(c30756)
嫉妬の移動爆弾・クレア(c31055)
力のカード使い・リムィリファルァ(c32636)
黄金戦姫・アンゼリカ(c32742)
天真爛漫・アプリ(c34598)

<リプレイ>


「天槍の奥に舞う彼女達は……さて何を護って、何を待っているのだろうね?」
「古の狂王、それがこうまでして守る遺産……さて、どのようなものが」
 から笑いの捨火・ワレモコウ(c25429)が何かを考える様に小首を傾げると、九龍公・シーヴァー(c03034)は、興味が尽きぬとばかりに眼鏡を外す。
「これだけ心強い仲間達が居るんだ。絶対に天槍の中枢を攻略してみせるよっ!」
「けど、こっちも数多いけど、敵も多い。こういう時は地道に1体ずつ潰すのがセオリーだって、ばっちゃが言ってた!」
 貴方のためのクローバー・ヨツハ(c15542)が、気合を入れる様に得物の大きなアックスソードで地面を叩くと、焔の匂を纏うわんぱく戦士・コンラッド(c00353)も、大きく頷いてマフラーをたなびかせた。
「侮る気はないが、気合を入れていかないとな」
「えぇ、必ず勝つよ……わたしの今を、試させてもらう……」
 空駆ける太陽・シルグ(c30756)が言うのに頷いた悪夢の刈り手・シェミア(c19503)が、幸せの香水の香りを漂わせ一歩踏み出す。
「然り。強敵との対戦は、いつでも心が躍る。我が黄金の炎、敵の目と天槍の中枢に焼き付けてみせよう」
 フッっと鼻で笑いシェミアに賛同した黄金騎士・ハインツ(c00736)が、召喚した星霊グランスティードに跨ると、
「この先にある物が、私達に活用できる物であればいいのですが……どちらにせよ、悪趣味なゴーレム達はさっさと蹴散らしましょう」
 氷茨の祭祀長・マウザー(c11248)は、愛用の氷剣を鞘から抜き、通路の奥にその灰色の瞳を向ける。

「ワタシたちノおうノたメに……」
 マウザーが向けた視線の先、通路の奥に翼を広げ、同じ言葉を繰り返す赤い少女型のゴーレム。
「天槍の中枢へと至る機会が訪れるとはな」
(「今日の私は、いつもの私とは違う……いつもは嫉妬戦士として闘っているけども…そんな嫉妬戦士の活動を妨げる脅威と、今は立ち向かわないとなのですよ!」)
 ゴーレム達の後ろを見据える様に瞳を細めた魔弾の射手・クロウリー(c16216)の隣で、右手をグッと握り拳を作ったのは嫉妬の移動爆弾・クレア(c31055)。
「数が多いって事は標的が多いって事よね。ボクの双槍で貫いてあげるよ」
「う。通路の狭さは射手にとって優位。1体ずつ確実に仕留めてやろう」
 刺し穿つ黒白の槍・リーゼリット(c02065)が嬉しそうに回転させた双槍を、左右の両脇にはさみ、繊月の射手・ウォルター(c28226)が弓の調子を確かめる様にその弦を鳴らす。
「ここが一番奥……まるで夢みたいですね。わたしができる事を精一杯がんばります」
「とりあえず、回復は早めを心掛けた方が良さそうですねぇ〜」
 両拳を握り拳を作って気合を入れる天真爛漫・アプリ(c34598)に対し、怪しくない神楽巫狐・リーリア(c02014)が、そう言って頬に人差し指を当て、首を竦めた。


 通路の奥。翼を揺らす12体の赤い少女型ゴーレムは、『護るべき物』を背に侵入者達向き直る。
 その視線の先には30人のエンドブレイカー達。
「王の為に、か。……いいだろう。なれば汝等が王、アニールの名において命ず! 主の帰還だ、道を開けよ!」
「それでもその道を開けぬのであれば、抉じ開けるまでだ」
 通路の中央、威厳を持ったクロウリーの声が響き、1歩踏み出した彼が宙に狂王の紋章を描く。
 隣で同じ様に一歩を踏み出したウォルターが、引き絞った弓から無数の矢を撃ち放つ。
 それが開戦の合図であった。
 2人に並んだ者達が次々と攻撃を放つと、敵の振るわせた翼からも炎や衝撃波が飛び、それらが宙でぶつかり、激しい衝突音が響いて光が煌めく。
 そのクロウリー達を超え、更に6人が前に出た。
「いざ覚悟、天狗のカケル、只今推参!」
 一番左に陣取ったアマキツネの・カケル(c05038)が声を上げ、迫り来る炎に手裏剣をぶつけ、
「その奥に何があるの? それを確かめるためにも……目の前の強敵、全力で以て倒すわよ」
 逆の端に陣取った棘食む妖魔の共生者・ミシェル(c11604)も、素早く抜いた銃から紫煙弾を撃ち、弾幕を突破した敵の攻撃を撃ち落す。
「栄えある血筋は遥か大帝の下に連なりし、我こそはロタリンギアの騎士が一騎ハインツ・マッケンゼン! 紅き自律兵器達よ、我が正義の槍を受け、その身に我が名を刻めッ!」
 蒼嵐の外套を翻したハインツと共に8人が更に前に出、
「死の舞踏だ。踊ろうか、御嬢さん方」
 言ったシーヴァーが虎型のオーラを飛ばす。
「くぅ……」
 このタイミングで最初に飛ばし合った攻撃の相殺されなかったものが着弾し、髪を奔流と化して飛ばした直後、左肩に衝撃波を受けたシェミアが呻き声を上げ、
「そんなもんぐらいで怯むかよっ!」
 その短髪を焔で焼かれたコンラッドが、お返しとばかりにエッジアバランチの刃を飛ばす。
 その刃と共に先陣を切り、烈風に髪を躍らせ低い姿勢を保ったままマスタームーブで突っ込んだのは竜剱・ノイズ(c08532)。
「イヴの姿をしている、のは……アニールの趣味? どちらにしろ、この仕事を任されたモノとしてこの役目、きっちり果たす……」
 中央に斬り込んだノイズに9人が続き、敵の中央は反撃しつつも、その勢いに押される様に後退する。
「……!! いけません、下がって下さいませ! 前衛中央に回復を!」
 2陣から氷柱を飛ばしていたマウザーが声を上げ、後ろへ回復を指示する。
「えっ、は、はい。回復しますぅ〜」
「回復します!」
 リーリア(c02014)が神楽を舞い、アプリがライフベリーを投げると、それぞれ声を掛け合い、対象が被らない様に回復が飛ぶ。
 後退したのは敵の中央だけで、左右両翼は辰星・ルイシュ(c16527)や天華の欠片・キリィ(c01934)と切り結んでいた。中央の者達がV字型の窪みに入る形になったのに気付き、マウザーが叫んだのだが、その声にノイズ達が反応した瞬間、敵が一斉に中央を向き攻撃を飛ばした。
「ぐうぅ……これは……」
「いったぁーい!」
 体中の骨が砕けるが如き衝撃に蒼き疾風の・ヨベル(c20415)が呻き、頭から血を流した風の祝子・イストテーブル(c14196)が泣声を上げる。
「こっちも攻撃を集中だ、左右端の敵を狙え!」
 回復が飛んでいたおかげで辛うじて堪えた前衛を見て、空駆ける太陽・シルグ(c30756)が声を上げ、後ろからの攻撃が敵の両端に集中する。
「わたしタチのオウのタめニ……」
 少女型ゴーレムは同じ言葉を繰り返し、攻撃、反撃、回復を繰り返しながら戦線を再構築する。


 後退した前列中央に合わせ敵が押し出してくると、二陣の中央部が前に出てその猛攻を支える。
「ちょっと痛すぎだよね?」
「恐るべき守護者たちです……が、こちらにもそれ以上に心強い方々が居ます。やられっぱなしにはしません。押し返します」
 唇を尖らせたのはイストテーブル。自己回復手段を持たぬ彼は後衛からの回復を受けながら、自分達の前に立つ仲間を援護する為コヨーテのスピリットを嗾け、銀牙狼・アルジェン(c02363)も自身の血で染まった狼王鎧に手を当て、反攻の気概をみせる。
「ノイズさんは大丈夫かな?」
「当たり前、倍にして……いや、十倍にして返す」
 一番の集中砲火を受けたノイズを気遣うヨベルだったが、ノイズは心の眼を開き相手の動きを見切ろうと、せわしなくその赤い瞳を動かしていた。
「やらせないぞ!」
 その右では剣気を纏った黄金戦姫・アンゼリカ(c32742)が、戦姫のリボンに留められた金髪を振乱し、眼前の敵の隙を突き、壁際の敵に火柱を伴う斬撃を叩き込んでいた。その火柱が収まらぬ内に旋風を巻き起こしながら一気に飛び込んだのはそれいけ弐槍で駆ける戦乙女・ティファナ(c05979)。
「うわあああああああぁぁ!」
 アンゼリカの火柱の熱気を伴う突風で威圧すると、そのまま気合いの雄叫びを上げ、回転蹴りを叩き込もうとするが、体が浮いたところにアンゼリカの前の敵からの衝撃波を食らって吹き飛ばされる。
「崩させはせん。 私と一緒に踊ってもらおうか」
 そのティファナに意識を向けた敵に、キリィが雪華剣『スノーホワイト』の切っ先を突き入れる。
「ばーじーりーすーくー!」
「よっしゃ、そのまま樹になっときや」
 逆側では武豪ドラドの継承者・ガル(c26044)が、額に生やした第三の瞳で迫る敵を石化させ、その機動力を奪っていた。
 そのゴーレムに苗木を突き刺したのはお菓子な館長・マーベリック(c15694)。あっという間に伸びた紫煙樹がゴーレムの体を縛り、
「先ずは一体その首もらいだぜ!」
 そこに黒鵺を逆手に構えたルイシュが突っ込むが、その刃が届くより早く、羽の幻影が舞い散り、回復した敵は、呪縛を解いて逃がすまいとする後衛陣の攻撃を受けつつ後退する。

「回復を封じないといたちごっこだね」
「その進撃、押し留める。月天忍法…睡蓮の術」
 麻痺を解いて後退する敵目掛け紫刻の幻影・クトラ(c16568)が黄昏の鍵を飛ばしてメビウスの輪を描き、その敵を助ける様に前に出てきた敵に、カケルが印を結び月光の帳を降ろす。
「あら? 回復行動で集中攻撃の手を減らせるだけでも、大いに意味があるわよ」
 そう言って唇に人差し指を当てた力のカード使い・リムィリファルァ(c32636)は、回復が足りたのを見て取ると、シャッフルしたカードの束から、鼓舞のカードを抜いて前衛の仲間に飛ばす。
「ミシェルちゃん、レイラおねーさん。アンゼリカちゃんの前のを一緒に狙いましょう。せーのっ!」
 左右に声を掛けた空の宅急便・カナタ(c01429)が杖を向けると、その周囲の空間が滲み魔力体が現れ、
「了解よ。いきますソニックシュート!」
「分かったわ」
 紫風天翔・レイラ(c03886)が振り抜いた脚から放たれた衝撃波と共に、カナタの魔力体から光線が飛び、ミシェルが宙で指を動かし、支配の烙印を刻んだ敵を次々と穿つ。
「これでも食らえっ!」
 ミシェルの刻んだ烙印から流れ込む力に勇躍したアンゼリカが、断罪の女神が浮かび上がった拳を敵に叩き付ける。
 攻防は一進一退を繰り返し、双方未だ倒れる者なく推移していた。


「わタしタちのオうノタめに……」
「なんっ……やと!」
 叩き付けたGolden batを通じ手に感じる衝撃。
 傷一つ付かずにギロリと視線を向けた敵と、その背後の敵からの攻撃を受けたマーベリックの口から、驚きの声と血が溢れる。
「やらせない、下がれマーベリック!」
 更なる敵の追撃に対し、巻き上がる風。
 太陽のバンダナに押さえられた髪が風に踊り、ルイシュが連続蹴りを叩き込むが、翼から放たれた衝撃波がその風を掻き消し、更に炎を飛ばそうと言うのか、翼が燃え上がる。
「させないわよぉ〜っ!」
「いっけぇー!」
 そこに横合いから、マーベリックに代わって前に出たヨツハの振るう得物が、神火を纏って叩きつけられ、後ろからリーゼリットの放った棘の槍が、縫い付ける様に突き刺さる。が、その間隙をぬって後ろの敵からマーベリックを狙う攻撃! ……しかし、その攻撃は回転するシェミアの大鎌『名も亡き魔神の瞳』に弾かれる。
「まったくうち不甲斐なさすぎやろ」
「やられっぱなしは趣味じゃないわ……白銀の刃となりて敵を穿て……!」
 ボヤくマーベリックの回復を後衛に任せたシェミアは、ルイシュとヨツハ相手に鍔迫り合いを演じる敵に、その白髪を刃状にして突っ込ませる。
「どんどん串刺しにしてあげるんだよ」
 腕に棘を帯びたリーゼリットは、日焼けした顔に笑顔を浮かべ、後ろから次々と棘の槍を投じている。

「神鏡を喚ぶ間もないのですぅ」
 隣で楽しそうに槍を投じ続けるリーゼリットを見て、狐のつけ耳をぴこぴこ動かしリーリアがぼやく。敵の攻撃は苛烈で、常に全体を見渡し回復に備えねばならず、彼女は攻撃のタイミングを逸していたのだ。
「忍刀が宙に描く弧は月也、故に導くは月天の慈悲」
「疾っておいで」
 その眼前では、カケルが月のシャワーでガルを癒し、ほほ笑むクトラの元から血の猟犬達がガルを援護する様に駆け出した。
「指揮官が居る訳では無さそうだけど、えらく連携の取れた動きをするねぇ」
 鏡魔眼の術とフレイムスロワーで暴走と麻痺をばら撒くワレモコウは、敵の動きを見てそう感想を漏らす。
 ゴーレム達は基本的には前衛8、後衛4の陣形で眼の前の敵の相手をしているが、どこかが劣勢になると、そこへ集中攻撃をする様な動きをするのだ。
「それに回復使いが居る訳でもなさそうだ」
 戦場は目まぐるしく変化しており、しっかり確認した訳ではないが全員回復アビリティが使えるとみて間違いだろう。
「ハンマー奥義・みりおーん!」
「ワタシたちノおうノタメに……」
 クトラの猟犬に喰い付かれたゴーレムに、ガルが連続で巨獣の骨棍棒を叩き込み、敵も猟犬達を振り解きガルに衝撃波をぶつける。その視界の端に、リーゼリットの槍に貫かれたゴーレムが、カケルの手裏剣とマーベリックの一撃により沈むのが見えた。
「よーし、このまま押し切っちゃうぞー!」
 勢いづき得物を掲げるガルに合わせ、左翼側のエンドブレイカー達は更なる攻勢を仕掛ける。

 反対の端側でも攻防は続いていた。
「思った様には前に出れないんだよう」
 嫉妬の移動爆弾・クレア(c31055)は焦燥に駆られていた。4列目に位置している為、敵に近付く事が出来ず、攻撃の手段がダークネスフォール一択となってしまっていたのだ。
「いい加減倒れろよ!」
 そのクレアの放つ降り注ぐ闇のオーラを受けながらも飛ばされた衝撃波を、交差したトンファーで防ぎきったシルグが、声を共にトンファーを叩き込む。そのトンファーが叩きこまれる瞬間、
「凍り付け、そして動く事ができないことを嘆け」
 シルグと入れ替わり2陣に下がったキリィの喚んだ冬の嵐が、容赦なく叩きつけられ、凍った所に衝撃を受けた敵の左肩に亀裂が入る。更にミシェルの描く烙印がゴーレムから奪った力をシルグに与える。
「よし、このまま……うわっ!」
 その手応えに更に攻勢に出ようとしたシルグに敵の攻撃が集中し、シルグはその威力に思わず片膝をつく。
「わぁ、シルグくんに回復飛ばします」
 魔力体を出そうとしていたカナタは、慌ててオラトリオを喚んで回復に掛るが、それより早く、亀裂が入ったゴーレムが衝撃波を飛ばそうと羽を広げた。
「させない、ん、だ、よっ!」
 別の敵と切り結んでいたティファナが振り向きざまに槍を投じ、体を一回転させ再び敵に向き直る。雷撃を纏って投じられた槍は、文字の如くゴーレムへの横撃となり、辛うじてカナタの回復が間に合った。更に一呼吸置いて棘の槍が敵を穿つ。
「一番壊れそう。徹底的に叩くわよ」
 その棘槍を投じたミシェルの視線の先には、2つの槍に穿たれクレアに闇を垂らされたゴーレムに対し、再び前に出るキリィの姿が映っていた。

「また会いましょう、あの世でね。ティファナッ!」
 惜しげもなく晒された美脚。キリィの蹴りにより1体目のゴーレムが崩れ落ち、キリィは突き刺さっていた槍をティファナに投げ寄こす。
「まだまだぁ!」
「気合いで押し切る!」
 剣圧で焔を巻き起こしたアンゼリカと共に、回転蹴りを放っていたティファナは、マウザーの喚んだ氷柱と入れ替わる形でゴーレムの顔を蹴って跳び退き、空中で槍をキャッチして着地すると、
「せーのっ、えーい!」
 背伸びしたアプリが両手で投じたパンプキンボムが爆ぜるのに合わせ、再び地面を蹴って敵に肉薄する。
「わたしタチのオウのタメに……」
「ぐぬぬぬぬ、負けるかー!」
 その僅かな間、一人になった所に集中攻撃を受けるが、大剣の刃を盾にして耐えるアンゼリカ。
「とっととスクラップに戻りやがれ!」
「アンゼリカ様、危険な時は無理せず下がって下さいませ」
 その攻撃を押し返す様に二陣からコンラッドが乱れ放つオーラの刃が、アンゼリカを心配するマウザーの起こす氷雪に乗ってゴーレムを穿つ。
「アンゼリカさん、回復します!」
 敵の攻勢が止まったタイミングで、アプリがライフベリーを投じる。
 コンラッドの放ったオーラの刃が、ゴーレムの翼から放たれた火炎弾とぶつかり、部屋が光と闇の明暗に彩られた。


「左右の2体は落ちたが……」
 矢を放つウォルターの視線が厳しい。左右両翼においてエンドブレイカー達が押している最大の要因は、ここ中央にあった。敵の攻撃がここに集中していたのである。
「ノイズさん、下がって!」
 輝く野太刀【夜鐘】の刃を叩き込んだヨベルが吼える。この攻撃の間に下がると思っていたノイズ。全身を血で染めた彼女が神火を纏った一閃を叩き込んで来たのだ。
「これで潰れる……」
 無論ノイズも蛮勇を誇って突っ込んだのではない。相手の動きを見切り、隙を突いたこの一撃で屠れると看破しての一閃だった。
「ワタ……シ……オウ……タメ」
 途切れ途切れの言葉を発し崩れ落ちるゴーレム。……が、その翼から断末魔の如き焔が放たれた。
「ノイズちゃん!」
「間に合うかしら」
 イストテーブルが叫び、リムィリファルァが守りの水晶群を喚ぶが、
「少しだけ……見誤った……」
 それより早く血を噴き出したノイズが崩れ落ちた。
「ヨベルさん、前っ!」
「うわっ!」
 叱咤する様なアルジェンの声。崩れ落ちるノイズに気を取られたヨベルに焔と衝撃波が襲い掛かる。思わず顔を覆ったヨベルだったが、その幾つかが衝撃波と現れた水晶群に弾かれその傷を癒す。
「振り返る余裕はありません。敵を倒す事だけを考えて」
「危ない所だったわね。連鎖的に崩されてはダメよ」
 振り抜いた脚を戻したレイラが声を上げ、リムィリファルァが、とっさに発動しようとしていたガーディアンクリスタルの対象をヨベルに変えたのだ。それでも尚、血を吐き片膝を着くヨベル。アルジェンが援護に入ろうとするが、眼前のゴーレムの攻撃がそれを許さないでいた。
「誰かヨベルさんを!」
「シュネル・ハインツ、ジーク・ヴィクトーリア!」
 アルジェンが上げた声を更に大きな声が掻き消す。跨ぐ形になる事を心の中で詫びながら、騎士槍ヤークトフレーテを垂直に構えたハインツが、倒れるノイズを飛び越えその切っ先を突き付け敵に突っ込んだのだ。
「代わるよ。ノイズさんを後ろへ」
 ワレモコウが前に出てイストテーブルと無理やり交代し、ハインツが相手する敵に炎を放射し、
「流石は狂王が作ったというべきか……」
「お行き、白蓮、紅娘」
 クロウリーが黒曜鴉で楽園の門を開いてヨベルを癒し、気咬弾でガルを援護していたシーヴァーが、ヨベルの前に出てハインツが狙う敵に虎のオーラを飛ばす。
「ノイズちゃん、大丈夫? しっかりして」
 その間に、ぐったりしたまま反応の無いノイズの体に、肩を貸したイストテーブルが共に後退する。
「うおぉぉぉぉ!」
 援護を受けたハインツは、吶喊の勢いもそのままに、敵の右胸辺りに切っ先を突き入れて押す。だが、その攻撃はハインツ一人が突出する形になり、左右の端で眼の前の敵を相手していたゴーレム達も、
「『わタシタちのオうノタめニ……』」
 一斉にハインツを狙い攻撃を放つ。
「回復を!」
「熱い視線を一人占めだな……フッ」
 反攻を予想していたハインツだったが、全員から攻撃されるのは想定外で、幾つかの攻撃はクラッシュしたものの、回復を叫ぶシーヴァーの声を聞きながら、自嘲気味な笑いを浮かべ馬上から崩れ落ちる。
 だが、その吶喊も無駄ではなった。左右両翼は、敵の意識がハインツに向いた隙を逃さず、
「今だ、一斉攻撃です」
「好機ッ、一気に押すべし」
 カナタとカケルが口にした様に一斉に攻勢に転じ、それぞれ敵に大きな傷を負わせた。
「さぁ、私達も押し返すぞ」
 ウォルターが声と共に放った無数の矢が仲間達の頭上を越え、敵に吹き刺さると、左右の攻勢の余勢を駆る形で、中央部もゴーレム達を押し返しに掛る。
 と言うのも、既に他者回復の手段が尽きつつあり、これ以上の継戦自体がじり貧になる可能性が高くなってきたのである。
「さぁ、汝等の王の声に聞き惚れ衝動のまま動くがいい」
「1体ずつ、確実に削っていきましょう」
 クロウリーの描く紋章から狂王の哄笑が響き、敵を殺戮衝動に染め、レイラが容赦なく脚を振り抜き衝撃波を飛ばす。敵も負けじと衝撃波と焔を飛ばしてくるが、
「わたしたちのオウのタメに……」
「それしか喋れないのかしら? それは喋れない事より悲しい事ね」
 攻撃を繰り出しながら同じ言葉を繰り返す少女達に、一瞬だけ憐憫の眼差しを向けたリムィリファルファが、鼓舞と爆発2枚のカードを引いて投じた。
「狂王のオモチャに、これ以上好き勝手はさせられんよ」
 シーヴァーが連続で放った気咬弾がゴーレムの前で爆ぜ、閃光を放った隙に一気に距離を詰める前衛陣。
「さぁ、今までの分、お返ししちゃうよー」
「暴走がかなり効いてます。一気に押し切りましょう」
 イストテーブルとアルジェンが勇躍し、
「密集しすぎだね。僕は後ろから」
 マウザー達左右からも前に出たので、密集して攻撃できなくなる事を考えたヨベルは、中央で密集しつつある敵に光の剣を降り注がせる。
 この猛攻に対し敵は反撃を試みつつも、密集したままじりじりと後退してゆく。


「……あとは任せたで」
 マーベリックが最後の力を振り絞って苗木を突き刺し仰向けに倒れ、イストテーブルも少し後ろで倒れていた。だが振り返る余裕は無い。既に他人を回復する手段は尽きたのだ。
「もうひと踏ん張りです、えーい!」
 倒れるイストテーブルの横についたアプリが、仲間を鼓舞してパンプキンボムを投じる。
 今のマーベリックの攻撃で1体が崩れ落ち、残るゴーレムは3体となっていた。その3体とも暴走状態で、ギアスと多重の麻痺が掛っているものの、
「ワタシたちノオウのタメに……」
 相変わらず同じ言葉を繰り返し、数が少なくなった分、無軌道に動き回り攻撃を放ってくる。
「期待してるから、派手に決めちゃってね」
「このっ、とっとと倒れやがれ!」
 ミシェルが奪った力を付与されたコンラッドが、怒声と共にオーラの刃を放つ。
「怪我の酷い者は下がるんだ」
 クトラが仲間に呼びかけるが、彼自身も限界まで仲間を回復しており、攻撃を受ければ耐えれそうに無かったのである。
 次の瞬間、ガシャン! という音と共に1体の足にトラバサミの歯が喰い込み、その動きが止まる。
「今だ攻撃を集中しろ!」
 その罠を仕掛けたウォルターの号令に、仲間達の攻撃が集中する。
「よし、仕留めたよ!」
「ワタシ……ウノ……め……」
 止めを刺したのは、リーゼリットが掌の上に具現化させて投じた棘の槍。この槍に胸板を貫かれたゴーレムは、天井を仰ぎ見ながら崩れ落ちる。
「キャアッ!」
 しかし、次の瞬間悲鳴が響く。
 別のゴーレムの放った衝撃波を、もろに喰らったリーリアの体が吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられて崩れ落ちた。
 限界まで仲間を回復していた為、その攻撃に耐えきる事が出来なかったのだ。
「よくもっ、私の必殺・ぐらびてぃー!」
「もらった……散れ……!」
 ガルが高重力でゴーレムを抑えつけたところに、シェミアの落とす暗黒の大瀑布。
 闇のオーラに押し潰され動かなくなったのを確認たシェミアが、最後の1体に顔を向けると、
「こんなので私を止められると思ってるのっ?」
「貴女で最後です。使命から解放されゆっくりお休みなさい」
 ヨツハとマウザーが連続で攻撃を叩き込んだ所に響く哄笑。
「汝等の王の笑い声に包まれて逝くのだ。幸せだろう」
 アニールの紋章を描いたクロウリーの声は届いただろうか? 最後のゴーレムも前のめりに倒れ、遂に天槍の中枢を護る12体のゴーレムは、全て駆逐されたのである。


「どうだ! 天槍ダンジョン、これで完全制覇だーっ!」
 アンゼリカがドン! と叩いた無い胸を張る。
 11回も天槍探索に赴いた彼女にとっては、喜びもひとしおなのだろう。
「任務完了だ」
 カケルが刃を鞘に戻して口を覆うマフラーを下し、散らばるゴーレムの残骸に合掌する。
「疲れた……」
「しかし、壮絶だねっ……」
 へたり込むティファナの前、倒れた仲間とゴーレムの残骸を見てヨツハが呟いた。
 とにかく狂王が作った物だ。なにかの拍子で復活でもされたらたまったものではないので、クレアが念の為見張りに立つ中、皆は怪我人の治療と、ゴーレムの残骸の片付けに掛る。
「うーん、特に変わったところは無いですね」
「いつも思うのですが、どういう力で動いているのでしょうか?」
 残骸を1つずつ手にとって調べるアルジェンに、同じ様に調べるレイラが問うが、
「あれ? この翼外れますね」
 アルジェンはそれには答えず、てっきり体の一部だと思っていたゴーレムの翼が、綺麗に外れた事に驚きの声をあげる。
「武器として使えそうですか?」
「背中にしょって使えるかもしれません。後で試してみましょう」
 レイラに応じたアルジェンが、ウォルターやヨベル、ガルと共に壊れていない翼を外して集める。
「じゃあ、こっちは運んでいいんだよね?」
 確認したガルがメイガスの腕で掴んだゴーレムの残骸から、ゴーレムの首が転げ落ちた。
「どういう趣味をしてるんだか……」
「……イヴは元気にしてるかな……」
 そこには、その首を拾い上げ苦笑するウォルターと、その顔に残る面影に呟くヨベルの姿があった。

「三日月遺跡とは関係ないのかな?」
「あるかどうかは分からないが、とりあえず調べてみよう」
 ルイシュが嬉しそうに言うと、キリィが応じて壁などを調べ始め、
「星霊建築的にはおかしなところは無いみたいです」
 途中からカナタも一緒になって壁を調べる。
「とりあえずこんなところね。後の治療は街に戻ってからね」
 ノイズ、ハインツ、イストテーブル、マーベリック、リーリアの5人は怪我の手当てをされ、リムィリファルァは満足そうに手をはたいた。
 5人とも意識は取り戻しているものの、戦闘不能状態で力なく壁にもたれ座り込んでいた。
「さて、怪我してる人には悪いけど、先に部屋を調べてしまわないかい?」
「この先に待つのは……何だろうね……」
 振り返ったワレモコウが提案し、皆が同意した後、通路の奥を見遣ったシェミアが目を細めた。
「アニールさんの秘密の部屋かぁ。彼を狂王たらしめたのは実はイヴさんへの慕情に起因する研究の果て、だったりしてね」
 イヴ似のゴーレムに守護させていた事から、そんな事を言って茶化すクトラ。
「狂王アニールが残したと思われる、古の秘宝……」
 そのクトラの言に耳を貸さずに呟くミシェル。
「過去の文献などがあるのではないでしょうか?」
「『物』があるのではなく『者』が居るもしれませんね」
 護られた『物』を予想するシーヴァーにマウザーが応じる。
「じゃあオレ一番乗り!」
「こらっ、抜け駆けはよくないだろ?」
 言うが早いかコンラッドが駆け出したが、シルグに首根っこを掴まれ足をジタバタさせる。
「さってさて、一体どんなお宝が〜」
 手もみしながらその背後を抜けようとしたリーゼリットも、コンラッドと同じ様にシルグに捕まった。
「皆で行った方が何かあっても対応できるであろう。焦らずとも直ぐに見れるのだ」
「小さい隙間があったら私が調べますね」
 クロウリーが窘める様にそう口にし、煙草に火を点けると、アプリが元気よく手を上げアピールする。
 一行は怪我をしている5人もおんぶして通路の奥へと歩を進める。
 そこにあったのは高さ4m程もあり、中央左右に輪っか状の取っ手の付いた両開きの黒く大きな扉だった。
「なんか、いかにもって感じだよう」
 その扉を見上げたクレアの口があんぐりと開いている。
「取っ手が付いてるという事は引くのでしょうね?」
「特に文字らしきものも記されていないな」
 フレンズで喚んだ星霊達を飛ばしたカナタが見上げて言うと、壁も丹念に調べたキリィが皆に報告する。
「案ずるより何とやら、扉は開くためのもの……あけましょう」
「はいはい、オレやる。オレ!」
 シェミアが言うのに被り気味にコンラッドが手を上げると、
「じゃあ片方は私だな」
「『せーのっ』、ふんぬらば!」
 とアンゼリカが名乗り出て、渾身の力を以て扉を引く。……が開かない。
「引いても駄目なら押すしかないでしょう」
 顔を真っ赤にして座り込み肩で息をしている2人を傍目に、前に出たレイラ。
 ヨツハとシーヴァー、シルグにガルも前に出て、
「うー、わんわんおー!」
 ガルの号令と共に5人掛かりで扉を押すも、これまたビクともしない。
「ふうむ。ゲートエンブレムは掛ってはいないんだが」
 腕を組み紫煙をたゆたわせたクロウリーが、解せぬ顔で扉を見上げると、
「ならこれでどうだ! えいっ!」
 後ろで見ていたアプリが、パンプキンボムを投げつけるが、全然届かず扉の左隅でパンプキンが爆ぜた。
「無理と思うわ」
「『あっ!』」
 呟いたミシェルの視線の先、その衝撃で扉が少しだけ右にずれ、皆から驚きの声が上がる。
「これって引き戸……だよね?」
「面妖な」
 振り返って問うリーゼットに、カケルをはじめとした皆が頷くと、皆で協力して扉を開いて中へと入る。
「あの取っ手にどういう意味が……」
 呟いたティファナが部屋の中に視線を戻す。
 中央に厳重に設置された黒い箱があり、その箱からなにやら管がいっぱい伸びて、周囲にある機械の様なものに繋がっている。
「ラッドシティみたいだね」
 ヨベルの発言は皆の思いを代弁したものであろう。いくつか古びた本があり、機械にも何やら今のものではない文字や紋章が刻まれおり、
「デモンの文字ではない様だね」
 とデモンワードを使うクトラが投げ出した為、ここはリードを持つカナタとクロウリーの独壇場となった。
 2人で文字を書き写しながら解読してゆく。
「あの箱と本以外に持ち帰れそうなものはなかったぜ」
 ひょいひょいと機械に上ったルイシュが戻ってきて報告し、
「あんまり触っちゃだめよ」
 手持無沙汰でいろいろ試そうとする仲間達をリムィリファルァが窘める。
「えっ!」
「まさか!」
 その時、カナタとクロウリーから驚きの声が上がり、
「何か分かったのでございますか?」
 問うマウザーの声に、皆の視線が2人に集まる。
「これはおそらく……ゼルフォニア鉱であろう」
「この箱の中身はたぶん……ゼルフォニア鉱です」
 2人が興奮気味にその名を告げる。
 『ゼルフォニア鉱』。
 マギラントに現れたエリクシルの妖精が口にしたその名。
 天槍の中枢で2人が発したその鉱石の名は、エンドブレイカー達の心の中を、さざ波の如く広がっていったのだった。



マスター:刑部 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:30人
作成日:2014/07/07
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