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闇夜に水から這い出る者は

<オープニング>

 水面が風に揺れ、起こされた小さなさざ波の音が響く水路。
 光を失った星霊建築の元、街の者達の多くも眠りについていた。
 そんなアクエリオの一角、水面が引っ張り上げられる様に上に伸びると、その水の塊が陸の上に落ちて水球になる。その水球から手足が伸び、手足の分だけ水球が小さくなると、水はローブを纏った老人の如きシルエットを象った。
 更にそこから、星霊ジェナスの様な水で出来た鮫が現れ、老人の周りを回遊し始める。
 その老人の前には、咆哮する獅子の姿を模した石像があった。
 それはかなり古くからある石像で、人気が高くないが観光コースなどで紹介される石像である。
 その老人が石像に掌をかざして腕を震わせると、ピシッ! という音と共に石像に亀裂が走って震え始め、暫くするとボロボロと崩れてゆく。
 その全ては夜の帳に覆われた闇夜の中の出来事であった。

「アクエリオ様から、またイマージュマスカレイドが現れたって連絡が来たんだよ」
 噂詠魔曲使い・ルトゥン(cn0053)が、テーブルを囲むエンドブレイカー達を前にそう切り出す。
「昼間暴れるのも居るみたいなんだけど、夜中に古い石像とかを壊しているのが居るみたいなのね。で、ここに『吼え猛る獅子像』って言う石像があるんだけど、おそらく、ここがマスカレイドの次の標的みたいなんだ」
 ルトゥンが近隣の石像と壊された日付を地図に書き込むと、成程、西から東に数日おきに動いている様子が見てとれ、次に『吼え猛る獅子像』が襲われるのも想像できる。
「石像は古い物ってだけで謂れはよく分かってないみたいで、壊す事にどんな意味があるのかはわかんないんだけど、マスカレイドがやるぐらいだから良い事の訳ないし、街の人達が不安がる前に片付けちゃってほしいんだ」
 とルトゥンが地図に落としていた視線を上げる。

「問題の水のイマージュなんだけど、前に破壊された石像のところで見た人が居たので教えてもらったんだけど、現れるのは夜中で、上陸してからウルカンダールっぽい老人のシルエットを象るわ。で、その周りを星霊ジェナスの様な鮫型のイマーシュ3体が、護衛する様に周遊するみたい。
 エンディングで見えた訳じゃないから、攻撃手段とかは分からないんだけど、この水のイマージュマスカレイド達は、一度攻撃されると、その敵を死ぬまで追い続けるみたいだから、その習性を上手く利用するのがいいと思う。
 問題は現れるのが夜中な事と、場所が水路に浮かぶ小島みたいな場所って事ね。……うーん、明るい内に渡って潜んでおくのがいいかな? ま、その辺は任せるよ」
 と、ルトゥンは方策については丸投げする。

「これまでのイマージュマスカレイドの事件と似てはいるけど、やっている事に『明確な意思』を感じられるわ。このイマージュ達と会話はできないから情報を得るという面では難しいけど、好き勝手にやらせる訳にはいかないよね?
 ここは魔王ゼルデギロスが封じられてた場所だし、これ以上事件が広がらない様に手を打たないといけないわ。不安は人の心を荒れさせるし、そうなるとソーンにつけ込まれ易くなるしね」
 そう言ってルトゥンは、立てた人差し指を左右に振るのだった。


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参加者
冬花・セレスティア(c02742)
真理の探究者・ルーシー(c03833)
氷茨の祭祀長・マウザー(c11248)
夜風・サスケ(c13730)
紅焔の邪眼・ミレイ(c22522)
日輪の勇者・シフォン(c36108)

<リプレイ>


「それにしても『また』ですか……」
「……以前とは随分スタイル違いますね。教主……生前は隠れて動いてらしたのに。……隠れる必要が無いから?」
 暗褐色のマントを羽織った冬花・セレスティア(c02742)は、上陸した島から水路に目を向け、水のイマージュがウルカンダールの姿を取る事を思い出し嘆息し、氷茨の祭祀長・マウザー(c11248)も顎に手を当てると、セレスティアの見る水路を見やる。
「これが『吼え猛る獅子像』か」
 獅子の頭部分をペチペチと叩いた夜風・サスケ(c13730)が振り返ると、
「そう言えば、襲撃のエンディングが見えた場所を少し調べてみました。概ね謂れは不明ですが狙われた石像などの名称は……」
 真理の探究者・ルーシー(c03833)は、同じ様なイマージュが狙った場所の特徴を列挙する。
「像の破壊が何かの解放に繋がる可能性があるな」
「そうですね。関連性はよく分かりませんが、破壊する事に意味があるのでしょうね」
 言って像から手を離すサスケにルーシーが頷くと、観光案内の地図に落としていた視線を上げた紅焔の邪眼・ミレイ(c22522)が、
「そうなると水神祭も出来なくなり、大いに迷惑だな」
 と赤い瞳を伏せる。
 皆は、年に一度の祭りを楽しめない民の心情を心配するミレイの心の広さに感心するが、
(「水神祭が無くなれば、せっかく練りに練ったデートコースが……」)
 彼女が彼とのデートコースに悩んでいたという事実を、皆は知る由もなかったのである。
「しかし……操っている『頭』は何処に居る……?」
「あるいはこれら全てが俺たちの目を欺く為の陽動……と言う可能性も無くは無い」
 小首を傾げた日輪の勇者・シフォン(c36108)に応じたサスケに皆の視線が集まるが、サスケは、
「……と、勘繰りだすとキリがないからな、そこらへんは悩みたい奴が悩んでくれ」
 とおどけた調子で肩を竦めてみせた。
「まぁ、黒鳥の様に水神祭に当日襲撃とかさせない様、見えたマスカレイドの絡む不幸なエンディングは、片っ端から潰していきましょう」
 と纏めたマウザーに皆が頷く。
 暖かな光を放っていた星霊建築の天井も黄昏を映し始めた事もあり、一行は当初の予定通り、息を殺して島に身を潜めたのである。


(「きた……」)
 暗がりの中、セレスティアの藍色の瞳の見つめる先、水面が引っ張り上げられる様に上に伸び、千切れた水の塊か島の上を転がる。仲間達もこの光景を見ているだろうか? どこから現れるか解らない為、分散して潜んだ仲間達の事を考えるセレスティア。
 水の塊から現れた鮫が宙を周遊し、塊が蠢くとローブを纏った老人のシルエットを象り、『吼え猛る獅子像』に向かって歩き出した。
(「像に近づく前に止めたいですわね」)
 背に触れたルーシーの手からマインドで伝わる言葉に頷き立ち上がる。闇を裂く眩い光が輝き、
「仮面憑き……お前達を斬れれば、よく眠れそうだよ!」
 太刀を煌めかせたシファンが老人目掛けて斬り掛ろうとすると、直ぐに反応した3体の鮫が、大きな口を開け牙を剥いてシフォンに躍り掛かる。
「主に忠実な鮫達ですこと……」
 虹の架けに留められた紫髪を揺らし、Namenlose Kulte -黒の書-を紐解いたルーシーが、詠唱と共に掌を向け、見えざる衝撃波を飛ばし一体を撃つと、別の一体には、羽ばたきにより巻き起こされた烈風が容赦なく叩き付けられた。
「やらせはしない。妄執に駆られる老人よ。その野望、私が砕いてみせる」
 紅の翼の起こす追い風に闇夜のマントと桜色のマフラーをはためかせたミレイが、キッっとその赤い瞳で睨みつける。
 現れたエンドブレイカー達の対処を鮫に任せ、像に近づこうとする老人の目の前に降り立つ影。
 その影がランタンに被されていた暗緑色の布を取り払う。
「さぁ、忍ぶ忍者がスポットライト付で現れてやったんだ。しばらく付き合って貰うぜ」
 言い終わらぬ内に手裏剣を投じて跳び退くサクケ。
 攻撃された事で老人の意識はサスケに向き、次々と水弾を放って攻撃を始めるが、今度はその背後から叩き付けられる吹雪。
「体が全て水ですから、凍りやすいという事はないのでございますか? っと……」
 凍る腕を押えながら振り返る老人は、ジュデッカを構えるマウザーの足元から、間欠泉の如き激流を吹上げさせる。それを嫌い顔を覆って跳び退くマウザー。その直後に、視界を奪う眩い光と轟音。
「……時折こう言う事が起こります。黒雲は喚べていませんが」
 それは空を見上げたセレスティアの鳴神演舞。楓焔を手に呼び寄せた雷撃は、轟雷となって老人と3体の鮫を撃ったのである。
「そうでした。忘れてましたわ」
 と口元を扇で覆うセレスティア目掛け、老人と3体の鮫達の攻撃が集中し、仲間達は慌てて目標を逸らすべく、老人と鮫に攻撃を集中する。

 夜の帳が降りた闇の中、いくつかの灯りに照らされた島の上で攻防は続いていた。
「あちらはサスケさんに任せて良さそうですわね」
 サスケを攻撃する老人。手足が凍っている為か、誰も居ない空間に空しく水柱が巻き起こる様を見たマウザーは、Casablancaを踏み鳴らして身を翻すと、宙を遊弋する鮫達に向き直る。
「水に風という相性はどうなのだろうな」
 小首を傾げたミレイの背にある翼が羽ばたき、烈風を生み出すと、その追い風を受けたシフォンが、日光剣の輝く刀身で鮫の胴を薙ぐ。鮮血の如く飛び散った水が地面に吸い取られ、
「そこはリアルに残るんだね」
 受けた傷口の形を残したまま咬みつこうとしてくる鮫に、シフォンは僅かに口元を綻ばせた。言っている間にも吹雪が舞い、
「イメージ的には凍ると落ちそうなものでございますが、元気に泳ぐのですね」
 凍りながら宙を泳ぐ鮫達を見て呟いたマウザーは、容赦なく鮫の体を凍らせていた。
「これで3体とも多重麻痺が掛っただろうか?」
 紅く輝く瞳で鮫の鰭を睨んだミレイが言う様に、彼女とマウザーを中心とした攻撃で、老人も含む全てのマスカレイドは、重ねられた麻痺にその行動が阻害されている。
「じゃあ一気に片付けるよ」
 暁の輝きを纏ったシフォンが、手首の動きだけで刃を一回転させると、己に食い付こうとする2体の鮫を豪快に斬り上げた。

「サスケさん、回復致しますわ」
「さぁ、1体ずつ確実に仕留めて参りましょう」
 ルーシーが描く癒しの魔法円が、老人の放つ水弾に穿たれたサスケの傷を癒し、その隣で振るわれたセレスティアの扇『楓焔』から紅葉が飛び出す。
 ……否、其は紅葉に非ず。セレスティアの手首から流れる赤き血。地に散った血痕が黒き猟犬となり鎌首をもたげ、遊弋する鮫に向かって躍り掛かる。
「あんまりしつこいとストーカーだと嫌われてしまうぜ」
 そんな鮫を相手する仲間達を背に、老人を水平に放った斬撃で裂いたのはサスケ。
「ちっ、狡からい事をしやがる!」
 仲間から回復の援護を受けつつ、老人を一人で相手取るサスケは斬撃を振るう為に踏み込んだ足に力を込めて跳び退くが、その着地点から勢い良く噴き出す水流。僅かでも勢いを削ぐ為に得物を振るうが、激しい水流が全身に痛みを刻む。
「承知ですわ。では疾く鮫を始末しますわね」
 サスケの方を見たルーシーは、彼が無用とばかりに開いた掌を向けたのを見て、鮫の方に向き直ると、見えない衝撃波を撃ち出す。その衝撃波にチャージを得たシフォンの一閃で、1体の鮫は姿を維持できなくなり、水に戻って霧散する。
「引き摺り落として下さい」
 セレスティアの振るう扇に呼応する形で数匹の猟犬が跳ね、鮫に喰らい付いて地面に引き落とすと、マウザーが凍らせた地面の上を滑ってその鮫へと肉薄する。
 こうして多重の麻痺を刻まれた水鮫の牙は幾度となく空を切り、エンドブレイカー達の連携の取れた攻撃の前に、水を散らして討ち取れていったのである。


「さぁ、画竜点睛を欠く事の無い様にしましょうか」
 振るわれる腕に水の滴る星纏の袖が舞う。
 セレスティアの元から現れた猟犬達が残る敵……サスケを攻撃する老人に、側面から襲い掛かると、老人の足元から巻き起こった津波が猟犬達を押し戻す。
「ならば上からですわ」
 流されそうになるのを堪える猟犬達を見たルーシーが、天に向かって掲げた腕を振り下ろす。
 その腕の動きに合わせて堕ちてきた暗黒のオーラが、老人を包んで津波が止まると、セレスティアの猟犬達が、ぬかるみを蹴って老人に牙を突き立てた。
 その暗黒と猟犬を洗い流すが如く、再び起こる津波。
 その水流を突き破った鋭い剣先が、老人の胸元を貫き凍らせると、袈裟切りに裂いた斬撃が、その凍った胸板ごと老人の体を切り裂いた。
「おいおい、俺が散々頑張ったのに、美味しい所持っていくなよ」
 その攻撃の主、マウザーとシフォンに抗議したサスケが、踏み込んで得物を一閃する。
 飛び散る多量の水に、水でできた老人の体が抗議する様に震える。
 その老人を囲む皆の耳朶を打つ詠唱。
「束縛の言霊……絡め取る視線、束縛する黒き鎖の如く現れよ。其の瞳に映りし全ての理と力を封ずる……印となれっ!」
 ミレイが詠み上げる古書『バシリスクの瞳』の詠唱。
 発動する禁断の儀式魔術、宙を彩る詠唱の文言が老人の体を縛り、棒立ちになる老人。
 その老人の身を裂いたのは『聖刃君守』。
 三重の水平の斬撃で5つに裂かれた老人の体は一瞬静止し、糸が切れたかの様に地面に水をぶちまけた。
「俺はただ仮面を砕き、不吉なエンディングをブレイクするだけだ」
 斬撃を放った得物をくるくると回して小脇に挟み、転げ落ちた仮面を踏み割ったサスケは、口元を覆う布を下してそう呟いた。

「イマージュだけでこのような行動をとるとは思えないが……」
 念の為、近くに何か潜んで居ないか警戒するミレイの後ろで、
「大丈夫とは思いますが、『吼え猛る獅子像』は破損していないでしょうか?」
「吼え猛る獅子ですか……部位所持者の獣王はライオンでしたけど、関係あるのでしょうか?」
 セレスティアに言葉に像に近寄ったマウザーが、誰とはなしに問う。
「やはり何らかの封印の要石なのでしょうか? イマージュのマスカレイドが人の多い所で殺戮を行おうとしていたのも、棘を集め封印を弱める為と考えれば、辻褄が合いますわね」
「まぁ、他の所に行った奴らとも、話を合わせてみる必要があるだろうな」
 ルーシーが持論を述べると、ぽんぽんと像の頭を叩いたサスケが応じる。
「ふわぁ。ねむねむ……なんか気が抜けちゃったよ。いつもは寝ている時間なんだし、とりあえず帰って寝ない?」
 シフォンが最もな事を口にしたので、それもそうだと一行は、後でルトゥンに報告する事などを話し合い、島を後にしたのだった。



マスター:刑部 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:6人
作成日:2014/07/30
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  • カッコいい8 
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