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闇黒とルーチェ

<オープニング>

●闇が襲う
 ゆっくりと空が暮れ行く。
 高い空はどこかへと過ぎ去り、天井に映る空模様は秋色を見せるようになった。
 透き通るような空色から、茜色へと変わり。そして次第には深い紺碧で覆われるのだろう。輝く星を抱きつつ、闇に閉ざされたかのような世界へと。
 少しだけ、陽が暮れるのも早くなった気がする。紫煙の漂ういつもの空を眺め、少年はそう想う。
 ぽつり、ぽつりと。辺りに明かりが灯りだす。
 闇を恐れるからこそ、人々は『光』を求めるのだろう。しかし恐れと共に、癒しも感じさせる闇は不思議なもの。好きかと問われれば否と答える。けれど無くなっては困るとも思う。
 村中に灯りが広がるのを合図にするように、少年は向きを変え歩み出す。帰路へとつき、闇に包まれ今日1日を終えるのだ。――そう思ったのも束の間。目の前で突然倒れる老人の姿が見えた。
「……っ!」
 驚き足を止めれば、向こうに立つ女性の姿。長く美しい白髪が、風に揺れる。
 背に羽根を持つ女性は、どこか不気味だった。その闇のように黒い瞳と視線が合えば、彼女はにやりと笑む。その笑みは、先ほどまで彼女が纏っていた不気味さを、より一層際立たせる。
「う、わあ……!」
 一歩後ずさり。また一歩下がり。少年は駆け出す。
 早く、早く。ここから立ち去らなくては。嫌な事が起こると、本能が告げている。

 ――闇が。闇が。迫ってくる。

●覆う闇影
 かつてバルムントの鍵で37体のマスターデモンを地上に呼び出した、世界革命家『鉄の首・バルムント』によって引き起こされそうになった、世界終焉の1つ。
 それが世界革命。
 当時の革命は、ラズラルドを始めとする七勇者と仲間の勇者によって阻止されたと語られる。

 デモンの事件が囁かれるようになった。
 再び訪れるであろう世界の終焉。夜の訪れ。――その破滅的な未来を阻止出来るのは、現状エンドブレイカーしかいないだろう。
 だから鞭のソーンイーター・ユリウス(cn0182)は、酒場にて今回の事件について口を開く。
「デモンと融合した人間、デモン人間が各地に現れている」
 新たなる敵、デモン人間。彼等は共通して影の中へ姿を隠す能力を持っている。影から影へと移動する事も可能で、中に潜んでいながら外を伺い、音を耳にする事も出来ると云う。
 そんな特性を胸に置き、今回の事件を片付けて欲しいと。ユリウスは本題を語りだした。

「向かうのはラッドシティ内の小さな村」
 夜の訪れが近付く頃、敵は現れる。
 闇に潜み突然姿を現す為、事前に倒す事は不可能。デモン人間が姿を現してからでないと、動けないのは些か不利か。しかしデモン人間は影の中から外に出た場合、10秒ほど行動が全く出来なくなる。そのうえ、一度出てしまうと24時間経過するまで再び影の中へ入る事は出来ない。
 ――この特性を利用すれば、敵を討つ事は十分可能だろう。
「具体的には、動きが止まっている間に包囲。その後に村人を落ち着かせる事かな」
 敵は『逃走する相手』を優先的に狙う為、村人を戦場となる広場から遠ざけるのは得策では無い。けれどそのまま放置しては、彼等は逃げ出すだろう。だから一ヶ所に固め、保護するのが1番。
「村人のほうは、僕がなんとかしておくから。君達はデモン人間と配下をお願い」
 自身の役割を語ると、少年はエンドブレイカーが挑むべき敵の詳細を語る。
 デモン人間は1体。デモンの翼を背に生やした、女性の姿をしている為一目で分かるだろう。配下として2体の犬の形をしたレッサーデモンを連れている。纏う雰囲気は、まるで狂犬のよう。
 どちらもデモニスタのアビリティを使用するが、デモン人間だけは手にした紫煙銃で癒しの術を持つ。戦力的には大したことは無いので、しっかりと立ち回り、素早く終わらせる事が出来れば被害を出さずに終える事も出来るだろう。
 ――今回の最大の問題は、恐れる人々の心。
「デモン人間の目的は、死の恐怖によって人々をデモン人間に目覚めさせる事」
 禍々しいその姿だけでも、村人は恐怖を抱くだろう。突然現れ、人を襲おうとするその様子を見れば、更に心に傷を負うのは確実。ただ戦い防ぐだけでは、彼等の闇を晴らす事は出来ない。
「だからさ。戦い方なり、戦後なり。彼等の闇を晴らす事をして欲しい」
 彼等を守る、エンドブレイカーと云う存在を強く意識させる事。強い光で辺りを照らす事。闇への恐怖を安らぎへと変える事。――その方法は何でも良い。彼等の恐怖を和らげられれば。
 特に恐怖を覚えるのは、一番小さな少年のキース。彼が恐怖に包まれれば、その恐怖は村人へも伝染するだろう。彼の恐怖を癒す事が、先決かもしれない。
「まあ、具体的な方法は任せるから」
 まずは優先すべき、デモン人間の撃破をお願い。そうユリウスはいつもと変わらぬ無表情で語る。けれどその言葉の後に、僕は自身の役割をしっかりやるから。と言葉を添えた。

 村人達の心に闇が残れば再び似たような事件が起きる。
 その為には彼等の心に、『希望』という光を宿さなければいけない。
 どのような行動を取り、言葉を綴るか。
 その結果によっては、彼等の未来は更に明るいものへと変わるかもしれない。


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参加者
花暮・ハル(c02018)
揺らぐ水瀞・シウ(c06844)
幸憑き・クニークルス(c08070)
薄暮の魔女・アトロポス(c17639)
夜機巧少女・ルミティア(c30986)
ナイトランスの自由農夫・ベネディクト(c34979)
罪咎の星花・レイチェル(c35327)

NPC:鞭のソーンイーター・ユリウス(cn0182)

<リプレイ>

●闇包
 遠い空模様はどこか陰りを帯び、朱色へと映り変わる準備をしている。
 漂う紫煙の奥の空が闇夜に包まれても、ラッドシティの星霊建築が映す空は星が輝く。
(「大丈夫、明けない夜はないわ」)
 見上げた空の色をを薄茶の瞳に映しながら、花暮・ハル(c02018)は過去の事を胸に想う。
 壊れたあの夜の事。怖くて眠れなかった夜から、零れる朝の陽がとても綺麗だった記憶。――その陽がとても嬉しくて、幸せだった。
 夜の恐怖と光の幸せを知っているからこそ、彼女は光のようになりたいと想う。
「さあ、往くよッ!!」
 広場が見えたところで声を掛ければ、皆の駆けるスピードが上がる。段々と近付く空間。まばらに散る人々――そして中心に佇む、老人を見つけた。
 まだ敵の姿の見えない状況に、揺らぐ水瀞・シウ(c06844)がほっと安堵の息を零したのも束の間。老人の足元の影から、ずるりと伸びる『何か』が見えた。
 気付いている人はまだいない。だから――。
「気をつけろ! そいつは悪いデモンに乗っ取られた人と、暴走したレッサーデモンだ」
 広場へと足を踏み入れつつ、ナイトランスの自由農夫・ベネディクト(c34979)は大きな声を上げ警告を告げる。透き通る瞳に真剣さを宿した彼は、普段の柔和な顔付とどこか違う。
 その声とほぼ同時。薄暮の魔女・アトロポス(c17639)は、敵とそのすぐ傍に居る老人の間へと駆ける。紅玉を輝かせつつ、仕込み杖コル・ヒドレの銀色の柄を握り彼女は敵と向き合った。彼女の動きに合わせるようにハルが、幸憑き・クニークルス(c08070)が、夜機巧少女・ルミティア(c30986)が。包囲するように即行動へ移す。
 ――それは敵が動き出すまでの、僅かな時間の出来事。
 影から姿を現したデモン人間。暫しの沈黙を破るように、怪しく伸びる背の翼がばさりと音を立てる。
 突如現れた人影と、巨大な犬の影。
「――――っ!!」
 声にならない悲鳴が、随所から上がった。
 悲鳴は恐怖を招き、恐怖は人から人へと移りゆく。
 混乱。心を侵食する闇。閉ざされる未来。
 第一に保護すべき老人の手を取った後。鞭のソーンイーター・ユリウス(cn0182)は陣へと着く仲間達の輪から外れ、広場の奥へと駆ける。その次に保護すべきは、出口に近い人物。
「ユリウスくん、村人達の事、宜しくね!」
 ハルが言葉を掛ければ、少年は顔だけを向け小さく頷いた。老人の手をしっかりと取り誘導する中、共に保護を行う2人の男性が端へと駆けるのが見える。その内の1人の顔を見て、クニークルスは笑みを浮かべた後村人へと視線を移す。
「怯えないで、逃げる必要なんてない」
 混乱する人々を落ちつけようと、言葉を零した。はらりと落ちる漆黒の羽根。
「大丈夫、ハル達はエンドブレイカー、よ!」
「怖い夜は、私達が追い祓います」
 ハルが言葉を続ければ、力強い声色で罪咎の星花・レイチェル(c35327)も紡ぐ。
 エンドブレイカーからの言葉は、どれだけ恐怖に満ちた人々を救いへと導いたのか――。
 村人を背に庇う陣についたベネディクトは、闇を否定するように光満ちるカンテラを揺らした。

●翼
 広場内には散らばる村人達。混乱する彼等の保護には、暫し掛かるだろう。
 巨大な翼を広げる目の前の異質な存在を見ながら、アトロポスは仕込み杖を握る手を強めた。遠距離の手段しか持たぬ敵ならば、こちらも遠距離主体でも十分反撃は出来る。
 ――しかし人を庇いながらとなると、それは少し難しい。けれど宿る意思は1つだけ。
「貴女に奪わせてはあげませんよ。何一つ、決して」
 闇色の瞳を見つめ返し、彼女は武器を構えそう呟く。隙を作るようにハルが天使の翼を広げると、それは氷へと姿を変える。陰ゆく光を浴びて輝く翼は、更に光を強めるように光を纏いながら、鋭い一刺しを繰り出した。
「こう見えてもハル、強いのよ?」
 揚々と語ればパキリと冷たい音が響き、女の紫煙銃を握る腕が凍て付く。
「……恐怖が、欲しいの?」
 きゅっと唇を結んだ後、女は不気味な笑みを浮かべ言葉を紡いだ。その冷たい言葉は、エンドブレイカー達の身体にじわりと沁み込むよう。
 けれど動揺したような一瞬の動きを見逃さず、シウは分身体と共にその身に襲い掛かる。けれど相手は傷を受けても倒れる事は無く、手をかざしシウに向け黒炎を放った。
 燃える闇の炎。光を生み出すはずの炎だが、放たれた黒炎はどこまでも禍々しい。
「だい、じょぶ。絶対、まもる、から」
 けれど強い意志を宿したまま、彼は村人に向け零した。――見た目の恐怖程、その威力は大したことは無い。彼等の実力ならば、十分に勝てると想える。だからあとは、希望を与えるのみ。
(「お願い、シエル。力を、貸して――」)
 デモンの翼を、レイチェルは広げる。しっかりと向き合ったデモンを確かに感じ、閉じていた瞳を開くと輝く霄色の瞳で敵を見る。
 直後放たれるのは、翼からの光線。
 闇の翼は敵と同じ。けれどレイチェルの翼から生み出されるのは、眩い光。闇を払い、打ち砕く力だと彼女は思うけれど――恐怖に包まれた村人にはどう映るのか、今は分からない。
 光の中クニークルスが纏めていた髪を解けば、艶やかな黒髪が広がる。その髪先が意思を持ったかのようにうねれば、毛先には牙のようなものが現れた。ぐるりと動いたかと思うと、その牙がきつくきつく敵の身に喰らいつく。その力は、髪が変異したとは思えない程のもの。
 5人がデモンの女を抑える間。影犬達は、唸るような態勢の後一気に駆け出す。その方向から、狙うは老人か。包囲の陣になると、配置が分かり辛く彼等にとっては『前』と云う概念が無くなるのかもしれない。――けれどその動きを見逃さずルミティアは、すかさず広げた氷の翼で敵の身を刺す。
 その横を駆け抜けるもう1体のレッサーデモン。影の動きは素早く、広場の端へと真っ直ぐ向かっていく。端には避難中の村人が――影犬は攻撃をしようと、黒い分身を作り出す。迫る2体の闇に、女性の恐怖の声が上がる中――。
「っ……!」
 2体の影が襲ったのは、村人を庇うように腕を広げたベネディクトだった。
 抉られ、突撃され、腹を抑えつつも彼は笑う。純粋さを失わぬその瞳で、彼は村人に安心させるように手をひらひらと振った。
「大丈夫大丈夫。少しくらい強くないと、遣り甲斐がないしね!」
 彼が余裕気に笑う中、メイガス纏うルミティアの振るう氷の翼の羽音が響いた。

●対と同
 光と闇。天使とデモンの翼が戦場を行き交う。
 敵を抑えつつルミティアは一般人には理解出来ない言葉を紡ぐが、相手はその言語を理解した様子は無い。――それは彼女が聞き取る事は元々出来ないのか、それとも聞き取る準備がされていなかったのか。分からない。
 銀杖を掲げたアトロポスが高重力で敵を押し潰せば、援護するように遠くからベネディクトの幻惑のキノコが煙を上げ爆発する。抑えで傷付いた彼に向け、レイチェルの癒しの羽が吹き荒れる。
 きらりと光ったのは――シウの創り出したデモンの刃。
 敵の持つ力と酷似した能力を操る事は、彼自身分かっている。けれどこの力は違う――。
「強い力、って、使う人の気持ち次第、で、毒にも薬にもなるん、だよ」
 ゆるりとした口調で。けれど心からの言葉を紡ぐ。――掲げた腕を動かせば、その意思に添うように宙を乱れるように飛ぶ邪剣達。
「これは、護るために、使う」
 ――だから、怖がらないで。
 敵を切刻む邪剣を敢えて見せるように、シウは呟いた。振り向き1ヶ所に固まる村人達を見れば、彼等を守ると象徴するように。輝くアトロポスの用意したランプが見える。
 その光を受けて、きらりと輝くのはクニークルスの纏うドレス。闇に瞬く星を抱くそのドレスは、大切な人からの贈り物。
「『夜』にだって、煌めきはあるのよ」
 微笑みながら、彼女は語る。シウと同じように邪剣を生み出す彼女も、夜の力と同じ事は分かっている。傷付けるものでは無いと、伝えたい気持ちも同じ。
(「私の願いに力を貸してくれる、愛しい友人よ」)
 心で語り掛けつつ、彼女は邪剣を放つ。1つ、2つ――しっかりと敵に命中したその邪険がふっと消える中、深い傷を受けた女は苦しそうに傷を手で覆い。
「夜を……、夜を……!」
 狂ったように語る。保護を考え相手の冷静さを奪う手段を用いなかったが、それでも彼女は人の時とは変わってしまったのか。ただ禍々しいその翼を羽ばたかせ、黒炎を燃え上がらせた。その身を燃やす炎にハルは声を上げる事も無く、ぐっと堪える。
 人々を安心させたいから。強く振るまい、敵を見据える。背に輝く純白の翼を大きく広げれば、その翼は強い光を帯び剣へと変化する。
 宙を泳ぐ輝く剣。傷を抉り、闇を照らし、全てを消し去る聖剣のように。
「在るべき場所に、お還り」
 柔らかな笑みと眼差しで、ハルはそう語り掛ける。苦しげな女は態度を返しはしないが、それでもその姿を見てアトロポスはどこか悲しげに灰色の瞳を向ける。
「――貴女の心は、どんな『夜』を抱えたの?」
 間近で仕込み杖を振るいつつ、彼女は相手だけに聞こえる小さな声で問い掛ける。
 返答は無い。掌をかざし、世界を夜で覆わせようと。人々の心に闇を埋め込もうと女は必死に動いている。けれどその姿は恐怖よりも、どこか切なさが湧きあがる。――ただ、人であった筈のヒト。
 だからアトロポスは、緩やかな斬撃と共に言葉を掛ける。
「叶うなら、貴女とも違う形でお逢いしたかったわ」
 倒れ行く女。
 それに気付いたルミティアとベネディクトは、抑えの態勢から撃破の態勢へと変える。
 攻撃の対象は残る2体の犬影へ。素早く動き攻撃を行いつつも、主人を失くした事でどこか迷いが見えるのは気のせいか――。
 エンドブレイカー達が一斉に影へと攻撃を仕掛ければ、その影は静かに闇へと融けていった。

●灯
 ――闇の翼が動かなくなった時。空が段々と紺碧へと移り変わる頃合いだった。
「焚火、焚こうか」
 静寂を破ったのはベネディクト。手伝う人影の中、レイチェルは静かに遺体を見下ろす。
(「……可哀想な人」)
 禍々しい翼を残した遺体に、彼女は胸を痛める。
 彼女も『被害者』だとレイチェルは想う。だからこそ、終焉をもたらす夜は必ず砕いてみせると。その決意を胸に、レイチェルは祈りと共にその遺体を消し去る。
 彼女が顔を上げれば、パチパチと響く火の音。辺りを照らす炎は段々と大きくなっていく。
「ふふ、綺麗で暖かい」
 微笑みながらハルが零し、頷きを返すベネディクト。彼は炎から遠ざかると――広場の端で身を強張らせる村人達と、向き合った。
「緊張して身体も冷えただろう? そのまま寝ると風邪を引くから、皆で温まろう」
 そっと手を差し出し、小さな少年を助け起こす。ユリウスも手を貸し、5人の村人を今は強い炎へと変わった焚火へと導いた。彼等のゆっくりとした足取りは、段々と軽いものへと変わっている。
 温かく眩しい炎が顔を照らす中、レイチェルはカップに温かなココアを注ぎ差し出した。
「どうぞ」
 漂うココアの甘い薫り。カップを手にすれば、彼等の表情が緩むのが分かる。
 そんな彼等を見て、レイチェルは口を開く。
「遥か空に輝く星や月は、暗い夜道を照らしてくれます」
 ――それが、星霊建築により描かれたものでも。そして安らぎを教えてくれる家の灯り。
 ほっとする心地は、優しい夜の闇があるからこそ。優しさや温かさを感じるのではないか……。
「夜は光の尊さを教えてくれる。本当の夜はとても優しいの」
 彼女の言葉を繋げるように、ハルは優しい声色で添えた。
 ――彼女達の言葉に耳を傾けつつ。クニークルスは手にしていた白い狼を、手を使わずに動かして幼い少年へとみせた。
「こういう、可愛らしい力もあるのよ」
 そう微笑む彼女と同じように、シウも動物のぬいぐるみを操ってみせる。
 大丈夫、大丈夫。安心させるようなぬいぐるみ達に、キースはくすりと小さく笑う。
 そんな彼に、シウは独りでいる闇は怖いと語る。
「けど、隣に誰かが居てくれたら。逆に、静かで、優しいって思えたり、しない?」
 小さく首を傾げ彼が問い掛ければ――少年は小さく、頷いた。
「……父さんと、母さんと、一緒の夜」
 大好きな両親の元で、1日の思い出と共に眠りに着く夜は心地が良いと。彼は思い出す。その言葉にシウが仄かに笑えば、メイガスから降りたルミティアが大きな瞳で少年を覗き込む。
「今日の出来事は怖いものだった? 心配で眠れなくなりそう?」
 問い掛ければ、彼は少し不安そうに――けれど大丈夫、と力強く彼女は語った。
「昇る陽を待ちわびて、光に焦がれていいのよ」
 仲間の言葉を耳にしつつ、クニークルスは言葉を続ける。必ず夜は明けるもの。自身も沢山の光に焦がれているから、対である夜を愛せる事を。
「ねえ、キースくん。如何か夜を嫌いにならないで、ね?」
 そっと柔らかく小さな手を取り、ハルが語る。――けれど自信無さ気な彼の様子に、アトロポスは優しく問い掛ける。
「私達のことも、恐ろしく思いましたか?」
 通る声で語られた言葉に、キースはゆっくりと首を振った。
 ――それが分かれば、きっと大丈夫。
 そう語るように、ベネディクトは彼の頭を優しく撫でる。
 その掌に少しくすぐったそうにしつつ、キースはその笑顔を見返した。
「僕達、エンドブレイカーは人の不幸が嫌いだ」
 悲しい顔をしているのを見るのは嫌で放っておけない。泣きそうな時は絶対に駆けつけ守る。そして笑顔が取り戻せるように、一緒になって頑張る。――そう、今のように。
「エンドブレイカーはとんでもなくお節介焼きの、友達みたいな連中なんだ」
「ルミ達エンドブレイカーがこれからもずっと貴方達に希望の夜明けを連れてくる!」
 優しくベネディクトが語り掛ければ、ルミティアも明るい声色で断言した。
 そう、守る力がある。それでも負けてしまう時があるかもしれない。――けれど。
「人は誰でも強くあれる。自分自身に負けない限り、ね?」
 諭すように、笑みを浮かべアトロポスはそう零した。
 これはおまじないの言葉。自分に負けなければ、きっと闇に打ち勝つ事は出来るから。全てが悪では無いと分かっている。癒しのひと時がある事を分かっている、彼ならば。
 ――そしてそれは、彼等の言葉を耳にしていた他の村人達も。
 心落ち着ける薫りと炎の温もり。闇が段々と落ちてくるけれど、先ほどまでの恐怖は無い。恐怖に包まれていれば、今頃彼等はパニックになっていただろうから。
「……ありがとう、エンドブレイカー」
 村人を代表するように。1つ1つの言葉を胸に刻みキースは零す。小さな少年には難しい言葉があったかもしれないけれど、希望の光は確かに見えたから。
 静寂の中、カップの音が響いた気がした。



マスター:公塚杏 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2014/09/16
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  • ハートフル8 
冒険結果:成功!
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