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レッドマイホーム

<オープニング>

●暗い我が家
 家に帰ると明かりがすべて消えていた。
 最近、仕事にかまけて帰りが遅くなる日が続いていたから、妻も不機嫌なのかもしれない。
 何か言い訳とご機嫌取りの方法を考えながら扉を開ける。
「ただいま」
 返事はない。
 だが、リビングのほうで小さな明かりがついた。おそらく妻だろう。私の声に反応したに違いない。
 そして、リビングに足を踏み入れると――。
「はぁい、お勤めご苦労様ー」
 見知らぬ女が真っ赤な姿で立っていた。
「……は? え、なんだこれ……」
 女の足元に妻が倒れている。その妻を中心に広がる赤い、液体。
「ああこれ? いやー、あんたを殺そうと思ったけど家に来てもいないしさ。愛しの愛しの旦那様がいつ帰ってくるのか聞こうと思ったんだけど」
 女はいたずらがばれたような顔で舌を出してウインクをした。
「つい、殺しちゃった♪」
「な、なんなんだお前! なんでこんな……あ?」
 背中にいくつもの衝撃を感じた。
 いや、刺されたのだ。その証拠に、私の胸から針のようなものが飛び出している。
「なんでって……あんたみたいにのうのうと生きてる奴がムカつくってんで十分でしょ」
 終始ころころと笑っていた女の顔が、最期に見たときだけ氷のように冷淡だった。
 
●暗躍
 先日の盟約の地での冒険。エリクシルによって得られた地図から、ジェスターと原初のスタッガーがマギラントに潜入しているらしいと判明した。
「まずはお疲れ様でした。まぁ、案の定というかご多聞にもれずというか……」
 牧歌的な自由農夫・クドリャフカ(cn0097)がエンドブレイカーたちにねぎらいの言葉をかけ、笑顔を見せたのも束の間。すぐにうんざりした顔になった。
「カーニバルが性懲りもなくマギラントにちょっかいかけてるみたいです」
 マギラントで起きているのは、黒の搭と緑の搭の要人がマスカレイドに暗殺されるという事件だ。
 要人といってもかなり地位の高い人物が狙われているわけではない。地方の村の村長とか、町のお役人とかそういうレベルだ。
「現場の指揮役とかそんな感じですね。逆に警戒が難しいですよね、これ」
 はっきり言ってしまえば、地位のない一般人が狙われているのと大差ない。しかしながら、こんな事件がいくつも起こると間違いなく市井は混乱する。
「徐々にマギラントを崩壊させて、その混乱に乗じてマギラントを乗っ取るつもりなんでしょうね」
 狡いですねー、と嫌悪感を隠しもせずに言ってのけるクドリャフカ。
 なんにせよ、マスカレイドにより事件が起きるのならば、そしてカーニバルがかかわっているのならば、その悲劇は防がねばならない。
「皆さんに行ってもらうのは、マギラントの緑の搭の領地ですね。ごく普通の町です」
 規模は大きくもなく小さくもなく。取り立てて特徴がないことが特徴といわんばかりの町だ。
 狙われたのは、この町の役人の一人。
 仕事を終えて帰宅すると、殺人鬼が家族を殺して待っていたというそんな感じ。
 被害者の家はやや郊外にあるので、家の中で多少騒ぎがあっても近所に気づかれはしない。
「逃がすわけにはいきませんからね。同じことをしましょうか」
 敵が正面から乗り込んできたのか、忍び込んできたのかはわからない。だが、どちらにせよ被害者の家で待ち伏せることができればそのまま迎撃すればいい。
 出入り口をふさげば逃がすこともない。
「旦那さんと奥さんには事情を話して潜伏させてもらえば問題ないでしょう」
 そんな場面、敵に見られて作戦がばれてしまうのではないかという不安がある。
 だが、クドリャフカは首を振った。
「旦那さんがいつ帰ってくるかもわからず、わざわざ家で待っていたんです。下調べはしていなさそうです」
 たまたまそこが役人の家だと知って乗り込んできたのだろう。
「まあ、あえて言うなら……遊んでいるんですよ」
 暗殺なら、本人の動きを追って一人になったところを襲えばいいのだ。
 そんな効率は考えない、卑劣な手段。
 あるいは、快楽殺人。
「そんな敵が相手ですが、確実にジェスターは暗躍しています」
 内容だけみればよくあるマスカレイドの殺人。だがその裏にはカーニバルの影がある。
「その目論見を打ち破るためにも、よろしくお願いします」
 そういって、クドリャフカは頭を下げたのだった。


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参加者
荒野の山羊使い・セヴェルス(c00064)
ごめんあそばせ・ウルル(c08619)
赤蝶花・ガウラ(c16139)
紫煙銃の忍者・ゲンジ(c34070)
双眸の紫水晶・アラレズ(c34367)
二律背反系魔法剣士・ローウェン(c35126)
ねこの森には帰れない・マロン(c35988)
全知の欠片・オーファン(c36027)

<リプレイ>

●ごく普通の夫婦
 早めの時間に件の家へと向かい、まだ朝の支度をしている最中の夫婦に話を通した。
 エンドブレイカーであることを明かし、事情を説明したところ、今日一日はこの家を自由に使ってくれて構わないとの返事を得ることが出来た。
 もっとも、夫は帰りが遅いので通常通り。妻は今日は友人の家で過ごすとのことだ。
 事が済んだら呼びに行けば良いだろう。
 しかし、この妻がけっこう話好きだったようで、そんな殺人鬼がこの辺をうろついてるなんて怖いわねぇ、という話から、マンボウはフグの仲間だ、という話まで発展した頃にはだいぶ日が高くなっていた。夫はとっくに仕事に行った。
「しゅ、主婦の世間話の恐ろしさを知りました……ッ」
「危機感がないというのも困りものですね」
 肩を落としてぐったりするねこの森には帰れない・マロン(c35988)を二律背反系魔法剣士・ローウェン(c35126)がなだめる。
「なにをどうやったらマンボウの話に!?」
 話が飛びまくると、最初の話題がなんだったのかもわからなくなるものである。主婦の不可思議。
「しかし、カーニバルですか。首領格のジェスターも相当の卑劣漢だと伺っておりますが……」
「銀の塔は本当に災難なんだよ。人生塞翁が馬?」
 荒野の山羊使い・セヴェルス(c00064)が答える。
 後継者に選ばれたと思ったらどん底に叩き落とされ、過去の見えざる敵に操られたり、風評被害を被ったり。
 挙げ句に仮面を被せられて使い捨てにされた。
 銀の塔主は助かったものの記憶を失ったという有様だが、それで良かったんじゃないかと思えるレベルだ。
 敵の手口としてありがちなのは、手駒を増やして使い捨て感覚で扱うこと。
 とすれば、今回の相手も、体よく利用されているだけなのだろう。
「まぁ、そんな話は言い訳にならないけどね」
「ったく、カーニバルめ。やってくれやがるぜ」
 セヴェルスの話に紫煙銃の忍者・ゲンジ(c34070)がため息をつく。
「全くもって参ったねぇ……こいつはうちの故郷も大変になってるってことだ」
「でも、相手がマスカレイドなら同じことだよ」
「ああ、全力で倒すぜ」
 まずは今日の戦いに備えよう。囮をひとり立てて、他の仲間は潜伏だ。
 そうして準備を始め、玄関以外の戸締まりなどを確認してきた赤蝶花・ガウラ(c16139)がリビングに戻ろうとすると、ちょうどセヴェルスが出て行くところだった。
「問題はなさそうかい?」
「それじゃあ、ボクは外に隠れるから中のことは任せたよ」
「中のこと?」
 聞き返す前に気付いた。リビングが少し騒がしい。
 入ってみると、全知の欠片・オーファン(c36027)とごめんあそばせ・ウルル(c08619)がなにやら言い合っていた。
「むがー、オイラは小さくなんかないのだー!」
「あらごめんなさい、でも私の方がほんの少し大きくてよ」
「これから成長するのだ! すぐにウルルを追い抜くのだー!」
「はいはい、かわいいかわいい」
 ソファの下に潜り込みつつ、ウルルがオーファンの頭を撫でたりしてる。抵抗しようともがくが、狭くて動けずされるがままである。
「何事なの?」
「小さいと隠れやすいって話から、どちらが小さいかって話になったみたいね」
 ガウラが聞くと双眸の紫水晶・アラレズ(c34367)がキッチンから出てきながら答えた。口をもぐもぐさせながら。
「あなたは何を食べてるの」
「ビーフシチュー。良い感じに煮込まれたのがあったから」
「……つまみ食いは程々にね」
 軽く諫めておいた。その間にも小さい2人はじゃれ合っていたようで、騒がしくなってきたところで上から声が響いた。
「もー、喧嘩しないで大人しくして下さい!」
 その場の全員が顔を上げると、棚の上で伏せつつ丸まったマロンが必死の形相でリビングを見下ろしていた。
「え、あ……なんです、か?」
(「猫ね」)
(「猫だわ」)
(「猫なのだ」)
(「猫ですわね」)
 気分はかくれんぼと言えなくもない。
 しかし、状況を把握しつつ囮のフォローのために飛び出せるベストポジションである。
「それじゃ、囮は任せたわ」
「ええ、そっちも上手く頼むわね」
「……」
 ガウラに声をかけたアラレズだが、何か言いたげに押し黙った。
「どうかしたの?」
「囮がコスプレして死んだフリしてても面白かったかも」
「殺人鬼が乗り込んだらすでに人が死んでたってどんな状況よ。それにコスプレって?」
「……マンボウとか」
「なんでマンボウ」
「そういえば、マンボウは産卵の時に数億個もの……」
 脱線した。
「んじゃ、俺も隠れてくるかねぇ」
「はい、手はず通りにお願いします」
 そう言ってゲンジが部屋から出て行くのを見送ったローウェンだが、ふと疑問が脳裏をかすめた。
「……どこに隠れるんでしょう」
 ゲンジはメイガスに乗っているのであった。
 ちなみに、リビング以外の家の明かりを落としているのだから、別の部屋に潜んでいれば問題ないことに後で気付いた。

●来訪者
 最近は少しだけ日の入りが早くなった気がする。
 辺りが暗くなってきた頃、家の明かりはリビングのみ灯っていた。
 人通りのなくなった道を歩いてきた女が、家の前に立ち、ドアに手をかける。
 鍵はかかっていない。
 そっと扉を開いて、中の者に気付かれないようにひっそりと侵入する。
「おっじゃましまーす!」
 なんてことはなかった。女は一気にドアを開け放ち、大声を上げつつずかずかと家の中に入ってきた。
「あれ、お留守? そんなことないよねー、明かりついてるモンねー?」
 ひょいっとリビングを覗き込む。ソファに腰掛けたガウラと女の目が合った。
「いきなり勝手に上がり込んでくるとかなんなの、あなた?」
「ちょこっと用があるだけよ。あんたに選択権はないから」
 女が腕を振ると、隠し持っていたとおぼしき槍がその手の中に収まった。
「ここの旦那を殺しに来たんだよねー」
「……そう。実は私たちもあなたを待っていたのよ。歓迎するわ」
 その言葉と同時に、気配を察知した女が文字通りリビングへ飛び込む。
「ちっ」
 セヴェルスのナイフが女のいた場所で空を切った。
「は? なにこれ……もしかして罠?」
「ご明察!」
 さらに現れたゲンジの早撃ちが女を襲う。
「ホントはあまり名乗りたくないんだがな……メイガス騎士が相手をしてやるぜ!」
「メイガス騎士かよ!」
 避けたものの、すでに女からは余裕の表情が消えている。先ほど攻撃をかわすためにリビングに飛び込んでしまった。後ろから現れた男2人によって玄関への退路は塞がれてしまったのだ。
 最低でも逃げ道は確保したい。
「お前たち、あっちの女を狙え!」
 これもまた隠していたのか、女の元から3体のアサルトバグが一斉にガウラに向かう。
「させなくってよ!」
「そんな攻撃お見通しなのだ!」
 ソファの下から飛び出したウルルとオーファンがアサルトバグの針を弾く。
 その2人の上を越えていこうとしたアサルトバグは、さらにその上まで跳び上がったアラレズのぶん回す大剣で、テーブルが壊されると共に、床に叩き落とされた。
 だが、ここまでは女の読み通り。
 潜伏していた者をあぶり出すためにアサルトバグをけしかけた。
 その間に、手近な窓へと向かう。
「い、行かせません!」
 飛び降りざまのマロンの一撃を、女は真横に飛んで避けた。随分と勘が良いのか今のところは攻撃を避け続けているが、忌々しげに舌打ちをした。せっかく近づいた逃げ道から遠ざかってしまったからだ。
「ちっ、どんだけ潜んでんだよ!」
「これで全員ですよ」
 唯一残った退路である裏口のあるキッチンへの戸を抑える形で立ったローウェンが言う。
 これで逃げ道はない。
「貴女の悪行もここまでです」
「……悪行ねぇ」
「腹立たしい、それだけで無関係な人の命を奪うなど、全く理解できません」
「そうねぇ」
 にやりと女の口端がつり上がる。
「マスカレイド、それだけで人の命を奪うあんたらはどうなの」
「――は?」
「いけない、耳を貸しては」
 一瞬の硬直。
 セヴェルスの言葉に我に返って顔を上げると、女の槍はローウェンのすぐ目の前に迫ってきていた。

●怒り
 わずかに槍の軌道が逸れたが、ローウェンの肩口が大きく斬り裂かれた。
「くっ!」
 太刀を振るうも、女は飛びのいてそれをかわした。
 だが距離が出来たおかげで、ガウラとアラレズが女を抑えるべく割り込み立ちふさがってくれた。
 油断したわけではないのだが。
「ふふっ、同じ穴の狢って思っちゃった?」
「……違う」
 肩の手当をウルルから受けつつも、ローウェンは今はそれだけしか答えられなかった。
 他の仲間たちが配下のアサルトバグの相手をする中、ガウラの爪と女の槍が打ち合い火花を散らしていた。
「あなた、そろそろ黙ってくれて良いわ」 
「お断り。私、あんたみたいなスカした女、大ッ嫌いなの」
 突き出された槍を紙一重でかわし、ガウラが懐へ潜り込む。
「それは光栄ね」
 光が爆ぜた。女の身体に直接気が注ぎ込まれたのだ。
「くそっ、この女ァ……!」
 睨みをきかせながらよろめく女に立ち直らせる間も与えず、ゲンジが紫煙銃を撃ち込んだ。
「よぉ……ムカついたから殺すってのは想像力の足りてねぇ証拠だぜ」
 すでにアサルトバグは全滅している。一斉攻撃すれば配下を片付けるのにそう苦労はない。
「想像力不足のついでに教えてやるよ。お前らのやっている事は銀の塔を苦境に立たせるだけだ。塔主様もそんな事望んじゃいねぇ」
「……銀の塔主は、私の主は、もう、いないのよ」
「何?」
「だッからムカつくんだよ! どいつもこいつも、のうのうとしやがって!」
 女の表情に陰りが見えた気がした。
 だがそれも束の間、わけのわからない理由を叫びつつ、女は槍を振り回す。
「それで、ここの家族を殺そうとしたのか?」
 セヴェルスの血が集まり、猟犬の形を成していく。
「どうでもいいだろ、んなこと!」
「その通りだけどね……ボクの目の前でやれるものならやってみろ」
「上等だッ!」
 襲い来る猟犬を女の槍が貫く。それと同時に猟犬が爆ぜ、深紅の身体が血雨となり女の身体に降りかかる。
「冬の嵐よ、全てを閉じ込めるのだ!」
 怯んだ女の隙を逃さず、オーファンの呼び出した吹雪が女の身体を包み込んでいく。
 体勢を崩して床についた女の腕や脚が凍り付いていく。
「くっ……」
「お見事ね」
「どんなもんなのだ!」
 褒められてちょっと嬉しいオーファン。
 労いをかけたウルルはそのまま女に問いかけた。
「あなたには聞きたいことがあるのよ。ねえ、どうしてここを襲ったの? ねえ、殺したらすっきりするの? ジェスターって奴に会ったの?」
「くく……くくく……」
「答えて」
「答えは、馬鹿め、だッ!!」
 氷を強引に引きはがし、女が飛びかかってきた。
「答える気なし、と」
 ウルルのいたところに鏡が現れていた。そこに映るのは槍を突き出した女の姿。
「っがぁっ!」
 女の攻撃自体が呪いとなって女に跳ね返る。
「……かぁー、ムカつくわ!」
「ムカつくから殺すっていうなら」
 右側から声が聞こえたと思ったら、声の発生場所が左後方の上まで移動した。
「私があんたをぶっ殺すのもその理由で充分よね?」
 壁を蹴って天井まで跳び上がったアラレズが、さらに天井を蹴って飛びかかりざまに斬りかかる……と見せかけて思いきり女の顔面を蹴った。
「……」
「……ぶ、っ殺、す――!!」
 力任せに振り抜いた女の槍が、着地前のアラレズの脚を裂く。
「ムカつく、ムカつく、ここから出たら出会うヤツ片っ端から殺してやろうか!」
「そんな……そんなことで、ただ人を殺すなんて」
 我慢の限界だった。
 爪を振りかぶり、マロンが駆けた。ただまっすぐ、女目掛けて。
「あなた達の思い通りになるなんて思うなッ!」
 抉れる感触と飛び散る飛沫。赤い液体が頬に掛かるのを感じた。

●それぞれの正義
 その場に崩れ落ちた女は、そのまま仰向けに倒れた。
 息を切らせたマロンが爪を持ち上げるが、そのまま固まってしまった。いや、よく見ると腕が震えている。
「とどめ、刺しなさいよ」
「……」
 身勝手な理由で殺戮を行う者相手に怒りは収まらない。だが、それでも最後の一撃を躊躇してしまう。
「私を殺して自分たちの正義とやらを証明しろよ! その時点で私と同じ殺戮者だけどねぇ」
「――ッ!!」
「ほらどうしたの殺人鬼! あはははは!」
「おばさん、馬鹿なのか?」
「は……おば……!?」
 きょとんとした表情でオーファンが言った。
「人を殺しちゃいけない事ぐらい、オイラみたいな子供だって知ってるのだ。しかも、おばさんの動機は身勝手過ぎるのだ」
「どんな理由があっても、殺しは殺しよ」
「それもわかっているのだ」
 それでも、為さねばならないこともある。
「私たちには力が足りません。いえ、無力と言っていい」
 ローウェンがマロンとオーファンの肩に手を置いた。
「貴女を殺すことでしか、悲劇を防げないのも事実です。だからこそ――」
 女の目を見据える。女はもう笑っていなかった。
 もうとっくに覚悟していたこと。それでも突きつけられると辛い事実。
 だから、ここでもう一度向き合うことにした。
「人々のために、この手を汚しますよ」
「……ちっ、うざったおごっ」
 忌々しげに舌打ちをした女の顔をアラレズが思いっきり蹴り上げた。
「で、とっとと殺っちゃって良い?」
「あ、ちょ、ま……」
 言いながら何度も蹴りつける。
「正義感とかそーいうのどうでも良いの。こいつが気に入らないから来たってだけだし」
「せ、せっかくちょっといい流れだったのに……」
「身も蓋もないのだ……」
 唖然としてその様子を見守るマロンとオーファン。
「まぁ、そういうのもありなのでしょうか」
 ローウェンが呟いたところで、アラレズに蹴り上げられた仮面が割れた。

「結局さ」
 女の遺体を消失させた後、セヴェルスは立ち上がりながら言った。
「マスカレイドになった時点で後戻りは出来ないんだよね」
「せめて魂は安らかに……」
 一緒になって祈りを捧げていたウルルも顔を上げる。
「この人もある意味、ジェスターの被害者だったのよね」
「カーニバルなんぞに踊らされやがって、馬鹿が!」
 ゲンジも悪態をつく。
 ジェスターが復活していなければ、こうはならなかったのだろうか。
 マスカレイドになったから狂ったのか。
 狂っていたからマスカレイドになったのか。
「今となっては、何もわからないわね」
 抑揚のない声でガウラが呟いた。
 どう考えようとも、自分が出来る範囲で正義を貫くしかないことを改めて感じさせられた。
「行きましょう。もう安全だって教えてあげないとね」
 明かりを消す。
 暗くなった家には静寂が舞い降りた。



マスター:宮内ゆう 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/07/31
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