ステータス画面

今日はお安く買えないのですか?

<オープニング>

 お店の閉店が近いの時間帯に行われるお惣菜の値引き販売は、懐事情の厳しい者や、節約志向の消費者にとっては、なくてはならないイベントである。
 買う側からすれば古くなったお総菜を買ってあげるという気分だし、売る側から見ても売れ残りが出ないというウィンウィンの関係……だと思い込まれている。
 この日、砂月楼閣シャルムーンにある、バザール・ヨコシマでは、何か雰囲気が違った。
(「変ねえ……なかなかお安くならないわ」)
 買い物かごを肘に掛け、露天を巡っているご婦人の名はジブリ―ル。お買い物上手を自負し、絶対に定価では買わないというポリシーをもった強者だ。
「ねえ、おにいちゃん。もうこんな頃合いだし、もう半額にして頂戴よ!」
 ジブリ―ルは、お店の人がきっと値引きを忘れているのだろうと考えていた。
「ひゃ〜はっはっはっ、半額セールなんて無しぃ!! お惣菜が欲しかったら、定価で買いなぁ!」
 半額セールをしない。あまりに非常識な言葉にジブリ―ルはただただ驚き、刹那、表情を硬直させる。
「非道い! 定価で買えですって?! それじゃあ予定の半分しか買えないじゃないの……。悪い冗談はやめて頂戴!!」
「できねえ相談だなあ、今日からは組合の取り決めで、ぜーんぶ定価で売ることになったんだよ! ひゃ〜っはっはっはっ!!」
 すぐに正気を取り戻したジブリ―ルは気持ちを切り替えて、怒りを込めて値引き交渉を試みるが、お店のお兄ちゃんの決意は揺るがない。やがて値引き販売に関する攻防は他のお客やお店も巻き込んで拡大してゆく。
「なんと嘆かわしいことでしょう! シャルムーン様への愛を忘れ、不埒な金もうけにうち興じる商売人! そして、本来あるべき物の価値を貶め不当廉価販売を要求する消費者ども……」
「こちとら生活かかっとるんじゃあ!」
「うるさい帰れ帰れ〜! 」
 互いに要求をぶつけ合う両者の間に割って入ったきた神聖非営利騎士団を名乗る6人組は、瞬く間に大ブーイングの嵐に晒される。
「コンチクショウ、優しく言ってりゃあ、つけ上がりやがって! 皆殺しにしてやる!!」
 振り抜かれたムーンブレイドが空間を斬り裂き、その切れ目から放たれた月光煌星砲がお客に襲いかかり、魔力を練り上げた月光のカーテンがお店のお兄ちゃんの意識を奪い去る。逃げ惑う人々に向けた、マスカレイドたちの凶刃により、バザール・ヨコシマは地獄絵図のごとき惨劇が展開されるのだった。
 
●酒場にて
「大変です。砂月楼閣シャルムーンにあるバザール・ヨコシマで虐殺事件が起こることが分かりました」
 少し複雑な面持ちで、赤の魔曲使い・アンナ(cn0055)は話を切り出した。
「事件を起こすのは、マスカレドとなった、神聖非営利騎士団と名乗る勇者シャルムーンの狂信者たちです」
 砂月楼閣シャルムーンには、未だに勇者シャルムーンへの根強い信仰がある。今回事件を起こす神聖非営利騎士団ももともとは「反対反対」としか言えないへなちょこ狂信者の集まりであったが、マスカレイドの力を手に入れたことで、大それた手段で自己主張をするに至る。
「神聖非営利騎士団のマスカレイド構成員は全部で6人。男性が4人女性が2人ですが、能力に違いは無く、皆ムーンブレ―ドを使いこなすことができます」
 無差別攻撃の切っ掛けは集まっている人たちから大ブーイングを受けたことだ。もともと他人を批判することには長けているが、他人からの批判に対する耐性にめっぽう弱い者が強大なマスカレイドの力を手に入れてしまったが故の惨劇である。
「事件が起こるのは夕方。気合いのはいったお店のお兄ちゃんとジブリ―ルとの口論が進んだ頃合いです。マスカレイドの方から口論に割り込んで来ますので、機を逃さずに注意を引きつける必要があると思います」
 なおマスカレイドの6人ともが緑色のマントを着用し、6人で団体行動をしているので、動向を見極めることはある程度可能だろう。
「私だって夕方なら安くなるのを狙いますよ。だって古くなったら味も落ちるんですから、その分はおまけしてもらいたいですよね」
 ただ作って売る者の気持ちからすれば、美味しく食べて貰おうと作ったものを、わざわざ味が落ちるのを待ってから、安く買われると言うのは、とてもやるせない気持ちになる。
 やりすぎは別として、どちらにも言い分がある。ただし、どちらかの考えに偏り過ぎて完全に否定してしまったら、お買い物が楽しくなくなっちゃうと思いませんかと、アンナは首を傾げる。そして今ごろになって、勇者シャルムーンの狂信者が大それた行動を始めたのは腑に落ちないと付け加えて、締めくくると、話を聞いてくれたエンドブレイカーたちに丁寧にお辞儀をするのだった。


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参加者
わんぱく戦士・コンラッド(c00353)
西瓜鎧の女武者・ケイト(c00857)
ギ・ア(c01635)
阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)
銀牙狼・アルジェン(c02363)
小さな星・レリエル(c04789)
絶壁冥土・アリッサ(c05846)
赫焉咆吼・メラ(c35711)

<リプレイ>

●夕どきバザール
「おう、芋の天ぷらか。うまそうだな」
「おねえさん、お目が高い。揚げたてだから美味しいぜ!!」
 なら頂くぜという感じで、赫焉咆吼・メラ(c35711)が、それを口にするとサクサクの衣の下から芋のほっこりした甘さが口の中に広がる。
「熱いぜ、だが確かに美味い」
 そんな感じでお店を廻りながら、メラが興味の赴くままに、値切ることもなく食べ歩いていると、その無警戒な買いっぷりを心配に思ったのか、買い物かごを手にしたおばちゃんにぽんぽんと肩を叩かれた。
「おねえさん。買い物下手だねえ。もう少し待てば、もっとお得に買えるわよ」
「むぅ。いきなりなんだ。いったいどれくらい得なんだ?」
「ずばり、同じお値段で2倍買えるってことよ!」
「そいつぁすげえ!」
 おばちゃんは『古くなれば味が落ちる』と言うことには触れずに、時間が経てば2倍買えるとだけ伝えた。味覚が鈍感なおばちゃんにとっては、多少の味の違いなどどうでも良いことだし、たまに遊びにくるなら兎も角、毎日買うものであれば、少しでも安くしたいと考えたいというのがおばちゃんの発想らしい。
「わたしはジブリ―ル。特別に買い物術を指南してあげるわ。……に、しても今日はなかなかお安くならないわね」
 偶々出会った、メラとジブリ―ルの話が盛り上がる一方、阿頼耶の狩手・ルーン(c01799)は買い物をするふりをして、バザールを巡っていた。
(「何か買わないと、間が持たないですね。とは言っても何を買いましょうか」)
 護衛対象は最大で買い物客と店の人の全員。その多さを考えれば、先に敵を見つけて動きを抑えたいところだ。
「う〜ん、いざ選ぶとなると高いように感じるんだよう」
 お店も商売なのだから、損をさせてまで、得をしたいとは考えないが、買うなら安い方がよいだろう。そんなことを考えながら、小さな星・レリエル(c04789)は人混みのなかを歩きながら、逃走経路となりそうな道を見て回る。
 先に進めば、星霊建築特有の複雑な構造となっているため、追跡という展開になれば困難を極めそうだ。
 一行の皆が思い思いにバザールの各所に巡る中、緑マントの一団を最初に発見したのは、西瓜鎧の女武者・ケイト(c00857)だった。
(「いました。それにしても本当に目立つ容姿ですね」)
 が、バザールの何処かにいる仲間たちへ、敵を見つけたという事実を仲間に伝える手立てが無い。騒ぎが起こればすぐに気づくと思われるので、心配は無用だが色々な意味で心もと無い気がする。

●口での戦い
「ねえ、おにいちゃん。もうこんな頃合いだし、そろそろ値引いて頂戴よ!」
「ひゃ〜はっはっはっ、値引きは無しぃ!! お惣菜が欲しかったら、定価で買いなぁ!」
 任せなさいとばかりにメラにウインクするとジブリ―ルは声を上げた。直後、お店のお兄ちゃんは「来たな」とばかりに言い返す。
「待って下さい! お客様に対してその態度は失礼じゃありませんか? しかも値引きはしないですって?」
 言い返そうとジブリ―ルが声を上げようとした瞬間、割り込んで来たのは、絶壁冥土・アリッサ(c05846)だ。
「そもそも古くなり値打ちが下がった分を値引くわけなのですから、値引きは消費者の正当な権利かと」
「うちのは出来たてだよ! 言いがかりつけんじゃねーの。ひゃ〜はっはっはっ!」
「では、その食材はどうなのでしょう? この陽気です。古くなって味が落ちているのではないでしょうか?」
「なんと嘆かわしいことでしょう! シャルムーン様への愛を忘れ、不埒な金もうけにうち興じる商売人! そして、本来あるべき物の価値を貶め不当廉価販売を要求する消費者ども……」
 控えめな胸を張って言い放ったアリッサに、お店のお兄ちゃんが、くっと唇を噛みかけたその時、さらに話をややこしくするように割り込んで来たのは緑色のマントの一団――神聖非営利騎士団だ。
「待ちなさい。不埒な金もうけにうち興じる商売人とおっしゃいましたが、果たしてそうでしょうか? そもそも値下げセールというのは売れ残りを防ぐことによって少しでも売り上げを上げる商売の知恵。お値段重視のお客様にも喜ばれる一石二鳥、互恵関係にあるものです」
(「この言い争い、もう少し見ていたいような気もしますが、この好機に戦いに備えるべきですね」)
 騒ぎに気づいた他のエンドブレイカーたちは、騎士団がアリッサの長台詞を聴いている間に敵6人のひとりひとりをマークするように近づいて行く。
「ふっ、両者ともに了見の狭いことで。自分の主張を通そうとするばかりではなく、歩み寄る姿勢も見せないと、話だけが続くことになりますよ……。それに神聖非営利騎士団の皆さん、あなた方はどちらの意見にも反対するだけで、ご自身の意見が無いのですね。まさに笑止千万!」
 銀牙狼・アルジェン(c02363)の言葉に、そういえば……と、緑の一団に対する反感が高まる。それはお店とお客の両者からのブーイングという形になって表れる。
「コンチクショウ、この小僧が、俺たちのほうが頭いいんだぞ! つけ上がりやがって!!」
 アルジェンが大衆を味方につけたと思い込んだ神聖非営利騎士団はやつあたり気味に叫びながらムーンブレイドを抜き放つと、アルジェン目掛けて淡く輝く刀刃を振り下ろす。
「議論で負けるとなれば暴力ですか。どうしようもない人たちですね」
「うるさいうるさいうるさーい! 大衆を味方につけたからって調子にのってるんじゃねえよ!」
 紙一重で回避するアルジェン。虚しく空を斬る刃。突然の人刃沙汰にバザールは大騒ぎになる。

●力での戦い
「みんな落ち着け! ここはオレたちエンドブレイカーに任せておけ!!」
 騒ぎが騒ぎを呼び、バザールが大混乱に陥りかけたその時、わんぱく戦士・コンラッド(c00353)の叫びが響き渡り混乱を食い止めた。そしてケイトが群衆を背中側に引き下がらせるように促しながら敵騎士団との間に割って入る。
「バザールを襲って勇者シャルムーンへの信仰が強まるとでも? シャルムーンへの愛の形は人それぞれ、あなた方だけが常に愛を抱き続けていただなんて思い違いも甚だしいです」
「勘違いしてはいけません。これはシャルムーン様への信仰を忘れた愚か者への愛の鞭なのです! 愛深き故にその痛みも強くあるべきなのです!!」
「おぅ、ヤローども殺っちまえ」
 演説に対しわざとらしい拍手しつつ、ギ・ア(c01635)が放ったのはバレットレイン。直後、大量の魔力弾が雨あられの如くに騎士団の頭上に降り注いだ。
「不意打ちとは、卑怯な」
「ようするにシャルムーへの愛をこじらせたのだな!」
 次の瞬間、細糸の微かな光が閃く。夏のような熱気を未だ帯びる空気を斬る音を立て、広がる細糸のトラップ。ルーンが弓の弦を弾くようにして放ったハンティングストリングス。その筋が浮かび上るとき。全身を縛られる激痛と、痺れる様な鈍痛に捕らわれた騎士団のひとりはルーンを睨みつけながら、驚くほどあっけなく力尽きた。
 この戦いはただの戦いではない。誰かが得をする裏で、誰かが損をする。なら、より高い正解を目指すために、僕も考えたい。身を壁にして背後の一般人を守るようにしながら、鋭く踏み込み、大剣を突き出すアルジェン。輝く英雄騎士の幻影に包まれ、その莫大な力と共に繰り出された、グロリアスファントムが騎士団のひとりを打ち貫いて地に打ち倒す。虚しく裂けた緑色のマントが宙を舞った。アリッサは遠巻きに離れて行く人々の距離を目の端で測りながら、敵意をむき出しにする騎士団にかつて絶壁が鉄血と呼ばれていたころの遺品――と呼ばれるバトルガントレットを向ける。
「お買い物とは戦いです!」
 アリッサの抱くどこか痛々しい思いは、間もなく三十路に届かんとするケイト通じるものがあった。人々を背に庇うように敵と相対するケイトに敵の放ったムーンカーテンが直撃する。身体中に激痛が走ったが、負けるものかと鋭く睨み返した。
「何でも神聖とか付けるのは、ぼーとくだってばっちゃが言ってた!!」
 紅の飾り布を靡かせた大斧槍を構え、改めて批難を表明するコンラッド。敵数は4に減少し、一般人たちとの距離も充分に離れたと判じて、気合いを込めて紅の暴君と名付けた大斧槍を振り回す。頭上で高速回転する斧刃と共に突っ込んで来るコンラッドを相手に、為す術も無く騎士団のがふたりが斬り裂かれる。
「こんなの大したこと無いですよ。まだです――」
 ダメージを堪えて噛みしめた唇の端から血を流しながら騎士団のふたりがムーンブレイドを掲げる。ゆっくりと円弧を描くように振るわれた軌跡から、黄金色の光が放出された。その連撃をコンラッドは全身で受けきった。月光の魔力に抗じ切れずに体内からこみ上げてきた血が口から噴き出て飛沫となって散った。
「あと少しの辛抱だよう」
 レリエルが声をあげる。続いて朧月竪琴――脇に構えた竪琴を指で弾けば、雄大な曲の調べが紡がれる。
 敵の逃走の不安が全く無いと言ったらウソにはなるが、今は仲間を支えよう。レリエルはそう判断して大きな癒しの力を持つ翼のメロディを傷ついたコンラッドに向けて発動した。
「アハハハハッ! 楽しい、楽しいなぁッ!」
 爪から滴る血を散らしながら、四方に背中合わせに防備を固める騎士団に飛び掛かって行くのはメラ。狂気を孕んだ良く通る声で騎士団に叫び掛けながら、守りを固めているひとりに跨がり乗る。
「どうしたもう終わりかよ。もっとだ! もっと遊ぼうぜぇ!」
 地面に押し倒したひとりに馬乗りになった直後、赤く濡れた爪を縦横無尽に振り回す。まな板の上の肉のようにズタズタに引き裂かれた騎士団の男は、刹那、視線で暮れゆく天井の何処かへと祈りを捧ぐようにして、息絶え果てた。
「先にイッちまいやがったなァ! オレをイかせてはくれねェんだな!!」
「ま、パパッとな」
 不測の事態に備え敵の動勢を見ていたが、もはやその心配は無いだろう。アの腕から発射されたガントレットミサイルは轟音と共に飛翔を開始する。
「攻撃来るぞぉ!!」
 騎士団たちが緑のマントを投げ放ってミサイルを避けようとするが、何の効果もなく突き破られてられて、大量のミサイルがひとりに集中して爆発した。後には原型を止めないほどの肉片と化した遺体から煙が上がっている。
 この時点で生き残った騎士団はふたりだけになった。……ふたりの脳裏にマスカレイドの力を手に入れた時のことが蘇る。自分たちの考えは何だって押し通せる思った。劣ったつまらない他の考えはすべて力で駆逐できると確信していた。
「民間人に斬りかかることも厭わんとはな。シャルムーンの信徒の名が廃るぞ」
「いずれにしても、これで終わりです」
 背中合わせに包囲するエンドブレイカーたちを見据える騎士団のふたり。冷徹な眼差しを向けながらルーンは言い放つと弓弦を弾くようにして、何度目かの細糸を放つ。次いでアルジェンは前方に踏み込んで間合いを詰めると巨大な火柱と共にまとめて敵を斬り上げた。熱風が噴き上がって銀髪がふわりと逆立ち、莫大な破壊力をもった刃は炎の勢いも乗せて、容赦無くふたりを斬り上げる。
 そして神聖非営利騎士団、最後のふたりが、燃えさかる炎柱の中で倒れたのは間もなくのことだった。

●戦い終わって
 レリエルが手早くドローブラウニーを発動し、アリッサが熟練のメイドの技を駆使して後片付けをする中、遠巻きにしていた人々が戻ってくる。その様子見れば突然に現れたテロリストの凶行を食い止めてくれたエンドブレイカーたちへの感謝の気持ちと切実な生活感――早く帰って夕飯にしなければというような使命感が入り交じったような複雑なな感情が見て取れる。
「ありがとう……ですわ。私たち、殺されていたかもしれないのですね……」
「夜まで時間も少ねえしな、野郎共! バザール・ヨコシマ渾身の祝勝セールを開催するぜ!!」
 一般の生活とはかけ離れた暴力の応酬を目の当たりにして人々は表向きは平静を装っていても極度の緊張状態から解放されて力が抜けているようだ。
「祝勝セールときましたか。あくまでも賞味期限が危険とは意識させないつもりですね……」
「ぁ? 勝ちゃなんでもいんだよ」
 アルジェンが商人の強かさに感心していると、アが心底めんどうくさそうな物言いで、商売は勝負ごとみたいなものだから、どちらかが勝つものだと遠回しに言う。片づけも終わったし、これ以上長居をする理由もないけれど、皆、力が有り余っており、せっかくのお惣菜バザールだからと、祝勝ムードに乗っかってお買い物に巡りを開始する者も。
 買い物の仕方はメラやレリエルのように欲しい物優先な者から、アリッサやケイト、コンラッドのようにお値段に厳しい者まで様々だ。
「まぁ、値引きしないというならば、他所へ行くだけですけれどね」
 涼やかな表情で言い放ちつつ、アリッサは値下げされている果物の甘露煮を、疲れを癒やすには良いだろうと思って買い求める。
「そうかな〜、この味はうちにしか作れないプレミアムだぜぇ〜」
 確かに他で買えないものなら理由も無く値引く必要などない。それでも値引くのは祝勝のムードを皆で喜びたいから、そして多くの人に自慢の味を知って貰いたいという純真な気持ちを持つ者も少なくない。
「オレも小遣い、少ねぇからなー、もう少し値引いてくれると嬉しいなー」
「他のお客さまの手前、あんたにだけ安くはできねえな。その代わり小分けにして売ってやるよ」
 もともと安くはなっていたのだが、さらに値引き交渉をしてみたコンラッドにお店の人は精いっぱいの妥協点を示した。
(「どうやら私が思っていたより、お店の人もお客さんもなかなか強かなようです」)
 お店とお客の様子をみながら、ルーンは穏やかに目を細める。過激な値引きが横行すれば売り上げもある人気店がある日突然倒産してしまう恐ろしさを知っていたから。
「これが経済というものですね」
 アルジェンは活況を呈しているバザールの様子を見渡して、瞬きを何度か重ね。物の価値は結局は需要と供給のバランスという大きな流れの中にあることに気づく。
「大丈夫。供給が多くなりすぎれば生産は減り、物が少なくなれば価格のバランスは取れます」
 必要以上のサービスや売り手が損するような値付けは一過性のもの。いつも半額で売るつもりなら半額で売っても利益がでるように調整するという手もあるのだ。
「アハハハッ! 食った、食った、いい気持ちだぜぇ!!」
 そう言って、メラはベンチに腰を掛けて、静かに瞼を閉じて深呼吸をした。
 かくして新たな境地を求めて進化し続けるバザール・ヨコシマの未来は、エンドブレイカーたちの活躍によって守られた。そして明日からもお客との勝負が繰り広げられるだろう。



マスター:もやし 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/09/12
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