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憂鬱なる人生、暗澹たる午后

<オープニング>


 戦神海峡アクスヘイム、カルツァリーナの街。
 1人のデモン人間が、デモンのような真っ赤な眼で空を見上げ、何やら精神を集中させていた。
 星霊建築とはいえ、昼日中の空はとても明るく、都市国家の外側の陽光を見事に再現して燦々と降り注がせている。
 だが、デモン人間が人の叡智たるドロースピカへ向ける目は、敵意以外の何物でもない。
「はあ…………」
 一方、工房街から住宅地へと抜ける路地裏を、若い職人が歩いている。
(「どうして、俺はやる事なす事上手くいかないんだろう……」)
 職人は靴作りを始めてまだ間もない見習いで、毎日師匠から怒鳴られる日々を送っていた。
(「歩き疲れないサンダル、良いコンセプトだと思うんだけどなぁ……」)
 綺麗に革を縫い合わせたり等間隔で鋲を打ったりという、神経だけはやたら使う単調な作業に飽きた時は、職人はそんなとりとめのない夢を語って師匠を怒らせた。
 ――馬鹿野郎、歩き疲れない革靴を立派に作れるようになってからにしやがれ。
 お世辞にも職人の腕は良いとは言えなかったので、最近は靴を見るのも苦痛になっている。
 流行りの金貨細工にでも転職すべきだろうか?
「駄目だよなぁ……どんな仕事だって、一から修行しなきゃいけないし、これでも、俺が一番上手くできるのは靴作りだけだし……」
 職人は嘆いた。
 一体、自分がマトモな靴を作れるようになるまで、後何年かかるのだろう。
 それまで、後何回師匠に怒鳴られる日々を繰り返さなければいけないのだろう。
「修行をサボってるわけじゃないのに、アレだもんなぁ……もう、お先真っ暗だよ……」
 職人は大仰に溜め息をつく。
 この空のように気持ちはどんよりと暗雲が過ぎて闇の中だ。
 この空のように。
「……え?」
 職人はようやく、目の前の異変に気がついて慌てふためいた。
 星霊建築たるドロースピカの賜物で、アクスヘイムの日中の空は、いつも明るいはすだ。
「何だよこれ!?」
 だのに、昼日中にいきなり真っ暗になるなんて、明らかにおかしい。
 そう。デモン人間が、内なるデモンの力で画策していたのは、空の破壊。
 ドロースピカの絵をデモンに力づくで上書きさせる事だった。
「……あら?」
 やがて。
「おい、いきなりどうしたんだ?」
 噴水広場で憩いの時を過ごしていた住民達や、工房街を早足で歩いていた靴職人達も、異変に気づく。
 夜でもないのに、街中が真っ暗闇に覆われている。
「……何だ? 星霊建築の異常か?」
「何が起こったんだ?」
 途方に暮れた住民達が空を見上げようとも、時既に遅し。
 星の光すら届かない真っ暗な空は、デモン人間が星霊建築の破壊に成功した証。
 カルツァリーナの空は、もう、戻らない。


「世界革命は、かつて世界革命家『鉄の首・バルムント』によって引き起こされそうになった世界の終焉のひとつで、バルムントの鍵で37体のマスターデモンを地上に呼び出したそうです」
 バルムントの世界革命は、ラズワルドを始めとする七勇者とその仲間の勇者達によって阻止されたようですが、今の時代には勇者はいません……。
「世界の終焉を阻止できるのは、皆様がたエンドブレイカーをおいて他にはいないでしょう……」
 深窓魔想紋章士・レフルティーヴァ(cn0144)は、真剣な表情で語り始めた。
「アクスヘイムはカルツァリーナの街で、デモン人間が都市国家としての天井部のドロースピカを書き替えて、街ごと闇に閉ざしてしまう……というエンディングを見てしまいましたの」
 デモン人間とは、一般人のデモニスタが特殊な能力に目覚めた姿で、『影への潜伏』を行う事が出来る。
 彼らは10秒程度集中する事で、人や物の影の中へ入り込め、その状態で影の外を覗いたり、周囲の音や声も認識できる。
 また、ゆっくり歩く速度で、影から影へと移動する事も可能だが、影が繋がっていない所へは移動できない。
「なんらかのアビリティを使用すると、暫くの間は影への潜伏を使う事ができませんので、戦闘中に影へ入り込んで逃げられる――というご心配は不要かと存じます」
 レフルティーヴァはデモン人間の能力を語った上で、今回の作戦を説明した。
「デモン人間は、デモンの力を活かしてドロースピカの書き替えを画策しますが、完全に星霊建築を破壊し尽くすまでには時間がかかるようですの。そこで皆様には、デモン人間が星霊建築の破壊に集中しているところを見つけ出して襲撃、そのまま討伐をお願い致します」
 今回遭遇するデモン人間は1人で、配下にレッサーデモンを2体連れている。
「デモン人間は、手にしたムーンブレイドで月蝕斬を、自らの血でクリムゾンハウンドを使ってきますわ」
 レッサーデモン達は一様に、デモニックアルターと邪眼を使い分けてくる。
「デモン人間は、カルツァリーナの街の中でも、ひと気の少ないところを選んで潜伏しているかと思われます……靴作りの工房が多い工房通りか、噴水広場の多い大通りに点在する路地裏の、どこかにいるでしょう」
 ちなみに、アクスヘイムで起きた事件であるため、街の人達はエンドブレイカーの避難指示などには従ってくれるはずだ。
 デモン人間がドロースピカを完全に書き替えてしまう時間帯は正午を少し過ぎた頃である。
 なるべく早くからの捜索が望ましいだろう。
「デモン人間の目的は、世界を夜の闇に閉ざす事……彼らはマスカレイドではありませんが、そんな邪悪な目的を果たさせるわけには参りませんわね。かつての勇者達が、鉄の首・バルムントの世界革命を阻止したように、皆様がたエンドブレイカーも、デモン人間達の野望を阻止して下さいましね」
 レフルティーヴァはそう締め括って、同席者達を激励するのだった。


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参加者
流離陽炎・ケイ(c01410)
燈し羽・リシフィア(c16309)
彩風に踊る妖精・シル(c25139)
マリヤ・ルア(c28515)
久遠の残照・ロレンツォ(c31495)
うっかりボコる群竜士・リチ(c33420)
棍のスカイランナー・ラッシュ(c35589)
日輪の勇者・シフォン(c36108)

<リプレイ>


 カルツァリーナの街、早朝。
「闇だけに覆うなんて……そんなことしたら植物も育たないし、おいしいご飯も食べられない……」
 そんな酷いことは絶対に阻止するよっ!!
 彩風に踊る妖精・シル(c25139)は、気合も充分な様子で噴水広場を駆け回っていた。
(「精神を集中させるなら、落ち着けるところや人のいないところかな」)
 通りからは見えにくい噴水の裏側にまで回り込みながら、考えを巡らせるシル。
「……路地の隅っこあたりにひっそりと三角座りで集中とかしてたらやだなぁ」
 思わずそんな想像をしてしまって、微妙な表情になるのだった。
「世界を闇に閉ざすなんてことはさせない」
 けれど――星の瞬きが、月影があるならば。
 燈し羽・リシフィア(c16309)は、星霊バルカンの尻尾と朱雀【真打】の刀身で、噴水広場のある通りに面した路地裏を照らして歩いている。
(「夜は、闇ではない……と、思う」)
 感情を他人へ悟らせない無表情の裏側で、決して希望を失わずにいるリシフィア。
 それは、かつて死にかけたのちに命を取り留めた自身の経験によって育まれた、リシフィアの強さなのかもしれない。
(「ある意味ではマスカレイドより恐ろしい存在……私達は今からそれと戦うのね」)
 マリヤ・ルア(c28515)も、噴水広場の中できょろきょろと視線を巡らせ、デモン人間を捜していた。
「ここにいては危険よ。早く安全な場所に行ってください」
 その上で、視界に入った一般人――杖をついた老人へ優しく声をかけている。
「これはこれは、どうもご丁寧に」
 お年寄りへ好印象を与える話し方を心がけて、丁寧に避難を促す彼女の伸びた背筋からは、デモン人間への恐怖心は一切感じられない。
 内心では未知なる存在への恐れを抱きながらも、気丈に振る舞う芯の強さが、ルアの長所であろうか。
「ずっと夜なら寝放題と思ったけど、そしたら昼寝ができなくなるか――大問題だ!」
 と、女性3人に比べてはお気楽な心配をしているのが、流離陽炎・ケイ(c01410)である。
 彼ら4人が、それぞれ手分けして噴水広場周辺の捜索を担当していた。
 黒い髪と整った顔を持ち、なかなかの美男子たるケイだが、内面は至ってお調子者。
 買い食いや道草が大好きで、人と話すのも好きな人懐こい性格、多趣味の中には昼寝も含まれるという面白い人物である。
「あー、井戸端会議中済まねぇな。俺はエンドブレイカーって者でね。ちょっとこの辺りにいると危険だから移動を頼むわ」
 路地裏の入り口で出くわした主婦連中へも、気軽に声をかけて避難させていた。
 その一方で。
「今日は、ドロースピカさんを書き換えようとしているデモン人間さんをボコッちゃうよ」
 デモン人間さんは、影に潜る力があるから捜しだすのがとても大変だよね。
 うっかりボコる群竜士・リチ(c33420)は、工房通りを歩きながら、自らの呟きへ首を傾げる。
(「あれ、デモン人間さんは天井のドロースピカさんを書き換えているんだよね」)
「だったら、デモン人間さんからドロースピカさんが見えないと書き換えるのは難しいよね」
 そう納得した風に頷いて、さすがにドロースピカを書き替えている間は影に潜ってはいまいと、リチは目を皿にして、周囲を見回すのだった。
「あのー、ちょっと良いっすか?」
 久遠の残照・ロレンツォ(c31495)は、工房通りを歩く職人へ明るい調子で声をかけている。
「オレ、この街来るのまだ2回目で。ドロースピカの位置を知ってたら教えて欲しいんすけど」
「ここはアクスヘイムの内壁まで遠いからね。ドロースピカなら天井部分じゃないかな」
 年嵩の職人が上を指して答える。
「多分あっちの大きな靴工房の上空が中心だと思うよ。大体街の真ん中辺りだから」
「あざっす! あ、後ドロースピカがそんなに近いならこの辺も危ないんで、すぐに離れた方がいいっすよ」
 オレ、実はエンドブレイカーなんす!
 礼を言うと共にしっかり避難も促したロレンツォ。
 自分は足の速さを活かして、早速街の中心目指して駆け出した。妖精のビアンカも空中を並走している。
「僕はエンドブレイカーです。この辺りに怪物が出ると聞いて、仲間と一緒に倒しに来ました」
 危険だから、なるべく遠くへ……噴水広場とも反対方向へ逃げてください。
 通りの反対側で同じく住民へ避難を奨めているのは、日輪の勇者・シフォン(c36108)。
 普段はのんびり屋だが真面目な一面も持つ彼だから、職人達へ呼び掛ける声音は真剣そのもの。
 シフォンやルアは、互いの班の仲間へ透明な印を付け合って、デモン人間発見時に素早く合流できるようにと工夫している。
 印が消える10分毎に中間地点で落ち合う念の入れようだ。
「絶対に怪物を倒して、事件を解決します」
 誠実かつ真摯な誓いが相手に伝わるよう、物言いから仕種まで努力を重ねたシフォンだけに、職人達は皆納得してこの場を離れてくれた。
「空、特に青空は、じいさんと同じく俺にとって掛け替えのないものだ」
 故に――本物とは少し違うが――空を消そうとする者を、決して許しはしない。
 そう強く決意するのは、棍のスカイランナー・ラッシュ(c35589)。彼もまた、透明な印を活用している1人だ。
 彼にとって、エンドブレイカーに覚醒するきっかけとなった青空は特別なもの。
「絶対に、絶対に阻止させて貰う……!!」
 内に秘めた熱い気性へ突き動かされるようにして、ラッシュは血眼になってデモン人間を捜した。
 すぐに、彼の無表情な顔へ険しさが増す。
 労働者達が忙しなく行き交う脇で、足を留めて空を見上げている人影。
 通りの中では一番大きいだろうと思われる靴工房の隣、路地裏の入り口にひっそりと立っている男……。
 デモン人間が、見つかった。
「ここは危険だ。俺達に任せて早く逃げろ……!」
 ラッシュが労働者達に向かって叫んだ瞬間、駆けつけたロレンツォもすぐにデモン人間の姿を認めて息を呑む。
「大丈夫、だってオレ達が来たんだから!」
 だが、すぐに笑顔を作って、ラッシュの指示に不安そうな目を向ける子ども達への説得に回った。
「デモン人間さんだね……!」
 近くにいたリチも、2人とほぼ同時にデモン人間の姿を目にしていて、意識が我知らず興奮を覚える。
 まさに大発見――彼女の思惟は、噴水広場側にいる仲間達の処まで伝播した。
「そんなに闇が好きなら、無明の世界に自分達だけで行ってくれないかな……!」
 合流したシフォンは相当険のある声で言い放つと、日光剣で斬りかかる。
 闇を灼く一撃を喰らい、痛そうに胸を押さえるデモン人間。その手がドス黒い血でべったりと濡れた。
「ラッシュおにいさん、お手柄だね」
 リチは素直な言葉で仲間を称賛してから、ボコるガントレットで掴みかかる。
「ぐああっ!」
 烈光する掌に肩を粉砕され、デモン人間の絶叫が木霊した。
「空を守るためだからな」
 ラッシュは硬い声で応えると、真剣な面持ちでデモン人間へ肉薄、高速回転させた棍を突き出す。
 棍障壁に次いで出された回転棍撃が、デモン人間の顔をぶっ叩き続け、醜く歪めた。
「……そうだよな、空を守るためには倒さなきゃ……だよな」
 相棒の妖精カルロタに洗脳粉を散布させるも、ロレンツォの声には複雑な思いが滲んでいる。
 片思いの相手はデモニスタ、大親友はソーンイーターとデモンを宿す職業に縁の深いロレンツォは、かのデモンの叛乱により知人達がバタバタと倒れていっても、信じて待つ事しかできなかった。
 それ故、デモン人間と何度戦ってもこの懊悩が抜けないのだと言う。
 妖精の粉により精神を侵されたデモン人間は、表情を歪めながらレッサーデモン2体を召喚。
 自分は、赤き月の力宿りし刃で斬りつけてきた。
「うっ……」
 赤月斬りを喰らって呻くのは、リチのアラームによって合流できたルアだ。
(「私は多くの人の役に立てましたか?」)
 彼女はマジカルマスケットの照準を定めても尚、湧き上がる恐怖と戦うべく自問自答している。
 迷いの中放った紫煙弾は壁で跳ね返るのを二度繰り返し、デモン人間を背中から貫く。ルアの空間把握能力の成せる技である。
「ここはお姉さん達にまかせなさい!」
 同じく急いで駆けつけたシルは、逃げ惑う子ども達に声をかけつつも、妖精ニルティアと一緒に攻撃を仕掛ける。
「行くよ、ニルちゃん!」
 ニルティアが懸命に射る妖精の矢へ、シルは何度も祈りを捧げた。
 世界樹の弾丸はレッサーデモンの腕を貫いて、煙に似た体液が噴き出す。
「還れ、始まりの炎に」
 やはり急行したリシフィアも、すかさずデモン人間へ霊符を貼り付ける。
 神火を灯す事で霊気を注ぎ込まれ、デモン人間は身体中を襲う痛みにもがき苦しんだ。
「痛いか? 痛いならすぐに楽にしてやるぜ」
 噴水広場から急行してきた最後の1人、ケイは飄々とした態度を崩す事なく、糸を巧みに操って牽制する。
 デモン人間の首に巻きつけた細糸をギリギリギリギリ絞め上げて、痛烈なダメージを与えた。
「そうだな。決して容赦はしない」
 続けて、ラッシュが棍でレッサーデモン共々デモン人間を薙ぎ払う。
 足払いで転倒したところへ縦掃撃を受けて、デモン人間の頭を激痛が襲った。
「デモンさんの夜はリチのボコるガントレットが消し去ってあげるよ」
 この輝く光に耐えられるかな?
 リチも輝きの増したボコるガントレットでデモン人間の頭を掴む。
 ゴリッ……!
 光の手はデモン人間の頭蓋をも破砕して、眩い光を周囲へと放射する。
「行くぞカルロタ……しっかり、な」
 ロレンツォは、どこか自分に言い聞かせるようにして妖精へ声を投げると、即座に同化しての滑空斬りを見舞う。
 飛翔乱舞を食らって、ついに倒れこむデモン人間。
(「私は、本当に他人へ必要とされる存在なの?」)
 ルアの内なる問いかけは続き、銃口から発射される弾も未だ止まない。
「でも……デモン人間を倒す事ができたなら、私は街の人の役に立てる」
 私は、必要とされて此処に居たのだと、認められるかもしれない。
 刻々と過ぎる時の中、いつ命を奪われるか知れない戦いの中で、ルアは少しずつ自分の存在意義と価値を見出して、そして。
 ――ドン!
 跳弾を繰り返した紫煙弾の内の一発が、デモン人間の心臓を貫いて、ついにその息の根を止めた。
「さあ、後はあんたらだけだな?」
 ケイはレッサーデモンの手繋ぎ攻撃を受けても不敵な笑みを崩さず、閃光手榴弾を直撃させる。
 爆音と共に光が炸裂して、1体の体力を大きく削った。
「ニルちゃん、もう少しだから頑張ろっ!」
 シルは相棒を励まして、別の1体へダンシングショットを繰り出す。
 精密な射撃がレッサーデモンの脚を撃ち抜き、着実なダメージを与えた。
「終わらせてやるよ……お望み通り明るい空の下からも、世界中からも退場願おう」
 この世にお前達の居場所なんて無いんだよ!
 シフォンは鋭い声で宣告すると、レッサーデモン1体へ向かって斬りかかる。
 光を呼ぶ一撃がレッサーデモンの靄のような身体を真っ二つに切り裂いて、無に還した。
「散れ、彼方の光に」
 神鏡を召喚して、悪霊を滅する光で照らすのはリシフィアだ。
 残り1体であるレッサーデモンを清浄な光が焼き尽くし、黒い身体はグズグズと崩れて空気中に融けた。


「空は……!? ……無事、か。良かった……」
 ラッシュはすぐさま空を確認すると、珍しく安堵の表情を浮かべて、息を吐いた。
 空――天井部には、本物と見紛う澄み渡った青空が。
 都市国家では日常的な光景が、頭上にある事は、そこに住まう誰もを安心させる。
「青空、夕焼け、包むような夜の闇、目覚めをつける朝の光……」
 やっぱり、空はいろんな顔をしてるのがいいよね?
 無事に守られたドロースピカが映す、晴れ渡った青空を見上げるシルの顔は、空に負けないくらい晴れ晴れとしていた。
「シフォンさんもお疲れ様〜♪」
「いやぁ、終わりました終わりました」
 シフォンもすっかりのんびりした雰囲気に戻って、特別心を許しているシルへ頷いてから、他の仲間達へも声をかける。
「ちょうどお昼時。皆でご飯でも食べませんか」
「リチもお腹ペコペコだよ」
 リチが元気に肯く傍ら、ルアは一心に祈りを続けている。
「主憐れめよ」
 繰り返すのは、デモン人間を無事に討ち取れた事への感謝と、ルア自身を労わり、褒めてあげるための言葉だ。
「ん、ビアンカは金貨細工に興味あるのか?」
 ロレンツォは、妖精が店の窓に張り付いているのを見て、面白そうに笑う。
「オレはのんびりと靴なんか見て回りたいけど……それじゃ、最初はこの店に寄ろうかな」
 ケイは、黙々と路地裏に付いた血痕を拭き取っていたが、その横を丸い背中が通り過ぎるのへ気づいて声をかける。
「不景気な顔してんな? どんな靴もあればこそ、俺たちは戦えるんだぜ」
 それは、ケイが日常の中で見せる気の良い兄ちゃんの顔だ。
「どんな靴も……? あ、有り難うございます……」
 そして、ケイへ肩を叩かれた若者は、エンディングで落ち込んでいた例の職人見習いなのだった。
「……正直、何度辞めたいと思ったか知れないけど……オレ、皆さんに履いて貰えるような靴を作るのを目標に、もう少しだけ…………頑張ってみますね」



マスター:質種剰 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/09/25
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