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闇は、問う

<オープニング>

●闇は問う
 祭りの日であった。村中をリボンで飾り、薔薇の花をまく。甘い香りに誘われて姿を見せる鳥たちは季節の使者。告げ鳥たちはりり、と歌い、青い羽をきらきらと輝かせながら空を舞うのだ。
 告げ鳥たちが、空に舞った花を加えて届けてくれたらーーそれは幸せのお裾分け。
 貴方にも良い巡りがやってきますようにってね。
 そう言って、ディアヌの姉は笑っていた。楽し気に、嬉しそうに笑っていた筈だーーそれなのに。
「や……ッいや……」
 悲鳴が響く。逃げ切れずに転けた音がドン、とやけに大きく響いた。街の広場にそれは突然現れたのだ。黒いもやを纏った獣達。レッサーデモン。仮装した誰かかと声をかけた村長を引裂き、ガクガクと震えるパン屋の男の足を掴んだ。逃げる事も出来ず、拳を振り上げるがそれじゃぁ足りない。恐怖で逃げ惑う人々を、追い回し嬲る様に腕を振るう。鋭い爪に引き裂かれ、倒れた姉はディアヌに小屋の中に隠れる様に言った。
 その、姉の声がもう聞こえない。
「やだ……やだよ、お姉ちゃん……ッ」
 どこにも行かないで、と泣きながら少女は扉に手をかけた。ほんの少し、ただ除くだけだった筈の扉が勢い良くーー開かれた。
「あ……ッぁあ」
 ひゅ、と喉が鳴る。
 扉を開いたのはレッサーデモン。黒い獣は悲鳴も出せずに立ち尽くす少女をーー引き裂いた。

●絶望と、恐怖を
「あ、良かった。みんなに話があるんだ」
 マギラントの一角、小さな酒場に姿を見せた二つ夜のデモニスタ・ニヤ(cn0185)は、そう言ってエンドブレイカー達を招いた。
「もしかしたらもう聞いたことあるかもなんだけどさ。世界革命ってのについて」
 世界革命とは、かつてバルムントの鍵で37体のマスターデモンを地上に呼び出した、世界革命家『鉄の首・バルムント』によって引き起こされそうになった、世界の終焉の一つだ。
「バルムントの世界革命自体は、ラズワルドを始めとする七勇者とその仲間の勇者達によって阻止されたっぽいんだけど……、まぁ今の時代には勇者はいない」
 そこまで言って、ニヤは顔を上げる。
「この世界の終焉っての、阻止できるのは、オレ達エンドブレイカーをおいて他にはいないだろうって話でね」
 実際、まぁオレもそう思う。
 そう言って、ニヤはエンドブレイカー達を見た。
「事件が起きたんだ。マギラントのレッサーデモン達が、マスターデモンによって凶悪な存在に作り替えられちゃったんだ。醜く恐怖を煽る姿になったレッサーデモン達はマギラントの村々を襲撃している。
 その上、黒の塔主もこの事件に前後して行方不明になっているのだとニヤは言った。
「タイミングが……良すぎるんだよね。いろんなことが起きてる。ーーだからまず、分かった一つのことどうにかしたいんだ」

 マギラントの一角、祭りの日を迎えていた小さな村がレッサーデモン達に襲われてしまったのだとニヤは言った。
「お祭りの準備中でね、村は飾り付けで忙しくしてるんだ。今から行けば、レッサーデモンが村長を襲うくらいには間に合うんだ」
 問題はレッサーデモンが村の正面と、町中に現れることだ。
「村の中にどうやって出てくるかは……ごめん、分からなかったんだ。でも、上から来るってのは分かってる。レッサーデモン達は全部で10体。数は多いけど、そう強くは無いよ。攻撃手段は爪の攻撃と、デモンウィング」
 村はそう広くは無い。村のあちこちで祭りの準備をしている人たちがいるから、たぶんその悲鳴で場所は分かるだろう。
「ほんとはそうなっちゃう前に行ければ良かったんだけど……。でも今、全力で行ったら村が襲撃されるその瞬間には間に合うから。そこから、走ろう」
 エンドブレイカーだと告げて、恐怖に飲まれそうになる人たちに、大丈夫だと言おう。みんなが安心できるように戦おう。
「暴走したレッサーデモンの目的は、死の恐怖を人々に与えることみたいなんだ」
 一般人の命を取ろうとはしていない。例え戦闘不能になっていても、その先とどめを刺すことは無いのだ。
「余計、不気味ではあるよね。怖いのは、怖いから……さ」
 一つ息を吐いて、ニヤはエンドブレイカー達を見た。
「それに、極限まで恐怖の心を高めてしまった人の中には、デモンと融合した人間ーーデモン人間に変化しちゃうこともあるみたいなんだ」
 きゅ、と拳を握って、ニヤは言う。
「早く、なるべく早く大丈夫だって言おう。レッサーデモンを倒して、みんなを恐怖から救わないと」
 だからみんなの力を貸して欲しいんだ、とニヤは言った。
「それと……もう花は用意されちゃってるから、もしかしたら裏山の告げ鳥達は来ちゃうかもしれないんだ」
 村人達はみな、祭り好きだ。無事に終わり、鳥が来ればーーきっと、花びらをまくだろう。
 次の季節を迎えるため、より良い巡りと明日を迎えるために。
「……良かったらさ、終わったら、オレ達もそれを見よう?」
 より良い巡りと、明日とーーこの先を、みんなで迎える為に。


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参加者
ナジュムの火・レサト(c02802)
闇狼・ヴォルフ(c03621)
夜紫の星巫女・エミリー(c21297)
紅焔の邪眼・ミレイ(c22522)
から笑いの捨火・ワレモコウ(c25429)
夜が訪れる刻・シキミ(c32374)
螺旋の槍騎士・スノー(c34467)

NPC:二つ夜のデモニスタ・ニヤ(cn0185)

<リプレイ>

●駆け抜けろ
「正面、4体」
 遠見で確認した闇狼・ヴォルフ(c03621)が簡潔に告げた。歪む視界を元に戻し、眼前の世界を得た青年は、た、と強く駆ける仲間の背を見た。
「行きます」
 応じる声が重なった。身を前に、エンドブレイカー達は一気に加速する。乾いた地面がタン、と音を響かせ、入り口に現れた闇の獣が振り返る。ゆるり、とだが振り返ったその時から叩き付けられた敵意をすり抜け、ナジュムの火・レサト(c02802)は一足でレッサーデモンとその姿に驚く村長の間に割り込んだ。
「!」
 驚きは二つ生まれた。
 腕を振り上げ、惨劇を生み出そうとしていたレッサーデモンと村長だ。
「あんた、達は……!?」
 目を剥く村長を背に、レサトは電気を宿らせた鞭でデモンを撃ちすえた。バチンと音が響き、電撃が乾いた空気に走る。
「あなたを……村を必ず、護ります」
 その言葉に、村長は我に返る。
「まさか……レッサーデモンが、村の中にもいるっていうのか!? ま、待ってくれ。だったら俺じゃなくて、村のやつを……!」
「仲間が行きます」
 混乱する相手を安心させる様にヴォルフは言葉を作った。た、と駆け出す夜紫の星巫女・エミリー(c21297)が「はい」とだけ頷く。
 今ここで、村長に説明するだけの時間は無い。今はただ、真っすぐにエミリー、紅焔の邪眼・ミレイ(c22522)、夜が訪れる刻・シキミ(c32374)、から笑いの捨火・ワレモコウ(c25429)、二つ夜のデモニスタ・ニヤ(cn0185)の5人は村の奥へと向かった。この場を抜け、駆けて行けばデモン達が面を上げる。
 声は無い。
 代わりに、闇の獣は大きく翼を広げた。だが−−その翼が、力を得るよりも早く動く者があった。
「それを許すと思うか」
 ヴォルフだ。
 振り回す槍の勢いを利用して、一気に距離をつめた青年の一撃がレッサーデモン達を撃つ。薙ぎ払い、着地と同時に構えを取り直せば、一度距離を取ったデモンが爛々した瞳をこちらに向けた。その視線を遮る様に、螺旋の槍騎士・スノー(c34467)は騎士槍を構え立つ。
 4対3。
 その状況で退かず、武器を構える3人に村長が「まさか」と震える唇で問う。
「あんた達は……」
「エンドブレイカーです」
 いつも以上に、毅然とした振る舞いでレサトはそう言った。避難を、と告げる声が重なる。ジ、と焼ける音がした。自分達の前に立ちはだかる者を理解したのだろう。
 正しく敵であると。
 唸る声の代わりに黒い炎を大きく揺れ−−戦端は開かれた。

●暗き笑みを浮かべ悪魔は進み
 ドン、と炎の弾ける音がした。地を震わせる音は後ろ−−村の入り口からだ。戦いのが始まったのだろうと思いながら、村の中に入ったエンドブレイカー達は避難を呼びかけていた。
「あれは……!」
 屋根上の影に、娘が悲鳴を上げる。ニィ、と笑う姿を見たのだ。怯え、動けなくなってしまった娘の前にエミリーは飛び出した。
「貴方たちの好きにはさせません!」
 声は高く、大きく。
 村人達を元気づけるようにその声を響かせながら、エミリーは辺りを見渡した。影は−−4つ。正面と、右に2体ずつだ。
「正面と、右にいます」
 4体です、と言いながらエミリーは手を前に出した。
「ペルル、お願いっ」
 応えるように、大きく羽を広げた妖精・ペルルが仲間達とともに屋根上にいたレッサーデモンに突撃する。一撃を避けたデモン達が、地面に飛び降りた。
「行かせはしない」
 そこに、ミレイが手を伸ばす。白い指先は血に染まり、次の瞬間、地面の血溜まりから猟犬達が姿を見せた。
「我が血を贄に疾く現れよ……あ奴等へ食らいつけっ!」
 けしかける様に、ミレイは声を上げた。
 主の言葉に、駆ける猟犬達がデモンに食らいつく。一撃は−−浅い。だが、気を引く事を目的とした今であれば十分だ。次々と飛び降りたレッサーデモン達がその目をぎらり、と光らせる。
「皆様、出来るだけ暗い場所や物陰などは避けて避難してくださいませ」
 ソードハープを構え、シキミは村人達にそう声をかけた。
 デモン、という敵との戦闘にちょっと不安は残るが−−全力で戦うのみ、だ。
 そして守るのだ。村人達も、みんな。
「暗い所、ですか!? わ、分かりました……ッ」
 頷いた村人が、立ち上がる。走り出そうとした、その方向を見て「待つのだ」とミレイは声を上げた。
「屋根の上からは離れて、あの左の大きな道を行くのだ」
 ゼロコミュを持つミレイの瞳に、人目のつかない場所は見つかりやすい。その感覚を逆に利用し、死角となる場所から遠ざける様に言った。
「なるべく、明るい所を」
「仲間が誘導するよ」
 未だ、戸惑いを残す村人にワレモコウはそう言った。ニヤ、と一つ呼べば、牽制の一撃を放った少年が「うん」と頷いた。
「村人の名所への避難誘導と護衛を頼む」
 物陰に潜むデモンには特に気を付けるように、言い添える。
 正面、確認したデモンの数は4体。残り2体が何処かにいるのは確かだ。
「了解。みんな、オレと一緒に来て」
 頷いた村人達が「皆さんは」と声を上げる。大丈夫だと言うように、ワレモコウはひら、と手を振った。
 祭りは祝いだ。
 祈りと、贖罪と、感謝の儀式だ。
「愛おしきその一瞬を、些末な恐怖で塗りつぶすわけにはいかないね」
 気をつけて、と言って、ニヤが村人達を誘導する。駆け出した彼等に、惹かれる様に顔を上げたデモンにワレモコウは黄昏の名を持つ刃を向ける。
 剣の切っ先から、生まれたのは炎だった。
 吹き出した炎が、走り出そうとしたデモンの足を焼く。唸り声の代わりに、黒い炎がぶわりと上がった。苛立ち、怒りを見せるデモン達を前ににやり、とワレモコウは笑う。
「嘆き悲しむ顔は祭りには不似合いだ。人好きのする容姿ではないが、彼らを元気づけるくらいはできよう」
 全力をもって戦い−−行くことで。
 警戒は忘れず、だが村人達を元気づける様にワレモコウ顔を上げ−−駆けた。

●光もて、我ら
 剣戟の音と光が、戦場にはあった。
 一斉に広げられたデモンの翼から、打ち出された光線をエンドブレイカー達は飛ぶ様に避ける。肌に薄く擦りながらもシキミはソードハープをポロロン、と鳴らして妖精達を呼んだ。
「妖精達よ、かの者に突撃して下さいませ!」
 姿を見せた妖精達が、正面のデモンに襲いかかかる。構えた針が黒い獣を撃ち、衝撃に大きくその身が揺らいだ。踏鞴を踏み、ついた足下に陣が浮かぶ。
「!」
 封印の術式だ。
「束縛の言霊……。黒き鎖のごとく現れよ。瞳に映りし全ての理を封ずる……印となれっ!」
 ぶわり、と暴れる様に舞い上がった炎が言霊に縛られる。ギ、と軋むような音を残しデモン一体が、地面に落ちた。
(「これで……」)
 あと、2体。
 減った数よりも、警戒を強めたのはデモンの数が足りないからだ。それに、デモニスタであるミレイはあの昏睡した日々の事を覚えていた。
(「……何か起きる予感はしていたが……こんな事が起きるとは。レッサーデモンたちはやはりジェスターの指示なのだろうか……」)
 耳を澄ましているが目の前のレッサーデモン達が言葉を交わすような様子は無い。
 少女は息を吸い、自らの中のデモンへと声をかけた。
「約束……果たせるか分からないが……出来る限りの事をするのだ……」
 今の自分の、自分達の全力で。
 大きく広げた翼を切り裂く勢いで、ワレモコウは手裏剣を投げた。一撃は浅く−−だが影は縫った。着地と同時に向けられた腕が、黒い炎を放てぬまま落ちる。
 ギィイ、と軋むような音が戦場に響いた。
 それは唸り声か、それとも体の限界を告げる音か。襲い来るデモンの一撃は、重なるマヒとギアスによってその威力を削がれていた。
 こちらとて無傷では無いが、重傷では無い。回復を使わぬまま、エンドブレイカー達は残り2体まで攻め込んでいた。倒れたデモンを飛び越え、襲い来る彼らは既に村人を追うより、目の前の妨害者を潰す事を決めたらしい。獣のように、早くデモンはエンドブレイカー達に襲いかかった。
「……ッ」
 その一撃がエミリーに毒を注ぐ。息を詰めながらも、少女はすぐに竜の紋章が描かれた紫煙銃を抜いた。
「逃がしません」
 覚悟を、想いを乗せて放った銃弾がデモンに沈む。毒を払い、真っすぐに敵を見据えたエミリーの前をシキミの喚んだ妖精達が舞った。
 ぐらり、とデモンが崩れ落ちる。包囲を広め、残る一体へと妖精は舞った。燐光は戦場に軌跡を描き、ミレイは赤い瞳をデモンへと向ける−−その時だった。
 音が、したのだ。
「上か」
 目の前にしか居ない筈の敵の足音だ。
 見上げたワレモコウは、確かにその姿を瞳に収めた。最初から逆光で眩むことのないよう位置取っていたのだ。奇襲を狙い来た姿も−−見える。
「左もです!」
 同じ様に、奇襲を警戒していたエミリーが声を上げる。建物の上、正面と左から飛び降りて来たレッサーデモンの攻撃に、エンドブレイカー達は散開した。
 一撃の前に気がつけば、避けるのは容易だ。奇襲は失敗し、エンドブレイカー達は集まった最後の2体を撃つべく駆けた。
 堅音が、空に響く。
 加速する戦いの音は、村の入り口でも響いていた。
 ギン、と爪と槍がぶつかり火花が散る。
「−−」
 一撃を防ぎ、返すように振り上げられた爪にスノーは後ろに飛んだ。機甲槍の上を滑った爪が火花を散らし、防ぎきれなかった一撃が浅く、体に伝わる。それでも、飛んだ先、すぐに構えを取り直した。
 守護を、誓ったからだ。
 出来る限り村人の安全を優先する。それ故に、人の気が無くなるまで傷は避けるよりも受ける事が多かった。それでも、重ね、連ね、叩き込んだ攻撃が既に2体のデモンを倒していた。
(「あと、2体」)
 た、とスノーは駆けた。迎え撃つように、デモンは大きく翼を広げる。だが、そこから生まれる筈の光線が−−散った。ヴォルフの刻んだマヒだ。四散した光は攻撃にはならず、突き出したスノーの連続の突きがデモンの体を貫き倒す。
 ギィイと軋む音が響いた。マヒを受け、傷を受けながら尚、殺意を向けるデモンにレサトは唇を結ぶ。
 デモンの所行を許せない反面、心に浮かぶのは眠っていた時の事だ。闇は、怖いばかりではないことも、知っている。
「デモンに人を、傷付けて欲しくない。だから私の手で……倒します」
 影まで焼き尽くさんと炎鞭を滾らせて、レサトは前に出た。迎え撃つように放たれた黒炎を打ち払い、炎を纏った鞭をレサトは勢い良く振り下ろした。
 ごう、と空気が燃える。黒い体が炎に包まれ、踏鞴を踏むその胴へとヴォルフは踏込んだ。勢い良く、回す槍で一気に薙ぐ。
 ばん、と弾けるように黒い炎が散りーー村の入り口にいた最後のデモンが崩れ落ちた。
 後は、村の中だけだ。
 合図の笛はまだ聞こえない。急ぎ、合流を目指して一行は村の中を駆けた。戦いの音ならば、ヒアノイズでヴォルフが拾い上げる事が出来る。
 ギン、と鋼のぶつかり合う音と仲間の声がヴォルフの耳に届いた。
「あそこです」
 そうして、飛び込んだ彼等が見たのは戦いの終わりでもあった。妖精達の突撃にデモンが崩れ落ちる。最後の一体となったデモンの一撃を避け、ミレイは赤く輝く瞳でデモンを睨みつけた。
「その手を停めるのだ……っ!」
 死の凝視に、びくりとデモンが震える。そこにワレモコウは手裏剣を投げた。弧を描く鋭い刃は、身をよじるデモンの裂き−−最後のレッサーデモンは地に、落ちた。

●幸いを、どうか
 黒炎が弾ける様にして消えた。
 最後の一体を倒し、は、とエンドブレイカー達は息をついた。合図の笛を聞いて、戻って来たニヤの話によれば村人達にデモンによる怪我は無かったという。入り口での足止め、そして村の中ではデモンの気をひくことに成功したということだろう。
「ありがとう。ほんとに、あんた達のお陰で誰も怪我しなかった」
 礼を言い、良かったら今日の祭りの参加していって欲しいという村長に、エンドブレイカー達は喜んで頷いた。
 村人と一緒に、皆でやれば片付けも予想より早く終わった。祭りはすぐにでも開けそうだ。村の皆が、祭りを楽しまれる事を願っていたシキミは顔を綻ばせた。
「そろそろリボンの飾り付けですか」
 言いながら戻って来たのはヴォルフだ。さっきまで、レッサーデモンの検視をしていたのだ。
 結論からいれば特別不審なものは無かった。
 あれはレッサーデモンだ。黒の塔が所有する従者兵器。恐怖を煽る姿に改造された、と注釈はつくがレッサーデモンである事に間違いは無い。
 だが、状況が状況だ。
 アサルトバグ暴走事件と同様に、今回のレッサーデモン暴走と黒の塔失踪事件も関連性があるとヴォルフは思っている。一頻りメモは取った。これがどこかで役に立つ事もあるかもしれない。
「まずは……残る手伝いですね」
 リボンは上の方にもかけるらしい。男手も必要になるだろう。
「お体は……鈍っていませんでした、か……?」
 デモンとの夜更かしが続きましたから、とレサトはニヤに声をかけた。頷いたニヤは「大丈夫」と笑みを見せる。
「レサトは?」
 どうだった? と一つ聞いた所で、ピィイ、と遠く鳴く鳥の声が聞こえて来た。
「来ましたねぇ」
 わぁ、と上がる歓声を聞きながらワレモコウは笑った。
 さあさ、まいて、と村人達が声を上げる。鮮やかな花びらを、戸惑いがちに持つ娘にエミリーは言った。
「どんなに大変でも頑張れば、良い明日が来ます。きっと」
「良い、明日……」
 言葉をなぞる娘の頭上、ピィイと鳥達が歌う。最初に薔薇の花をまいたのは村長だった。告げ鳥達を呼ぶように、村の幸いを願うように「さあもっと来い」と彼は言う。
「良い巡りがやってくるようにな!」
 花びらが舞い上がり、鳥が歌う。甘い香りが村を満たす。
 レサトは緑の薔薇を告げ鳥の嘴へと贈った。
「幸せ運ぶあなたや、この村に……明日が巡り続けますよう」
 ピィイと鳥が歌う。青い羽を羽ばたかせ、優しい色の薔薇がレサトの手の中に落ちる。舞い上がった花びらとそれを受け取る鳥の楽し気な声が響く中、籠いっぱい薔薇を子ども達が空に放った。
「鳥さん達、エンドブレイカーさん達にも沢山いいことありますようにって!」
「いいことありますようにって!」
 それはエミリーがクッキーを渡して一緒に話をした子ども達だった。不安や恐怖を和らげるように、一緒にいた子どもたちが幸いを願って花をまく。舞い上がった花びらを捕まえた鳥がエミリーの手元に、エンドブレイカー達の上に花を届けた。
「いい祭りだねぇ」
 手の中、落ちた花びらにワレモコウは頷き、自分も籠の中にあった薔薇を巻いた。
 我らと、そして何より村人の幸せを願って。
「幸せを一つ護れたでしょうか?」
 妖精と共に、エミリーは祭りの風景を記憶に止めた。
 花は舞い、鳥は歌い、幸いは届けられる。楽し気な村人達の声をエンドブレイカー達は噛み締めた。



マスター:秋月諒 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:7人
作成日:2014/09/21
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冒険結果:成功!
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