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アクエリオ迎撃戦:激流を招く者

<オープニング>

●ストリームブリンガー
 彼は、悠々と暢気に海中を突き進んでいた。
 小魚の群れを追い立ててはそれを喰らい、気ままに生きていた。時には大物を仕留め、自分の力を誇示したものだ。
 そんなある日、彼の目の前に久々の大物が現れた。異様に巨大な一本角を生やし、全身が黒い羽根で包まれた、異様に巨大なオニキンメの魔物だ。
 彼は愚直にも、己の力を過信してその魔物へと向かっていく。

 ――!?

 魔物の頭部に生えた一本角が猛烈に回転して、周囲の海水を巻き込む。極大の衝撃波を内包した渦が、その一本角から放射された。
 一瞬にして、彼は新鮮なミンチへと姿を変えた。その肉片と血液は波に漂い大きく広がって、周囲に鉄の匂いを振りまいていく。

 ――ワタシハ、神ヘト蘇ル!!

 魔物の目的はアクエリオ。そこに住まう人々と水神そのもの。それらを滅ぼし、神になる。
 ニニギアメツチの配下である彼は、ゼルデギロスの力を得ると同時に、殉教したウルカンダール教団の狂信者の残留思念が見せる妄執に支配されたのだ。

 ――ワタシハ、神ヘト蘇ル!!

 そんな夢を見ながら、一本角をアクエリオに向けて魔物は進撃する。ちなみに、かつてシャチだった大量の肉片には、漸くサメが群がり始めていたところだった。

●ニニギアメツチ配下迎撃戦線
「アクエリオに潜伏していた教主槍ウルカンダールの狙いが分かったぜ」
 ウルカンダールはニニギアメツチをアクエリオに呼び寄せ、滅ぼそうと画策している。既に、ニニギアメツチの配下……海の魔物は、アクエリオに向かっているそうだ。アクエリオの深海は海と繋がっている。放置すればアクエリオがただではすまない事態となる。
「今までのアクエリオだったら、市街地への被害をある程度諦めて、アクエリオの水瓶の内部で迎撃する他なかった。俺たちは海の中で満足に戦えないからな」
 だが、と赤熱するスカイランナー・ジェット(cn0001)は言葉を続ける。
「アクエリオ様が完全な力を取り戻した今なら、その加護でアクエリオの外……海の上で、魔物を迎撃することが出来るそうだぜ!」

●その名はドリルオーガ
 ドリルオーガは巨大な一本角を生やしたオニキンメのような巨大な海の魔物だ。
 その体躯はランドホエールとまではいかないが、かなり大きいサイズと言える。特に目を引くのは、頭部から生えた巨大なドリル状の一本角だろう。
 その一本角は回転させることで衝撃波を生み出し、渦の矛を作り出す。この攻撃は遠くまで届くので油断できない。
 そして恐るべきは、全てを粉砕する一本角を回転させての突撃。その巨体に見合わぬ素早さから繰り出されるこれだが、食らわないことを考えた方がいい威力を持っている。
 また、その巨体を活かしての尾ビレの打撃は範囲が広く、食らってしまうと吹き飛ばされてしまう。

 ニニギアメツチの配下と海の中で戦えば、我々に勝ち目はなかっただろう。しかし、今回は水神アクエリオの加護がある。
 水神アクエリオより生み出された、特別な力を与えられた星霊ディオスと共に行動することによって、なんと海の上を、それも素早く移動することが出来るのだ。
 戦闘になると、敵を深海から引き釣りだし、水面を凍らせてエンドブレイカーが戦いやすい戦場を作ってくれる。
 さらに、エンドブレイカーが戦場からいなくならない限り、敵は戦場から離脱することができない。
 敵の領域に自分たちの領域を作り上げる、この強力な加護が我々の援軍なのだ。

「ウルカンダールはタイミングが悪かった……つまり、俺たちはタイミングが良かった。今なら、アクエリオ様が完全な力を取り戻しているからな」
 もし、水神アクエリオが完全な力を取り戻していなかったらアクエリオは凄惨なことになっていただろう。しかし、今は力を取り戻しているのだと、ジェットは前向きに言った。
 敗北或いは撤退する事態になってしまっても、同行する星霊ディオスに願えば、安全に撤退することが出来る。
 ――だが。
「加護があっても勝たなければ、アクエリオの被害は防げねえ……ってことだな。アクエリオを守るためにも、ニニギアメツチの配下を全力でぶっ潰してやろうぜ!!」


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参加者
野いちごの風・フェリチェ(c01453)
陽炎・ヒューゴ(c01745)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
常にハイテンションで喋ってる・クィ(c03420)
衛生兵・プラリネ(c21280)
杖の星霊術士・ミナ(c28404)
雨音・ココ(c30874)
赤風のスカイランナー・スライ(c32682)

<リプレイ>

●氷上戦域
「それじゃぁディオスちゃん、よろしくね♪」
 常にハイテンションで喋ってる・クィ(c03420)のキュートなウインクに、星霊ディオスも紳士なウインクで応じた。
 海上を疾走する星霊ディオス。かの力は、完全な力を取り戻した水神アクエリオが与えたものだ。
「頼りにしてるぜ、でも戦闘になったらちゃんと逃げてろよ?」
 星霊に追随するエンドブレイカーたち。そのなかの一人、杖の星霊術士・ミナ(c28404)のローブが潮風に靡く。
「力を取り戻したアクエリオ様のお陰で、街に被害を出す前に捕捉できたのは幸いですね」
「おかげでこちらも準備を整えることが出来ました。が、油断していい相手ではありません、気を引き締めて挑まないと」
 衛生兵・プラリネ(c21280)の言葉に、阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)が応じた。

 やがて、星霊ディオスがその速度を緩め、自分の足下へ視線を落とした。
 否、視線を落としたのではない。
 ――捉えた、が正しい。
 星霊ディオスを中心に、大きな波がうねりだす。それと同時に、周辺の空気が隔絶されたものとなり、エンドブレイカーたちの眼下の海面が、凄まじい速度で凍り始めた。
 星霊ディオスが捉えた存在は、まだ見えない。しかし、その存在感はエンドブレイカーたちに、これから戦う相手が如何なるものなのかを改めて知らしめさせた。
 ニニギアメツチの眷属にして、ゼルデギロスの力を得た海の魔物。
 それは海面に真っ黒な影を映してから、一際大きい飛沫を上げて、その巨体を海上に顕現させた。

 ――ワタシノ、邪魔ヲスルツモリカ!!

 全身を黒い羽根に包み込んだ巨体、それすら不釣り合いに見えるほど巨大な一本角。
 口から生えた牙は発達しすぎて、口を閉じることさえままならない。
 そして海の魔物のはずなのに、平然と浮遊してエンドブレイカーを見下ろしている。
 ぎしり、と氷を踏みしめる音。それは怖じ気から発せられたものか。
「ほう、たった一匹か…………圧倒的ではないッスか我々は! ツナ缶にしてくれるわ!」
 否! 赤風のスカイランナー・スライ(c32682)の中指が思い切り天を突き刺す!
「……さて、ここを通すわけにはいかないね」
「作戦は敵を解体しろ、ですね!」
 各々の武器を構え、陽炎・ヒューゴ(c01745)と雨音・ココ(c30874)が巨体を見上げて不敵に笑う。
「おらの職場を荒らそうとはふてえ野郎だべ、アクエリオじゃなくおら達の胃袋にご招待だ!」
 ゴンドラ乗り兼エンドブレイカーである、野いちごの風・フェリチェ(c01453)がソードハープの剣先を突き出した。

 巨体の魔物の名はドリルオーガ。アクエリオ防衛戦の火蓋が、ここに切って落とされた。

●強攻する奔流
 しかし、それはその直後の出来事だった。既にドリルオーガの巨体は眼前で翻っていた。
「な――」
 ――早い!! そう思うより先に、黒い尾ビレは自分たちを弾き飛ばしていた。
「うおおーー!!」
 咄嗟にフェリチェはソードハープを氷上に突き立てた。氷上を抉り大きな爪痕を残しながらも、何とか地面に足がつく。
 他に吹き飛ばされたのはヒューゴとプラリネ、スライのようだ。……前衛が悉く吹き飛ばされてしまった。
 ただ一人、持ち前の身軽さで尾ビレを避けたルーンが、弓の弦を引き延ばし、ドリルオーガに巻き付かせる。
「我が弓弦が絡まっては一本角も上手く回せまい」
 ぎり、と弦を引き絞るが――弦を通じて手に取った感触に舌打ちをした。なんたる堅さか!
 その後方で、ココが左目にオーラを集中させ、自分の弓『雨音』の弦を引き絞った。放たれた矢はドリルオーガの巨体に深く突き刺さっている。
「ナイスッス!」
 氷上に突き刺したエアシューズ『モノクロームウィンド』を引き抜いて、アクセルフォームを発動させながら全力疾走、スライが戦列に復帰する。
「コイツ、でかいくせに何でこんなにすばやいんだよ!」
「回り込まれないようにしないとね!」
 ミナの杖から放たれた漆黒のエネルギー球が、氷上を削りながらドリルオーガに衝突する。それに続いてクィが魔鍵を投擲するが、こちらは避けられてしまった。
「その巨体で器用に動きますね」
「切り刻んであげるから、覚悟してよね?」
 スライと同じく駆け出しながら、プラリネが拳に英雄騎士の幻影を重ねて、飛びかかりながら殴りつける。その反対側からはヒューゴが鬼神刀を抜く。チリン、と鈴の音がした刹那の後に、稲妻の残像を残す斬撃。
「氷の上でも樹は育つだ、自由農夫なめんな!」
 最後に駆けつけたフェリチェがバイオレットスモークツリーを氷上から生やすが――これも回避された。
「ぐむむ……なんて早さだべ!」
「まずはあの動きを封じましょう」
 すでに前衛であるフェリチェ、ヒューゴ、ルーン、プラリネはドリルオーガを囲い込むよう布陣している。
 その後方では、さらに動きを封じ込めるため、ココがクラビウスを解き放とうしていた。
 一瞬の間。
「来るッ! 気をつけ――」
 破裂音。回転する一本角が周囲の空気を巻き込み、その衝撃波が氷上を抉り、砕け散った氷がさらに粉砕された音だ。
 直後、宙を舞ったヒューゴの体が地面に打ち付けられる。
「――回復だ!」
 ミナが素早く切り替え、星霊オラトリオをヒューゴに差し向ける。
「ッ……侮ってたね、なかなか楽しめそうじゃないか」
 血の混じった唾を吐き捨て、先ほどとは違う笑みを浮かべるヒューゴ。突撃を食らってしまった。無論当たるつもりはなかったが、反射行動よりもドリルオーガの攻撃の方が早かったのだ。
 倒されていないものの、繋がっているのは首の皮一枚と言って良い。このダメージで済んでいるのは、自分たちの攻撃でドリルオーガの行動を限らせたおかげとはいえ……。
「これ以上は……!」
 暴食の使徒クラビウスを急ぎ解き放ち、ドリルオーガに噛みつかせる。クラビウスの歯の間から、腐食の蒸気が揺らいだ。
 それによってドリルオーガの攻撃範囲が狭いものとなり、初発に食らったような尾ビレ打撃の脅威は無くなった。
 自分を押さえつけるものを振り払おうと、ドリルオーガは一本角を回転させる。それによって、ルーンが握っていた弦の感触が宙に浮いた。さらに、衝撃波の渦が後衛のクィたちに襲いかかる。
「ここで倒れたら……オルカの仇を……!」
「施療します!」
 あらゆる動きを封じ込めているが、巨体故の一撃の重さが半端ではない。プラリネが癒しの拳を放ち回復させるも、クィの顔色に疲労の色が浮かぶ。
 他のものも消耗の色が濃厚に出ている。しかし、ここを通してしまえばアクエリオへの被害は免れない。負けてはならない――闘志を燃やして、地を踏みしめる。
「魚は網に捕われ大人しくして居れ」
 ルーンのハンティングストリングス、そのワイヤートラップが再びドリルオーガの動きを封じ込めた。

 ――ワタシヲ縛リツケルナッ!!!

 ドリルオーガが咆哮し、その巨体から黒い羽根が舞い上がる。それが、ルーンの見た最後の風景だった。
 破裂音と共にルーンの体が吹き飛ばされる。何とかスライがそれを受け止めたが、フィニッシュを受けたルーンに立ち上がる力は残されていなかった。
 それでも、戦いは続く。

●反撃の時
 ルーンが倒れたことで、前衛がドリルオーガを囲い込むことが難しくなってしまった。
「動きに注意して! 回り込まれたらまずいべ!!」
 フェリチェがバイオレットスモークツリーを放ち、ドリルオーガの体に樹を食い込ませが……ドリルオーガはお構いなしに距離を取っていく。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へッスよー!」
 前衛に交わるほどに前へ出ているスライが、挑発しながらバインドウィンドを放つ。こちらに気を引いてくれれば、陣形も乱されにくくなるかもしれない。
 だが無情にも、ドリルオーガは狡猾に、一番消耗している者をターゲットとした。幸か不幸か、そのターゲットはスライだった。
「あれ、ひょっとして自分ピンチッスか?」
 初手のアクセルフォームがここで響いてきたか……しかし、その表情は飄々としたものだった。
 ドリルオーガの一本角が高速で回転し、衝撃波を収束させる。その視線をスライから外すことなく、その巨体を突撃させる――寸前。

 ――グウッ!?

 ドリルオーガの動きが止まった。理由は分からないが、ついに現した隙を逃すわけにはいかない。
 ヒューゴが肉迫し、野太刀の一閃を放つ。舞い散る黒い羽根に混じって、何かが落ちてきた。それは……血に濡れたバイオレットスモークツリーの断片!
「これは……やりますね」
「だから自由農夫なめんなって、おらは言ったべ!」
 超侵食のダメージで動きが怯んだ。そこから導き出される結論をエンドブレイカーたちは全員理解していた。
「ここが正念場だ! 押し切るぞ!!」
 ミナがディスインテグレートを放つが、それに負けじとドリルオーガも一本角から衝撃波の渦を撃ち放つ。相撃ちとなったが、地に着いたのはミナの膝だった。
「あともう少しだ、頼むぜ……!」
 前のめりに倒れるミナの隣で、左目にオーラを集中させたココが弓を構える。
「はい、必ず仕留めます!」
 その言葉と共に放たれた矢は、正確無比にドリルオーガの急所を貫いた。
 エンドブレイカーが死力を尽くし、攻撃を集中させる。ドリルオーガからは最初の俊敏さは完全に失われていた。
 しかし、それでも早い。早いのだ。あっという間に距離を詰め、再び陣形を崩そうと身を翻して尾ビレを叩きつける。
 が、しかし。
「見切り……ましたよ」
 城塞騎士の成せる業か、それとも意地か。膝をつきながらもプラリネが、それを完全に受け止めた。
 今、ドリルオーガの動きは完全に止まっている。自分たちの消耗具合も鑑みて――もはや、次はない!!
「好い加減、倒れろ……!」
「アクエリオにはいかせねぇべ!!」
「大人しくツナ缶になれぇーーッ!!!!」
 ヒューゴのウィングスラッシュがドリルオーガの巨体を切り刻み、その光の軌跡に重なったバイオレットスモークツリーが直撃する。
 それがトドメだったのか、ドリルオーガの巨体は急成長する樹に飲み込まれ、樹木化した。
 そして、最後に飛翔したスライのソニックウェーブがドリルオーガの樹木に直撃し、跡形もなく粉砕したのであった。
 ……巨大な一本角だけを遺して。

●たのしいごはん
 激戦に疲労の色が隠せないエンドブレイカーたちだが、これで彼らの戦いが終わったわけではない。
 そう、ドリルオーガを食うべきか、否か。それを楽しみにして調理セットを持ってきた者がいるほどに、これは重要な問題なのだ。
 だが……だが!
「角です」
「角ですね」
 ココとプラリネが指先でコロコロ、いやゴロゴロと転がしている。そう、この巨大な一本角以外にドリルオーガの身は存在しない……存在しないのだ!!
「えーい! なんとかなるべ!!」
 やけっぱちに、巨大な一本角を両手で持ち上げて囓る。だが歯にそれが触れた瞬間囓ることを諦めた。噛んではいけない硬さだった。フェリチェは恐怖におののき歯をガタガタ震わせた。
「そ、そのうちデトリタスになるし……万事OK☆」
 無理矢理なクィの笑顔だった。ちなみにデトリタスとは、海底に堆積する腐食物で、海の腐葉土みたいなものである。
 暫時、沈黙。しかし準備をしてきた意地か、諦めきれないルーンが力を振り絞って呟いた。
「煮る……」
「ん?」
「煮るんです……出汁を取るんです……」
 再び、暫時の沈黙。そして食の探求者は立ち上がり、一斉に声を上げた
「それだーーーー!!!!」



マスター:炭酸水 紹介ページ
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いまいち
参加者:8人
作成日:2014/08/13
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