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冒険家ゲインズボロ氏の華麗なる挑戦

<オープニング>

●冒険家ゲインズボロ氏の華麗なる挑戦
 紫煙群塔ラッドシティの、とある放棄領域。
 廃墟の街と化して久しいその地の奥に古びた聖堂があった。
 聖堂の名もひとびとの記憶から消えて久しく、けれども聖堂に遺された宝の名とその存在だけが、いまだ時折ある種のひとびとの口の端に上る。聖堂の壁に嵌め込まれたアメトリンの石版だ。
 アメトリン――澄んだ菫色の紫水晶と優しい金色の黄水晶が混ざり合った、美しい水晶。
 夜明けを思わせる菫色に朝の光めいた金色が射す水晶に、流麗な金文字の聖句が刻まれたその石版は、『曙光の祈り』という名でひとびとの記憶に残る。
 聖堂が竣工した往時、当代最高と謳われた細工師の手で石壁に嵌め込まれたそれは、三階近い高さまで吹きぬけた聖堂の壁の高所に位置することもあって、瑕をつけずに取り外すことはおろか、作業そのものが困難だということで、街が放棄される際にそのままにされていたもの。
 そして、別の地へ移った関係者が手立てを模索しているうち、放棄された街はバルバが跋扈する地となり、おいそれと近づけなくなってしまった。
 故に、いつしか『曙光の祈り』は伝説の宝めいた存在として語られるようになったのだが――。
「……フン、まだるっこしい。最初っからこうすりゃよかったじゃねぇか」
 白く煤けた石の廃墟と化した聖堂の中、薔薇窓や崩れた天井から射し込む光が描いた影の中から姿を現した人影が紫煙銃を連射した。魔力弾は水晶石版の周りの壁を穿ち、壁ごと『曙光の祈り』を抉りだす。己が足元から跳躍した扇状の皮膜の翼もつ漆黒のトカゲが高所から落下してくる石版を受けとめれば、人影は、既にひとならざるものと化していた口をニヤリと歪めた。
「ま、俺様にかかればこんなもんよ」
 壁ごと抉り出した水晶を小脇に抱え、廃墟の聖堂から出たその人影は異形の姿をしていた。
 体は人間と変わりない。けれど首から上は血をどろりと固めた獣のような――。
「何ぞねこの、頭だけクリムゾンハウンド人間は」
「くう! 何という的確な表現! 流石です先生……!」
「!?」
 聖堂から出た異形は突如出くわした人間の言葉に絶句した。
 異形は知る由もないが、彼らは世界をまたにかける(自称)華麗なる冒険家ゲインズボロ氏とその弟子レイヴン青年。華麗に『曙光の祈り』を求め華麗に放棄領域を冒険してきた氏は即座に華麗に事態を理解した!
「むむ、解ったぞね! こいつは我輩の今回の華麗なる冒険のラスボスに違いないぞね!!」
「本当だ! こいつが持ってるのが『曙光の祈り』ですよ先生!」
「……えーと」
 異形のほうも何となく事態を把握した。
「……フン、我欲にまみれた愚か者がこれを我が物にしようとやって来たわけか」
 だが、嘲弄する異形を氏もまた鼻で笑い、
「愚か者はそっちぞね! 宝は発見するところまでが冒険の浪漫! 我輩それを持ち帰って貴族や豪商達のサロンでオークションにかけて、売上は恵まれない子供達の為に寄付するんぞね!!」
 ずばぁんと高潔なる慈善活動を宣言した!
「ああっ、流石です先生! 僕は偉大なる先生に一生ついていきます……!!」
 感涙にむせぶレイヴン青年。
 勿論100%善意ではなく、こういったパフォーマンスで、
『素晴らしい! 君の冒険は社会的意義のあるものだゲインズボロ君、次の冒険の資金は是非とも私に提供させてくれ!!』
 的なスポンサーをゲットする狙いがあるのだが、それでも慈善は慈善だ。
「今こそ華麗なる冒険のクライマックスぞね! 我輩の華麗なるナイフ術で華麗にラスボスを撃破し、華麗に『曙光の祈り』をゲットするんぞね!!」
 華麗にナイフを抜き放つ冒険家ゲインズボロ氏!
 だが問題は、氏が使えるのが初歩の『切り裂き』と『ナイフ投げ』のみというところである――!!

●さきぶれ
 世界革命。
 史上初のデモニスタである世界革命家『鉄の首・バルムント』によって引き起こされかけたそれは、世界の終焉のひとつだった。
 遥かな伝説の時代の出来事だ。伝説の時代の世界革命はやはり伝説の時を生きたラズワルドを始めとする七勇者とその仲間の勇者達によって阻止されたというが、今この世界に勇者はいない。
 勇者はいない。
 ――けれど、彼らの尊い決意の涯てに、自分達エントブレイカーが今この世界にいる。
「ってなわけで! アンジュ達も世界の終焉につながるっぽいデモン達の野望をくじきに行こうよ! まずはこの頭だけクリムゾンハウンド人間、もといデモン人間をぶっ飛ばしに!!」
 禍々しい異形に華麗に挑み返り討ちにあってしまう冒険家ゲインズボロ氏の悲劇の終焉を語った雁渡の狩猟者・アンジュ(cn0037)が同胞達に熱くそう訴えた。

 異形の正体は、デモンと融合し、幾らかひとの姿を残す魔物と化してしまった者――デモン人間。
 世界各地で蠢き始めたデモン人間達の中に、宝石を狙う者がいるという。
「この頭だけクリムゾンハウンド人間が狙う『曙光の祈り』の聖堂があるのは、バルバ達が跋扈する放棄領域。んでも彼は『影に入り、影から影に移動する』ってデモン人間の特殊能力でバルバ達との遭遇を避けて聖堂まで辿りついたのね」
 勿論バルバなど容易く蹴散らせる力があるはずだが、面倒を避けたかったのだろう。
「んでも装備品はともかく、他の持ちものがあると影には入れないんだって。しかも一度影から出ると二十四時間経つまでこの能力は使えないって話。つまり聖堂から出て来た彼に戦いを挑めば、影に逃げ込まれる心配はないってことなんだよ!」
 問題は、最速で急行しても、自分達の到着は冒険家ゲインズボロ氏がデモン人間に遭遇した後になるというところか。
 幸い、過去にエンドブレイカーと関わりのあった氏は華麗なるエンドブレイカーに心酔しており、
『俺達エンドブレイカーの華麗なる戦いを安全なところから見ていてくれ!』
 的な言葉をかけてやれば華麗に素直に従ってくれるはずだ。

「んでも厄介なのは、アンジュ達がどれだけ速く聖堂に駆けつけられるかわかんないってとこなのね」
 聖堂があるのはバルバ達が跋扈する放棄領域の奥。
 頭だけクリムゾンハウンド人間は影に入る能力でバルバとの遭遇を避け、ゲインズボロ氏はその華麗なる幸運で奇跡的に彼にでも倒せる弱いバルバのみとの遭遇ですんだのだが、
「アンジュ達も同じとは限らないよね。もーちょっと手応えのあるバルバも出ると思うんだよ」
 勿論、今のエンドブレイカーが手間取るほどの強さではあるまい。
 だが蹴散らすにも全員で突破するにも多少の時間のロスは必須。しかし、ゲインズボロ氏のことを思えば一秒でも惜しい。
「だからね、道中でバルバが出たらアンジュが『ここはアンジュに任せて、先に行って!』をやるから、みんなは聖堂に直行して! バルバを蹴散らしたらアンジュもみんなを追っかけるから!」
 遭遇が一度で済むとは限らないから、他にも数人『ここは俺に任せて先に行け!』要員がいた方が良いかもしれない。聖堂の敵はデモン人間ひとりと、彼に従うトカゲ型のレッサーデモン三体だから、最低でも四人は聖堂に直行してほしいとアンジュは語った。

「あのね、無事に合流して、ゲインズボロさんも護って、デモン人間も倒せたら、また逢おうね」
 私達は終焉との戦いをひとつひとつ重ね、そうして、みんなで必ず。
 世界すらも、その終焉から救ってみせるのだから。


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参加者
奏燿花・ルィン(c01263)
花渫う風・モニカ(c01400)
バーガンディランス・ティアナ(c01457)
昏錆の・エアハルト(c01911)
戯咲歌・ハルネス(c02136)
静謐の花筐・サクラ(c06102)
十花百花・アカツキ(c35480)

NPC:雁渡の狩猟者・アンジュ(cn0037)

<リプレイ>

●華麗なる予告
 紫煙群塔ラッドシティの、とある放棄領域。
 数多の物語を織り成すひとの営み絶えて久しい廃墟の街に、この日平坦でない人生を送る者達の華麗なる様式美がめいっぱい炸裂した。
「ここはボク達に任せて! アカツキさん達は早く奥に!!」
「偶には俺にもカッコいいことやらせてよ」
 突如襲いかかってきたヴォルフルの群れに甘酸っぱい系美女の放つ眩い光輝が迸り、きらり瞳を煌かせたわんこ系男子の斬撃が氷の華を咲かす。
 駆けつけてくれた仲間達の勇姿に十花百花・アカツキ(c35480)は嬉しげに破顔して、
「必ず……追いついてくるって約束してね!!」
 飛びきり明るい笑顔と声音を残して皆と再び廃墟の街を駆けだした。
 ちょっぴりフラグの匂いがしたけどこれぞ様式美!
 続けて廃墟の陰でのそり巨大な影が動いたかと思えば、巨大な盾を翳した巨大なエレファンタスが猛烈に突進してきた! が!!
「グハハハ! ここは儂に任せて先に行けェ!!」
 大型バルバにも張り合えそうなスキンヘッドの巨漢が角笛めいたハンマーをフルスイング!
 彼が華麗に豪快に敵をかっ飛ばす気配を背中に感じつつ、ついでに横合いから迫る剣呑な気配を察した奏燿花・ルィン(c01263)は、廃墟の街に吹く風へ華麗に肩掛けの羽織を翻した。
「ここは俺がやるぜ、先に行け!!」
「……!」
 唸りをあげて揮われたジャグランツの大剣を黒漆艶めく長銃で迎え撃つ彼の言葉に、柘榴の瞳を瞠った静謐の花筐・サクラ(c06102)が声もなく立ち尽くす。
「心配すんな、ルィンはちゃんと追いかけてくる。――だろ?」
「ああ勿論! 後で追いつくから先に行ってくれ、サクラ!!」
 彼からのチェイスを受けとめた昏錆の・エアハルト(c01911)が嘯けば、ルィンからも不敵な笑みと声音が迷い子のような顔した娘に届いた。不安も戸惑いも確たる信頼に塗り替え、皆は咲き乱れる幻の薔薇を背に再び廃墟の街を駆けていく……!
「格好良すぎるよみんな……!!」
 初っ端からクライマックスというか、大作冒険活劇のハイライトシーンばかりで構成された超豪華な予告編の如き怒涛の展開である。花渫う風・モニカ(c01400)が皆の華麗っぷりに痺れれば、そこへずずんと大地を震わす重厚な衝撃波が襲いかかった。
 見遣れば廃墟連なる街路の向こうにハンマーを揮う二体のタウラス!
 だが爆ぜる勢いで飛んできた瓦礫を足がかりに蹴りつけ、バーガンディランス・ティアナ(c01457)が屈強なバルバ達めがけて華麗に跳躍。
「ふふん、先に行くと良いわ! けど私の獲物も残しておいてよね!!」
「そいつは保証できねぇな、だからとっとと追いついて来いよ!」
「当然! 華麗に駆けつけるから待ってなさい!!」
 あっちで華麗なスカイランナー対決見せてやろうぜ、と声を張ったエアハルトへ華麗な約束残して、銀の騎士槍を閃かせたティアナは華麗なる残像とともに瓦礫の向こうへ消えていく。
 ひとり、またひとりと欠けていく仲間達。
「けれど大丈夫、俺は華麗な皆を信じているよ……!」
「だね! 皆ならフラグもへし折れる! はず!!」
 淡く憂いを帯びつつ絶対の信頼を覗かせるという様式美を体現する戯咲歌・ハルネス(c02136)に強気な笑みで溌剌とアカツキが応えた瞬間、今度は廃墟に挟まれた路地でぎらりと大鎌が閃いた。
 襲いきた呪詛塊を弾き飛ばしたのはサクラが翻した墨染桜の扇。
 路地からぞろりと現れたスネークヘッドの群れに『武神演舞コンビネーションかましにいこうよ!』とやはり扇を手に馳せた雁渡の狩猟者・アンジュ(cn0037)に頷いて、華麗に袴の裾を捌いたサクラも地を蹴った。
「……先に行って。今は、一秒でも……惜しい」
「そんな事できないよ!」
 潤みかけた声とともにふるふる首を振るモニカ! だが扇の桜が舞い散るかの如き武の舞で敵の攻勢を抑えつつ、僅かに振り返ったサクラがあえかに笑んでみせる。
「わたしは大丈夫。後から、追いかける」
「分かった、必ず追いついてね。聖堂で待ってる……!!」
 時間がないのは勿論承知。眦を拭って華麗に様式美を完成させ、モニカは彼女達に背を向けた。
「はいアンジュ、俺の背中にぴとっとどうぞ! がぶっと追いかけておいで!!」
「うん! 後で必ずがぶっとらぶっと駆けつけるからー!!」
 暁色の娘のチェイスをばっちり受けとめたハルネスも彼方の聖堂へと駆けだして――ふと後ろ髪を引かれたように廃墟の街を振り返った。
 あとひとつ、これだけは言っておかなければならない気がする。
「……皆、この先でまた会おう」
 とっておきのハンサム顔で様式美を決めて、男は今度こそ華麗に身を翻した。

●華麗なる挑戦
 華麗に急行した廃墟の街の奥、ところどころ崩れかけながらも荘厳な佇まいを残す聖堂の前では、酒場で聴いた通りの光景が展開されていた。
「今こそ華麗なる冒険のクライマックスぞね! 我輩の華麗なるナイフ術で華麗にラスボスを撃破し、華麗に『曙光の祈り』をゲットするんぞね!!」
 華麗にナイフを抜き放つ冒険家ゲインズボロ氏!
 ――前は切り裂きだけだったのに、ナイフ投げまで覚えたなんて大きくなったなおっさん……!
 カラミティスナイプまで極めたナイフの達人エアハルトが温かい眼差しを向けるその先に、昏い血を固めたような獣の頭を持つ男!
「フン、ラスボスだが何だか知らんが、俺様の邪魔をするならぶちのめすまでだ」
 わあ、ほんとに頭だけクリムゾンハウンドだあ……!
 なんてハルネスが胸ときめかせたのも一瞬のこと、件のデモン人間が黒き翼を広げたその刹那、
「そこまでだ!」
「そこまでよ、頭だけクリムゾンハウンド人間!」
 完璧な様式美でもって彼らの間に割って入るハルネス! そして右手を腰に当て左手人差し指をびしりと頭だけ(略)人間に突きつけるモニカ!!
「な、何だ貴様ら!?」
「諸君らは……!」
 頭だけ(略)人間が誰何し、かつて水神祭都への旅をともにした知己の姿に氏が瞳を輝かせれば、華麗なオーラの翼でエアハルトが加速。
「華麗な俺の姿を忘れたとは言わせねぇよ? 安全な観客席から俺達の華麗な戦いを見ていてくれ」
「勿論ぞね! 華麗なるエンドブレイカー諸君が駆けつけてくれるとは我輩大感激ぞね!!」
「これぞ完全無欠の華麗なるクライマックスですね! 先生!!」
 華麗に素直に大きな瓦礫の陰へ向かうゲインズボロ氏とレイヴン青年へ頭だけ(略)人間の配下、漆黒のトカゲが飛びかからんとするが、敏捷なレッサーデモンを遮るよう強引に大剣が斬りかかる。
「お前の相手は! アカツキさんだよ!!」
 十花百花たる娘が揮う刃の銘は千花、その斬撃は花嵐より派手な灼熱の火柱を噴き上げた!
 頭だけ(略)人間の翼から爆ぜた光にも怯まず二段蹴りで肉薄、鮮烈な蹴り上げで次手からの光の拡散を封じたのはモニカ。
「お久し振り、あれから二人はどんな旅をしてきたの――なんて話はラスボスを倒してからね!」
「いいなそれ、アカツキさんも一緒に聴きたい……!!」
「勿論ぞね! 夜を徹して語りまくるぞね!!」
 安全を確保した氏と青年にモニカがぱちんとウインクすればアイラインのシルバーラメがキラリ☆ 彼らの冒険譚に興味津々なアカツキも柘榴の双眸輝かせ、相対する敵を一層苛烈に攻め立てる!
 豪快な大剣の唸りと爆音とともに再度火柱を炸裂させたアカツキと同様、エアハルトとハルネスもそれぞれ漆黒のトカゲ型レッサーデモンを抑え込んでいた。
「華麗に魅せるぜ、ハンサムとイケメンの揃い踏みだ!!」
「流石エア君、いい響きだね。――さあ、我が愛娘が生み出す華麗なる幻覚をとくと味わえ!」
 華麗なるキラキライケメンオーラを翼に咲かせたエアハルトが弾丸の如き勢いで闇の鱗を裂けば、暁月夜の瞳を細めハンサムに笑んでみせたハルネスが手塩にかけたマジックマッシュを叩き込む。
 華麗なる幻覚で世界を染める煙! その中から飛びかかってくるレッサーデモン!
「チッ、エンドブレイカーに嗅ぎつけられるなんざ俺様ツイてねぇな!」
「素晴らしいぞねやっぱりエンドブレイカー諸君は華麗ぞね!!」
 頭だけ(略)人間の舌打ちと銃声! テンション鰻上りな氏の歓声!
 弥が上にも戦いは盛り上がっていく――が、エンドブレイカー側は本来の戦力の半分。抑えとしてなら不足はないが、敵を屠るにはまだ至らない。
「けど強敵相手は燃える展開! 悪しきを討って冒険を完結させてみせるよ!!」
「そうよ! 何を企んでるのか知らないけど、あなたに曙光の祈りは渡さない!!」
 黒き尾に縛り上げられたアカツキが緋き牡丹彩る大剣の柄巻を握りオーラの炎を燃え上がらせ、真珠一粒煌かせて宙に舞ったモニカの回し蹴りがクリムゾンハウンドな顔面を直撃する。
 だがしかし!
「この、エンドブレイカーどもめがぁ!!」
「やばっ……!!」
 暴走した頭だけ(略)人間のクリムゾンハウンド(アビリティのほう)があらぬ方向へ疾駆した!!
 ――けれどその瞬間、廃墟の街の空に華やかな錦が舞う。
「よぅ、俺を忘れてもらっちゃ困るぜ?」
 深紅の猟犬を弾けさせる勢いでラスボスに叩き込まれた斬撃が咲かすのは溢れんばかりの薔薇。華麗に咲き誇る薔薇の中、ルィンは鮮やかな笑みを覗かせ豪快な笑声を響かせた。
「仲間の窮地には華麗に登場、魔法剣士は華麗なる勝利を掴むんだぜ? ――ってな!」
「ふおお! 鮮やかぞね華麗な助太刀ぞね……!!」
 氏のテンションをぐぐっと押し上げて、戦いは更に熱く激しく華麗に加速していく!!

●華麗なる結末
 聖堂前で派手に交錯したのは続けざまの銃声と紫煙弾の鮮烈な煌き。
 瞬く間に相手や相手の配下を激しく穿ち己を浄化するルィンと頭だけ(略)人間の一瞬の銃撃戦を瞳に映して、可憐な乙女は華々しく跳躍した。
「苦戦ってほどでもないようね! けど私が来たからにはハッピーエンド急速直行間違いなしよ!!」
 天蓋から降る光に映えるは真珠色のキャスケットと艶やかな栗色の髪、数多の残像を従え戦場へ突入したティアナは電光石火で深手のレッサーデモンを撃破! ついでに氏へもウインクひとつ!!
「ふおおおお! 何たる可憐、何たる華麗っぷりぞね……!!」
 何かもう脳の血管あたりヤバくね? 的な感じに氏のテンションが高まった、その時。
 乾いた廃墟の風に黒絹の光沢と黒地に咲く桜花が舞う!
 風にも勝る勢いでまっすぐ闇へ馳せたのは武の化身をその身に宿したサクラ、空翔る鳥すら落とす扇の一閃がレッサーデモンの扇の如き翼を斬り飛ばせば、
「……遅く、なった」
「待ってたぜ、サクラ!!」
 その機を逃さずルィンの戦闘光輪が放たれた。
 彼女の口許に覗く無自覚らしい笑みは裡なるデモンとの語らいを経て得た変化か。頼もしい妹分の好ましい変化に眦緩め、けれど操る魔力は緩めずに、男は輝く円刃で片翼の敵の首を斬り飛ばす。
「んきゃー! もうがっつりクライマックスっぽい? みんなみんな大丈夫ー!?」
「やあ、随分ゆっくりだったね。場もすっかり温まっているよ」
 空へ消えた光の環と入れ替わるよう飛び込んできたのは光の竜、アンジュを乗せて跳躍した竜ががぶっとハルネスに、もとい彼に喰らいついていたレッサーデモンに噛みつけば、悠然たる微笑みで暁色を迎えた男は滴る己の血にも構わず魔道書に触れた。
 華麗な強がりも華麗なるエンドブレイカーの様式美!
 迸る不可視の魔力、霧散するレッサーデモン達、そして何より、ひとり、またひとりと仲間が戦場に駆けつける光景がモニカの心を震わせる!
「これぞ冒険活劇の王道、滾るよね!!」
 たとえ深手を負っていたとしても、仲間が揃えば華麗に立ち上がれるんだから――!!
 滾る心のまま掲げた魔鍵で蒼穹の滴が煌いた瞬間、廃墟の街に陽光溢れる楽園が顕現した。
「くそ、俺様も回復させてもらおうか!」
「おいこらクリ人間! 俺の姫さん喰うとか許されねぇし!!」
「ってか略しすぎだ貴様ー!!」
 楽園の娘の血を啜らんと馳せた猟犬を華麗に弾き飛ばしたのは夜を裂くエアハルトの刃。
 配下を失い明らかな焦燥を見せ始めた頭だけ(略)人間は更に猟犬を繰りださんとしたが、
「へえ、後ろ頭も完全にクリムゾンハウンドだね」
「ふふん、頭の上から見ても完璧にクリムゾンハウンドよ!」
 既に敵の退路を断つべく回り込んでいたハルネスが不可視の衝撃を撃ち込み、繋がれた力の路を辿って鳥よりも軽やかに宙に舞ったティアナが華麗なる銀の驟雨を降らしめる勢いで急襲、その隙を与えない。
「そして! 横から見てもばっちりクリムゾンハウンドだよっ!!」
 輝きの雨ごと浚う勢いで唸りをあげて風を切ったのは瞬時に巨大化したアカツキの魔獣の腕。
 獲物を瓦礫に叩きつけた瞬間、その衝撃で相手が抱えていた石版が宙に舞ったが、即座に誰かの手を伸ばされる様を視界の隅に捉え、魔獣の娘は遠慮も容赦もなく獲物を握りつぶす。
 廃墟の街の空に舞う水晶の石版。
 光を受け聖句の金文字が煌いて、夜明けの菫色に曙光の金色射す水晶の裡に光が躍る。
 この放棄領域にもいまだ力を残す星霊の光が降るように、底無しの夜にも必ず朝が来るように。
「てめぇの闇にも光を届けに来たぜ!!」
 左の手で華麗に曙光の祈りを受けとめたルィンが、右の掌上に闇夜も裂く光の環を生みだした。
 輝ける円刃が夜の闇へ堕ちた男の胸も腹も深く斬り裂くが、受けた痛手よりもルィンの手に石版があることに激昂して、デモン人間は獰猛なる猟犬の群れを解き放つ。
「返せ! 貴様らにそれを渡してたまるかぁ!!」
「……自分のものでも、ないくせに」
 猛然と馳せた猟犬達は思うさまルィンを蹂躙したが、淡い笑み湛えたサクラがひとさし舞ったなら、その舞をそのまま花咲かせたかのような、嫋やかにしてあでやかな桜吹雪の渦が存分に彼を癒す。
 最早、勝敗が覆ることはない。
「もしや、華麗なるハッピーエンドはもう間近ぞね!?」
「そうよ、ラスボスには華々しく散ってもらうから――見てなさい!」
 高まる氏の期待に誇らかに応えて、戦い続けてなお軽やかさを増す跳躍でティアナは遥か天蓋に映る空を背に舞った。敵がマスカレイドだろうとデモン人間だろうと、不幸な終焉を砕くという華麗なる乙女の使命は変わらない!
 天からの光を銀の騎士槍に映し、その光で闇夜を貫く心地でティアナが翔ける。
「還りなさい、昏い闇の中へ!!」
 銀槍の残像。幾条もの光を思わす突きに貫かれ、闇夜の異形と成り果てた男は終に倒れ伏した。

 闇夜に奪われかけた曙光の祈り。
 廃墟の街の奥で迎えを待ち続けていた水晶石版が、ルィンからゲインズボロ氏へと手渡される。
 冒険家達の悲劇の終焉を打ち砕いただけでなく、闇に連れ去られて終わるはずだった水晶石版の物語をも光の結末に書き換えて、この日のエンドブレイカー達の冒険は華麗なる終幕を迎えた。



マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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参加者:7人
作成日:2014/10/02
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