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シャルムーン動乱:落日の徒

<オープニング>

●祈りの徒 狂乱を秘めて
 町中、賑やかなバザールを抜けてゆけばその家は見えた。買い出しに行くには少しばかり遠くとも、家の中にいる者達にとってそれは苦ではなかった。人懐っこいパン屋の娘や、肉屋の大将は良くしてくれる。笑顔で顔を見せる彼等は、バザールの人々にとって良い客であった。
「へぇ、今日は新作があるのか」
「えぇ。いつも頼んでくれてるから、おまけよ」
 配達に来たパン屋の娘から、昼食を受け取って笑顔で見送る。青い目をした青年は、少女の姿が見えなくなるとす、とその笑みを落とした。見た目よりも重厚な扉を閉め、鍵を閉める。長い廊下を抜けてゆけば、日の降り注ぐリビングに、ナイフやムーンブレイドが並んでいた。昼食でも作るような気軽さで、並べられた武器。受け取ったパンをテーブルに投げた男は「そろそろか」と息を吐いた。
「あぁ。今居るメンバーで問題ないだろう」
 応じたのはナイフを手入れしていた青年だった。
「バザールを抜けた先にある広場は、シャルムーンに縁のある場所だ。銅像もある。あれを破壊するための物も用意できた」
「なら、それを壊してから殺すべきでしょうね。数人は生かしておかないと。私たちのやったことちゃぁんと覚えていてほしいものね」
 うふふ、と笑みを零した女が、2階からやってくる。2階建てのこの家こそ彼等の隠れ家であった。堂々としているからこそ疑われず、だが−−一人を殺せば彼等はひどく絶望することだろう。知り合いの、自分達が信じていたものの行動に。
「私たちの行動、防げなかったって知ったら……うふふ。街の人たちはどう思うかしら? エンドブレイカーのこと」
 楽し気に女は笑う。その時を今か今かと待ちわびるように、女は艶やかな笑みを浮かべた。

●落日の徒
「良かった。君たちに会えて。ーー君たちの時間を、私に貸してくれないかい? 少しばかり、面倒なことになってね」
 あり得た可能性ではあるが、と一つ息を吐き宵行の魔法剣士・クラウディオはエンドブレイカー達を見た。
「デモン事件のことは、君たちも知っているかな。暴走したレッサーデモンや、デモン人間の事件が起きている中、シャルムーンのマスカレイド達が動き出したのが分かった」
 確認されたのは、名将盾カレルヴォが組織していた軍勢だ。だが、指揮官は違う。
「操っているのは、どうやらマスターデモンでもあるマスカレイド、ジェスター・ザ・カーニバルでね」
 どうにもしつこく動いてくる相手だ、とクラウディオは小さく息を吐いた。
「ジェスター・ザ・カーニバルが、マスカレイドとして動いているのか、マスターデモンとして動いているのかは判らない。何にしろ今は、動いて来ている敵がいて、それがマスカレイドであるという事実だ」
 放っておくことはできない。
 そう言って、クラウディオはエンドブレイカー達を見た。
「どうか、君たちの力を貸してほしい」

 動き出した軍勢だが、君たちに向かってもらいたいのはその隠れ家なのだとクラウディオは言った。
「勿論、軍勢が見事に皆隠れている、というわけではなくてね。シャルムーンの像がある広場への襲撃を狙っている部隊の隠れ家が分かったんだ」
 隠れ家があるのは町中、バザールを抜けて少し行った所だ。
「また賑やかな所に……と言いたい所だが、堂々とされている分、逆に隠れ家とも何とも思われていない状況でね。上手い事をやってくれたと思うよ」
 息を吐き、クラウディオは広げた地図の一角に、丸をつける。家は二階建てだと言った。
「見た目は普通の家だが、扉は一般家庭のものより遥かに頑丈だ。蹴破るのは難しいだろうね。その上、庭にはクジャクに似た鳥を放し飼いにしていてね……警戒心が強くて、不法侵入すれば鳴くだろう」
 作戦実行の前だ。危険を感じれば彼等は逃げてしまうだろう。
「そして、他の場所で襲撃を実行される。ーーそれだけは防がなければならない。この部隊の目的はシャルムーンに縁のある場所を襲撃し、殺戮を行いそして−−それを生き残った人々に見せつけることだ」
 彼らが襲撃するのは、シャルムーン支持派が比較的多い地域だ。放置すればその地域が『反エンドブレイカー』で纏まる可能性も出てくるだろう。
「家の中で彼等を仕留めるべきだろう。侵入方法であればひとつ、表に顔を出している彼等は代表の一人がよくバザールでパンを頼んでいてね、配達に来るようなんだ」
 情報収集を理由に、頼んでいるものだ。
 パン屋に扮して、一階から入るもの、そして塀を超えて2階から入るものに別れるのが良いだろう。
「配達さえ来てれば鳥が鳴こうが問題は無いからね。頼んでないというだろうから、そこは扉を閉められないようよろしく頼む」
 中に入れば、一階と二階、それぞれにいるマスカレイドとの戦いとなるだろう。全員で5体程度。一階にはリーダー格の男が、2階には強い女がいる。
「家に調度品は少なく、戦いになっても配達以外で近寄る者はいない。大きな音が出ても、誰か駆けつけてくることはないだろう」

 そこまで話すと、クラウディオはエンドブレイカー達を見た。
「随分と長くなってしまったね。聞いてくれてありがとう」
 一つ礼を言って、クラウディオは顔を上げた。
「ただの襲撃……というには少々やることも多いかな。だが、隠れ家が特定できた今を逃したくはない」
 だからこそ、君たちに頼みたいのだとクラウディオは言った。
「この事件の他に、マスカレイドピュアリィや、カレルヴォ直属の地獄兵なども動き出している。どうにも不穏な状況だが……シャルムーンの治安を守る為に、彼等の平穏の為に力を貸してほしい」
 目礼し、クラウディオは真っすぐにエンドブレイカー達を見た。


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参加者
ひよこ使い・ナハト(c00101)
白狼・ヴェルナー(c00186)
黄金騎士・ハインツ(c00736)
蒼玉の・エクレール(c03662)
狛犬・ビィ(c11743)
大鎌の自由農夫・リドル(c18813)
チェシャ猫・メルキオス(c29199)
平原の騎士・セルマン(c33173)

<リプレイ>

●平穏からの侵入者
 そこはごく普通の家だった。
 間口は広く。庭は大きい。高い壁も広い庭も鳥を飼っているのだと言ってしまえば説明がつく。
 その前に、エンドブレイカー達は立っていた。ざわざわと聞こえるのは、庭に放されてるクジャク達の足音だろう。
「さて」
 最初の一声は、色の長い髪を靡かせる青年のものだ。白パンがたんまり詰め込まれた籠を手に、青年は真っすぐに屋敷の玄関に向かい−−
「こんにちわ、そしてこんにちわ!パンの配達に来ました☆」
 その見目を裏切るハイテンションで、青年−−チェシャ猫・メルキオス(c29199)は扉を叩いた。

 その明るさに反応してか、勢いにおされてか、一気に庭のクジャク達が鳴き出す。騒ぎだす声の大きさに扉はすぐに開いた。
「また、賑やかなのが来たな」
 黒髪を後ろで結った男は、眉を寄せた。
「二人とも新入りか?」
 水を向けられ平原の騎士・セルマン(c33173)は一つ苦笑を作る。
「今日はパンのお届け物が多かったもので。力には自信があるので、パン運びの頭数として呼ばれたのですよ」
 エプロン姿のセルマンに、男は「あぁ」と納得したように息をつく。だがすぐに、眉を寄せた。
「来てもらって悪いが、今日はまだ頼んでないぞ?」
「え、おっかしーなー? ここに配達する様に頼まれたんだけど違ったかなぁ? う〜ん……それじゃ、お近づきの印ってことで今回はロハでいいんで貰ってくださいよ〜その代り、今後ともご贔屓にして下さいね☆」
 一息で言い切れば「分かった分かった」と男は息をついた。諦める様に響いた声と共に、扉が大きく開く。そこに、ずい、とメルキオスは足を入れた。
「はーい。パンを運ぶんで」
 眉を吊り上げた男を無視して、そのままばん、と扉を開く。
「な……!」
「おっじゃましまーす!」
 そこに、来訪者達は一気に飛び込んだ。メルキオス、セルマン、そして物陰に潜んでいたひよこ使い・ナハト(c00101)が元気よく挨拶しながら飛び込めば、驚いた男が後ろに素っ転ぶ。パンの入った籠が宙を舞い、真っすぐ続く廊下に転がる。
 ひと際高く、クジャクの声が響いた。
 それは警戒というよりは、驚愕に近い強さで屋敷に響く。
 長く続く廊下の向こう、異変に気がついた男達がばたばたと姿を見せた。
「おい、何があった!?」
 廊下に転がった白パンに目を剥く男を前に、メルキオスは笑う。
「侵入者でっす」
「仮の姿は突撃パン屋さんだったわけだけど、な……!」
 ナハトが扉を閉める。バタンと重い音をたてた扉に触れたセルマンが紋章を描く。
 ゲートエンブレム。
 扉に描かれた魔法の紋章は、セルマンと繋がり−−その耐久値を同化する。
 騎士一人の命と、同等の錠をかけた扉を背に、セルマンは駆けて来た男達を見た。数は3。前に出た男が、いち早くその身にマスカレイドの仮面を浮かべた。
「敵襲か……!」
 ムーンブレイドを持って現れた男に、ナハトは顔を上げる。鞄の中から飛び出して来た星霊バルカンがぶわり、と神火を上げた。
「っく……ッ」
 先手必勝。
 舞い上がる炎の中、メルキオスは両の手を広げた。
 瞬間、廊下に衝撃波が走った。空間さえ、遮断するその力は黒き咎人の逆十字となって男達を引き裂く。
「ぐ、貴様ぁ」
 一撃に苛立ちを露にした男の体にマスカレイドの仮面が浮かび上がる。
「3人程度で我々の邪魔をしたこと後悔してもらおう」
 男が誰かを呼ぶ様に男が指を鳴らす。
 その時だった。
 ガシャン、と窓硝子の割れる音が響いた。音は上−−2階からだ。
「な……!」
 ひゅ、と息を飲み−−ぎり、と男は唇を噛んだ。
「邪魔者が、エンドブレイカー」
 低く、唸る様に聞こえた声に応える代わりに、セルマンは言い切った。
「マスカレイドたちの中でもどうやらとびきり質の悪い連中のようです。容赦は無用ですね」

●上空からの襲撃者
 その頃2階では、狂信者のマスカレイド2体とエンドブレイカー達が対峙していた。
「侵入者ね……ッアナタ達」
 唸るような声に、黒髪を揺らす青年は顔を上げた。
「狡いマネなんて考える三下のために来てあげたんです。……それともここで逃げて雑魚以下になりますか?」
 黒曜の瞳が、珍しく怒りを顕にする。
 武器を片手に、白狼・ヴェルナー(c00186)は女にチェイスを飛ばす。
 侵入の方法は簡単だ。下の騒ぎに便乗してフック付きロープを使い、2階まで上がったのだ。クジャクが鳴き喚く中、1階の騒ぎに気を取られていた狂信者達は、窓硝子を割ってヴェルナー達が突撃するまで気がつきもしなかったのだ。
「雑魚、ですって……」
 ヴェルナーの言葉に、女が眉を吊り上げる。
 ジェスターは再現されても本当に厄介ごとばかり持ってくるよね……、と蒼玉の・エクレール(c03662)は狂信者達を見ながら思った。
(「でも全て僕らで絶対に止めて見せる」)
 それを知り、見たのだ。この目で。
 青年は自らの妖精を呼ぶ。長い髪を揺らしながらエクレールは女に言った。
「君たちの思惑通りにはさせないよ。逃がさないから覚悟して」
 ベランダを塞ぐ様に立った彼の後ろ、狛犬・ビィ(c11743)は槍を構えた。
「ここから誰も逃がさないっすよ!」
「デルタ!」
 狂信者の男が、女を呼ぶ。「えぇ」とデルタは頷いた。
「ここでアンタ達を始末する!」
 黒髪を揺らし、女は仮面を浮かべ−−吠えた。
「シャルムーン様を奪ったお前達を!」

 来ます、と鋭い声が重なった。
 身を飛ばす様にエンドブレイカー達は女の一撃を避けた。
 浸食する黒き闇のオーラは床で散り、一瞬、飛び散った硝子を黒く染める。闇を纏う女は連れに目配せをした。男は声を返さず、動き出す。その足が、逆を向いたのにビィは気がついた。
「誰も逃がさないって言ったよな!」
「な……!」
 声を上げると同時に、ビィは前に飛び出た。着地と同時に突き立てた槍が、一瞬にして槍地獄を生む。
「ッくそ……ッエンドブレイカー!」
 怒声と共に、無数の影が男の足下から生まれた。振りかざす刃の一撃を腕に受けながら、ビィは距離を取る。誘われるまま、追いかけて来た男が硝子の破片を踏む。
 パキンという音と、相対する騎士の踏込みは同時に響いた。
「我等、名前をエンドブレイカー! 意に沿わぬ結末を、破壊し続ける者! 貴様ら…見事、抗ってみよ!」
 名乗りを上げると同時に、黄金騎士・ハインツ(c00736)は星霊グランスティードと共に突撃した。軍馬の嘶きが響き、加速と共に前に出たハインツの一撃が、女を撃った。
「っくは、いいわ。倍にして返してあげる! アンタ達にもこの街の人間にも!」
「君たちが何を思ってこんなことしようとしてるか知らないけどこの都市をこれ以上絶望で染めさせたりしない!」
 吠える女へと、エクレールは世界樹の弾丸を放った。
 ィン、と高く、空を切り裂く音が耳に響く。一撃を、女が横に飛び退け避けたのだ。窓硝子を割って突入した時に家具は粗方吹き飛ばしている。
 女の回避に合わせ、もう一つ動きが生じた。
 ナイフ持ちの男、ウィルだ。
 距離を詰めにきた男に応じるように大鎌の自由農夫・リドル(c18813)が前に出た。ギン、とぶつかった大鎌にリドルは悪夢を乗せる。
「っく」
「勇者シャルムーンの名前を騙って、あの人が守りたかった人々を脅かす計画、しっかりつぶさせてもらいます」
 恐るべき悪夢に苛まれる中、リドルはウィルの腕を切った。斬撃に、ぐらり、と男は身を揺らす。衝撃がその身に伝わって最初の反応は離脱ではなく−−攻撃だった。
「エンドブレイカーァア!」
 獣のように吠え、襲いかかって来たウィルにリドルは大鎌を縦に構えた。ギン、と重い音が響き、火花が散る。なんとか、弾き上げたそこで少年が見たのは仲間の暴走に気がつき舌を打つ女と、瞳に殺意を乗せ、次の一撃を狙おうとする男の顔だった。

●鮮血烈火
 1階と2階、共に戦場には漆黒と、刃があった。
 広いとは言い切れない1階の戦場も、3人という人数であれば憂いなど無い。廊下ごと薙ぐように、セルマンは剣を振るった。とっさにナイフを構えた狂信者達を光の翼は薙いで行く。
「あなた方の企みは露見しています。全く、マスカレイドというものは本当に救いようのない連中だ」
 マスカレイドに対し、激しい怒りを覚えている騎士は低い声で言った。
「お陰であなた達を斬ることに良心の呵責を感じなくて済む」
 ぎゃ、と声を上げ2体目の狂信者が倒れれば、残るはリーダー格の男、一人となる。
「ッチ、邪魔ばかりを!」
 吠える声と共に、赤き付きを宿した一撃がセルマンの頭上に来た。とっさに、剣を振り上げる。
 ギン、と刃と刃がぶつかる音がした。
 火花が散り、セルマンの腕から血が流れる。ぐ、と重く感じたのは毒だ。それでも、騎士がその場から引かなかったのは踏込む仲間の足音を聞いていたからだった。
「!」
 た、と軽いメルキオスの足音には、と男が顔を上げる。合わせていた刃を、セルマンが振り上げた。
 ガギン、と刃は音を響かせ、同時に吹き込んだ強風に男は踏鞴を踏む。
「ッツ、ァ……!」
 ナハトの一撃だ。
 青年は風を纏い、風と舞う。くそ、と男は声を上げる。
「なんだろなー。もしかしてこうやって地道に活動すればシャルムーン復活するとか思ってんの?」
 問いかけ、ナハトはうちわを男へと向けた。
「……誰が最初に言い出したのかな、その話」
「お前達に、俺がしゃべると思う、か……ッ」
 吠える男が踏鞴を踏む。握る刃が空に浮き、その間にメルキオスは手を伸ばした。
(「一応、実は我ここが故郷だから、居られなくなると困るんだよね。というわけで、サクッと殺されてね☆ そしたら、サクッと食べて、きれいなバラにしてあげるから!」)
 笑う猫の青年の指先が、男に触れた。
「ぐ、ぁああ……!」
 ソーンに貫かれた狂信者が膝をつく。計画、が、と最後に零した男の仮面が砕け散った。
 その、時だった。上の階から女の高笑いが響いたのだ。

●その笑みの向こうに
「くふ、あははは! いいわ、もっと殺し合いましょう? それこそ、シャルムーン様に捧げる戦いに相応しいわ!」
 マヒと制約を振り払い、だが血塗れのまま女は駆けた。跳ねるような加速と同時に、既に倒れている仲間を飛び越える。2階での戦闘も既に、狂信者の女を残すだけとなっていたのだ。
 だが、さすがに強い。
 振りかざす一撃は重く、暴走の果てに倒れた狂信者の男よりも素早い。
 こちらの攻撃が全く通っていないというわけではないのだ。だが、同じ分だけ女も闇を震う。闇のオーラを受けたハインツが、距離をつめてくる女に顔を上げた。退かず、構えを取ったのは−−近づいてくる足音に気がついたからだ。
「回復するぜ……!」
 声を上げたのは、ナハトだ。
 巫女の舞を見せる彼に、狂信者の女が振り返る事は無い。ただただ追撃を狙い来る女の足を銃弾が射抜いた。
「もう逃がさないよ」
 世界樹の弾丸。
 エクレールの放った一撃だ。女の膝を撃ち抜き、腕を撃ち抜く。その先にあるのは再びのマヒだ。
 き、と睨み見る女にエクレールは言った。
「ジェスターの思惑も全てひっくるめて思い通りになんてさせないよ」
 この騒動を収めて意趣返しとしようじゃないか。

 マヒを受けて、女の攻撃は更に鈍った。仲間一人いない状況でもシャルムーンの名を紡ぎ、殺すという女にヴェルナーは月の光を招く。珍しく、怒りを顕にしたヴェルナーを中心に、光が生まれる。
(「こちらを陥れるためにわざわざ関係ない一般人に手を出そうとは良い根性してますね。直接こちらへ手を出すというならまあ幾分かマシというものですが……」)
 情けも慈悲もなし。筋違いも良いその腐った行動と考え、ここで全て消させてもらいますよ。
 口の中、言葉を一つ作り、ヴェルナーは月の力を解き放つ。結界を描く威を封ずる月の光が、女を焼いた。
「っくぁ、エンドブレイカー、なんかに、私は……!」
 負けるわけなど無いのだと、吠える女を見ながらハインツは思った。
(「狂信者達の最大の欠点は……彼等が誠実すぎることである、と。全く、我々エンドブレイカーにとって、貴様等は星の数ほどいる敵の単なる一つに過ぎないのだが、な」)
 まぁ、そんなに意識するな。
 とハインツは口の中、言葉を作る。
(「私は敵の事情なぞ、何も気にしないから、な。フッ……」)
 口の端を上げ、騎士は戦場を見る。暴れるように腕をふるう女の一撃が空を切った。マヒだ。動かぬ指先は力を生まず、ハインツは速度をつけるように踏込みその力をぶつける様に突撃した。
「我が槍、ヤークトフレーテの猛き唸りを聞け! ……そして、絶望せよ!」
「!」
 鋭い突きと打撃が、女を襲った。庇う様に出した刃がきしみ、防ぎきれなかったダメージに体が浮く。それでも、女は踏みとどまった。
「邪魔、されるわけにはいかないのよ。シャルムーン様の為に、死ね!」
「名を貶めして居る人に敬愛してるなんて言われても、迷惑なだけですよ」
 そんなことも分からないのかと言うようにリドルは言った。接近にさえ気がつかず、一撃を受けた女にリドルは毒を注ぐ。あ、と女が息を飲むのをビィは聞いた。暴れる様に震う腕は、最初程の力は無い。受けたマヒを払う為に、震った刃が合流したメルキオスとセルマンに砕かれた。
「ァア!」
 ブン、と暴れる様に女が振るった刃を、ヴェルナーが受け止める。エクレールと共に、一撃を叩き込んだビィの前、女はシャルムーンの名を紡ぎながら崩れ落ちた。

 戦いが終われば残ったのは−−相変わらず騒がしいクジャクだった。鳴き声が響く中、ナハトはアジトの調査をしていた。
「うーん。なんか面白いもん落ちてないかなー」
 バルカンと一緒に探して見つけたのは、襲撃を企てていた広場の地図くらいだった。他の狂信者のアジトの手掛かりになりそうなものは無かった。
「横のつながりとか無いもんなのかー」
「こっちも特になさそうっす」
 先に、仲間の手当を終えて、調査に合流したビィは妖精と共に息をつけば丁度、メルキオスもソーンイートを終えて、狂信者達を薔薇に変え終えた所だった。
「今度は人に迷惑かけない花生だよ!ヨカッタネ誰にでも愛される花になれて」
 人に愛でられ散って行く前に、鳥に毟り食べられるかもしれないケド。
 猫に似た声でクジャクが鳴く。思えばこの鳥達はどうなるのか。
「クジャク! 連れて帰りたいんだけどいいかな!?」
 ナハトの言葉に、ヴェルナーが瞬く。
「おれなら村で飼えるよ! 逃げたの捕まえて来ていい?」
「まぁ、いいんじゃない。もう飼ってる人もいないわけだし」
 軽い調子で答えたメルキオスに頷いて、ナハトは庭に出る。鳴き声がひと際大きくなって、一行は笑った。
 鳥の声に混じった、遠くから街の賑わいが聞こえる。
 悲劇も無く、惨劇も無い−−エンドブレイカー達の守った当たり前の夕方が訪れようとしていた。



マスター:秋月諒 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2014/09/19
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